IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 白元アース株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シート状装着具 図1
  • 特開-シート状装着具 図2
  • 特開-シート状装着具 図3
  • 特開-シート状装着具 図4
  • 特開-シート状装着具 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017887
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】シート状装着具
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/20 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A47G25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120718
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 真紀
(72)【発明者】
【氏名】古舘 由布子
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA01
3K099BA04
3K099DA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハンガーに掛けられた衣服において、型崩れが発生することを防止するシート状装着具を提供する。
【解決手段】ハンガー300に取り付けて使用される一枚のシート状装着具100であって、ハンガー300のフック310の左右側それぞれにおいてハンガー300の首肩ライン部320に沿って右前面部22および左前面部24が前方に折り倒されることで背面部10と、右前面部22および左前面部24とを固定する固定手段50を備え、ハンガー300に装着した際の両方の肩部近傍420において、背面部10が首肩ライン部320の伸長方向と略同方向に突出する背面側凸部62を有するとともに、右前面部22および左前面部24も首肩ライン部320の伸長方向と略同方向に突出する前面側凸部64を有し、背面側凸部62と前面側凸部64との間に構成された凹部66の底部は首肩ライン部320の伸長方向と交差方向に伸長する直線部68が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のシート状物からなり、ハンガーに取り付けて使用されるシート状装着具であって、
正面視において、ハンガーに対し、背面側に位置する背面部と、前面右側に位置する右前面部と、前面左側に位置する左前面部とを有し、
ハンガーのフックの左右側それぞれにおいて当該ハンガーの首肩ライン部に沿って前記右前面部および前記左前面部が前方に折り倒されることで対向する前記背面部と、当該右前面部および当該左前面部とを固定する固定手段を備え、
ハンガーに装着した際の両方の肩部近傍において、前記背面部が前記首肩ライン部の伸長方向と略同方向に突出する背面側凸部を有するとともに、前記右前面部および前記左前面部それぞれも前記首肩ライン部の伸長方向と略同方向に突出する前面側凸部を有し、
前記背面側凸部と前記前面側凸部との間に構成された凹部の底部は前記首肩ライン部の伸長方向と交差方向に伸長する直線部が形成されていることを特徴とするシート状装着具。
【請求項2】
前記シート状装着具は、シート状に開いた状態において左右方向中間部を示す中央ラインを対称線として左右対称に構成されており、
前記中央ラインから垂直に伸長し前記直線部の中点に到達する基準線Aと、前記中央ラインから垂直に伸長し前記背面側凸部外縁に到達する直線の中で最大長である基準線Bとが、基準線Aの長さ<基準線Bの長さの関係である請求項1に記載のシート状装着部。
【請求項3】
前記背面部の所定の位置には切込み部が設けられているとともに、
ハンガーに装着された際に前記切込み部に挿入可能な挿入部が、前記右前面部の外縁および前記左前面部の外縁の少なくとも一方に設けられている請求項1または2に記載のシート状装着部。
【請求項4】
前記シート状装着具は、曲げ剛性が0.2N以上4.0N以下であるシート状部材により構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のシート状装着部。
【請求項5】
首肩ライン部が直径3mmの棒状体で構成されたハンガーに装着された際の前記右前面部および前記左前面部と、前記背面部との境界において示される山折り部のR値が5.5mm以上である請求項1から4のいずれか一項に記載のシート状装着部。
【請求項6】
前記直線部の長さが7.5mm以上50.0mm以下である請求項1から5のいずれか一項に記載のシート状装着部。
【請求項7】
前記ハンガーに装着された状態において、前記固定手段は、前記ハンガーに設けられた横桟部より上位に位置する請求項1から8のいずれか一項に記載のシート状装着部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーに装着されて使用されるシート状装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服は、収納される際、型崩れ防止のためにハンガーに掛けられて保管される場合がある。図1に参照されるとおり、一般的なハンガー300は、フック310と、フック310の下端側であって首部近傍410から左右の肩部近傍420に向けて下り傾斜する首肩ライン部320と、首肩ライン部320の下端を結ぶ横桟部330とから構成される。一般的なハンガー300としては、直径3mm前後のワイヤー等から構成されたタイプ、あるいは直径5mm前後の樹脂製の棒状体から構成されたタイプなどの細幅のものが多くみられる。
【0003】
このようなハンガー300に衣服を掛けた場合、実際には、ハンガー300の形状が衣服に合わず型崩れしてしまう場合がある。特に、肩部近傍420において、ハンガー300の首肩ライン部320の下端が衣服に当接し、その当接箇所に衣服の自重が局所的にかかるため、不自然なハンガー跡がついてしまう場合がある。また、首肩ライン部320の傾斜方向に衣服が滑り、当該衣服の首元が広がるように伸びてしまう場合がある。尚、以下の説明では、一般的なハンガーの構成として、フック、首肩ライン部、横桟部、首部近傍、肩部近傍という用語を用いる場合があるが、これらの用語は図1に示されるハンガー300の各構成が参照される。
【0004】
これに対し、衣服の型崩れ防止のためのハンガー装着具が複数提案されている。たとえば下記特許文献1には、タオル地などのクッション性のある素材を用い、2枚の略台形状のパッドを用い、これら台形の上底を対向させるとともに2本の連結部で繋いだ構成のハンガー装着具に関する発明(以下、従来技術1ともいう)が開示されている。従来技術1は、2本の平行する連結部間にハンガーのフックを挿通させるとともに、台形の上底および下底それぞれの幅方向の中点を結んだ中心線にハンガーの首肩ライン部を当接させ、当該中心線で半折りして上記首肩ライン部を鞍状に覆うハンガー装着具である。
従来技術1は、ハンガーに装着された際に中心線を挟んで対称となる位置に、ベルベット式ファスナーなどの固定手段が設けられ、これによってハンガーに装着された状態が固定されるよう構成されている。
【0005】
また下記特許文献2には、EVA樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料を用いてなる一枚の平板形状物(ハンガーパッド本体)であって、中央にフックを貫通させる穴が開いているとともに、水平線に対して上下対称で垂直線に対して左右対称であり、左右両端部(両肩部近傍)が凸形形状であるとともに中央部分(両端に形成された凸形形状間)がくびれた形状となるよう構成されている。同文献には、かかる凸形形状をなすことによって、重い衣服やウエットスーツなどの肩口を無理なく支えることができる旨、説明されている。
従来技術2は、ハンガーパッド本体の所定の位置に固定具通し穴が複数設けられており、ここに帯状の固定具を通してハンガーに巻き付けることによって当該ハンガーに固定装着される。
【0006】
また下記特許文献3には、フックを挟んで左右両方に取り付けられる肩シワ防止具(以下、従来技術3ともいう)が開示されている。従来技術3は、ハンガーの首肩ライン部に当接する肩しわ防止部と、肩しわ防止部から延設されて衣服の胸部に当接する胸部当接部と、肩しわ防止部から延設されて衣服の背中部に当接する背中当接部と、を含むシート状物である。
従来技術3は、胸部当接部の側に左右方向に伸長する2本の切込み溝が設けられているとともに背中当接部の下端には上記切込み溝に挿入される挿入部が設けられており、2本の切込み溝の間にハンガーの横桟部を当接させてその状態で挿入部が切込み溝に挿入することで、頂点部を有しない円錐形状に構成されている。
換言すると従来技術3は、中心から肩に向けて縮径する2つの円筒形状により構成されており、これによってハンガーの首肩ライン部および横桟部が覆われる状態で装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-34765号公報
【特許文献2】実用新案登録第3164482号
【特許文献3】特許第5485458号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述する従来技術1~3は、これらを用いずハンガーに直接に衣服を掛けた場合に比べれば、衣服の型崩れ等は改善されるものの、やはり、局所的に圧力のかかりやすい肩部においてハンガー装着具自体の跡が衣服に残ってしまうという問題があった。
【0009】
またたとえば、従来技術1および従来技術2は、中央部分にハンガーのフックを挿通させるための開口を有しているが、当該中央部分がくびれた形状になっており、衣服をかけて吊り下げた際、くびれ部分が起点となってねじれが生じやすく、衣服の掛け外しの際にハンガーに対して位置がずれやすく使い勝手が悪いという問題があった。
【0010】
一方、従来技術3は、左右において装着具が物理的に離間しているため、従来技術1、2のような中央部のくびれなどは発生しないものの、横桟部を覆ってハンガーに装着されるタイプであるため、横桟部にスラックスなどを掛けて使用することができなくなるという問題があった。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みなされたものである。即ち、本発明は、ハンガーに掛けられた衣服において最も型崩れが目立つ肩部に関し、ハンガーおよび装着具自体の跡による型崩れが発生することを防止し、かつ、使い勝手のよいシート状の装着具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のシート状装着具は、一枚のシート状物からなり、ハンガーに取り付けて使用されるシート状装着具であって、正面視において、ハンガーに対し、背面側に位置する背面部と、前面右側に位置する右前面部と、前面左側に位置する左前面部とを有し、ハンガーのフックの左右側それぞれにおいて当該ハンガーの首肩ライン部に沿って上記右前面部および上記左前面部が前方に折り倒されることで対向する上記背面部と、当該右前面部および当該左前面部とを固定する固定手段を備え、ハンガーに装着した際の両方の肩部近傍において、上記背面部が上記首肩ライン部の伸長方向と略同方向に突出する背面側凸部を有するとともに、上記右前面部および上記左前面部それぞれも上記首肩ライン部の伸長方向と略同方向に突出する前面側凸部を有し、上記背面側凸部と上記前面側凸部との間に構成された凹部の底部は上記首肩ライン部の伸長方向と交差方向に伸長する直線部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を備える本発明のシート状装着具は、肩部近傍において特徴的な形状を有し、これによってハンガーに掛けられた衣服の肩部における型崩れを良好に防止するとともに、ハンガーへの装着が簡易であってかつ衣服の掛け外しの際に装着状態がずれにくく、またスラックス等を横桟部に掛けることを邪魔することがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(1A)は本発明の一実施形態にかかるシート状装着具の一例であってハンガーに装着する前の状態を示す正面図であり、(1B)は本発明の一実施形態にかかるシート状装着具の一例であってハンガーに装着した状態を示す正面図である。
図2】本発明のシート状装着具の右側半分を示す正面図である。
図3図1BのIII-III断面図であり、シート状装着具に衣服をかけた状態を示す。
図4】本発明のシート状装着具の変形例を示す断面図である。
図5】(5A)は、実施例1のシート状装着具の正面図であり、(5B)から(5D)は、それぞれ比較例1から3の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
以下において、発明を説明する際、左右方向、上下方向および前後方向(前面および背面方向)は、とくに言及がない限り、通常の使用可能な姿勢を示すハンガーに装着されたシート状装着具を正面視した場合における左右、上下、前後を指すものとする。
【0016】
以下に、本発明のシート状装着具の実施形態について図1から図4を用いて説明する。図1Aは本発明の一実施形態にかかるシート状装着具100の一例であってハンガー300に装着する前の状態を示す正面図であり、図1Bはシート状装着具100をハンガーに装着した状態を示す正面図である。図2は、本発明のシート状装着具100の右側半分を示す正面図である。図3は、図1BのIII-III断面図であり、シート状装着具100に衣服430をかけた状態を示す。図4は、本発明のシート状装着具100の変形例を示す断面図である。
【0017】
まず、本実施形態のシート状装着具100の概要について説明する。
シート状装着具100は、一枚のシート状部材から構成され、ハンガー300に取り付けられて使用される。
図1A図1Bに示すとおり、シート状装着具100は、正面視において、ハンガー300に対し、背面側に位置する背面部10と、前面右側に位置する右前面部22と、前面左側に位置する左前面部24とを有している。ハンガー300に装着する前の状態(図1A参照)において、右前面部22および左前面部24は、それぞれハンガー300のフック310の左右側に位置している。かかるシート状装着具100は、装着される際、右前面部22および左前面部24それぞれが、当該ハンガー300の首肩ライン部320に沿って前方に折り倒される。折り倒された右前面部22および左前面部24と、背面部10とが対向する任意の箇所に、折られた状態の右前面部22および左前面部24を固定する固定手段50が設けられている。ハンガー300に装着されたシート状装着具100は、この固定手段50により、装着状態が固定される。本実施形態では、固定手段50は、ハンガー300の横桟部330より上位に位置する領域に設けられている。
本発明のハンガー装着部100は、背面部10が首肩ライン部320の伸長方向と略同方向に突出する背面側凸部62を有するとともに、右前面部22および左前面部24それぞれも首肩ライン部320の伸長方向と略同方向に突出する前面側凸部64を有している。背面側凸部62と前面側凸部64との間には凹部66が構成されており、凹部66の底部は首肩ライン部320の伸長方向と交差方向に伸長する直線部68が形成されている。
【0018】
上述するシート状装着具100は、背面側凸部62および前面側凸部64と、この間に設けられた、直線部68を有する凹部66とを有することにより、ハンガー300に掛けられた衣服の肩部に、ハンガー300およびシート状装着具100の肩部の跡がつきにくく、当該衣服が型崩れすることを良好に防止することができる。また、シート状装着具100は、ハンガー300の後方から右前面部22および左前面部24を折り倒し、これらを固定手段50によって背面部10に対し固定するため、取り付けが容易である。また固定手段50を横桟部330より上位に位置する箇所に設けることで、横桟部330にスラックス等をかけることを邪魔しない。加えて、シート状装着具100は、背面部10と右前面部22と左前面部24とが一枚のシート状部材として構成されているため、中間部に連結部などを有さず、ハンガー300に装着した状態が安定する。
以下に、シート状装着具100の詳細についてさらに説明する。
【0019】
(背面部10)
シート状装着具100に設けられる背面部10は、ハンガー300に装着された際に衣服の背面に対向する位置に設けられる部分である。本明細書では、背面部10の左右方向中間部において上下方向に伸長するラインを中央ライン230と呼ぶ。ハンガー300に装着された状態において、中央ライン230の上端は、ハンガー300の首部近傍410に位置することが好ましく、中央ライン230の下端は、フック310の付け根から横桟部330までの距離の中間部またはそれより下方にあることが好ましい。本実施形態では図1において、上記下端がちょうど横桟部330付近に位置する態様を示している。ここでいう首部近傍410とは、ハンガー300のフック310の下端と首肩ライン部320の首側の端部とを含み、概ね衣服の首部近くとなる領域を示している。
【0020】
背面部10の下側外縁12は、中央ライン230の下端から、背面部10の左右両端に設けられた背面側凸部62に向かって左右方向に向けて緩やかに下り傾斜している。本実施形態では、下側外縁12の中央ライン230と背面側凸部62との間に、下方向に緩やかに突出する山部63が設けられており、山部63よりさらに左右端側に背面側凸部62が設けられている。山部63が設けられることによって、衣服の背面にシート状装着具100の下側外縁12のラインの跡がよりつきにくくなっている。しかし本発明は、山部63を有さず、中央ライン230の下端から左右下方に向けて下側外縁12を緩やかに下り傾斜させそのまま背面側凸部62に到達させてもよい。
【0021】
背面側凸部62は、背面部10の左右両側に設けられている。その突出方向は、ハンガー300の首肩ライン部320の伸長方向と略同方向である。またハンガーに装着された状態において、背面側凸部62の頂点は、ハンガー300よりも外方向であって、首肩ライン部320の延長線よりも下に位置している。かかる背面側凸部62を有することで、ハンガー300に掛けられた衣服の肩部から袖を、無理なくハンガー300の外方向に押し広げることができ、後述する前面側凸部64および凹部66の存在と相まって、衣服の肩部の型崩れを良好に防止することができる。
尚、本明細書においてハンガー300よりも外方向とは、正面視において首肩ライン部320と横桟部330とにより区画される領域より外側を指す。
【0022】
本発明において背面側凸部62は、凹部66に対し相対的に突出する。背面側凸部62の突出高さは特に限定されないが、衣服の肩部の型崩れをより十分に防止するという観点からは、たとえば以下の態様が好ましい。
即ち、シート状装着具100は、図1Aに示すようにシート状に開いた状態において、左右方向中間部を示す中央ライン230を対称線として、左右略対称に構成されている。ここで、図2に示すとおり、中央ライン230から垂直に伸長し凹部66に設けられた直線部68の中点69に到達する基準線Aと、中央ライン230から垂直に伸長し背面側凸部62外縁に到達する直線の中で最大長である基準線Bとは、基準線Aの長さ<基準線Bの長さの関係であることが好ましい。かかる関係が実現されることによって、ハンガー300に装着されたシート状装着具100において、直線部68の中点69を通過し、中央ライン230と平行に引かれた基準線Dを基準として、背面側凸部62を直線部68の中点69よりも外側に突出させることができる。これによってハンガー300に掛けられた衣服の肩から袖にかけた部分を十分にハンガーよりも外方向に押し広げることができる。
【0023】
本発明は、上述する基準線Aの長さ≧基準線Bの長さの関係であるシート状装着具100の態様を除外するものではない。たとえば基準線A=基準線Bの場合には、図2において仮想線で示す背面側凸部62aと、またこれに揃えて形成された前面側凸部64aとを備える態様のシート状装着具100が提供される。かかる態様であっても、直線部68を有するシート状装着具は、首肩ライン部320に対向する領域において前後方向に緩やかに湾曲しており曲げられるため、衣服が前後方向に厚みをもって保持され、肩部(中点69)に荷重が集中しにくい構成になっており型崩れしにくい。
【0024】
(右前面部22、左前面部24)
次に右前面部22および左前面部24について説明する。ただし、これらは中央ライン230を対称線として左右対称の関係にあるため、以下では主として右前面部22について説明する。左前面部24は、中央ライン230を対称線として右前面部22と線対称の構成であり、これを踏まえ、右前面部22の説明が適宜参照されるため、ここでの詳細の説明は割愛する。
【0025】
図2に示すとおり、右前面部22は、首肩ライン220で背面部10と連続している。シート状装着具100を開いた状態(図1A参照)において確認されるとおり、右前面部22の外縁である上側外縁14は、直線部68の上端からハンガー300の外方向に凸状に湾曲しており、これによって前面側凸部64が構成されている。前面側凸部64の大きさおよび形状は特に限定されないが、ハンガー300に装着した状態において、上述する背面側凸部62および前面側凸部64は、前後方向に少なくとも一部が重なっていることが好ましい。
より具体的には、たとえば、直線部68に沿って伸長する基準線C(図2参照)から垂直に伸長し背面側凸部62に到達する直線の中で最大長である基準線C1と、基準線Cから垂直に伸長し前面側凸部64に到達する直線の中で最大長である基準線C2とは、基準線C1の長さ:基準線C2の長さ=1:0.9~1:1.1の範囲であることが好ましい。
また換言すると、前面側凸部64の大きさおよび形状は、背面側凸部62と実質的に同じであることが好ましく、ハンガー300に装着した状態において、前後方向に背面側凸部62と前面側凸部64とが実質的に重なっていることがより好ましい。これによってシート状装着具100の両端に設けられた凸部をシート2枚で構成することができ、より確実に、衣服の肩から袖にかけて外方向に押し広げることができる。
【0026】
本実施形態では、ハンガー300に装着されたシート状装着具100において、背面部10および右前面部22は、肩部近傍420においてハンガー300を背面側および前面側から挟み込んで全面を覆うよう構成されている。ここでいう肩部近傍420とは、ハンガー300の首肩ライン部320および横桟部330の交点であって屈曲している箇所を含み、概ね衣服の肩部近くとなる領域を示している。かかる態様によれば肩部近傍420において衣服がハンガー300に直接に接することが回避されるため、衣服に対しハンガー300の跡をつけることが確実に防止され好ましい。
【0027】
(凹部66)
凹部66は、上述する背面側凸部62と前面側凸部64との間において、相対的に凹状に構成されている。凹部66の底部は、直線部68が形成されている。直線部68は首肩ライン部320の伸長方向と交差方向に伸長する直線状の部分である。本実施形態では、直線部68は、中点69において、首肩ライン部320の伸長方向と直角に交差している。
かかる直線部68を備えることによって、シート状装着具100をハンガー300に装着するために右前面部22を前方向に折り倒した際、右前面部22と背面部10との境界が、シャープな山折りではなく、図3に示す山折り部の弧Rのように、緩やかに湾曲する。これによって、シート状装着具100の前後方向の厚みZが有意に生じるため、ハンガー300に掛けられた衣服の胸部を立体的に保持することができる。
【0028】
より効果的に衣服を立体的に保持するという観点からは、たとえば、首肩ライン部320が直径3mmの棒状体で構成されたハンガー300に装着された際の右前面部22および左前面部24と、背面部10との境界において示される山折り部の弧Rの大きさであるR値が、5.5mm以上となるよう構成されていることが好ましく、6.0mm以上であることがより好ましく、7.0mm以上であることがさらに好ましい。R値は、直線部68の長さ、シート状装着具100を構成する部材の曲げ剛性(N)、固定手段50における固定位置などにより所望の範囲に設計することができる。
尚、本発明に関し上述するR値は、首肩ライン部320が直径3mmの棒状体で構成されたハンガー300にシート状装着具100を装着し、テンセル・アセテートで構成された重量130gのニットカーディガンを掛けた状態において図3に示す弧RをR値測定装置で測定された値である。R値測定装置としては、たとえばフジツール株式会社製のラジアスゲージ178(型式178MA、または型式178MB)などを挙げることができる。
【0029】
上述するとおり上記R値を十分に大きく設計することによって、シート状装着具100は、前後方向の厚みZを十分に大きく確保することが可能である。本発明において、前後方向の厚みZの値は特に限定されないが、衣服を立体的に保持して良好に型崩れを防止するという観点からは、上記Zは、28mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、35mm以上であることがさらに好ましい。
ここで上記Zの測定は、以下のように行われる。即ち、肩部ライン部320が直径3mmの棒状体で構成されたハンガー300にシート状装着具100を装着し、テンセル・アセテートで構成された重量130gのニットカーディガンを掛けた状態において、衣服の厚みを含まず、シート状装着具100の前後方向において最も膨らんだ部分においてZを実測することができる。
【0030】
ここで、シート状装着具100が装着されたハンガー300に衣服が掛けられた場合、衣服の肩部は、首肩ライン部320に沿って保持されるとともに、中点69において支持する部材が途切れるため衣服の荷重により下方向に圧力がかかる。従来であれば、この部分に最もハンガーまたはシート状装着具の跡がつくのであるが、本発明では、さらに背面側凸部62および前面側凸部64(以下、これら凸部62、64と略する場合がある)を有するため、衣服は中点69からこれら凸部62、64に向かってハンガー300の外方向に押し広げられる。これによって、衣服において中点69付近に局所的に荷重がかかることが回避され、衣服の自重による肩部の荷重が分散され、シート状装着具100の跡がつくことが良好に回避される。
【0031】
直線部68の長さは、特に限定されないが、7.5mm以上50.0mm以下であることが好ましく、9.0mm以上48.0mm以下であることがより好ましい。直線部68の長さが、7.5mm未満である場合または50.0mmを超える場合、衣服を構成する素材あるいはシート状装着具100を構成する素材によっては、やや肩部にシート状装着具100の跡が残る虞がある。短すぎる直線部68または長すぎる直線部68は、ハンガー300に装着した際に、首肩ライン部320において比較的に鋭角に山折りとなり図3に示す山折り部の弧Rが小さくなる傾向にある。
【0032】
シート状装着具100を構成するシート状部材は、繊維で構成された繊維シートであることが好ましい。繊維シートとしては、特に限定されず、不織布、織布、編物などが挙げられ、一層のシート状部材であってもよいし、同一の素材からなるシート状部材を複数積層させてなる積層シート、あるいは異なる素材からなるシート状部材を複数積層させてなる積層シートであってもよい。また複数のパートをつなぎ合わせて一枚に構成されたシート状部材を用いても良い。
上述のとおり例示される繊維シートの製造方法は特に限定されない。たとえば上記不織布は、一般的にはニードルパンチ法あるいはエアレイド法等によって製造されたものが挙げられるが、これに限定されない。
上記繊維シートを構成する材料は、特に限定されないが、例えばポリエステル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリアミド系繊維等を挙げることができる。またこれらの材料に加えて、消臭性能、吸湿性能、窒素酸化物吸着性能、抗菌性能、防虫性能、ダニ除け性能等の衣服を保存する際に望ましい性能を発揮する一以上の部材を繊維シートに含有させてもよい。これらの部材を繊維シートに含有させる方法としては、たとえば繊維自体にそのような性能が付加された機能性繊維を、繊維シートを構成する繊維の少なくとも一部として用いるか、あるいは、製造された繊維シートに上記性能を発揮する薬剤を付与することで実施可能である。
【0033】
より具体的な好ましい実施態様としては、たとえば、吸湿性素材が配合されニードルパンチ法で製造された吸湿性不織布が挙げられる。上記吸湿性不織布は単層でシート状装着具100を構成することもできるが、たとえば、当該吸湿性不織布の両面それぞれにさらに異なる不織布を積層し3層構造などの積層シートでシート状装着具100を構成することもできる。
【0034】
上述するシート状部材の曲げ剛性は特に限定されないが、ハンガー300に掛けられた衣服をより立体的に保持して良好に型崩れを防止するという観点からは、シート状装着具100を構成するシート状部材の曲げ剛性は、0.2N以上4.0N以下であることが好ましく、0.4N以上3.5N以下であることが好ましく、0.5N以上3.0N以下であることがさらに好ましい。
上記シート状部材の曲げ剛性が0.2N未満であると、前方に折り倒された右前面部22および左前面部24が元に戻ろうとする反発力が小さく、前後方向の厚みZが充分な大きさとならない場合がある。また、上述のように曲げ剛性が小さいと、シート状装着具100の上から比較的重量の大きい衣服を掛けたときに、当該衣服の重みでシート状装着具100がハンガーに密着してしまい、肩部において衣服にかかる荷重を分散させる効果が充分に発揮されない虞がある。
一方、上記シート状部材の曲げ剛性が4.0Nを超えると、右前面部22および左前面部24を前方に折り倒した際に首肩ライン部320に沿って角状に折り曲がってしまい十分なR値が発揮されない虞がある。
【0035】
上述するシート状装着具100の曲げ剛性の測定は、以下のとおり行うことができる。
まずシート状装着具100から固定手段が設けられた領域を避けて25mm×80mmの寸法の試験片を裁断する。40mmの間隔をあけて設置された高さ26mmのL字型金属製治具2台の間に上記試験片を浮かせた状態で静置し、幅60mm、厚さ2mmのアクリル製平板を取り付けたフォーステスターを一定の速度(100mm/min)で降下させ、平板により上記試験片を湾曲させる。このとき平板にかかる荷重を測定し、その最大値を求める。同様の試験を3回実施し、各試験における上記最大値を算術平均し、これをシート状装着具の曲げ剛性とする。上記測定はたとえば卓上型引張圧縮試験機を用いて行うことができる。卓上型引張圧縮試験機としては、たとえば株式会社エー・アンド・デイ製、卓上型引張圧縮試験機(商品名:フォーステスター、型番:MCT-2150)を挙げることができる。
【0036】
上記シート状装着具100の曲げ剛性は、これを構成するシート状部材の目付の調整、当該シート状部材を構成する繊維の繊維径の調整、当該シート状部材を構成する繊維の材質の選定、シート状部材への熱加工あるいはニードルパンチ加工の実施などの手段のいずれか一以上を実施することにより所望の範囲に調整することができる。
【0037】
(固定手段50)
シート状装着具100には、ハンガー300に装着された際に対向する背面部と、右前面部22および左前面部24とを固定する固定手段50が設けられる。
本実施形態では、具体的には、図1Aに示されるように、中央ライン230を対称線とした線対称の位置に、所定長さの切込み部30が設けられるとともに、右前面部22および左前面部24の上側外縁14に挿入部40が設けられており、切込み部30に挿入部40を挿入することで固定手段50が構成される。切込み部30の形成位置は特に限定されないが、上側外縁14に設けられた挿入部40が挿入しやすく、かつ固定された状態が安定するという観点からは、図1Aに示すように、首肩ライン部320に略平行となるよう切込み部30が設けられると良い。図1Bは、切込み部30に挿入部40が挿入された状態を図示している。
尚、本発明は、中央ライン230の左右側いずれか一方にのみ固定手段50が設けられた態様を包含するが、本実施形態のように中央ライン230を挟んで左右側両方に固定手段50を備えることで固定した状態が安定するため好ましい。
【0038】
また、本実施形態では図3に示すとおり、切込み部30が首肩ライン部320と横桟部330との間において1か所形成されている。図示省略する本発明の変形例として、切込み部30は、上下方向に複数設けられてもよい。これによって、背面部10に対し右前面部22および左前面部24を固定する位置を上下方向に調整することができ、掛ける衣服に合わせ弧Rの大きさを調整することができる。
【0039】
本発明において固定手段50は、上述に限定されず、たとえば、スナップボタン(ホック)、面ファスナー、紐などの適宜の固定具を用いて固定手段50が構成されてもよい。たとえば本実施形態の変形例を図4に示す。図4は、図1BのIII-III断面であって、固定手段をホックに変更した変形例を示す断面図である。
【0040】
図4に示すように、背面部10の所定の位置にホック凹部32を設けるとともに、右前面部22および左前面部24の所定の位置にホック凸部42を設け、ホック凹部32にホック凸部42を嵌め込むことで固定手段50を構成してもよい。
このとき、一つのホック凸部42に対し、ホック凹部32を一か所のみに設けてもよいが、上下方向に複数設けても良い。たとえば、図4に示すようにホック凹部32を中間位置として、その上下にホック凹部32aおよびホック凹部32bを設けることができる。これによって、図4に示す固定状態から、ホック凸部42をホック凹部32aに止めるよう固定状態を変更することで前後方向の厚みZをより大きく調整することができ、またホック凸部42をホック凹部32bに止めるよう固定状態を変更することで前後方向の厚みZをより小さく調整することができる。
【実施例0041】
以下に本発明の実施例について説明する。尚、実施例1、および比較例1~3は、図5A図5Dに示す形状となるよう製造した。また各評価に用いるハンガーは、直径3mmのワイヤーを用いて構成されたワイヤー製ハンガーを準備した。当該ハンガーは、各シート状装着具が装着された際、肩部が正面視において視認されない程度の一般的な大きさのものを用いた。また、評価の際に用いる衣服は、テンセルおよびアセテートを用いて製造された総重量130gの長袖のサマーニットカーディガン(レディースMサイズ)を使用した。
【0042】
(実施例1)
図5Aに示す形状のシート状装着具100を作成した。具体的には、吸湿性繊維であるベルオアシス(登録商標、帝人フロンティア株式会社製)とポリエステル系繊維を用いてニードルパンチ法により、目付300g/mの不織布シートを製造した。上記不織布を図5Aに示す形状に裁断した。より具体的には、実施例1は、背面側凸部62と前面側凸部64を有し、その間に直線部68を有する凹部66が設けられた形状を有し、直線部68の長さは25mm、基準線Aの長さ205mm、基準線Bの長さ210mm、基準線C1の長さ20mm、基準線C2の長さ21mm、中央ライン230における上下方向の長さ119mmと、背面側凸部底部E1および前面側凸部底部E2の長さはそれぞれ52mm、54mmとした。尚、基準線A、B、C1、C2および凸部底部E1、E2については図2が参照される。
【0043】
(比較例1~3)
肩部の形状を変更したこと以外は、実施例1と同様にシート状装着具520、530、540(図5B図5D参照)を製造した。
具体的には、背面側凸部62と前面側凸部64との間に、底部がV字状である凹部522を形成したこと以外は実施例1と同様にシート状装着具を製造し、これを比較例1(シート状装着具520)とした。
また背面側凸部62と前面側凸部64との間に、これらよりやや外方向に突出する中間凸部532を形成したこと以外は実施例1と同様にシート状装着具を製造し、これを比較例2(シート状装着具530)とした。
また背面側凸部62と前面側凸部64とを有さず、右前面部22および左前面部24と、背面部10とに亘って、外方向に湾曲する湾曲部542を形成したこと以外は実施例1と同様にシート状装着物を製造し、これを比較例3(シート状装着具540)とした。
【0044】
(実施例2~11)
目付および不織布を構成する繊維を表2に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様にシート状装着具を製造し、これらを実施例2~11とした。
【0045】
(実施例12~17)
直線部の長さを表3に示す内容に変更したこと以外は、実施例2と同様にシート状装着具を製造し、これらを実施例12~17とした。
【0046】
<肩部観察>
上述のとおり製造された実施例1および比較例1~3のシート状装着具をハンガーに装着し、その上から衣服を掛けて、衣服の肩部の外観を目視で観察し以下のとおり評価した。また、比較例4として、ハンガーに直接に衣服を掛けて、同様に観察し評価した。評価結果は表1に示す。
(ハンガー跡評価)
〇・・・衣服の肩部においてハンガーの跡(形状)が全く確認されなかった。
×・・・衣服の肩部においてハンガーの跡(形状)がはっきりと確認された。
(シート状装着具跡評価)
〇・・・衣服の肩部においてシート状装着具の跡(形状)が確認されず、衣服の肩部に目立った型崩れがなかった。
△・・・衣服の肩部においてシート状装着具の跡(形状)が確認され、衣服の肩部に型崩れがあることが確認された。
【0047】
上記肩部観察にける詳細は以下のとおりであった。
実施例1が装着されたハンガーでは、肩部において、衣服がシート状装着具の外面に沿って前後方向に良好に広げられるとともに、緩やかに湾曲した直線部68から背面側凸部62および前面側凸部64に向かってハンガーの外方向に押し広げられ、型崩れすることなく肩部の形状が保持されていた。
比較例1はハンガーに装着された際、V字状の凹部522が角度を有する山折りに折り曲がった。そのため、比較例1が装着されたハンガーでは、山折りになったV字状の凹部522の頂点(中点)に衣服の肩が接触し、衣服の外観から当該頂点が確認された。
比較例2が装着されたハンガーでは、肩部において、中間凸部532が、山折りに折り曲げられるとともに背面側凸部62および前面側凸部64よりも左右方向外側に突出した。そのため、比較例2が装着されたハンガーでは、山折りになった中間凸部532の頂点に衣服の肩が接触し、衣服の外観から当該頂点が確認された。
比較例3が装着されたハンガーでは、肩部において、山折りになった湾曲部542の左右両側の端部に衣服の肩が接触し、衣服の外観から当該端部が確認された。
【0048】
(曲げ剛性とR値およびZの関係)
次に、形状は実施例1と同一とし、素材およびその曲げ剛性を変化させた実施例2~11をハンガーに装着し衣服をかけた際の弧Rの大きさ(R値)および前後方向の厚みZを測定した。RおよびZは、それぞれ図3において参照され、測定方法は、上述するR値の測定方法およびZの測定方法に倣った。尚、R値測定装置としては、フジツール株式会社製のラジアスゲージ178(型式178MAおよび型式178MB)を用いた。測定結果は表2に示す。
表2に示されるとおり、シート状装着具を構成するシート状部材の曲げ剛性を変更することによって、R値およびZの値を調整可能であることがわかった。特に、曲げ剛性が0.2N以上4.0N以下の範囲のシート状部材を用いて本発明のシート状装着具を構成することによって、より好ましいR値を実現しやすく、また前後の厚みを示すZが充分に大きく確保しやすいことがわかった。
【0049】
(直線部の長さの検討)
直線部68の長さを変更したこと以外は実施例2と同様に製造された実施例12~17を用い、R値の変化を観察した。R値の測定は、上述と同様の方法で行った。結果は表3に示す。
表3に示されるとおり、シート状装着具の直線部68の長さを変更することによって、R値を調整可能であることがわかった。特に直線部68の長さが7.5mm以上50.0mm以下の範囲とすることにより、より好ましいR値を実現しやすいことがわかった。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)一枚のシート状物からなり、ハンガーに取り付けて使用されるシート状装着具であって、
正面視において、ハンガーに対し、背面側に位置する背面部と、前面右側に位置する右前面部と、前面左側に位置する左前面部とを有し、
ハンガーのフックの左右側それぞれにおいて当該ハンガーの首肩ライン部に沿って前記右前面部および前記左前面部が前方に折り倒されることで対向する前記背面部と、当該右前面部および当該左前面部とを固定する固定手段を備え、
ハンガーに装着した際の両方の肩部近傍において、前記背面部が前記首肩ライン部の伸長方向と略同方向に突出する背面側凸部を有するとともに、前記右前面部および前記左前面部それぞれも前記首肩ライン部の伸長方向と略同方向に突出する前面側凸部を有し、
前記背面側凸部と前記前面側凸部との間に構成された凹部の底部は前記首肩ライン部の伸長方向と交差方向に伸長する直線部が形成されていることを特徴とするシート状装着具。
(2)前記シート状装着具は、シート状に開いた状態において左右方向中間部を示す中央ラインを対称線として左右対称に構成されており、
前記中央ラインから垂直に伸長し前記直線部の中点に到達する基準線Aと、前記中央ラインから垂直に伸長し前記背面側凸部外縁に到達する直線の中で最大長である基準線Bとが、基準線Aの長さ<基準線Bの長さの関係である上記(1)に記載のシート状装着部。
(3)前記背面部の所定の位置には切込み部が設けられているとともに、
ハンガーに装着された際に前記切込み部に挿入可能な挿入部が、前記右前面部の外縁および前記左前面部の外縁の少なくとも一方に設けられている上記(1)または(2)に記載のシート状装着部。
(4)前記シート状装着具は、曲げ剛性が0.2N以上4.0N以下であるシート状部材により構成されている上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のシート状装着部。
(5)首肩ライン部が直径3mmの棒状体で構成されたハンガーに装着された際の前記右前面部および前記左前面部と、前記背面部との境界において示される山折り部のR値が5.5mm以上である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のシート状装着部。
(6)前記直線部の長さが7.5mm以上50.0mm以下である上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のシート状装着部。
(7)前記ハンガーに装着された状態において、前記固定手段は、前記ハンガーに設けられた横桟部より上位に位置する上記(1)から(8)のいずれか一項に記載のシート状装着部。
【符号の説明】
【0054】
10・・・背面部
12・・・下側外縁
14・・・上側外縁
22・・・右前面部
24・・・左前面部
30・・・切込み部
32・・・ホック凹部
32a・・・上段ホック凹部
32b・・・下段ホック凹部
40・・・挿入部
42・・・ホック凸部
50・・・固定手段
62、62a・・・背面側凸部
64、64a・・・前面側凸部
66、522・・・凹部
68・・・直線部
69・・・中点
100、520、530、540・・・シート状装着具
220・・・首肩ライン
230・・・中央ライン
300・・・ハンガー
310・・・フック
320・・・首肩ライン部
330・・・横桟部
410・・・首部近傍
420・・・肩部近傍
430・・・衣服
532・・・中間凸部
542・・・湾曲部
A、B、C、C1、C2、D・・・基準線
E1・・・背面側凸部底部
E2・・・前面側凸部底部
R・・・弧
Z・・・厚み
図1
図2
図3
図4
図5