(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178925
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】音響機器の板材構造
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20221125BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20221125BHJP
G11B 33/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H05K5/02 L
G10K11/16 160
G11B33/02 301A
H05K5/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086063
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 昇
(72)【発明者】
【氏名】高松 香代
【テーマコード(参考)】
4E360
5D061
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB09
4E360AB12
4E360AB52
4E360BA02
4E360BB22
4E360CA02
4E360EA12
4E360EA24
4E360ED02
4E360GA28
4E360GB11
5D061GG10
(57)【要約】
【課題】音響機器に用いられる板材の振動を効果的に抑制する技術を提供できる。
【解決手段】音響機器の板材構造が、前記音響機器に用いられる板材の少なくとも一部を構成する平板部と、前記平板部の一部であり、前記平板部の肉厚方向と直交する所定平面に対して前記肉厚方向に窪み、前記所定平面を平面視した場合の外形が矩形状に形成された第一絞り部と、前記平板部の一部であり、前記所定平面に対して前記肉厚方向に窪み、前記所定平面を平面視した場合の外形が矩形状に形成された第二絞り部と、を備え、前記第一絞り部と前記第二絞り部との間に所定の間隙を設けるように前記第一絞り部及び前記第二絞り部が配置され、前記平板部が振動し、前記平板部に定在波が形成される場合に、前記定在波の腹の部分に前記間隙がかかるように前記第一絞り部及び前記第二絞り部が配置された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響機器の板材構造であって、
前記音響機器に用いられる板材の少なくとも一部を構成する平板部と、
前記平板部の一部であり、前記平板部の肉厚方向と直交する所定平面に対して前記肉厚方向に窪み、前記所定平面を平面視した場合の外形が矩形状に形成された第一絞り部と、
前記平板部の一部であり、前記所定平面に対して前記肉厚方向に窪み、前記所定平面を平面視した場合の外形が矩形状に形成された第二絞り部と、
を備え、
前記第一絞り部と前記第二絞り部との間に所定の間隙を設けるように前記第一絞り部及び前記第二絞り部が配置され、
前記平板部が振動し、前記平板部に定在波が形成される場合に、前記定在波の腹の部分に前記間隙がかかるように前記第一絞り部及び前記第二絞り部が配置された音響機器の板材構造。
【請求項2】
前記第一絞り部と前記第二絞り部とが、前記間隙を挟んで所定方向に並べて配置され、
前記所定方向における前記平板部の中心から外れた位置に前記間隙が配置された請求項1に記載の音響機器の板材構造。
【請求項3】
前記第一絞り部と前記第二絞り部とが、前記間隙を挟んで所定方向に並べて配置され、
前記所定方向において、前記間隙の幅が、前記第一絞り部の幅及び前記第二絞り部の幅の何れよりも狭く形成された請求項1又は2に記載の音響機器の板材構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器の板材構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオアンプ、オーディオチューナ、映像の記録装置(レコーダ)及び再生装置(プレーヤ)等、音響信号を扱う音響機器において、音響信号を扱う回路に振動が伝わると、当該回路を構成する電子部品や配線材等の要素を振動させることになる。その結果、これら要素における接触抵抗や誘導電圧等が変化し、音響信号にノイズが加わることや、音響信号が歪むことがあり、音質低下の要因となる。
【0003】
特許文献1には、シャーシに環状のリブにより囲まれた少なくとも一の振動領域を設け、有害振動発生部品及び少なくとも一の脚を同一の振動領域内に取付けるとともに、防振対象部品を前記振動領域外に取付けることで、防振対象部品への振動の影響を抑えるようにした装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
音響機器における振動の要因としては、例えば、自己が備える電源トランス、電解コンデンサー、パワートランジスタ等が挙げられる。また、スピーカから出力される音の圧力(音圧)や、回転機構等からの振動が要因となることも考えられる。これらの振動は、それぞれ微小なものとなるように設計されるが、微小な振動であっても、これによって例えば装置の筐体が共振すると、振動が大きくなり音響信号を扱う回路に影響及ぼしてしまうことがある。このため、筐体の共振を抑制できる装置構成とすることが望まれる。
【0006】
筐体の共振を抑制する手段としては、部品点数を削減することにより、部品同士の共振を少なくすることが考えられる。しかしながら、必ずしも削減可能な部品を備えているとは限らず、適用できるケースが限られてしまうという問題があった。
【0007】
また、筐体の共振を抑制する手段としては、筐体の肉厚を厚くすることで剛性を上げることが考えられる。しかしながら、筐体の肉厚を厚くすると、装置重量が増加することになるため、車載装置など、軽量化が求められる装置には適用しにくいという問題があった。更に、筐体の肉厚を厚くすると、材料費の増加や加工コストの増加を招くため、容易に選択できる手段ではなかった。
【0008】
そこで、筐体の平板部に絞りを設けることで、重量の増加や材料費の増加を招くことなく筐体を部分的に補強することも考えられるが、単に一部を補強しただけでは、他の部分の振動が大きくなって、根本的な解決に至らないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、音響機器に用いられる板材の振動を効果的に抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る音響機器の板材構造は、
前記音響機器に用いられる板材の少なくとも一部を構成する平板部と、
前記平板部の一部であり、前記平板部の肉厚方向と直交する所定平面に対して前記肉厚方向に窪み、前記所定平面を平面視した場合の外形が矩形状に形成された第一絞り部と、
前記平板部の一部であり、前記所定平面に対して前記肉厚方向に窪み、前記所定平面を平面視した場合の外形が矩形状に形成された第二絞り部と、
を備え、
前記第一絞り部と前記第二絞り部との間に所定の間隙を設けるように前記第一絞り部及び前記第二絞り部が配置され、
前記平板部が振動し、前記平板部に定在波が形成される場合に、前記定在波の腹の部分に前記間隙がかかるように前記第一絞り部及び前記第二絞り部が配置された。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、音響機器に用いられる板材の振動を効果的に抑制する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る板材構造を適用した底板の平面図である。
【
図3】実施形態に係る板材構造を備えたオーディオアンプの模式断面図である。
【
図4】底板の振動状態を振動ピックアップで検出し、振動の大きさに応じて領域を区分して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る板材構造を適用した底板1の平面図、
図2は、
図1のA-A線における断面図、
図3は、本実施形態に係る板材構造を備えたオーディオアンプ100の模式断面図である。
図1~
図3において、X軸は幅方向、Y軸は高さ方向、Z軸は前後方向を示している。これらの方向は説明の便宜上示すものであり、本実施形態の板材構造は、図に示す方向に配置されることに限定されるものではない。
【0014】
底板1は、概ね平板状の板材であり、本実施形態に係る板材構造を適用した部材である。底板1は、オーディオアンプ100における筐体110の一部(底部)を構成する。
【0015】
底板1は、この底板1の少なくとも一部を構成し、X-Z面(水平面)と平行な平板部10と、平板部10の一部を絞り加工して設けられた第一絞り部11と、同様の絞り加工により形成された第二絞り部とを有している。また、本実施形態の底板1は、平板部10の左右方向(X方向)の端部を上方へ折り曲げた立設部14と、平板部10の一部を上方に向けて円錐台状に深絞り加工した基板支持部15を有している。なお、
図1~
図4に示す底板1は、一例であり、この構成に限定されるものではなく、平板部10と、この平板部10の一部に設けられた第一絞り部11及び第二絞り部12を有する構成であればよい。
【0016】
図3に示すように、底板1の基板支持部15の上面151上に回路基板20が載置され、ネジ等の締結部材で回路基板20が基板支持部15に対して締結される。回路基板20は、他の機器から入力された音響信号の伝達、変換、増幅、出力といった信号処理を行う回路21が設けられている。なお、回路21は、音響信号を扱う回路の一形態である。
【0017】
また、底板1上には、電源トランス、電解コンデンサー、スイッチング素子など、振動源となる回路30が設けられている。
【0018】
底板1の立設部14には、上部カバー体40がネジ等の締結部材で取り付けられる。上部カバー体40は、筐体110の側面を画する側板部41、及び左右の側板部41の上端に接続され、筐体110の上面を画する天板部42を有している。これに加えて、筐体110は、前面を画するフロントパネル(不図示)や、背面を画するリアパネル(不図示)を有する直方体状となっている。このように本実施形態のオーディオアンプ100は、筐体110内の空間に、信号処理を行う回路21や、振動源となる回路30等を収容している。
【0019】
第一絞り部11及び第二絞り部12は、
図2に示すように、平板部10の肉厚方向(Y方向)と直交する下面(所定平面)10Aに対して、肉厚方向に絞られた窪み(凹部)であり、
図1のように下面10Aを平面視した場合の外形が矩形状に形成されている。また、第一絞り部11と第二絞り部12は、所定の間隙13を挟んで所定方向(X方向)に並べて配置されている。
【0020】
第一絞り部11のZ方向において対向する辺(外縁)111,113、及び第二絞り部12のZ方向において対向する辺(外縁)121,123は、それぞれ平板部10の辺(外縁)101,103と平行に形成されている。また、第一絞り部11のX方向において対向する辺(外縁)112,114、及び第二絞り部12のX方向において対向する辺(外縁)122,124は、それぞれ平板部10の辺(外縁)102,104と平行に形成されている。即ち、第一絞り部11の間隙13側の辺112と、第二絞り部12の間隙13側の辺124は、互いに平行に形成されている。
【0021】
また、第一絞り部11と第二絞り部12は、上述のように間隙13を隔ててX方向に並べて配置されており、この並び方向(X方向)における平板部10の中央をZ方向に通る直線(中心線)10Xから外れた位置に間隙13が配置されている。更に、この並び方向(X方向)において、間隙13の幅W13は、第一絞り部11の幅W11及び第二絞り部12の幅W12の何れよりも狭く形成されている。また、第一絞り部11の幅W11は、第二絞り部12の幅W12と異なるように形成されている。
即ち、W13<W11・・・(式1)
W13<W12・・・(式2)
W11≠W12・・・(式3)となっている。
【0022】
<作用効果>
上述のように、本実施形態の底板1は、オーディオアンプ100の使用時に回路30等の振動源から生じた微小振動によって平板部10が振動し、平板部10に定在波が形成される場合に、この定在波の腹の部分に間隙13がかかるように第一絞り部11及び第二絞り部12が配置されている。
【0023】
図4は、底板1の振動状態を振動ピックアップで検出し、振動の大きさに応じて領域51~54を区分して示した図である。
図4において、領域51が最も振動の大きい領域であり、定在波の腹の部分である。領域51から領域54にかけて順に振動が小さくなり、領域54が最も振動が小さい領域である。また、領域53と領域54の境界付近が定在波の節の部分である。そして、本実施形態では、
図4に示すように、間隙13が領域51にかかるように第一絞り部11及び第二絞り部12が配置されている。特に、
図4の例では、第一絞り部11及び第二絞り部12の角が領域51内に位置するように配置されている。更に、第一絞り部11の辺113,114や、第二絞り部12の辺122,123が領域53と領域54の境界、即ち定在波の節に沿うように第一絞り部11及び第二絞り部12が配置されている。
【0024】
このように本実施形態では、振動が大きくなる定在波の腹の位置を第一絞り部11の辺
112と第二絞り部12の辺124で補強し、振動を抑えると共に、この部分を補強したことによる他の部分の振動を他の辺111,113,114,121~123で抑え、底板1の共振を効果的に抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態では、X方向における平板部10の中心20Xから外れた位置に間隙13を配置しており、間隙13を境に左右の振動状態を異ならせることにより、底板1の共振を抑制している。
【0026】
更に、本実施形態では、X方向において、間隙13の幅W13が、第一絞り部11の幅W11及び第二絞り部12の幅W12の何れよりも狭く形成されている。これにより、第一絞り部11付近の振動状態と第二絞り部12付近の振動状態を異ならせ、底板1の共振を抑制している。
【0027】
<その他>
前述の実施形態では、板材構造をオーディオアンプ100の底板に適用した例を示したが、これに限らず、側板や天板に適用してもよい。また、筐体に限らず、筐体内に設けられる仕切り板やシャーシ等を構成する板材に適用してもよい。更に、板材構造を適用する音響機器としては、オーディオアンプ100に限らず、オーディオチューナ、映像の記録装置(レコーダ)及び再生装置(プレーヤ)等、音響信号を扱う回路を備えた機器であればよい。
【符号の説明】
【0028】
1 底板
10 平板部
11 第一絞り部
12 第二絞り部
13 間隙
14 立設部
15 基板支持部
20 回路基板
20X 中心
40 上部カバー体
51~54 領域
100 オーディオアンプ