(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178855
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ジオポリマー発泡体
(51)【国際特許分類】
B01J 20/10 20060101AFI20221125BHJP
C04B 28/26 20060101ALI20221125BHJP
C04B 14/20 20060101ALI20221125BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B01J20/10 A
C04B28/26
C04B14/20 A
C04B14/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085948
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】内藤 直記
(72)【発明者】
【氏名】野呂 仁一朗
【テーマコード(参考)】
4G066
4G112
【Fターム(参考)】
4G066AA12D
4G066AA22A
4G066AA30A
4G066AA30B
4G066AA66D
4G066AA75A
4G066AA78A
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA38
4G066CA23
4G066CA28
4G066CA51
4G066CA56
4G066DA01
4G112PA06
4G112PA08
(57)【要約】
【課題】ガス吸着フィルターとして使用可能な、高いガス吸着性を有するジオポリマー発泡体を提供すること。
【解決手段】アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物と、骨材とを含み、発泡により成形された多数の気泡による連続気泡構造を有する、ガス吸着フィルター用のジオポリマー発泡体であって、前記発泡体の密度が100~500kg/m3であり、かつ、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗が0.02~3Pa・s/cm2である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物と、骨材とを含み、
発泡により形成された多数の気泡による連続気泡構造を有する、ガス吸着フィルター用のジオポリマー発泡体であって、
前記発泡体の密度が100kg/m3以上500kg/m3以下であり、かつ、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗が0.02Pa・s/cm2以上3Pa・s/cm2以下である、ジオポリマー発泡体。
【請求項2】
前記ジオポリマー発泡体中の気泡の平均体積が0.5mm3以上10mm3以下であり、体積2mm3以上の気泡の体積比率が20%以上90%以下である、請求項1に記載のジオポリマー発泡体。
【請求項3】
前記骨材がマイカを含み、前記マイカの平均粒径が80μm以上200μm以下である、請求項1または2に記載のジオポリマー発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオポリマーは、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させることにより製造される無機ポリマーである。ジオポリマーは、原材料の製造から製品の製造までに排出される二酸化炭素の量が少ないため、環境に優しい素材として注目されている。
【0003】
ジオポリマーは、非晶質の無機ポリマーであり、その短距離秩序はゼオライトに類似する。具体的には、ジオポリマーは、SiO4とAlO4とから形成される四面体構造を有すると共に、該四面体構造によるネットワーク中に、AlO4の負電荷を補償する交換性陽イオンを保有している。これにより、ジオポリマーは、吸着性材料などを特別添加しなくとも、硫黄酸化物や窒素酸化物などの酸性ガス、揮発性有機炭化水素などの有害ガス等を吸着する性質を有するため、ガス吸着フィルター用途への利用が期待されている。
【0004】
また、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させる際に、ジオポリマーを形成するための組成物に発泡剤等を添加し、組成物を発泡させつつ反応させることで、多数の気泡による連続気泡構造を有するジオポリマー発泡体が得られることが知られている。
【0005】
ジオポリマー発泡体に関する技術として、例えば、特許文献1には、複合材料から形成された複合体物品において、微粒子セラミック充填剤、および前記材料の少なくとも2質量%を構成するジオポリマー結合剤を有してなるジオポリマー複合体が記載されている。また、このジオポリマー複合体は、ディーゼル微粒子フィルター、触媒コンバータ、NOx吸着体、触媒担体、ハニカムモノリスなどに利用できるとされている。
【0006】
また、特許文献2には、アルカリ金属珪酸塩水溶液20~65重量部、無機固体成分15~60重量部、および充填剤0~65重量部よりなる主材100重量部と、アニオン界面活性剤0.001~5重量部と、発泡剤2~30重量部とよりなる無機発泡体用組成物が記載されている。そして、この無機発泡体用組成物による無機発泡体(ジオポリマー発泡体)は連続気泡を有することから、吸音材やフィルター等に有用であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-543701号公報
【特許文献2】特開平05-85858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2においては、ジオポリマー発泡体をガス吸着フィルターとして利用するための十分な検討がなされておらず、酸性ガスや有毒ガス等のガスに対する吸着性能が不十分であり、ガス吸着フィルターとしての十分な性能を発揮させることは困難であった。
【0009】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、ガス吸着フィルターとして使用可能な、高いガス吸着性を有するジオポリマー発泡体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のジオポリマー発泡体は以下のことを特徴としている。
<1>アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物と、骨材とを含み、
発泡により形成された多数の気泡による連続気泡構造を有する、ガス吸着フィルター用のジオポリマー発泡体であって、
前記発泡体の密度が100kg/m3以上500kg/m3以下であり、かつ、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗が0.02Pa・s/cm2以上3Pa・s/cm2以下である。
<2>前記ジオポリマー発泡体中の気泡の平均体積が0.5mm3以上10mm3以下であり、体積2mm3以上の気泡の体積比率が20%以上90%以下である。
<3>前記骨材がマイカを含み、前記マイカの平均粒径が80μm以上200μm以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジオポリマー発泡体は、ガス吸着フィルターとして使用可能な、高いガス吸着性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のジオポリマー発泡体の一実施形態について説明する。
【0013】
本発明のジオポリマー発泡体は、ガス吸着フィルター用途に好適に用いることができる。ガス吸着フィルターは、例えば、NOx(NO2など)、SOx(SO2など)等の無機ガスや、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの揮発性有機化合物などを吸着することができる。
【0014】
本発明のジオポリマー発泡体は、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物と、骨材とを含む。
【0015】
(アルミノケイ酸塩)
アルミノケイ酸塩(xM2O・yAl2O3・zSiO2・nH2O、Mはアルカリ金属)は、水溶液(スラリー)中で、後述するアルカリ金属ケイ酸塩と反応させることにより、アルミニウムイオンが水溶液中に溶出すると共に、ケイ酸モノマー(ケイ酸、Si(OH)4)が生じる。このようにして生じたケイ酸モノマーと陽イオンとが重縮合することにより、SiO4・AlO4の四面体構造によるポリマーネットワーク(ジオポリマー)が形成される。
【0016】
アルミノケイ酸塩におけるSiO2(二酸化ケイ素)の含有量が、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%70質量%以下であることがより好ましい。SiO2の含有量がこの範囲であると、製造されたジオポリマー発泡体は、多数の気泡による良好な連続気泡構造が形成されやすく、ガス吸着性を安定して高めることができる。アルミノケイ酸塩における、SiO2の含有量や、後述するAl2O3の含有量は、蛍光X線分析装置(例えば日立ハイテクサイエンス製EA6000V)を用いて各元素を定量することにより求めることができる。
【0017】
また、アルミノケイ酸塩は、結晶化度が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。結晶化度がこの範囲であると、水溶液中でアルカリ金属ケイ酸塩と反応させた際に、アルカリ金属ケイ酸塩に由来するアルカリ成分によって、アルミノケイ酸塩源からアルミニウムイオンが溶出しやすくなると共に、ケイ酸モノマーが生じやすくなり、重縮合が安定して行われるため、良好な気泡構造を有するジオポリマー発泡体を得やすくなる。
【0018】
結晶化度は、X線回折法により求めることができる。例えば、二次元検出器を有するX線解析装置(例えば、株式会社リガク製、Rint2550 等)を使用し、室温にて2θ範囲を10~40°に設定し、アルミノケイ酸塩の粉末に対してX線回折測定を行うことで、結晶化度を測定することができる。なお、結晶化度は、X線回折測定により測定される回折パターンに対してプロファイルフィッティングを行い、得られたX線回折から、全ピーク面積([結晶質成分のピーク面積]+[非晶質成分のハローパターン面積])に対する結晶質成分のピーク面積の比を算出することで、求めることができる。
【0019】
アルミノケイ酸塩の好適な例としては、フライアッシュ、赤泥、シリカフュームおよび下水汚泥焼却灰等の産業廃棄物;天然アルミノシリケート鉱物およびそれらの仮焼物(例えばメタカオリン)、並びに火山灰等を例示することができる。これらの物質は市販のものを使用することができ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて使用してよい。また、アルミノケイ酸塩は、粉末であることが好ましい。これらの物質を適宜粉砕分級して特定の画分を用いることにより、所望の組成のアルミノケイ酸塩に調整することができる。アルミノケイ酸塩は、なかでも、メタカオリン(化学式:Al2O3・2SiO2)を主成分とするアルミノケイ酸塩であることが好ましい。具体的には、アルミノケイ酸塩中のメタカオリンの割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。アルミノケイ酸塩中のメタカオリンの割合が上記範囲であると、多数の気泡による良好な連続気泡構造が形成されやすく、ガス吸着性に優れたジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0020】
また、これらのアルミノケイ酸塩は、平均粒径が0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.3μm以上30μm以下であることがより好ましい。平均粒径がこの範囲であると、製造されたジオポリマー発泡体は、良好な連続気泡構造が形成され、ガス吸着性に優れている。
【0021】
アルミノケイ酸塩及び後述する骨材の平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布をもとに、粒子の形状を球として仮定して個数基準の粒度分布に換算することにより、個数基準の粒度分布を得る。そして、この個数基準の粒度分布に基づく粒子径を算術平均することにより個数基準の算術平均粒子径を求め、この値を本発明における平均粒径とする。なお、上記平均粒径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
【0022】
アルミノケイ酸塩におけるAl2O3の含有量は、アルミノケイ酸塩の総質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。この場合には、ジオポリマー発泡体のガス吸着性をより高めやすい。また、アルミノケイ酸塩におけるAl2O3の含有量は、アルミノケイ酸塩の総質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。Al2O3の含有量がこの範囲であると、ジオポリマー発泡体の強度を高めやすい。
【0023】
(アルカリ金属ケイ酸塩)
アルカリ金属ケイ酸塩は、水に溶解させると高アルカリ性の水溶液を形成する。この水溶液と、アルミノケイ酸塩とを反応させることにより、アルミノケイ酸塩から、Al等の陽イオンを溶出させると共に、ケイ酸モノマーを生じさせることができる。また、アルカリ金属ケイ酸塩は、重縮合によりジオポリマーを形成するケイ酸モノマーの供給源にもなる。
【0024】
アルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)、ケイ酸リチウム等のうちの1種または2種以上を例示することができる。また、アルカリ金属ケイ酸塩は、例えば、これらのアルカリ金属ケイ酸塩を水に溶解させた水溶液(アルカリ金属ケイ酸塩水溶液)として好適に使用することができる。なかでも、アルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸カリウムであることが好ましい。なお、水溶液の水素イオン濃度を調整し、所望とするアルカリ性を示す水溶液とするために、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を添加することができる。
【0025】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液における、アルカリ金属に対するケイ素のモル比は、0.1以上5以下であることが好ましく、0.3以上3以下であることがより好ましい。モル比を上記範囲にすることで、ジオポリマー発泡体の強度をより高めることができる。
【0026】
また、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液におけるアルカリ金属ケイ酸塩の濃度は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩の濃度がこの範囲内であると、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合したスラリーの流動性が高まり、発泡性組成物の発泡成形性を向上させることができると共に、四面体構造による良好なポリマーネットワークが形成された、強度に優れるジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。これらにより、良好な連続気泡構造を有し、ガス吸着性に優れるジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0027】
(骨材)
骨材は、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、タルク、モロカイト、コージエライト、玄武岩、長石、ジルコン、グラファイト、およびホウ砂などのうちの1種または2種以上を例示することができる。骨材は粉体であることが好ましく、骨材の平均粒径が50μm以上300μm以下であることが好ましい。なかでも、骨材は、マイカを含む骨材であることが好ましい。骨材中のマイカの割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。マイカは、一般的に白雲母(muscovite、マスコバイト)と呼ばれるケイ酸塩鉱物であり、KAl2(AlSi3O10)(F,OH)2の化学組成で示される。なお、本発明において、用語「マイカ」は、物理的および化学的に類似しているシート状ケイ酸塩(フィロケイ酸塩)鉱物を包含する。
【0028】
ジオポリマー発泡体における骨材の含有量は、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及び骨材の合計100質量%に対して、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。骨材の含有量がこの範囲であると、良好なポリマーマトリックス構造が形成されると共に、骨材により強度が向上したジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0029】
さらに、骨材がマイカを含む場合、マイカの平均粒径が80μm以上200μmであることが好ましい。骨材に含まれるマイカの平均粒径がこの範囲であると、製造されたジオポリマー発泡体には、良好な連続気泡構造が形成されると共に、発泡性組成物の粘度の過度な上昇が抑制されることにより、気泡の微細化が抑制され、発泡体における体積が特定値以上の気泡の比率を高めることができる。そのため、ガス吸着性に優れたジオポリマー発泡体となる。
【0030】
(その他の材料)
ジオポリマー発泡体は、必要に応じて、例えば、反応性材料や補強繊維などの他の材料を含んでいてもよい。
【0031】
反応性材料としては、例えば、ベントナイト、セピオライト、ミヌゲルおよびアタパルジャイト粘土のような粘土、セメントバインダー、アルミン酸カルシウムセメント、有機ポリマーバインダー(例えばセルロースバインダー)、のうちの1種または2種以上を例示することができる。反応性材料を添加することにより、発泡性組成物の反応(硬化)時間を調整することができる。
【0032】
補強繊維は、ジオポリマー発泡体の強度向上やクラック防止を図る目的で添加することができる。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウムウイスカー、アルミナ繊維、スチールウール、スラグウール等が挙げられる。補強繊維を添加することにより、ジオポリマー発泡体の強度を高めることができる。
【0033】
その他の材料の添加量は、本発明の所期の目的を達成できる範囲であれば、特に限定されるものではないが、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及び骨材の合計100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0034】
(ジオポリマー発泡体)
本発明のジオポリマー発泡体は、発泡体の見掛け密度が100kg/m3以上500kg/m3以下である。ジオポリマー発泡体の見掛け密度が低すぎると、流体をジオポリマー発泡体に透過させる際の流れ抵抗が過度に低くなり、吸着性能を高めることが困難となる。一方、ジオポリマー発泡体の見掛け密度が高すぎると、流体をジオポリマー発泡体に透過させる際の流れ抵抗が過度に高くなり、吸着性能を高めることが困難となる。
【0035】
本発明のジオポリマー発泡体は、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗が0.02Pa・s/cm2以上3Pa・s/cm2以下である。空気を流した時の流れ抵抗がこの範囲であると、ガス吸着性能に優れるジオポリマー発泡体となる。ジオポリマー発泡体は、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗が低すぎると、ガス吸着フィルターとしてジオポリマー発泡体を使用した際に、有害ガス等の流体が発泡体に衝突することなく通過し、有毒ガス等をジオポリマー発泡体に吸着させることが困難となる。上記観点から、上記流れ抵抗は、0.03Pa・s/cm2以上であることがより好ましく、0.1Pa・s/cm2以上であることがさらに好ましい。一方、5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗が高すぎる場合、流体をジオポリマー発泡体に透過させる際の抵抗が大きくなり、有害ガス等を効率的に吸着させることが困難となる。上記観点から、上記流れ抵抗は、2Pa・s/cm2以下であることがより好ましい。流れ抵抗の測定方法については、後述する実施例で説明する。
【0036】
また、ジオポリマー発泡体は、発泡体中の気泡の平均体積が0.5mm3以上10mm3以下であり、体積2mm3以上の気泡の体積比率が20%以上90%以下であることが好ましい。気泡の平均体積および体積2mm3以上の気泡の体積比率がこの範囲であると、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗を、安定して0.02Pa・s/cm2以上3Pa・s/cm2以下とすることができ、高いガス吸着性を有するジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0037】
ジオポリマー発泡体に所望とする連続気泡構造を形成させつつ、ジオポリマー発泡体の強度をより向上させる観点からは、発泡体中の気泡の平均体積は0.6mm3以上5mm3以下であることがより好ましく、0.6mm3以上3mm3以下であることがさらに好ましい。また、ジオポリマー発泡体のガス吸着性能を高める観点からは、体積2mm3以上の気泡の体積比率が25%以上85%以下であることがより好ましく、30%以上80%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
次に、本発明のジオポリマー発泡体の製造方法の一実施形態について説明する。なお、本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、上述した本発明のジオポリマー発泡体と共通する内容(アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、骨材など)についての説明を適宜参照することができる。
【0039】
ジオポリマー発泡体は、以下のように製造されることが好ましい。
【0040】
アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、骨材、水、発泡剤及び気泡連通剤を含む発泡性組成物を発泡させ、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物中に多数の気泡を形成し、かつ気泡間を連通させることにより、外部と連通する多数の気泡を有するジオポリマー発泡体を製造する方法であって、
前記骨材がマイカを含み、前記マイカの平均粒径が80μm以上200μm以下である、ジオポリマー発泡体の製造方法。
【0041】
また、ジオポリマー発泡体の製造方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
【0042】
アルミノケイ酸塩、骨材および気泡連通剤を含む混合物Aと、アルカリケイ酸塩水溶液とを混合してスラリーを得る第1工程;
前記スラリーに発泡剤を添加して、発泡性組成物を得る第2工程;および
発泡性組成物を発泡させ、アルミノケイ酸塩とアルカリケイ酸塩との反応物中に多数の気泡を形成し、かつ気泡間を連通させることにより、外部と連通する多数の気泡を有するジオポリマー発泡体を得る第3工程。
【0043】
以下、各工程について説明する。
【0044】
第1工程では、アルミノケイ酸塩、骨材および気泡連通剤を含む混合物Aと、アルカリケイ酸塩水溶液とを混合してスラリーを得る。
【0045】
第1工程における材料の混合方法は特に限定されず、通常は、室温(25℃)で、公知または慣用のミキサー等(例えば、モルタルミキサー、可傾式ミキサー、トラックミキサー、2軸式ミキサー、オムニミキサー、パンミキサー、プラネタリーミキサーおよびアイリッヒミキサー等)を用いて混合することができる。
【0046】
各材料をミキサーなどに投入する順序は特に限定されない。水の量は、スラリーや発泡性組成物の粘度、得られる成形品の圧縮強度などを考慮して適宜調整することができる。
【0047】
混合物Aと、アルカリケイ酸塩水溶液とを混合してスラリーを形成する場合、混合物A100質量部に対して、概ねアルカリケイ酸塩水溶液を30質量部以上300質量部以下添加することが好ましく、50質量部以上200質量部以下添加することが好ましい。上記範囲とすることで、発泡性組成物における各成分を均質に分散させつつ、得られるジオポリマー発泡体の強度を高めることができる。また、同様な観点から、発泡性組成物中の水の量は、第2工程における発泡性組成物100質量%に対して、20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。水は、独立して添加してもよいし、アルカリ金属ケイ酸塩として水ガラスを使用する場合等、溶媒として添加してもよい。
【0048】
後述の方法により測定される、混合物Aとアルカリケイ酸塩水溶液とを混合してなるスラリーの粘度が1Pa・s以上5Pa・s以下であることが好ましく、2Pa・s以上4Pa・s以下であることがより好ましい。上記平均粒径を有するマイカを含む骨材を使用すると共に、上記スラリー粘度の範囲にし、粘度を比較的低く調整することにより、発泡体における、体積が特定値以上の気泡の比率を安定して高めることができる。
【0049】
第1工程において、スラリーにおける、Alに対するSiのモル比Si/Alは0.1以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。混合物のSi/Alのモル比がこの範囲であると、製造されたジオポリマー発泡体に、交換性陽イオンを適度に存在させることができると共に、良好な連続気泡構造を形成することができ、ガス吸着性能に優れたジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0050】
第1工程において用いられる、気泡連通剤としては、例えば、酵母や藻類などの微生物、タンパク質、界面活性剤などを使用することができる。なかでも、気泡連通剤は、酵母(ドライイーストなど)であることが好ましい。酵母の添加量は、第2工程で調整される発泡性組成物100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。酵母の添加量がこの範囲であると、ジオポリマー発泡体に良好な連続気泡構造を形成することができ、所望とする前記流れ抵抗を有するジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0051】
第2工程では、第1工程で得られたスラリーに発泡剤を添加して、発泡性組成物を得る。
【0052】
発泡剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過ほう酸ナトリウム、非鉄金属粉末などを例示することができる。非鉄金属粉末としては、アルミニウム粉末を例示することができる。これらの中でも、発泡剤として、過酸化水素水及び又は非鉄金属粉末を用いることが好ましく、過酸化水素を用いることがより好ましい。また、発泡剤として過酸化水素を用いる場合、過酸化水素水として用いるのが好ましい。この場合、発泡性組成物を安定して発泡させることができ、良好な連続気泡構造を有するジオポリマー発泡体を得やすくなる観点からは、過酸化水素水中の過酸化水素の濃度は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
発泡剤の添加量は特に限定されないが、例えば、過酸化水素の場合は、発泡性組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、発泡性組成物が十分に発泡し、見掛け密度が100kg/m3以上500kg/m3以下のジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0054】
第3工程では、発泡性組成物を発泡させ、アルミノケイ酸塩とアルカリケイ酸塩の反応物中に多数の気泡を形成し、かつ気泡間を連通させる。これにより、外部と連通する多数の気泡を有するジオポリマー発泡体を得る。
【0055】
第3工程では、各種成形方法を採用することにより、第2工程で得られた発泡性組成物をガス吸着フィルターに適した所望の形状に成形することができる。成形方法としては、成形型内に発泡性組成物を流し込み成形する注型法、成形型内で、発泡性組成物をプレスすることや、発泡性組成物の水分を吸引すること等により、発泡性組成物を脱水して成形する脱水成形法、押出機等を用いて、押出機の下流側に設けられたダイスから発泡性組成物を押し出すと共に、発泡性組成物を発泡させつつ賦形することにより、所望とする形状に成形する押出成形法等を採用することができる。
【0056】
発泡性組成物を発泡させる際の条件は、所望とするジオポリマー発泡体の物性に応じて、適宜設定される。例えば、注型法により、発泡性組成物を発泡させる場合、発泡性組成物を、温度20~100℃、保持持間30分~24hの条件で、成形型内で反応及び発泡させることで、ジオポリマー発泡体を得ることができる。
【0057】
一例として、注型法を採用した場合、第3工程において、発泡性組成物が発泡することにより形成される気泡は、発泡剤添加後から30分~1時間程度経過するまでの間に成長し、大きくなる。また、気泡が成長する間、気泡連通剤が隣接する気泡間の気泡壁を連通させることにより、気泡間を連通する連通孔が形成される。連通孔が形成されることにより、発泡体の内部の気泡を発泡体の外部と連通し、連続気泡構造が形成される。なお、ジオポリマー発泡体は、通常、ジオポリマー構造に由来するメソ孔を有するが、このようなメソ孔と、発泡剤により形成される多数の気泡とは、区別されるものである。
【0058】
本発明におけるジオポリマー発泡体の製造方法においては、攪拌等により気泡を形成する物理的な発泡とは異なり、発泡剤の添加により徐々に気泡を成長させて発泡させるものであるため、気泡の微細化が起こりにくく、また気泡径のムラが少ない、比較的均一な気泡構造を有する発泡体を得ることができる。
【0059】
このようにして得られたジオポリマー発泡体は、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物と、骨材とを含み、発泡により成形された多数の気泡による連続気泡構造を有する。また、発泡体の密度が100~500kg/m3であり、かつ、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗が0.2~3Pa・s/cm2である。このため、ジオポリマー発泡体は、優れたガス吸着性を有しており、ガス吸着フィルター用途として好適に利用することができる。
【0060】
本発明のジオポリマー発泡体およびその製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではない。
【実施例0061】
以下、本発明のジオポリマー発泡体およびその製造方法について、実施例とともに説明するが、本発明のジオポリマー発泡体は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
(ジオポリマー発泡体形成用原料)
以下の原料を用いて、ジオポリマー発泡体を作製した。
アルミノケイ酸塩:メタカオリン(Imerys社製:Argical M1200S、結晶化度0%)
アルカリ金属ケイ酸塩:ケイ酸カリウム(日本化学工業製:2K珪酸カリ)
骨材:マイカ(セイシン企業製:CS-35、C100M、C60M)
気泡連通剤:酵母(Allinson社製:ドライイースト)
気泡核剤:タルク(松村産業製:Hi-filler5000PJS)
発泡剤:過酸化水素水(富士フィルム和光純薬製:過酸化水素濃度30質量%)
水酸化カリウム(富士フィルム和光純薬製:特級)
【0063】
(ジオポリマー発泡体の製造方法)
まず、アルミノケイ酸塩(メタカオリン)と骨材(マイカ)と気泡連通剤(酵母)とを表1に示す割合で混合し、混合物Aを形成した。また、ケイ酸カリウム、水酸化カリウム、必要に応じて蒸留水を混合し、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液(アルカリ金属ケイ酸塩の濃度:36.5重量%、カリウムに対するケイ酸のモル比:0.63)を形成した。
【0064】
次に、混合物Aとアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを表1に示す割合で混合し、撹拌速度60rpmで攪拌することにより、Si/Al=2、粘度約3Pa・sのスラリーを形成した。
【0065】
次に、スラリーに、表1に示す割合で発泡剤(過酸化水素水)を添加し、攪拌ベラを用い、撹拌速度60rpmで1分間攪拌することで、発泡性組成物を形成した。
【0066】
その後、直径90mm、高さ60mmの成形空間を有する型枠(成形型)内に発泡性組成物を注入して成形型を密閉し、温度60℃で成形型を1時間保持することで、発泡性組成物を反応させると共に、発泡させた。この際、成形型内の圧力は大気圧であった。このようにして、ジオポリマー発泡体を形成した。その後、成形型を型開きし、形成されたジオポリマー発泡体を取り出した。さらに取り出したジオポリマー発泡体を60℃で約1日保持することで乾燥させた。
【0067】
(測定方法)
アルミノケイ酸塩、骨材(マイカ)の平均粒径は、JIS Z 8825:2013に基づき、HORIBA製Laser Scattering Particle Size Distribution Partica LA-960を使用して測定した。具体的には、レーザー回折散乱法によって測定対象の体積基準の粒度分布を測定し、個数基準の粒度分布を得、該個数基準の粒度分布に基づく粒子径を算術平均することにより個数基準の算術平均粒子径を求め、この値を平均粒径として採用した。
【0068】
スラリーの粘度は、アタゴ製ATAGO VISCOを使用して測定した。具体的には、15mLのビーカーに、10mLのスラリーを入れ、A3のスピンドルを用い60rpmで撹拌した際のスラリーの粘度を測定した。
【0069】
ジオポリマー発泡体の見掛け密度は、発泡体のスキン部分(成形型に隣接して成形された部分)を削除したサンプルに対して、サンプルの見掛け体積及び重量を測定し、重量を見掛け体積で除して単位換算することにより算出した。
【0070】
ジオポリマー発泡体の気泡の平均体積は次のように測定した。まず、ジオポリマー発泡体の中央部付近から、観察用試料を切り出した。次いで、ニコン製X線CT三次元測定機 MCT225を用いて試料の三次元形状を測定し、試料の気泡構造に関する3Dデータを取得した。次いで、Volume Graphics 社製のVG-StudioMaxを用いて、3Dデータの解析を行い、ジオポリマー発泡体の気泡の平均体積及び、気泡の体積分布を算出した。なお、解析においては、連通孔の影響を除外して、気泡の体積の測定を行った。具体的には、解析条件として、無作為に選択された1cm×1cm×1cmの領域に対して、マージ閾値を5%に設定し、体積が0.1mm3未満の連通孔を測定対象から除外する処理を行った上で、該領域における気泡の体積分布を測定し、気泡の平均体積を算出した。また、得られた気泡の体積分布から、体積2mm3以上の気泡の体積比率を算出した。
【0071】
ジオポリマー発泡体の、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗は、測定装置として、日本音響エンジニアリング株式会社製流れ抵抗測定システム(AirReSys)を使用して、ISO 9053(A法)に基づいて以下のように測定した。
【0072】
まず、柱軸方向における上下面(底面)にスキン部を有していない直径90mm、高さ40mmの円柱状の測定サンプルを作製した。次に、測定装置のサンプルホルダー内(内径90mm)に、円柱状の測定サンプルの側面(円柱状の測定サンプルの底面を除く面)とサンプルホルダーの内面とが対向するように測定サンプルを設置し、0.5mm/sの空気を流した時の抵抗値を測定した。測定された抵抗値を、測定に使用した測定サンプルの厚み(高さ方向の長さ)で割ることにより、0.5mm/sの空気を流した時の流れ抵抗(単位長さ当たりの流れ抵抗)を算出した。
【0073】
ジオポリマー発泡体のガス吸着性能は、測定装置として、マイクロトラック・ベル株式会社製「触媒分析装置BEL-CAT(II)」を用いて以下のように行った。
【0074】
まず、スキン部分を有していない、直径25mm、厚み10mmの円柱状の測定サンプルを作製した。次に、測定装置のカラム内に吸着性能測定用ガス(濃度0.5質量%の二酸化窒素を含有するヘリウムガス)を導入し、カラム内における吸着性能測定用ガスの流速を500ml/minに調整した。次に、測定装置のカラム内(内径25mm)に、円柱状の測定サンプルの側面と、カラムの内面とが対向するように測定サンプルを配置し、測定サンプルの配置後から60分が経過するまでの間、ガス吸着性能の測定を行った。具体的には、電子イオン化EI法(Electron Ionization)」により、測定サンプルを通過してきたガスをイオン化し、ファラデーカップと二次電子倍増管で検出し、質量電荷比m/z=30のイオン電流値の時間毎の変化から二酸化窒素の吸着量を測定し、ジオポリマー発泡体1gあたりの二酸化窒素の吸着量(mmol/g)を算出した。なお、測定は、温度23℃、相対湿度50%、1気圧下で行った。
【0075】
測定サンプルの配置後から、10分経過後の吸着効率、30分経過後の吸着効率及び60分経過後の吸着効率を評価した。
【0076】
なお、測定サンプルの配置後から10分経過後の上記吸着量が0.6mmol/g以上であると、特定のガスが存在する環境下にジオポリマー発泡体が配置された際に、早期に吸着性能が発揮され、ガス吸着フィルター用途に好適となる。
【0077】
また、測定サンプルの配置後から60分経過後の上記吸着量が2.0mmol/g以上であると、特定のガスが存在する環境下にジオポリマー発泡体が配置された際に、特定のガスを効率よく吸着することができ、ガス吸着フィルター用途に好適となる。
【0078】
ジオポリマー発泡体の圧縮強度(最大点応力)は、測定装置として島津製作所製「オートグラフAG―500B」を用いて、以下のように測定した。まず、柱軸方向における上下面(底面)にスキン部を有していない直径90mm、高さ50mmの円柱状の測定サンプルを測定装置に配置し、測定サンプルの高さ方向と一致する方向において、測定サンプルに圧縮荷重を加えた。この際の圧縮速度は1mm/minとした。測定サンプルの変位が4%となるまで圧縮試験を行い、この測定において最大となる応力(最大点応力)を求め、この値を圧縮強度とした。
【0079】
強度に優れたジオポリマー発泡体となることから、圧縮強度は0.2MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましく、0.5MPa以上であることがさらに好ましい。なお、圧縮強度の上限は特に限定されるものでは荷が、概ね5MPa以下であることが好ましく、3MPa以下であることがより好ましく、2MPa以下であることがさらに好ましい。
【0080】
<実施例1>
骨材として平均粒径112μmのマイカを使用し、スラリー100質量部に対して、過酸化水素水を1.5質量部、酵母を0.3質量部添加することで、ジオポリマー発泡体を得た。このジオポリマー発泡体は、密度267kg/m3であり、気泡体積2mm3以上の気泡の割合が46%であり、気泡の平均体積が0.9mm3であり、空気の流れ抵抗が1.1Pa・s/cm2であり、ガス吸着性が良好であった。
【0081】
<実施例2>
スラリー100質量部に対して、酵母の添加量を0.5質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件でジオポリマー発泡体を得た。このジオポリマー発泡体は、密度280kg/m3であり、気泡の平均体積が0.6mm3であり、気泡体積2mm3以上の気泡の割合が27%であり、空気の流れ抵抗が2.1Pa・s/cm2であり、ガス吸着性が良好であった。
【0082】
<実施例3>
スラリー100質量部に対して、過酸化水素の添加量を5.0質量部に変え、発泡剤の添加量を3.0質量部に変えた以外は実施例1と同様の条件でジオポリマー発泡体を得た。このジオポリマー発泡体は、密度が170kg/m3であり、気泡の平均体積が1.3mm3であり、気泡体積2mm3以上の気泡の割合が75%であり、空気の流れ抵抗が0.16Pa・s/cm2であり、ガス吸着性が良好であった。
【0083】
<比較例1>
平均粒径が68μmのマイカを使用した以外は実施例1と同様の条件でジオポリマー発泡体を得た。この例では、製造時、スラリーの粘度が上昇し、ジオポリマー発泡体の気泡が微細化が生じた。得られたジオポリマー発泡体の流れ抵抗は16Pa・s/cm2であり、ガス吸着性が低いものであった。
【0084】
<比較例2>
平均粒径が68μmのマイカを使用し、スラリー100質量部に対して、酵母の添加量を0.3質量部にした以外は、実施例1と同様の条件でジオポリマー発泡体を得た。得られたジオポリマー発泡体の流れ抵抗は6.8Pa・s/cm2であり、ガス吸着性が低いものであった。
【0085】
<比較例3>
平均粒径が232μmのマイカを使用し、スラリー100質量部に対して、酵母の添加量0.3質量部にした以外は、実施例1と同様の条件でジオポリマー発泡体を得た。この例では、製造時、スラリー粘度が上昇し、ジオポリマー発泡体の気泡が微細化が生じた。得られたジオポリマー発泡体の流れ抵抗は4.2Pa・s/cm2であり、ガス吸着性が低いものであった。
【0086】
<比較例4>
酵母の代わりに、気泡核剤としてタルクを使用したこと以外は、実施例1と同様の条件でジオポリマー発泡体を得た。この例では、連通孔が少ない気泡構造を有するジオポリマー発泡体が形成された。得られたジオポリマー発泡体の流れ抵抗は測定限界の460Pa・s/cm2を超え、ガス吸着性が低いものであった。
【0087】
<比較例5>
過酸化水素水の添加量を、スラリー100質量部に対して、7.5質量部とした以外は、実施例1と同様の条件とした。比較例5では、発泡時に気泡が破泡してしまい、十分な強度を有するジオポリマー発泡体を得ることができなかった。また、得られたジオポリマー発泡体の流れ抵抗は0.008Pa・s/cm2であり、ガス吸着性が低いものであった。また、比較例5においては、ガスの吸着量が早期に頭打ちする傾向であった。
【0088】
<比較例6>
過酸化水素水の添加量を、スラリー100質量部に対して0.5質量部とした以外は、実施例1と同様の条件でジオポリマー発泡体を得た。このジオポリマー発泡体は、密度578kg/m3であり、気泡体積2mm3以上の気泡が存在しなかった。得られたジオポリマー発泡体の流れ抵抗は測定限界の460Pa・s/cm2を超え、ガス吸着性が低いものであった。
【0089】