(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178840
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】外装部材及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20221125BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20221125BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20221125BHJP
H01R 13/6592 20110101ALI20221125BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H01B7/00 301
H01R13/52 B
H01R13/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085925
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩 真博
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FB09
5E021FB20
5E021FC19
5E021LA09
5E021LA14
5E021LA21
5E087EE07
5E087LL01
5E087LL29
5E087RR12
5G309AA11
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD02
5G357DD05
5G357DD14
(57)【要約】
【課題】柔軟性と剛性を兼ね備えた外装部材およびワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】外装部材60は、電線20を覆うものであって、複数のシート61,61F,61G,61Hが重ね合されている積層部62,62F,62G,62Hを備えている。積層部62,62F,62G,62Hは、複数のシート61,61F,61G,61Hが互いに独立して設けられている柔軟部63と、複数のシート61,61F,61G,61Hが一体化された剛体部64と、を有している。ワイヤハーネス10は、外装部材60の端部とコネクタ30とを覆う防水部材70を備えている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を覆う外装部材であって、
複数のシートが重ね合されている積層部を備え、
前記積層部は、複数の前記シートが互いに独立して設けられている柔軟部と、複数の前記シートが一体化された剛体部と、を有している、外装部材。
【請求項2】
複数の前記シートのうち、少なくとも1枚は、導電性シートである、請求項1に記載の外装部材。
【請求項3】
前記導電性シートは、前記積層部において、前記電線側となる内周側に配置されている、請求項2に記載の外装部材。
【請求項4】
前記導電性シートは、前記積層部に複数設けられている、請求項2又は請求項3に記載の外装部材。
【請求項5】
前記導電性シートは、前記積層部を構成する複数の前記シートの全部である、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の外装部材。
【請求項6】
前記導電性シートは、樹脂製の樹脂シートに金属箔を設けたものである、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の外装部材。
【請求項7】
複数の前記導電性シートは、それぞれの端部において、前記電線側となる内周側にそれぞれの前記金属箔が露出するように段状に積層されている、請求項6に記載の外装部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の外装部材と、
前記電線と、
前記電線の端部に設けられるコネクタと、
前記外装部材の端部と前記コネクタとを覆う防水部材と、を備えているワイヤハーネス。
【請求項9】
前記外装部材の内側に位置して前記電線を覆うシールド部材をさらに備え、
前記コネクタは、前記防水部材の内側で前記シールド部材の端部に電気的に接続されるシールドシェルを有している、請求項8に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記防水部材を前記外装部材に固定する固定部材をさらに備え、
前記防水部材は、前記外装部材の前記剛体部を覆う覆い部を有し、
前記固定部材は、前記覆い部の外周に装着されている、請求項8または請求項9に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外装部材及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2は、いずれも、電線と、電線を覆う外装部材と、を備えたワイヤハーネスを開示している。
【0003】
特許文献3は、電線付き端子を筒体からなる外装部材に挿入するハーネス用チューブを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-143894号公報
【特許文献2】特開2006-253072号公報
【特許文献3】特開平11-205943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電線径が大きくなると、外装部材の径も大きくなり、ワイヤハーネスが曲がりにくくなって、柔軟性が損なわれるおそれがある。また、電線および外装部材の大径化に伴い、重量も増加するので、剛性が十分でないと、重力によりワイヤハーネスの途中部分が垂れ下がる懸念がある。結果として、垂れ下りを防止する吊り具を多数設けなければならない。
【0006】
そこで、本開示は、柔軟性と剛性を兼ね備えた外装部材およびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、電線を覆う外装部材であって、複数のシートが重ね合されている積層部を備え、前記積層部は、複数の前記シートが互いに独立して設けられている柔軟部と、複数の前記シートが一体化された剛体部と、を有しているワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、柔軟性と剛性を兼ね備えた外装部材およびワイヤハーネスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の実施例1において、ワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、ワイヤハーネスの製造工程の説明図であって、電線の端部にコネクタが接続された状態を示す図である。
【
図3】
図3は、さらにシールド部材の端部がコネクタに固定された状態を示す図である。
【
図4】
図4は、さらに外装部材が取り付けられた状態を示す図である。
【
図5】
図5は、さらに防水部材が取り付けられた状態を示す図である。
【
図6】
図6は、各シートの積層状態を示す部分断面図である。
【
図7】
図7は、ワイヤハーネスの端部において、防水部材が固定部材で積層部の外周に固定された状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の実施例2において、各シートの積層状態を示す部分断面図である。
【
図9】
図9は、ワイヤハーネスの経路途中の断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態の実施例3において、各シートの積層状態を示す部分断面図である。
【
図11】
図11は、各導電性シートの端部の内周側にそれぞれ金属箔が露出している状態を示す部分断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態の実施例4において、各シートの積層状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の外装部材は、
(1)電線を覆う外装部材であって、複数のシートが重ね合されている積層部を備え、前記積層部は、複数の前記シートが互いに独立して設けられている柔軟部と、複数の前記シートが一体化された剛体部と、を有している。
上記構成の外装部材は、柔軟部によって柔軟性を確保することができる上、剛体部によって剛性を確保することができる。
【0011】
(2)複数の前記シートのうち、少なくとも1枚は、導電性シートであるのが好ましい。
上記構成の外装部材は、シールド性能を備えることができる。
【0012】
(3)前記導電性シートは、前記積層部において、前記電線側となる内周側に配置されていると良い。
上記構成の外装部材は、外部干渉物と導電性シートとの干渉を回避することができるので、導電性シートが損傷する懸念が少ない。
【0013】
(4)前記導電性シートは、前記積層部に複数設けられていると良い。
上記構成の外装部材は、一部の導電性シートに破断などの不具合が生じても、他部の導電性シートによってシールド性能を確保することができる。
【0014】
(5)前記導電性シートは、前記積層部を構成する複数の前記シートの全部であると良い。
上記構成の外装部材は、シートを1つの品番で共用することができ、汎用性を高めることができる。
【0015】
(6)前記導電性シートは、樹脂製の樹脂シートに金属箔を設けたものであると良い。
上記構成の外装部材は、導電性シート全体を金属部材で形成する場合に比べ、柔軟性を向上させることができる。
【0016】
(7)複数の前記導電性シートは、それぞれの端部において前記電線側となる内周側にそれぞれの前記金属箔が露出するように段状に積層されていると良い。
上記構成の外装部材は、それぞれの導電性シートの端部において露出する金属箔にシールドシェルなどを電気的に接続させることができる。
【0017】
また、本開示のワイヤハーネスは、
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の外装部材と、前記電線と、前記電線の端部に設けられるコネクタと、前記外装部材の端部と前記コネクタとを覆う防水部材と、を備えている。
上記構成のワイヤハーネスは、外装部材の端部とコネクタとの間に水が入り混むのを防止することができる。
【0018】
(9)前記外装部材の内側に位置して前記電線を覆うシールド部材をさらに備え、前記コネクタは、前記防水部材の内側で前記シールド部材の端部に電気的に接続されるシールドシェルを有していると良い。
上記構成のワイヤハーネスは、シールド部材の端部とシールドシェルとの接続部に水が付着するのを防止することができる。この場合、シールド部材とシールドシェルとが異種金属であったとしても、腐食が抑制される。
【0019】
(10)前記防水部材を前記外装部材に固定する固定部材をさらに備え、前記防水部材は、前記外装部材の前記剛体部を覆う覆い部を有し、前記固定部材は、前記覆い部の外周に装着されていると良い。
上記構成のワイヤハーネスは、覆い部が固定部材の固定力を受けることができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施例1>
本実施形態の実施例1は、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車等に搭載されるワイヤハーネス10を例示するものである。ワイヤハーネス10が搭載される車両90は、例えば、
図1に示すように、前部にフロントモータ91を有し、中央部の床下にバッテリ92を有し、後部にリアモータ93を有している。そして、車両90は、フロントモータ91とバッテリ92とを電気的に接続するフロントハーネス11と、リアモータ93とバッテリ92との間を電気的に接続するリアハーネス12と、を有している。フロントハーネス11とリアハーネス12は、ワイヤハーネス10を構成している。
【0022】
本実施例1のワイヤハーネス10は、電線20、コネクタ30、シールド部材40、かしめリング50、外装部材60、防水部材70および固定部材80を備えている。
【0023】
電線20は、ワイヤハーネス10に複数本備えられている。電線20は、
図7に示すように、芯線21と、芯線21を包囲する被覆22と、を備えている。芯線21は、銅またはアルミ等の導電性材料によって形成されている。例えば、芯線21は、複数の素線を撚り合わせて構成されている。もっとも、芯線21は、単線によって構成されていても良い。被覆22は、絶縁性の樹脂材料によって形成されている。
【0024】
電線20の端部には、
図2に示すように、コネクタ30が設けられている。コネクタ30は、フロントモータ91、リアモータ93、バッテリ92等の機器に電気的に接続される。
【0025】
コネクタ30は、図示はしないが、電線20の端部に接続された端子を収容する合成樹脂製のハウジングを有している。そして、コネクタ30は、ハウジングの周囲を覆う筒状のシールドシェル31を有している。シールドシェル31は、アルミ等の金属製の導電性材料によって形成されている。
【0026】
シールドシェル31は、
図3に示すように、シールド部材40と電気的に接続される。シールド部材40は、導電性を有する電磁シールド用の部材であって、電線20の周りを覆うように配置されている。本実施例1の場合、シールド部材40は、多数の素線を筒状に編み込んだ編組で構成されている。もっとも、シールド部材40は、銅箔、アルミ箔等の金属製の箔で構成されていても良い。
【0027】
シールド部材40の端部は、金属製のかしめリング50を介してシールドシェル31に固定されている。かしめリング50は、シールド部材40の端部の外周側に設けられ、シールド部材40を外周側から締め付け、シールドシェル31との間にシールド部材40の端部を挟み込む。
【0028】
電線20の外周は、端部を除いて、外装部材60によって覆われている。外装部材60は、シールド部材40の外周側に位置し、シールド部材40および電線20を周辺部品等の外部干渉物から保護する役割を有している。
【0029】
外装部材60は、
図6に示すように、複数のシート61を板厚方向に積層してなる積層部62を有している。本実施例1の積層部62は、外装部材60の全体に構成されている。しかし、積層部62は、外装部材60の一部に構成されているだけでも良い。
【0030】
複数のシート61は、それぞれ曲げ変形可能な薄肉シートで構成されている。例えば、各シート61は、一枚当たり、0.2~0.3mmの板厚で形成されている。各シート61の積層枚数は、3枚以上であるのが好ましいが、使用状況等に応じて任意に設定可能である。
【0031】
本実施例1のシート61は、樹脂製の樹脂シートである。シート61を構成する樹脂は、PE(Polyethylene)、PP(Polypropylene)等の耐熱性、機械的強度に優れたポリオレフィン樹脂であるのが好ましい。例えば、複数のシート61のうち、電線20に最も近い内側と電線20から最も離れた外側の両シート61AをPEで構成し、両シート61A間に積層される中間側のシート61BをPPで構成するようにすれば、コストパフォーマンスに優れて、より好ましい。シート61を構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂、例えば、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂であっても良く、さらに、熱可塑性エラストマ等のエラストマであっても良い。
【0032】
また、シート61は、柔軟部63と、柔軟部63よりも剛性の高い剛体部64と、を有している。柔軟部63と剛体部64は、ワイヤハーネス10の配索方向に隣り合うように交互に並んで配置されている。
【0033】
柔軟部63は、各シート61が互いに独立した状態で積層されている部分である。ここで、独立とは、各シート61を互いに一体化させる機械的、物理的、化学的な処理が行われておらず、各シート61が互いに固定されていない状態で存在していることを言う。各シート61は、板厚方向で互いに離れていても良いが、板厚方向で互いに接触しているのが好ましく、板厚方向で面接触した状態で接触しているのがより好ましい。柔軟部63は、ワイヤハーネス10の経路を維持する剛性を有するものの、例えば、人手によって曲げ変形可能な柔軟性を有している。よって、柔軟部63は、ワイヤハーネス10の経路において湾曲して配索される部分に設置されていると良く、本実施例1の場合、
図1に示すように、車両90の前側および後側で湾曲して立ち上がる部分に設置されている。
【0034】
剛体部64は、各シート61が互いに一体化された状態で積層されている部分である。具体的には、剛体部64は、各シート61に機械的、物理的、化学的な処理を施すことで、各シート61が互いに一体化されている部分である。より具体的には、剛体部64は、各シート61が超音波、レーザー、熱プレス等で溶着されて一体化され、且つ剛性が強化された部分になる。剛体部64においては、各シート61間に空気層が存在していないので、柔軟部63よりも板厚を薄くすることができる。また、剛体部64の板厚は溶着によってより薄くなる。
【0035】
積層部62は、
図7に示すように、平面状に展開された状態からシールド部材40および電線20を包囲するように巻かれる。これにより、筒状の積層部62が形成される。また、積層部62の外周に図示しない粘着テープが巻き付けられ、積層部62の筒状の形態が留められる。積層部62の周方向の両端部は互いに重なり合うことができるので、その重なり合う部分の間に接着材等を介在させ、互いに接合させても良い。積層部62の筒状の形態を留める手段としては、任意の手段を採用することができ、特に限定されない。
【0036】
本実施例1の場合、積層部62の端部は、剛体部64として構成されている。積層部62の端部には、
図5に示すように、防水部材70が被せられる。防水部材70は、積層部62の端部とコネクタ30とにまたがって装着されている。防水部材70としては、筒状のゴムブーツを使用することができる。このゴムブーツは、鍔付きのゴムブーツであるグロメットであっても良い。
【0037】
防水部材70の外周には、固定部材80が装着されている。固定部材80としては、タイバンド等の結束部材、粘着テープ、クリップを使用することができる。防水部材70は、積層部62の端部における剛体部64と固定部材80との間に、覆い部71を有している。
【0038】
次に、本実施例1の外装部材60およびワイヤハーネス10の製造方法を説明する。
外装部材60の製造に際し、複数のシート61を板厚方向に重ね合わせ、その状態で、剛性が必要とされる部分に、板厚方向に超音波溶接を施し、剛体部64を形成する。本実施例1の剛体部64は、各シート61が筒状に巻かれたときに周方向となる方向に連続して延びるように、帯状に形成される。各シート61において、剛体部64と隣り合う部分は、柔軟部63として構成される。つまり、柔軟部63を形成するための特別な加工を行う必要はない。これにより、平面状の積層部62が得られる。
【0039】
また、ワイヤハーネス10の製造に際し、
図2に示すように、複数の電線20の両端部にそれぞれコネクタ30を接続する。続いて、各電線20の外周にシールド部材40を被せつつシールド部材40の両端部をそれぞれシールドシェル31の外周に被せる。その状態で、シールド部材40の両端部にそれぞれ外周側からかしめリング50を締め付け、
図3に示すように、シールド部材40の両端部をシールドシェル31に固定する。
【0040】
次いで、
図4に示すように、シールド部材40の外周側に積層部62を円筒状に巻いて図示しない粘着テープ等で留める。続いて、各電線20の端部を防水部材70で覆いつつ、積層部62の端部とシールドシェル31とに防水部材70を被せ付け、さらに、
図5に示すように、覆い部71の外周側に固定部材80を設置する。その状態で、固定部材80を覆い部71に締め付け、防水部材70を積層部62の端部に固定する。積層部62の端部は、剛体部64で構成されているので、固定部材80の固定力を安定して受け止めることができる。
【0041】
また、積層部62の端部が剛体部64によって細径に形成されていて熱伝導性に優れた形態になっているので、
図7に示すように、積層部62の端部の内周を各電線20に接触させることにより、各電線20の発熱に対する放熱性が向上する。
【0042】
このようにして形成されたワイヤハーネス10は、既述したように、車両90のフロントハーネス11またはリアハーネス12として使用可能となる。ワイヤハーネス10の経路において、例えば、湾曲する部分にはその湾曲形状に応じて湾曲させた柔軟部63を設置し、直線状に延びる部分にはその直線形状を維持可能な剛体部64を設置するようにすると良い。特に、剛体部64がワイヤハーネス10の垂れ下がりを抑制することができるので、ワイヤハーネス10の径路途中に設置され得る吊り具の個数を減らすことができ、好ましくは無くすことができる。また、吊り具の取り付け位置に対応して剛体部64を設けることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施例1の場合、外装部材60が複数のシート61が重ね合されている積層部62を備え、積層部62が柔軟部63と剛体部64とを有し、柔軟部63が互いに独立して設けられているシート61で構成され、剛体部64が各シート61を一体化させて構成されている。このため、外装部材60は、部品点数を増加させることなく、簡単な構造で、柔軟性と剛性を兼ね備えることができる。
【0044】
また、防水部材70が積層部62の端部とコネクタ30との間に架け渡して設けられることにより、積層部62の端部とコネクタ30との間に水が入り込むのを防止することができる。
【0045】
さらに、シールドシェル31が防水部材70の内側でシールド部材40の端部に電気的に接続されているから、シールド部材40の端部とシールドシェル31との接続部分に水が付着するのを防止することができ、接続信頼性を確保することができる。
【0046】
<実施例2>
本実施形態の実施例2は、
図8に示すように、積層部62Fを構成する複数のシート61Fのうち、1枚のシートが導電性シート61Cになっており、この点が実施例1とは異なる。
【0047】
導電性シート61Cは、複数のシート61Fのうち、巻かれたときに電線20に最も近い側になる内周側に配置されている。この導電性シート61Cは、樹脂製の樹脂シート61Dと、樹脂シート61Dの両面のうちの内周側に位置する内面に設けられた金属箔61Eと、を有して構成されている。樹脂シート61Dは、実施例1のシート61と同様である。積層部62Fを構成する複数のシート61Fのうち、導電性シート61C以外のシートは、樹脂シート61Dで構成されている。
【0048】
金属箔61Eは、金箔、銀箔、銅箔、アルミ箔等であって、樹脂シート61Dよりも薄い厚みを有している。金属箔61Eは、樹脂シート61Dの内周側の内面に、二色成形、熱接合等の接合手段によって貼り合わされている。接合手段としては、樹脂シート61Dの内面と金属箔61Eとの間に接着材や粘着テープ等の接着層を設けても良い。
【0049】
製造に際し、各電線20を内側に配しつつ積層部62Fが筒状に巻かれると、導電性シート61Cが積層部62Fの内周側に配置されるとともに、金属箔61Eが各電線20側に露出して配置される。ここで、金属箔61Eは、電磁波のシールド性能を有し、実施例1のシールド部材40と同様の機能を発揮することができる。このため、本実施例2においては、
図9に示すように、ワイヤハーネス10から編組等のシールド部材が省略されている。もっとも、シールド性能の向上を図るため、金属箔61Eとともに編組等のシールド部材を用いても良い。
【0050】
このように、本実施例2によれば、外装部材60がシールド性能を備えることができる。特に、導電性シート61Cは、樹脂シート61Dに金属箔61Eを貼り合わせてなるため、全体を金属製とする場合に比べ、柔軟性が高められる。
【0051】
また、導電性シート61Cが積層部62Fの内周側に配置され、さらに樹脂シート61Dの内面に金属箔61Eが設けられているので、外部干渉物と金属箔61Eとの干渉を回避することができる。
【0052】
<実施例3>
本実施形態の実施例3は、
図10に示すように、積層部62Gを構成する全部のシート61Gが導電性シート61Cになっており、この点が実施例2とは異なる。
【0053】
導電性シート61Cは、実施例2と同様の構造であり、樹脂シート61Dと、樹脂シート61Dの内面に設けられた金属箔61Eと、を有して構成されている。積層部62Gが筒状に巻かれた状態で、積層部62Gの外周には導電性シート61Cの樹脂面が露出し、積層部62Gの内周には導電性シート61Cの金属箔61Eが露出する。なお、柔軟部63と剛体部64は、樹脂シート61Dと金属箔61Eを含みつつ、積層部62Gの板厚方向に連続して形成されている。
【0054】
積層部62Gの端部においては、
図11に示すように、各導電性シート61Cのうち、相対的に外周側に位置する導電性シート61Cの端部が相対的に内周側に位置する導電性シート61Cの端部よりも板面方向に突き出るように形成されている。つまり、積層部62Gの端部においては、各導電性シート61C毎に段差65が形成され、全体として階段状の積層構造になっている。各導電性シート61Cが段状に積層されているため、各導電性シート61Cのそれぞれの金属箔61Eは、積層部62Gの端部において、いずれも内周側に露出することになる。したがって、各導電性シート61Cのそれぞれの金属箔61Eは、積層部62Gの端部において、いずれもシールドシェル等のアース用の接続部材35に電気的に接続可能な状態になる。
【0055】
実施例3によれば、積層部62Gを構成する全部のシート61Gが導電性シート61Cとして構成されるため、導電性シート61Cを1つの品番で共用することができ、汎用性を高めることができる。
【0056】
また、実施例3においては、各導電性シート61Cの端部に形成された金属箔61Eをいずれも接続部材35に電気的に接続させることができるので、シールド性能を向上させることができる。
【0057】
<実施例4>
本実施形態の実施例4は、積層部62Hを構成する複数のシート61Hのうち、内周側に位置する2枚以上の一部のシートが導電性シート61Cになっており、この点が実施例3とは異なる。本実施例4の場合、導電性シート61Cは、積層部62Hにおいて、最も内周側に位置する1枚と、その上に積層される1枚との2枚で構成されている。積層部62Hにおいて、外周側に位置する2枚のシートは樹脂シート61Dで構成されている。
【0058】
導電性シート61Cの構造は、実施例2および実施例3と同様である。また、図示はしないが、各導電性シート61Cは、実施例3と同様、積層部62Hの端部において段状に積層されており、それぞれの金属箔61Eが内周側に露出して配置されている。
【0059】
実施例4によれば、仮に、複数の導電性シート61Cのうち、一部の導電性シート61Cの金属箔61Eに破断などの不具合が生じたとしても、残りの導電性シート61Cによってシールド性能を確保することができる。
【0060】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
実施形態の実施例1~4の場合、ワイヤハーネスは車両のバッテリとモータとの間に設けられていた。しかし、他の実施形態として、ワイヤハーネスは、車両の適宜な部位に設けられていれば良い。また、ワイヤハーネスは、実施例1で例示した電気自動車等の自動車に限らず、他の形式の自動車に搭載されるものであっても良く、さらに、車両に限らず、電気部品同士を接続する配索路に広く適用可能である。
実施形態の実施例1~4の場合、積層部は外導部材の全部を構成していた。しかし、他の実施形態として、積層部は外装部材の一部を構成するものであっても良い。
実施形態の実施例2~4の場合、導電性シートは樹脂シートと金属箔とで構成されていた。しかし、他の実施形態として、導電性シートは全体が導電部材で構成されていても良い。
実施形態の実施例1~4の場合、金属箔は樹脂シートの内面に設けられていた。しかし、他の実施形態として、金属箔は樹脂シートの外面にも設けられていても良い。
【符号の説明】
【0061】
10…ワイヤハーネス
11…フロントハーネス
12…リアハーネス
20…電線
21…芯線
22…被覆
30…コネクタ
31…シールドシェル
35…接続部材
40…シールド部材
50…かしめリング
60…外装部材
61…シート
61,61F,61G,61H…シート
61A…外側の両シート
61B…中間側のシート
61C…導電性シート
61D…樹脂シート
61E…金属箔
62,62F,62G,62H…積層部
63…柔軟部
64 剛体部
65 段差
70 防水部材
71 覆い部
80 固定部材
90 車両
91 フロントモータ
92 バッテリ
93 リアモータ