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特開2022-178896端子、電線コネクタ及び電線対基板コネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178896
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】端子、電線コネクタ及び電線対基板コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20221125BHJP
   H01R 13/10 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01R13/42 H
H01R13/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086008
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 大記
(72)【発明者】
【氏名】松元 絢子
(72)【発明者】
【氏名】山田 健輔
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE11
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG15
5E087MM05
5E087RR04
5E087RR06
5E087RR26
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】端子の抜けを確実に防止することができ、端子及びハウジングの破損を確実に防止することができ、端子をハウジングに確実に固定することができ、低背化及び小型化することができ、構成が簡素で、部品点数が少なく、製造が容易で、コストが低く、信頼性が高くなるようにする。
【解決手段】電線の終端に接続される端子であって、電線の芯線に接続される本体部と、本体部の前端に接続され、相手方端子と接触する断面コ字状の接触部とを有し、接触部は、本体部に接続された上板部と、上板部と平行な下板部と、上板部及び下板部の左右いずれか一方の側端縁を接続する側板部と、上板部、下板部及び側板部によって三方を画定された先端嵌合凹部と、下板部の後端から斜め下方に向けて延出する傾斜凸片と、傾斜凸片と上板部との間において、接触部の幅方向に延在する中板部とを含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電性の金属板から一体的に形成され、電線の終端に接続される端子であって、
(b)前記電線の芯線に接続される本体部と、該本体部の前端に接続され、相手方端子と接触する断面コ字状の接触部とを有し、
(c)該接触部は、前記本体部に接続された上板部と、該上板部と平行な下板部と、前記上板部及び下板部の左右いずれか一方の側端縁を接続する側板部と、前記上板部、下板部及び側板部によって三方を画定された先端嵌合凹部と、前記下板部の後端から斜め下方に向けて延出する傾斜凸片と、該傾斜凸片と上板部との間において、前記接触部の幅方向に延在する中板部とを含んでいることを特徴とする端子。
【請求項2】
前記上板部の上面及び下板部の下面が、前記相手方端子の相手方接触部と接触する請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記傾斜凸片の幅は、前記下板部の幅と同一である請求項1又は2に記載の端子。
【請求項4】
前記上板部は、前記本体部の先端に接続された断面U字状の基部を介して、前記本体部に接続されており、前記中板部は、前記基部の左右の側壁の一方の下端から前記側板部に向けて延出し、前記中板部の下面は、前記下板部の後端の上面に当接又は近接する請求項1~3のいずれか1項に記載の端子。
【請求項5】
請求項1に記載の端子と、絶縁性材料から成り、前記端子が取付けられるハウジングとを備える電線コネクタであって、
前記ハウジングは、本体部と、該本体部から延出する嵌合凸部と、前記本体部及び嵌合凸部を通って延在し、前記端子が挿入される端子収容孔と、前記本体部から延出するハウジングランスとを有し、
前記嵌合凸部は、前記端子収容孔内に挿入された端子の接触部の先端嵌合凹部内に収容される凹部進入部を含み、前記ハウジングランスは、前記本体部に接続された基端部と、該基端部から斜め上方に向けて延出する傾斜腕部と、該傾斜腕部の先端の当接部であって、前記端子収容孔内に挿入された端子の傾斜凸片の後端と当接可能な当接部とを含んでいることを特徴とする電線コネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングランスの当接部の幅は、前記端子の傾斜凸片の幅と略同一である請求項5に記載の電線コネクタ。
【請求項7】
請求項5に記載の電線コネクタと、
絶縁性材料から成る相手方ハウジングと、導電性の金属板から一体的に形成され、前記電線コネクタの端子と接触する相手方端子であって、前記相手方ハウジングに取付けられる相手方端子とを備え、基板の表面に実装される基板コネクタであって、前記電線コネクタと嵌合する基板コネクタとから成る電線対基板コネクタであって、
前記相手方ハウジングは、前記電線コネクタのハウジングの嵌合凸部が挿入される嵌合凹部を有し、
前記相手方端子は、前記相手方ハウジングに固定される固定部と、該固定部から延出し、前記電線コネクタの端子の接触部と接触する相手方接触部とを有し、
該相手方接触部は、前記接触部の上板部の上面と接触する接触上腕部と、前記接触部の下板部の下面と接触する接触下腕部とを含み、前記上板部及び下板部を挟持することを特徴とする電線対基板コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子、電線コネクタ及び電線対基板コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル等の電線をプリント回路基板等の基板に接続するために電線対基板コネクタが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このような電線対基板コネクタは、電線の端部に接続された電線コネクタが、基板の表面に実装された基板コネクタと嵌合する。
【0003】
図13は従来の電線コネクタと基板コネクタとが嵌合した状態を示す断面図である。
【0004】
図において、801は、電線コネクタであり、図示されない基板の表面に実装された基板コネクタ901と嵌合されている。
【0005】
前記電線コネクタ801は、電線ハウジング811と、該電線ハウジング811に取付けられた複数の電線端子861とを有する。
【0006】
そして、前記電線ハウジング811は、本体部812と、該本体部812から嵌合方向(図における右方向)に向けて突出する嵌合凸部814と、複数の端子挿入孔813とを含んでいる。該端子挿入孔813は、前記本体部812及び嵌合凸部814内を通過して嵌合方向に延在するように形成された空洞であり、それぞれの内部に、各電線端子861が挿入されて収容される。なお、前記電線ハウジング811の下面側には、端子挿入孔813内に収容された電線端子861を係止して抜落ちないようにする複数のランス815が形成されている。
【0007】
また、前記電線端子861は、それぞれ、対応する電線891の先端に接続された金属板から成る部材であり、嵌合方向先端側には、概略箱状の接触部864が形成されている。該接触部864は、上側に位置する上面部864aと下側に位置する下面部864bとを含み、該下面部864bの後端には、前記ランス815の先端に係止される係止片869が形成されている。
【0008】
一方、前記基板コネクタ901は、基板ハウジング911と、該基板ハウジング911に取付けられた複数の基板端子961とを有する。
【0009】
そして、前記基板ハウジング911は、嵌合面(図における左側面)に開口する挿入空間913を含んでいる。該挿入空間913は、嵌合方向に延在するように形成された空洞であり、その内部に複数の基板端子961が取付けられている。
【0010】
また、該基板端子961は、それぞれ、金属板を打抜いて形成された部材であり、テール部962と、支持部963と、接触腕部964とを含んでいる。前記テール部962は、その下端がはんだ付によって、図示されない基板の表面に形成された接続パッドに接続される。また、前記支持部963は、基板ハウジング911に固定されるとともに、挿入空間913の下面に沿って延在する。さらに、前記接触腕部964は、挿入空間913の上面に近接して延在し、上下方向に弾性的に変位可能な部材である。
【0011】
図に示されるように、電線コネクタ801が基板コネクタ901に嵌合されると、電線ハウジング811の嵌合凸部814における先端寄りの部分が基板ハウジング911の挿入空間913内に挿入され、図示されないロック機構によってロックされる。これにより、電線コネクタ801と基板コネクタ901との嵌合状態が確実に維持される。また、電線端子861の接触部864が対応する基板端子961の支持部963と接触腕部964との間に進入して、前記接触部864の上面部864a及び下面部864bが、接触腕部964及び支持部963と接触して導通する。したがって、電線891が基板コネクタ901が実装されている基板に接続される。さらに、電線端子861の係止片869がランス815の先端に係止されているので、電線891に引張力が作用しても、電線端子861が電線ハウジング811の端子挿入孔813から抜出ることを確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2019-185875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記従来の電線対基板コネクタにおいては、電線コネクタ801と基板コネクタ901とが嵌合した状態で電線891が強い力で引張られると、ランス815に大きな力が作用するので、ランス815が変形し、その先端と電線端子861の係止片869との係止が外れて、前記先端が電線端子861の接触部864における上面部864aと下面部864bとの間の空間に進入してしまうことがある。そして、ランス815の先端が電線端子861の接触部864における空間に進入した状態で電線891が強い力で引張られると、ランス815が破損してしまったり、電線端子861の接触部864が破損してしまったり、ランス815の先端が電線端子861の接触部864における空間に進入した状態のままでランス815と電線端子861とが結合してしまったりする。
【0014】
このような事態が発生することを防ぐためには、ランス815を大型化して変形しにくくしたり、電線端子861の係止片869を大型化してランス815の先端との係止を解除しにくくしたり、電線端子861の接触部864を肉厚にして破損しにくくすることが考えられる。しかし、近年では、電子部品、電子機器等の小型化に伴い電線コネクタ801も小型化されているので、ランス815や電線端子861の各部も極めて微細なものにならざるを得ず、電線891が強い力で引張られたときに発生するランス815及び電線端子861の各部の変形や、ランス815と電線端子861との係止解除を防止することは極めて困難である。
【0015】
ここでは、前記従来の電線対基板コネクタの問題点を解決して、端子及びハウジングの形状及び構造を適切なものとすることによって、端子及びハウジングを小型化しても、端子及びハウジングのランスの係止解除を防止し、端子の抜けを確実に防止することができ、端子及びハウジングの破損を確実に防止することができ、端子をハウジングに確実に固定することができ、低背化及び小型化することができ、構成が簡素で、部品点数が少なく、製造が容易で、コストが低く、信頼性の高い端子、電線コネクタ及び電線対基板コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのために、端子においては、導電性の金属板から一体的に形成され、電線の終端に接続される端子であって、前記電線の芯線に接続される本体部と、該本体部の前端に接続され、相手方端子と接触する断面コ字状の接触部とを有し、該接触部は、前記本体部に接続された上板部と、該上板部と平行な下板部と、前記上板部及び下板部の左右いずれか一方の側端縁を接続する側板部と、前記上板部、下板部及び側板部によって三方を画定された先端嵌合凹部と、前記下板部の後端から斜め下方に向けて延出する傾斜凸片と、該傾斜凸片と上板部との間において、前記接触部の幅方向に延在する中板部とを含んでいる。
【0017】
他の端子においては、さらに、前記上板部の上面及び下板部の下面が、前記相手方端子の相手方接触部と接触する。
【0018】
更に他の端子においては、さらに、前記傾斜凸片の幅は、前記下板部の幅と同一である。
【0019】
更に他の端子においては、さらに、前記上板部は、前記本体部の先端に接続された断面U字状の基部を介して、前記本体部に接続されており、前記中板部は、前記基部の左右の側壁の一方の下端から前記側板部に向けて延出し、前記中板部の下面は、前記下板部の後端の上面に当接又は近接する。
【0020】
電線コネクタにおいては、前記端子と、絶縁性材料から成り、前記端子が取付けられるハウジングとを備える電線コネクタであって、前記ハウジングは、本体部と、該本体部から延出する嵌合凸部と、前記本体部及び嵌合凸部を通って延在し、前記端子が挿入される端子収容孔と、前記本体部から延出するハウジングランスとを有し、前記嵌合凸部は、前記端子収容孔内に挿入された端子の接触部の先端嵌合凹部内に収容される凹部進入部を含み、前記ハウジングランスは、前記本体部に接続された基端部と、該基端部から斜め上方に向けて延出する傾斜腕部と、該傾斜腕部の先端の当接部であって、前記端子収容孔内に挿入された端子の傾斜凸片の後端と当接可能な当接部とを含んでいる。
【0021】
他の電線コネクタにおいては、さらに、前記ハウジングランスの当接部の幅は、前記端子の傾斜凸片の幅と略同一である。
【0022】
電線対基板コネクタにおいては、前記電線コネクタと、絶縁性材料から成る相手方ハウジングと、導電性の金属板から一体的に形成され、前記電線コネクタの端子と接触する相手方端子であって、前記相手方ハウジングに取付けられる相手方端子とを備え、基板の表面に実装される基板コネクタであって、前記電線コネクタと嵌合する基板コネクタとから成る電線対基板コネクタであって、前記相手方ハウジングは、前記電線コネクタのハウジングの嵌合凸部が挿入される嵌合凹部を有し、前記相手方端子は、前記相手方ハウジングに固定される固定部と、該固定部から延出し、前記電線コネクタの端子の接触部と接触する相手方接触部とを有し、該相手方接触部は、前記接触部の上板部の上面と接触する接触上腕部と、前記接触部の下板部の下面と接触する接触下腕部とを含み、前記上板部及び下板部を挟持する。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、端子及びハウジングを小型化しても、端子及びハウジングのランスの係止解除を防止し、端子の抜けを確実に防止することができ、端子及びハウジングの破損を確実に防止することができ、端子をハウジングに確実に固定することができ、低背化及び小型化することができ、構成が簡素で、部品点数が少なく、製造が容易で、コストを低減し、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態における第1コネクタ及び第2コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図である。
図2】本実施の形態における第1コネクタ及び第2コネクタの第1コネクタ側から観た分解図であって、(a)は斜め上方から観た図、(b)は斜め下方から観た図である。
図3】本実施の形態における第1コネクタ及び第2コネクタの第2コネクタ側から観た分解図であって、(a)は斜め上方から観た図、(b)は斜め下方から観た図である。
図4】本実施の形態における第1コネクタの斜め下方から観た斜視図であって、(a)は斜め後方から観た図、(b)は斜め前方から観た図である。
図5】本実施の形態における第1ハウジングの斜め後方から観た斜視図であって、(a)は斜め上方から観た図、(b)は斜め下方から観た図である。
図6】本実施の形態における第1ハウジングの斜め下方から観た斜視図であって、(a)は斜め後方から観た図、(b)は斜め前方から観た図である。
図7】本実施の形態における第1端子を示す図であって、(a)は斜め後方から観た斜視図、(b)は斜め前方から観た斜視図、(c)は側面図である。
図8】本実施の形態における第2コネクタの斜め前方から観た斜視図であって、(a)は斜め上方から観た図、(b)は斜め下方から観た図である。
図9】本実施の形態における第1コネクタ及び第2コネクタの嵌合した状態を示す斜視図である。
図10】本実施の形態における嵌合した状態の第1コネクタ及び第2コネクタの側断面図であり図9におけるA-A矢視断面図である。
図11】本実施の形態における嵌合した状態の第1コネクタ及び第2コネクタの側断面図を示す斜視図であり図9におけるA-A矢視断面を示す斜視図であって、(a)及び(b)は互いに観る角度が異なる図である。
図12】比較例における第1コネクタの側断面図である。
図13】従来の電線コネクタと基板コネクタとが嵌合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は本実施の形態における第1コネクタ及び第2コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図、図2は本実施の形態における第1コネクタ及び第2コネクタの第1コネクタ側から観た分解図、図3は本実施の形態における第1コネクタ及び第2コネクタの第2コネクタ側から観た分解図、図4は本実施の形態における第1コネクタの斜め下方から観た斜視図、図5は本実施の形態における第1ハウジングの斜め後方から観た斜視図、図6は本実施の形態における第1ハウジングの斜め下方から観た斜視図、図7は本実施の形態における第1端子を示す図、図8は本実施の形態における第2コネクタの斜め前方から観た斜視図である。なお、図2及び3において、(a)は斜め上方から観た図、(b)は斜め下方から観た図であり、図4において、(a)は斜め後方から観た図、(b)は斜め前方から観た図であり、図5において、(a)は斜め上方から観た図、(b)は斜め下方から観た図であり、図6において、(a)は斜め後方から観た図、(b)は斜め前方から観た図であり、図7において、(a)は斜め後方から観た斜視図、(b)は斜め前方から観た斜視図、(c)は側面図であり、図8において、(a)は斜め上方から観た図、(b)は斜め下方から観た図である。
【0027】
図において、1は本実施の形態における電線対基板コネクタの一方である電線コネクタとしての第1コネクタであり、複数の電線91を備えるケーブルの終端に接続されるコネクタである。そして、前記第1コネクタ1は、本実施の形態における電線対基板コネクタの他方である相手方コネクタとしての第2コネクタ101に嵌合される。なお、該第2コネクタ101は、基板191の表面に実装される表面実装型の基板コネクタである。
【0028】
本実施の形態における電線対基板コネクタは、前記第1コネクタ1及び第2コネクタ101を含み、電線91及び基板191を電気的に接続する。なお、本実施の形態においては、電線91は信号ラインであって、前記電線91における第1コネクタ1と反対側の端部が図示されない電子機器等に接続され、前記第1コネクタ1及び第2コネクタ101が基板191の信号ラインを接続するためのコネクタであるものとして説明するが、前記電線91は電源ラインや接地ラインを含むものであってもよく、前記第1コネクタ1及び第2コネクタ101は、電源ラインや接地ラインをも接続するためのコネクタとしても使用することができる。
【0029】
また、前記基板191は、例えば、電子機器等に使用されるプリント回路基板であるが、電子素子が表面に直接配設されたシリコン基板、シリコンカーバイド基板等であってもよく、いかなる種類の基板であってもよい。さらに、前記電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、デジタルテレビ、車両用ナビゲーション装置、ゲーム機等であるが、いかなる種類の電子機器であってもよい。
【0030】
図に示される例において、前記第2コネクタ101は、いわゆるライトアングルタイプの基板コネクタであって、第1コネクタ1と第2コネクタ101とが嵌合する際に第1コネクタ1の嵌合凸部14が挿入されて嵌合される嵌合凹部113が、基板191の表面と平行な方向を向いて開口した状態で基板191の表面に実装されているが、前記第2コネクタ101は、ライトアングルタイプに限定されるものでなく、前記嵌合凹部113が上方(Z軸負方向)を向いて開口した状態で基板191の表面に実装される、いわゆるストレートタイプのコネクタであってもよいし、前記嵌合凹部113が基板191の表面と交差する斜め方向を向いて開口した状態のものであってもよいし、前記嵌合凹部113がいかなる方向を向いて開口した状態のものであってもよい。ここでは、説明の都合上、前記第2コネクタ101が、いわゆるライトアングルタイプものであるとして、説明する。
【0031】
なお、本実施の形態において、電線対基板コネクタの各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記電線対基板コネクタの各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0032】
そして、前記第1コネクタ1は、絶縁性材料である合成樹脂等の樹脂によって一体的に形成され、概略扁平な直方体のような全体形状を備えるハウジングとしての第1ハウジング11と、該第1ハウジング11に取付けられた金属製の端子としての第1端子61とを有する。該第1端子61の数は、電線91の数に対応し、それぞれが、対応する電線91の終端に接続されている。なお、図に示される例において、電線91は10本であるが、電線91の数は任意に変更することができ、例えば、9本以下であってもよいし、11本以上であってもよい。さらに、図に示される例において、複数の電線91は第1コネクタ1の幅方向(Y軸方向)に一列に並んで配置されているが、必ずしも、これに限定されるものでなく、例えば、千鳥状に配置されていてもよいし、2列以上の列を形成していてもよい。
【0033】
本実施の形態における第1端子61は、導電性の金属板に曲げ加工及び打抜き加工を施すことによって一体的に形成された部材であって、図7に示されるように、本体部としての導線接続部63と、該導線接続部63の後端に接続される電線接続部としての第1固定部62と、前記導線接続部63の前端に接続された接触部としての第1接触先端部65とを備える。前記導線接続部63は、電線91が備える導線としての芯線92と電気的に接続される部分であり、芯線92をかしめて固定する芯線かしめ部63aを備える。なお、必要に応じてはんだを付与することによって、芯線92と芯線かしめ部63aとを更に強固に接続固定することができる。また、前記第1固定部62は、前記芯線92の周囲を覆う絶縁性被覆91aの周囲から電線91をかしめて固定する電線かしめ部62aを備える。該電線かしめ部62aによって電線91をかしめることによって、第1端子61は電線91の終端に確実に接続される。
【0034】
そして、前記第1接触先端部65は、第2コネクタ101が備える相手方端子としての第2端子161と接触する部分である。そして、前記第1接触先端部65は、概略、第1固定部62の先端(X軸正方向端)から前方(X軸正方向)に向けて延出する断面コ字状の細長い角筒状の部分であって、第1固定部62の先端(X軸正方向端)に接続されて前後方向(X軸方向)に延在する平板状の上板部65aと、該上板部65aと平行で前後方向に延在する平板状の下板部65bと、前記上板部65a及び下板部65bの左右いずれか一方(図に示される例においては、Y軸負方向側)の側端縁を接続し、かつ、前記上板部65a及び下板部65bと同様に、前後方向に延在する平板状の側板部65cと、前記上板部65a、下板部65b及び側板部65cによって三方を画定された先端嵌合凹部65dとを有している。
【0035】
より詳細には、前記第1接触先端部65は、第1固定部62の先端に接続された基部としての断面U字状の樋部65gを含んでおり、前記上板部65aは、前記樋部65gの底壁の先端に接続されているので、樋部65gを介して、第1固定部62に接続されている、とも言える。
【0036】
さらに、前記第1接触先端部65は、前記下板部65bの後端(X軸負方向端)から斜め下方に向けて延出する傾斜凸片としての端子ランス65eと、該端子ランス65eと上板部65aとの間において、前記第1接触先端部65の幅方向(Y軸方向)に延在する中板部65fとを有している。該中板部65fは、前記樋部65gの左右の側壁の一方(側板部65cの反対側の側壁)の下端に約90度曲げて接続され、前記側板部65cに向けて上板部65a及び下板部65bとほぼ平行に延出する部材である。そして、前記上板部65a、下板部65b及び側板部65cによって三方を画定された空洞における第1接触先端部65の先端から中板部65fまでの範囲は、第1ハウジング11の凹部進入部としての接触先端進入部14eが相対的に前方から進入して嵌合する先端嵌合凹部65dとなっている。
【0037】
なお、前記樋部65gの左右の側壁の他方には、側板部65cの後端が接続され、かつ、先端嵌合凹部65dが断面コ字状であるので、第1接触先端部65は、断面2次係数が大きく、剛性が高く、変形しにくくなっている。しかも、中板部65fは、その下面が下板部65bの後端近傍の上面に当接又は近接して、下板部65bを上方から支えるようになっているので、下板部65bは、補強され、上方に向けて変形しにくくなっている。
【0038】
前記第1ハウジング11は、第1コネクタ1の幅方向に延在する本体部12と、該本体部12から前方に向けて延出する嵌合凸部14とを有する。そして、前記第1ハウジング11には、その後面11rに開口して該後面11rから嵌合凸部14の先端に至るまで、本体部12及び嵌合凸部14を通って前後方向に延在する端子収容孔13が複数形成されている。該端子収容孔13は、1本の電線91の終端に接続された第1端子61及び前記電線91の第1端子61近傍部分をそれぞれ収容する空間であり、電線91と同様の配置で電線91と同様の数だけ形成されている。したがって、図に示される例では、10個の端子収容孔13が第1コネクタ1の幅方向に一列に並んで形成されている。なお、第1ハウジング11の後面11rには、端子収容孔13の列の外側にダミー開口13dが形成されている。
【0039】
前記嵌合凸部14は、第1コネクタ1の幅方向に延在する1枚の平板状の横仕切板14cと、該横仕切板14cの上下両面の複数箇所から上方及び下方に向けて延出する複数対の縦仕切板14dと含んでいる。そして、各端子収容孔13における嵌合凸部14の先端近傍は、前記横仕切板14cによって上方部13aと下方部13bとに分割されている。また、各端子収容孔13の左右両側は縦仕切板14dによって画定されている。
【0040】
さらに、上方に向けて延出する縦仕切板14dの上端には天板部としての嵌合天板部14aが接続されている。該嵌合天板部14aは、第1ハウジング11の上面11a側において、本体部12から前方に向けて延出し、嵌合凸部14の前後方向のほぼ全範囲に亘って存在し、前記端子収容孔13の上方部13aの上面を画定する部材であるが、各上方部13aに対応する位置に前後方向に延在する上スリット16aが形成され、該上スリット16aによって、第1コネクタ1の幅方向に関して、複数に分割されている。分割された個々の嵌合天板部14aは、嵌合凸部14の基端近傍から先端まで延在する短冊状の形状を有する。そして、第1コネクタ1と第2コネクタ101とが嵌合すると、該第2コネクタ101の第2端子161の接触上腕部164が前記上スリット16aを通って端子収容孔13の上方部13a内に進入する。
【0041】
また、下方に向けて延出する縦仕切板14dの下端には底板部としての嵌合底板部14bが接続されている。該嵌合底板部14bは、嵌合凸部14の先端から所定の長さだけ後方に向けて延在し、前記端子収容孔13の下方部13bの下面を画定する部材であるが、各下方部13bに対応する位置に前後方向に延在する下スリット16bが形成され、該下スリット16bによって、第1コネクタ1の幅方向に関して、複数に分割されている。そして、第1コネクタ1と第2コネクタ101とが嵌合すると、該第2コネクタ101の第2端子161の接触下腕部163が前記下スリット16bを通って端子収容孔13の下方部13b内に進入する。
【0042】
さらに、前記横仕切板14cの先端から所定の長さだけ後方に到達する範囲には、肉厚に形成された接触先端進入部14eが前後方向に延在する。また、前記横仕切板14cの左右いずれか一方(図に示される例においては、Y軸負方向側)の側端には、縦仕切板14dに沿って、前後方向に延在する中間スリット14sが形成されている。該中間スリット14sは、第1端子61の第1接触先端部65における側板部65cが進入可能なように、横仕切板14cの基端から先端近傍まで延在する。
【0043】
さらに、前記第1ハウジング11は、その下面11b側において、本体部12から前方に向けて延出する突出片としてのハウジングランス15を有する。該ハウジングランス15は、第1コネクタ1の幅方向に一列に並んで配置され、各々が、嵌合凸部14における端子収容孔13の下方に位置する。各ハウジングランス15は、本体部12から延出する短冊状の形状を有し、隣接するもの同士の間に形成された前後方向に延在するランススリット15dによって互いに分離されている。また、各ハウジングランス15は、片持ち梁状の部材であって、本体部12に接続された基端部15aと、該基端部15aから斜め上方に向けて延出する傾斜腕部15bと、該傾斜腕部15bの自由端(先端)であって、端子ランス65eの後端と当接可能な当接部15cとを含んでいる。なお、該当接部15cの幅は、端子ランス65eの幅と略同一になっている。
【0044】
各電線91の終端に接続された第1端子61は、第1ハウジング11の後面11r側から対応する端子収容孔13内に挿入されて取付けられる。図4に示されるように、第1端子61の取付が完了すると、第1接触先端部65の先端が嵌合凸部14の先端近傍に到達し、第1接触先端部65の側板部65cが横仕切板14cに形成された中間スリット14s内に進入し、第1接触先端部65の上板部65aが端子収容孔13の上方部13a内において嵌合天板部14aの下方に位置し、第1接触先端部65の下板部65bが端子収容孔13の下方部13b内において嵌合底板部14bの上方に位置し、第1接触先端部65の先端嵌合凹部65d内に接触先端進入部14eが進入して収容された状態となる。これにより、第1接触先端部65が補強され、特に、上下方向からの力を受けても、上板部65aと下板部65bとの間隔が減少するような変形が生じることがない。また、第1接触先端部65の端子ランス65eは、その幅が下板部65bの幅と同一であり、ハウジングランス15の当接部15cよりも前方に位置し、前記端子ランス65eの後端は、ハウジングランス15の当接部15cに対面し、該当接部15cに近接又は当接した状態となる。したがって、第1端子61の取付が完了すると、端子ランス65eがハウジングランス15に係止されるので、電線91に引張力が作用しても、第1端子61は、後方へ移動することができず、端子収容孔13内から後方へ抜出ることが確実に防止される。
【0045】
前記第2コネクタ101は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成され、概略扁平な直方体のような全体形状を備える相手方ハウジングとしての第2ハウジング111と、該第2ハウジング111に取付けられた金属製の相手方端子としての第2端子161と、前記第2ハウジング111に取付けられた金属製の基板雌ハウジング取付用補助金具としての補助金具181とを有する。前記第2端子161の数や配置は任意に設定することができるが、ここでは、説明の都合上、前記第1端子61と同様の数及び配置であるものとする。
【0046】
本実施の形態における第2端子161は、金属板に打抜き加工を施すことによって一体的に形成された部材であって、全体としてコ字状又はU字状の側面形状を備える。そして、前記第2端子161は、本体部としての固定部165と、該固定部165の下端から下方へ向けて延出する基板接続部としてのテール部162と、前記固定部165から前方へ向けて延出する相手方接触部としての接触上腕部164及び接触下腕部163とを備える。そして、前記固定部165には、第2ハウジング111の第2端子保持部116aに食込んで係止される係止突起165aが形成され、前記接触上腕部164の自由端(先端)近傍には第1端子61の第1接触先端部65における上板部65aに接触する上側接触突起164aが形成され、前記接触下腕部163の自由端(先端)近傍には第1端子61の第1接触先端部65における下板部65bに接触する下側接触突起163aが形成されている。
【0047】
また、前記補助金具181は、金属板に曲げ加工及び打抜き加工を施すことによって一体的に形成された部材であって、平板状の本体部183と、該本体部183の下端に約90度曲げて接続され、第2コネクタ101の幅方向外側に向けて延出する基板接続部としてのテール部182と、前記本体部183の後端から後方(X軸正方向)に向けて延出する固定部184と、本体部183の上端に約90度曲げて接続され、第2コネクタ101の幅方向内側に向けて延出する肩押え部185とを備える。前記補助金具181は、第2コネクタ101を基板191に安定的に固定するための補助部材であり、第2ハウジング111に固定されるとともに、前記テール部182が基板191の表面に形成された接続パッド192の表面にはんだ付等の接続手段によって接続される。
【0048】
前記第2ハウジング111は、第2コネクタ101の幅方向に延在する本体部112と、該本体部112から前方(X軸負方向)に向けて延出する前方突出部114とを有する。そして、前記第2ハウジング111には、その前面111fに開口し、前方突出部114及び本体部112を通って第2ハウジング111の後面111rに至るまで前後方向に延在する嵌合凹部113が形成されている。該嵌合凹部113内には、第1コネクタ1と第2コネクタ101とが嵌合する際に、第1ハウジング11の嵌合凸部14が挿入されて嵌合する。また、第2ハウジング111の後面111rには、前記嵌合凹部113と連通する複数の端子挿入口116が形成されている。該端子挿入口116は、1つの第2端子161がそれぞれ挿入される開口であり、第2端子161と同様の配置で第2端子161と同様の数だけ形成されている。したがって、図に示される例では、10個の端子挿入口116が第2コネクタ101の幅方向に一列に並んで形成されている。なお、各端子挿入口116内には、第2端子保持部116aが配設されている。
【0049】
また、前記嵌合凹部113内の天面、すなわち、第2ハウジング111の上面111a側の内面には、前後方向(X軸方向)に延在する上側端子収容溝115aが複数本形成され、前記嵌合凹部113内の床面、すなわち、第2ハウジング111の下面111b側の内面には、前後方向に延在する下側端子収容溝115bが複数本形成されている。なお、前記嵌合凹部113内の天面における第2ハウジング111の前面111f近傍部分には、各上側端子収容溝115aに対応する箇所に、下方(Z軸負方向)に向けて突出するガイド凸部115cが形成されている。
【0050】
さらに、前記本体部112は、前方突出部114よりも第2コネクタ101の幅方向外側に突出しているが、その突出部112fには、前後方向に延在する補助金具固定孔112dが形成されている。また、前記前方突出部114における第2コネクタ101の幅方向外側端には、外側膨出部114cが形成され、該外側膨出部114cの上端は肩部114aとなっている。
【0051】
各第2端子161は、第2ハウジング111の後面111r側から対応する端子挿入口116内に挿入されて取付けられる。図8に示されるように、第2端子161の取付が完了すると、接触下腕部163は対応する下側端子収容溝115b内に収容されるが、接触上腕部164は対応する上側端子収容溝115a内ではなく、該上側端子収容溝115aのやや下方に位置する。また、固定部165の係止突起165aが端子挿入口116内の第2端子保持部116aに食込んで係止されるので、第2端子161は第2ハウジング111に固定される。
【0052】
また、各補助金具181は、肩押え部185が第2ハウジング111の外側膨出部114cにおける肩部114aと係合するとともに、固定部184が第2ハウジング111の補助金具固定孔112dに挿入されて固定されることによって、第2ハウジング111に取付けられる。
【0053】
このように、第2端子161及び補助金具181が第2ハウジング111に取付けられた第2コネクタ101は、図1に示されるように、基板191の表面に実装される。具体的には、各第2端子161のテール部162が前記基板191の表面に形成された図示されないコネクタ用電極の各々にはんだ付等の接続手段によって電気的かつ機械的に接続される。なお、前記コネクタ用電極の各々は、基板191が備える図示されない導電トレースであって信号ラインとして機能するものに接続されている。また、前記補助金具181のテール部182が基板191の表面に形成された接続パッド192の表面にはんだ付等の接続手段によって機械的に接続される。
【0054】
次に、前記構成の第1コネクタ1と第2コネクタ101とを嵌合する動作について説明する。
【0055】
図9は本実施の形態における第1コネクタ及び第2コネクタの嵌合した状態を示す斜視図、図10は本実施の形態における嵌合した状態の第1コネクタ及び第2コネクタの側断面図であり図9におけるA-A矢視断面図、図11は本実施の形態における嵌合した状態の第1コネクタ及び第2コネクタの側断面図を示す斜視図であり図9におけるA-A矢視断面を示す斜視図、図12は比較例における第1コネクタの側断面図である。なお、図11において、(a)及び(b)は互いに観る角度が異なる図である。
【0056】
ここで、第1コネクタ1は、第1端子61が電線91の終端に接続されることによって、電線91を備えるケーブルの終端に接続されているものとする。また、第2コネクタ101は、第2端子161のテール部162が、基板191の表面に形成されたコネクタ用電極にはんだ付等によって接続されるとともに、補助金具181のテール部182が基板191の表面に形成された接続パッド192にはんだ付等によって接続されることにより、基板191の表面に実装されているものとする。
【0057】
まず、オペレータは、図1に示されるように、第1コネクタ1の嵌合凸部14と、第2コネクタ101の嵌合凹部113とを対向させた状態とする。続いて、オペレータは、第1コネクタ1及び/又は第2コネクタ101を相手側に接近するように移動させ、第1コネクタ1の嵌合凸部14を第2コネクタ101の嵌合凹部113内に挿入して、図9に示されるように、第1コネクタ1と第2コネクタ101とを嵌合させる。
【0058】
この際、前記嵌合凸部14の嵌合天板部14aに形成された上スリット16aの各々には、第2コネクタ101の対応する第2端子161の接触上腕部164が進入し、前記嵌合凸部14の嵌合底板部14bに形成された下スリット16bの各々には、第2コネクタ101の対応する第2端子161の接触下腕部163が進入する。
【0059】
そして、図10及び11に示されるように、第2端子161の接触上腕部164の上側接触突起164aが、前記上スリット16aの下方に位置する第1端子61の第1接触先端部65における上板部65aの上面に接触して導通し、第2端子161の接触下腕部163の下側接触突起163aが、前記下スリット16bの上方に位置する第1端子61の第1接触先端部65における下板部65bの下面に接触して導通する。このように、第2端子161の接触上腕部164の上側接触突起164aと接触下腕部163の下側接触突起163aとの間に第1端子61の第1接触先端部65が挿入されるので、主として、カンチレバー状の接触上腕部164が上方に向けて弾性的に変位し、上側接触突起164aと下側接触突起163aとの間隔が弾性的に押広げられる。そして、第1接触先端部65における上板部65aと下板部65bとは、上下から上側接触突起164aと下側接触突起163aとによって挟持される。なお、第1コネクタ1と第2コネクタ101との嵌合が完了すると、図10及び11に示されるように、嵌合凹部113内に挿入された嵌合凸部14の先端が第2端子保持部116aに当接するので、これ以上、嵌合凸部14が嵌合凹部113内の奥側(X軸正方向側)に移動することが防止される。
【0060】
このように、第2端子161の接触上腕部164の上側接触突起164a及び接触下腕部163の下側接触突起163aが、第1端子61の第1接触先端部65の上板部65a及び下板部65bに接触して導通するので、第1端子61と第2端子161とが導通した状態となり、その結果、第1端子61が接続された電線91と、第2端子161のテール部162が接続された基板191のコネクタ用電極に接続された導電トレースとが導通する。
【0061】
また、図10及び11に示されるように、第1端子61の第1接触先端部65の先端嵌合凹部65d内に接触先端進入部14eが進入して収容された状態となっている。これにより、前記先端嵌合凹部65dは、四方が画定された断面ロ字状の閉じた空間ではなく、上板部65a、下板部65b及び側板部65cによって三方が画定され、一方が開放された断面コ字状の空間であっても、その内部に第1ハウジング11の嵌合凸部14の一部である接触先端進入部14eが収容されているので、外力を受けても変形することがない。したがって、上板部65aと下板部65bとが、上下から第2端子161の上側接触突起164aと下側接触突起163aとによって挟持されても、前記先端嵌合凹部65dを含む第1接触先端部65は、変形することがない。
【0062】
さらに、前記先端嵌合凹部65d内の後端近傍には、上板部65a及び下板部65bとほぼ平行に延出する中板部65fが存在し、該中板部65fは、その下面が下板部65bの後端近傍の上面に当接又は近接して、下板部65bを上方から支えるようになっているので、下板部65bは、上方に向けて、より変形しにくくなっている。
【0063】
さらに、第1接触先端部65の端子ランス65eは、ハウジングランス15の当接部15cよりも前方に位置し、前記端子ランス65eの後端は、ハウジングランス15の当接部15cに対面し、該当接部15cに当接して係止された状態となる。したがって、電線91が引張られたり、電線91が煽られたりして、第1端子61に対して後方(X軸負方向)に引く力が作用した場合であっても、第1ハウジング11に取付けられた第1端子61が後方へ抜けてしまうことがない。
【0064】
さらに、下板部65bの後端部分を切起こして形成され、前記下板部65bの後端から斜め下後方に向けて延出する端子ランス65eの後端に、第1ハウジング11の本体部12から斜め上前方に向けて延出するハウジングランス15の傾斜腕部15bの先端である当接部15cが当接するので、端子ランス65eに対して、ハウジングランス15の傾斜腕部15bが直線に近い状態で当接して係止し、しかも、当接部15cの幅が端子ランス65eの幅と略同一となっているので、ハウジングランス15による端子ランス65eの係止が解除されにくくなっている。
【0065】
さらに、端子ランス65eは、下板部65bの後端部分を切起こして形成された部分であって、その幅が前記下板部65bと同一であり、かつ、該下板部65bと一体化されているので、強度が高くなっている。しかも、下板部65bの後端は、中板部65fによって上方から支えられているので、端子ランス65eは、下板部65bの後端と同様に、上方に変形しにくくなっている。そのため、ハウジングランス15の当接部15cが、端子ランス65eの上方への変位に伴って、相対的に下方に変位し、端子ランス65eの下面に沿って第1接触先端部65の先端側に相対的に移動してしまうことがない。
【0066】
さらに、端子ランス65eの上方に中板部65fが存在するので、ハウジングランス15の当接部15cが、相対的に上方に変位し、端子ランス65eの上面に沿って先端嵌合凹部65d内に進入してしまうことがない。例えば、図12に示される比較例のように、中板部65fが省略されている場合、電線91を斜め下後方に引くような力が作用すると、第1接触先端部65が第1ハウジング11に対して傾斜するので、ハウジングランス15の当接部15cが相対的に上方に変位し、端子ランス65eの上面に沿って先端嵌合凹部65d内に進入してしまうことがあり得る。しかし、本実施の形態においては、端子ランス65eの上方の中板部65fによって、ハウジングランス15の当接部15cの先端嵌合凹部65d内への進入が確実に防止される。
【0067】
このように、ハウジングランス15による端子ランス65eの係止が確実に維持されるので、第1端子61に対して後方に引く力が作用した場合であっても、第1端子61が端子収容孔13内から後方へ抜出ることが確実に防止される。また、ハウジングランス15の当接部15cが、端子ランス65eの上面又は下面に沿って第1接触先端部65の先端側に相対的に移動することがないので、ハウジングランス15に負荷がかかることがなく、ハウジングランス15が損傷を受けたり、破損したりしてしまうことがない。
【0068】
このように、本実施の形態において、第1端子61は、導電性の金属板から一体的に形成され、電線91の終端に接続される。そして、第1端子61は、電線91の芯線92に接続される導線接続部63と、導線接続部63の前端に接続され、第2端子161と接触する断面コ字状の第1接触先端部65とを有し、第1接触先端部65は、導線接続部63に接続された上板部65aと、上板部65aと平行な下板部65bと、上板部65a及び下板部65bの左右いずれか一方の側端縁を接続する側板部65cと、上板部65a、下板部65b及び側板部65cによって三方を画定された先端嵌合凹部65dと、下板部65bの後端から斜め下方に向けて延出する端子ランス65eと、端子ランス65eと上板部65aとの間において、第1接触先端部65の幅方向に延在する中板部65fとを含んでいる。
【0069】
また、第1コネクタ1は、第1端子61と、絶縁性材料から成り、第1端子61が取付けられる第1ハウジング11とを備える。そして、第1ハウジング11は、本体部12と、本体部12から延出する嵌合凸部14と、本体部12及び嵌合凸部14を通って延在し、第1端子61が挿入される端子収容孔13と、本体部12から延出するハウジングランス15とを有し、嵌合凸部14は、端子収容孔13内に挿入された第1端子61の第1接触先端部65の先端嵌合凹部65d内に収容される接触先端進入部14eを含み、ハウジングランス15は、本体部12に接続された基端部15aと、基端部15aから斜め上方に向けて延出する傾斜腕部15bと、傾斜腕部15bの先端の当接部15cであって、端子収容孔13内に挿入された第1端子61の端子ランス65eの後端と当接可能な当接部15cとを含んでいる。
【0070】
さらに、電線対基板コネクタは、第1コネクタ1と、絶縁性材料から成る第2ハウジング111と、導電性の金属板から一体的に形成され、第1コネクタ1の第1端子61と接触する第2端子161であって、第2ハウジング111に取付けられる第2端子161とを備え、基板191の表面に実装される第2コネクタ101であって、第1コネクタ1と嵌合する第2コネクタ101とから成る。そして、第2ハウジング111は、第1コネクタ1の第1ハウジング11の嵌合凸部14が挿入される嵌合凹部113を有し、第2端子161は、第2ハウジング111に固定される固定部165と、固定部165から延出し、第1コネクタ1の第1端子61の第1接触先端部65と接触する相手方接触部とを有し、相手方接触部は、第1接触先端部65の上板部65aの上面と接触する接触上腕部164と、第1接触先端部65の下板部65bの下面と接触する接触下腕部163とを含み、上板部65a及び下板部65bを挟持する。
【0071】
これにより、第1端子61及び第1ハウジング11を小型化しても、第1端子61の端子ランス65e及び第1ハウジング11のハウジングランス15の係止解除を防止し、第1端子61の抜けを確実に防止することができ、第1端子61及び第1ハウジング11の破損を確実に防止することができ、第1端子61を第1ハウジング11に確実に固定することができ、第1コネクタ1及び第2コネクタ101を低背化及び小型化することができ、構成が簡素で、部品点数が少なく、製造が容易で、コストが低く、信頼性の高い、第1端子61、第1コネクタ1及び電線対基板コネクタを提供することができる。
【0072】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示は、端子、電線コネクタ及び電線対基板コネクタに適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 第1コネクタ
11 第1ハウジング
11a、111a 上面
11b、111b 下面
11r、111r 後面
12、112、183、812 本体部
13 端子収容孔
13a 上方部
13b 下方部
13d ダミー開口
14、814 嵌合凸部
14a 嵌合天板部
14b 嵌合底板部
14c 横仕切板
14d 縦仕切板
14e 接触先端進入部
14s 中間スリット
15 ハウジングランス
15a 基端部
15b 傾斜腕部
15c 当接部
15d ランススリット
16a 上スリット
16b 下スリット
61 第1端子
62 第1固定部
62a 電線かしめ部
63 導線接続部
63a 芯線かしめ部
65 第1接触先端部
65a 上板部
65b 下板部
65c 側板部
65d 先端嵌合凹部
65e 端子ランス
65f 中板部
65g 樋部
91、891 電線
91a 絶縁性被覆
92 芯線
101 第2コネクタ
111 第2ハウジング
111f 前面
112d 補助金具固定孔
112f 突出部
113 嵌合凹部
114 前方突出部
114a 肩部
114c 外側膨出部
115a 上側端子収容溝
115b 下側端子収容溝
115c ガイド凸部
116 端子挿入口
116a 第2端子保持部
161 第2端子
162、182、962 テール部
163 接触下腕部
163a 下側接触突起
164 接触上腕部
164a 上側接触突起
165、184 固定部
165a 係止突起
181 補助金具
185 肩押え部
191 基板
192 接続パッド
801 電線コネクタ
811 電線ハウジング
813 端子挿入孔
815 ランス
861 電線端子
864 接触部
864a 上面部
864b 下面部
869 係止片
901 基板コネクタ
911 基板ハウジング
913 挿入空間
961 基板端子
963 支持部
964 接触腕部
図1
図2
図3
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