(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017881
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】精度補正方法及びワイヤ放電加工機
(51)【国際特許分類】
B23H 7/02 20060101AFI20220119BHJP
B23Q 15/26 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B23H7/02 R
B23Q15/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120708
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩明
(72)【発明者】
【氏名】田篭 邦彦
【テーマコード(参考)】
3C001
3C059
【Fターム(参考)】
3C001KA01
3C001KB08
3C001TA01
3C001TB03
3C059AA01
3C059AB05
3C059FA05
(57)【要約】
【課題】 シンプルな計算によるパラメータ補正に適した精度補正方法等を提供する。
【解決手段】 計算処理部15は、設定された修正前パラメータによるテスト加工の測定結果を用いて、ワイヤ電極部23によるテーパ加工の角度を調整するための計算と、ワイヤ電極部25によるテーパ加工の位置を調整するための計算を行い、上ヘッド部21でのワイヤ電極部23の支持位置である上ヘッド支持点、下ヘッド部25でのワイヤ電極部23の支持位置である上ヘッド支持点、及び、テーブル部9の相対的な位置関係を調整するためのパラメータを計算する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ放電加工機における精度補正方法であって、
前記ワイヤ放電加工機は、
テーパ加工を行うためのパラメータを記憶するパラメータ記憶部と、
前記パラメータを利用してワイヤ電極を用いてテーパ加工を行う放電加工部を備え、
前記放電加工部は、上ヘッド部と、下ヘッド部を備え、
上ヘッド支持点は、上ヘッド部において最も下ヘッド部側でワイヤ電極を支持する位置であり、
下ヘッド支持点は、下ヘッド部において最も上ヘッド部側でワイヤ電極を支持する位置であり、
放電加工部が、修正前のパラメータを用いてテスト加工を行うテスト加工ステップと、
計算処理部が、テスト加工のために指定されたテーパ面の指定角度とテスト加工により得られたテーパ面の角度を利用して、上ヘッド支持点と下ヘッド支持点の間の距離に関するパラメータを計算する計算ステップと、
パラメータ修正部が、計算ステップにおいて得られたパラメータにより前記パラメータ記憶部に記憶されたパラメータを修正する修正ステップと、
放電加工部が、修正後のパラメータを用いて放電加工を行う加工ステップを含む精度補正方法。
【請求項2】
前記計算ステップにおいて、前記計算処理部は、上ヘッド支持点及び下ヘッド支持点の、前記テーブル部に対する相対的な位置関係を共に上又は下に変更するためのパラメータを計算し、
前記修正ステップにおいて、前記パラメータ修正部は、計算ステップにおいて得られたパラメータを用いて前記パラメータ記憶部に記憶されたパラメータを修正する、請求項1記載の精度補正方法。
【請求項3】
前記計算ステップにおいて、前記計算処理部は、テスト加工のために設定された上ガイド支持点水平面と下ガイド支持点との間の距離DB
0、テスト加工のために指定されたテーパ面の指定角度θ、テスト加工により得られたテーパ面の角度θ
0、テスト加工のための下ガイド支持点距離DA
0、テスト加工による上部誤差ΔWU又は下部誤差ΔWL、ワーク上部高さH又はワーク下部高さhを用いて、上ヘッド支持点と下ヘッド支持点の間の距離に関するパラメータDBと上ヘッド支持点及び下ヘッド支持点の前記テーブル部に対する位置を共に上又は下に変更するためのパラメータΔDAを、それぞれ、式(eq1)及び式(eq2)又は(eq3)により計算する、請求項2記載の精度補正方法。
【数1】
【請求項4】
ワイヤ放電加工機において、
テーパ加工を行うためのパラメータを記憶するパラメータ記憶部と、
前記パラメータを利用してワイヤ電極を用いてテーパ加工を行う放電加工部と、
計算処理部と、
パラメータ修正部を備え、
前記放電加工部は、上ヘッド部と、下ヘッド部を備え、
上ヘッド支持点は、上ヘッド部において最も下ヘッド部側でワイヤ電極を支持する位置であり、
下ヘッド支持点は、下ヘッド部において最も上ヘッド部側でワイヤ電極を支持する位置であり、
前記放電加工部は、修正前のパラメータを用いてテスト加工を行い、
前記計算処理部は、テスト加工のために指定されたテーパ面の指定角度とテスト加工により得られたテーパ面の角度を利用して、上ヘッド支持点と下ヘッド支持点の間の距離に関するパラメータを計算し、
前記パラメータ修正部は、計算ステップにおいて得られたパラメータにより前記パラメータ記憶部に記憶されたパラメータを修正し、
前記放電加工部が、修正後のパラメータを用いて放電加工を行う、ワイヤ放電加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精度補正方法及びワイヤ放電加工機に関し、特に、ワイヤ放電加工機における精度補正方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テーパ角度補正機能を実現することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のテーパ角度補正機能では、測定値に応じて上ワイヤガイドと下ワイヤガイドをそれぞれ独立に制御するために、複雑な計算と制御が必要であった。
【0005】
よって、本発明は、シンプルな計算によるパラメータ補正に適した精度補正方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第1の観点は、ワイヤ放電加工機における精度補正方法であって、前記ワイヤ放電加工機は、テーパ加工を行うためのパラメータを記憶するパラメータ記憶部と、前記パラメータを利用してワイヤ電極を用いてテーパ加工を行う放電加工部を備え、前記放電加工部は、上ヘッド部と、下ヘッド部を備え、上ヘッド支持点は、上ヘッド部において最も下ヘッド部側でワイヤ電極を支持する位置であり、下ヘッド支持点は、下ヘッド部において最も上ヘッド部側でワイヤ電極を支持する位置であり、放電加工部が、修正前のパラメータを用いてテスト加工を行うテスト加工ステップと、計算処理部が、テスト加工のために指定されたテーパ面の指定角度とテスト加工により得られたテーパ面の角度を利用して、上ヘッド支持点と下ヘッド支持点の間の距離に関するパラメータを計算する計算ステップと、パラメータ修正部が、計算ステップにおいて得られたパラメータにより前記パラメータ記憶部に記憶されたパラメータを修正する修正ステップと、放電加工部が、修正後のパラメータを用いて放電加工を行う加工ステップを含む。
【0007】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の精度補正方法であって、前記テスト加工ステップにおいて、前記放電加工部は、補正前のパラメータを用いた標準処理によりテーブル部に設置された加工対象物に対するテスト加工を行い、前記計算ステップにおいて、前記計算処理部は、上ヘッド支持点及び下ヘッド支持点の、前記テーブル部に対する相対的な位置関係を共に上又は下に変更するためのパラメータを計算し、前記修正ステップにおいて、前記パラメータ修正部は、計算ステップにおいて得られたパラメータを用いて前記パラメータ記憶部に記憶されたパラメータを修正し、前記加工ステップにおいて、前記放電加工部は、補正後のパラメータを用いた前記標準処理により放電加工を行う。
【0008】
本願発明の第3の観点は、第2の観点の精度補正方法であって、前記計算ステップにおいて、前記計算処理部は、テスト加工のために設定された上ガイド支持点水平面と下ガイド支持点との間の距離DB0、テスト加工のために指定されたテーパ面の指定角度θ、テスト加工により得られたテーパ面の角度θ0、テスト加工のための下ガイド支持点距離DA0、テスト加工による上部誤差ΔWU又は下部誤差ΔWL、ワーク上部高さH又はワーク下部高さhを用いて、上ヘッド支持点と下ヘッド支持点の間の距離に関するパラメータDBと上ヘッド支持点及び下ヘッド支持点の前記テーブル部に対する位置を共に上又は下に変更するためのパラメータΔDAを、それぞれ、式(eq1)及び式(eq2)又は(eq3)により計算する。
【0009】
本願発明の第4の観点は、ワイヤ放電加工機において、テーパ加工を行うためのパラメータを記憶するパラメータ記憶部と、前記パラメータを利用してワイヤ電極を用いてテーパ加工を行う放電加工部と、計算処理部と、パラメータ修正部を備え、前記放電加工部は、上ヘッド部と、下ヘッド部を備え、上ヘッド支持点は、上ヘッド部において最も下ヘッド部側でワイヤ電極を支持する位置であり、下ヘッド支持点は、下ヘッド部において最も上ヘッド部側でワイヤ電極を支持する位置であり、前記放電加工部は、修正前のパラメータを用いてテスト加工を行い、前記計算処理部は、テスト加工のために指定されたテーパ面の指定角度とテスト加工により得られたテーパ面の角度を利用して、上ヘッド支持点と下ヘッド支持点の間の距離に関するパラメータを計算し、前記パラメータ修正部は、計算ステップにおいて得られたパラメータにより前記パラメータ記憶部に記憶されたパラメータを修正し、前記放電加工部が、修正後のパラメータを用いて放電加工を行う。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
本願発明の各観点によれば、パラメータを修正して、放電加工部によるパラメータを利用した放電加工のために通常行われる計算(例えば、パラメータ修正部がガイドスパンのパラメータを修正することにより、放電加工部において、これを用いて計算される上ヘッドの移動距離を修正することなど)を利用して、加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工機1の(a)構成の一例を示すブロック図と、(b)その動作の一例を示すフロー図である。
【
図2】計算処理部15による計算処理の一例を説明するための第1図である。
【
図3】計算処理部15による計算処理の一例を説明するための第2図である。
【
図4】計算処理部15による計算処理の一例を説明するための第3図である。
【
図5】計算処理部15による計算処理の一例を説明するための第4図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0014】
図1は、本願発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工機1の(a)構成の一例を示すブロック図と、(b)その動作の一例を示すフロー図である。
【0015】
図1(a)を参照して、ワイヤ放電加工機1の構成の一例を説明する。ワイヤ放電加工機1は、放電加工部3(本願請求項の「放電加工部」の一例)と、測定部5と、テーブル部9と、パラメータ記憶部11(本願請求項の「パラメータ記憶部」の一例)と、入出力部13と、計算処理部15(本願請求項の「計算処理部」の一例)と、パラメータ修正部17(本願請求項の「パラメータ修正部」の一例)と、パラメータ記憶部11のパラメータを使用して放電加工部3の動作を制御する制御部27を備える。
【0016】
放電加工部3は、上ヘッド部21と、ワイヤ電極部23と、下ヘッド部25と、制御部27を備える。ワイヤ電極部23は、図示を省略するワイヤボビンから上ヘッド部21及び下ヘッド部25を経由して放電加工部3の外に排出される。ワイヤ電極部23は、上ヘッド部21及び下ヘッド部25との間に張られる。上ヘッド部21において、ワイヤ電極部23が通る経路の最も下ヘッド部25に近い個所を上ガイド支持点という。下ヘッド部25において、ワイヤ電極部23が通る経路の最も上ヘッド部21に近い個所を下ガイド支持点という。放電加工部3は、ワイヤ電極部23を利用して、テーブル部9に設置された加工対象物を放電加工する。
【0017】
テーブル部9には、加工対象物(例えばテスト加工対象物7など)が設置される。測定部5は、テーブル部9に設置された加工対象物を測定する。測定部5は、測定結果を入出力部13により表示してもよく、パラメータ記憶部11に記憶させてもよい。
【0018】
パラメータ記憶部11は、テーパ加工を行うために使用するテーパ諸元を含むパラメータを記憶するものである。パラメータ記憶部11は、入力パラメータ群29及び計算パラメータ群31を記憶する。入力パラメータ群29は、入力されたパラメータであり、例えば利用者が入出力部13から入力したものである。なお、入力パラメータは、ネットワークを通じて他の情報処理装置から入力したものであってもよい。計算パラメータ群31は、計算処理部15による計算時に使用されるパラメータである。
【0019】
入出力部13は、例えばタッチパネルであり、利用者にデータを表示したり、利用者からデータを入力したりする。
【0020】
計算処理部15は、テーパ諸元の修正値を得るための計算を行う。
【0021】
パラメータ修正部17は、計算処理部15の計算結果を利用して、パラメータ記憶部11に記憶されたテーパ諸元に関するパラメータを修正する。
【0022】
図1(b)を参照して、ワイヤ放電加工機1の動作の一例を説明する。
【0023】
入出力部13は、利用者から入力されたテーパ諸元に関するパラメータを、パラメータ記憶部11における入力パラメータ群29に記憶する(ステップST1)。
【0024】
制御部27は、利用者から入力されたテーパ諸元に関するパラメータを利用して、通常使用されている標準処理(本願発明の「標準処理」の一例)に従って上ヘッド部21及び下ヘッド部25並びにテーブル部9の相対的な位置関係を調整して、テスト加工対象物7に対してテスト加工を行う(ステップST2)。
【0025】
測定部5は、テスト加工対象物7を測定し、理論値と測定値の誤差を計算して、パラメータ記憶部11の入力パラメータ群29に記憶させる(ステップST3)。なお、誤差は、利用者が入出力部13から入力してパラメータ記憶部11に設定してもよい。例えば、測定部5の測定結果を入出力部13に表示して利用者が設定してもよい。また、利用者がテスト加工対象物7を測定して誤差を設定してもよい。
【0026】
計算処理部15は、設定された誤差を利用して、テーパ諸元の修正値を計算する(ステップST4)。パラメータ修正部17は、計算された修正値を利用してパラメータ記憶部11に記憶されたパラメータを修正する(ステップST5)。
【0027】
制御部27は、修正後のパラメータを利用して、標準処理により上ヘッド部21及び下ヘッド部25を並びにテーブル部9の相対的な位置関係を調整して、加工対象物に対して放電加工を行う(ステップST6)。
【0028】
図2~
図5を参照して、計算処理部15による計算処理の一例を説明する。なお、説明をわかりやすくするために誤差を大きく表示しているが、実際には極めて微小なものである。また、各図における位置は、相対的な位置を示すものであり、例えば、上ヘッド部21と下ヘッド部25とテーブル部9の相対的な位置関係を変更するときに、すべてを変更するものであってもよく、いずれかを固定して他のものを変更するものであってもよい。例えば、
図5において下ヘッド部25の位置をP
L0からP
Lにして下ヘッド部25とテーブル部9をΔDA近づけている。
【0029】
事前に、原点と、鉛直上下に基準鉛直軸が設定される。テーブル部9の加工対象物の設置面は、水平である。「上ガイド支持点水平面」は、上ガイド支持点が存在する水平面である。「設置水平面」は、テーブル部9において加工対象物を設置するための設置面を含む水平面である。下ガイド支持点は、基準鉛直軸上に存在し、設置水平面から下に下ガイド支持点距離を離れた位置に存在する。
【0030】
この例では、初期処理により設定される入力パラメータは、以下のものである。ワーク上部高さH及びワーク下部高さhは、それぞれ、加工対象物に対して放電加工が行われる部分の上部及び下部について、設置水平面からの高さである。下ガイド支持点距離DA
0は、設置水平面から下ガイド支持点までの距離である。ガイドスパンDB
0は、上ガイド支持点水平面と下ガイド支持点との間の距離である(
図2の場合、ガイドスパンは、基準鉛直軸における上ガイド支持点と下ガイド支持点の上下方向の距離を示すパラメータであり、高さの差を示すパラメータである。)。指令角度θは、テスト加工におけるテーパ加工の角度である。
【0031】
図2を参照して、他の入力パラメータを説明する。線分T
UT
Lは、DA
0及びDB
0を利用したテスト加工によるテーパ面である。線分R
UR
Lは、理論値によるテーパ面である。上部誤差ΔWUは、線分T
UR
Uの長さである。下部誤差ΔWLは、線分T
LR
Lの長さである。上部誤差ΔWU及び下部誤差ΔWLは、テスト加工による結果により得られる。
【0032】
計算パラメータを説明する。θ
0は、テスト加工により得られたテーパ面の角度である。なお、数式の導出にあたりm
0及びnを使用する。m
0及びnは、計算パラメータには含まれない。m
0は、制御部27がテスト加工にあたり使用した上ガイド支持点の移動量である。nは、テスト加工における上寸法の理論値である。
図2では、nは、C
3を加工対象物の上面の基準鉛直軸上の点として、C
3とR
Uとの間の距離である。
【0033】
図2~
図5の例は、θ
0はθよりも大きく、テスト加工後の寸法は理論値よりも大きい場合である。
【0034】
計算処理部15は、テスト加工で、下ガイド支持点が、基準鉛直軸上にあり、設置水平面から下に下ガイド支持点距離DA0を離れた位置PL0にあったこととする。
【0035】
制御部27は、指令角度θとガイドスパンDB0を利用して、m0を計算する。すなわち、m0=DB0tanθである。制御部27は、上ガイド支持点をm0移動する。制御部27は、上ガイド支持点が位置C1にあるとしている。C2は、C1を通る水平面が基準鉛直軸と交わる位置である。
【0036】
しかし、実際の上ガイド支持点は、直線TUTLにおいてm0離れた位置PU0である。PU2は、PU0を通る水平面が基準鉛直軸と交わる位置である。PU1は、直線PL0C1と直線PU0PU2が交わる位置である。C1とPU0の位置には、違いが存在している。
【0037】
パラメータ修正部17が、ガイドスパンを、DB0からDBに修正することにより、制御部27は、指令角度θとガイドスパンDBを利用して、m=DBtanθにより計算して、上ガイド支持点をm移動させ、上ガイド支持点をPU1にして、適切なテーパ角度θによる加工を実現することができる。
【0038】
さらに、パラメータ修正部17が、上ガイド支持点と下ガイド支持点の位置を、それぞれ、PU1及びPL0からΔDA上に位置させてPU及びPLにすることにより、制御部27は、寸法の誤差がない加工を実現することができる。
【0039】
計算処理部15は、実際上の位置も計算上の位置も、ともに、上ガイド支持点の位置をPU0からPUにし、下ガイド支持点をPL0からPLにするためのテーパ諸元のパラメータの計算を行う。パラメータ修正部17は、テーパ諸元のパラメータを修正する。
【0040】
図3は、角度θ
0を計算することを説明するための図である。ワーク下部におけるR
L及びT
Lの垂線の足をそれぞれS
1及びS
2とする。線分S
1R
Lの長さは、H-hである。三角形R
US
1R
Lより、線分R
US
1は(H-h)tanθである。線分S
1S
2の長さは、下部誤差ΔWLである。よって、線分T
US
2の長さは、ΔWU+(H-h)tanθ-ΔWLである。
【0041】
三角形TLTUS2より、tanθ0=線分TUS2/線分TLS2となる。よって、式(1)が成り立つ。
【0042】
【0043】
図4は、実際の上ガイド支持点と下ガイド支持点の距離DBを計算することを説明するための図である。三角形C
1C
2P
L0より、式(2)が成り立つ。三角形P
U0P
U2P
L0より、式(3)が成り立つ。式(3)において、式(2)より計算されたm
0を代入して、DBについて整理すると式(4)が成り立つ。式(4)において、DB
0及びθは入力パラメータであり、tanθ
0は式(1)により計算することができる。式(4)より、実際の上ガイド支持点と下ガイド支持点の距離DBを計算することができる。
【0044】
【0045】
図5は、寸法誤差を減少させる下ガイド支持点距離DAを計算することを説明するための図である。三角形P
LC
3R
Uより、式(5)が成り立つ。三角形T
UC
3P
L0より、式(6)が成り立つ。式(5)において、式(6)より計算されたnを代入して、DAについて整理すると式(7)が成り立つ。式(7)において、DA
0、H、ΔWU及びθは入力パラメータであり、tanθ
0は式(1)により計算することができる。式(7)より、寸法誤差を減少させる下ガイド支持点距離DAを計算することができる。ΔDAは、式(8)より計算することができる。なお、ΔDAは、下部誤差を利用して式(9)によっても計算することができる。
【0046】
【0047】
図2~
図5の例では、θ
0はθよりも大きく、テスト加工後の寸法は理論値よりも大きい場合である。この状況であれば、
図1(b)のステップST4において、計算処理部15は、式(4)及び式(8)によりそれぞれDB及びΔDAを計算する。ステップST5において、パラメータ修正部17は、DB
0をDBに小さく修正し、上ガイド支持点及び下ヘッド部支持点の位置をΔDA上方に修正して、テーパ諸元のパラメータを修正する。ステップST6において、放電加工部3は、修正後のパラメータによる加工処理を行う。
【0048】
θ0がθよりも小さいならば、パラメータ修正部17は、DB0を大きく修正すればよい。修正後の値DBは、同様に計算することができる。
【0049】
テスト加工後の寸法が理論値よりも小さいならば、パラメータ修正部17は、上ガイド支持点及び下ヘッド支持点の位置を下方に修正すればよい。下方に修正する値ΔDAは、同様に計算することができる。
【0050】
発明者は、標準ガイドで異なる角度で検証を行った。検証は、下記のように行った。X+方向でテーパ定数測定・登録を行う。テスト加工として、板厚30mmで角度5度の単一テーパ加工を行い測定した。テスト加工の結果から本実施例のテーパ補正機能を使い、補正を行う。そして、再度角度5度の単一テーパ加工を行い測定した。補正前と補正後での寸法精度、角度精度の変化を検証する。同一補正において、他の角度(1度、3度、7度、10度)も検証する。
【0051】
図6は、角度について、(a)補正前の5度、(b)補正後の1度、(c)補正後の3度、(d)補正後の5度、(e)補正後の7度、及び、(f)補正後の10度のテーパ加工についての検証結果を示す。補正前は、最大寸法誤差9.1μm、最大角度誤差0.0330度であった。補正後は、最大寸法誤差-4.2μm、最大角度誤差0.0056度であった。
【0052】
発明者は、標準ガイドで異なる板厚で検証を行った。検証は、下記のように行った。X+方向でテーパ定数測定・登録を行う。テスト加工として、板厚30mmで角度5度の単一テーパ加工を行い測定した。テスト加工の結果から本実施例のテーパ補正機能を使い、補正を行う。そして、再度角度5度の単一テーパ加工を行い測定した。補正前と補正後での寸法精度、角度精度の変化を検証する。同一補正において、他の板厚(10mm、50mm)も検証する。
【0053】
図7は、板厚について、(a)補正前の30mm、(b)補正後の10mm、(c)補正後の30mm、及び、(d)補正後の50mmのテーパ加工についての検証結果を示す。補正前は、最大寸法誤差9.1μm、最大角度誤差0.0330度であった。補正後は、最大寸法誤差1.5μm、最大角度誤差0.0064度であった。
【0054】
標準ガイドでの検証をまとめると、実能力は、補正前には寸法誤差±10μm、角度誤差±0.05度であったのに対し、補正後には寸法誤差±5μm、角度誤差±0.007度となる。保証精度は、補正前には寸法誤差±15μm、角度誤差±0.10度であったのに対し、補正後には寸法誤差±7μm、角度誤差±0.01度となる。ただし、保証精度は、下記の条件とする。設置環境は、標準仕様書記載の推奨条件とし、温度変化は±0.5度以内とする。機械使用としてXY軸及びUV軸にリニアスケールを取り付けた機械とする。加工は、単一テーパ加工で板厚50mm以下、テーパ角度10度以下とする。
1 ワイヤ放電加工機、3 放電加工部、5 測定部、7 テスト加工対象物、9 テーブル部、11 パラメータ記憶部、13 入出力部、15 計算処理部、17 パラメータ修正部、21 上ヘッド部、23 ワイヤ電極部、25 下ヘッド部、27 制御部、29 入力パラメータ群、31 計算パラメータ群