(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178774
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】リモート無線装置及びリモート無線装置の通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 13/00 20060101AFI20221125BHJP
H04W 72/08 20090101ALI20221125BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20221125BHJP
H04W 74/08 20090101ALI20221125BHJP
【FI】
H04L13/00 307B
H04W72/08 110
H04W72/04 131
H04W74/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085808
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 憲正
(72)【発明者】
【氏名】桑原 寿明
【テーマコード(参考)】
5K034
5K067
【Fターム(参考)】
5K034AA02
5K034DD02
5K034EE03
5K034MM05
5K067AA25
5K067BB27
5K067BB28
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE71
5K067GG09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ベース無線装置と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置及びリモート無線装置の通信方法を提供する。
【解決手段】1つのコンピュータ12と、少なくとも1つの通信ネットワーク14と、を備える無線通信システム10において、ベース無線装置16と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置18は、ベース無線装置16への送信が成功するまで、連続する複数の送受信周期の各々で信号の送信処理を実行する送受信処理部44と、送信処理の実行回数をカウントするカウント部46と、カウント部のカウント値Nが所定回数以上の場合は、次の送受信周期で送信処理を実行するか待機するかを所定規則に従って選択する送信選択部48と、送信選択部48により待機が選択された場合は、送受信処理部44による送信処理を禁止させる送信禁止部50と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース無線装置と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置であって、
前記ベース無線装置への送信が成功するまで、連続する複数の前記送受信周期の各々で信号の送信処理を実行する送受信処理部と、
前記送信処理の実行回数をカウントするカウント部と、
前記カウント部のカウント値が所定回数以上の場合は、次の前記送受信周期で前記送信処理を実行するか待機するかを所定規則に従って選択する送信選択部と、
前記送信選択部により待機が選択された場合は、前記送受信処理部による前記送信処理を禁止させる送信禁止部と、
を備える、リモート無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリモート無線装置であって、
各々の前記送受信周期内に設けられて前記送信処理の開始タイミングが異なる複数の送信スロットの中から1つの前記送信スロットを選択するスロット選択部を備え、
前記送受信処理部は、前記スロット選択部が選択した前記送信スロットを使用して前記送信処理を実行する、リモート無線装置。
【請求項3】
請求項2に記載のリモート無線装置であって、
前記送受信処理部は、前記送信処理として、クリアチャネル評価と、信号の送信と、前記ベース無線装置から送信される確認応答の受信と、を行い、前記クリアチャネル評価を行うことによってチャネルが使用されていることを検知した場合、又は、前記確認応答を受信しない場合に、送信が失敗したと判定する、リモート無線装置。
【請求項4】
請求項2に記載のリモート無線装置であって、
前記スロット選択部は、前記カウント値が所定の判定回数未満の場合は、前記送信スロットを第1規則に従って選択し、前記カウント値が前記判定回数以上の場合は、前記送信スロットを第2規則に従って選択する、リモート無線装置。
【請求項5】
ベース無線装置と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置の通信方法であって、
前記ベース無線装置への送信が成功するまで、連続する複数の前記送受信周期の各々で信号の送信処理を実行する送受信処理ステップと、
前記送信処理の実行回数をカウントするカウントステップと、
前記カウントステップのカウント値が所定回数以上の場合は、次の前記送受信周期で前記送信処理を実行するか待機するかを所定規則に従って選択する送信選択ステップと、
前記送信選択ステップで待機が選択された場合は、前記送信処理を禁止させる送信禁止ステップと、
を備える、リモート無線装置の通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載のリモート無線装置の通信方法であって、
各々の前記送受信周期内に設けられて前記送信処理の開始タイミングが異なる複数の送信スロットの中から1つの前記送信スロットを選択するスロット選択ステップを備え、
前記送受信処理ステップでは、前記スロット選択ステップで選択された前記送信スロットを使用して前記送信処理を実行する、リモート無線装置の通信方法。
【請求項7】
請求項6に記載のリモート無線装置の通信方法であって、
前記送受信処理ステップでは、前記送信処理として、クリアチャネル評価と、信号の送信と、前記ベース無線装置から送信される確認応答の受信と、を行い、前記クリアチャネル評価を行うことによってチャネルが使用されていることを検知した場合、又は、前記確認応答を受信しない場合に、送信が失敗したと判定する、リモート無線装置の通信方法。
【請求項8】
請求項6に記載のリモート無線装置の通信方法であって、
前記スロット選択ステップでは、前記カウント値が所定の判定回数未満の場合は、前記送信スロットを第1規則に従って選択し、前記カウント値が前記判定回数以上の場合は、前記送信スロットを第2規則に従って選択する、リモート無線装置の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース無線装置と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置及びリモート無線装置の通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンピュータと、複数の通信ネットワークと、を備える産業用の無線通信システムが示される。コンピュータは、複数のロボット等を管理及び制御する。各々の通信ネットワークは、1つのベース無線装置と、複数のリモート無線装置と、を備える。ベース無線装置は、コンピュータに接続される。一方、リモート無線装置は、センサ及びアクチュエータに接続される。センサ及びアクチュエータは、ロボット等に設けられる。例えば、ベース無線装置は、各々のリモート無線装置に対して、アクチュエータの動作を指示するための信号を送信する。一方、各々のリモート無線装置は、ベース無線装置に対して、センサの検出結果等を示す信号を送信する。特許文献1の無線通信システムにおいて、ベース無線装置と複数のリモート無線装置は、所定の周期で周波数をホッピングする。これにより、ベース無線装置と周囲の無線機器との電波干渉が防止される。同様に、周波数がホッピングされると、リモート無線装置と周囲の無線機器との電波干渉が防止される。周波数のホッピングの周期を送受信周期と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の通信ネットワークにおいて、複数のリモート無線装置は、周波数のホッピングを、互いに同じホッピングパターン及び同じ送受信周期で行う。このため、各々のリモート無線装置が送信する信号の衝突が発生しやすい。信号が衝突した場合、各々のリモート無線装置は、信号の再送信を行う。このような場合に、各々のリモート無線装置が、同じ周波数の信号を同じ周期で連続して再送信すると、信号の衝突が繰り返し発生する。すると、各々のリモート無線装置の送信が完了するまでに長い時間がかかる。その結果、無線通信システムの通信速度が低下し、ロボット等の処理能力が低下する。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ベース無線装置と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置であって、前記ベース無線装置への送信が成功するまで、連続する複数の前記送受信周期の各々で信号の送信処理を実行する送受信処理部と、前記送信処理の実行回数をカウントするカウント部と、前記カウント部のカウント値が所定回数以上の場合は、次の前記送受信周期で前記送信処理を実行するか待機するかを所定規則に従って選択する送信選択部と、前記送信選択部により待機が選択された場合は、前記送受信処理部による前記送信処理を禁止させる送信禁止部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、ベース無線装置と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置の通信方法であって、前記ベース無線装置への送信が成功するまで、連続する複数の前記送受信周期の各々で信号の送信処理を実行する送受信処理ステップと、前記送信処理の実行回数をカウントするカウントステップと、前記カウントステップのカウント値が所定回数以上の場合は、次の前記送受信周期で前記送信処理を実行するか待機するかを所定規則に従って選択する送信選択ステップと、前記送信選択ステップで待機が選択された場合は、前記送信処理を禁止させる送信禁止ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベース無線装置に送信する信号の衝突回数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1実施形態の無線通信システムの機能ブロックを示す図である。
【
図3】第1実施形態の主処理を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態における送信形態の一例を示す図である。
【
図6】第2実施形態の無線通信システムの機能ブロックを示す図である。
【
図7】1回の送受信周期で送信スロットを示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態の主処理を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態における送信形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1 第1実施形態]
[1-1 無線通信システム10]
図1は、無線通信システム10の構成を示す図である。
図2は、第1実施形態の無線通信システム10の機能ブロックを示す図である。産業用の無線通信システム10は、1つのコンピュータ12と、少なくとも1つの通信ネットワーク14と、を備える。1つの通信ネットワーク14は、1つのベース無線装置16と、複数のリモート無線装置18と、を備える。産業設備には、図示しない1又は複数のロボット等が設けられる。
【0011】
コンピュータ12は、1又は複数のロボット等の監視及び制御を行う。コンピュータ12は、例えば、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)を有しても良い。コンピュータ12は、有線又は無線で送受信を行うためのインターフェース(不図示)を備える。コンピュータ12は、インターフェースを介してベース無線装置16に信号を送信する。また、コンピュータ12は、インターフェースを介してベース無線装置16から送信される信号を受信する。
【0012】
1又は複数のロボット等は、アクチュエータとセンサとを備える。アクチュエータは、コンピュータ12の指示に従って動作する。センサは、ロボットの動作を検知する。本明細書では、センサとアクチュエータをまとめてS/A20とも称する。アクチュエータは、ベース無線装置16及びリモート無線装置18を介して、コンピュータ12から送信される制御信号を受信する。センサは、ベース無線装置16及びリモート無線装置18を介して、検出結果を示すセンサ信号をコンピュータ12に送信する。
【0013】
[1-2 ベース無線装置16]
図2で示されるように、ベース無線装置16は、ベース演算部22と、ベース記憶部24と、ベース通信部26と、ベースインターフェース28と、を備える。
【0014】
ベース演算部22は、処理回路を有する。処理回路は、CPU等のプロセッサであっても良い。処理回路は、ASIC、FPGA等の集積回路であっても良い。プロセッサは、ベース記憶部24に記憶されるプログラムを実行することによって各種の機能を有する。例えば、ベース演算部22は、ベースインターフェース28を使用して、コンピュータ12から信号を受信する処理を行う。また、ベース演算部22は、ベースインターフェース28を使用して、コンピュータ12に信号を送信する処理を行う。また、ベース演算部22は、ベース通信部26を使用して複数のリモート無線装置18から信号を受信する処理を行う。また、ベース演算部22は、ベース通信部26を使用して、複数のリモート無線装置18に信号を送信する処理を行う。また、ベース演算部22は、ホッピング情報に基づいて、リモート無線装置18との通信で使用するチャネルの周波数を切り替える。
【0015】
ベース記憶部24は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを有する。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。揮発性メモリは、例えば外部から取得したデータ及びベース演算部22が演算したデータ等を記憶する。不揮発性メモリは、例えば所定のプログラム及び所定の数値等を記憶する。なお、ベース記憶部24は、リモート無線装置18と共通のホッピング情報を記憶する。ホッピング情報は、ホッピングパターンの情報、及び、送受信周期の情報を含む。ベース記憶部24の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられていても良い。
【0016】
ベース通信部26は、通信回路を有する。通信回路は、送信回路と受信回路を含む。ベース通信部26は、リモート無線装置18に信号を送信する。また、ベース通信部26は、リモート無線装置18が送信する信号を受信する。
【0017】
ベースインターフェース28は、コンピュータ12と有線通信を行うための入出力インターフェースを有する。
【0018】
[1-3 リモート無線装置18]
図2で示されるように、リモート無線装置18は、リモート演算部32と、リモート記憶部34と、リモート通信部36と、リモートインターフェース38と、を備える。
【0019】
リモート演算部32は、処理回路を有する。処理回路は、CPU等のプロセッサであっても良い。処理回路は、ASIC、FPGA等の集積回路であっても良い。リモート演算部32は、ベース記憶部24に記憶されるプログラムを実行することによって各種の機能を有する。例えば、リモート演算部32は、周波数切替部42、送受信処理部44、カウント部46、送信選択部48、送信禁止部50、及び、入出力制御部52として機能する。
【0020】
周波数切替部42は、ホッピング情報に基づいて、リモート通信部36が使用するチャネルの周波数を切り替える。ホッピング情報は、リモート記憶部34に予め記憶される。
【0021】
送受信処理部44は、リモート通信部36の送信回路を使用して、ベース無線装置16に信号を送信する処理を行う。また、送受信処理部44は、リモート通信部36の受信回路を使用して、ベース無線装置16が送信する信号を受信する処理を行う。送受信処理部44は、1回の送受信周期で1パケットの信号を送信する。送受信処理部44は、1パケットの信号を送信する際に、一連の送信処理(
図4)を行う。送信処理には、クリアチャネル評価(CCA)と、信号を送信する処理と、ベース無線装置16から送信される確認応答(ACK)を受信する処理と、が含まれる。
【0022】
カウント部46は、1パケット分の信号の送信が開始されてから、送信が成功するまでの間に実行される送信処理の回数をカウントする。
【0023】
送信選択部48は、カウント部46のカウント値Nが所定回数を超えた場合に、次の送受信周期で送信処理を実行するか待機するかを選択する。送信選択部48は、選択を所定規則に従って行う。所定規則は、リモート記憶部34に記憶される。所定規則は、送信と待機の選択順序を決めた情報であっても良い。また、所定規則は、ランダムに選択を行うためのアルゴリズム、例えば擬似乱数列を生成するアルゴリズム等であっても良い。
【0024】
送信禁止部50は、送信選択部48により待機が選択された場合に、送受信処理部44による送信処理を禁止させる。
【0025】
入出力制御部52は、リモートインターフェース38を使用して、S/A20に対して制御信号を送信する処理を行う。また、入出力制御部52は、リモートインターフェース38を使用して、S/A20が送信するセンサ信号を受信する処理を行う。
【0026】
リモート記憶部34は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを有する。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。揮発性メモリは、例えば外部から取得したデータ及びリモート演算部32が演算したデータ等を記憶する。不揮発性メモリは、例えば所定のプログラム及び所定の数値等を記憶する。なお、リモート記憶部34は、ベース無線装置16と共通のホッピング情報を記憶する。ホッピング情報は、ホッピングパターンの情報、及び、送受信周期の情報を含む。リモート記憶部34の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられていても良い。
【0027】
リモート通信部36は、通信回路を有する。通信回路は、送信回路と受信回路を含む。リモート通信部36は、ベース無線装置16に信号を送信する。また、リモート通信部36は、ベース無線装置16が送信する信号を受信する。
【0028】
リモートインターフェース38は、S/A20と有線通信を行うための入出力インターフェースを有する。リモートインターフェース38は、S/A20と近距離無線通信を行うための無線インターフェースを有しても良い。
【0029】
[1-4 リモート無線装置18で行われる処理]
[A 主処理]
リモート無線装置18が信号を送信する際に実行する主処理を説明する。
図3は、第1実施形態の主処理を示すフローチャートである。リモート演算部32は、
図3で示される主処理を送受信周期毎に実行する。なお、1回目の主処理が実行される前に、カウント部46は、カウント値Nをゼロにする。カウント値Nは、1パケット分の信号の送信が開始されてから、送信が成功するまでに実行される送信処理の回数を示す。
【0030】
ステップS1において、周波数切替部42は、リモート記憶部34に記憶されるホッピングパターンに従って、チャネルの周波数を切り替える。ステップS1が終了すると、処理はステップS2に移行する。
【0031】
ステップS2において、送受信処理部44は、コンピュータ12に伝達すべき情報(伝達情報)があるか否かを判定する。伝達情報は、例えばS/A20から取得したセンサ信号等である。伝達情報がある場合(ステップS2:YES)、処理はステップS3に移行する。一方、伝達情報がない場合(ステップS2:NO)、今回の送受信周期における処理は終了する。
【0032】
ステップS3において、カウント部46は、カウント値Nと所定回数(ここでは5回)とを比較する。所定回数は、連続して実行される送信処理の回数の上限値である。所定回数は、リモート記憶部34に予め記憶される。カウント値Nが所定回数以下である場合(ステップS3:YES)、処理はステップS4に移行する。一方、カウント値Nが所定回数よりも大きい場合(ステップS3:NO)、処理はステップS7に移行する。
【0033】
処理がステップS3又は後述するステップS8からステップS4に移行した場合、送受信処理部44は、
図4で示される送信処理を実行する。送受信処理部44は、送信処理において、ベース無線装置16に伝達情報を示す信号を送信するための一連の処理を実行する。ステップS4が終了すると、処理はステップS5に移行する。
【0034】
ステップS5において、送受信処理部44は、ステップS4で実行した送信処理において、信号送信が成功したか否かを判定する。信号送信が成功した場合(ステップS5:YES)、処理はステップS6に移行する。一方、信号送信が失敗した場合(ステップS5:NO)、処理はステップS9に移行する。
【0035】
ステップS6において、カウント部46はカウント値Nをクリアする。ステップS6が終了した時点で、リモート無線装置18が1パケットの信号を送信する処理は終了する。
【0036】
処理がステップS3からステップS7に移行した場合、送信選択部48は、送信処理を実行するか、又は、送信処理を実行せずに待機するか、のいずれかを、選択する。送信選択部48は、選択を所定規則に従って行う。ステップS7が終了すると、処理はステップS8に移行する。
【0037】
送信選択部48が送信を選択した場合(ステップS8:送信)、処理はステップS4に移行する。この場合、送受信処理部44は、
図4で示される送信処理を実行する。一方、送信選択部48が待機を選択した場合(ステップS8:待機)、送信禁止部50は、今回の送受信周期における送信処理を禁止する。また、送受信処理部44は、送信処理を行わずに待機する。つまり、リモート無線装置18は、ベース無線装置16に信号を送信する機会を、他のリモート無線装置18に譲る。このとき、1つのリモート無線装置18が送信処理を実行すれば、そのリモート無線装置18からベース無線装置16への信号の送信が成功する。
【0038】
処理がステップS5からステップS9に移行した場合、カウント部46は、カウント値Nに1を加算する。ステップS9の終了後、今回の送受信周期における処理は終了する。
【0039】
[B 送信処理]
図4は、送信処理を示すフローチャートである。
図3で示される主処理のステップS4では、以下で説明するステップS11~ステップS17の処理が行われる。以下で説明する送信処理には、CCAと、信号の送信と、ベース無線装置16から送信されるACKの受信及び確認と、が含まれる。
【0040】
ステップS11において、送受信処理部44は、CCAを行う。送受信処理部44は、その時点で選択されている自チャネルの周波数と同一の周波数を使用する電波を検知する。ステップS11が終了すると、処理はステップS12に移行する。
【0041】
ステップS12において、送受信処理部44は、CCAの実行結果に基づいて自チャネルの周波数が使用されているか否かを判定する。自チャネルの周波数が使用されていない場合(ステップS12:NO)、処理はステップS13に移行する。一方、自チャネルの周波数が使用されている場合(ステップS12:YES)、処理はステップS17に移行する。
【0042】
ステップS13において、送受信処理部44は、リモート通信部36を使用して、伝達情報を示す信号をベース無線装置16に送信する。ステップS13が終了すると、処理はステップS14に移行する。
【0043】
ステップS14において、送受信処理部44は、上限時間を限度にして、ベース無線装置16から送信されるACKを待つ。リモート通信部36がACKを受信すると、送受信処理部44はACKを検知する。このとき、送受信処理部44は、ACKが受信されたことを確認する。なお、上限時間は、送受信周期、即ち周波数ホッピングの周期によって決まる。送受信処理部44は、次の周波数に切り替わるタイミングまでの残り時間を上限時間とする。ステップS14が終了すると、処理はステップS15に移行する。
【0044】
ステップS15において、送受信処理部44は、ACKを検知したか否かを判定する。送受信処理部44がACKを検知した場合(ステップS15:YES)、処理はステップS16に移行する。一方、送受信処理部44がACKを検知しなかった場合(ステップS15:NO)、処理はステップS17に移行する。
【0045】
ステップS16において、送受信処理部44は、送信が成功したと判定する。ステップS16が終了すると、処理は、
図3で示されるステップS5に移行する。
【0046】
一方、処理がステップS12又はステップS15からステップS17に移行すると、送受信処理部44は、送信が失敗したと判定する。ステップS17が終了すると、処理は、
図3で示されるステップS5に移行する。
【0047】
[1-5 送信形態の一例]
図5は、第1実施形態における送信形態の一例を示す図である。
図5は、
図1で示される4つのリモート無線装置18が、ベース無線装置16に対する送信処理を同時に行った結果、信号の衝突が発生した状況を示す。ここでは、4つのリモート無線装置18を、リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)と称する。
【0048】
図5の(A)~(D)は、リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)を示す。
図5の1st、2nd、・・・、10thは、各々のリモート無線装置18で伝達情報の発生後に到来する1回目の送受信周期、2回目の送受信周期、・・・、10回目の送受信周期を示す。1回目の送受信周期~10回目の送受信周期は連続する。黒塗りの四角は、送受信処理部44が送信処理を実行したことを示す。白塗りの四角は、送受信処理部44が送信処理を実行せずに待機したことを示す。
【0049】
リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)の送受信処理部44は、カウント値Nが5を超えるまでは、送受信周期の度に送信処理を実行する。5回目の送受信周期が終了するまでは信号衝突が発生し、リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)が行う信号の送信は失敗する。リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)の送受信処理部44は、カウント値Nが5を超えた後に、送信処理を実行するか、又は、送信処理を実行せずに待機する。
図5で示される送信形態では、6回目の送受信周期で、リモート無線装置18(C)のみが送信処理を実行する。一方、リモート無線装置18(A)、リモート無線装置18(B)、リモート無線装置18(D)は待機する。このとき、信号の衝突は発生しない。このため、リモート無線装置18(C)が行う信号の送信は成功する。以降同様に、1つのリモート無線装置18のみが送信処理を実行した場合に、そのリモート無線装置18の送信は成功する。
【0050】
なお、使用頻度が高いS/A20に接続されるリモート無線装置18がある場合、そのリモート無線装置18の送信選択部48は、送信の選択をしやすくする所定規則を使用しても良い。この構成によれば、使用頻度が高いS/A20の伝達情報が、ベース無線装置16に伝達されやすくなる。
【0051】
このように、第1実施形態によれば、各々のリモート無線装置18が互いに送信機会を譲り合うことによって、ベース無線装置16に送信する信号の衝突回数が低減する。このため、各々のリモート無線装置18が実行する信号送信が早い段階で成功しやすくなる。その結果、信号の衝突に起因する通信ネットワーク14の通信速度の低下が抑制される。
【0052】
[2 第2実施形態]
第1実施形態と同様に、第2実施形態の通信ネットワーク14も産業用の無線通信システム10に設けられる。第2実施形態のリモート無線装置18は、第1実施形態のリモート無線装置18の機能に加えて、送信スロット56(
図7)を選択する機能を有する。
【0053】
[2-1 リモート無線装置18]
図6は、第2実施形態の無線通信システム10の機能ブロックを示す図である。第2実施形態のリモート無線装置18は、第1実施形態のリモート無線装置18の全構成を有する。第2実施形態のリモート無線装置18の構成のうち、第1実施形態のリモート無線装置18と共通する構成には、第1実施形態と同一の符号が付される。第2実施形態において、リモート演算部32は、スロット選択部54としても機能する。
【0054】
図7で示されるように、1回の送受信周期には、送信時間t1と、受信時間t2と、その他図示しない時間(送受信の切替時間等)と、が含まれる。送信時間t1は、送受信処理部44が信号を送信するときに使用する時間枠である。例えば、送信時間t1は2100[μsec]である。受信時間t2は、送受信処理部44がベース無線装置16から送信されるACKを受信するときに使用する時間枠である。例えば、受信時間t2は1300[μsec]である。送信時間t1には、送受信処理部44がCCAを行い且つ1パケットの信号を送信する時間よりも長い時間が設定される。
【0055】
スロット選択部54は、送信時間t1の間に、送信処理の開始タイミングが異なる複数の送信スロット56を設ける。例えば、
図7で示されるように、スロット選択部54は、CCAの時間分だけ開始タイミングが異なる複数の送信スロット56を設ける。送信時間t1が2100[μsec]、CCAに要する時間が200[μsec]、1パケットの信号を送信する時間が1300[μsec]である場合、スロット選択部54は、送信時間t1の間に4つの送信スロット56を設けることができる。なお、スロット選択部54は、送信時間t1に設ける送信スロット56の数を、CCAに要する時間、及び、1パケットの信号を送信する時間に応じて変えることができる。送信スロット56の数及び開始タイミングは、リモート記憶部34に予め記憶される。
【0056】
更に、スロット選択部54は、送信処理が行われる前に、複数の送信スロット56の中から1つの送信スロット56を任意の方法で選択する。例えば、スロット選択部54は、送信スロット56を所定規則に従って選択しても良い。所定規則は、送信スロット56の選択順序を決めた情報であっても良い。また、所定規則は、ランダムに選択を行うためのアルゴリズム、例えば擬似乱数列を生成するアルゴリズム等であっても良い。別の方法として、スロット選択部54は、カウント値Nが所定の判定回数未満の場合には、送信スロット56を第1規則に従って選択し、カウント値Nが判定回数以上の場合には、送信スロット56を第2規則に従って選択しても良い。この場合、第1規則は、送信スロット56の選択順序を決めた情報であり、第2規則は、ランダムに選択を行うためのアルゴリズム、例えば擬似乱数列を生成するアルゴリズム等であっても良い。所定規則、第1規則、及び、第2規則は、リモート記憶部34に予め記憶される。
【0057】
[2-2 リモート無線装置18で行われる処理]
図8は、第2実施形態の主処理を示すフローチャートである。リモート演算部32は、
図8で示される主処理を送受信周期毎に実行する。
図8で示される主処理は、ステップS24の処理が追加された点を除いて、
図3で示される主処理と実質的に同じである。ステップS24において、スロット選択部54は、送信スロット56を選択する。ステップS25において、送受信処理部44は、選択された送信スロット56を使用して送信処理を行う。
【0058】
[2-3 送信形態の一例]
図9は、第2実施形態における送信形態の一例を示す図である。
図9は、
図1で示される4つのリモート無線装置18が、ベース無線装置16に対する送信処理を同時に行った結果、信号の衝突が発生した状況を示す。ここでは、4つのリモート無線装置18を、リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)と称する。
【0059】
図5と同様に、
図9の(A)~(D)は、リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)を示す。
図9の1st、2nd、・・・、6thというのは、各々のリモート無線装置18で伝達情報の発生後に到来する1回目の送受信周期、2回目の送受信周期、・・・、6回目の送受信周期を示す。1回目の送受信周期~6回目の送受信周期は連続する。各回にある4つの四角は4つの送信スロット56を示す。4つの送信スロット56は、左から右に向かって送信タイミングが遅くなる。黒塗りの四角は、スロット選択部54によって選択され、送受信処理部44が使用した送信スロット56を示す。Xが付された四角は、スロット選択部54によって選択されない送信スロット56を示す。また、4つの白塗りの四角が並ぶ箇所は、送受信処理部44が送信処理を実行せずに待機したことを示す。
【0060】
1回目の送受信周期で、リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)の送受信処理部44は、1番目の送信スロット56を使用して送信処理を行う。この場合、信号衝突が発生し、リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)が行う信号の送信は失敗する。
【0061】
2回目の送受信周期で、リモート無線装置18(A)の送受信処理部44は、1番目の送信スロット56を使用して送信処理を実行する。リモート無線装置18(B)~リモート無線装置18(D)の送受信処理部44は、2番目の送信スロット56を使用して送信処理を実行する。リモート無線装置18(B)~リモート無線装置18(D)の送受信処理部44は、CCAでリモート無線装置18(A)の信号を検知する。このため、リモート無線装置18(B)~リモート無線装置18(D)の送受信処理部44は、信号を送信しない。このとき、信号の衝突は発生しない。このため、リモート無線装置18(A)の信号送信は成功する。
【0062】
また、第1実施形態と同様に、リモート無線装置18(A)~リモート無線装置18(D)の送受信処理部44は、カウント値Nが5を超えた後に、送信処理を実行するか、又は、送信処理を実行せずに待機する。
【0063】
なお、使用頻度が高いS/A20に接続されるリモート無線装置18がある場合、そのリモート無線装置18のスロット選択部54は、1番目の送信スロット56の選択をしやすくしても良い。このとき、スロット選択部54は、1番目の送信スロット56の選択をしやすくする規則を使用しても良い。この構成によれば、使用頻度が高いS/A20の伝達情報が、ベース無線装置16に伝達されやすくなる。
【0064】
このように、第2実施形態によれば、各々のリモート無線装置18の送信タイミングがずれるため、ベース無線装置16に送信する信号の衝突回数が低減する。このため、各々のリモート無線装置18が実行する信号送信が早い段階で成功しやすくなる。その結果、信号の衝突に起因する通信ネットワーク14の通信速度の低下が抑制される。
【0065】
[3 実施形態から得られる技術的思想]
上記実施形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0066】
本発明の第1態様は、ベース無線装置16と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置18であって、前記ベース無線装置16への送信が成功するまで、連続する複数の前記送受信周期の各々で信号の送信処理を実行する送受信処理部44と、前記送信処理の実行回数をカウントするカウント部46と、前記カウント部のカウント値Nが所定回数以上の場合は、次の前記送受信周期で前記送信処理を実行するか待機するかを所定規則に従って選択する送信選択部48と、前記送信選択部48により待機が選択された場合は、前記送受信処理部44による前記送信処理を禁止させる送信禁止部50と、を備える。
【0067】
本発明の第1態様において、各々の前記送受信周期内に設けられて前記送信処理の開始タイミングが異なる複数の送信スロット56の中から1つの前記送信スロット56を選択するスロット選択部54を備え、前記送受信処理部44は、前記スロット選択部54が選択した前記送信スロット56を使用して前記送信処理を実行しても良い。
【0068】
本発明の第1態様において、前記送受信処理部44は、前記送信処理として、クリアチャネル評価と、信号の送信と、前記ベース無線装置16から送信される確認応答の受信と、を行い、前記クリアチャネル評価を行うことによってチャネルが使用されていることを検知した場合、又は、前記確認応答を受信しない場合に、送信が失敗したと判定しても良い。
【0069】
本発明の第1態様において、前記スロット選択部54は、前記カウント値Nが所定の判定回数未満の場合は、前記送信スロット56を第1規則に従って選択し、前記カウント値Nが前記判定回数以上の場合は、前記送信スロット56を第2規則に従って選択しても良い。
【0070】
本発明の第2態様は、ベース無線装置16と送受信周期で信号の送受信を行うリモート無線装置18の通信方法であって、前記ベース無線装置16への送信が成功するまで、連続する複数の前記送受信周期の各々で信号の送信処理を実行する送受信処理ステップと、前記送信処理の実行回数をカウントするカウントステップと、前記カウントステップのカウント値Nが所定回数以上の場合は、次の前記送受信周期で前記送信処理を実行するか待機するかを所定規則に従って選択する送信選択ステップと、前記送信選択ステップで待機が選択された場合は、前記送信処理を禁止させる送信禁止ステップと、を備える。
【0071】
本発明の第2態様において、各々の前記送受信周期内に設けられて前記送信処理の開始タイミングが異なる複数の送信スロット56の中から1つの前記送信スロット56を選択するスロット選択ステップを備え、前記送受信処理ステップでは、前記スロット選択ステップで選択された前記送信スロット56を使用して前記送信処理を実行しても良い。
【0072】
本発明の第2態様において、前記送受信処理ステップでは、前記送信処理として、クリアチャネル評価と、信号の送信と、前記ベース無線装置16から送信される確認応答の受信と、を行い、前記クリアチャネル評価を行うことによってチャネルが使用されていることを検知した場合、又は、前記確認応答を受信しない場合に、送信が失敗したと判定しても良い。
【0073】
本発明の第2態様において、前記スロット選択ステップでは、前記カウント値Nが所定の判定回数未満の場合は、前記送信スロット56を第1規則に従って選択し、前記カウント値Nが前記判定回数以上の場合は、前記送信スロット56を第2規則に従って選択しても良い。
【符号の説明】
【0074】
16…ベース無線装置 18…リモート無線装置
44…送受信処理部 46…カウント部
48…送信選択部 50…送信禁止部
54…スロット選択部 56…送信スロット