(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178848
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】水性ボールペン用インキ逆流防止体
(51)【国際特許分類】
B43K 7/01 20060101AFI20221125BHJP
B43K 7/08 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B43K7/01
B43K7/08 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085937
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】南 康平
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350NA10
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性、追従性、掃除性及び安定性に優れた水性ボールペン用インキ逆流防止体を提供すること。
【解決手段】(a)鉱油、(b)シリコーンオイル、(c)アルミニウムセッケン、及び(d)重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマー、を含む、水性ボールペン用インキ逆流防止体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鉱油、(b)シリコーンオイル、(c)アルミニウムセッケン、及び(d)重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマー、を含む、水性ボールペン用インキ逆流防止体。
【請求項2】
水性ボールペン用インキ逆量防止体全量を100質量%として、(a)鉱油が70.0質量%以上99.9質量%未満、(b)シリコーンオイルが0.1質量%以上20.0質量%以下、(c)アルミニウムセッケンが0質量%超10.0質量%未満、(d)重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーの含有量がそれぞれ0質量%超10.0質量%未満である、請求項1に記載の水性ボールペン用インキ逆流防止体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ボールペン用インキ逆流防止体に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ボールペンのインキは、油性ボールペンのインキに比べ低粘度である。そのため、水性ボールペンのインキ収容筒内には、インキとは相溶性のないゲル状態の逆流防止体が、ペン先とは反対側に充填されている。
逆流防止体には、(a)強い力が加わった場合でも、逆流防止体の変形やインキの漏出を起こさない耐衝撃性、(b)筆記の際に、インキに追従してペン先側に移動する追従性、(c)インキに追従してペン先側に移動する際に、インキ収容筒内の壁面にインキが残存しないようにする掃除性、(d)長期間の保存に際しても、成分の分離等を起こさない安定性、等の特性が求められている。
【0003】
逆流防止体としては、これまで種々のものが知られている。
特許文献1には、鉱油類及びシリコーンオイル類の群より選ばれる1種以上を含む基油と、微粒子シリカとを含むインキ追従体が記載されている。
特許文献2には、プロセスオイル、メチルハイドロジェンシリコーン及びステアリン酸リチウムを含むインキ追従体が記載されている。
特許文献3には、鉱物油、シリコーンオイル及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含む水性ボールペンインキの逆流防止剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3485236号公報
【特許文献2】特開平11-1089号公報
【特許文献3】特許第3016749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載されている逆流防止体は、耐衝撃性、追従性、掃除性及び安定性のいずれか1つ以上の特性について満足のいくものではなかった。
本発明が解決しようとする課題は、耐衝撃性、追従性、掃除性及び安定性に優れた水性ボールペン用インキ逆流防止体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成の水性ボールペン用インキ逆流防止体により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
項1:(a)鉱油、(b)シリコーンオイル、(c)アルミニウムセッケン、及び(d)重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマー、を含む、水性ボールペン用インキ逆流防止体。
項2:水性ボールペン用インキ逆量防止体全量を100質量%として、(a)鉱油が70.0質量%以上99.9質量%未満、(b)シリコーンオイルが0.1質量%以上20.0質量%以下、(c)アルミニウムセッケンが0質量%超10.0質量%未満、(d)重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーの含有量がそれぞれ0質量%超10.0質量%未満である、項1に記載の水性ボールペン用インキ逆流防止体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、耐衝撃性、追従性、掃除性及び安定性に優れた水性ボールペン用インキ逆流防止体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の水性ボールペン用インキ逆流防止体について説明する。
本発明の水性ボールペン用インキ逆流防止体は、(a)鉱油、(b)シリコーンオイル、(c)アルミニウムセッケン、及び(d)重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマー、を含んでいる。
【0009】
<鉱油>
鉱油は、インキ収容筒内の壁面に対する濡れ性に優れるものが好ましい。これにより、水性ボールペン用インキ逆流防止体に掃除性を付与することができる。
鉱油としては、原油を常圧蒸留及び/又は減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等からなる群より選ばれる1つ以上の精製処理を行って精製した、パラフィン系、ナフテン系等の鉱油等が挙げられる。本発明においては、パラフィン系鉱油が好ましく、パラフィン系のプロセスオイルが特に好ましい。鉱油は単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0010】
水性ボールペン用インキ逆流防止体における鉱油の含有量は、特に限定されない。水性ボールペン用インキ逆量防止体全量を100質量%として、例えば70.0質量%以上、好ましくは75.0質量%以上、より好ましくは80.0質量%以上であり、例えば99.9質量%未満、好ましくは99.0質量%以下、より好ましくは97.0質量%以下である。
鉱油の含有量が99.9質量%以上であると、弾性が不足するおそれがある。また、70質量%未満であると、インキ中に混入して筆記時にインキのカスレが生じるおそれがある。
【0011】
<シリコーンオイル>
シリコーンオイルは、主鎖にシロキサン結合を有する鎖状シリコーンであって、23℃で液状のものである。例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル;等が挙げられる。シリコーンオイルは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0012】
水性ボールペン用インキ逆流防止体は、筆記に伴い水性ボールペン用インキがペン先に移動する際に、インキに追従しつつ、インキ収容筒の壁面の水性ボールペン用インキを掻き取りながら前進する。この際、逆流防止体を構成する基油中に、インキよりもインキ収容筒の内壁に対する濡れ性が優れているシリコーンオイルを含むことで、逆流防止体がインキ収容筒の内壁からインキを掻き取り、掃除性を発揮する。
水性ボールペン用インキ逆流防止体におけるシリコーンオイルの含有量は、特に限定されない。水性ボールペン用インキ逆量防止体全量を100質量%として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、例えば20.0質量%未満、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下である。
シリコーンオイルの含有量が20.0質量%を超えると、逆流防止体からのシリコーンオイルの離奨が顕著になり、離奨したシリコーンオイルがインキ中に混入して筆記時にインキのカスレが生じるおそれがある。また、0.1質量%未満であると、インキ収容筒の内壁に付着したインキの掻き取りができず、掃除性が低下するおそれがある。
【0013】
<アルミニウムセッケン>
アルミニウムセッケンは、脂肪酸の金属アルミニウム塩である。アルミニウムセッケンは、鉱油及びシリコーンオイルから構成される基油中で網目構造を形成することができ、ゲル化作用を示すものである。アルミニウムセッケンは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0014】
脂肪酸中の炭化水素基としては、直鎖であっても分岐鎖のいずれでもよく、また、飽和又は不飽和のいずれでもよい。脂肪酸の炭素数は、特に限定されない。例えば炭素数6以上、好ましくは7以上であり、例えば炭素数30以下、好ましくは炭素数25以下、より好ましくは炭素数23以下、さらに好ましくは炭素数20、最も好ましくは炭素数13以下である。
また、アルミニウムセッケンを構成する脂肪酸の炭素数の総数は、例えば12以下であり、例えば34以下、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは20以下であり、最も好ましくは17以下である。
アルミニウムセッケンを構成する脂肪酸の炭素数の総数が12未満であると、基油への溶解性が低下するおそれがある。また、脂肪酸の炭素数の総数が34を超えると、基油の離奨が起こりやすくなるおそれがある。
【0015】
アルミニウムセッケンを構成する脂肪酸としては、飽和脂肪酸として、カプロン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸等の不飽和脂肪酸;等からなる1種以上が挙げられる。好ましくは、2-エチルヘキサン酸、ステアリン酸等からなる群より選ばれる1種以上である。
【0016】
アルミニウムセッケンとしては、モノ脂肪酸アルミニウムセッケン、ジ脂肪酸アルミニウムセッケン及びトリ脂肪酸アルミニウムセッケンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。本発明においては、モノ脂肪酸アルミニウムセッケンを主成分とし、ジ脂肪酸アルミニウムセッケン及びトリ脂肪酸アルミニウムセッケンが不可避的量で含まれるものが好ましい。
アルミニウムセッケンの好ましい例としては、アルミニウムモノステアレートが挙げられる。
【0017】
水性ボールペン用インキ逆流防止体におけるアルミニウムセッケンの含有量は、特に限定されない。水性ボールペン用インキ逆量防止体全量を100質量%として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、例えば10.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
アルミニウムセッケンの含有量が10.0質量%を超えると、逆流防止体の硬度が高くなり、追従性が悪化し、筆記時にカスレが発生するおそれがある。また、0.1質量%未満であると、逆流防止体のゲル化作用が不足し、逆流防止体が柔らかく形状が崩れやすくなるおそれがある。
【0018】
<炭化水素系ポリマー>
本発明の水性ボールペン用インキ逆流防止体は、重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーを含むことで、逆流防止体内で網目構造が形成され、逆流防止体にゲル化効果を付与する。重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーの分子構造としては、全て同じであってもよく、全て異なっていてもよく、それ以外であってもよい。
本発明においては、分子構造が同じで、重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーを含むことが好ましい。
炭化水素系ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等の脂肪族炭化水素系ポリマー、ポリスチレン等の芳香族炭化水素系ポリマー、及びこれらの共重合体からなる群より選ばれる1種以上のポリマーである。
【0019】
本発明において、「重量平均分子量が異なる」ことにより、2種以上の炭化水素系ポリマー組成物の分子量分布は、二峰以上の多峰性を示す。また、例えば、2種以上の炭化水素系ポリマーの重量平均分子量の差が、それぞれ5,000以上、好ましくは10,000以上であることを意味する。
さらに、本発明の重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーのそれぞれの重量平均分子量は、特に限定されない。例えば、重量平均分子量が145,000以下、好ましくは130,000未満の炭化水素系ポリマーと、重量平均分子量が150,000以上、好ましくは180,000以上である。重量平均分子量が145,000以下の炭化水素系ポリマーを含まない場合、インキ逆流防止体の安定性が低下するおそれがある。重量平均分子量が150,000以上の炭化水素系ポリマーを含まない場合、インキ逆流防止体の耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0020】
炭化水素系ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン-ポリエチレン/ポリブチレン-ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチレン/ポリプロピレン-ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンブロックコポリマー等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン-ポリエチレン/ポリブチレン-ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチレン/ポリプロピレン-ポリスチレンブロックコポリマーからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、ポリスチレン-ポリエチレン/ポリブチレン-ポリスチレンブロックコポリマーである。
【0021】
ポリスチレン-ポリエチレン/ポリブチレン-ポリスチレンブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンFG-1901X、クレイトンG-1650、クレイトンG-1651、クレイトンG-1652、クレイトンG-1654X、クレイトンG-1657X、クレイトンG-1726X、クレイトンFG-1092X(いずれも、クレイトンポリマージャパン社製:商品名)、セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007(いずれも、クラレ社製:商品名)、タフテックM-1943、タフテックM-1911、タフテックM-1913(いずれも、旭化成社製:商品名)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0022】
ポリスチレン-ポリエチレン/ポリプロピレン-ポリスチレンブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンG-1730(クレイトンポリマージャパン社製:商品名)、セプトン2002、セプトン2005、セプトン2006、セプトン2007、セプトン2043、セプトン2063、セプトン2104、セプトン4033、セプトン4055、セプトン4077(いずれもクラレ社製:商品名)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0023】
ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンD-1101、クレイトンD-1102、クレイトンD-1155、クレイトンD-KX405、クレイトンD-KX408、クレイトンD-KX410、クレイトンD-KX414、クレイトンD-KX65S、クレイトンD-KX403P、クレイトンD-KX139S、クレイトンD-KX155P、クレイトンD-1118、クレイトンD-1116、クレイトンD-1188X、クレイトンD-1122X、クレイトンD-1300X、カリフレックスTR-1101S、カリフレックスTR-1184、カリフレックスTR-1186、カリフレックスTR-4113P、カリフレックスTR-4122P、カリフレックスTR-4260P(いずれも、クレイトンポリマージャパン社製:商品名)、タフプレン-A、タフプレン-125、タフプレン-126、タフプレン-315、ソルプレン-T-411、ソルプレン-T-414、ソルプレン-T-416、ソルプレン-T-406、ソルプレン-T-475、アサプレン-T-475、アサプレン-T-420、アサプレン-T-430、アサプレン-T-431、アサプレン-T-432、アサプレン-T-436(いずれも、旭化成社製:商品名)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0024】
ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンD-KX-400P、クレイトンD-1113X、クレイトンD-114X、クレイトンD-1125X、クレイトンd-1320X、クレイトンD-1107、クレイトンD-1112、クレイトンD-1113、クレイトンD-1117、クレイトンD-1119、クレイトンD-1124、クレイトンD-1161、クレイトンD-1111、クレイトンD-KX406、クレイトンD-KX603、カリフレックスTR-1107(いずれも、クレイトンポリマージャパン社製:商品名)、ソルプレン-418(旭化成社製:商品名)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0025】
水性ボールペン用インキ逆流防止体における重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーの各含有量は、特に限定されない。水性ボールペン用インキ逆量防止体全量を100質量%として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、例えば10.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーの各含有量が10.0質量%を超えると、逆流防止体がインキ収容筒内面に貼りつきやすくなり、追従性が悪化し、筆記時にカスレが発生するおそれがある。また、0.1質量%未満であると、逆流防止体のゲル化作用が不足し、逆流防止体が柔らかく形状が崩れやすくなるおそれがある。
【0026】
<その他成分>
本発明の水性ボールペン用インキ逆流防止体は、必要に応じて、(a)鉱油、(b)シリコーンオイル、(c)アルミニウムセッケン、及び(d)炭化水素系ポリマー以外のその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、例えば水溶性有機溶剤、着色剤、増粘剤、増ちょう剤、ポリマー等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【実施例0027】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は質量部を意味する。
【0028】
実施例及び比較例で用いた成分は、それぞれ以下のとおりである。
鉱油:パラフィン系プロセスオイル
Siオイル1:ジメチルシリコーンオイル
Siオイル2:メチルハイドロジェンシリコーンオイル
Siオイル3:メチルフェニルシリコーンオイル
Siオイル4:カルボン酸変性シリコーンオイル
Siオイル5:ポリエーテル変性シリコーンオイル
Siオイル6:メチルスチリル変性シリコーンオイル
Alセッケン:アルミニウムステアレート300(日油社製:商品名)
ポリマー1:ポリスチレン-ポリエチレン/ポリブチレン-ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)(重量平均分子量約20万)
ポリマー2:ポリスチレン-ポリエチレン/ポリブチレン-ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)(重量平均分子量約11万)
【0029】
得られた各水性ボールペン用インキ逆流防止体は、水性ボールペンを製造した後に、以下のようにして、耐衝撃性、追従性、掃除性及び安定性を評価した。
【0030】
(ボールペンの製造方法)
一端側にペン先を取り付けた内径4.0mmの透明なポリプロピレン製のインキ収容筒に、20℃における粘度が3000cStの水性ボールペン用インキを充填後、各実施例又は各比較例の水性ボールペン用インキ逆流防止体を充填し中芯を得て、本体、キャップ、尾栓を取り付けてから、インキ逆流防止体に混入した空気を遠心分離操作により除去して、ボールペンを製造した。水性ボールペン用インキの粘度は、E型粘度計により、ローター:3゜コーン、回転数:0.5rpm、温度:20℃の条件で測定した。
【0031】
(耐衝撃性)
各水性ボールペン用インキ逆流防止体が充填されているボールペンを、ペン先を上に向けた状態で1mの高さから落下させた。落下後、逆流防止体の形状が崩れたり、インキが漏れたりしていないかを以下の基準で評価した。
A:逆流防止体の形状に変化がなくインキ漏れの発生がない。
C:逆流防止体の形状が変化している又はインキの漏れが発生した。
【0032】
(追従性)
各水性ボールペン用インキ逆流防止体を充填したボールペンをインキが流出しなくなるまで筆記した。その際、各水性ボールペン用インキ逆流防止体がインキと同時に前進するかどうかを以下の基準で評価した。
A:インキと同時に前進して、追従性に問題がない。
C:インキと同時に前進せず、追従性に問題がある。
【0033】
(掃除性)
各水性ボールペン用インキ逆流防止体を充填したボールペンをインキが流出しなくなるまで筆記した。その際、インキ収容筒の内壁に付着したインキの状態を以下の基準で評価した。
A:インキ収容筒の内壁にインキの付着がない。
B:インキ収容筒の内壁面積の10%未満に、インキが付着している。
C:インキ収容筒の内壁面積の10%以上に、インキが付着している。
【0034】
(安定性)
各水性ボールペン用インキ逆流防止体を充填したボールペンを3日間静置し、各水性ボールペン用インキ逆流防止体の分離の有無を以下の基準で評価した。
A:分離が発生しない。
C:分離が発生する。
【0035】
<実施例1~12>
表1及び表2に示す鉱油、アルミニウムセッケン、及び重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーを、180℃に加熱しながら撹拌機を用いて30分間混合した後、室温(23℃)まで静置冷却し、プラネタリ―ミキサーを用いてさらに10分間撹拌を行った後に静置脱泡した。さらに、表1及び表2に示すシリコーンオイルを添加し、撹拌機を用いて30分間撹拌し、実施例1~12に係る水性ボールペン用インキ逆流防止体を得た。
【0036】
<比較例1>
表2に示す鉱油、アルミニウムセッケン、及び重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマーを、180℃に加熱しながら撹拌機を用いて30分間混合した後、室温(23℃)まで静置冷却し、プラネタリ―ミキサーを用いてさらに10分間撹拌を行った後に静置脱泡し、比較例1に係る水性ボールペン用インキ逆流防止体を得た。
【0037】
<比較例2~4>
表2に示す鉱油、アルミニウムセッケン、及び炭化水素系ポリマーを、180℃に加熱しながら撹拌機を用いて30分間混合した後、室温(23℃)まで静置冷却し、プラネタリ―ミキサーを用いてさらに10分間撹拌を行った後に静置脱泡した。さらに、表2に示すシリコーンオイルを添加し、撹拌機を用いて30分間撹拌し、比較例2~4に係る水性ボールペン用インキ逆流防止体を得た。
【0038】
【0039】
【0040】
表1及び表2より、本発明に係る、(a)鉱油、(b)シリコーンオイル、(c)アルミニウムセッケン、及び(d)重量平均分子量が異なる2種以上の炭化水素系ポリマー、を含む、水性ボールペン用インキ逆流防止体は、耐衝撃性、追従性、掃除性及び安定性に優れていることがわかる。
一方、シリコーンオイルを含まない比較例1は掃除性に劣り、アルミニウムセッケンを含まない比較例2は耐衝撃性及び安定性に劣る。さらに、重量平均分子量が大きい炭化水素系ポリマーを含まない比較例3は耐衝撃性に劣り、重量平均分子量が小さい炭化水素系ポリマーを含まない比較例4は安定性に劣る。