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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178777
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】記録装置とその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/325 20060101AFI20221125BHJP
   B41J 33/22 20060101ALI20221125BHJP
   B41J 25/308 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J33/22
B41J25/308
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085812
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊島 慎二
(72)【発明者】
【氏名】川村 巌
(72)【発明者】
【氏名】高塚 厚暢
【テーマコード(参考)】
2C064
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C064CC06
2C064FF03
2C064FF07
2C065AA01
2C065DA03
2C065DA17
2C065DA22
2C065DA28
2C065DA29
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068GK01
2C068GK04
2C068GK17
2C068GK18
(57)【要約】
【課題】プラテンローラとインクリボンそれぞれを独立して駆動制御する必要があるため、モータやアクチュエータが必要となり機構が複雑になり、コストアップや装置の大型化につながる。
【解決手段】プラテンローラに給送される記録媒体と、インクリボンカセットから繰り出されて巻き取られるインクリボンとを重ね合わせて搬送し、記録ヘッドを前記プラテンローラに圧接して記録を行う記録装置であって、記録ヘッドをプラテンローラに当接させる第1位置と、前記記録ヘッドを前記プラテンローラから離間させる第2位置との間で前記記録ヘッドを移動させ、前記記録ヘッドが前記第2位置に移動している状態で、インクリボンを巻取るリール軸と係合して前記リール軸を回転不能にする。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラに給送される記録媒体と、インクリボンカセットから繰り出されて巻き取られるインクリボンとを重ね合わせて搬送し、記録ヘッドを前記プラテンローラに圧接して記録を行う記録装置であって、
記録ヘッドをプラテンローラに当接させる第1位置と、前記記録ヘッドを前記プラテンローラから離間させる第2位置との間で前記記録ヘッドを移動させる移動手段と、
前記移動手段により前記記録ヘッドが前記第2位置に移動している状態で、インクリボンを巻取るリール軸と係合して前記リール軸を回転不能にする規制手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
第1モータを、更に有し、
前記記録媒体を搬送する搬送ローラ、及び前記インクリボンカセットのインクリボンを巻き取るためのリール軸は、前記第1モータの回転による駆動されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記移動手段は、
第2モータの回転に応じて回転するヘッドカムと、
前記記録ヘッドを支持する支持部材に設けられ、前記ヘッドカムに当接するヘッドカムフォロワとを有し、
前記ヘッドカムの回転角度に応じて前記ヘッドカムフォロワの位置が変わることで前記記録ヘッドを前記第1位置と前記第2位置との間で移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記記録ヘッドの支持部材に取り付けられたラッチ部材を有し、前記記録ヘッドが前記第2位置に移動している状態で、前記ラッチ部材は前記リール軸に設けられたラッチギアと係合して前記リール軸を回転不能にすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1モータの回転は、前記回転を前記リール軸に伝達するための駆動伝達ギアからトルクリミッタを介して前記リール軸に伝達されることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1モータは更に、前記プラテンローラも回転駆動しており、前記プラテンローラと前記搬送ローラによる前記記録媒体の搬送速度はほぼ等しいことを特徴とする請求項2又は5に記載の記録装置。
【請求項7】
記録済の記録媒体を切断する切断手段を、更に有することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項8】
前記切断手段は、前記第2モータの回転により駆動されることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドは、サーマルヘッドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
プラテンローラに給送される記録媒体と、インクリボンカセットから繰り出されて巻き取られるインクリボンとを重ね合わせて搬送し、記録ヘッドを前記プラテンローラに圧接して記録を行う記録装置を制御する制御方法であって、
記録ヘッドをプラテンローラに当接させる第1位置と、前記記録ヘッドを前記プラテンローラから離間させる第2位置との間で前記記録ヘッドを移動させる移動工程と、
前記移動工程で前記記録ヘッドが前記第2位置に移動している状態で、インクリボンを巻取るリール軸と係合して前記リール軸を回転不能にする工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置とその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクリボンを用いる熱転写記録装置では、給送される記録紙と、リボンカセットから繰り出されて巻き取られるインクリボンとをプラテンローラ上で重ね合わせて搬送する。そして、サーマルヘッドをプラテンローラに圧接することで、インクリボンのインクを記録紙に転写して記録する構成となっている。また、こうして記録された記録紙は、記録紙の排出位置まで所定量搬送されて排出される。その際、従来の記録装置では、プラテンローラの回転と、インクリボンの巻き取り駆動は同調して行われ、プラテンローラによる記録紙の搬送動作に連動してインクリボンの送り動作が行われるのが一般的である。
【0003】
また、上記従来のインクリボンの搬送方式では、記録紙の排出動作や、記録紙の余白領域のように記録せずに記録紙が搬送される場合にも、プラテンローラによる記録紙の搬送動作に連動してインクリボンが無駄に送られることになる。このため、インクリボンの消費量が増大し、ランニングコストが非常に割高になってしまうという問題点があった。
【0004】
そこでインクリボンの消費を節約するために、以下のような手法が提案されている。
【0005】
特許文献1には、プラテンローラとインクリボンそれぞれに独立した駆動機構を備え、プラテンローラに対してサーマルヘッドを接離可能な可動式の構造とする。そして記録を行わないときは、プラテンローラからサーマルヘッドを浮上させ、プラテンローラを回転駆動したままで、インクリボンの巻取駆動を停止する方式が提案されている。また特許文献2には、インクリボンの巻き取り駆動に電磁クラッチを介設することで、インクリボンを巻き取る回転軸をロックする方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-123495号公報
【特許文献2】特開平06-155871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の方式では、プラテンローラとインクリボンそれぞれを独立して駆動制御する必要があるため、モータやアクチュエータが必要となり機構が複雑になり、コストアップや装置の大型化につながるという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題の少なくとも一つを解決することにある。
【0009】
本発明の目的は、装置の大型化を招くことなく、インクリボンの無駄を削減できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る記録装置は以下のような構成を備える。即ち、
プラテンローラに給送される記録媒体と、インクリボンカセットから繰り出されて巻き取られるインクリボンとを重ね合わせて搬送し、記録ヘッドを前記プラテンローラに圧接して記録を行う記録装置であって、
記録ヘッドをプラテンローラに当接させる第1位置と、前記記録ヘッドを前記プラテンローラから離間させる第2位置との間で前記記録ヘッドを移動させる移動手段と、
前記移動手段により前記記録ヘッドが前記第2位置に移動している状態で、インクリボンを巻取るリール軸と係合して前記リール軸を回転不能にする規制手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置の大型化を招くことなく、リボンの無駄を削減できるという効果がある。
【0012】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】本発明の一実施形態に係る記録装置1の埃侵入防止カバーを取り外した平面図。
図2】実施形態に係るプリンタの記録媒体搬送経路及び搬送手段を説明するための拡大図。
図3】実施形態に係るプリンタにおいて、記録ヘッドがプラテンローラに当接してニップを形成するニップ位置(第1位置)を表す図。
図4】実施形態に係るプリンタの記録のための駆動機構を説明する図で、記録ヘッドが退避位置(第2位置)にある状態を示す図。
図5】実施形態に係るプリンタにおいて、記録ヘッドが第2位置にあり、切断部が退避位置にある状態を示す図。
図6】実施形態に係るプリンタにおいて、記録ヘッドがニップ位置(第1位置)、切断部が退避位置にある状態を示す図。
図7】実施形態に係るプリンタにおいて、図6の記録ヘッドが第1位置にある状態で切断部が切断位置(半切り)に移動した状態を示す図。
図8】実施形態に係るプリンタにおいて、図6の記録ヘッドが第2位置にある状態で切断部が切断位置(全切り)に移動した状態を示す図。
図9】実施形態に係るプリンタにおいて、切断部及び記録ヘッドを支持する機構を説明する図。
図10図3及び図4のように、記録ヘッド支持部材を上下移動させて記録ヘッドの移動を制御するヘッドカム42を説明する図。
図11】実施形態に係るプリンタの切断部のカッター刃受け部材の斜視図。
図12】実施形態に係るプリンタの制御部の構成を説明するブロック図。
図13】実施形態に係るプリンタによる記録(印刷)処理を説明すするフローチャー。
図14】ラッチ部材の拡大図。
図15】記録ヘッド支持部材に対するラッチ部材の組付け構成を説明する図。
図16】ラッチ部材に押圧力が働いていない場合の、ラッチ部材の位置を示す図(A)と、図16(A)の状態のラッチ部材に対して、上方向に押圧した状態を示す図(B)。
図17】実施形態に係るプリンタにおいて、インクリボンカセット内に収められているインクリボンを巻き取っているリールを駆動するためのリール軸の構成を説明する図。
図18】実施形態に係るインクリボンカセットの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これら複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る記録装置1(以下、プリンタ1とも言う)の平面図で、説明しない埃侵入防止カバーを取り外した図である。
【0016】
実施形態に係るプリンタ1は例えば熱転写プリンタで、チューブやラベルといった記録媒体を搬送して記録(印刷)し、ノートタイプのコンピュータと同様に、持ち運び可能である。このプリンタ1は、大別して、供給ローラ2a及び2bとプラテンローラ3と搬送ローラ4等を有する記録媒体搬送手段、キーボード等を備えた操作部13、表示ユニットや表示制御部等を備えた表示部14を有する。更にプリンタ1は、記録媒体へ記録する記録ヘッド(サーマルヘッド)6を備えた記録部20、記録部20で記録された記録媒体に切断処理を施す切断部30、及びこれら各部を制御する制御部1200(図12)を備えている。
【0017】
記録部20から見た記録媒体の搬送方向上流には、記録媒体を記録部20へ案内するガイドユニット10(詳細不図示)が着脱可能で、かつ記録媒体の種類に応じて交換可能なように設けられている。
【0018】
図1において記録部20のY方向下側には、プラテンローラ3と記録ヘッド6との間に、テープ状のインクリボンを這わすようにセット可能なインクリボンカセット8が着脱及び交換可能に装着されている。
【0019】
次に記録媒体搬送手段について図2を参照して説明する。
【0020】
図2は、実施形態に係るプリンタ1の記録媒体搬送経路及び搬送手段を説明するための拡大図である。図2において、太点線は、記録媒体の大まかな搬送経路を示し、供給ローラ2a及び2b、プラテンローラ3、搬送ローラ4を含む搬送手段によってX軸の左方向へ記録媒体が搬送される。供給ローラ2a、プラテンローラ3、搬送ローラ4のローラ外周部は、ゴム等の高摩擦部材で覆われている。記録媒体は搬送手段で搬送されながら、図2で示す記録位置で記録が行が行われ、そのまま搬送されて切断部30に到達すると切断される。尚、図2において、45は、インクリボンカセット8のインクリボンを巻き取るリール軸を示している。
【0021】
操作部13は、ファンクションキー、文字・数字・記号キー、スペースキー、変換キー、十字方向キー、リターンキー等を備え、オペレータはこれらのキー操作をすることで記録媒体の種類、サイズ、記録条件等を入力して記録情報を設定することができる。
【0022】
表示部14の表示ユニットは、入力モード等を表示する各種情報の表示行、操作部13から入力された文字、数字、記号を表示する文字情報の表示行、文字サイズ等を表示するパラメータ表示行の3行に分割されている。
【0023】
各種情報の表示行は、以下の表示を行うことができる。操作部13を介して、英数、ローマ字、ひらがなのいずれかで入力するかを表示(選択)する入力モード表示、操作部13を介して、挿入又は上書きのいずれかで入力するかを表示する挿入/上書きモード表示(編集モード表示)を表示できる。更に、「記録媒体の種類」の表示、複数ページの記録を1回の記録動作で行うときにページ間カットをどのように行うのかの「モード指令」(全切り、半切りモードカット指令の別、及び切断個数)の表示を含む。更に、チューブ1本分(ラベル1枚分)の長さを示す「カット長」、文字の位置がセンタリングか左寄せかを示す「文字配置」及びチューブの肥大端から先頭の文字までを示す「余白」を表示するカット長/文字配置/余白表示がある。更に、現在表示されているページの前に別のページがある場合に表示される前ページ表示、現在表示されているページの後に別のページがある場合に表示される次ページ表示、及び電源投入されていることを表示する電源表示、等がある。
【0024】
また、パラメータ表示行は、以下の表示を行うことができる。現在何ページ目が表示されているかを数字で表示するページ表示、記録の向きを「横向き/横書き」、「縦向き/縦書き」、「縦向き/横書き」のいずれかで行うかを表示する記録向きの表示がある。更に、文字に枠をつける場合に、選択した枠囲みの形を表示する行数表示、選択した文字間隔を表示する文字間隔表示、現在表示されている文字が何ページに記録されるかを表示する連続記録表示等がある。
【0025】
文字情報の表示行には、操作部13を介して入力された文字(入力された文字データが所定の処理を経て表示された文字)の文字列が表示される。尚、文字情報の表示行では、オペレータが入力しようとする箇所にカーソルが表示される。
【0026】
次に記録部20周辺の内部構成について図3図5を参照して説明する。
【0027】
図3図5は、実施形態に係るプリンタ1の搬送手段、記録部20、切断部30の駆動機構を説明する図である。
【0028】
メインモータ5は、説明しないアイドラギアを介して、供給ローラ2a、プラテンローラ3、搬送ローラ4、リール軸45へ駆動を伝達している。各部における搬送速度の関係は、供給ローラ2a<プラテンローラ3=搬送ローラ4<リール軸45となっている。
【0029】
インクリボンには、インクリボンカセット8内で、搬送方向とは逆方向へ負荷をかけるバックテンションが掛けられており、リール軸45が回転することでインクリボンが巻き取られる。このリール軸45は、内部にトルクリミッタを具備しているため、常にインクリボンを張った状態でインクリボンを巻取ることができる構成になっている。
【0030】
図9は、実施形態に係るプリンタ1において、切断部30及び記録ヘッド6を支持する機構を説明する図である。
【0031】
記録ヘッド6は、図9に示すヘッドカムフォロワ43を有する記録ヘッド支持部材49に固定されており、図9のZ方向に所定数の発熱素子を配列している。
【0032】
記録ヘッド6の位置移動について図3及び図4を参照して説明する。
【0033】
図3は、実施形態に係るプリンタ1において、記録ヘッド6がプラテンローラ3に当接してニップを形成するニップ位置(以降、第1位置)を表す図である。
【0034】
また図4は、実施形態に係るプリンタ1において、記録ヘッド6がプラテンローラ3から離れてニップが解除される退避位置(以降、第2位置)であることを表す図である。
【0035】
サブモータ9は、説明しないアイドラギアを介して、ヘッドカム42へ駆動を伝達する。これによりヘッドカム42が回転し、その回転角度に応じてヘッドカムフォロワ44の位置が変わることで、記録ヘッド支持部材49を移動させる。記録ヘッド支持部材49はヘッドバネ47によって常に略Y軸の上方向へ付勢されており、ヘッドカムフォロワ44が常にヘッドカム42に当接する方向に付勢される。第1位置は、図3に示すように記録ヘッド6がプラテンローラ3に当接して記録ヘッド支持部材49が停止している。この状態では、ヘッドカムフォロワ44がヘッドカム42のカム曲面に追従できない状態となり、ヘッドバネ47の荷重を、記録ヘッド6を介してプラテンローラ3へ伝えることが可能な状態になっている。これによって、記録ヘッド6がインクリボンに当接してインクを記録媒体に転写することができる。第2位置は、図4に示すようにヘッドカム42のカム面によってヘッドカムフォロワ44が押し下げられ、記録ヘッド支持部材49を介して記録ヘッド6がプラテンローラ3から離された状態である。
【0036】
図10は、図3及び図4のように、記録ヘッド支持部材49を上下移動させて記録ヘッド6の移動を制御するヘッドカム42を説明する図である。
【0037】
図3に示す第1位置への移動は、図10に示すヘッドカム42に形成されたフラグ51bを透過型のカムセンサ50(図9)が検知し(透過→遮光)、その検知後、所定数、サブモータ9をパルス駆動して停止するようにして制御される。
【0038】
図4に示す第2位置への移動は、第1位置への移動と同様に、ヘッドカム42に形成されたフラグ51aを透過型のカムセンサ50が検知し(遮光→透過)、その検知後、所定数、サブモータ9をパルス駆動して停止させるようにして制御される。
【0039】
次に図9を参照して切断部30について説明する。
【0040】
ヘッドカム42と同軸上にカップリングされて同一回転するカッターカム41が、切断部30が有するカッターカムフォロワ43と当接し、切断部30を上下に移動させる構成となっている。切断部30は、カッター刃48を備えており、切断部30へサブモータ9の駆動が伝達されて上下(Y軸方向)へ移動することでカッター刃48がカッター刃受け部材46と当接し、チューブやラベル等に切断処理を施している。
【0041】
図11は、実施形態に係るプリンタ1の切断部30のカッター刃受け部材46の斜視図である。
【0042】
カッター刃受け部材46は、平滑面である全切り面46aと、一部微小な凹形状を有した面である半切り面46bの2面を有している。切断処理時にこの2面を切り替えることで半切り又は全切りが可能となっている。尚、実施形態では、半切り面46bを形成するためにSUS材質の薄板52をカッター刃受け部材46に被せているが、カッター刃受け部材46で一体的に形成しても良い。
【0043】
半切り動作は、カッター刃受け部材46が、説明しない機構によって半切り面46bがX軸方向と平行な姿勢となっており、図6に示すようにカッターカム41をCW(時計回り)方向へ回転させることで図7に示すように印刷部30をY軸・上方向へ移動させる。切断部30の移動量は、フラグ51b(図10)を透過型のカムセンサ50が検知し(遮光→透過)、その検知後、所定数、サブモータ9をパルス駆動して停止するように制御される。こうしてカッター刃48が半切り面46bに当接することで記録媒体が半切りされる。
【0044】
全切り動作は、例えば図6に示す記録可能な状態から実施する場合で説明すると、カッターカム41をCW(時計回り)方向と逆方向のCCW(反時計周り)方向へ、図8に示すカッターカム41位置まで回転させる。カッターカム41がCCW方向に回転している間に、カッター刃受け部材46が、説明しない機構によって全切り面46aがX軸方向と平行な姿勢となる。更に,その後,記録部30をY軸の上方向へ移動させる。切断部30の移動量は、フラグ51aを透過型のカムセンサ50が検知し(透過→遮光)、その検知後、所定数、サブモータ9をパルス駆動して停止するように制御される。カッター刃48は、全切り面46aに当接することで記録媒体が全切りされる。
【0045】
ここで、実施形態に係るプリンタ1の記録時の動作を、図5図10を参照して説明する。
【0046】
図5は、実施形態に係るプリンタ1において、記録ヘッド6が第2位置にあり、切断部30が退避位置にある状態を示す図である。これは実施形態に係るプリンタ1において、電源オフ/オン時や、記録媒体の排出動作時などの状態である。このとき記録ヘッド支持部材49に取り付けられたラッチ部材60は、リール軸45と噛み合った状態である。ここで、リール軸45の内部にはトルクリミッタ(図17)が設けられており、メインモータ5の回転駆動は、駆動伝達ギア(図17)やトルクリミッタ(図17)を介して、リール軸45へ伝達されてインクリボンの巻き取り動作が行なわれる。そのため、図5のような状態でメインモータ5を回転駆動すると、プラテンローラ3や搬送ローラ4にその回転が伝達される。しかしながらインクリボンの巻取りリールのリール軸45は、記録ヘッド支持部材49に取り付けられたラッチ部材60と噛み合った状態となるため、リール軸45の回転を規制する回転しない。これによりリボンの巻取り駆動を停止したままで記録媒体の搬送を行うことが可能となる。
【0047】
次に、記録動作とカット動作について説明する。図5に示す通り、ヘッドカム42がCW方向へ回転するようにサブモータ9を駆動する。その後、カムセンサ50(図9)でヘッドカム42のフラグ51を検知すると、所定数、サブモータ9をパルス駆動した後に停止する。これにより図6に示す状態となる。
【0048】
図6は、記録ヘッド6がニップ位置(第1位置)、切断部30が退避位置にある状態を示す図である。この状態でメインモータ5の回転駆動が伝達される搬送手段によって記録媒体を搬送しながら記録を行う。
【0049】
こうして、1ページが記録された記録媒体が図2に示す記録位置から記録媒体カット位置に到達したら、記録済のページ毎に半切り動作を行うことで成果物を製造する。
【0050】
そして最終ページでは、切断部30で前述の全切り動作を行う。この時、最終ページの記録が終了した後、記録媒体をカット位置まで搬送する際、図5に示すように、記録ヘッド6を退避した位置(第2位置)に移動するよう制御する。前述の通り、図5のような状態でメインモータ5を駆動すると、プラテンローラ3や搬送ローラ4には駆動が伝達されるが、リール軸45は記録ヘッド支持部材49に取り付けられたラッチ部材60と噛み合った状態となる。このため、インクリボンの巻取り駆動は停止した状態のままで、記録媒体が搬送される。これによりインクリボンが余計に巻き取られるのを防止でき、インクリボンの無駄を削減できる。
【0051】
図12は、実施形態に係るプリンタ1の制御部1200の構成を説明するブロック図である。
【0052】
制御部1200は、メインモータ5、サブモータ9、カムセンサ50、チューブ検知センサ類1205、操作部13及び表示部14に接続され、センサ類や入力部13からの入力に基づいて、メインモータ5、サブモータ9や表示部14を制御する。制御部1200は、CPU1201により実行される印刷制御プログラム等を記憶するROM1202と、入力部13により入力された各データ等を記憶するRAM1203とを備えている。このRAM1203は、印刷データを記憶する印刷データ記憶エリアと、記録媒体の種類、サイズ、印刷濃度、カット情報等の各種設定情報を記憶する設定情報エリアと、印刷データの展開を行うデータ展開エリアと、その他のエリアとを有する。またプリンタ1には、USBI/F1204を介してパソコン(不図示)等の外部端末を接続することができ、外部端末からの印刷データをプリンタ1で印刷することができる。
【0053】
図13は、実施形態に係るプリンタ1による記録(印刷)処理を説明すするフローチャートである。このフローチャートで示す処理は、CPU1201はROM1202に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0054】
まずS1301でCPU1201はサブモータ9を回転駆動して、ヘッドカム42を回転させることで記録ヘッド支持部材49を移動させ、記録ヘッド6がプラテンローラ3に当接させる第1位置に移動させる。これにより記録ヘッド6がインクリボンに当接してインクを記録媒体に転写できる状態になる。次にS1302に進みCPU1201は、メインモータ5を駆動して記録媒体を搬送させ、S1303で記録データに従って記録ヘッド6を駆動して記録を行う。そしてS1304に進みCPU1201は、次に記録データがあるかどうか判定し、あればS1302に進んで、前述と同様にして記録を行う。そしてS1304でCPU1201は、次の記録データがなくなるとS1305に進む。
【0055】
S1305でCPU1201は、CPU1201はサブモータ9を回転駆動して、ヘッドカム42を回転させることで記録ヘッド支持部材49を移動させ、記録ヘッド6がプラテンローラ3から離間させる第2位置に移動させる。そしてS1306に進みCPU1201は、記録済の記録媒体を搬送させる。そしてS1307で、記録済の記録媒体が切断部30に到達するとメインモータ5の回転駆動を停止して搬送ローラの回転を停止させる。そして切断部30を駆動して記録媒体を切断して排紙する。
【0056】
尚、図13のフローチャートでは、印刷が開始されると記録ヘッドは第1位置に移動したままで、印刷が終了すると、プラテンローラ3から離間した第2位置に移動している。このため、この間では、記録媒体の搬送に伴ってインクリボンが搬送されて消費されることになる。従って、より、インクリボンの無駄を少なくするためには、余白領域が所定量以上連続するときは記録ヘッドをプラテンローラ3から離間させる第2位置に移動させるようにしても良い。
【0057】
図14は、ラッチ部材60の拡大図である。
【0058】
このラッチ部材60には、記録ヘッド支持部材49に取り付けるためのボスと長穴が設けられている。
【0059】
図15は、記録ヘッド支持部材49に対するラッチ部材60の組付け構成を説明する図である。
【0060】
記録ヘッド支持部材49にも、ラッチ部材60のボスと長穴に対応するボスと長穴が設けられており、これらボスと長穴にラッチ部材60のボス、長穴と嵌め合わせてEリングで固定する。ここでラッチ部材60は、バネによってラッチ部材60を、後述するラッチギア(図17)に押し付ける方向に付勢されており、長穴の範囲で移動可能となっている。
【0061】
図16(A)は、ラッチ部材60に押圧力が働いていない場合の、ラッチ部材の位置を示す図である。
【0062】
図16(B)は、図16(A)の状態のラッチ部材60に対して、上方向に押圧した状態を示す図である。バネによる付勢よりも強い力がラッチ部材60に対して図16の上方向にかかると、ラッチ部材60は上方向に移動して、長穴とボスが接触する位置で停する。この状態から上方向の付勢を解除すると、バネの付勢力により、図16(A)の状態に戻る。
【0063】
図17は、実施形態に係るプリンタ1において、インクリボンカセット8内に収められているインクリボンを巻き取っているリールを駆動するためのリール軸45の構成を説明する図である。
【0064】
図18は、実施形態に係るインクリボンカセット8の構成を示す図である。
【0065】
インクリボンカセット8の内部には、送り出し側のリボンリールと、巻き取り側のリボンリールが収められており、送り出し側リボンリールから送り出されたインクリボンが巻き取り側リボンリールに巻き取られる。インクリボンが外部に露出している部分は、プリンタ1にセットされたときの記録部の位置に対応する。
【0066】
インクリボンカセット8がプリンタ1にセットされたとき、図17のリール軸45は、巻取側リボンリールの中心に設けられた穴に篏合する。そしてリール軸45が回転駆動されることにより、インクリボンが巻取側リボンリールに巻き取られてインクリボンが搬送される。尚、インクリボンの進行方向は一方向のみであり、逆方向への搬送は行われない。逆方向への搬送を抑制するために、リールにラチェット機構を設けてもよい。
【0067】
図17において、巻取側リボンリールを駆動するリール軸45の部材には、前述したラッチ部材と噛み合うラッチギアが設けられている。またリール軸45は、トルクリミッタを介して、駆動伝達ギアから駆動力を受ける。このようにトルクリミッタを間に設けているため、リール軸45にかかるトルクが所定値を超えるとトルクリミッタが空転する。これによりリール軸45が無理やり回転されてインクリボンが切断されるのを防止している。
【0068】
図5は、記録を行っていないときの状態を示す図であるが、記録ヘッド支持部材49に指示されている記録ヘッド6を退避位置としたとき、同じ記録ヘッド支持部材49に指示されているラッチ部材60は、リール軸45のラッチギアと係合して噛み合う位置にある。この状態でメインモータ5を回転駆動すると、リール軸45の回転がラッチ部材60で止められた状態で駆動伝達ギアに動力が伝達されるためトルクリミッタが空転する。そのため、記録を行っていないとき(記録ヘッド6が退避位置(第2位置)にいるとき)にメインモータ5を駆動して記録媒体を搬送しても、リール軸45は回転不能となるため、インクリボンが巻き取られることはない。
【0069】
一方、図6は記録を行っているときの状態を示す図であるが、記録ヘッド6を記録位置に移動させると、ラッチ部材60はラッチギアから離間する。この状態で記録媒体を搬送しながら記録を行うと、リール軸45は駆動伝達ギアからの動力を受けて回転し、インクリボンを巻き取る。
【0070】
尚、ラッチ部材60がボスと長穴の篏合により移動できる構成としているのは、ラッチ部材60とラッチギアとが離間している状態から、ラッチ部材60とラッチギアが噛み合う状態とする場合に、ラッチギアの位置(位相)によっては、ラッチ部材60のギアの山と、ラッチギアの山が当接する可能性がある。このような場合に、ラッチ部材60がラッチギアから離間する方向に移動可能な構成とすることにより、ラッチ部材60とラッチギアに過度な押圧力がかからないようにしている。ギアの山どうしが当接した場合、駆動伝達ギアが回るのに伴ってラッチギアが回り、バネの付勢力によりギア同士の山と谷が噛み合ってからトルクリミッタが空転することになる。
【0071】
以上説明したように実施形態によれば、モータやアクチュエータ等を新たに設けることによるコストアップや装置の大型化を招くことなく、インクリボンの無駄を削減できるという効果がある。
【符号の説明】
【0072】
1…プリンタ、3…プラテンローラ、4…搬送ローラ、5…メインモータ、6…記録ヘッド、8…インクリボンカセット、9…サブモータ、45…リール軸、49…記録ヘッド支持部材、50…カムセンサ、60…ラッチ部材
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