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  • 特開-洗浄装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178819
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/08 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B08B3/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085888
(22)【出願日】2021-05-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】390019884
【氏名又は名称】ジャパン・フィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内野 正英
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AA47
3B201AB03
3B201BB02
3B201BB05
3B201BB82
3B201BB95
3B201CD22
3B201CD32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】洗浄溶剤が当該洗浄溶剤の沸点以上となるおそれがなく、当該洗浄溶剤を冷却した状態で、この洗浄溶剤による被洗浄物の液洗浄を行うことを可能として当該洗浄溶剤の洗浄溶剤ガスの大気への拡散を抑制するとともに、簡易かつ安全な構成にて冷却した洗浄溶剤による液洗浄を可能とする。
【解決手段】洗浄溶剤3を収納した洗浄槽1と、当該洗浄溶剤3と同じ洗浄溶剤3を収納した貯液槽4と、当該貯液槽4内に設けてこの貯液槽4内の洗浄溶剤3を冷却するためのチラーユニット8とを備え、上記洗浄槽1と貯液槽4との間には、上記チラーユニット8により冷却した洗浄溶剤3を当該貯液槽4から洗浄槽1に移送するための供給管10と、上記洗浄槽1から貯液槽4に洗浄溶剤3を還流するための還流管11とを備え、上記洗浄槽1内の洗浄溶剤3と貯液槽4内の洗浄溶剤3とを循環させることにより、上記洗浄槽1内の洗浄溶剤3を冷却可能とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄溶剤を収納した洗浄槽と、当該洗浄溶剤と同じ洗浄溶剤を収納した貯液槽と、当該貯液槽内に設けてこの貯液槽内の洗浄溶剤を冷却するためのチラーユニットとを備え、上記洗浄槽と貯液槽との間には、上記チラーユニットにより冷却した洗浄溶剤を当該貯液槽から洗浄槽に移送するための供給管と、上記洗浄槽から貯液槽に洗浄溶剤を還流するための還流管とを備え、上記洗浄槽内の洗浄溶剤と貯液槽内の洗浄溶剤とを循環させることにより、上記洗浄槽内の洗浄溶剤を冷却可能としたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
上記チラーユニットは、貯液槽内の洗浄溶剤を、この洗浄溶剤の沸点未満に冷却することを特徴とする請求項1の洗浄装置。
【請求項3】
上記チラーユニットは、冷凍器と、この冷凍器内に収納した冷媒ガスを流通させる冷却管とを備え、当該冷却管は上記貯液槽内に配置され、上記冷凍器から冷却管に冷媒ガスを流通させることにより、上記貯液槽内の洗浄溶剤を冷却可能としたことを特徴とする請求項1、または2の洗浄装置。
【請求項4】
上記還流管には、上記洗浄溶剤中の異物を除去するためのフィルターを設けたことを特徴とする請求項1、または2の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄溶剤にて機械部品、電子部品、医療機器等の被洗浄物を、冷却した洗浄溶剤にて洗浄するための洗浄装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-31255号公報
【0004】
1995年以前から、洗浄溶剤による液洗浄や蒸気洗浄が広く一般的に行われているが、この洗浄溶剤は高温に加熱して洗浄することにより、被洗浄物に付着した油などの汚れを効率的に除去することができる。しかしながら、例えば当時一般的に使用されていたフロンガスや1.1.1-トリクロロエタンを加熱した場合には、洗浄溶剤ガスが発生して大気中に多く拡散されるものとなり、オゾン層の破壊を引き起こすことが問題となっていた。
【0005】
そのため、1995年以降には、上記フロンガス等がオゾン層を破壊する物質であるとして世界的に全廃となり、この頃から洗浄の現場でも地球環境を守るために洗浄溶剤の使用基準が一層厳しくなってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして現在でも被洗浄物に付着した油等を除去する洗浄溶剤として、塩素系溶剤、臭素系溶剤、フッ素系溶剤、アルコール類等が多く使用されている。尚、塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等の塩素系溶剤や臭素系溶剤は毒性が強く、また、これらの物質を大気に放出した場合には、やはり地球温暖化につながるものとなる。また環境負荷が比較的小さい洗浄溶剤としてはHFO等のフッ素系溶剤やI.P.A.等のアルコール類が挙げられるが、フッ素系溶剤は価格が高く洗浄コストが高くつくとともに、アルコール類については価格は安いものの引火点が低く危険性が高い。
【0007】
また、被洗浄物に付着した油等を溶解除去するためには、洗浄溶剤の温度が高い方が効率が良いという考えが主流であり、洗浄溶剤を常温あるいは加熱して使用することが一般的であった。そのため、洗浄作業中に、温度の高い洗浄溶剤から洗浄溶剤ガスが大気に拡散しやすいものとなっていた。また、洗浄槽からの洗浄溶剤ガスの拡散を防ぐために洗浄槽内を完全に密閉することも考えられるが、このような密閉状態を保持し続けることが可能な装置は、構造が複雑なものとなり製造コストが高くつくとともに作業も煩雑なものとなる。
【0008】
そこで、このような洗浄溶剤ガスの大気中への拡散を防ぐために、以前より洗浄溶剤を冷却した状態で被洗浄物を洗浄する方法が検討されていた。そしてそのような洗浄方法に用いる洗浄装置として、洗浄槽内に収納された洗浄溶剤を冷却するためのチラーユニットを、当該洗浄槽内に設ける方法が知られている。
【0009】
即ち特許文献1や図2に示す如く、このチラーユニット(31)用いた方法では、当該チラーユニット(31)の熱交換パイプ(32)の中で水を循環させることにより、洗浄槽(33)内の洗浄溶剤(34)を間接的に冷却するものである。しかしながら、このような方法では、例えば洗浄溶剤(34)を0℃以下に冷却しようとした場合には、熱交換パイプ(32)中の水が凍るため、当該水の循環が困難となり装置に不具合が生じるおそれがあった。
【0010】
また図2に示す如く、このようなチラーユニット(31)の熱交換パイプ(32)は、製造段階から洗浄槽(33)内に設置しておく必要があったため、既設の洗浄槽(33)に後から当該チラーユニット(31)を取り付けることは困難なものとなっていた。
【0011】
そこで本願では上述の如き課題を解決しようとするものであって、洗浄溶剤を冷却した状態で、この洗浄溶剤による被洗浄物の液洗浄を行うことを可能として当該洗浄溶剤の洗浄溶剤ガスの大気への拡散を抑制するとともに、従来のチラーユニットを使用することなく簡易かつ安全な構成にて冷却した洗浄溶剤による液洗浄を可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は上述の如き課題を解決するため、洗浄溶剤を収納した洗浄槽と、当該洗浄溶剤と同じ洗浄溶剤を収納した貯液槽と、当該貯液槽内に設けてこの貯液槽内の洗浄溶剤を冷却するためのチラーユニットとを備え、上記洗浄槽と貯液槽との間には、上記チラーユニットにより冷却した洗浄溶剤を当該貯液槽から洗浄槽に移送するための供給管と、上記洗浄槽から貯液槽に洗浄溶剤を還流するための還流管とを備え、上記洗浄槽内の洗浄溶剤と貯液槽内の洗浄溶剤とを循環させることにより、上記洗浄槽内の洗浄溶剤を冷却可能としたものである。
【0013】
上記チラーユニットは、貯液槽内の洗浄溶剤を、この洗浄溶剤の沸点未満に冷却するものであっても良い。このように洗浄溶剤を沸点未満に冷却することにより、沸点未満に冷却した被洗浄物にて被洗浄物の液洗浄を行った際に、当該洗浄溶剤の洗浄溶剤ガスの大気への拡散抑制効果を更に高めることができる。
【0014】
また、上記チラーユニットは、冷凍器と、この冷凍器内に収納した冷媒ガスを流通させる冷却管とを備え、当該冷却管は上記貯液槽内に配置され、上記冷凍器から冷却管に冷媒ガスを流通させることにより、上記貯液槽内の洗浄溶剤を冷却可能としたものであってもよい。
【0015】
また、上記還流管には、上記洗浄溶剤中の異物を除去するためのフィルターを設けたものであってもよい。これにより、使用中の洗浄溶剤を異物のない状態で冷却することができるため、熱交換性の高い冷却を行うことが可能となる。またフィルターの種類によっては、洗浄槽内に収納した洗浄溶剤のろ過を液洗浄と同時に行うことができるため、洗浄溶剤の清浄化を効率的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記の如く構成したものであって、洗浄槽内の洗浄溶剤と同じ洗浄溶剤を貯液槽内にて冷却し、この冷却した洗浄溶剤にて液洗浄を行うことができるため、当該洗浄溶剤の洗浄溶剤ガスの大気への拡散を抑制することができる。また、従来のチラーユニットの如く熱交換パイプを使用する必要がなく、貯液槽にて冷却した洗浄溶剤を洗浄槽内に供給して洗浄に直接使用するものであるから、簡易な構成にて被洗浄物の洗浄を行うことができるとともに、洗浄槽内に洗浄溶剤を冷却するための熱交換パイプを設ける必要がない。また、洗浄溶剤を直接的に冷却することができるため、熱交換性の高い冷却を効率よく行うことが可能となりエネルギーの損失を低減することができる。
【0017】
そのため、当該熱交換パイプが洗浄溶剤との接触等により破損するという事態が生じることなく、洗浄を安全かつ円滑に行うことができる。また、従来のチラーユニットの如く水を使用するものではなく貯液槽にて冷却した洗浄溶剤を使用するものであるから、洗浄溶剤を0℃以下に冷却しても水が凍る事態が生じることがなく、装置を安心且つ安全に使用することができる。
【0018】
また本発明は、従来発明の如く洗浄槽の内部にチラーユニットの熱交換パイプを洗浄槽に設置したものではないため、既設の洗浄槽にも後から簡単にチラーユニットを取り付けることが可能である。そのため、既設の洗浄槽からの溶剤の大気への拡散を減少させることが可能となり、地球環境対策にも対応可能なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明を示す実施例1の概念図。
図2】従来例を示す概念図。
【実施例0020】
本願発明の実施例1を図1に於いて説明すると、(1)は洗浄槽であって、この洗浄槽(1)の内部には、被洗浄物(2)を液洗浄するための洗浄溶剤(3)を収納している。そしてこの洗浄槽(1)とは別に、当該洗浄溶剤(3)の貯液槽(4)を設けている。そしてこの貯液槽(4)内には、上記洗浄槽(1)内に収納した洗浄溶剤(3)と同じ洗浄溶剤(3)を収納している。
【0021】
また上記貯液槽(4)の底部側には冷却管(5)を固定配置するとともに、この貯液槽(4)に隣接して冷媒ガス(13)を収納した冷凍器(6)を設けている。そしてこの冷凍器(6)と貯液槽(4)の冷却管(5)の両端とを、一対の連通管(7)にて連通可能に連結し、当該冷却管(5)と冷凍器(6)とを連通可能な状態としている。尚、上記貯液槽(4)、冷凍器(6)、連通管(7)により、本実施例のチラーユニット(8)を構成している。
【0022】
また図1に示す如く、上記洗浄槽(1)と貯液槽(4)との間には、この貯液槽(4)から洗浄槽(1)に当該貯液槽(4)内の洗浄溶剤(3)を供給するための供給管(10)を設けるとともに、上記洗浄槽(1)から貯液槽(4)側に当該洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)を還流する還流管(11)を、各々設けている。そして上記還流管(11)には、洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)を貯液槽(4)側に移送させるためのポンプ(12)と、洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)中の異物を除去するためのフィルター(14)を設けている。
【0023】
これにより、使用中の洗浄溶剤(3)を異物のない状態で冷却することができるため、熱交換性の高い冷却を保持することが可能となる。またフィルター(14)の種類によっては、洗浄槽(1)内に収納した洗浄溶剤(3)のろ過を液洗浄と同時に行うことができるため、当該洗浄溶剤(3)の清浄化を効率的に行うことが可能となる。
【0024】
上記の如く構成した洗浄装置を用いて被洗浄物(2)を洗浄する洗浄方法について以下に説明する。まず、上記冷凍器(6)内に冷媒ガス(13)を収納するとともに、上記貯液槽(4)内に洗浄溶剤(3)を収納する。そして、冷凍器(6)内にて冷却した冷媒ガス(13)を連通管(7)を通じて貯液槽(4)内の冷却管(5)に流通させることにより、貯液槽(4)内の洗浄溶剤(3)を冷却する。
【0025】
そして、上記還流管(11)に設けたポンプ(12)を作動させることにより、上記の如く貯液槽(4)内にて冷却された洗浄溶剤(3)を、供給管(10)を介して洗浄槽(1)内に移送させる。そしてこの洗浄槽(1)内にて冷却された洗浄溶剤(3)が一定量貯留された後、被洗浄物(2)の液洗浄を行う。そして、洗浄槽(1)内に供給された洗浄溶剤(3)は、再び還流管(11)を通じて貯液槽(4)に還流され、再度冷凍器(6)によって貯液槽(4)内で冷却され、再び洗浄槽(1)に供給される。
【0026】
上記の如く、被洗浄物(2)の洗浄が行われている間、洗浄槽(1)内と貯液槽(4)内の洗浄溶剤(3)は、供給管(10)及び還流管(11)を通じてポンプ(12)の作動により循環し、貯液槽(4)内の洗浄溶剤(3)は冷却管(5)にて冷却されて再び洗浄槽(1)内に供給するものとなるため、洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)は常に冷却された状態に維持されるものとなる。
【0027】
よって、冷却された洗浄溶剤(3)により被洗浄物(2)の液洗浄を確実に行うことが可能となる。よって、洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)をこの洗浄溶剤(3)の冷却した状態を維持することができるため、当該洗浄溶剤(3)の洗浄溶剤(3)ガスの大気への拡散を抑制することが可能となる。尚、当該洗浄溶剤(3)を貯液槽(4)にて沸点未満に冷却した場合には、ガスの大気への拡散抑制効果を更に向上させることが可能となる。また、従来のチラーユニットの如く熱交換パイプを使用する必要がなく、貯液槽(4)にて冷却した洗浄溶剤(3)を洗浄槽(1)内に直接供給して使用するものであるから、簡易な構成にて被洗浄物(2)の液洗浄を行うことができるとともに、洗浄槽(1)内に熱交換パイプを設置する必要がない。
【0028】
そのため、当該熱交換パイプが洗浄溶剤(3)との接触等により破損するという事態が生じるおそれがなく、洗浄を安全かつ円滑に行うことができる。また、従来のチラーユニットの如く水を使用するものではなく貯液槽(4)にて冷却した洗浄溶剤(3)を使用するものであるから、洗浄溶剤(3)を0℃以下に冷却しても水が凍る事態が生じることがなく、装置を安心且つ安全に使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 洗浄槽
3 洗浄溶剤
4 貯液槽
8 チラーユニット
10 供給管
11 還流管
13 冷媒ガス
14 フィルター
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄溶剤を収納した洗浄槽と、当該洗浄溶剤と同じ洗浄溶剤を収納した貯液槽と、当該貯液槽内に設けてこの貯液槽内の洗浄溶剤を冷却するためのチラーユニットとを備え、上記洗浄槽と貯液槽との間には、上記チラーユニットにより冷却した洗浄溶剤を当該貯液槽から洗浄槽に移送するための供給管と、上記洗浄槽から貯液槽に洗浄溶剤を還流するための還流管とを備え、上記チラーユニットは、冷凍器と、この冷凍器内に収納した冷媒ガスを流通させる冷却管とを備え、当該冷却管は上記貯液槽内に配置され、上記冷凍器から冷却管に冷媒ガスを流通させて上記貯液槽内の洗浄溶剤を冷却し、上記洗浄槽内の洗浄溶剤と貯液槽内の洗浄溶剤とを循環させることにより、上記洗浄槽内の洗浄溶剤を冷却可能としたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
上記チラーユニットは、貯液槽内の洗浄溶剤を、この洗浄溶剤の沸点未満に冷却することを特徴とする請求項1の洗浄装置。
【請求項3】
上記還流管には、上記洗浄溶剤中の異物を除去するためのフィルターを設けたことを特徴とする請求項1、または2の洗浄装置。
【請求項4】
上記チラーユニットは、既設の洗浄槽に後から取り付けたことを特徴とする請求項1、2、または3の洗浄装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄溶剤にて機械部品、電子部品、医療機器等の被洗浄物を、冷却した洗浄溶剤にて洗浄するための洗浄装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-31255号公報
【0004】
1995年以前から、洗浄溶剤による液洗浄や蒸気洗浄が広く一般的に行われているが、この洗浄溶剤は高温に加熱して洗浄することにより、被洗浄物に付着した油などの汚れを効率的に除去することができる。しかしながら、例えば当時一般的に使用されていたフロンガスや1.1.1-トリクロロエタンを加熱した場合には、洗浄溶剤ガスが発生して大気中に多く拡散されるものとなり、オゾン層の破壊を引き起こすことが問題となっていた。
【0005】
そのため、1995年以降には、上記フロンガス等がオゾン層を破壊する物質であるとして世界的に全廃となり、この頃から洗浄の現場でも地球環境を守るために洗浄溶剤の使用基準が一層厳しくなってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして現在でも被洗浄物に付着した油等を除去する洗浄溶剤として、塩素系溶剤、臭素系溶剤、フッ素系溶剤、アルコール類等が多く使用されている。尚、塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等の塩素系溶剤や臭素系溶剤は毒性が強く、また、これらの物質を大気に放出した場合には、やはり地球温暖化につながるものとなる。また環境負荷が比較的小さい洗浄溶剤としてはHFO等のフッ素系溶剤やI.P.A.等のアルコール類が挙げられるが、フッ素系溶剤は価格が高く洗浄コストが高くつくとともに、アルコール類については価格は安いものの引火点が低く危険性が高い。
【0007】
また、被洗浄物に付着した油等を溶解除去するためには、洗浄溶剤の温度が高い方が効率が良いという考えが主流であり、洗浄溶剤を常温あるいは加熱して使用することが一般的であった。そのため、洗浄作業中に、温度の高い洗浄溶剤から洗浄溶剤ガスが大気に拡散しやすいものとなっていた。また、洗浄槽からの洗浄溶剤ガスの拡散を防ぐために洗浄槽内を完全に密閉することも考えられるが、このような密閉状態を保持し続けることが可能な装置は、構造が複雑なものとなり製造コストが高くつくとともに作業も煩雑なものとなる。
【0008】
そこで、このような洗浄溶剤ガスの大気中への拡散を防ぐために、以前より洗浄溶剤を冷却した状態で被洗浄物を洗浄する方法が検討されていた。そしてそのような洗浄方法に用いる洗浄装置として、洗浄槽内に収納された洗浄溶剤を冷却するためのチラーユニットを、当該洗浄槽内に設ける方法が知られている。
【0009】
即ち特許文献1や図2に示す如く、このチラーユニット(31)用いた方法では、当該チラーユニット(31)の熱交換パイプ(32)の中で水を循環させることにより、洗浄槽(33)内の洗浄溶剤(34)を間接的に冷却するものである。しかしながら、このような方法では、例えば洗浄溶剤(34)を0℃以下に冷却しようとした場合には、熱交換パイプ(32)中の水が凍るため、当該水の循環が困難となり装置に不具合が生じるおそれがあった。
【0010】
また図2に示す如く、このようなチラーユニット(31)の熱交換パイプ(32)は、製造段階から洗浄槽(33)内に設置しておく必要があったため、既設の洗浄槽(33)に後から当該チラーユニット(31)を取り付けることは困難なものとなっていた。
【0011】
そこで本願では上述の如き課題を解決しようとするものであって、洗浄溶剤を冷却した状態で、この洗浄溶剤による被洗浄物の液洗浄を行うことを可能として当該洗浄溶剤の洗浄溶剤ガスの大気への拡散を抑制するとともに、従来のチラーユニットを使用することなく簡易かつ安全な構成にて冷却した洗浄溶剤による液洗浄を可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は上述の如き課題を解決するため、洗浄溶剤を収納した洗浄槽と、当該洗浄溶剤と同じ洗浄溶剤を収納した貯液槽と、当該貯液槽内に設けてこの貯液槽内の洗浄溶剤を冷却するためのチラーユニットとを備え、上記洗浄槽と貯液槽との間には、上記チラーユニットにより冷却した洗浄溶剤を当該貯液槽から洗浄槽に移送するための供給管と、上記洗浄槽から貯液槽に洗浄溶剤を還流するための還流管とを備え、上記洗浄槽内の洗浄溶剤と貯液槽内の洗浄溶剤とを循環させることにより、上記洗浄槽内の洗浄溶剤を冷却可能としたものである。
【0013】
上記チラーユニットは、貯液槽内の洗浄溶剤を、この洗浄溶剤の沸点未満に冷却するものであっても良い。このように洗浄溶剤を沸点未満に冷却することにより、沸点未満に冷却した被洗浄物にて被洗浄物の液洗浄を行った際に、当該洗浄溶剤の洗浄溶剤ガスの大気への拡散抑制効果を更に高めることができる。
【0014】
また、上記チラーユニットは、冷凍器と、この冷凍器内に収納した冷媒ガスを流通させる冷却管とを備え、当該冷却管は上記貯液槽内に配置され、上記冷凍器から冷却管に冷媒ガスを流通させることにより、上記貯液槽内の洗浄溶剤を冷却可能としたものである。
【0015】
また、上記還流管には、上記洗浄溶剤中の異物を除去するためのフィルターを設けたものであってもよい。これにより、使用中の洗浄溶剤を異物のない状態で冷却することができるため、熱交換性の高い冷却を行うことが可能となる。またフィルターの種類によっては、洗浄槽内に収納した洗浄溶剤のろ過を液洗浄と同時に行うことができるため、洗浄溶剤の清浄化を効率的に行うことが可能となる。
【0016】
また上記チラーユニットは、既設の洗浄槽に後から取り付けたものであってもよい。即ち本発明は、従来発明の如く洗浄槽の内部にチラーユニットの熱交換パイプを洗浄槽に設置したものではないため、既設の洗浄槽にも後から簡単にチラーユニットを取り付けることが可能である。そのため、既設の洗浄槽からの溶剤の大気への拡散を減少させることが可能となり、地球環境対策にも対応可能なものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記の如く構成したものであって、洗浄槽内の洗浄溶剤と同じ洗浄溶剤を貯液槽内にて冷却し、この冷却した洗浄溶剤にて液洗浄を行うことができるため、当該洗浄溶剤の洗浄溶剤ガスの大気への拡散を抑制することができる。また、従来のチラーユニットの如く熱交換パイプを使用する必要がなく、貯液槽にて冷却した洗浄溶剤を洗浄槽内に供給して洗浄に直接使用するものであるから、簡易な構成にて被洗浄物の洗浄を行うことができるとともに、洗浄槽内に洗浄溶剤を冷却するための熱交換パイプを設ける必要がない。また、洗浄溶剤を直接的に冷却することができるため、熱交換性の高い冷却を効率よく行うことが可能となりエネルギーの損失を低減することができる。
【0018】
そのため、当該熱交換パイプが洗浄溶剤との接触等により破損するという事態が生じることなく、洗浄を安全かつ円滑に行うことができる。また、従来のチラーユニットの如く水を使用するものではなく貯液槽にて冷却した洗浄溶剤を使用するものであるから、洗浄溶剤を0℃以下に冷却しても水が凍る事態が生じることがなく、装置を安心且つ安全に使用することができる。
【0019】
また本発明は、従来発明の如く洗浄槽の内部にチラーユニットの熱交換パイプを洗浄槽に設置したものではないため、既設の洗浄槽にも後から簡単にチラーユニットを取り付けることが可能である。そのため、既設の洗浄槽からの溶剤の大気への拡散を減少させることが可能となり、地球環境対策にも対応可能なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明を示す実施例1の概念図。
図2】従来例を示す概念図。
【実施例0021】
本願発明の実施例1を図1に於いて説明すると、(1)は洗浄槽であって、この洗浄槽(1)の内部には、被洗浄物(2)を液洗浄するための洗浄溶剤(3)を収納している。そしてこの洗浄槽(1)とは別に、当該洗浄溶剤(3)の貯液槽(4)を設けている。そしてこの貯液槽(4)内には、上記洗浄槽(1)内に収納した洗浄溶剤(3)と同じ洗浄溶剤(3)を収納している。
【0022】
また上記貯液槽(4)の底部側には冷却管(5)を固定配置するとともに、この貯液槽(4)に隣接して冷媒ガス(13)を収納した冷凍器(6)を設けている。そしてこの冷凍器(6)と貯液槽(4)の冷却管(5)の両端とを、一対の連通管(7)にて連通可能に連結し、当該冷却管(5)と冷凍器(6)とを連通可能な状態としている。尚、上記貯液槽(4)、冷凍器(6)、連通管(7)により、本実施例のチラーユニット(8)を構成している。
【0023】
また図1に示す如く、上記洗浄槽(1)と貯液槽(4)との間には、この貯液槽(4)から洗浄槽(1)に当該貯液槽(4)内の洗浄溶剤(3)を供給するための供給管(10)を設けるとともに、上記洗浄槽(1)から貯液槽(4)側に当該洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)を還流する還流管(11)を、各々設けている。そして上記還流管(11)には、洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)を貯液槽(4)側に移送させるためのポンプ(12)と、洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)中の異物を除去するためのフィルター(14)を設けている。
【0024】
これにより、使用中の洗浄溶剤(3)を異物のない状態で冷却することができるため、熱交換性の高い冷却を保持することが可能となる。またフィルター(14)の種類によっては、洗浄槽(1)内に収納した洗浄溶剤(3)のろ過を液洗浄と同時に行うことができるため、当該洗浄溶剤(3)の清浄化を効率的に行うことが可能となる。
【0025】
上記の如く構成した洗浄装置を用いて被洗浄物(2)を洗浄する洗浄方法について以下に説明する。まず、上記冷凍器(6)内に冷媒ガス(13)を収納するとともに、上記貯液槽(4)内に洗浄溶剤(3)を収納する。そして、冷凍器(6)内にて冷却した冷媒ガス(13)を連通管(7)を通じて貯液槽(4)内の冷却管(5)に流通させることにより、貯液槽(4)内の洗浄溶剤(3)を冷却する。
【0026】
そして、上記還流管(11)に設けたポンプ(12)を作動させることにより、上記の如く貯液槽(4)内にて冷却された洗浄溶剤(3)を、供給管(10)を介して洗浄槽(1)内に移送させる。そしてこの洗浄槽(1)内にて冷却された洗浄溶剤(3)が一定量貯留された後、被洗浄物(2)の液洗浄を行う。そして、洗浄槽(1)内に供給された洗浄溶剤(3)は、再び還流管(11)を通じて貯液槽(4)に還流され、再度冷凍器(6)によって貯液槽(4)内で冷却され、再び洗浄槽(1)に供給される。
【0027】
上記の如く、被洗浄物(2)の洗浄が行われている間、洗浄槽(1)内と貯液槽(4)内の洗浄溶剤(3)は、供給管(10)及び還流管(11)を通じてポンプ(12)の作動により循環し、貯液槽(4)内の洗浄溶剤(3)は冷却管(5)にて冷却されて再び洗浄槽(1)内に供給するものとなるため、洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)は常に冷却された状態に維持されるものとなる。
【0028】
よって、冷却された洗浄溶剤(3)により被洗浄物(2)の液洗浄を確実に行うことが可能となる。よって、洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)をこの洗浄溶剤(3)の冷却した状態を維持することができるため、当該洗浄溶剤(3)の洗浄溶剤(3)ガスの大気への拡散を抑制することが可能となる。尚、当該洗浄溶剤(3)を貯液槽(4)にて沸点未満に冷却した場合には、ガスの大気への拡散抑制効果を更に向上させることが可能となる。また、従来のチラーユニットの如く熱交換パイプを使用する必要がなく、貯液槽(4)にて冷却した洗浄溶剤(3)を洗浄槽(1)内に直接供給して使用するものであるから、簡易な構成にて被洗浄物(2)の液洗浄を行うことができるとともに、洗浄槽(1)内に熱交換パイプを設置する必要がない。
【0029】
そのため、当該熱交換パイプが洗浄溶剤(3)との接触等により破損するという事態が生じるおそれがなく、洗浄を安全かつ円滑に行うことができる。また、従来のチラーユニットの如く水を使用するものではなく貯液槽(4)にて冷却した洗浄溶剤(3)を使用するものであるから、洗浄溶剤(3)を0℃以下に冷却しても水が凍る事態が生じることがなく、装置を安心且つ安全に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 洗浄槽
3 洗浄溶剤
4 貯液槽
8 チラーユニット
10 供給管
11 還流管
13 冷媒ガス
14 フィルター