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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178812
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20221125BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221125BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221125BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20221125BHJP
   B60W 40/09 20120101ALI20221125BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20221125BHJP
【FI】
B60W50/08
G08G1/00 D
G08G1/16 F
B60W50/14
B60W40/09
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085878
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】星野 陽子
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241BA70
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD09
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC25Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC34Z
3D241DC35Z
3D241DC37Z
3D241DC39Z
3D241DC44Z
3D241DC50Z
3D241DC59Z
3D241DD05Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF40
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL06
5H181LL09
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】運転者の運転能力を客観的且つ適切に把握することが可能な運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両1の運転者による車両操作を支援する車両制御装置100は、運転者の車両操作に起因して車両1にリスクが発生するか否かを判定し、リスクが発生すると判定した場合に、車両1がリスクを回避するように運転支援制御を実行するように構成されている。車両制御装置100は、運転支援制御が実行されたことを記録し、所定の運転単位における運転支援制御の実行頻度を計算し、実行頻度に基づいて運転者の運転能力を評価した運転能力評価情報60を作成し、運転能力評価情報60を運転者に報知する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者による車両操作を支援する車両制御装置であって、
前記運転者の車両操作に起因して前記車両にリスクが発生するか否かを判定し、前記リスクが発生すると判定した場合に、前記車両が前記リスクを回避するように運転支援制御を実行するように構成され、
前記車両制御装置は、
前記運転支援制御が実行されたことを記録し、
所定の運転単位における前記運転支援制御の実行頻度を計算し、前記実行頻度に基づいて前記運転者の運転能力を評価した運転能力評価情報を作成し、
前記運転能力評価情報を前記運転者に報知する、車両制御装置。
【請求項2】
前記運転能力評価情報は、前記運転者の運転能力の前記運転単位における評価を含む、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記運転能力評価情報は、前記運転者の運転能力の前記運転単位における評価の所定期間にわたる時間変化を示す情報を含む、請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車両制御装置は、前記運転能力評価情報を前記車両の外部の情報通信機器へ送信する、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記車両制御装置は、前記運転者の運転能力を構成する複数の能力のうち、いずれの能力の欠如に起因して前記運転支援制御が実行されたのかを判定し、前記複数の能力は、少なくとも知覚能力、判断能力、及び運動能力を含み、前記運転能力評価情報は、前記複数の能力の各々の評価を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記知覚能力は、前記リスクを認知する能力であり、前記判断能力は、前記リスクに対して実行すべき車両操作を判断する能力であり、前記運動能力は、前記リスクに対して実行すべき車両操作を実行する能力である、請求項5に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に係り、特に運転支援のための車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転終了後に車両の運転に関する技術的な評価を運転者へ提供するシステムが知られている。特許文献1に記載の報告書作成システムでは、運転者が車両の運転を終えると、その日の運転についての運転評価報告書が運転者に提供される。この報告書では、運転者の車両操作、集中度等についての項目毎に評価点が与えられる。また、従来、車両の安全な走行を補償するため、運転者の車両操作を自動的に支援する運転支援制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-106041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、運転評価報告書における評価点が高くても、運転支援制御が頻繁に自動介入していたとすれば、実質的な運転者の運転能力は低い。そして、このような運転者は、高い評価点の運転評価報告書を受け取ることにより、自らの運転能力を正しく把握することができない。このため、運転者は、運転免許証を返納する機会を適切に判断することができなかった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、運転者の運転能力を客観的且つ適切に把握することが可能な運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両の運転者による車両操作を支援する車両制御装置であって、運転者の車両操作に起因して車両にリスクが発生するか否かを判定し、リスクが発生すると判定した場合に、車両がリスクを回避するように運転支援制御を実行するように構成され、車両制御装置は、運転支援制御が実行されたことを記録し、所定の運転単位における運転支援制御の実行頻度を計算し、実行頻度に基づいて運転者の運転能力を評価した運転能力評価情報を作成し、運転能力評価情報を運転者に報知することを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明では、運転者の車両操作に起因して発生するリスクに対して運転支援制御が実行された頻度に基づいて運転能力評価情報が作成され、運転者に報知される。このように、本発明では、運転者の運転能力を運転支援制御の実行という指標により客観的に得ることができる。運転能力評価情報がこのような客観的なデータに基づいた評価であるので、運転者は、運転能力の評価を心理的に受け入れ易い。よって、運転能力評価情報において運転能力の評価が低い場合、運転者は、運転能力評価情報を運転免許証の自主返納のための判断材料として用いることができる。
【0008】
また、本発明において好ましくは、運転能力評価情報は、運転者の運転能力の運転単位における評価を含む。このように構成された本発明では、運転者は、各運転単位において、運転者の運転能力を客観的に把握することができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、運転能力評価情報は、運転者の運転能力の運転単位における評価の所定期間にわたる時間変化を示す情報を含む。このように構成された本発明では、運転者は、時間変化情報により、運転者の運転能力の経時的的な変化を把握することができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、車両制御装置は、運転能力評価情報を車両の外部の情報通信機器へ送信する。このように構成された本発明では、運転者は、情報通信機器を用いて運転能力評価情報を任意の時間に閲覧することができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、車両制御装置は、運転者の運転能力を構成する複数の能力のうち、いずれの能力の欠如に起因して運転支援制御が実行されたのかを判定し、複数の能力は、少なくとも知覚能力、判断能力、及び運動能力を含み、運転能力評価情報は、複数の能力の各々の評価を含む。このように構成された本発明では、運転者は、運転者の運転能力を構成する知覚能力、判断能力、及び運動能力に対する評価を、客観的に把握することができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、知覚能力は、リスクを認知する能力であり、判断能力は、リスクに対して実行すべき車両操作を判断する能力であり、運動能力は、リスクに対して実行すべき車両操作を実行する能力である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の運転支援装置によれば、運転者の運転技能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の車両制御の説明図である。
図2】本発明の実施形態の車両制御装置のブロック図である。
図3】本発明の実施形態の車両制御装置の処理の流れを示す説明図である。
図4】本発明の実施形態の車両制御のフローチャートである。
図5】本発明の実施形態の報知処理のフローチャートである。
図6】本発明の実施形態の運転能力評価情報の説明図である。
図7】本発明の実施形態の運転単位情報の説明図である。
図8】本発明の実施形態の時間変化情報の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両制御装置について説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態による車両制御装置が提供する車両制御の概略を説明する。図1は、車両制御の説明図である。
【0016】
本実施形態の車両制御装置100(図2参照)は、運転者が主体的に車両1の車両操作を行うことを前提として構成されている。このため、車両制御装置100は、運転者の状態に応じて、車両1の車両操作を適切なレベルで支援する。すなわち、本実施形態では、原則的に、車両1の運転支援制御は、運転者が実行したい車両操作と運転者が実行可能な車両操作との間の差分を埋めるように提供される。例えば、運転者の低下した運転機能が主に補助される。さらに、車両制御装置100は、所定時には車両1を自動運転制御に自動的に切り替えるように構成されている。
【0017】
具体的には、車両制御装置100は、運転者が通常の運転能力を有する場合、特定時にのみ車両操作に介入して、運転支援制御(自動アクセル、自動ブレーキ、自動ステアリング等)を行う。特定時とは、例えば、運転者の運転能力が一時的に低下したとき(例えば、疲労、眠気)や、走行環境が比較的難しいとき(例えば、周囲交通状況が複雑、道路形状が複雑、周囲が暗い)である。また、車両制御装置100は、運転者(例えば、高齢者、MCI)の運転能力の一部が低下している場合(例えば、ステアリングホイール43bを操作する筋力が不足している)、低下した運転能力を補う。また、車両制御装置100は、運転能力をより向上させたり、低下した運転能力を維持又は回復させたりするように運転支援制御を行う。
【0018】
一方、運転者の意識レベルや運転能力が、急激に又は所定時間(数分~数十分)を掛けて低下していく異常予兆が検出された場合(例えば、急性疾患の発症時や、眠気レベルが高いとき)、車両制御装置100は、安全走行を維持するように運転支援制御を行う。また、運転者の意識や運転能力が喪失した異常時には、事故発生を回避するため、車両制御装置100は、自動運転制御を実行しすると共に、外部へ緊急事態を報知する処理を行う。
【0019】
次に、図2を参照して、本発明の実施形態による車両制御装置の構成について説明する。図2は、車両制御装置のブロック図である。図2に示すように、車両制御装置100は、主に、ECU(Electronic Control Unit)などのコントローラ10と、車載装置20と、車両制御システム40と、情報報知装置50を有する。
【0020】
車載装置20には、車内カメラ21、車外カメラ22、レーダ23、車両1の挙動を検出する複数の車両挙動センサ(車速センサ24、加速度センサ25、ヨーレートセンサ26)及び運転者の操作を検出する複数の操作検出センサ(操舵角センサ27、操舵トルクセンサ28、アクセル開度センサ29、ブレーキ踏込量センサ30)、測位装置31、ナビゲーション装置32、情報通信装置33が含まれる。
【0021】
また、車両制御システム40には、車両の走る機能、止まる機能、曲がる機能にそれぞれ対応するエンジン制御システム41、ブレーキ制御システム42、ステアリング制御システム43が含まれる。また、情報報知装置50には、表示装置51、音声出力装置52、情報送信装置53が含まれる。
【0022】
コントローラ10は、プロセッサ11、プロセッサ11が実行する各種プログラム及びデータを記憶するメモリ12、入出力装置等を備えたコンピュータ装置により構成される。コントローラ10は、車載装置20から受け取った信号に基づき、車両制御(運転支援制御及び自動運転制御)を行うための制御信号を車両制御システム40及び情報報知装置50へ出力するように構成されている。
【0023】
車内カメラ21は、車両1の運転者を撮像し画像情報を出力する。コントローラ10は、この画像情報に基づいて、特に、運転者の顔の表情及び上半身の姿勢を判別する。
車外カメラ22は、車両1の周囲(典型的には車両1の前方)を撮影し画像情報を出力する。コントローラ10は、この画像情報に基づいて、車外の対象物及びその位置を特定する。対象物は、少なくとも交通参加者及び走行路の境界を含む。具体的には、対象物は、周囲の移動体(車両、歩行者等)、移動しない構造物(障害物、駐車車両、走行路、区画線、停止線、交通信号、交通標識、交差点等)を含む。
【0024】
レーダ23は、車両1の周囲(典型的には車両1の前方)に存在する対象物の位置及び速度を測定する。例えば、レーダ23は、ミリ波レーダ、レーザレーダ(LIDAR)、超音波センサ等を用いることができる。
【0025】
車速センサ24は、車両1の速度(車速)を検出する。加速度センサ25は、車両1の加速度を検出する。ヨーレートセンサ26は、車両1に発生するヨーレートを検出する。操舵角センサ27は、車両1のステアリングホイール43bの回転角度(操舵角)を検出する。操舵トルクセンサ28は、ステアリングホイール43bの回動に伴う回転トルクを検出する。アクセル開度センサ29は、アクセルペダル41bの踏込量を検出する。ブレーキ踏込量センサ30は、ブレーキペダル42bの踏込量を検出する。
【0026】
測位装置31は、GPS受信機及び/又はジャイロセンサを含み、車両1の位置(現在車両位置情報)を検出する。ナビゲーション装置32は、内部に地図情報を格納しており、コントローラ10に地図情報を提供することができる。コントローラ10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、目的地までの全体走行経路(走行レーン、交差点、交通信号等を含む)を計算することができる。
【0027】
情報通信装置33は、外部の通信機器と通信する。情報通信装置33は、例えば、他車両との車車間通信や、車外の通信装置との路車間通信を行い、種々の運転情報や交通情報(交通渋滞情報、制限速度情報など)を受信して、コントローラ10へ提供する。
【0028】
エンジン制御システム41は、車両1のエンジン装置(内燃エンジン、電気モータ等)の駆動力を制御する。コントローラ10は、アクセルペダル41bからの入力に基づいて、エンジン制御装置41aへ制御信号を送信することにより、エンジン装置を駆動して、車両1を加速又は減速させることができる。
【0029】
ブレーキ制御システム42は、車両1のブレーキ装置の駆動力を制御する。ブレーキ制御システム42は、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどのブレーキアクチュエータを含む。コントローラ10は、ブレーキペダル42bからの入力に基づいて、ブレーキ制御装置42aへ制御信号を送信することにより、ブレーキ装置を駆動して、車両1を減速させることができる。
【0030】
ステアリング制御システム43は、車両1のステアリング装置の駆動力を制御する。ステアリング制御システム43は、例えば電動パワーステアリングシステムの電動モータなどを含む。コントローラ10は、ステアリングホイール43bからの入力に基づいて、ステアリング制御装置43aへ制御信号を送信することにより、ステアリング装置を駆動して、車両1の進行方向を変更することができる。
【0031】
表示装置51は、運転者に運転支援情報や運転能力評価情報(視覚情報)を表示領域に視覚表示することができる。具体的には、表示装置51は、HUDである。表示領域は、車両1のフロントガラス全体又は一部の大きさに相当し、支援情報が運転者の視界内に表示される。また、HUDに代えて、液晶ディスプレイを用いてもよい。
音声出力装置52は、例えば、スピーカであり、運転者に運転支援情報や運転能力評価情報(聴覚情報)を提供することができる。
情報送信装置53は、運転支援情報や運転能力評価情報を外部の情報通信機器55(例えば、運転者の携帯情報端末)へ送信することができる。
【0032】
次に、図3を参照して、本発明の実施形態による車両制御装置の処理の流れについて説明する。図3は、車両制御装置の処理の流れを示す説明図である。具体的には、図3は、コントローラ10が車載装置20からの入力情報を処理することにより、車両制御システム40及び情報報知装置50を用いて、種々の車両制御(運転支援制御、自動運転制御)を提供することを示している。
【0033】
車両制御の内容は、ADAS(先進運転支援システム)、自動アクセル、自動ブレーキ、自動ステアリング、自動車両姿勢安定化制御、自動運転(レベル3以上)、運転者の運転能力に対する運転能力評価情報の報知処理を含む。ADASは、少なくとも先行車追従、先行車衝突防止、車線逸脱防止等に対する支援機能(自動進入回避制御)を含む。自動車両姿勢安定化制御は、車両1の姿勢、すなわち車両ダイナミクス(ピッチ、ロール、ヨー)を安定化させ、横滑りや横転等を防止するための制御である。
【0034】
車載装置20は、取得した情報を継続的にコントローラ10へ送信する。コントローラ10は、取得した情報に基づいて、以下の計算又は評価を行う。
コントローラ10は、車外カメラ22、レーダ23、測位装置31、ナビゲーション装置32(地図情報)等からの入力情報に基づいて、車両1の周囲の交通環境を評価する(交通環境評価)。具体的には、コントローラ10は、車両1の周囲の対象物(車両、歩行者、境界線、ガードレール、停止線、交通標識等)の位置及び速度等を計算する。
【0035】
また、コントローラ10は、操舵角センサ27、操舵トルクセンサ28、ブレーキ踏込量センサ30、車内カメラ21等の情報から、運転者の身体機能を評価する(身体機能評価)。具体的には、コントローラ10は、操作部を適正な操作量及び操作速度で操作したり、車外の視覚刺激を視覚的に捉えたりする運転者の身体機能のレベルを推定する。運転者が適正な操作量及び操作速度で操作をしているか否かは、運転者が実際に操作部を介して入力した操作量及び操作速度(舵角、舵角速度、ブレーキペダル42bの踏込量、踏込速度又はブレーキ油圧等)と、目標走行経路を走行する場合の目標操作量及び操作速度との差により評価される。目標走行経路は、運転要求(目的地等)に基づいて、交通環境評価、走行環境評価、身体機能評価等の結果を用いて、車両1が安全且つ効率的に走行するように演算される。
【0036】
また、コントローラ10は、車外カメラ22、車速センサ24、加速度センサ25、測位装置31等からの情報に基づいて、車両1の周囲の走行環境を評価する(走行環境評価)。具体的には、コントローラ10は、車両ダイナミクスに影響を及ぼす物理量(例えば、走行路のカーブ半径、路面摩擦係数)を推定する。
また、コントローラ10は、車速センサ24、加速度センサ25、ヨーレートセンサ26等からの情報に基づいて、車両1の現在の車両ダイナミクスを計算する(車両ダイナミクス計算)。車両ダイナミクスには、速度、加速度、ヨーレート、3軸回転モーメント(ピッチ、ヨー、ロール)等が含まれる。
【0037】
また、コントローラ10は、車内カメラ21の画像情報に基づいて、運転者の覚醒度を判定する(覚醒度判定)。例えば、運転者の眼及び/又は口の開き具合、運転者の上半身の位置又は姿勢により、覚醒度が評価される。覚醒度は、例えば、4段階(覚醒度ゼロ、低、中、高)で評価することができる。
【0038】
また、コントローラ10は、交通環境評価及び走行環境評価において、予測リスクがあるか否かを判定する。予測リスクは、交通環境に起因する交通リスク(例えば、車両1が他車両と衝突)、及び車両ダイナミクスに影響を与える走行環境に起因する走行リスク(例えば、カーブ路でスピン)を含む。そして、コントローラ10は、この予測リスクに対して運転者が行ったリスク回避行動を、車載装置20及び車内カメラ21等の情報に基づいて評価する(リスク回避行動評価)。
【0039】
リスクは、車両1の衝突のような車両事故、車両1の姿勢安定性が喪失又は低下した状態(スピン、横転等)を含む。リスクを生じる原因となるリスク対象は、交通参加者(他車両、歩行者等)、ガードレール、境界線、交通信号(赤信号)、停止線等を含む。さらに、リスク対象は、走行路のリスク発生部位(カーブ路のクリッピングポイント等)を含む。これら対象物は、現在の車両挙動(車両ダイナミクス)が継続すると近い将来(例えば、10秒等の所定時間以内)にリスクを生じさせる可能性がある場合に、リスク対象となる。リスク回避行動は、運転者が予測リスクに対して行う行動であり、特に予測リスクの発生確率を減少させるように実行される車両操作(加速、制動及び/又は操舵)である。例えば、車両1と他車両の予測経路が交差し、これら車両の衝突が予測される場合に、衝突確率を低減させる車両操作、又は、車両1と他車両との最接近距離を所定距離以上とする車両操作である。さらには、現時点ではリスクを生じる可能性はないが、走行中に知覚すべき対象物や、所定時間よりも将来にリスクを生じる可能性がある対象物をリスク対象に含めてもよい。
【0040】
また、リスク回避行動は、運転者が操作部を操作する前に、リスク対象(例えば、衝突可能性のある他車両、カーブ路のクリッピングポイント付近)を知覚する行動も含む。例えば、車内カメラ21の画像情報に基づいて、運転者の視線がリスク対象に向けられたことや、リスクに対応する姿勢をとったこと(すなわち、運転者がリスク対象を知覚した)もリスク回避行動に含まれる。
【0041】
また、コントローラ10は、交通環境評価の結果に基づいて、運転者の現在の認知負荷を評価する(認知負荷評価)。コントローラ10は、例えば、車速に応じて、車両1から所定距離内の対象物の数が多いほど、運転者の認知負荷が大きいと評価する。認知負荷は、例えば、3段階(低、中、高)で評価することができる。また、コントローラ10は、運転者の車両操作や視線方向の情報に基づいて、運転者の認知能力レベルを分析・学習し、更新してもよい。この場合、認知負荷評価は、運転者の認知能力レベルに対する、現在の認知負荷の大きさの割合で計算することができる。
【0042】
また、コントローラ10は、車両1の物理的な運動を規定する車両モデルを記憶部に格納している。車両モデルは、車両1の緒元(質量、ホイールベース等)と物理変化量(速度、加速度、舵角等)との関係を運動方程式により表す。また、車両モデルには、走行環境評価の結果(例えば、路面摩擦係数)も適用することができる。
【0043】
また、コントローラ10は、車両1を運転する運転者のドライバモデルを記憶部に格納している。コントローラ10は、車載装置20からの入力情報に基づいて、運転者の操作特性を分析及び学習し、ドライバモデルを常時更新する。ドライバモデルは、運転者の操作特性を表しており、ある条件下における特定の操作に対する操作量、反応遅れ時間(時定数)等を含む。また、ドライバモデルには、認知負荷評価の結果(認知負荷の程度)及び身体機能評価の結果も適用することができる。例えば、認知負荷が高い状況では、ドライバの操作能力が低下するようにドライバモデルが補正される。また、身体機能評価の結果により、踏力や腕力が低いと判断されると、操作部の操作量や操作速度に関する時定数に反映される。コントローラ10は、ドライバモデルを用いることにより、運転者の操作を予測することができる。なお、コントローラ10は、運転能力の高い理想的な運転者の操作特性を表す理想ドライバモデルも記憶部に格納しており、理想的な操作を予測することもできる。
【0044】
コントローラ10は、車載装置20からの入力情報を車両モデル及びドライバモデルに適用することにより、現在から近い将来の間に生じると予測される車両ダイナミクスを計算することができる(車両ダイナミクス予測計算)。すなわち、コントローラ10は、現在の条件(交通環境、走行環境、認知負荷、身体機能)をドライバモデル及び車両モデルに入力することにより、現在から所定期間後(例えば、10秒後)の間に運転者によって行われる車両操作(操作の種類、操作量、操作タイミング等)を予測し、予測した車両操作により生じる予測車両ダイナミクスを計算することができる。
【0045】
さらに、コントローラ10は、運転能力評価を行う。運転能力は、運転者が種々のリスクを回避する能力の高さを表す。コントローラ10は、リスク回避行動評価の結果(運転者が行ったリスク回避行動)、予測車両ダイナミクスと実際の車両ダイナミクスとの差分、及び認知負荷評価の結果(認知負荷の程度)に基づいて、リスクに対する運転能力を評価又は計算する。リスクに対する運転能力は、例えば、運転者が予測リスクを回避するのに要するリスク回避必要時間とすることができる。リスク回避必要時間は、リスク回避行動の開始から予測リスクの消失までの時間、又は、運転者がリスクを知覚してからリスク回避行動を完了するまでに要する時間としてもよい。この場合、運転能力が低く評価されると、リスク回避必要時間はより大きな値として出力される。
【0046】
コントローラ10は、例えば、現在の車両挙動が所定時間だけ継続したと仮定した場合の将来の時点における車両1の予測走行経路を、ドライバモデルを用いて計算する。所定時間がある時間に達したとき、その時点の予測走行経路ではリスクを回避できなくなる。そして、このとき算出された予測走行経路において、リスクが発生するまでの時間(リスク余裕時間)をリスク回避必要時間としてもよい。
【0047】
コントローラ10は、算出した運転能力評価を用いて、運転能力データを更新することができる。運転者の運転能力は、時間経過と共に変化する。例えば、運転初心者は運転能力が向上する傾向があり、高齢者は運転能力が低下する傾向がある。運転能力データは、複数の評価期間に対応して、運転能力データセットを複数設定してもよい。例えば、短期(現在から1~6カ月前まで)、中期(現在から3~9ヵ月前まで)、長期(現在から1~2年前まで)の運動能力データセットを作成することができる。
【0048】
コントローラ10は、現在の車両ダイナミクス、運転能力評価の結果(現在の運転能力)、認知負荷評価の結果、及び身体機能評価の結果に基づいて機能再配分計算を実行する。通常運転時において、運転者(例えば、初心者、高齢者)は、自身の運転機能(知覚機能、判断機能、身体機能)を用いて運転性能を発揮する。しかしながら、運転者が予測リスクを回避できない場合、コントローラ10は、不足している運転能力に関する運転機能を車両1が代替して実行するように運転支援制御を実行する。また、異常時(例えば、意識喪失)においては、例えば、自動運転制御が実行され、運転者の運転機能が車両1の対応する同等の機能で代替される。
【0049】
コントローラ10は、各運転支援制御の作動条件(例えば、他車両との衝突余裕時間がX秒に達したとき)が満たされたとき、その運転支援制御に対応する車両制御システム40へ制御信号を出力する。また、コントローラ10は、運転者の運転能力を構成する複数の能力(知覚機能に対応する知覚能力、判断機能に対応する判断能力、身体機能に対応する運動能力)のうち、運転支援制御が実行された要因となった不足する能力を特定する。知覚能力はリスク又はリスク対象を認知する能力であり、判断能力はリスク対象によって生じる可能性のあるリスクに対して実行すべき車両操作及び操作タイミングを判断又は選択する能力であり、運動能力は選択した車両操作を適切な操作量及び操作速度で実行する能力である。
【0050】
そして、コントローラ10は、運転支援制御を実行する毎に、実行した支援の種類(運転支援制御又は自動運転制御)、及び対応する不足能力、実行日時、実行場所等を含む運転支援情報を車両制御履歴データベースに記録する。さらに、コントローラ10は、所定時(例えば、運転終了時(エンジンオフ時、又は、車速ゼロ時))に、車両制御履歴データベースに基づいて、運転者の運転能力を評価する運転能力評価情報を作成する。コントローラ10は、情報送信装置53を用いて、運転能力評価情報を運転者又は登録された外部の情報通信機器55へ送信する。運転者は、情報通信機器55を用いて運転能力評価情報を閲覧することができる。
【0051】
次に、本発明の実施形態による車両制御装置の運転支援処理を説明する。図4は車両制御のフローチャート、図5は報知制御のフローチャート、図6は運転能力評価情報の説明図、図7は運転単位情報の説明図、図8は時間変化情報の説明図である。コントローラ10は、運転者又は外部から入力装置(例えば、ナビゲーション装置32、情報通信装置33)を介して運転要求(目的地等)を受け取った後、車両制御を時間的に繰返し行う(例えば、0.1秒毎)。
【0052】
まず、図4に示すように、コントローラ10は、所定時間毎(例えば、0.1秒毎)に車載装置20から情報を取得する(S1)。コントローラ10は、取得した情報に基づいて、交通環境評価、走行環境評価、身体機能評価、リスク回避行動評価、車両ダイナミクス計算等の処理を実行する。
【0053】
また、コントローラ10は、車載装置20から取得した情報に基づいて、上述のように覚醒度判定の処理を実行する(S2)。また、コントローラ10は、覚醒度判定の結果に基づいて、運転者が覚醒状態であるか否かを判定する(S3)。運転者の覚醒度が所定閾値より低い場合(S3:No。例えば、覚醒度=「低」)、コントローラ10は自動運転(自律運転)を実行する(S4)。このとき、コントローラ10は、覚醒度が低い状態を知覚能力の不足と判定して、車両制御履歴データベースに記録する(S5)。車両制御履歴データベースには、実行した支援の種類(「自動運転制御」)、対応する不足能力(この場合、「知覚能力」)、実行日時、実行場所等が記録される。
【0054】
一方、運転者の覚醒度が所定閾値以上である場合(S3:Yes。例えば、覚醒度=「中」又は「高」)、コントローラ10は交通リスク評価の処理(S6)及び走行リスク評価の処理(S7)を実行する。具体的には、コントローラ10は、交通環境評価及び走行環境評価等に基づいて、現在の車両挙動(車両ダイナミクス)により、所定時間以内にリスクが生じる可能性があるか否かを判定する。コントローラ10は、現在から予測リスク(交通リスク、及び走行リスク)が発生するまでの時間(すなわち、リスク余裕時間TTR(time to risk))を計算する。リスク余裕時間TTRが所定時間(例えば、10秒)以下の場合、予測リスクがあると判定される。リスク余裕時間TTRは、車両1が現在の車両挙動(速度、加速度等の車両ダイナミクス)を維持した場合に、リスク領域に進入するまでの予想時間である。リスク領域への進入とは、例えば、車両1と他車両との衝突や、車両1のスピンが予測されるカーブ路内の位置である。
【0055】
また、コントローラ10は、取得した情報及び運転要求に基づいて、目標走行経路を演算する(S8)。目標走行経路は、現在から所定時間後(例えば、10秒後)までの目標走行軌跡(複数位置の位置情報)及び軌跡上の各位置における速度等を含む。コントローラ10は、運転要求、及び交通環境評価、走行環境評価、身体機能評価等の結果を用いて、所定の安全性及び走行効率を有するように目標走行経路を計算する。コントローラ10は、所定制約条件(例えば、横加速度が所定値以下)を満たす複数の目標走行経路を計算することができる。例えば、車両1の前方に障害物が存在する場合、コントローラ10は、障害物を回避するための複数の目標走行経路を設定することができる。なお、車両1は目標走行経路を逸脱しても他の走行経路を走行することが可能である。ただし、他の走行経路は所定基準未満であるため、走行効率や乗り心地は悪い。
【0056】
また、コントローラ10は、目標走行経路を走行するための目標車両ダイナミクスを演算する。目標車両ダイナミクスは、目標走行経路上の各位置における速度、加速度、ヨーレート、3軸回転モーメント(ピッチ、ヨー、ロール)等が含まれる。目標車両ダイナミクスは、車両1が運転支援制御及び自動運転制御を実行する場合に用いる制御目標値である。複数の目標走行経路に対応して、複数の目標車両ダイナミクス(又は制御目標値)を設定することができる。
【0057】
さらに、コントローラ10は、目標走行経路上の各位置において目標車両ダイナミクスの物理量を達成するために運転者及び車両1に対する運転性能要求である目標車両操作の操作量(アクセル開度、ブレーキ踏込量、操舵角等)又は車両制御システム40に対する制御信号を演算する。複数の目標走行経路により、所定の範囲を有する運転性能要求が設定される。
【0058】
また、コントローラ10は、認知負荷評価(S9)及び運転能力評価(S10)を実行する。コントローラ10は、交通環境評価、走行環境評価、身体機能評価等の結果を用いて、ドライバモデルに基づいて予測走行経路を計算する。そして、この予測走行経路に基づいて、コントローラ10は、運転者が予測リスクを回避するのに要する時間(リスク回避必要時間TER)を計算する。コントローラ10は、例えば、車両1の前方に障害物が存在する場合、ドライバモデルに基づいて、運転者が障害物を回避するために実行する車両操作を予測する。そして、コントローラ10は、この回避車両操作に要する時間をリスク回避必要時間TERに設定する。
【0059】
コントローラ10は、運転者の実際の車両操作と予測車両操作の差異に基づき、ドライバモデルを更新することができる。
なお、覚醒度判定の結果、及び認知負荷評価の結果を、運転能力評価を補正するために用いてもよい。例えば、覚醒度が低い場合や認知負荷が高い場合、運転能力評価は低く見積もられる。この場合、運転能力評価の値(リスク回避必要時間TER)は、所定の係数k(k>1)を乗じることにより補正される。
【0060】
次に、コントローラ10は、予測リスクを回避するための運転支援制御の作動条件が成立したか否かを判定する(S11)。作動条件が成立していない場合(S11:No)、コントローラ10は処理を終了する。一方、作動条件が成立した場合(S11:Yes)、コントローラ10は、運転支援制御を実行し(S12)、車両制御履歴データベースに記録する(S13)。このとき、コントローラ10は、運転者の運転能力を構成する複数の能力(知覚能力、判断能力、及び運動能力)のうち、いずれの能力の欠如に起因して運転支援制御が実行されたのかを判定する。車両制御履歴データベースには、運転支援制御の種類、対応する不足能力、実行日時、実行場所等が記録される。
【0061】
なお、コントローラ10は、複数の運転支援制御内の個々の運転支援制御と運転能力(知覚、判断、運動)との対応関係を示す対応データをメモリ12内に記憶している。知覚能力に対応する運転支援制御は、例えば、車両1の車速を法定速度まで減速する速度制御、車両1のヨーレートが所定値以上のときに運転者がアクセルペダル41bを踏んだ場合に作動する姿勢安定制御、車両1のヨーレートが所定値以上のときにブレーキペダル42bを踏んだ場合に作動する姿勢安定制御である。これらの場合、運転者は運転標識を超えた速度や車両1のヨーレート等のリスクを認知していない。
【0062】
また、判断能力に対応する運転支援制御は、例えば、カーブ路走行時に操舵角が適正値より小さい又は大きい場合に作動する操舵制御又はアクセル制御、前方車両と車両1との車間距離の時間変動が所定閾値を超えている場合に作動するアクセル制御又はブレーキ制御、操舵角の時間変動が所定閾値を超えている場合に作動する車線逸脱防止(レーンキープアシスト)制御、運転者がブレーキペダル42bを踏むタイミングが遅い場合に作動するブレーキ制御である。これらの場合、運転者は、リスクに対して操作部(アクセルペダル41b、ブレーキペダル42b、ステアリングホイール43b)の適切な車両操作の選択や操作タイミングを適切に判断していない。
【0063】
また、運動能力に対応する運転支援制御は、踏力不足によりブレーキペダル42bの踏込量が不足した場合に作動するブレーキ制御、踏力不足によりアクセルペダル41bの踏込量が不足した場合に作動するアクセル制御(高速道度の合流時など)、操舵速度が目標値より速い場合に作動する姿勢安定制御、操舵速度が目標値より遅い場合に作動するステアリング制御である。これらの場合、運転者は、身体機能の低下により操作部を適切な操作量、操作速度で操作することができない。
【0064】
次に、図5に示すように、コントローラ10は、所定時間(例えば、0.1秒)毎に車両1の運転が終了したか否かを判定している(S21)。なお、コントローラ10は、例えば、車両1のエンジンオフ(IGオフ)信号を検出したとき、及び/又は、車両1の速度ゼロを検出したときに、運転が終了したと判断することができる。
【0065】
運転終了時(S21:Yes)、コントローラ10は、運転能力評価情報を作成し(S22)、運転者の情報通信機器55へ送信する(S23)。なお、ステップS23を実行すると共に、又は、ステップS23に代えて、運転能力評価情報を情報報知装置50(特定的には、表示装置51)に表示させてもよい。
【0066】
図6に示すように、運転者は、運転能力評価情報を情報通信機器55により受信すると、その表示画面55aに運転能力評価情報60を表示させることができる。運転能力評価情報60は、最新の運転単位(例えば、5、10、20時間(運転時間又はエンジンオン時間))における運転能力の評価値を示す運転能力値情報61と、過去から現在にわたる所定期間(例えば、2年)における運転能力値情報61の時間変化を示す時間変化情報63と、最新の運転単位の期間における自動運転制御の作動時間の割合を示す自動運転割合情報64を含む。本実施形態では、運転単位は、運転時間又はエンジンオン時間等の時間によって規定することができる。
【0067】
コントローラ10は、運転能力値情報61を作成するため、車両制御履歴データベースに基づいて、現時点を含む運転単位内に実行された運転支援制御の実行回数をカウントする。また、コントローラ10は、時間変化情報63を作成するため、車両制御履歴データベースに基づいて、所定期間前から現在までの各運転単位における運転支援制御の実行回数をカウントする。さらには、コントローラ10は、自動運転割合情報64を作成するため、現時点を含む運転単位内に実行された自動運転制御の実行時間をカウントする。
【0068】
運転能力値情報61は、最新の運転単位内に実行された運転支援制御の実行回数(実行頻度)を表し、合計実行回数61Aと各能力別の実行回数62A(知覚能力)、62B(判断能力)、62C(運動能力)を含む。合計実行回数61Aでは、運転単位内で運転支援制御が介入した合計回数が多いほど、支援割合61bが大きくなり、運転者割合61aが小さくなる。また、各能力に関連する運転支援制御の実行回数62A、62B、62Cでも同様である。本実施形態では、運転支援制御の実行回数が少ないほど(すなわち、運転者割合61aの割合が高いほど)、運転能力は高く評価される。図6では、運転単位内に運転支援制御が複数回作動しており、その内訳としては、運動能力に関連付けられた運転支援制御の実行回数62Cが相対的に多い。
【0069】
時間変化情報63は、運転能力値情報61の運転者割合61aの所定期間にわたる変化を表す。図6では、時間と共に運転者割合61aが減少する傾向にある(すなわち、運転能力が低下する傾向にある)。なお、時間変化情報63も運転能力値情報61と同様に、各能力の運転者割合の時間変化をさらに含んでよい。
【0070】
図7は運転能力値情報61の合計実行回数61Aの複数の典型的なパターンを示す。図7(A)は、最新の運転単位において運転支援制御が作動しなかった例である。この場合、運転者は自らの運転能力に問題がないことを確認することができる。図7(B)は、運転支援制御が低い割合又は頻度で作動した例である。この場合、運転者は自らの運転のみではリスクを回避することができなかった場合があったことを認識し、運転をより慎重に行う動機付けを得る。
【0071】
一方、図7(C)は、運転支援制御が比較的高い割合で作動した例である。この場合、運転者は自らの運転能力の低下を認識する。これは、運転者に病院で診断を受ける動機付けを与える。また、図7(D)は、運転支援制御の作動割合が所定の閾値Gに達した例である。閾値Gは、運転免許を返納する目安のレベルに設定してある。この場合、運転者は、運転免許を返納することを検討するきっかけを得る。運転能力値情報61は、運転支援制御の介入に基づく、運転能力の客観的な指標である。このため、運転者は、運転免許を返還すべき時期が来たという事実を受け入れ易い。
【0072】
また、図8は、時間変化情報63の複数の典型的なパターンを示す。図8(A)は、運転支援制御が比較的高い割合で介入し(例えば、図7(B)、図7(C))、所定期間にわたって同じレベルで維持されている例である。この場合、運転者は、何等かの要因(病気、加齢等)により自らの運転能力の低下を自覚しているが、運転能力の評価が時間的に安定しているので、大きな不安なしに運転を継続することができる。
【0073】
また、図8(B)は、運転支援制御が低い割合で介入していたが(例えば、図7(B))、一時的に運転支援制御が高い割合(例えば、図7(C)、図7(D))で介入した例である。この場合、高い介入割合は一時的であったので、運転者は、運転を慎重に行うようになる。
【0074】
一方、図8(C)は、運転能力が減少傾向にある例である。運転支援制御の介入割合が時間と共に増加傾向にあり、運転能力が閾値Gに達している。この場合、運転者は、自らの運転能力の低下を認識し、病院での受診や、運転免許の返納を受け入れ安くなる。
【0075】
以下に本発明の実施形態による車両制御装置100の作用について説明する。
本実施形態において、車両1の運転者による車両操作を支援する車両制御装置100は、運転者の車両操作に起因して車両1にリスクが発生するか否かを判定し、リスクが発生すると判定した場合に、車両1がリスクを回避するように運転支援制御を実行するように構成されている(S12)。車両制御装置100は、運転支援制御が実行されたことを記録し(S13)、所定の運転単位における運転支援制御の実行頻度を計算し、実行頻度に基づいて運転者の運転能力を評価した運転能力評価情報60を作成し(S23)、運転能力評価情報60を運転者に報知する(S23)。
【0076】
このように構成された本実施形態では、運転者の車両操作に起因して発生するリスクに対して運転支援制御が実行された頻度に基づいて運転能力評価情報60が作成され、運転者に報知される。このように、本実施形態では、運転者の運転能力を運転支援制御の実行という指標により客観的に得ることができる。運転能力評価情報60がこのような客観的なデータに基づいた評価であるので、運転者は、運転能力の評価を心理的に受け入れ易い。よって、運転能力評価情報60において運転能力の評価が低い場合、運転者は、運転能力評価情報60を運転免許証の自主返納のための判断材料として用いることができる。
【0077】
また、本実施形態において好ましくは、運転能力評価情報60は、運転者の運転能力の運転単位における評価を含む。このように構成された本実施形態では、運転者は、各運転単位において、運転者の運転能力を客観的に把握することができる。
【0078】
また、本実施形態において好ましくは、運転能力評価情報60は、運転者の運転能力の運転単位における評価の所定期間にわたる時間変化を示す情報63を含む。このように構成された本実施形態では、運転者は、時間変化情報63により、運転者の運転能力の経時的的な変化を把握することができる。
【0079】
また、本実施形態において好ましくは、車両制御装置100は、運転能力評価情報60を車両1の外部の情報通信機器55へ送信する。このように構成された本実施形態では、運転者は、情報通信機器55を用いて運転能力評価情報60を任意の時間に閲覧することができる。
【0080】
また、本実施形態において好ましくは、車両制御装置100は、運転者の運転能力を構成する複数の能力のうち、いずれの能力の欠如に起因して運転支援制御が実行されたのかを判定し、複数の能力は、少なくとも知覚能力、判断能力、及び運動能力を含み、運転能力評価情報60は、複数の能力の各々の評価(62A,62B,62C)を含む。このように構成された本実施形態では、運転者は、運転者の運転能力を構成する知覚能力、判断能力、及び運動能力に対する評価を、客観的に把握することができる。
【0081】
また、本実施形態において好ましくは、知覚能力は、リスクを認知する能力であり、判断能力は、リスクに対して実行すべき車両操作を判断する能力であり、運動能力は、リスクに対して実行すべき車両操作を実行する能力である。
【符号の説明】
【0082】
1 車両
10 コントローラ
20 車載装置
40 車両制御システム
50 情報報知装置
55 情報通信機器
60 運転能力評価情報
100 車両制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8