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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178900
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】クローラー拡張機構及び農作業機
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/10 20060101AFI20221125BHJP
   B62D 55/06 20060101ALI20221125BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20221125BHJP
   A01B 51/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B62D55/10 A
B62D55/06
B60P3/00 M
A01B51/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086012
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000217240
【氏名又は名称】田中工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸広
【テーマコード(参考)】
2B041
【Fターム(参考)】
2B041AA11
2B041AB05
2B041AC11
2B041HA25
(57)【要約】
【課題】 本体とクローラーの駆動輪との関係を変えずに駆動輪の高さを上昇させることに適したクローラー拡張機構等を提供することを目的とする。
【解決手段】 クローラー拡張部材71は、履帯が駆動輪25と複数の標準下転輪の周囲を移動するクローラーに対して、駆動輪25の位置を上昇させる。標準下転輪を支持する標準支持位置39、41、45において、標準下転輪を支持することに代えてクローラー拡張部材71を固定する。クローラー拡張部材71は、標準支持位置39、41、45よりも下に位置する拡張支持位置79,81、83、85、87において拡張下転輪93、94、95、96、97を支持する。履帯87は、駆動輪25と拡張下転輪93、94、95、96、97の周囲を移動する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履帯が駆動輪と複数の標準下転輪の周囲を移動するクローラーに対して、クローラー拡張部材を用いて前記駆動輪の位置を上昇させるクローラー拡張機構であって、
前記標準下転輪を支持する標準支持位置の少なくとも一部において、前記標準下転輪を支持することに代えて前記クローラー拡張部材を固定し、
前記クローラー拡張部材は、前記標準支持位置よりも下に位置する拡張支持位置において拡張下転輪を支持して、履帯が前記駆動輪と前記拡張下転輪の周囲を移動する、クローラー拡張機構。
【請求項2】
クローラーによって移動する農作業機であって、
本体と前記クローラーの駆動輪との位置関係を維持して請求項1記載のクローラー拡張機構によって前記駆動輪の位置を高くして車高を高くする、農作業機。
【請求項3】
農作物を前記本体に移動させるコンベア部を備え、
請求項1記載のクローラー拡張機構によって前記本体の車高を高くしたときに、前記コンベア部が農作物を拾い上げる高さを変更する、請求項2記載の農作業機。
【請求項4】
前記本体が備える選別作業部において、持ち上げられた農作物が水平循環移動し、
請求項1記載のクローラー拡張機構によって車高を均一に高くして、前記コンベア部の部品の組み合わせを変えて当該コンベア部が農作物を拾い上げる高さを変更する、請求項3記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラー拡張機構及び農作業機に関し、特に、履帯が駆動輪と複数の標準下転輪の周囲を移動するクローラーに対して、クローラー拡張部材を用いて前記駆動輪の位置を上昇させるクローラー拡張機構等に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、農作物を拾い上げる農作業機を提案している(特許文献1など参照)。
【0003】
特許文献2には、油圧シリンダを使用してセミクローラ型作業車両の姿勢制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5614741号公報
【特許文献2】特開2001-048066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農作業機は、通常、畑などの凹凸のある場所を移動するため、移動のときの安定性が求められる。本体の下には不必要なスペースを設けず、重心が低くなるように構成されている。
【0006】
しかしながら、例えば高畝栽培では、高畝を地平面から盛り上げて形成するため、特許文献1などの技術では高畝の上面が本体の下面に接触する可能性があった。
【0007】
例えば特許文献2のようにシリンダなどを使用した本体の姿勢制御と同様にして本体の位置を上昇させようとしても、複雑な仕組みが必要になってしまう。
【0008】
よって、本発明は、クローラーにおける駆動輪と本体との関係を変えずに駆動輪の高さを上昇させることに適したクローラー拡張機構等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の第1の側面は、履帯が駆動輪と複数の標準下転輪の周囲を移動するクローラーに対して、クローラー拡張部材を用いて前記駆動輪の位置を上昇させるクローラー拡張機構であって、前記標準下転輪を支持する標準支持位置の少なくとも一部において、前記標準下転輪を支持することに代えて前記クローラー拡張部材を固定し、前記クローラー拡張部材は、前記標準支持位置よりも下に位置する拡張支持位置において拡張下転輪を支持して、履帯が前記駆動輪と前記拡張下転輪の周囲を移動する。
【0010】
本願発明の第2の側面は、クローラーによって移動する農作業機であって、第1の側面のクローラー拡張機構によって本体と前記クローラーの駆動輪との位置関係を維持して前記駆動輪の位置を高くして車高を高くする。
【0011】
本願発明の第3の側面は、第2の側面の農作業機であって、農作物を前記本体に移動させるコンベア部を備え、第1の側面のクローラー拡張機構によって前記本体の車高を高くしたときに、前記コンベア部が農作物を拾い上げる高さを変更する。
【0012】
本願発明の第4の側面は、第3の側面の農作業機であって、前記本体が備える選別作業部において、持ち上げられた農作物が水平循環移動し、第1の側面のクローラー拡張機構によって車高を均一に高くして、前記コンベア部の部品の組み合わせを変えて当該コンベア部が農作物を拾い上げる高さを変更する。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の各側面によれば、標準構成でのクローラーの下にクローラー拡張部材を取り付けて、本体と駆動輪との関係を維持したまま駆動輪を高くすることにより本体の下面の高さを上昇させて、例えば高畝栽培の農作物などを集めるときに、本体の下面が高畝の上面よりも高い状態にして、本体が高畝の上面に接しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の実施の形態に係る農作業機の標準構成の一例を示す図である。
図2】本願発明における農作業機の本体の下のスペースを拡張することの概要を説明するための図である。
図3図1の標準構成のクローラー9を示す図である。
図4図3の標準構成を分解した各部を示す図である。
図5】クローラー拡張部材71の具体的な構成を説明するための図である。
図6】クローラー拡張部材71を標準転輪取付部材37に取り付けたときに使用する履帯89の形状を示す図である。
図7】クローラー拡張部材71を標準転輪取付部材37に取り付けた状態を説明するための図である。
図8】拾上コンベア部3の先端の位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、本願発明の実施の形態に係る農作業機の標準構成の一例を示す図である。図1を参照して農作業機1の構成を説明する。
【0017】
農作業機1は、地表の農作物を本体に移動させるコンベア部2と、選別作業部7を備える。農作業機1は、移動するためのクローラー9を備える。コンベア部2は、拾上コンベア部3と、持上コンベア部5を備える。
【0018】
拾上コンベア部3は、前先端部(図1(a)の左側の先端部)の一部を土中に埋入して、前先端部に設けられた掻込ベルトで掻き込まれた農作物を拾い上げる。
【0019】
持上コンベア部5は、拾上コンベア部3で拾い上げられた農作物を持ち上げる。
【0020】
選別作業部7は、持上コンベア部5が持ち上げた農作物を水平循環移動させる(図1(b)参照)。作業者は、水平循環移動する農作物の選別作業をする。
【0021】
農作業機1は、通常、畑などの凹凸のある場所を移動する。移動のときの安定性が求められるため、重心が低くなるように構成されており、通常、本体の下には余分なスペースが設けられていない。
【0022】
なお、農作業機1は、例えば、農作物収集部(カゴ、コンテナなど)を設けて、コンベア部2が移動させた農作物を農作物収集部に集めるものなどであってもよい。また、コンベア部2は、例えば1つのコンベアで構成しても、3つ以上のコンベアで構成してもよい。各コンベアは、部品の組み合わせを変えて、一部又は全部の傾斜を変更できるものでもよい。
【0023】
図2は、本願発明における農作業機の本体の下のスペースを拡張することの概要を説明するための図である。
【0024】
図2(a)は、標準の状態(スペースを拡張する前の状態)での本体の高さの一例を示す。通常畝12の地表面からの高さは15cm程度であり、クローラー151及び152は、本体11の下面が通常畝12の上面よりも高くする。クローラー151及び152は、本体11を低くして、移動の安定性を確保している。
【0025】
しかしながら、高畝栽培では、高畝を地平面から盛り上げて形成する。高畝は地平面からの高さが30cm程度あり、高畝の両側の地平面にクローラー151及び152を接地させた場合に、高畝の上面が本体11の下面に接触する可能性があった。
【0026】
本体11やクローラー151と152が高畝に接触すると、農作物を毀損したり、本体11が傾いて選別作業部7における水平循環移動が実現できなくなったりする。
【0027】
そこで、本願発明は、図2(b)のクローラー171及び172にあるようにクローラー151及び152の下部にクローラー拡張部材を取り付けて、本体11の下面の高さを上昇させて本体11の下面が高畝13よりも高い状態にすることを提案する。一般に、車高を上げると移動が不安定になる可能性がある。しかしながら、高畝13の両側の地平面は、通常、ほぼ水平である。そのため、高畝栽培の農作物を集める作業において本体11の下面を高くしても、移動は十分に安定したものとなる。
【0028】
図3図7を参照して、クローラー拡張機構について説明する。
【0029】
図3は、拡張する前の標準構成のクローラー9を示す。
【0030】
図3(a)を参照して、クローラー9は、履帯23を、駆動輪25と、標準下転輪27,29,31及び33と、遊動輪35の周囲に取り付けた機構である。
【0031】
駆動輪25は、基部21の後方に取り付けられる。駆動輪25は、動力軸とつながっているスプロケットであり、歯車状で履帯23と噛み合い、履帯23に動力を伝達して移動させる。
【0032】
標準下転輪27,29,31及び33は、標準構成において最も下に位置する複数の転輪であり、それぞれ、標準転輪取付部材37の標準支持位置39,41,43及び45に取り付けられる。標準転輪取付部材37は、基部21に取り付けられる。
【0033】
遊動輪35は、遊動輪取付部47に取り付けられる。遊動輪取付部47は、標準転輪取付部材37の前側に取り付けられる。遊動輪35は、駆動輪25とは反対側の端に位置し、位置を移動させて履帯23の張り具合を調整する。図3では、遊動輪35が前方に、駆動輪25は後方に位置する。遊動輪取付部47は、遊動輪35を前後方向に移動させて、履帯23の張り具合を調整する。
【0034】
標準下転輪27,29,31及び33並びに遊動輪35は、履帯23の移動に従って回転する。
【0035】
図3(b)は、下転輪551及び552を取り付けた個所の断面図である。標準転輪取付部材51において、下転輪551及び552は、転輪支持部材571及び572により回転可能に支持され、履帯53の移動に従って回転する。
【0036】
図4は、図3の標準構成を分解した図である。
【0037】
図4(a)は、履帯23の標準的な形状を示す。
【0038】
図4(b)は、履帯23、標準下転輪27,29,31及び33並びに遊動輪35を取り除いた状態を示し、基部21と駆動輪25と標準転輪取付部材37の構成を示す。標準下転輪27,29及び33並びに遊動輪35は、それぞれ、標準支持位置39,41及び45並びに47に取り付けられる。
【0039】
図4(c)は、標準転輪取付部材51における標準下転輪を取り付ける個所での断面図である。標準下転輪は、標準的には、標準支持位置591及び592に取り付けられる。
【0040】
図5は、クローラー拡張部材71の具体的な構成を説明するための図である。
【0041】
図5(a)及び(b)は、それぞれ、クローラー拡張部材71の平面図及び側面図を示す。図5(a)及び(b)を参照して、クローラー拡張部材71の構成を説明する。
【0042】
クローラー拡張部材71は、上側の外面の幅がやや狭く、下側の外面の幅がやや広い。クローラー拡張部材71の上側の外面の幅は、標準転輪取付部材37に取り付けた状態で標準転輪取付部材37の下側内面にほぼ接する。クローラー拡張部材71の下側の外面の幅は、標準転輪取付部材37の下側外面の幅とほぼ一致する。クローラー拡張部材71は、上側に固定位置73,75及び77を備え、下側に拡張支持位置79,81,85及び87を備える。上側前方部は部材がなく空間を設けることにより、遊動輪の前後への位置調整を阻害しないようにしている。
【0043】
図5(c)は、クローラー拡張部材61における転輪を取り付ける個所での断面図である。クローラー拡張部材61は、固定位置631及び632で標準転輪取付部材に固定される。
【0044】
図5(d)及び(e)は、クローラー拡張部材71を標準転輪取付部材37に取り付けたときに、遊動輪取付部47に代えて使用する部品である。図5(f)は、クローラー拡張部材71を標準転輪取付部材37に取り付けたときに、拡張支持位置83において拡張下転輪の一つを支持するために使用する部材である。
【0045】
図6は、クローラー拡張部材71を標準転輪取付部材37に取り付けたときに使用する履帯89の形状を示す。
【0046】
図7は、クローラー拡張部材71を標準転輪取付部材37に取り付けた状態を説明するための図である。
【0047】
図7(a)を参照して、標準転輪取付部材37の内側に、下からクローラー拡張部材71を挿入して、標準転輪取付部材37の標準支持位置39,41及び45において、それぞれ、クローラー拡張部材71の固定位置73,75及び77に固定する。これにより、クローラー拡張部材71を標準転輪取付部材37に固定することができる。
【0048】
駆動輪25は、図3と同様の状態で使用する。
【0049】
遊動輪35は、図3の遊動輪取付部47に代えて、図5(d)及び(e)の部品へと変更した遊動輪拡張取付部91により取り付けて使用する。
【0050】
拡張下転輪93、94、95、96及び97は、それぞれ、拡張支持位置79,81,83,85及び87に取り付けられる。ここで、転輪95は、図5(f)の部品を使用して取り付ける。
【0051】
図7(b)は、転輪を取り付ける個所での断面図である。符号は、図3(b)の標準の状態に対し、分解して図4(c)となり、これに図5(c)のクローラー拡張部材を取り付けたものとして付す。
【0052】
クローラー拡張部材61は、標準転輪取付部材51の下方から挿入される。標準転輪取付部材51の標準支持位置591及び592は、それぞれ、固定部材671及び672を利用して、クローラー拡張部材61の固定位置631及び632に固定される。
【0053】
下転輪551及び552は、クローラー拡張部材61の拡張支持位置において転輪支持部材571及び572により回転可能に支持され、履帯69の移動に従って回転する。
【0054】
図8は、コンベア部の部品の組み合わせの変更を説明するための図である。
【0055】
図3図7を用いて説明したようにクローラー拡張部材61を取り付けと、クローラーが下方向に拡張して、農作業機1の本体の位置は相対的に高くなる。前輪103によって拾上コンベア部の先端の位置が通常畝の高さ101に合ったままであれば、高畝の高さにある農作物を拾い上げることが難しくなる。
【0056】
そこで、図8(b)にあるように、拾上コンベア部の前輪アーム向きを変更して、前輪107により拾上コンベア部の先端を高くすることにより、高畝の高さ105にある農作物を容易に拾い上げることができる。前輪アーム向きの変更は、部品の取り付け方を変更することで実現することができる。また、拾上コンベア部3の角度を調整して、先端の位置を高くしたり低くしたりすることもできる。この位置の調整は、例えば次のようにして実現することができる。前輪アームが六角形などの多角形の固定部材で固定されているならば、固定する向きを変更して角度を調整することができる。また、固定するための部品を左右交換したり、裏返して固定したりして、新たな部品を追加せずに前輪アーム向きを調整することができる。なお、特別な機構を利用して調整してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 農作業機、2 コンベア部、3 拾上コンベア部、5 持上コンベア部、7 選別作業部、9 クローラー、11 本体、13 高畝、15 クローラー、17 クローラー、21 基部、23 履帯、25 駆動輪、27,29,31,33 標準下転輪、35 遊動輪、37 標準転輪取付部材、39,41,43,45 標準支持位置、47 遊動輪取付部、51 標準転輪取付部材、53 履帯、55 下転輪、57 転輪支持部材、59 標準支持位置、61 クローラー拡張部材、63 固定位置、71 クローラー拡張部材、73,75,77 固定位置、79,81,83,85、87 拡張支持位置、89 履帯、91 遊動輪拡張取付部、93,94,95,96,97 拡張下転輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8