(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178818
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20221125BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20221125BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H05K1/03 630H
H01L23/12 C
H01L23/12 Q
H05K1/03 610E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085884
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】井川 幸一
(72)【発明者】
【氏名】高木 桂二
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 康行
(72)【発明者】
【氏名】西村 充
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 翔太
(57)【要約】
【課題】半導体素子との接続を行う際にアンカー効果を発揮しやすくすることのできる配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板1は、少なくとも表面に絶縁層を有している基体(例えば、セラミック基板10)と、基体上に設けられている導体層(例えば、接続パッド20)とを備えている。接続パッド20は、表面層21と、表面層21で被覆された中間層22とを有している。中間層22の硬さは、表面層21よりも硬い。さらに、接続パッド20の平均表面粗さは、セラミック基板10の平均表面粗さよりも大きくなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面に絶縁層を有している基体と、
前記基体上に設けられている導体層と
を備え、
前記導体層は、表面層と、前記表面層で被覆された中間層とを有しており、
前記中間層の硬さは、前記表面層よりも硬く、かつ、
前記導体層の平均表面粗さは、前記基体の平均表面粗さよりも大きい、配線基板。
【請求項2】
前記表面層は、Auを含有している、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記中間層は、Cuを含有する金属層を有している、請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記絶縁層は、AlNを主成分とする、請求項1から3の何れか1項に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などが実装される配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などを搭載した半導体チップは、例えば、スイッチング素子、抵抗、コンデンサなどの様々な半導体素子で構成されている。この半導体チップは、例えば、セラミックなどの非導電性材料で形成されている絶縁基板上に実装され、モジュール化された配線基板を構成する。
【0003】
半導体チップを絶縁基板に電気的に接続する方法としては、例えば、ボンディングワイヤのような線状配線によって接続する方法が挙げられる。例えば、特許文献1には、直径の大きなボンディングワイヤが配線層に接続される配線基板に関する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の配線基板は、電気絶縁材料から成る基板と、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種より成り、前記基板に同時焼成により形成され、かつ直径が100μm以上のボンディングワイヤが接合される領域を有する配線層と、前記配線層の少なくともボンディングワイヤが接合される領域に被着され、厚さが4μm乃至13μmのNi層と、厚さが0.03μm乃至0.3μmのPd層と、厚さが0.05μm乃至0.3μm、表面の粗さが算術平均粗さ(Ra)で0.1μm乃至0.3μmのAu層とから成る被覆層とで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明は、直径が100μm乃至500μmのボンディングワイヤを強固に接続させることを目的としている。
【0007】
ところで、半導体素子を絶縁基板に電気的に接続する方法としては、上述のボンディングワイヤを用いる方法の他に、アレイ状に並んだバンプと呼ばれる突起状の端子によって接続する方法が挙げられる。この方法は、フリップチップ実装と呼ばれる。フリップチップ実装には、基板上の導体層に含まれる金(Au)と、半導体素子の接続端子に含まれる金(Au)との間で、Au-Au接合を行うものもある。
【0008】
このAu-Au接合を行う構成では、半導体素子および配線基板にそれぞれ設けられているAu層同士のアンカー効果を利用することで、接合強度を高めることができる。しかし、特許文献1に開示されている技術では、アンカー効果を利用した場合の接合強度を高めることは考慮されていない。
【0009】
そこで、本発明では、半導体素子との接続を行う際にアンカー効果を発揮しやすくすることのできる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面にかかる配線基板は、少なくとも表面に絶縁層を有している基体と、前記基体上に設けられている導体層とを備えている。前記導体層は、表面層と、前記表面層で被覆された中間層とを有しており、前記中間層の硬さは、前記表面層よりも硬く、かつ、前記導体層の平均表面粗さは、前記基体の平均表面粗さよりも大きい。
【0011】
上記の構成によれば、より硬い中間層上に比較的柔らかい表面層が設けられていることで、導体層の表面が変形しやすい構成となる。さらに、導体層の平均表面粗さが基体の平均表面粗さよりも大きくなっていることで、導体層の表面には比較的大きな凹凸が形成された状態となる。これにより、配線基板の導体層上に半導体素子などの接続端子を接合させる場合に、導体層の表面に形成された凹凸をより容易に変形させることができるため、接合部のアンカー効果がより発揮されやすくなる。したがって、配線基板と半導体素子との接合強度を向上させることができる。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記表面層は、Auを含有していてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、配線基板に実装される半導体素子との間でAu-Au接合を行うことができる。
【0014】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記中間層は、Cuを含有する金属層を有していてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、例えば、Au、Au-Su合金、およびAlなどで表面層を形成した場合に、表面層よりも硬い中間層を形成することができる。また、比較的安価なCuを含有する金属層で中間層を形成することで、製造コストを減らすことができる。
【0016】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記絶縁層は、AlNを主成分としてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、絶縁層の放熱性を向上させることができる。そのため、より放熱性の高い配線基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、半導体素子との接続を行う際にアンカー効果を発揮しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態にかかる配線基板の一部分の構成を示す断面模式図である。
【
図2】一実施形態にかかる配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示す製造工程中の研磨工程およびスパッタ工程などを説明する模式図である。
【
図4】
図2に示す製造工程中の金属層形成工程および粗面化工程などを説明する模式図である。
【
図5】
図2に示す製造工程における導体パターン形成工程などを説明する模式図である。
【
図6】
図2に示す製造工程における無電解めっき工程などを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、配線基板1を例に挙げて説明する。配線基板1は、例えば、発光ダイオード(LED)素子などの半導体素子を搭載するための配線基板として利用される。
【0022】
図1には、配線基板1の一部分の断面構成を示す。本実施形態では、便宜上、略平板状の配線基板1において半導体素子が搭載される側の面を上面10aとし、その反対側の面を下面10bとする。但し、配線基板1の上面および下面の定義はこれに限定はされず、任意に決めることができる。
【0023】
配線基板1は、主として、セラミック基板(基体)10と、複数の導体パターン(例えば、接続パッド20など)とで構成されている。
【0024】
セラミック基板10は、配線基板1の土台となる部材である。セラミック基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とする。ここで、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするとは、セラミック基板10に含まれる種々の化合物のうち、AlNの含有量が最も多いことを意味する。セラミック基板10に含まれるAlNの含有量は、質量比で90%以上であることが好ましい。
【0025】
セラミック基板10は、1つまたは複数のセラミックグリーンシート(AlNシートとも呼ばれる)を焼成して得られる。セラミック基板10が複数のAlNシートから形成される場合には、セラミック基板10は、積層された複数のAlN層を有している。
【0026】
上記のように、本実施形態にかかる配線基板1は、AlNを主成分とするセラミック基板10で形成されている。しかし、セラミック基板10の材料は、AlNに限定されない。他の例では、セラミック基板10は、例えば、アルミナ(Al2O3)を主成分とするものであってもよい。
【0027】
また、本実施形態では、配線基板1を構成しているセラミック基板10(すなわち、基体)自体が絶縁性を有する絶縁基板である。しかし、本発明にかかる配線基板において、基体は絶縁基板に限定されない。例えば、別の実施態様では、基体は、金属製の板状部材と、この板状部材の表面に設けられている絶縁層(例えば、AlN層)とを有する構成であってもよい。
【0028】
セラミック基板10の表面(具体的には、上面10aおよび下面10bなど)は、ある程度の平坦さを有していることが好ましい。これにより、セラミック基板10の表面に形成された導体層上に入出力端子(接続端子)などを接合した場合に、接合部において起こり得るセラミック基板のマイクロクラックの発生、および入出力用端子の接合強度の低下などを抑制することができる。
【0029】
セラミック基板10の表面を平坦化するために、セラミック基板10の表面は、研磨されることが好ましい。研磨の方法としては、例えば、ラップ(Lap)研磨、鏡面研磨、バフ研磨などが挙げられる。本実施形態の配線基板1では、セラミック基板10の表面を鏡面状態になるまで研磨する必要性は低い。そのため、上記の研磨方法のうち、ラップ研磨を採用することが好ましい。これにより、より手間のかかる鏡面研磨を行うことなく、セラミック基板10の表面を適度に平坦化することができる。
【0030】
セラミック基板10の表面の平坦度合は、例えば、平均表面粗さSaで表すことができる。Saは、算術平均面粗さを表すパラメータであり、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表すものである。Saは、レーザ顕微鏡を用いて、100μm×100μmの範囲内の各点の高さを測定することによって導き出すことができる。
【0031】
本実施形態では、セラミック基板10の上面10aの平均表面粗さSa2は、例えば、0.4μm以上0.7μm以下の範囲内とすることができる。
【0032】
導体パターンは、セラミック基板10の上面10a、下面10b、および内部などに設けられている。各導体パターンは、それぞれ所定の形状に形成されており、例えば、配線、接続パッド、および電極などとして機能する。
【0033】
例えば、
図1に示す例では、セラミック基板10の上面10aに、導体パターンの一例である接続パッド(導体層)20が設けられている。接続パッド20は、他の電子部品との接続端子(入出力端子)などとして用いられる。例えば、接続パッド20は、LED素子などの半導体素子の接続端子と電気的に接続される。
【0034】
接続パッド20は、主として、表面層21、中間層22、および接着層23を有している。これらの各層は、いずれも導電性を有している。
【0035】
表面層21は、接続パッド20の最表面に設けられている。表面層21は、中間層22を被覆するように設けられている。表面層21は、例えば、中間層22の表面にめっき処理を行うことによって形成することができる。
【0036】
表面層21は、比較的柔らかい金属材料で形成されていることが好ましい。これにより、表面層21の平均表面粗さSa1を、下層の中間層22の平均表面粗さSa3に依存させることができる。例えば、表面層21は、金(Au)、金錫(Au-Su)合金、およびアルミニウム(Al)から選択される金属材料で形成することができる。本実施形態では、表面層21は、Auを含有するめっき膜によって形成されている。また、本実施形態では、表面層21の平均表面粗さSa1は、例えば、0.8μm以上2.8μm以下とすることができる。
【0037】
中間層22は、表面層21と接着層23との間に設けられている。中間層22は、銀(Ag)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、およびニッケル(Ni)から選択される金属を含有する金属層を少なくとも一つ有している。
【0038】
中間層22の硬さは、表面層21の硬さよりも硬い。すなわち、中間層22は、表面層21を形成している金属材料よりも硬い金属材料で形成されている。これにより、中間層22の硬さを表面層21よりも硬くすることができ、表面層21の平均表面粗さSa1を中間層22の平均表面粗さSa3に依存させやすくすることができる。
【0039】
例えば、表面層21が、金(Au)、金錫(Au-Su)合金、およびアルミニウム(Al)から選択される金属材料で形成されている場合、中間層22は、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、およびニッケル(Ni)から選択される金属材料で形成されることが好ましい。これにより、表面層21よりも硬い中間層22を形成することができる。
【0040】
より具体的には、中間層22は、Cuを主成分とするCu層で形成されていてもよい。ここで、Cuを主成分とするとは、中間層22に含まれる種々の化合物のうち、Cuの含有量が最も多いことを意味する。
【0041】
中間層22は、例えば、めっき処理(具体的には、電解めっき処理)、印刷ペーストによるメタライズ、およびスクリーン印刷などを用いて中間金属層22Aを形成した後、中間金属層22Aの表面を粗面化することによって得られる。中間金属層22Aの表面を粗面化する方法としては、例えば、エッチング、および研磨などが挙げられる。
【0042】
これにより、比較的粗い表面を有する中間層22を形成することができる。すなわち、中間層22の平均表面粗さSa3を、セラミック基板10の上面10aの平均表面粗さSa2よりも大きくすることができる。本実施形態では、中間層22の平均表面粗さSa3は、例えば、1.0μm以上3.0μm以下とすることができる。
【0043】
このような中間層22上に表面層21が形成されることで、表面層21の平均表面粗さSa1を、セラミック基板10の上面10aの平均表面粗さSa2よりも大きくすることができる。
【0044】
接着層23は、セラミック基板10の上面10a上に設けられており、接続パッド20の最下層を形成している。このような接着層23が設けられていることで、接着層23上に配置される中間層22および表面層21のセラミック基板10に対する密着性を高めることができる。
【0045】
接着層23は、例えば、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、銅(Cu)、およびモリブデン(Mo)の少なくとも何れかを含有する。本実施形態では、接着層23は、チタン(Ti)を主成分とする第1層と、パラジウム(Pd)を主成分とする第2層とで形成されている。ここで、TiまたはPdを主成分とするとは、第1層または第2層に含まれる金属元素のうち、TiまたはPdの含有量が最も多いことを意味する。なお、第2層は、モリブデン(Mo)を主成分とする金属層であってもよい。
【0046】
また、第1層は、金属元素としてTiのみを含むものであってもよく、第2層は、金属元素としてPdのみを含むものであってもよい。Pdは、Tiよりも酸化しにくいという特性を有する。そのため、Tiを主成分とする第1層を覆うように、Pdを主成分とする第2層を設けることで、接着層23の表面に酸化膜が形成されることを抑制することができる。
【0047】
このように、接着層23は、複数の金属層で形成されていてもよいし、一つの金属層のみで形成されていてもよい。
【0048】
以上のように、接続パッド20は、接着層23と、接着層23上に設けられている中間層22と、中間層22上に設けられている表面層21とで構成されている。
【0049】
なお、表面層21は、単層のめっき層で構成されていてもよいし、複数のめっき層で構成されていてもよい。複数のめっき層は、無電解めっき処理を複数回行うことによって形成することができる。
【0050】
表面層21が複数のめっき層で構成される場合には、表面層21は、Niめっき層と、Auめっき層とが積層された積層構造を有している。この場合、表面層21の最表面は、Auめっき層で形成されていることが好ましい。これにより、接続パッド20の最表面に設けられたAuめっき層と、配線基板1に搭載されるLED素子などの接続端子に含まれる金(Au)との間で、Au-Au接合が実現できる。
【0051】
続いて、配線基板1の製造方法について説明する。ここでは、セラミック基板10の上面10aに接続パッド20を形成する工程を中心に説明する。この工程以外の配線基板1の製造方法については、従来公知の配線基板の製造方法が適用できる。
【0052】
図2には、配線基板1の製造工程の一部を工程順に示す。
図2では、主に、研磨工程(S10)から無電解めっき工程(S80)までの各工程を示している。また、
図3、
図4、
図5、および
図6には、各工程の様子を、工程Aから順に示す。
【0053】
図2に示す各工程を行うにあたって、先ず、セラミック基板10を準備する。セラミック基板10は、単層または複数層のセラミックシート(例えば、AlNシート)を焼成することによって得ることができる。
【0054】
AlNシートは、主原料である窒化アルミニウム(AlN)粉末に、焼結助剤(例えば、イットリア、カルシアなど)及び適当な有機溶剤、溶媒などを添加混合してスラリーを作製した後、シート状に成形することで得られる。そして、得られたAlNシートにビアおよび内層配線などとなる導体パターンを形成する。セラミック基板10が複数層のAlNシートで形成される場合には、複数のAlNシートを積層する。その後、AlNシートの単層体または積層体を焼成して、セラミック基板10を得る。
【0055】
以上のようにしてセラミック基板10を準備した後、研磨工程(S10)を行う。この工程では、セラミック基板10の上面10a(および下面10b)を研磨して、ある程度平坦化する。研磨の方法としては、例えば、ラップ(Lap)研磨、鏡面研磨、バフ研磨などを採用することができる。これらの研磨方法のうち、ラップ研磨を採用することが好ましい。これにより、平均表面粗さSa2が、例えば、0.4μm以上0.7μm以下の範囲内となる上面10aを有するセラミック基板10が得られる(
図3の工程A参照)。
【0056】
続いて、スパッタ工程(S20)を行う。この工程では、セラミック基板10の上面10aに対してスパッタリングを行って、接着層23となる下層金属層23Aを形成する。具体的には、先ず、チタン(Ti)を主成分とする第1層を、約100~300nmの厚さとなるように成膜し、その後、パラジウム(Pd)を主成分とする第2層を、約50~100nmの厚さとなるように成膜する(
図3の工程B参照)。
【0057】
続いて、金属層形成工程(S30)を行う。この工程では、セラミック基板10の下層金属層23A上に、中間層22となる中間金属層22Aを形成する(
図4の工程C参照)。この工程では、例えば、めっき処理、印刷ペーストによるメタライズ、およびスクリーン印刷などの従来公知の金属層形成方法を採用することができる。これらの中でも、めっき処理(具体的には、電解めっき処理)を用いて金属層を形成することが好ましい。
【0058】
その後、粗面化工程(S40)を行う。この工程では、中間金属層22Aの表面を粗面化する。すなわち、中間金属層22Aの表面に凹凸を形成する。粗面化工程(S40)では、例えば、エッチングが用いられる。具体的には、従来公知のエッチング処理液を用いて、表面をエッチングして、粗くする。また、粗面化工程(S40)では、エッチング以外の方法を採用してもよい。エッチング以外の方法としては、例えば、研磨剤を用いて表面を研磨し、表面粗さを大きくする方法などが挙げられる。
【0059】
これにより、比較的粗い表面を有する中間層22を形成することができる。具体的には、セラミック基板10の上面10aの平均表面粗さSa2よりも大きい平均表面粗さSa3を有する中間金属層22Aを形成することができる(
図4の工程D参照)。ここで形成される中間層22の平均表面粗さSa3は、例えば、1.0μm以上3.0μm以下とすることができる。
【0060】
中間金属層22Aは、銀(Ag)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、およびニッケル(Ni)から金属材料で形成することができる。より具体的には、中間金属層22Aは、Cuを主成分とするCu層で形成することができる。中間金属層22Aの厚さは、例えば、1.0μm以上10.0μm以下とすることができる。
【0061】
続いて、導体パターン形成工程(S50)を行う。この工程では、例えば、フォトリソグラフィなどの従来公知のパターン形成方法を用いて、接続パッド20を構成する導体パターンを形成する(
図5の工程E参照)。例えば、フォトリソグラフィによって導体パターンを形成する場合には、中間金属層22A上にレジスト51を配置し、さらにレジスト51上の所定の位置にマスク52を配置した状態で、光Lを照射する。
【0062】
その後、エッチング工程(S60)を行う。この工程では、例えば、ウエットエッチングなどの従来公知のエッチング方法を用いて、所定領域(例えば、レジスト51が配置されていない領域)の中間金属層22Aおよび下層金属層23Aを除去する(
図5の工程F参照)。
【0063】
エッチング工程(S60)の終了後、レジスト剥離工程(S70)を行う。これにより、セラミック基板10の上面10aに所定の形状を有する導体パターン(具体的には、接着層23および中間層22)が得られる(
図6の工程G参照)。
【0064】
続いて、無電解めっき工程(S80)を行う。この工程では、従来公知の無電解めっき方法を用いてめっき処理を行い、めっき被膜(すなわち、表面層21)を形成する(
図6の工程H参照)。ここで形成される表面層21の厚さは、例えば、0.5~2.0μmとすることができる。表面層21の厚さが比較的薄く(中間層22の平均表面粗さSa3の値よりも小さいことが好ましい)、また、表面層21が比較的柔らかい金属材料で形成されることで、表面層21の平均表面粗さSa1は、下層の中間層22の平均表面粗さSa3に依存するようになる。そのため、中間層22の平均表面粗さSa3が、例えば、1.0μm以上3.0μm以下の範囲内の場合、表面層21の平均表面粗さSa1は、例えば、0.8μm以上2.8μm以下の範囲内となり得る。
【0065】
なお、表面層21が複数のめっき層で構成される場合には、無電解めっき処理を複数回行う。これにより、Niめっき層上にAuめっき層が積層された積層構造を有する表面層21を形成することができる。
【0066】
無電解めっき工程(S80)が終了すると、洗浄などの後処理の工程が行われる。以上のようにして、接続パッド20を備えている配線基板1が製造される。
【0067】
(実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、少なくとも表面に絶縁層を有している基体と、基体上に設けられている導体層とを備えている。本実施形態では、セラミック基板10が基体の一例に相当する。本実施形態では、セラミック基板10自体が絶縁性を有している。
【0068】
セラミック基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とすることが好ましい。また、基体の表面に絶縁層が設けられている構成では、絶縁層はAlNを主成分としていることが好ましい。
【0069】
これにより、例えば、アルミナを主成分とするセラミック基板と比較して、放熱性をより向上させることができる。そのため、LED素子などのように発熱量のより大きい半導体素子を配線基板1に実装する場合に、本実施形態の構成を適用することで、半導体素子で発生した熱を、半導体素子側の接続端子と接続パッド20との接合部分を介して、より効率的にセラミック基板10へ伝達させることができる。そして、配線基板1に接続されたヒートシンクなどの放熱部材(図示せず)から熱を放出することで、半導体素子が高温となることを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、接続パッド20が導体層の一例に相当する。接続パッド20は、セラミック基板10の上面10aに設けられている。接続パッド20は、表面層21と、表面層21で被覆された中間層22とを有している。中間層22の硬さは、表面層21よりも硬い。さらに、接続パッド20の平均表面粗さSa1は、セラミック基板10の平均表面粗さSa2よりも大きくなっている。
【0071】
上記の構成によれば、より硬い中間層22上に比較的柔らかい表面層21が設けられていることで、接続パッド20の表面が変形しやすい構成となる。さらに、接続パッド20の平均表面粗さSa1がセラミック基板10の平均表面粗さSa2よりも大きくなっていることで、接続パッド20の表面には比較的大きな凹凸が形成された状態となる。
【0072】
これにより、配線基板1と半導体素子との接合時に、例えば、圧力、熱、超音波などのエネルギーを付与することで、接続パッド20の表面の金属層を容易に変形させることができる。そのため、接合部のアンカー効果がより発揮されやすくなり、接続パッド20と半導体素子の接続端子との接合強度を向上させることができる。また、接続パッド20と半導体素子の接続端子とがこのように接合されることで、互いの接触面積を大きくすることができ、接続信頼性を向上させることができる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 :配線基板
10 :セラミック基板(絶縁層を有している基体)
10a :(セラミック基板の)上面(表面)
20 :接続パッド(導体層)
21 :表面層
22 :中間層
23 :接着層
Sa1 :表面層の平均表面粗さ
Sa2 :セラミック基板の平均表面粗さ
Sa3 :中間層の平均表面粗さ