(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178932
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】湾曲曲げ加工品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47B 96/20 20060101AFI20221125BHJP
A47B 97/00 20060101ALI20221125BHJP
A47B 13/08 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
A47B96/20 G
A47B97/00 Z
A47B97/00 B
A47B13/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086071
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000140007
【氏名又は名称】株式会社稲葉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理
(72)【発明者】
【氏名】宮川 俊則
【テーマコード(参考)】
3B053
【Fターム(参考)】
3B053QA06
3B053QB01
(57)【要約】
【課題】材料の歩留まりがよく、優れた生産性を有する湾曲曲げ加工品を実現すること。
【解決手段】湾曲長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリット24を有し、各スリット24は、湾曲外縁Dに開口した外端26Aを有して湾曲径方向に延在し、湾曲長手方向に互いに対向する第1端面28及び第2端面30を含む第1スリット部26と、第1スリット部26の内端26Bにて第1端面28と連続する第3端面34及び第1スリット部26の内端26Bにて第2端面30に連続し、第3端面34に当接する部分を備えた第4端面36を含み、湾曲内縁E側に閉じられた終端32Dを有する第2スリット部32とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の曲率をもって湾曲する帯板を含む湾曲曲げ加工品であって、
前記帯板は湾曲長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリットを有し、
各スリットは、
湾曲外縁に開口した外端を有して湾曲径方向に延在し、湾曲長手方向に互いに対向する第1端面及び第2端面を含む第1スリット部と、
前記第1スリット部の内端にて前記第1端面と連続する第3端面及び前記第1スリット部の内端にて前記第2端面に連続し、前記第3端面に当接する部分を備えた第4端面を含み、湾曲内縁側に閉じられた終端を有する第2スリット部とを備えている湾曲曲げ加工品。
【請求項2】
所定の曲率をもって湾曲する帯板を含む湾曲曲げ加工品であって、
前記帯板は長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリットを有し、各スリットは湾曲外縁になる第1縁部に開口した外端を有し、長手方向に互い対向する第1端面及び第2端面を含む第1スリット部と、前記第1スリット部の内端にて前記第1端面と連続する第3端面及び前記第1スリット部の内端にて前記第2端面と連続し、前記第3端面に所定の間隔をおいて向かい合う第4端面を含み、湾曲内縁になる第2縁部の側に閉じられた終端を有する第2スリット部とを備えた直線状態と、
前記第1縁部が湾曲外縁になるように湾曲し、各スリットの前記第1端面と前記第2端面との間隔が前記直線状態のときに比して拡大し、前記第3端面と前記第4端面との一部の間隔が前記直線状態のときに比して縮小し、前記第3端面の前記一部と前記第4端面の前記一部とが当接した湾曲状態との間で変形可能な湾曲曲げ加工品。
【請求項3】
前記第3端面は前記第1端面と向かい合う方向を向いた反転面部を含み、前記第4端面は前記反転面部に対向する対向面部を含み、前記反転面部と前記対向面部とが互いに当接する請求項1又は2に記載の湾曲曲げ加工品。
【請求項4】
前記第1スリット部は湾曲径方向に直線状に延在し、前記第2スリット部は円弧部を含み、前記円弧部における前記第3端面及び前記第4端面に前記反転面部及び前記対向面部が設けられている請求項3に記載の湾曲曲げ加工品。
【請求項5】
前記スリットは前記第1スリット部及び前記第2スリット部により鉤形をなす部分を含む請求項3に記載の湾曲曲げ加工品。
【請求項6】
所定の曲率をもって湾曲する帯板を含む湾曲曲げ加工品であって、
前記帯板は、湾曲径方向に所定の幅を有し、且つ周方向に延在し、外周縁から径方向内向きに切り込まれ、長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリットにより、径方向外向きに延出する複数の歯状部を含み、
前記スリットの径方向内側に設けられたスリット延長部により、各歯状部の基部に、一方の側面から該歯状部内に延出するアンダカット凹部と、他方の側面から延出し、且つ対向して隣接する前記歯状部に設けられた前記アンダカット凹部内に突入する舌片部とが形成され、
前記アンダカット凹部を画定する前記歯状部の部分及び隣接する歯状部に設けられた前記舌片部に、それぞれ前記スリットの拡開方向について周方向に対向する衝当面が設けられている湾曲曲げ加工品。
【請求項7】
直線状の帯状板材を曲げ加工により湾曲させて湾曲加工品を製造する方法であって、
前記帯状板材は、長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリットを有し、第1縁部に開口した外端を有し、長手方向に互い対向する第1端面及び第2端面を含む第1スリット部と、前記第1スリット部の内端にて前記第1端面と連続する第3端面及び前記第1スリット部の内端にて前記第2端面と連続し、前記第3端面に所定の間隔をおいて向かい合う第4端面を含み、前記第1縁部とは反対の第2縁部の側に閉じられた終端を有する第2スリット部とを備えており、
前記帯状板材を、前記第1縁部が湾曲外縁になるように、各スリットの前記第1端面と前記第2端面との間隔を拡大させると共に前記第3端面と前記第4端面との一部の間隔を縮小させつつ曲げ加工を行い、前記第3端面の前記一部と前記第4端面の前記一部とが当接することにより曲げ加工を終了する湾曲曲げ加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲曲げ加工品及びその製造方法に関し、更に詳細には、スチール製家具等の湾曲部の形成のために用いられる湾曲曲げ加工品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テーブルや机等の天板には、その外縁に大きい半径の湾曲部を有するものが知られている(例えば、特許文献1、2、3)。このような大きい半径の湾曲部を有する天板は、多くの場合、パーティクルボード等の木質ボードを、湾曲部を含む所定形状に裁断することにより製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-111624号公報
【特許文献2】特開2004-166937号公報
【特許文献3】特開2021-27863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木質ボードを、湾曲部を含む所定形状に裁断して製造される天板は、切り落とし部分が生じることから、矩形の天板に比して材料の歩留まりが悪く、材料費が嵩む傾向があり、しかも生産性も悪い。
【0005】
そして、鋼板製の天板において、大きい半径の湾曲部を有する外縁を、裁断によらずに折曲加工により製造しようとすると、部品点数、工数が増え、生産性が悪いものになる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、材料の歩留まりがよく、優れた生産性を有する湾曲曲げ加工品を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態による湾曲曲げ加工品は、所定の曲率をもって湾曲する帯板(12)を含む湾曲曲げ加工品であって、前記帯板は湾曲長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリット(24)を有し、各スリットは、湾曲外縁(D)に開口した外端(26A)を有して湾曲径方向に延在し、湾曲長手方向に互いに対向する第1端面(28)及び第2端面(30)を含む第1スリット部(26)と、前記第1スリット部の内端(26B)にて前記第1端面と連続する第3端面(34)及び前記第1スリット部の内端(26B)にて前記第2端面に連続し、前記第3端面に当接する部分を備えた第4端面(36)を含み、湾曲内縁側に閉じられた終端(32D)を有する第2スリット部(32)とを備えている。
【0008】
この構成によれば、材料の歩留まりがよく、優れた生産性を有する湾曲曲げ加工品を実現することができる。
【0009】
本発明の一つの実施形態による湾曲曲げ加工品は、所定の曲率をもって湾曲する帯板(12)を含む湾曲曲げ加工品であって、前記帯板は長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリット(24)を有し、各スリットは湾曲外縁になる第1縁部(D)に開口した外端(26A)を有し、長手方向に互い対向する第1端面(28)及び第2端面(30)を含む第1スリット部(26)と、前記第1スリット部の内端(26B)にて前記第1端面と連続する第3端面(34)及び前記第1スリット部の内端(26B)にて前記第2端面と連続し、前記第3端面に所定の間隔をおいて向かい合う第4端面(36)を含み、湾曲内縁になる第2縁部(E)の側に閉じられた終端(32D)を有する第2スリット部(32)とを備えた直線状態と、前記第1縁部が湾曲外縁になるように湾曲し、各スリットの前記第1端面と前記第2端面との間隔が前記直線状態のときに比して拡大し、前記第3端面と前記第4端面との一部(a、b)の間隔が前記直線状態のときに比して縮小し、前記第3端面の前記一部と前記第4端面の前記一部とが当接した湾曲状態との間で変形可能である。
【0010】
この構成によれば、材料の歩留まりがよく、優れた生産性を有する湾曲曲げ加工品を実現することができる。
【0011】
上記湾曲曲げ加工品において、好ましくは、前記第3端面は前記第1端面と向かい合う方向を向いた反転面(a)を含み、前記第4端面は前記反転面部に対向する対向面部(b)を含み、前記反転面部と前記対向面部とが互いに当接する。
【0012】
この構成によれば、第3端面と第4端面との当接が確実に行われる。
【0013】
上記湾曲曲げ加工品において、好ましくは、前記第1スリット部は湾曲径方向に直線状に延在し、前記第2スリット部は円弧部(32B)を含み、前記円弧部における前記第3端面及び前記第4端面に前記反転面部及び前記対向面部が設けられている。
【0014】
この構成によれば、第3端面と第4端面との当接が簡素な構造をもって確実に行われる。
【0015】
上記湾曲曲げ加工品において、好ましくは、前記スリットは前記第1スリット部及び前記第2スリット部により鉤形をなす部分を含む。
【0016】
この構成によれば、第3端面と第4端面との当接が簡素な構造をもって確実に行われる。
【0017】
本発明の一つの実施形態による湾曲曲げ加工品は、所定の曲率をもって湾曲する帯板(12)を含む湾曲曲げ加工品であって、前記帯板は、湾曲径方向に所定の幅を有し、且つ周方向に延在し、外周縁から径方向内向きに切り込まれ、長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリット(24)により、径方向外向きに延出する複数の歯状部(25)を含み、前記スリットの径方向内側に設けられたスリット延長部(32)により、各歯状部の基部に、一方の側面から該歯状部内に延出するアンダカット凹部(27)と、他方の側面から延出し、且つ対向して隣接する前記歯状部に設けられた前記アンダカット凹部内に突入する舌片部(29)とが形成され、前記アンダカット凹部を画定する前記歯状部の部分及び隣接する前記歯状部に設けられた前記舌片部に、それぞれ前記スリットの拡開方向について周方向に対向する衝当面(a、b)が設けられている。
【0018】
この構成によれば、材料の歩留まりがよく、優れた生産性を有する湾曲曲げ加工品を実現することができる。
【0019】
本発明の一つの実施形態による湾曲曲げ加工品の製造方法は、直線状の帯状板材(40)を曲げ加工により湾曲させて湾曲加工品を製造する方法であって、前記帯状板材は、長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数のスリット(24)を有し、第1縁部(D)に開口した外端(26A)を有し、長手方向に互い対向する第1端面(28)及び第2端面(30)を含む第1スリット部(26)と、前記第1スリット部の内端(26B)にて前記第1端面と連続する第3端面(34)及び前記第1スリット部の内端(26B)にて前記第2端面と連続し、前記第3端面に所定の間隔をおいて向かい合う第4端面(36)を含み、前記第1縁部とは反対の第2縁部の側に閉じられた終端(32D)を有する第2スリット部(32)とを備えており、前記帯状板材を、前記第1縁部が湾曲外縁(D)になるように、各スリットの前記第1端面と前記第2端面との間隔を拡大させると共に前記第3端面と前記第4端面との一部の間隔を縮小させつつ曲げ加工を行い、前記第3端面の前記一部と前記第4端面の前記一部とが当接することにより曲げ加工を終了する。
【0020】
この製造方法によれば、優れた材料経済性及び生産性を有して湾曲曲げ加工品を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による湾曲曲げ加工品によれば、材料の歩留まりがよく、優れた生産性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(A)は本発明による湾曲曲げ加工品の一つの実施形態を示す平面図、(B)は端面図
【
図2】本実施形態による湾曲曲げ加工品の要部の拡大斜視図
【
図3】(A)は本実施形態による湾曲曲げ加工品の直線状態の要部の拡大平面図、(B)は同湾曲曲げ加工品の湾曲状態の要部の拡大平面図
【
図4】(A)は本実施形態による湾曲曲げ加工品の部分拡大図を含む展開図、(B)は本実施形態による湾曲曲げ加工品の直線状態の平面図
【
図5】本実施形態による湾曲曲げ加工品の天板に対する適用例を示す下面図
【
図6】(A)は他の実施形態による湾曲曲げ加工品の直線状態の要部の拡大平面図、(B)は同湾曲曲げ加工品の湾曲状態の要部の拡大平面図
【
図7】(A)は他の実施形態による湾曲曲げ加工品の直線状態の要部の拡大平面図、(B)は同湾曲曲げ加工品の湾曲状態の要部の拡大平面図
【
図8】(A)は他の実施形態による湾曲曲げ加工品の直線状態の要部の拡大平面図、(B)は同湾曲曲げ加工品の湾曲状態の要部の拡大平面図
【
図9】本実施形態による湾曲曲げ加工品の天板に対する他の適用例を示す下面図
【
図10】(A)は他の実施形態による湾曲曲げ加工品の直線状態の要部の拡大平面図、(B)は同湾曲曲げ加工品の湾曲状態の要部の拡大平面図
【
図11】本実施形態による湾曲曲げ加工品の天板に対する他の適用例を示す下面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明による湾曲曲げ加工品を、天板外縁用湾曲部材に適用した一つの実施形態を、
図1~
図5を参照して説明する。
【0024】
図1は天板外縁用湾曲部材(湾曲曲げ加工品)10を示している。天板外縁用湾曲部材(以下、湾曲部材と略称する)10は、鋼板製で、帯体をなす底片部(帯状板材)12と、底片部12の一方の縁部(湾曲内縁)から立ち上がった縦片部14と、縦片部14の上縁から底片部12と対向すべく折曲された上片部16と、上片部16の先端縁から下向きに折曲された垂下片部18とを有し、略90度の角度による円弧状湾曲部20を含む。円弧状湾曲部20においては、各片部が湾曲帯状をなす。底片部12は上片部16に比して湾曲径方向寸法が大きい。縦片部14は、その上下方向の寸法をもって天板100(
図5参照)の上下方向の厚さを決める。
【0025】
上片部16及び垂下片部18は円弧状湾曲部20に所定間隔をおいて形成された複数の上側スリット22を有する。各上側スリット22は、
図2に示されているように、上片部16及び垂下片部18に亘って連続し、湾曲外方に向けて開口した外端22Aを有して湾曲径方向に直線状に延在している。各上側スリット22は外端22Aとの反対の側に閉じられた終端(内端)22Bを有する。終端22Bは縦片部14と上片部16との境界部に当該両部分に跨って延在している。
【0026】
底片部12は円弧状湾曲部20に湾曲長手方向に所定間隔をおいて形成された複数の下側スリット24を有する。下側スリット24は、本実施形態の主要部をなす構成要素であり、
図2及び
図3に示されているように、湾曲外縁(第1縁部)Dに開口した外端26Aを有して湾曲径方向に直線状に延在し、互いに対向する第1端面28及び第2端面30を含む第1スリット部26と、第1スリット部26の内端26Bにて第1端面28と連続する第3端面34及び第1スリット部26の内端26Bにて第2端面30に連続する第4端面36を含む第2スリット部32とを備えている。
【0027】
第2スリット部32は、第1スリット部26の内端26Bに連通する一端から湾曲長手方向に延在する短寸の直線部32Aと、直線部32Aの終端に連通する一端から略180度の角度をもって湾曲外縁に向けて膨らんだ形状をもって延在する略180度の角度(展開角)の円弧部32Bと、円弧部32Bの終端に連通する一端から縦片部14に向けて傾斜して直線状に延在する傾斜直線部32Cとを連続して有し、傾斜直線部32Cの他端が閉じられた終端32Dになっている。つまり、第2スリット部32は湾曲内縁になる第2縁部Eの側に閉じられた終端32Dを有する。終端32Dは略円形に拡張され、底片部12と縦片部14との境界部(折曲線A)に当該両部分に跨って延在している。第3端面34は円弧部32Bに第1端面28と向かい合う方向を向いた反転面部(第3端面34の一部)aを含み、第4端面36は反転面部aに対向する対向面部(第4端面36の一部)bを含む。
【0028】
換言すると、底片部12は、湾曲径方向に所定の幅を有し、且つ周方向に延在し、外周縁から径方向内向きに切り込まれ、長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数の第1スリット部26により、径方向外向きに延出する複数の歯状部25を含む。更に、底片部12は、第1スリット部26の径方向内側に連続して設けられたスリット延長部をなす第2スリット部32により、各歯状部25の基部に、一方の側面から歯状部25内に延出する略半円形のアンダカット凹部27と、他方の側面から延出し、且つ対向して隣接する歯状部25に設けられたアンダカット凹部27内に突入する略半円形の舌片部29とを有する。
【0029】
アンダカット凹部27を画定する歯状部25の部分及び隣接する歯状部25に設けられた舌片部29には、それぞれ第1スリット部26の拡開方向について周方向に対向する衝当面をなす反転面部a及び対向面部bが設けられている。
【0030】
湾曲部材10は、
図4(A)に示されているように、複数の上側スリット22及び下側スリット24を打抜きプレス成形されている直線状の帯状板材40を、互いに平行に延在する3個の折曲線A、B、Cに沿って折曲プレス成形することにより、
図2及び
図4(B)に示されているように、底片部12、縦片部14、上片部16及び垂下片部18を含む溝形断面形状に形成される。
【0031】
帯状板材40に対して第1縁部Dが湾曲外縁Dになるように、曲げ加工を行うことにより、縦片部14が湾曲変形することで、
図1に示されているような湾曲部材10が製造される。この曲げ加工において、各上側スリット22及び各下側スリット24の第1スリット部26が拡張される。
【0032】
この曲げ加工において、下側スリット24に注目すれば、
図3(B)に示されているように、第1端面28と第2端面30との間隔が台形状に拡大すると共に第3端面34の反転面部aと第4端面36の対向面部bとの間隔が縮小し、所定の曲げ加工(設計上の曲げ加工)が行われると、第3端面34の反転面部aと第4端面36の対向面部bとが互いに当接し、それ以上の曲げ加工が行われることが阻止される。換言すると、第3端面34の反転面部aと第4端面36の対向面部bとが互いに当接するまで曲げ加工が行われ、当接時点で曲げ加工が終了されることにより、所定の湾曲角度を有する湾曲部材10が一義的に精度よく製造される。
【0033】
要約すると、湾曲部材10は、長手方向に所定間隔をおいて設けられた複数の下側スリット24を有し、各下側スリット24は湾曲外縁になる第1縁部Dに開口した外端26Aを有し、長手方向に互い対向する第1端面28及び第2端面30を含む第1スリット部26と、第1スリット部26の内端26Bにて第1端面28と連続する第3端面34及び第1スリット部26の内端26Bにて第2端面30と連続し、第3端面34に所定の間隔をおいて向かい合う第4端面36を含み、湾曲内縁になる第2縁部Eの側に閉じられた終端を有する第2スリット部32とを備えた直線状態と、第1縁部Dが湾曲外縁になるように湾曲し、各下側スリット24の第1端面28と第2端面30との間隔が前記直線状態のときに比して拡大し、第3端面34の一部(反転面部a)と第4端面36の一部(対向面部b)との間隔が前記直線状態のときに比して縮小し、第3端面34の一部(反転面部a)と第4端面36の一部(対向面部b)とが当接した湾曲状態との間で変形可能である。
【0034】
湾曲部材10の湾曲角度は、上側スリット22及び下側スリット24の展開範囲、個数及び前記直線状態での第3端面34の反転面部aと第4端面36の対向面部bとの間隔により決まる。第3端面34の反転面部aと第4端面36の対向面部bとの間隔は、
図4(A)に拡大して示されているように、複数の下側スリット24のうち、両端にあるものは、突部により、それ以外のものもの略1/2になっている。これは、両端にある下側スリット24は、直線部と接続され、当該部分の曲げ角度が、他の部分の曲げ角度の略1/2になることに起因する。
【0035】
各下側スリット24の湾曲内縁Eに向けて延出する傾斜直線部32Cは、上述の曲げ加工に必要な荷重を低減することに寄与する。各下側スリット24の略円形に拡張された終端32Dは、上述の曲げ加工における応力集中を緩和する。各上側スリット22の終端22Dが縦片部14と上片部16との境界部に該両部分に跨って延在していること、及び下側スリット24の終端32Dが底片部12と縦片部14との境界部に当該両部分に跨って延在してことは、折曲線A、Bに沿った折曲プレス成形に必要な荷重を低減することに寄与する。
【0036】
図5は湾曲部材10を天板付き家具の天板100に適用した実施形態を示している。天板100は、鋼板製で、平面視でL形をしており、符号Fによって示されている一つの湾曲凹部の形成に湾曲部材10が用いられている。湾曲部材10は、湾曲凹部Fの両側に直線状に延在する部分を含む。縦片部14は天板100の厚さ相当の外縁面をなす。
【0037】
天板100の5箇所の凸湾曲部は、各々鋼板の折曲成形品104により構成されている。天板100の直線状の各外縁面106は天板100の外縁を折曲することにより形成されている。外縁面106は縦片部14と同様に天板100の厚さ相当の外縁面なし、縦片部14及び外縁面106の外側面には樹脂製の化粧帯体(不図示)が貼着される。尚、天板100の下面(裏面)には各部に溝形断面の複数の補強梁部材108が接合されている。
【0038】
図6は湾曲部材10の他の実施形態を示している。尚、
図6において、
図3に対応する部分は、
図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0039】
本実施形態では、第2スリット部32の円弧部32Bが360度に近い角度をもって展開され、第1端面28から隣接する歯状部25に向けて延出した延出部31の先端の湾曲外方側に略円形の舌片部29が形成されている。
【0040】
本実施形態でも、湾曲部材10の湾曲によって当接する反転面部a及び対向面部bが舌片部29及び歯状部25に設けられていることにより、上述の実施形態と同等の作用、効果が得られる。
【0041】
図7は湾曲部材10の他の実施形態を示している。尚、
図7において、
図3に対応する部分は、
図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0042】
本実施形態では、第1端面28から隣接する歯状部25に向けて延出した延出部31の先端の湾曲外方側及び湾曲内方側に各々略半円形の舌片部29が形成されている。
【0043】
本実施形態では、湾曲外方側及び湾曲内方側の各舌片部29と歯状部25とに反転面部a及び対向面部bが舌片部29及び歯状部25に設けられていることにより、反転面部aと対向面部bとの当接による荷重が延出部31の両側に作用し、延出部31に作用する曲げモーメントが相殺され、延出部31に曲げモーメントが作用することがない。これにより、本実施形態では、上述の実施形態と同等の作用、効果が得られたうえで、耐久性が向上する効果が更に得られる。
【0044】
図8は湾曲部材10の他の実施形態を示している。尚、
図8において、
図3に対応する部分は、
図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、下側スリット24は、
図8に示されているように、第1スリット部26及び第2スリット部32により鉤形をなしている。本実施形態でも湾曲部材10の湾曲によって当接する反転面部a及び対向面部bが設けられていることにより、上述の実施形態と同等の作用、効果が得られる。
【0046】
図9は湾曲部材10を天板付き家具の天板100に適用した他の実施形態を示している。尚、
図9において、
図5に対応する部分は、
図5に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0047】
本実施形態では、
図9に示されているように、天板100の1箇所の湾曲凸部Gの形成に、湾曲部材50が用いられている。湾曲部材50は、鋼板のプレス成形品であり、
図10(A)に示されているように、湾曲前の直線状態では、湾曲内方に向けて拡がった台形の複数のスリット52が長手方向に所定の間隔をおいて形成されている。
【0048】
湾曲部材50は、
図10(B)に示されているように、所定の湾曲状態で、スリット52の向かい合う端面54、56が互いに当接することにより、それ以上に湾曲することを阻止される。
【0049】
これにより、各スリット52の端面54、56同士が互いに当接するまで曲げ加工が行われ、当接時点で曲げ加工が終了されることによって、所定の湾曲角度を有する湾曲部材50が一義的に精度よく製造される。
【0050】
図11は湾曲部材50を天板付き家具の天板100に適用した他の実施形態を示している。尚、
図11において、
図9に対応する部分は、
図9に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0051】
本実施形態では平面視で矩形の天板100の4箇所の湾曲凸部Gの形成に湾曲部材50が用いられている。
【0052】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 :湾曲部材
12 :底片部(帯体)
14 :縦片部
16 :上片部
18 :垂下片部
20 :円弧状湾曲部
22 :上側スリット
22A :外端
22B :終端
24 :下側スリット(スリット)
25 :歯状部
26 :第1スリット部(スリット)
26A :外端
26B :内端
27 :アンダカット凹部
28 :第1端面
28D :終端
29 :舌片部
30 :第2端面
31 :延出部31
32 :第2スリット部(スリット延長部)
32A :直線部
32B :円弧部
32C :傾斜直線部
32D :終端
34 :第3端面
36 :第4端面
40 :帯状部材
50 :湾曲部材
52 :スリット
54 :端面
56 :端面
100 :天板
104 :折曲成形品
106 :縁部
108 :補強梁部材
A :折曲線
B :折曲線
C :折曲線
D :湾曲外縁(第1縁部)
E :湾曲内縁(第2縁部)
F :湾曲凹部
G :湾曲凸部
a :反転面部(衝当面)
b :対向面部(衝当面)