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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178890
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】化粧料塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A45D34/04 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085998
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】仲田 隼
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ノック不良を低減し良好な繰出し動作が可能な化粧料塗布具を提供する。
【解決手段】ネジ軸14との相対回転が規制された回転カム体16と、繰出し体20への繰出し操作によって回転カム体16を回転させる伝達カム体18と、ネジ軸14に螺合するネジ部の形成されたネジ体22とを軸筒10の収容部10b後方に設け、繰出し体20の操作によって回転カム体16が回転しピストン12を前進させて収容部に収容する塗布液を塗布体24に供給するようにした化粧料塗布具であって、伝達カム体18の外周に前記繰出し体20に支えられるための支点を形成し、支点と伝達カム体18の前端との距離L1と、前記支点と前記伝達カム体18の後端との距離L2の比(L1:L2)が1.5:1~3:1である化粧料塗布具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧液を収容する収容部と、該収容部内を摺動するピストンと、周面にネジが形成されたネジ軸とを軸筒内に設け、繰出し操作するための繰出し体を設け、前記ネジ軸との相対回転が規制された回転カム体と、前記繰出し体への繰出し操作によって回転カム体を回転させる伝達カム体と、前記ネジ軸に螺合するネジ部の形成されたネジ体とを軸筒の前記収容部後方に設け、前記繰出し体の操作によって前記回転カム体が回転しピストンを前進させて前記収容部に収容する塗布液を塗布体に供給するようにした化粧料塗布具であって、
前記伝達カム体の外周に前記繰出し体に支えられるための支点を形成し、
前記支点と伝達カム体の前端との距離L1と、前記支点と前記伝達カム体の後端との距離L2の比(L1:L2)が1.5:1~3:1であることを特徴とする化粧料塗布具。
【請求項2】
前記伝達カム体の前記支点と前記伝達カム体の後端との間の外径D1は、前記支点と伝達カム体の前端との間の外径D2よりも太く形成されていることを特徴とする請求項1記載の化粧料塗布具。
【請求項3】
前記伝達カム体の後端部と前記繰出し体内部との間にスプリングを設け、前記伝達カム体の後端面に凹部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧料塗布具。
【請求項4】
前記伝達カム体の後端部と前記繰出し体内部との間にスプリングを設け、前記スプリングの軸線方向の略中央部には、他の部分よりも巻密度が高い密着部を形成したことを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項5】
前記伝達カム体の後端部と前記繰出し体内部との間にスプリングを設け、前記繰出し体後端部の内周面に前記スプリングと当接するリブを形成したことを特徴とする請求項1からの4のうちのいずれか1項記載の化粧料塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノック操作によって、化粧料等の塗布液を繰出して塗布体に供給する化粧料塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノック式の化粧料塗布具は、繰出し体の後端をノックすると、伝達カム体が進退動して回転カム体を回転させ、ネジ軸とネジ部が相対回転してピストンが前進することによって収容部内の塗布液を塗布体に繰り出すものが開示される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2020/189584
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、化粧料塗布具の構造では、伝達カム体の寸法等における各部寸法の設定によってノック不良やノック力のバラつき・低減が生じる可能性があった。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ノック不良を低減し良好な繰出し動作が可能な化粧料塗布具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、化粧液を収容する収容部と、該収容部内を摺動するピストンと、周面にネジが形成されたネジ軸とを軸筒内に設け、繰出し操作するための繰出し体を設け、前記ネジ軸との相対回転が規制された回転カム体と、前記繰出し体への繰出し操作によって回転カム体を回転させる伝達カム体と、前記ネジ軸に螺合するネジ部の形成されたネジ体とを軸筒の前記収容部後方に設け、前記繰出し体の操作によって前記回転カム体が回転しピストンを前進させて前記収容部に収容する塗布液を塗布体に供給するようにした化粧料塗布具であって、前記伝達カム体の外周に前記繰出し体に支えられるための支点を形成し、前記支点と伝達カム体の前端との距離L1と、前記支点と前記伝達カム体の後端との距離L2の比(L1:L2)が1.5:1~3:1であることを特徴とする化粧料塗布具である。
【0007】
本発明においては、前記伝達カム体の前記支点と前記伝達カム体の後端との間の外径D1は、前記支点と伝達カム体の前端との間の外径D2よりも太く形成されていることが好適である。
【0008】
本発明においては、前記伝達カム体の後端部と前記繰出し体内部との間にスプリングを設け、前記伝達カム体の後端面に凹部を形成したことが好適である。
【0009】
本発明においては、前記伝達カム体の後端部と前記繰出し体内部との間にスプリングを設け、前記スプリングの軸線方向の略中央部には、他の部分よりも巻密度が高い密着部を形成したことが好適である。
【0010】
本発明においては、前記伝達カム体の後端部と前記繰出し体内部との間にスプリングを設け、前記繰出し体後端部の内周面に前記スプリングと当接するリブを形成したことが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化粧料塗布具によれば、ノック不良を低減し良好な繰出し動作が可能になるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る化粧料塗布具の全体説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)から周方向に90度回転させた側面図、(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図である。
図2図1に化粧料塗布具のキャップを外した状態の説明図であり、(a)が側面図、(b)が縦断面図、(c)が後部の詳細断面図である。
図3】伝達カム体の部品図であって、(a)が前方からの斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が正面図、(d)が(c)から周方向に90度回転させ側面図、(e)が(c)のE-E線に沿う縦断面図、(f)が後方からの斜視図、(g)が後方からの視図である。
図4】スプリングの部品図であって、(a)が斜視図、(b)が側面図である。
図5】繰出し体の部品図であって、(a)が前方からの視図、(b)が正面図、(c)が(b)から周方向に90度回転させた側面図、(d)が(b)のD-D線に沿う縦断面図、(e)が斜視図、(f)が後方からの視図、(g)が(d)のG-G線に沿う横断面図である。
図6】実施形態の塗布具において、繰出し機構の改良点の説明図であって、(a)が比較例の繰出し機構、(b)は実施形態の繰出し機構の説明図である。
図7】繰出し機構の改良点の説明図であって、(a)が実施形態に係る繰出し機構の縦断面図、(b)が比較例の伝達カム体の説明図、(c)が実施形態の伝達カム体の説明図である。
図8】繰出し機構の改良点の説明図であって、(a)が実施形態の繰出し機構の要部縦断面図、(b)が比較例の伝達カム体の説明図、(b)が実施形態の伝達カム体の説明図である。
図9】繰出し機構の改良点の説明図であって、(a)が実施形態の繰出し機構の要部の縦断面図、(b)が伝達カム体の後端部の拡大縦断面図、(c)が比較例のスプリングについてセンタリングの状態説明図、(d)が実施形態のスプリングについてセンタリングの状態説明図である。
図10】繰出し機構の改良点の説明図であって、(a)が実施形態の繰出し機構の要部の縦断面図、(b)が比較例の繰出し体の縦断面図、(c)が実施形態の繰出し体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1が、本発明の実施形態に係る化粧料塗布具の全体説明図、図2が化粧料塗布具のキャップ28を外した状態の説明図である。
【0015】
実施形態に係る化粧料塗布具は、図1に示すように未使用状態では、軸筒10の前端部10aに先軸26がストッパーリング34に予備的に嵌合(仮嵌合状態)される。先軸26には、そこから突出した塗布体24を覆うようキャップ28が嵌合される。使用開始状態では、図2に示すようにキャップ28を外した後、ストッパーリング34を外して先軸26を軸筒の前端部10aに本嵌合(先軸26が軸筒の前端部10aに緊密に嵌合する状態をいう、図示省略)させる。
【0016】
化粧料塗布具は、図1図2に示すように、軸筒10の前部内に塗布液を貯蔵(収容)する収容部10bと、収容部10b内を摺動するピストン12と、周面に雄ネジのネジ部14aが形成されたネジ軸14とを軸筒10内に設け、塗布液を繰出し操作するための繰出し体20を設け、ネジ軸14との相対回転が規制された回転カム体16と、繰出し体20への繰出し操作によって回転カム体16を回転させる伝達カム体18と、ネジ軸14に螺合するネジ部22bの形成されたネジ体22とを収容部10bの後方に設け、繰出し体20が使用者によってノック操作されることによって回転カム体16が回転しピストン12を前進させて収容部10bに収容する塗布液を塗布体24に供給するようにした塗布具である。
【0017】
各部を詳しく説明する。
塗布具においては、図1に示すように、ネジ体22、ネジ軸14、回転カム体16、伝達カム体18、スプリング38、及び繰出し体20からなる繰出し機構Aが軸筒10の収容部10bよりも後方内に配設されたものである。
【0018】
塗布具は未使用状態では、図1に示すように、キャップ28及びストッパーリング34が装着され、ストッパーリング34は先軸26を前方に位置させてシールボール36aが嵌り込んだ仮嵌合状態となる。使用開始時には、ストッパーリング34を取り払うと、本嵌合状態となり、シールボール36aが収容部10bに落ちる。この状態で、ノック操作で繰出し体20が押圧されることによって繰出し機構Aがピストン12を前進し、塗布液が塗布体に供給され塗布が可能になる。使用終了時はピストン12が収容部10b内の前端(段差部10c内側)に位置する。
【0019】
図2(c)は繰出し機構A周辺の拡大説明図である。図3は伝達カム体18の部品図、図4はスプリング38、図5は繰出し体20の各部品図である。
【0020】
〔繰出し機構A〕
図2(c)に示すように、繰出し機構Aにおいて、回転カム体16は、内部に異形孔が形成されてネジ軸14との相対回転が規制され、前部及び後部にそれぞれカム部16a及び16bが形成される。
【0021】
ネジ軸14は、側面が対で切り欠かれた異形(例えば鼓形状)の横断面を呈し、弧状の外周面に雄ネジのネジ部14aが形成されたものである。ネジ軸14は、回転カム体16の異形孔16c内に前後動可能に挿通されて回転カム体16との相対回転が規制され、雄ネジがネジ部22bに螺合してネジ体22に対して進退動するものである。
【0022】
伝達カム体18は、回転カム体16の後部のカム部16bに噛み合うためのカム部18aが前部に形成され、かつ、側面部に突起部18bが形成される。伝達カム体18の詳細は図3によって後述する。
【0023】
繰出し体20は、伝達カム体18の突起部18bをガイドするガイド溝20aを有し、かつ、前後動によってガイド溝20a及び突起部18bを介して伝達カム体18を回動させるものである。繰出し体20の詳細は図5によって後述する。
【0024】
そして、繰出し体20のガイド溝20aが軸方向(塗布具の前後方向)に対して角度を持って斜めに形成されている。
【0025】
スプリング38は、繰出し体20を後向きに弾発し及び伝達カム体18を前向きに弾発するものである。スプリング38の詳細は図4によって後述する。
【0026】
ネジ体22は、伝達カム体18、回転カム体16、スプリング38、ネジ軸14、及び繰出し体20を内蔵する筒状部22aを後部に有し、かつ、筒状部22a内部に面して後方向きのカム部22cが一体形成され及び前記ネジ軸14に螺合するネジ部22bを前部に有するものである。
【0027】
なお、ネジ体22、回転カム体16、ネジ軸14の構成は上記構成の他、ネジ体22のネジ部22bを異形孔にしてネジ軸14の断面に合わせてネジ軸14との相対回転を規制すると共に、回転カム体16の内周に雌ネジを形成してその雌ネジをネジ軸14外周面の雄ネジ(ネジ部14a)と螺合する構成の繰出し機構にしてもよい。
【0028】
〔繰出し機構Aの作動〕
上記ノック式塗布具においては、繰出し機構Aに対して、ノック操作により前記繰出し体20を前進させたときは、ガイド溝20a及び突起部18bによって当該前進動作を伝達カム体18の一方向(実施形態では軸前方向き右回転方向)への回転動作に変換する。これによって、伝達カム体18のカム部18aが回転カム体16の後部のカム部16bに噛み合って、伝達カム体18体の回転で回転カム体16が回転作動してネジ軸14が前進しピストン12が前進する。
【0029】
一方、ノック操作の解除により、スプリング38の弾発力で繰出し体20を後退させたときは、ガイド溝20a及び突起部18bによって当該後退動作を伝達カム体18の他方向(実施形態では軸前方向き左回転方向)への回転動作に変換して原位置に復帰し、かつ、回転カム体16の前部のカム部16aが筒状部22aのカム部22cに噛み合って、回転カム体16の回転作動が規制されてネジ軸14及びピストン12の作動が規制されたものである。
【0030】
〔塗布体24〕
図1図2に示すように、塗布具において、塗布体24は先軸26によって軸筒(後軸)10の前端部10aに取り付けられている。塗布体24は、樹脂製の繊維束又は多孔質体等塗布液を含浸して塗布可能な材質なら特に指定しないが、実施形態では、その後端部が熔融によって束ねられてフランジ状を呈している。
【0031】
〔塗布液〕
軸筒10の収容部10bに収容する塗布液は液状化粧料であるが、特に高粘度(好ましくは粘度300mPa・s以上)の化粧液の場合に繰出しを容易にできる。
【0032】
実施形態では、収容部10bに液状油性化粧料を収容して用いることができる。この実施形態における液状油性化粧料として好適なのは、(a)ハイドロフルオロエーテル5~40重量%と、(b)低沸点シリコーンオイル20~60重量%と、(c)シリコーン樹脂2~10重量%と、(d)架橋型メチルポリシロキサン、ステアリン酸イヌリン、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の増粘剤2~10重量%と、(e)粉体10~40重量%と、揮発性炭化水素を少なくとも含有する。
【0033】
又、別の液状油性化粧料として好適なのは、(a)イソドデカン20~75重量%と、(b)トリメチルシロキケイ酸、アクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル共重合体の1種又は2種以上2~25重量%と、(c)カーボンブラック、酸化鉄、紺青より選ばれる1種又は2種以上の粉体2~25重量%とを少なくとも含有する。
【0034】
又、25℃、ずり速度76.6/sにおける粘度が40mPa・s~400mPa・s、かつ25℃、65%RHの条件下において、濾紙法による塗布直後1分間までの平均初期蒸発速度が、0.15~2.00mg/secであることが好ましい。
粘度は、400mPa・sを超えると、化粧料の粘度上昇により、使用感が悪化してしまい、好ましくない。なお、粘度が40mPa・s未満であると、皮膚上で滲みやすくなり、使用上好ましくないものとなる。
【0035】
初期蒸発速度は2.00mg/secを超えると、蒸発速度が速すぎるため、化粧料の「のび」が極端に悪くなってしまい、使用上好ましくない。又、初期蒸発速度が0.15mg/sec未満の場合、塗布後の化粧料のべたつき感が長時間残ってしまったり、化粧持ちが悪化したりするため、使用上好ましくない。
【0036】
なお、初期蒸発速度は、25℃、65%RHの環境下において、φ90mmの濾紙上に化粧料約1gを正確に秤量し、秤量直後から1分後の重量を再び測定し、測定前後の重量差から下記式により初期蒸発速度を算出する。
【0037】
初期蒸発速度(mg/sec)=(W-W)÷60×1000
ここで、W、Wは下記のとおりである。
:測定開始直後に濾紙に秤量された化粧料の重量(g)
:測定開始1分後の濾紙上の化粧料の重量(g)
【0038】
収容部10bに前記液状油性化粧料を収容する場合に、軸筒10の材質には、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)を用いることが好ましい。
【0039】
〔塗布具全体〕
塗布具において、図1に示すように、軸筒(後軸)10の前端部10aが軸筒10内の収容部10bの部分よりも段状に細径に形成されている。先軸26及び塗布体24を覆って軸筒10の前端部10aに着脱可能に自在にキャップ28が嵌められる。先軸26の軸筒10前端部10a内に嵌入している箇所の内側部にパイプ継手30があり、パイプ継手30の先端部と先軸26内面部で塗布体24の後端部のフランジを挟み付けて、塗布体24を固定している。そのパイプ継手30の中央孔からSUSや樹脂製のパイプ32が塗布体24内に延びて配置され、パイプ32によって塗布体24先端部に向けて塗布液を流通可能にしている。
【0040】
軸筒10の前端部10aの段状に細径に成る部分(段差部10c)がある。ストッパーリング34を外すと段差部10cに先軸26の後端部が当接する。段差部10cの内周面側は、後方向きに塗布液の収容部10b内に面しており、その後方向きの面には、ピストン12が前進端時に当接して位置規制する。
【0041】
軸筒10は、収容部10b内に塗布液と共に塗布液を攪拌するための攪拌体10dが収容されている。攪拌体10dは金属製や樹脂製のボールでも棒状体でもよい。
【0042】
塗布具において、図1に示すように、未使用の場合に先軸26を未使用状態に維持するストッパーリング34が軸筒10の段差部10cの先端面と先軸26の後端面との間に介在している。軸筒10の前端部10a内に筒状のシール継手36が嵌入している。このシール継手36は、塗布具が未使用状態の場合に収容部10bを封止するシールボール36aを嵌入している。
【0043】
使用者が使用を開始する場合、ストッパーリング34を取り去り軸筒10の前端部10aに先軸26を後方向きに押圧することによって、パイプ継手30の後端部がシール継手36内に押し込まれて、シールボール36aを収容部10b内に落とし込んで収容部10bを開封する。
【0044】
なお、キャップ28は、図1図2に示すよう、インナーキャップ28aと付勢用のスプリング28bが内部に配置される。
【0045】
〔繰出し体20〕
繰出し体20(ノック体)は、単体では、図5に示すように、後端の閉鎖された概略筒状を呈し、その前部に内外周面を貫通した一対のガイド溝20aが軸方向に対して角度を持って斜めに形成されている。
【0046】
繰出し体20は、その閉鎖された後端面外周を使用者がノック操作することにより、図2等に示すように、前記繰出し体20を前進させたときに前記ガイド溝20a及び伝達カム体18側面の突起部18bによって当該前進動作を伝達カム体18の回転動作に変換し、当該伝達カム体18の回転によって回転カム体16を回転作動させて前記ネジ軸14を前進させて、ピストン12を前進させるものである。
【0047】
又、図5に示すように、繰出し体20の後側の側部に突起20bを取り囲むようにU字形状の切り欠きによって弾性変形可能なカンチレバー状の腕部20b1が形成され、その腕部20b1の外側に突起20bが形成されている。
【0048】
又、腕部20b1の前方位置の外周面には、誘導突起20dが、突起20bの周方向で対応する位置に対で外方向に向けて突出形成される。
【0049】
又、繰出し体20において前部の内周部に、伝達カム体18の組み付け時に突起部18bをガイド溝20aに誘導する誘導部20cが形成される。この誘導部20cは、繰出し体20の前端縁からガイド溝20a周囲にかけて内周に肉抜きして薄肉の部分であり、ガイド溝20aに対応して2箇所形成されている。
【0050】
又、突起20bよりも後部は後端が閉鎖された筒状のノック端部20fであるノック端部20fの外周面には、リブ状に拡径方向に突出して第2突起20eが対で形成される。第2突起20eは、突起20b及び誘導突起20dと周方向で同一位置に対で繰出し体20の外周面に突出する。
【0051】
又、ノック端部20fの内周面は、スプリング38の後端部を外周から支持するため、内方に突出した複数の支持リブ20gが前後方向に延びて形成されている。複数の支持リブ20gは、内周歯車状又は軸心に向けて放射形状の態様に形成される。
【0052】
〔伝達カム体18〕
図3に示すように、伝達カム体18は、前部18fが細径であり後部18rが段状に太径に形成された概略筒状体であり、前端面はカム山が形成されたカム部18aになっている。後部の対向する外周面から突起部18bが対で突出される。
【0053】
伝達カム体18の後部18rには、突起部18bの形成箇所を挟んで内外周面に貫通する切り欠き18b1が対で形成される。切り欠き18b1、18b1によって挟まれた部分が弾性変形可能に形成されるので、組み付け時に突起部18bが押された際に弾性変形する。
【0054】
伝達カム体18の後端面部は、外周面を壁状に残して内周側がノッチ状に切りかかれた凹部18dが形成される。凹部18dは、図2(c)に示すように、スプリング38の前端が嵌まり込み、径方向位置を規制するようにスプリング38を支持する構造である。凹部18dの形状はこれに限定されず、外周側を間欠的な壁部にしたり、内周側にも壁部を形成したりして、凹所を形成してもよい。
【0055】
組み付け状態においては、図2(c)に示すように、伝達カム体18の前方部は後部よりも細径になって(図8(c)参照)回転カム体16の筒状の後部内に差し込まれて伝達カム体18前方部のカム部18aがカム部16bに対向する。
【0056】
ここで、図3(c)に示すように、伝達カム体18の外周に繰出し体20に支えられるための突起部18b(支点に相当)を形成し、突起部18bと伝達カム体18の前端との距離L1と、突起部18bと伝達カム体18の後端との距離L2の比(L1:L2)が1.5:1~3:1としたものである(図3参照)。
【0057】
又、図3(d)に示すように、伝達カム体18は、伝達カム体18の突起部18b(「支点」に相当)と伝達カム体18の後端との間の外径D1は、突起部18bと伝達カム体18の前端との間の外径D2よりも太く形成されている。
【0058】
又、図2(c)、図3に示すように、伝達カム体18の後端面に凹部18dを形成している。図2に示すように、伝達カム体18の後端部と繰出し体20内部との間に配設されたスプリング38の前端が、凹部18dに嵌り込む構成になっている。
【0059】
〔スプリング38〕
スプリング38は、金属製又は樹脂製の弾性のあるコイルスプリングである。
スプリング38は、伝達カム体18の後端部と繰出し体20内部との間に設けられたものであり、スプリング38の軸線方向の少なくとも略中央部に、他の部分よりも巻密度が高い密着部38aを形成したものである。実施形態では、中央部の密着部38aの巻密度を高くすると共に前端部38t、後端部38rの巻密度を高くし、その間(前端部及び中央部間38m1、中央部及び後端部間38m2)の巻密度を低く形成したものである。
【0060】
図2(c)に示すように、伝達カム体18の後端部と繰出し体20内部との間にスプリング38を設けた状態で、繰出し体20後端部内に形成された支持リブ20gの内周端がスプリング38の後端部を取り囲んで、隣接又は接する状態になる。つまり、ノック端部20fの支持リブ20gがスプリング38と当接して、スプリング38は、ノック端部20f内において、径方向に位置決めされ、ガタツキなく支持される状態になっている。したがって、スプリング38の後端部38rは巻密度が高く隙間が少ないので、隙間が多い場合に比較して接する箇所が多く確実なセンタリングが可能になる。
【0061】
〔実施形態の作用効果〕
実施形態に係る化粧料塗布具の作用効果を説明する。
【0062】
図6(a)、(b)は繰出し機構に関し、比較例、実施形態を比較する説明図である。
【0063】
化粧料塗布具の開発において、ノック不良、並びにノック力(力)のバラつきによる低減が発生しないものを検討した。比較例は、国際公開WO2020/189584に係る塗布具を参考にしたものである。実施形態と同様部分に同一符号を付している。
【0064】
図6の(a)に比較例に係る化粧料塗布具の繰出し機構X、図6の(b)に実施形態の繰出し機構Aの概略断面図を示す。図7図10は改良点を比較例と比較する説明図である。
【0065】
図6(a)に示すように比較例の塗布具の繰出し機構Xは、周面に雄ネジのネジ部14aが形成されたネジ軸14と、塗布液を繰出し操作するための繰出し体200と、ネジ軸14との相対回転が規制された回転カム体16(前部及び後部にカム部16a及び16bを有する)と、繰出し体200への繰出し操作によって回転カム体16を回転させる伝達カム体180(前端・後端にカム部180a、180bが形成される)と、ネジ軸14に螺合するネジ部22bの形成されたネジ体22とを設けたものであり、スプリング380の弾発力に抗して繰出し体200が使用者によってノック操作されることによって回転カム体16が回転してネジ軸14を繰出し操作するものである。
【0066】
比較例の伝達カム体180は、図6(a)、図7(b)に示すように、中央部が前部及び後部に対して大径に形成され、突起180bを境に前部180f及び後部180rが同径で同じ長さに形成された概略筒状体である。スプリング380は、中央部の巻密度が粗の部分(符号380cで示す)となっている。又、繰出し体200は、図6に示すように、後端部のノック部200fの内周部は平滑面に形成されたものである。その他、ネジ軸14、ネジ体22、回転カム体16は、実施形態と同様であるので同一符号を付している。
【0067】
なお、検討においては、摺動部品である、ネジ軸、回転カム体、伝達カム体の表面にシリコーン処理を施すことによって、最終製品としてのノック力のバラつきを低減したものである。
【0068】
検討課題は、比較例の塗布具には、次の不具合の原因[1]~[4]があった。
【0069】
原因[1]:伝達カム体と回転カム体との干渉が生じる可能性がある。
【0070】
比較例では、図7(b)に示すように、伝達カム体180は、前部180f前端から支点となる突起180dまでの距離L0と突起180dから後部180r後端まで距離L0が同じである。
繰出し体200がノック操作された際に、スプリング380によって伝達カム体180を回転カム体16に押圧する。その際に、支点となる突起180bから後部180rの後端までの距離L0が長いため、図6(a)に示すように、突起(支点)180bを中心に伝達カム体180が径方向に振れて(振れ方向を矢印[1]で示す)、カム部180aが回転カム体16の後部に干渉してカム部16bへの係合不良が生じ、回転カム体16の回転不良、さらには繰出し不良が生じる場合があった。
【0071】
原因[2]:伝達カム体と繰出し体との間へのスプリングの潜り込み。
【0072】
比較例では、図6(a)に破線[2]に示すように、伝達カム体180がカム部の形成された後端部にスプリング380が当接している。スプリング380の前端が伝達カム体180と繰出し体200との間に潜りが生じ、この繰出し体200内周部にこすれて干渉し作動が不良になる場合があった。伝達カム体180の後端部にカム部が形成されていない平坦面でも同様に潜り込みが生じる。
【0073】
原因[3]:スプリングと繰出し体の干渉。
【0074】
比較例では、図6(a)に破線[3]で示すように、スプリング380が繰出し体200の内周面に摺動する等の干渉が生じ、作動が不良になる場合があった。
【0075】
原因[4]:ネジ軸とスプリングの干渉。
【0076】
比較例では、図6(a)に破線[4]で示すように、ネジ軸14の外周のネジ部14aにスプリング380が干渉し作動が不良になる場合があった。
【0077】
これに対して、改良した点を実施形態に即して説明する。
【0078】
改良点[1]:伝達カム体18の後部の長さを短くした(全長を短くした)。
【0079】
図7(c)に示すように、実施形態では、伝達カム体18の後部の長さを短くし全長を短くした。具体的には、伝達カム体18は、後部18rの長さL2を、前部18fの長さL1よりも短く設定した(L1>L2)ものである。
図7(b)に示すように、改良前の比較例の伝達カム体180の支点(繰出し体に支えられる場所:具体的には突起部180b)から力点(スプリングから力を受ける場所:後端部)までの距離L0であった。
【0080】
これに対して、改良した実施形態では、図7(c)に示すように、後部18rの長さが短くなり、具体的には、前端部から支点(突起部18b)までの距離L1よりも、支点(突起部18b)から力点までの距離L2を短くした。これによって、径方向への抵抗力が増し、カム歯のぐらつきを抑えることができるため、回転カム体18のブレを低減でき、原因[1]を解消できた。
【0081】
ここで、距離L1>L2とするのみでなく、突起部18bと伝達カム体18の前部18fの前端までの距離L1と、突起部18bと伝達カム体18の後部18rの後端との距離L2の比(L1:L2)を1.5:1~3:1とする。
距離L1:L2の比が1.5:1よりも小さくすると支点(突起部18b)から力点までの距離が短くならず、カム歯のぐらつきを抑えにくい。一方、距離L1:L2の比が3:1よりも大きくすると、改良した実施形態においては後部18rが短くなりすぎてしまい、後部18rと繰り出し体20内面と干渉の可能性が生じるからである。
【0082】
改良点[2]:伝達カム体18の外径を太くした。
【0083】
図8(b)に示すように、改良前の比較例では、伝達カム体180の前部180fと後部180rで外径(太さ)D0とD0が前後で同じであった(D0=D0)。
これに対して改良後の実施形態では、図8(c)に示すように、伝達カム体18の後部18rの外径(太さ)D2を前部18fより太くした(D1<D2)。
【0084】
従って、図8(a)に示すように、繰出し体20の内周面との隙間δを比較例よりも詰めることができ、伝達カム体18のぐらつきを軽減できた。このため、原因[1]を解消できた。
【0085】
改良点[3]:伝達カム体18の端部を凹状にした。
【0086】
改良点[4]:スプリング38に密着部38aを形成した。
【0087】
実施形態では、図9(a)、(b)に示すように、伝達カム体18の後端部に切り欠いて凹部18dを形成して凹部18dの外周部に壁を作り、凹部18dによってスプリング38の前端部をしっかり受けつつ、スプリング38と繰出し体20との間に壁を作る。
【0088】
一方、凹部18dの形成されない状態の比較例では、図9(c)に示すように、スプリング380(の中心軸380o)が伝達カム体180(の中心軸180o)に対してずれる場合がある。
【0089】
これに対して、実施形態では、図9(d)に示すよう、凹部18dによってスプリングの潜り込みを防止するので、伝達カム体18(の中心軸18o)に対してスプリング38の前端(の中心軸38o)をセンタリングする。
【0090】
なお、実施形態では、スプリング38には、前端部38f、後端部38rにも巻密部を設けているので、ばらけにくく腰が強いので、スプリング前端部38fが伝達カム体18から外れにくく、後端部38rについても支持リブ20gによってセンタリングするので全体にわたってズレ防止の効果が高い。
【0091】
又、実施形態では、スプリング38に図4に示すように、密着部38aを形成したので、密着部38aによって繰出し体20の切り欠き18b1にスプリング38が潜り込むのを防止できるので、スプリング38が干渉せずスムーズな動きが確保される。
【0092】
又、センタリングの効果と相まってネジ軸14とスプリング38も密着部38aによってネジ部14aへ噛み込みがなくなり、スムーズな動きが確保される。
【0093】
以上から、原因[2]~[4]が解決する。
【0094】
改良点[5]:繰出し体20のノック端部20fの内壁にリブ(支持リブ)20gを形成した。
【0095】
比較例では、図10(c)に示すように、繰出し体200の内周面が平坦面であり、スプリングが踊りセンタリングできなかった。
【0096】
これに対して、図10(a)、(c)に示すように、繰出し体20の内壁に支持リブ20gを形成しているので、スプリング38の後部を周囲から支持してセンタリングしつつ繰出し体20との接触面積を減らし摩擦低減をすることができる。又、改良点[3]の凹部18dでスプリングの前端を支持するのと合わせて、支持リブ20gでスプリング38の後端部38rを支持するのでスプリング38のセンタリングをして確実に支持し、スプリング38が繰出し体20に干渉し摩擦が生じるのを防止できる。
【0097】
これによって、伝達カム体と繰出し体との間にスプリングが潜り込むことを防止し、原因[2]を解決できる。
又、スプリング38と繰出し体20の干渉を防止して原因[3]を解決できる。
又、ネジ軸14とスプリングの干渉を防止して原因[4]を防止できる。
【0098】
なお上記では、本発明の好適な実施形態を説明したが、これに限定されず、本発明の範囲内で種々に変形実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、各種に化粧料塗布具に応用することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 軸筒
10b 収容部
14 ネジ軸
16 回転カム体
18 伝達カム体
18d 突起(支点)
18f 前部
18r 後部
20 繰出し体
20b 突起
20f ノック端部
20g 支持リブ
22 ネジ体
38 スプリング
38a 密着部
38f 前端部
A 繰出し機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10