(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178825
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】リニア電源、電子機器、及び車両
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G05F1/56 310M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085899
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安坂 信
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430CC01
5H430EE06
5H430EE13
5H430EE17
5H430FF02
5H430FF13
5H430GG04
5H430HH03
(57)【要約】
【課題】電源の安定性を保つことが容易になるリニア電源を提供する。
【解決手段】リニア電源(100)は、第1トランジスタ(M1)と、入力電圧(VIN)が入力されるように構成される入力端(T1)と出力電圧(VOUT)を出力するように構成される出力端(T2)との間に接続された第2トランジスタ(M2)と、少なくとも一つの基準電圧(VREF)を生成するように構成される少なくとも一つの基準電圧生成部(1)と、前記出力電圧に応じた帰還電圧(VFB)と前記基準電圧との差に基づき前記第1,2トランジスタを制御するように構成される制御部(2)と、前記入力端又は前記出力端と前記第2トランジスタとの間に接続可能に構成され、前記第2トランジスタの第1端-第2端間電圧をクランプするように構成される第3トランジスタ(M3)と、を備える。前記第1トランジスタは、前記第2,3トランジスタの直列回路に対して並列接続される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタと、
入力電圧が入力されるように構成される入力端と出力電圧を出力するように構成される出力端との間に接続された第2トランジスタと、
少なくとも一つの基準電圧を生成するように構成される少なくとも一つの基準電圧生成部と、
前記出力電圧に応じた帰還電圧と前記基準電圧との差に基づき前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタを制御するように構成される制御部と、
前記入力端又は前記出力端と前記第2トランジスタとの間に接続可能に構成され、前記第2トランジスタの第1端-第2端間電圧をクランプするように構成される第3トランジスタと、
を備え、
前記第1トランジスタは、前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタの直列回路に対して並列接続される、リニア電源。
【請求項2】
前記第1トランジスタの制御端と前記第2トランジスタの制御端とが共通接続され、
前記第1トランジスタのしきい値電圧は前記第2トランジスタのしきい値電圧より大きい、請求項1に記載のリニア電源。
【請求項3】
前記第2トランジスタの耐圧は、前記第1トランジスタの耐圧より低い、請求項1又は請求項2に記載のリニア電源。
【請求項4】
前記第2トランジスタの耐圧は、前記第3トランジスタの耐圧より低い、請求項1~3のいずれか一項に記載のリニア電源。
【請求項5】
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタはそれぞれ、PMOSFET又はPNPバイポーラトランジスタであり、
前記第3トランジスタは、前記第2トランジスタと前記出力端との間に接続可能に構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のリニア電源。
【請求項6】
前記入力電圧より一定値低い制御電圧を前記第3トランジスタの制御端に供給する制御電圧供給部を備える、請求項5に記載のリニア電源。
【請求項7】
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタはそれぞれ、NMOSFET又はNPNバイポーラトランジスタであり、
前記第3トランジスタは、前記入力端と前記第2トランジスタとの間に接続可能に構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のリニア電源。
【請求項8】
前記出力電圧より一定値高い又は定電圧である制御電圧を前記第3トランジスタの制御端に供給する制御電圧供給部を備える、請求項7に記載のリニア電源。
【請求項9】
前記制御部はアンプを含み、
前記制御電圧供給部は、ツェナーダイオードと、前記ツェナーダイオードに直列接続される電流源とを含む、請求項6又は請求項8に記載のリニア電源。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のリニア電源を備える、電子機器。
【請求項11】
請求項10に記載の電子機器と、
前記電子機器に電力を供給するバッテリと、
を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、リニア電源、電子機器、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なデバイスの電源手段として、リニア電源(=LDO[low drop out]レギュレータなどのシリーズレギュレータ)が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なリニア電源は、入力電圧が大きく変動すると、出力トランジスタの第1端-第2端間電圧が大きく変動し、その結果として電源の特性が変動して電源の安定性を保つことが困難になるという課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中に開示されているリニア電源は、第1トランジスタと、入力電圧が入力されるように構成される入力端と出力電圧を出力するように構成される出力端との間に接続された第2トランジスタと、少なくとも一つの基準電圧を生成するように構成される少なくとも一つの基準電圧生成部と、前記出力電圧に応じた帰還電圧と前記基準電圧との差に基づき前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタを制御するように構成される制御部と、前記入力端又は前記出力端と前記第2トランジスタとの間に接続され、前記第2トランジスタの第1端-第2端間電圧をクランプするように構成される第3トランジスタと、を備える。前記第1トランジスタは、前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタの直列回路に対して並列接続される。
【0006】
本明細書中に開示されている電子機器は、上記構成であるリニア電源を備える。
【0007】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成である電子機器と、前記電子機器に電力を供給するバッテリと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本明細書中に開示されているリニア電源、電子機器、及び車両によれば、電源の安定性を保つことが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1参考例に係るリニア電源の概略構成を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、第1参考例に係るリニア電源の出力電流と入力電圧、ゲート電圧、及び出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図2B】
図2Bは、軽負荷時における第1参考例に係るリニア電源の入力電圧と出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、或るMOSFETの特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るリニア電源の概略構成を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第1実施形態に係るリニア電源の出力電流と入力電圧、ゲート電圧、及び出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、軽負荷時における第1実施形態に係るリニア電源の入力電圧と出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るリニア電源の第1構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るリニア電源の第2構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るリニア電源の第3構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るリニア電源の第4構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係るリニア電源の第5構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2参考例に係るリニア電源の概略構成を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、第2参考例に係るリニア電源の出力電流と入力電圧、ゲート電圧、及び出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図12B】
図12Bは、軽負荷時における第2参考例に係るリニア電源の入力電圧と出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係るリニア電源の概略構成を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、第2実施形態に係るリニア電源の出力電流と入力電圧、ゲート電圧、及び出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図14B】
図14Bは、軽負荷時における第2実施形態に係るリニア電源の入力電圧と出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係るリニア電源の第1構成例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係るリニア電源の第2構成例を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係るリニア電源の第3構成例を示す図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係るリニア電源の第4構成例を示す図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係るリニア電源の第5構成例を示す図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係るリニア電源の第6構成例を示す図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係るリニア電源の第7構成例を示す図である。
【
図23】
図23は、第1変形例に係るリニア電源の概略構成を示す図である。
【
図24】
図24は、第2変形例に係るリニア電源の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)とは、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなるゲート構造を有する電界効果トランジスタを意味する。つまり、MOSFETのゲート構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0011】
本明細書において、一定値とは、理想的な状態において一定値であることを意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る値である。
【0012】
本明細書において、定電圧とは、理想的な状態において一定の電圧であることを意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0013】
本明細書において、基準電圧とは、理想的な状態において基準として用いる一定の電圧であることを意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0014】
本明細書において、定電流とは、理想的な状態において一定の電流であることを意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電流である。
【0015】
<第1参考例に係るリニア電源>
図1は、第1参考例に係るリニア電源の概略構成を示す図である。第1参考例に係るリニア電源10は、基準電圧生成部1と、アンプ2と、出力トランジスタである第1トランジスタM1と、第3トランジスタM3と、抵抗R1及びR2と、を備える。第1参考例に係るリニア電源10は、入力端T1に入力される入力電圧VINを降圧して出力電圧VOUTを生成する。出力電圧VOUTは出力端T2から出力される。
【0016】
第1トランジスタM1は、入力端T1と出力端T2との間に接続される。第1トランジスタM1は、アンプ2の出力信号に応じて制御される。より詳細には、第1トランジスタM1の導通度(裏を返せばオン抵抗値)は、アンプ2の出力信号に応じて制御される。なお、第1参考例に係るリニア電源10では、第1トランジスタM1として、PMOSFET[P-channel type MOSFET]が用いられている。従って、第1トランジスタM1のゲート電圧が低いほど、第1トランジスタM1の導通度が高くなり、出力電圧VOUTが上昇する。逆に、第1トランジスタM1のゲート電圧が高いほど、第1トランジスタM1の導通度が低くなり、出力電圧VOUTが低下する。ただし、第1トランジスタM1としては、PMOSFETに代えて、PNPバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0017】
抵抗R1及びR2は、出力電圧VOUTを帰還電圧VFBに変換する。抵抗R1は抵抗値r1の抵抗であり、抵抗R2は抵抗値r2の抵抗である。帰還電圧VFBは、下記の式で表すことができる。
VFB=VOUT×{r2/(r1+r2)})
【0018】
なお、出力電圧VOUTがアンプ2の入力ダイナミックレンジに収まっていれば、抵抗R1及びR2を設けずに、帰還電圧VFBとして出力電圧VOUTそのものをアンプ2に直接入力しても構わない。
【0019】
基準電圧生成部1は、基準電圧VREFを生成して出力する。なお、基準電圧生成部1としては、例えば、電源依存性や温度依存性の低いバンドギャップ電圧源を好適に用いることができる。
【0020】
アンプ2を含む制御部は、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧VFBと反転入力端(-)に入力される基準電圧VREFとの差に基づき第2トランジスタM2を制御する。より詳細には、アンプ2を含む制御部は、帰還電圧VFBが基準電圧VREFと一致するように第1トランジスタM1を制御する。アンプ2を含む制御部は、帰還電圧VFBと基準電圧VREFとの差分値ΔV(=VFB-VREF)が高いほど第1トランジスタM1のゲート電圧を高くし、逆に、差分値ΔVが低いほど第1トランジスタM1のゲート電圧を低くする。
【0021】
なお、アンプ2を含む制御部の具体的な回路構成次第で、非反転入力端(+)に基準電圧VREFが入力され、反転入力端(-)に帰還電圧VFBが入力されることがある。
【0022】
図2Aは、第1参考例に係るリニア電源10の出力電流と入力電圧VIN、ゲート電圧VG、及び出力電圧VOUTとの関係を示すグラフである。
図2Aにおいて、ゲート電圧VGは、第1トランジスタM1のゲート電圧である。
図2Aに示すグラフの横軸は出力電流の値を示している。
図2Aに示すグラフの縦軸は入力電圧VIN、ゲート電圧VG、又は出力電圧VOUTの値を示している。なお、
図2Aに示す入力電圧VINの値は一例であり、実際には入力電圧VINの値は変動し得る。
【0023】
第1参考例に係るリニア電源10は、出力電流の変動つまり負荷の変動に応じて、ゲート電圧VGを調整することで出力電圧VOUTの安定化を図っている。
【0024】
以下の説明において、出力電流が所定値Iaより小さい場合を軽負荷と称し、出力電流が所定値Iaより大きい場合を重負荷と称す。なお、所定値Iaの具体的な数値は特に限定されない。
【0025】
図2Bは、軽負荷時における第1参考例に係るリニア電源10の入力電圧VINと出力電圧VOUTとの関係を示すグラフである。
図2Bに示すグラフの横軸は入力電圧VINの値を示している。
図2Bに示すグラフの縦軸は入力電圧VIN又は出力電圧VOUTの値を示している。なお、第1参考例に係るリニア電源10では、出力電圧VOUTの目標値が電圧V1になるように、抵抗R1の抵抗値、抵抗R2の抵抗値、及び基準電圧VREFが設定される。
【0026】
入力電圧VINが電圧V1より大きい範囲では、入力電圧VINが大きく変動すると、第1トランジスタM1のドレイン-ソース間電圧VDS1が大きく変動する。入力電圧VINが電圧V1より大きい範囲において、第1トランジスタM1のドレイン-ソース間電圧VDS1は、入力電圧VINから出力電圧VOUTを引いた値になるからである。
【0027】
図3は、或るMOSFETの特性を示すグラフである。
図3に示すグラフの横軸は或るMOSFETのドレイン-ソース間電圧VDSを示している。
図3に示すグラフの縦軸は或るMOSFETのドレイン電流Idを示している。
【0028】
図3では、ゲート-ソース間電圧VGSがしきい値電圧Vthより0.2[V]大きい場合におけるドレイン-ソース間電圧VDSとドレイン電流Idとの関係が示されている。また、
図3では、ゲート-ソース間電圧VGSがしきい値電圧Vthより0.1[V]大きい場合におけるドレイン-ソース間電圧VDSとドレイン電流Idとの関係が示されている。また、
図3では、ゲート-ソース間電圧VGSがしきい値電圧Vthである場合におけるドレイン-ソース間電圧VDSとドレイン電流Idとの関係が示されている。また、
図3では、ゲート-ソース間電圧VGSがしきい値電圧Vthより0.1[V]小さい場合におけるドレイン-ソース間電圧VDSとドレイン電流Idとの関係が示されている。また、
図3では、ゲート-ソース間電圧VGSがしきい値電圧Vthより0.2[V]小さい場合におけるドレイン-ソース間電圧VDSとドレイン電流Idとの関係が示されている。
【0029】
ゲート-ソース間電圧VGSが或るMOSFETのしきい値電圧Vth付近である場合、ドレイン-ソース間電圧VDSが大きく変わると、ドレイン電流Idが大きく変わる。すなわち、ゲート-ソース間電圧VGSがしきい値電圧Vth付近である場合、ドレイン-ソース間電圧VDSが大きく変わると、或るMOSFETの特性が大きく変わる。
【0030】
従って、第1トランジスタM1として、上述した或るMOSFETと同様に、遮断領域の境界付近で動作する場合に第1端-第2端間電圧が大きく変れば特性が大きく変わるトランジスタが用いられ、アンプ2を含む制御部が、線遮断領域の境界付近で動作するように第1トランジスタM1を制御した場合、第1参考例に係るリニア電源10に次のような課題が生じる。
【0031】
第1参考例に係るリニア電源10は、入力電圧VINが大きく変動すると、第1トランジスタM1の第1端-第2端間電圧が大きく変動し、その結果として電源の特性が変動して電源の安定性を保つことが困難になる。
【0032】
以下では、このような課題を解決することのできる第1実施形態を提案する。
【0033】
<第1実施形態に係るリニア電源>
図4は、第1実施形態に係るリニア電源の概略構成を示す図である。第1実施形態に係るリニア電源100は、先出の第1参考例に係るリニア電源10(
図1参照)を基本としつつ、先出の構成要素に加えて、第2トランジスタM2及び第3トランジスタM3をさらに備える。
【0034】
なお、第1実施形態に係るリニア電源100では、第2トランジスタM2及び第3トランジスタM3として、PMOSFETが用いられている。ただし、第2トランジスタM2及び第3トランジスタM3としてはそれぞれ、PMOSFETに代えて、PNPバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0035】
なお、第1実施形態に係るリニア電源100では、第2トランジスタM2は、入力端T1と出力端T2との間に接続され、第3トランジスタM3は、第2トランジスタM2と出力端T2との間に接続される。そして、第1トランジスタM1は、第2トランジスタM2及び第3トランジスタM3の直列回路に対して並列接続される。第3トランジスタM3は、第2トランジスタM2のドレイン-ソース間電圧VDS1をクランプするように構成される。ただし、第2トランジスタM2としてPMOSFETの代わりにPNPバイポーラトランジスタが用いられた場合には、第3トランジスタM3は、第2トランジスタM2のコレクタ-エミッタ間電圧をクランプするように構成される。
【0036】
入力電圧VINより一定値低い制御電圧(VIN-VCLP)が、第3トランジスタM3のゲートに供給される。したがって、第2トランジスタM2のドレイン-ソース間電圧VDS1は、一定値の電圧VCLPに第3トランジスタM3のしきい値電圧Vth3を加えた電圧となる。すなわち、第3トランジスタM3は、第2トランジスタM2のドレイン-ソース間電圧VDS1を略固定値にクランプする。
【0037】
本実施形態では、第1トランジスタM1のゲートと第2トランジスタM2のゲートとが共通接続される。つまり、アンプ2は、第1トランジスタM1のみならず、第2トランジスタM2も制御する。また、本実施形態では、第1トランジスタM1のしきい値電圧は第2トランジスタM2のしきい値電圧より大きい。
【0038】
例えば、第1トランジスタM1として、DMOS(Double Diffused Metal Oxide Semiconductor)構造のトランジスタを用い、第2トランジスタM2として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構造のトランジスタを用いることで、第1トランジスタM1のしきい値電圧を第2トランジスタM2のしきい値電圧より大きくすることができる。
【0039】
なお、CMOS構造のトランジスタとは、言い換えると、CMOSプロセスによって半導体チップ上に形成されたトランジスタである。また、DMOS構造のトランジスタとは、言い換えると、DMOSプロセスによって半導体チップ上に形成されたトランジスタである。
【0040】
図5Aは、第1実施形態に係るリニア電源100の出力電流と入力電圧VIN、ゲート電圧VG、及び出力電圧VOUTとの関係を示すグラフである。
図5Aにおいて、ゲート電圧VGは、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧である。
図5Aに示すグラフの横軸は出力電流の値を示している。
図5Aに示すグラフの縦軸は入力電圧VIN、ゲート電圧VG、又は出力電圧VOUTの値を示している。なお、
図5Aに示す入力電圧VINの値は一例であり、実際には入力電圧VINの値は変動し得る。
【0041】
第1実施形態に係るリニア電源100は、出力電流の変動つまり負荷の変動に応じて、ゲート電圧VGを調整することで出力電圧VOUTの安定化を図っている。
【0042】
出力電流が所定値Iaより小さいときすなわち軽負荷時に、ゲート電圧VGからグラウンド電位を引いた値は、第2トランジスタM2のしきい値電圧を超えているが、第1トランジスタM1のしきい値電圧に達していない。したがって、軽負荷時に、第1トランジスタM1は電流を流さずに第2トランジスタM2が電流を流す。
【0043】
出力電流が所定値Iaより大きいときすなわち重負荷時に、ゲート電圧VGからグラウンド電位を引いた値は、第1トランジスタM1のしきい値電圧を超えている。したがって、重負荷時に、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2はともに電流を流す。
【0044】
入力端T1から第1トランジスタM1を経由して出力端T2に至る経路の抵抗は入力端T1から第2トランジスタM2及び第3トランジスタM3を経由して出力端T2に至る経路の抵抗より小さい。したがって、第1実施形態に係るリニア電源100は、重負荷時の損失を低減することができる。
【0045】
また、第1トランジスタM1は重負荷時にのみ電流を流すので、軽負荷時及び重負荷時の両方で第1トランジスタM1が電流を流す構成と比較して、第1トランジスタM1のドレイン-ソース間電圧の変動は小さくなる。したがって、電源の安定性を保つことが容易になる。
【0046】
図5Bは、軽負荷時における第1実施形態に係るリニア電源100の入力電圧VINと出力電圧VOUTとの関係を示すグラフである。
図5Bに示すグラフの横軸は入力電圧VINの値を示している。
図5Bに示すグラフの縦軸は入力電圧VIN又は出力電圧VOUTの値を示している。なお、第1実施形態に係るリニア電源100では、出力電圧VOUTの目標値が電圧V1になるように、抵抗R1の抵抗値、抵抗R2の抵抗値、及び基準電圧VREFが設定される。
【0047】
入力電圧VINが電圧V2(=V1+VDS1)より大きい範囲では、第3トランジスタM3が第2トランジスタM2のドレイン-ソース間電圧VDS1を略固定値にクランプする。したがって、入力電圧VINが大きく変動しても、入力電圧VINが電圧V2(=V1+VDS1)より大きい範囲において第2トランジスタのドレイン-ソース間電圧VDS1は略固定値になる。これにより、入力電圧VINが大きく変動した際に電源の特性が変動することが抑制され、電源の安定性を保つことが容易になる。
【0048】
なお、入力電圧VINが電圧V2(=V1+VDS1)より大きい範囲において第2トランジスタのドレイン-ソース間電圧VDS1は略固定値になるので、第2トランジスタM2として、第1トランジスタM1及び第3トランジスタM3の各耐圧より低い耐圧が低いトランジスタが用いられることが望ましい。これにより、第2トランジスタM2の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0049】
<第1実施形態に係るリニア電源の第1構成例>
図6は、第1実施形態に係るリニア電源の第1構成例を示す図である。
図6に示す第1実施形態に係るリニア電源101では、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2を制御する制御部は、アンプ2と、第4トランジスタM4と、抵抗R3と、電流源3と、を備える。
【0050】
第1実施形態に係るリニア電源101では、第4トランジスタM4として、PMOSFETが用いられている。アンプ2の非反転入力端(+)に基準電圧VREFが入力され、アンプ2の反転入力端(-)に帰還電圧VFBが入力される。アンプ2の出力信号は、第4トランジスタM4のゲートに供給される。
【0051】
第4トランジスタM4のソースは入力端T1に接続される。第4トランジスタM4のドレインは第2トランジスタM2のゲート及び抵抗R3の第1端に接続される。抵抗R3の第2端は第3トランジスタM3のゲート及び電流源3の第1端に接続される。電流源3の第2端はグラウンド電位に接続される。
【0052】
電流源3は定電流I1を出力する。アンプ2は、帰還電圧VFBと基準電圧VREFとの差分値ΔV’(=VREF-VFB)が高いほど第4トランジスタM4のゲート電圧を高くして第2トランジスタM2のゲート電圧を低くし、逆に、差分値ΔV’が低いほど第4トランジスタM4のゲート電圧を低くして第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧を高くする。
【0053】
アンプ2は、第2トランジスタM2のゲート-ソース間電圧が第2トランジスタM2のしきい値電圧になるように、第4トランジスタM4のゲート-ソース間電圧を制御する。その結果、第4トランジスタM4のドレイン-ソース間電圧は第2トランジスタM2のしきい値電圧付近になる。
【0054】
抵抗R3の代わりに、MOSFET、バイポーラトランジスタ、ダイオード等を用いて、抵抗R3の代わりに用いた素子の電圧降下が一定になるようにしてもよい。第4トランジスタM4としては、PMOSFETに代えて、PNPバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0055】
<第1実施形態に係るリニア電源の第2構成例>
図7は、第1実施形態に係るリニア電源の第2構成例を示す図である。
図7に示す第1実施形態に係るリニア電源102では、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2を制御する制御部は、アンプ2と、第4トランジスタM4と、抵抗R3と、電流源3と、を備える。
【0056】
第1実施形態に係るリニア電源102では、第4トランジスタM4として、NMOSFET[N-channel type MOSFET]が用いられている。アンプ2の非反転入力端(+)に基準電圧VREFが入力され、アンプ2の反転入力端(-)に帰還電圧VFBが入力される。アンプ2の出力信号は、第4トランジスタM4のゲートに供給される。
【0057】
電流源3の第1端は入力端T1に接続される。電流源3の第2端は第2トランジスタM2のゲート及び抵抗R3の第1端に接続される。抵抗R3の第2端は第3トランジスタM3のゲート及び第4トランジスタM4のドレインに接続される。第4トランジスタM4のソースはグラウンド電位に接続される。
【0058】
電流源3は定電流I1を出力する。アンプ2は、帰還電圧VFBと基準電圧VREFとの差分値ΔV’(=VREF-VFB)が高いほど第4トランジスタM4のゲート電圧を高くして第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧を低くし、逆に、差分値ΔV’が低いほど第4トランジスタM4のゲート電圧を低くして第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧を高くする。
【0059】
第3トランジスタM3のゲート電圧は、入力電圧VINから電流源3及び抵抗R3の電圧降下を引いた値となる。第3トランジスタM3によって第2トランジスタM2のドレイン-ソース電圧がクランプされる。
【0060】
抵抗R3の代わりに、MOSFET、バイポーラトランジスタ、ダイオード等を用いて、抵抗R3の代わりに用いた素子の電圧降下が一定になるようにしてもよい。第4トランジスタM4としては、NMOSFETに代えて、NPNバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0061】
<第1実施形態に係るリニア電源の第3構成例>
図8は、第1実施形態に係るリニア電源の第3構成例を示す図である。
図8に示す第1実施形態に係るリニア電源103では、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2を制御する制御部は、アンプ2と、第4トランジスタM4と、第5トランジスタM5と、抵抗R3と、を備える。
【0062】
第1実施形態に係るリニア電源103では、第4トランジスタM4として、PMOSFETが用いられ、第5トランジスタM5として、PMOSFETが用いられる。アンプ2の非反転入力端(+)に帰還電圧VFBが入力され、アンプ2の反転入力端(-)に基準電圧VREFが入力される。アンプ2の出力信号は、第5トランジスタM5のドレイン及びゲートと第3トランジスタM3のゲートに供給される。
【0063】
抵抗R3の第1端は入力端T1に接続される。電流源3の第2端は第4トランジスタM4のソースに接続される。第4トランジスタM4のゲート及びドレインと、第5トランジスタM5のソースが第2トランジスタM2のゲートに接続される。
【0064】
第2トランジスタM2と第4トランジスタM4とは第1カレントミラー回路を構成し、第3トランジスタM3と第5トランジスタM5とは第2カレントミラー回路を構成する。アンプ2は、帰還電圧VFBと基準電圧VREFとの差分値ΔV(=VFB-VREF)が低いほど第5トランジスタM5のゲート電圧を低くして第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧を低くし、逆に、差分値ΔVが高いほど第5トランジスタM5のゲート電圧を高くして第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧を高くする。
【0065】
第3トランジスタM3のゲート電圧は、入力電圧VINから抵抗R3の電圧降下と第4トランジスタM4のしきい値電圧と第5トランジスタM5のしきい値電圧とを引いた値となる。第3トランジスタM3によって第2トランジスタM2のドレイン-ソース電圧がクランプされる。
【0066】
抵抗R3はゲイン調整用の抵抗であるため、ゲイン調整が不要であれば抵抗R3は削除されてよい第4トランジスタM4としては、PMOSFETに代えて、PNPバイポーラトランジスタを用いてもよい。第5トランジスタM5としては、PMOSFETに代えて、PNPバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0067】
<第1実施形態に係るリニア電源の第4構成例>
図9は、第1実施形態に係るリニア電源の第4構成例を示す図である。
図9に示す第1実施形態に係るリニア電源104では、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2を制御する制御部は、アンプ2と、第4トランジスタM4と、抵抗R3及びR4と、を備える。
【0068】
第1実施形態に係るリニア電源104では、第4トランジスタM4として、PMOSFETが用いられる。アンプ2の非反転入力端(+)に帰還電圧VFBが入力され、アンプ2の反転入力端(-)に基準電圧VREFが入力される。アンプ2の出力信号は、第3トランジスタM3のゲートに供給される。
【0069】
抵抗R3の第1端は入力端T1に接続される。電流源3の第2端は第4トランジスタM4のソースに接続される。第4トランジスタM4のゲート及びドレインと、抵抗R4の第1端が第2トランジスタM2のゲートに接続される。抵抗R4の第2端は、アンプ2の出力端及び第3トランジスタM3のゲートに接続される。
【0070】
第2トランジスタM2と第4トランジスタM4とはカレントミラー回路を構成する。アンプ2は、帰還電圧VFBと基準電圧VREFとの差分値ΔV(=VFB-VREF)が低いほど第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧を低くし、逆に、差分値ΔVが高いほど第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧を高くする。
【0071】
第3トランジスタM3のゲート電圧は、入力電圧VINから抵抗R3の電圧降下と第4トランジスタM4のしきい値電圧と第4抵抗の電圧降下とを引いた値となる。第3トランジスタM3によって第2トランジスタM2のドレイン-ソース電圧がクランプされる。
【0072】
抵抗R3はゲイン調整用の抵抗であるため、ゲイン調整が不要であれば抵抗R3は削除されてよい第4トランジスタM4としては、PMOSFETに代えて、PNPバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0073】
<第1実施形態に係るリニア電源の第5構成例>
図10は、第1実施形態に係るリニア電源の第5構成例を示す図である。
図10に示す第1実施形態に係るリニア電源105では、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2を制御する制御部は、アンプ2を備える。
図10に示す第1実施形態に係るリニア電源105では、入力電圧VINより一定値低い制御電圧を第3トランジスタM3の制御端に供給する制御電圧供給部は、ツェナーダイオードZ1と、電流源3と、を備える。
【0074】
アンプ2の非反転入力端(+)に帰還電圧VFBが入力され、アンプ2の反転入力端(-)に基準電圧VREFが入力される。アンプ2の出力信号は、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲートに供給される。
【0075】
ツェナーダイオードZ1のカソードは入力端T1に接続される。ツェナーダイオードZ1のアノード端は第3トランジスタM3のゲート及び電流源3の第1端に接続される。電流源3の第2端はグラウンド電位に接続される。
【0076】
第3トランジスタM3のゲート電圧は、入力電圧VINからツェナーダイオードZ1のツェナー電圧を引いた値となる。第3トランジスタM3によって第2トランジスタM2のドレイン-ソース電圧がクランプされる。
【0077】
図10に示す第1実施形態に係るリニア電源105では、制御電圧供給部が制御部に含まれないので、制御部による第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2の制御が容易になる。
【0078】
<第2参考例に係るリニア電源>
図11は、第2参考例に係るリニア電源の概略構成を示す図である。第2参考例に係るリニア電源20は、出力トランジスタである第1トランジスタM1がNMOSFETである点で、第1参考例に係るリニア電源10と異なり、それ以外の点で第1参考例に係るリニア電源10と基本的に同様である。
【0079】
なお、第2参考例に係るリニア電源20では、第1トランジスタM1として、NMOSFETの代わりに、NPNバイポーラトランジスタが用いられてもよい。
【0080】
図12Aは、第2参考例に係るリニア電源20の出力電流と入力電圧VIN、ゲート電圧VG、及び出力電圧VOUTとの関係を示すグラフである。
図12Aにおいて、ゲート電圧VGは、第1トランジスタM1のゲート電圧である。
図2Aに示すグラフの横軸は出力電流の値を示している。
図2Aに示すグラフの縦軸は入力電圧VIN、ゲート電圧VG、又は出力電圧VOUTの値を示している。なお、
図2Aに示す入力電圧VINの値は一例であり、実際には入力電圧VINの値は変動し得る。
【0081】
第2参考例に係るリニア電源20は、出力電流の変動つまり負荷の変動に応じて、ゲート電圧VGを調整することで出力電圧VOUTの安定化を図っている。
【0082】
図12Bは、軽負荷時における第2参考例に係るリニア電源20の入力電圧VINと出力電圧VOUTとの関係を示すグラフである。
図12Bに示すグラフの横軸は入力電圧VINの値を示している。
図12Bに示すグラフの縦軸は入力電圧VIN又は出力電圧VOUTの値を示している。なお、第2参考例に係るリニア電源20では、出力電圧VOUTの目標値が電圧V1になるように、抵抗R1の抵抗値、抵抗R2の抵抗値、及び基準電圧VREFが設定される。
【0083】
第2参考例に係るリニア電源20は、第1参考例に係るリニア電源10と同様に、入力電圧VINが大きく変動すると、第1トランジスタM1の第1端-第2端間電圧が大きく変動し、その結果として電源の特性が変動して電源の安定性を保つことが困難になる。
【0084】
以下では、このような課題を解決することのできる第2実施形態を提案する。
【0085】
<第2実施形態に係るリニア電源>
図13は、第2実施形態に係るリニア電源の概略構成を示す図である。第2実施形態に係るリニア電源200は、先出の第2参考例に係るリニア電源20(
図11参照)を基本としつつ、先出の構成要素に加えて、第2トランジスタM2及び第3トランジスタM3をさらに備える。
【0086】
第2実施形態に係るリニア電源200の基本的な構成は、第1実施形態に係るリニア電源100と類似するため、詳細な説明は省略する。
【0087】
図14Aは、第2実施形態に係るリニア電源200の出力電流と入力電圧VIN、ゲート電圧VG、及び出力電圧VOUTとの関係を示すグラフである。
図14Aにおいて、ゲート電圧VGは、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧である。
図14Aに示すグラフの横軸は出力電流の値を示している。
図14Aに示すグラフの縦軸は入力電圧VIN、ゲート電圧VG、又は出力電圧VOUTの値を示している。なお、
図14Aに示す入力電圧VINの値は一例であり、実際には入力電圧VINの値は変動し得る。
【0088】
図14Bは、軽負荷時における第2実施形態に係るリニア電源200の入力電圧VINと出力電圧VOUTとの関係を示すグラフである。
図14Bに示すグラフの横軸は入力電圧VINの値を示している。
図14Bに示すグラフの縦軸は入力電圧VIN又は出力電圧VOUTの値を示している。なお、第1実施形態に係るリニア電源100では、出力電圧VOUTの目標値が電圧V1になるように、抵抗R1の抵抗値、抵抗R2の抵抗値、及び基準電圧VREFが設定される。
【0089】
入力電圧VINが電圧V2(=V1+VDS1)より大きい範囲では、第3トランジスタM3が第2トランジスタM2のドレイン-ソース間電圧VDS1を略固定値にクランプする。したがって、入力電圧VINが大きく変動しても、入力電圧VINが電圧V2(=V1+VDS1)より大きい範囲において第2トランジスタのドレイン-ソース間電圧VDS1は略固定値になる。これにより、入力電圧VINが大きく変動した際に電源の特性が変動することが抑制され、電源の安定性を保つことが容易になる。
【0090】
なお、入力電圧VINが電圧V2(=V1+VDS1)より大きい範囲において第2トランジスタのドレイン-ソース間電圧VDS1は略固定値になるので、第2トランジスタM2として、第3トランジスタM3の耐圧より低い耐圧が低いトランジスタが用いられることが望ましい。これにより、第2トランジスタM2の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0091】
<第2実施形態に係るリニア電源の第1構成例>
図15は、第2実施形態に係るリニア電源の第1構成例を示す図である。
図15に示す第2実施形態に係るリニア電源201の基本的な構成は、第1実施形態に係るリニア電源101と類似するため、詳細な説明は省略する。
【0092】
<第2実施形態に係るリニア電源の第2構成例>
図16は、第2実施形態に係るリニア電源の第2構成例を示す図である。
図16に示す第2実施形態に係るリニア電源202の基本的な構成は、第1実施形態に係るリニア電源101と類似するため、詳細な説明は省略する。
図16に示す第2実施形態に係るリニア電源202は、第4トランジスタM4のソースが出力端T2ではなく、グラウンド電位に接続されている点で
図16に示す第2実施形態に係るリニア電源201と異なる。
【0093】
<第2実施形態に係るリニア電源の第3構成例>
図17は、第2実施形態に係るリニア電源の第3構成例を示す図である。
図17に示す第2実施形態に係るリニア電源203の基本的な構成は、第1実施形態に係るリニア電源102と類似するため、詳細な説明は省略する。
【0094】
<第2実施形態に係るリニア電源の第4構成例>
図18は、第2実施形態に係るリニア電源の第4構成例を示す図である。
図18に示す第2実施形態に係るリニア電源204の基本的な構成は、第1実施形態に係るリニア電源102と類似するため、詳細な説明は省略する。
図18に示す第2実施形態に係るリニア電源204は、電流源3の第2端が出力端T2ではなく、グラウンド電位に接続されている点で
図17に示す第2実施形態に係るリニア電源203と異なる。
【0095】
<第2実施形態に係るリニア電源の第5構成例>
図19は、第2実施形態に係るリニア電源の第5構成例を示す図である。
図19に示す第2実施形態に係るリニア電源205の基本的な構成は、第1実施形態に係るリニア電源103と類似するため、詳細な説明は省略する。なお、抵抗R3の第2端は出力端T2ではなく、グラウンド電位に接続されてもよい。
【0096】
<第2実施形態に係るリニア電源の第6構成例>
図20は、第2実施形態に係るリニア電源の第6構成例を示す図である。
図20に示す第2実施形態に係るリニア電源206の基本的な構成は、第1実施形態に係るリニア電源104と類似するため、詳細な説明は省略する。なお、抵抗R3の第2端は出力端T2ではなく、グラウンド電位に接続されてもよい。
【0097】
<第2実施形態に係るリニア電源の第7構成例>
図21は、第2実施形態に係るリニア電源の第7構成例を示す図である。
図21に示す第2実施形態に係るリニア電源207の基本的な構成は、第1実施形態に係るリニア電源105と類似するため、詳細な説明は省略する。なお、ツェナーダイオードのカソードはは出力端T2ではなく、グラウンド電位に接続されてもよい。
【0098】
<車両への適用>
図22は、車両Xの外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリB1から電源電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18を搭載している。本図における電子機器X11~X18の搭載位置は、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0099】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0100】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0101】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0102】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う制動ユニットである。
【0103】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0104】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0105】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0106】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0107】
なお、先に説明したリニア電源100~105及び200~207は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。リニア電源が組み込まれた電子機器の負荷は、リニア電源から電力供給を受けて動作する。
【0108】
<留意点>
本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0109】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2がともにアンプ2によって制御されたが、例えば
図23に示す第1変形例及び
図24に示す第2変形例のように第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2が別々に制御されてもよい。
【0110】
第1変形例及び第2変形例では、アンプ2’が第1トランジスタM1を制御し、アンプ2が第2トランジスタM2を制御する。基準電圧生成部1’から出力される基準電圧VREF’は、基準電圧生成部1から出力される基準電圧VREFより小さく設定される。このような設定により、第1変形例及び第2変形例では、軽負荷時に第1トランジスタM1が電流を流さずに第2トランジスタM2が電流を流し、重負荷時に第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2がともに電流を流すような制御が実行される。
【0111】
以上説明したリニア電源(100~105、200~207)は、第1トランジスタ(M1)と、入力電圧(VIN)が入力されるように構成される入力端(T1)と出力電圧(VOUT)を出力するように構成される出力端(T2)との間に接続された第2トランジスタ(M2)と、少なくとも一つの基準電圧(VREF)を生成するように構成される少なくとも一つの基準電圧生成部(1)と、前記出力電圧に応じた帰還電圧(VFB)と前記基準電圧との差に基づき前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタを制御するように構成される制御部(2、3、M4、M5、R3、R4)と、前記入力端又は前記出力端と前記第2トランジスタとの間に接続可能に構成され、前記第2トランジスタの第1端-第2端間電圧をクランプするように構成される第3トランジスタ(M3)と、を備え、前記第1トランジスタは、前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタの直列回路に対して並列接続される構成(第1の構成)である。
【0112】
上記第1の構成であるリニア電源では、第3トランジスタが第2トランジスタの第1端-第2端間電圧をクランプする。したがって、入力電圧が大きく変動した際に電源の特性が変動することが抑制され、電源の安定性を保つことが容易になる。また、軽負荷時に第1トランジスタが電流を流さずに第2トランジスタが電流を流し、重負荷時に第1トランジスタ及び第2トランジスタがともに電流を流すような制御が制御部によって実行されることにより、重負荷時の損失を低減することができる。
【0113】
上記第1の構成であるリニア電源において、前記第1トランジスタの制御端と前記第2トランジスタの制御端とが共通接続され、前記第1トランジスタのしきい値電圧は前記第2トランジスタのしきい値電圧より大きい構成(第2の構成)であってもよい。
【0114】
上記第2の構成であるリニア電源は、軽負荷時の制御と重負荷時の制御とを自動的に切り替えることができる。軽負荷時の制御では第1トランジスタに電流が流れないのに対して、重負荷時の制御では第1トランジスタに電流が流れる。
【0115】
上記第1又は第2の構成であるリニア電源において、前記第2トランジスタの耐圧は、前記第1トランジスタの耐圧より低い構成(第3の構成)であってもよい。
【0116】
上記第3の構成であるリニア電源は、第2トランジスタの小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0117】
上記第1~第3いずれかの構成であるリニア電源において、前記第2トランジスタの耐圧は、前記第3トランジスタの耐圧より低い構成(第4の構成)であってもよい。
【0118】
上記第4の構成であるリニア電源は、第2トランジスタの小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0119】
上記第1~第4いずれかの構成であるリニア電源において、前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタはそれぞれ、PMOSFET又はPNPバイポーラトランジスタであり、前記第3トランジスタは、前記第2トランジスタと前記出力端との間に接続可能に構成される構成(第5の構成)であってもよい。
【0120】
上記第5の構成であるリニア電源において、前記入力電圧より一定値低い制御電圧を前記第3トランジスタの制御端に供給する制御電圧供給部(3、M4、M5、R3、R4、Z1)を備える構成(第6の構成)であってもよい。
【0121】
上記第6の構成であるリニア電源は、簡易な構成で第3トランジスタが第2トランジスタの第1端-第2端間電圧をクランプする動作を実現することができる。
【0122】
上記第1~第4いずれかの構成であるリニア電源において、前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタはそれぞれ、NMOSFET又はNPNバイポーラトランジスタであり、前記第3トランジスタは、前記入力端と前記第2トランジスタとの間に接続可能に構成される構成(第7の構成)であってもよい。
【0123】
上記第7の構成であるリニア電源において、前記出力電圧より一定値高い又は定電圧である制御電圧を前記第3トランジスタの制御端に供給する制御電圧供給部を備える構成(第8の構成)であってもよい。
【0124】
上記第8の構成であるリニア電源は、簡易な構成で第3トランジスタが第2トランジスタの第1端-第2端間電圧をクランプする動作を実現することができる。
【0125】
上記第6又は第8の構成であるリニア電源において、前記制御部はアンプを含み、前記制御電圧供給部は、ツェナーダイオードと、前記ツェナーダイオードに直列接続される電流源とを含む構成(第9の構成)であってもよい。
【0126】
上記第9の構成であるリニア電源は、制御電圧供給部が制御部に含まれないので、制御部による第2トランジスタの制御が容易になる。
【0127】
以上説明した電子機器(X11~X18)は、上記第1~第9いずれかの構成であるリニア電源を備える構成(第10の構成)である。
【0128】
上記第10の構成である電子機器では、リニア電源の安定性を保つことが容易になる。
【0129】
以上説明した車両(X)は、上記第10の構成である電子機器と、前記電子機器に電力を供給するバッテリ(B1)と、を備える構成(第11の構成)である。
【0130】
上記第11の構成である車両では、リニア電源の安定性を保つことが容易になる。
【符号の説明】
【0131】
1、1’ 基準電圧生成部
2、2’ アンプ
3 電流源
10 第1参考例に係るリニア電源
20 第2参考例に係るリニア電源
100~105 第1実施形態に係るリニア電源
100’ 第1変形例に係るリニア電源
200~207 第2実施形態に係るリニア電源
200’ 第2変形例に係るリニア電源
B1 バッテリ
M1~M5 第1~第5トランジスタ
R1~R4 抵抗
T1 入力端
T2 出力端
X 車両
X11~X18 電子機器
Z1 ツェナーダイオード