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  • 特開-無鉛圧電磁器組成物 図1
  • 特開-無鉛圧電磁器組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178888
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】無鉛圧電磁器組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/495 20060101AFI20221125BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C04B35/495
H01L41/187
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085995
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 吉進
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正人
(57)【要約】
【課題】圧電特性を向上させ得る無鉛圧電磁器組成物を提供する。
【解決手段】無鉛圧電磁器組成物は、ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、マンガン(Mn)化合物を含む副相と、を含んでいる。マンガン(Mn)化合物の最大粒子径は、0μmより大きく33μm未満である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、
マンガン(Mn)化合物を含む副相と、
を含み、
前記マンガン(Mn)化合物の最大粒子径は、0μmより大きく33μm未満である、無鉛圧電磁器組成物。
【請求項2】
前記ペロブスカイト型酸化物は、アルカリ系ペロブスカイト型酸化物である、請求項1に記載の無鉛圧電磁器組成物。
【請求項3】
前記アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、ニオブ(Nb)を含む、請求項2に記載の無鉛圧電磁器組成物。
【請求項4】
前記アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、組成式(KNaLiM1(M2)O(元素M1はカルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)のうちの1種以上、元素M2はニオブ(Nb),タンタル(Ta),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf)のうちの少なくともニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)を含む1種以上、a+b+c+d=1、a+b+c≠0、0.80≦e≦1.10を満たし、f=1、gはペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値)で表される酸化物である、請求項2又は請求項3に記載の無鉛圧電磁器組成物。
【請求項5】
マンガン(Mn)の含有割合は、0mоl%より大きく5mоl%以下である、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の無鉛圧電磁器組成物。
【請求項6】
前記マンガン(Mn)化合物は、組成式Mnで表される化合物を含む、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の無鉛圧電磁器組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無鉛圧電磁器組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から量産されている圧電磁器(圧電セラミックス)の多くは、PZT系(チタン酸ジルコン酸鉛系)の材料で構成されており、鉛を含有している。しかし、近年では、鉛の環境への悪影響を排除するために、無鉛圧電磁器の開発が望まれている。そのような無鉛圧電磁器の材料(「無鉛圧電磁器組成物」と呼ぶ)が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の磁器組成物では、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を含む母相に対してマンガン酸化物が異相としてセラミックス焼結体の内部に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-239473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の磁器組成物では、セラミックス焼結体にマンガン酸化物を添加したにも関わらず誘電損失が比較的大きいため、最大位相角が小さく、分極が不十分である。そのため、このような磁器組成物では、十分な圧電特性が得られない。そこで、磁器組成物において、圧電特性のさらなる向上が求められている。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、圧電特性を向上させることを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、
マンガン(Mn)化合物を含む副相と、
を含み、
前記マンガン(Mn)化合物の最大粒子径は、0μmより大きく33μm未満である、無鉛圧電磁器組成物。
【0006】
〔2〕前記ペロブスカイト型酸化物は、アルカリ系ペロブスカイト型酸化物である、〔1〕に記載の無鉛圧電磁器組成物。
【0007】
〔3〕前記アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、ニオブ(Nb)を含む、〔2〕に記載の無鉛圧電磁器組成物。
【0008】
〔4〕前記アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、組成式(KNaLiM1(M2)O(元素M1はカルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)のうちの1種以上、元素M2はニオブ(Nb),タンタル(Ta),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf)のうちの少なくともニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)を含む1種以上、a+b+c+d=1、a+b+c≠0、0.80≦e≦1.10を満たし、f=1、gはペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値)で表される酸化物である、〔2〕又は〔3〕に記載の無鉛圧電磁器組成物。
【0009】
〔5〕マンガン(Mn)の含有割合は、0mоl%より大きく5mоl%以下である、〔1〕から〔4〕までのいずれかに記載の無鉛圧電磁器組成物。
【0010】
〔6〕前記マンガン(Mn)化合物は、組成式Mnで表される化合物を含む、〔1〕から〔5〕までのいずれかに記載の無鉛圧電磁器組成物。
【発明の効果】
【0011】
本開示の無鉛圧電磁器組成物は、圧電特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態における圧電素子の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本開示の一実施形態としての圧電素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0014】
1.無鉛圧電磁器組成物
本実施形態の無鉛圧電磁器組成物は、Pb(鉛)を含まず、ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、マンガン(Mn)化合物を含む副相と、を含んでいる。
【0015】
(1)主相
ペロブスカイト型酸化物は、アルカリ金属を含むアルカリ系ペロブスカイト型酸化物であることが好ましい。ペロブスカイト型酸化物は、Nb(ニオブ)を含むアルカリ系ペロブスカイト型酸化物であることがより一層好ましい。
【0016】
ペロブスカイト型酸化物としては、以下の組成式((1)式)で表されるものが好ましく例示される。元素M1は、カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)のうちの1種以上である。元素M2は、ニオブ(Nb),タンタル(Ta),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf)のうちの少なくともニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)を含む1種以上である。例えば、元素M2は、ニオブ(Nb)と、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf)のうちの1種以上である。例えば、元素M2は、タンタル(Ta)と、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf)のうちの1種以上である。例えば、元素M2は、ニオブ(Nb)と、タンタル(Ta)と、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf)のうちの1種以上である。なお、gの値は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値である。すなわち、O原子は、ペロブスカイト型結晶構造を維持できる量とされている。

(KNaLiM1(M2)O …(1)
【0017】
上記組成式(1)において、それぞれの元素割合は、無鉛圧電磁器組成物の電気的特性又は圧電特性(特に圧電定数d33)の観点から、以下の範囲が好ましい。
0.090≦a≦0.660、0.270≦b≦0.840、0.000≦c≦0.050、0.010≦d≦0.110、0.800≦e≦1.100、0.960≦f≦1.060、gの値は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
【0018】
上記組成式(1)において、それぞれの元素割合は、以下の範囲がより好ましい。
0.210≦a≦0.590、0.340≦b≦0.720、0.010≦c≦0.040、0.020≦d≦0.090、0.850≦e≦1.050、0.970≦f≦1.040、gの値は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
【0019】
上記組成式(1)において、それぞれの元素割合は、以下の範囲が更に好ましい。
0.340≦a≦0.530、0.400≦b≦0.590、0.015≦c≦0.030、0.030≦d≦0.070、0.900≦e≦1.000、0.980≦f≦1.020、gの値は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
【0020】
上記組成式(1)において、M1がバリウム(Ba)とカルシウム(Ca)である場合、組成式(1)は下記の組成式(2)のように表される。d=X1+Y1である。

(KNaLiBaX1CaY1(M2)O …(2)

バリウム(Ba)の元素割合X1は、0.02≦X1≦0.05の範囲であることが好ましい。カルシウム(Ca)の元素割合Y1は、0.01≦X1≦0.05の範囲であることが好ましい。
【0021】
上記組成式(1)において、M1がカルシウム(Ca)である場合、組成式(1)は下記の組成式(3)のように表される。d=Y1である。

(KNaLiCaY1(M2)O …(3)

カルシウム(Ca)の元素割合Y1は、0.01≦X1≦0.03の範囲であることが好ましい。
【0022】
上記組成式(1)において、M1がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)である場合、組成式(1)は下記の組成式(4)のように表される。d=X1+Z1である。

(KNaLiBaX1SrZ1(M2)O …(4)

バリウム(Ba)の元素割合X1は、0.04≦X1≦0.06の範囲であることが好ましい。ストロンチウム(Sr)の元素割合Z1は、0.04≦Z1≦0.06の範囲であることが好ましい。
【0023】
上記組成式(1)において、M2がニオブ(Nb)とジルコニウム(Zr)とチタン(Ti)である場合、組成式(1)は下記の組成式(5)のように表される。f=X2+Y2+Z2である。

(KNaLiM1(NbX2ZrY2TiZ2)O …(5)

ニオブ(Nb)の元素割合X2は、0.80≦X2≦1.0の範囲であることが好ましい。ジルコニウム(Zr)の元素割合Y2は、0.02≦X1≦0.06の範囲であることが好ましい。チタン(Ti)の元素割合Z2は、0.02≦X1≦0.06の範囲であることが好ましい。
【0024】
上記組成式(1)において、M2がニオブ(Nb)とチタン(Ti)である場合、組成式(1)は下記の組成式(6)のように表される。f=X2+Z2である。

(KNaLiM1(NbX2TiZ2)O …(6)

ニオブ(Nb)の元素割合X2は、0.90≦X2≦1.0の範囲であることが好ましい。チタン(Ti)の元素割合Z2は、0.01≦X1≦0.03の範囲であることが好ましい。
【0025】
上記組成式(1)において、M2がニオブ(Nb)とジルコニウム(Zr)である場合、組成式(1)は下記の組成式(7)のように表される。f=X2+Y2である。

(KNaLiM1(NbX2ZrY2)O …(7)

ニオブ(Nb)の元素割合X2は、0.90≦X2≦1.0の範囲であることが好ましい。ジルコニウム(Zr)の元素割合Y2は、0.02≦X1≦0.04の範囲であることが好ましい。
【0026】
(2)副相
本実施形態の無鉛圧電磁器組成物は、マンガン(Mn)化合物を含有する副相を含む。より好ましくは、副相は、金属酸化物を含み得る。マンガン(Mn)化合物は、組成式Mnで表される化合物を含むことが好ましい。マンガン(Mn)化合物は、組成式MnO、MnO、Mn、MnCOで表される化合物などを含んでいてもよく、Ti等の他の金属元素を含んでいてもよい。
【0027】
マンガン(Mn)化合物の最大粒子径は、0μmより大きく33μm未満であることが好ましい。マンガン(Mn)化合物の最大粒子径は、0.2μmより大きく11μm以下であることがより好ましい。マンガン(Mn)化合物の最大粒子径は、0.5μmより大きく5μm以下であることが更に好ましい。
【0028】
無鉛圧電磁器組成物におけるマンガン(Mn)の含有割合は、0mоl%より大きく5mоl%以下であることが好ましい。無鉛圧電磁器組成物におけるマンガン(Mn)の含有割合は、0.3mоl%より大きく4mоl%以下であることがより好ましい。無鉛圧電磁器組成物におけるマンガン(Mn)の含有割合は、0.6mоl%より大きく2.5mоl%以下であることが更に好ましい。
【0029】
図1は、本開示の一実施形態における圧電素子の製造方法を示すフローチャートの一例である。以下で作製される第1成分と第2成分とが混合されて、主相と副相が形成される。第1成分は、主相に含まれる主成分である。第2成分は、主相とは異なる成分である。
【0030】
工程T110では、第1成分の原料混合を行う。第1成分は、主相に含まれる主成分である。工程T110では、第1成分の原料として、KCO粉末,NaCO粉末,LiCO粉末,CaCO粉末,SrCO粉末,BaCO粉末,Nb粉末,Ta粉末,TiO粉末,ZrO粉末,MgO粉末,Fe粉末,CoO粉末,ZnO粉末等の原料のうちから必要なものを選択し、以下に記す第1成分の組成式(8)における係数(例えば、下記の第1成分の組成式(8)におけるa~f,i)の値に応じて秤量する。なお、元素割合b,c,d,eの値は、上記組成式(1)における元素割合b,c,d,eの値が採用される。

(KNaLiM1(M2)O …(8)

そして、原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて湿式混合してスラリーを得る。ボールミルを用いた湿式混合は、好ましくは15時間以上行う。工程T120では、スラリーを乾燥して得られた混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃~1100℃で1時間~10時間仮焼して第1成分の仮焼粉を生成する。
【0031】
工程T130では、第2成分の原料混合を行う。第2成分の組成は、K0.85Ti0.85Nb1.15であることが好ましい。なお、第2成分の組成は、KTiNbO、K0.90Ti0.90Nb1.10などであってもよい。第2成分の原料として、KCO粉末,Nb粉末,TiO粉末を選択し、上記第2成分の組成式の値に応じて秤量する。そして、これらの原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて湿式混合してスラリーを得る。ボールミルを用いた湿式混合は、好ましくは15時間以上行う。工程T140では、スラリーを乾燥して得られた混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃~1100℃で1時間~10時間仮焼して第2成分の仮焼粉を生成する。
【0032】
工程T150では、第1成分、第2成分、およびMn種(例えば、MnCO3、MnO、Mn、MnOなど)をそれぞれ秤量し、分散剤、バインダおよびエタノールを加えてボールミルにて粉砕・混合してスラリーを得る。なお、このスラリーをもう一度仮焼して粉砕・混合してもよい。その後、スラリーを乾燥し、造粒し、例えば圧力20MPaで一軸プレスを行い、所望の形状に成形する。本開示の実施形態として、組成物に適した典型的な圧電磁器の形状は、例えば円板状、円柱状である 。その後、例えば圧力150MPaでCIP処理(冷間静水圧成形処理)を行って成形体を得る。工程T160では、得られた成形体(CIPプレス体)を、例えば大気雰囲気下900℃~1300℃で1時間~10時間保持して焼成することによって圧電磁器を得る。工程T160の焼成は、O雰囲気で行ってもよい。次に圧電磁器を、工程T170では、圧電素子に要求される寸法精度に従って加工する。工程T180では、こうして得られた圧電磁器に電極を取り付け、工程T190で分極処理を行う。
【0033】
上述した製造方法は一例であり、圧電素子を製造するための他の種々の工程や処理条件を利用可能である。例えば、図1のように第1成分と第2成分を予め別個に生成した後に両者の粉末を混合し焼成している。その代わりに、第1成分と第2成分を含む原料を一括して混合し、焼成することによって、圧電磁器組成物を製造してもよい。但し、図1の製造方法によれば、第1成分と第2成分の組成をより厳密に管理し易いので、圧電磁器組成物の歩留まりを高めることが可能である。
【0034】
2.圧電素子
図2は、本開示の一実施形態としての圧電素子を示す斜視図である。この圧電素子200は、円板状の圧電磁器100の上面と下面に電極301,302が取り付けられた構成を有している。なお、圧電素子としては、これ以外の種々の形状や構成の圧電素子を形成可能である。
【0035】
3.無鉛圧電磁器組成物及び圧電素子の利用
本開示の実施形態による無鉛圧電磁器組成物及び圧電素子は、振動検知用途、圧力検知用途、発振用途、及び、圧電デバイス用途等に広く用いることが可能である。例えば、圧電フィルタ、圧電振動子、圧電トランス、圧電超音波トランスデューサ、圧電ジャイロセンサ、ノックセンサなどの各種の装置に利用することができる。
【実施例0036】
実施例により本発明を更に具体的に説明する。
表1に、各サンプル組成物の組成比を示す。表1中、a~d,fは、下記組成式(1)に含まれる係数に相当する。なお、d、fについては、元素種と、複数の元素種が含まれている場合には各元素種を示す。

(KNaLiM1(M2)O …(1)
【0037】
表1において、サンプル組成物を「No.」を用いて示す。サンプルNo.2~8,10,11は、実施例であり、サンプルNo.1は、比較例である。以降、サンプル組成物をサンプルNoで説明する。
【0038】
表1のdの欄における「各元素種の組成比」は、左の欄(「元素種」の欄)の組成比を表している。「元素種」の欄に複数の元素種が列記してある場合、「各元素種の組成比」の欄の値の並び順は、「元素種」の欄の元素種の並び順に対応している。例えば、サンプルNo.1では、M1の「元素種」がバリウム(Ba)とカルシウム(Ca)であり、バリウム(Ba)の組成比が0.03であり、カルシウム(Ca)の組成比が0.02である。
【0039】
表1のfの欄における「各元素種の組成比」は、左の欄(「元素種」の欄)の組成比を表している。「元素種」の欄に複数の元素種が列記してある場合、「各元素種の組成比」の欄の値の並び順は、「元素種」の欄の元素種の並び順に対応している。例えば、サンプルNo.1では、M2の「元素種」がニオブ(Nb)とジルコニウム(Zr)とチタン(Ti)であり、ニオブ(Nb)の組成比が0.03であり、ジルコニウム(Zr)の組成比が0.02であり、チタン(Ti)の組成比が0.02である。
【0040】
【表1】

【0041】
1.サンプル組成物の調製
第1成分の原料、第2成分の原料の種類及び分量を適宜選択して各種のサンプル組成物を調製した。サンプル組成物に含まれるMn(マンガン)の含有割合は、第1成分、第2成分、およびMn種の混合時(上記工程T150)に、Mn種の量を調整することで変化させている。サンプル組成物に含まれるMn(マンガン)化合物の最大粒子径は、第1成分の仮焼時(工程T110)の仮焼温度や仮焼時間、第2成分の仮焼時(工程T130)の仮焼温度や仮焼時間、第1成分、第2成分、およびMn種を混合した後の焼結時(工程T160)における仮焼温度や仮焼時間を調整することで変化させている。
【0042】
2.Mn(マンガン)化合物の最大粒子径の算出
サンプル組成物に含まれるMn(マンガン)化合物の最大粒子径は、電子プローブ・マイクロアナライザー(EPMA)を用いて行った。サンプル組成物に対して、サンプル1,5~12は倍率1000倍、サンプル2,3,4は粒径が小さいため10000倍の像を撮影し、Mn(マンガン)の元素マッピングを行った。得られた元素マッピング像から、マッピングした最大粒子の粒子径を求め最大粒子径とした。粒子の粒子径は、その粒子の短軸径と長軸径(各軸における最大値)を求め、それらの平均値を粒子径とした。
【0043】
3.圧電特性の評価
サンプル組成物の誘電損失tanδを、インピーダンスアナライザを用いて測定した。サンプル組成物の最大位相角θmaxを、インピーダンスアナライザを用いて、共振-反共振法により求めた。サンプル組成物の圧電定数d33を、d33メータ(ZJ-4B)を用いて測定した。
【0044】
4.評価結果
評価結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
(1)サンプルNo.1~12の各要件の充足状況
実施例であるサンプルNo.2~8,10,11は、下記要件(a)(b)(c)を満たしている。比較例であるサンプルNo.1は、マンガン(Mn)化合物を含む副相を含まず、下記要件(b)を満たしていない。サンプルNo.1は、マンガン(Mn)化合物を含む副相を含まず、当然に下記要件(c)を満たしていない。サンプルNo.9,12は、下記要件(c)を満たしていない。
・要件(a):ペロブスカイト型酸化物を含む主相を含む。
・要件(b):マンガン(Mn)化合物を含む副相を含む。
・要件(c):マンガン(Mn)化合物の最大粒子径が、0μmより大きく33μm未満である。
【0047】
(2)結果及び考察
サンプルNo.1の最大位相角θmax(分極処理の容易さの指標)は20°であり、サンプルNo.2~12の最大位相角θmaxは、30°~81°の範囲であった。また、サンプルNo.1の圧電定数d33(圧電性の指標)32pC/Nであり、サンプルNo.2~12の圧電定数d33は、41pC/N~110pC/Nの範囲であった。以上のように、サンプルNo.2~12は、サンプルNo.1よりも圧電特定が良好であった。サンプルNo.1は、要件(a)(b)を満たすことで、マンガン(Mn)酸化物が異相として焼結体内部に含まれ、分極が容易になり、圧電特性が向上したことが考えられる。
【0048】
サンプルNo.2~8,10,11の誘電損失tanδは、0.9%~2.2%の範囲であり、サンプルNo.1,9,12の誘電損失tanδは、3.3%~3.9%の範囲であった。以上のように、サンプルNo.2~8,10,11は、サンプルNo.1,9,12よりも圧電特定が良好であった。実施例であるサンプルNo.2~8,10,11は、マンガン(Mn)化合物の最大粒子径が0.9μm~33μmの範囲であり、要件(c)を満たしている。サンプルNo.2~8,10,11は、要件(c)を満たすことで、粒界抵抗が大きくなり、絶縁抵抗が大きくなった結果、圧電特性が向上したことが考えられる。
【0049】
5.実施例の効果
本実施例の無鉛圧電磁器組成物は、圧電特性を向上させることができた。
【0050】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
100…圧電磁器
200…圧電素子
301,302…電極
図1
図2