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特開2022-178960電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびその製造方法
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  • 特開-電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178960
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/045 20060101AFI20221125BHJP
   H01G 9/055 20060101ALI20221125BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20221125BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01G9/045
H01G9/055
H01G9/00 290D
H01G9/048 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086121
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】521407924
【氏名又は名称】堺アルミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】西方 丈智
(72)【発明者】
【氏名】大籏 英樹
(57)【要約】
【課題】エッチングピットが結合せず拡面率を向上できる電解コンデンサ電極用アルミニウム材の提供を目的とする。
【解決手段】電解コンデンサ電極用アルミニウム材1Aは、アルミニウム基材の表面に形成された酸化皮膜にエッチングピットの起点となる多数の凹み12が形成され、前記多数の凹み12が、平行四辺形を単位格子として周期的に配置され、かつ前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、アルミニウム基材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となる位置に配置されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材にエッチングピットの起点となる多数の凹みが形成され、
前記多数の凹みが、平行四辺形を単位格子として周期的に配置され、かつ前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、アルミニウム基材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となる位置に配置されていることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
【請求項2】
前記単位格子を形成する平行四辺形が、正方形、長方形、菱形、隣接する2辺の長さが異なる平行四辺形のうちのいずれかである請求項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
【請求項3】
表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウム素材に、多数の突起が平行四辺形を単位格子として周期的に配置された母型を押し付けて、前記突起に対応する凹みを形成する凹み形成工程において、
前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、前記アルミニウム素材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となるように母型をアルミニウム素材に押し付けることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
【請求項4】
前記凹み形成工程後にエッチング処理を施す請求項3に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
【請求項5】
平行四辺形を単位格子として周期的に配置され、かつ前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、アルミニウム基材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となる位置にピットが配置されていることを特徴とする電解コンデンサ電極用のエッチング処理されたアルミニウム材。
【請求項6】
請求項1の電解コンデンサ電極用アルミニウム材をエッチング処理を施して得られる、
平行四辺形を単位格子として周期的に配置され、かつ前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、アルミニウム基材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となる位置にピットが配置されていることを特徴とする電解コンデンサ電極用のエッチング処理されたアルミニウム材。
【請求項7】
請求項6のエッチング処理されたアルミニウム材を電極として備えた電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ電極用アルミニウム材に関する。
【0002】
なお、この明細書および特許請求の範囲において「アルミニウム」の語はその合金を含む意味で用いられる。
【背景技術】
【0003】
電解コンデンサ用電極材料として一般に用いられるアルミニウム箔は、静電容量を大きくする目的で、電気化学的あるいは化学的エッチング処理を施して、アルミニウム箔の表面積を拡大して実効面積を拡大する工程が行われる。表面積を拡大するには、エッチングが開始される起点を等間隔に配置し、より多くのエッチングピットの起点を作る必要がある。そのために従来はアルミニウムに含まれる不純物の分布によって制御する方法が取られている。
【0004】
しかしながら、この方法においては、不純物分布の制御に限界があり、エッチングピットの起点を一点一点精密に制御することは不可能である。すなわちエッチングによる実効面積の拡大において、従来方法では限界に達している。
【0005】
エッチングピットの起点形成方法として、アルミニウムに含まれる不純物分布の制御に代わり、アルミニウム箔に微細な凹部また凸部を形成し、これらをエッチングピットの起点とする方法が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0006】
特許文献1には、アルミニウム箔に突起を有する母型を押し付けることにより、所望するパターンで窪みを設ける技術が記載されている。
【0007】
特許文献2には、表面粗度(算術平均粗さ:Ra)が0.30未満の平滑な電極箔用アルミニウム表面に突起を有するモールドを押し付けることにより、アルミニウム酸化皮膜を突き破る凹部もしくは、圧痕転写による凸部といった圧痕を所望のパターンで形成し、これをエッチングの開始点とすることにより開始点位置の制御を行い、高い拡面効率を有する電極箔を作製する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-74162号公報
【特許文献2】特開2007-042789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、母型を押し付けた後に形成される凹部と凹部との間隔が短すぎると、隣接するエッチングピットが結合してしまい、有効面積が小さくなる問題がある。逆に、エッチングピットの結合を防ぐために凹部と凹部との間隔を広めに取ると、エッチングピット数が減少し、十分な有効面積を確保できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、エッチング処理においてエッチングピットが結合せず拡面率を向上できる電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびその関連技術の提供を目的とする。
【0011】
即ち、本発明は下記[1]~[7]に記載の構成を有する。
【0012】
[1]表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材にエッチングピットの起点となる多数の凹みが形成され、
前記多数の凹みが、平行四辺形を単位格子として周期的に配置され、かつ前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、アルミニウム基材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となる位置に配置されていることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
【0013】
[2]前記単位格子を形成する平行四辺形が、正方形、長方形、菱形、隣接する2辺の長さが異なる平行四辺形のうちのいずれかである前項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
【0014】
[3]表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウム素材に、多数の突起が平行四辺形を単位格子として周期的に配置された母型を押し付けて、前記突起に対応する凹みを形成する凹み形成工程において、
前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、前記アルミニウム素材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となるように母型をアルミニウム素材に押し付けることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
【0015】
[4]前記凹み形成工程後にエッチング処理を施す前項3に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
【0016】
[5]平行四辺形を単位格子として周期的に配置され、かつ前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、アルミニウム基材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となる位置にピットが配置されていることを特徴とする電解コンデンサ電極用のエッチング処理されたアルミニウム材。
【0017】
[6]請求項1の電解コンデンサ電極用アルミニウム材をエッチング処理を施して得られる、
平行四辺形を単位格子として周期的に配置され、かつ前記単位格子の1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線と、アルミニウム基材の結晶粒の(100)面とのなす角度が0°~22.5°となる位置にピットが配置されていることを特徴とする電解コンデンサ電極用のエッチング処理されたアルミニウム材。
【0018】
[7]前項6のエッチング処理されたアルミニウム材を電極として備えた電解コンデンサ。
【発明の効果】
【0019】
上記[1]に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材は、表面の酸化皮膜に、多数の凹みが構成する単位格子1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線が、アルミニウム基材の結晶粒の(100)面に対して0°~22.5°の角度で配置されている。このため、エッチング処理を施すと、前記凹みがエッチングピットの起点となって結晶粒の(100)面に対して平行もしくは垂直に浸食されていくので、隣りのエッチングピットと結合し難く深いエッチングピットが形成される。このため、アルミニウム材の拡面率が高くなり、ひいては大きい静電容量が得られる。
【0020】
上記[2]に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材によれば、多数の凹みが構成する単位格子が方形、長方形、菱形、隣接する2辺の長さが異なる平行四辺形であるアルミニウム材において上記効果が得られる。
【0021】
上記[3]に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法によれば、エッチング処理において隣りのエッチングピットと結合しにくいエッチングピットの起点となる凹みを有するアルミニウム材が得られる。
【0022】
上記[4]に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法によれば、エッチング処理において隣りのエッチングピットと結合せず拡面率の高いアルミニウムが得られる。
【0023】
上記[5][6]に記載の電解コンデンサ電極用のエッチング処理されたアルミニウム材は、アルミニウム材の拡面率が高く、大きい静電容量が得られる。
【0024】
上記[7]に記載の電解コンデンサは、電極であるアルミニウム材の拡面率が高く、大きい静電容量が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の断面図である。
図2図1の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の平面図の一例である。
図3図1の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の平面図の他の例である。
図4図1の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の平面図のさらに他の例である。
図5図1の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の平面図のさらに他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[電解コンデンサ電極用アルミニウム材]
本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材は表面にエッチングピットの起点となる多数の凹みを有しており、アルミニウム材の平面視における凹みの位置に特徴を有する。
【0027】
図1に本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の一実施形態の模式的断面図を示し、図2~5に凹み位置の4つのパターンを示す平面図を示す。
【0028】
電解コンデンサ電極用アルミニウム材1A、1B、1C、1Dはアルミニウム基材10の表面に多数の凹み12を有し、かつ酸化皮膜11を有している。前記多数の凹み12がアルミニウム基材10の結晶粒の(100)面に関連づけて配置されている。
【0029】
前記凹み12は平行四辺形を単位格子として周期的に配置されている。平行四辺形として、正方形、長方形、菱形、隣接する2辺の長さが異なる平行四辺形を例示できる。本発明においては、前記単位格子の少なくとも1辺または単位格子の2本の対角線のうちの短い対角線が結晶粒の(100)面と平行であるか略平行であることが条件である。具体的には、単位格子の少なくとも1辺または短い対角線と(100)面とのなす角度が0°(平行)~22.5°であることが必要であり、特に好ましい角度は0°~10°である。アルミニウム基材11はエッチングによって結晶粒の(100)面に対して平行もしくは垂直に浸食が進行する性質があり、形成されたエッチングピットを上面からみると正方形または長方形になる。このため、凹み12を上述した位置に配置することによって、隣のエッチングピットとは結合し難く、深いエッチングピットが形成され、その結果拡面率が高くなり、ひいては大きい静電容量が得られる。
【0030】
図2の電解コンデンサ電極用アルミニウム材1Aは、凹み12が構成する単位格子が菱形であり、菱形の4辺および2本の対角線のうちの短い対角線が(100)面に平行である。また、単位格子が菱形の場合は、菱形の1辺または短い対角線と(100)面とのなす角度が0°(平行)~15°の範囲が好ましい。
【0031】
図3の電解コンデンサ電極用アルミニウム材1Bは、凹み12が構成する単位格子が正方形であり、正方形の全ての辺が(100)面に平行である。また、単位格子が正方形の場合は、正方形の1辺または対角線と(100)面とのなす角度が0°(平行)~22.5°の範囲が好ましい。
【0032】
図4の電解コンデンサ電極用アルミニウム材1Cは、凹み12が構成する単位格子が長方形であり、長方形の全ての辺が(100)面に平行である。また、単位格子が長方形の場合は、長方形の1辺または短い対角線と(100)面とのなす角度が0°(平行)~22.5°の範囲が好ましい。
【0033】
図5の電解コンデンサ電極用アルミニウム材1Dは、凹み12が構成する単位格子が隣接する辺の長さが異なり長方形ではない平行四辺形であり、かかる平行四辺形の全ての辺および短い方の対角線が(100)面に平行である。また、単位格子がかかる平行四辺形の場合は、平行四辺形の1辺または短い対角線と(100)面とのなす角度が0°(平行)~22.5°の範囲が好ましい。
【0034】
また、前記凹み12の開口部の寸法は、0.01μm~10μmの範囲が好ましく、特に0.1μm~1.0μmの範囲が好ましい。前記凹み12の深さは0.1μm~1.0μmの範囲が好ましく、特に0.2μm~0.6μmの範囲が好ましい。前記凹み12の深さは酸化皮膜11の厚みよりも深い必要がある。また、前記単位格子の1辺の長さ、即ち凹み12間の距離は1μm~10μmの範囲が好ましく、特に2μm~5μmの範囲が好ましい。
【0035】
本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材において、アルミニウム基材10を構成するアルミニウムの化学組成は限定されず、電解コンデンサ電極材料として使用されているものを適宜使用することができる。具体的には、不純物量を規制して過溶解によるエッチング特性の低下を防ぐために、アルミニウム純度が99.9%以上であることが好ましく、特に99.99%以上が好ましい。アルミニウム材の立方体方位占有率、あるいは(100)の占有率は90%以上が好ましく、95%以上が一層好ましく、特に99.9%以上が最も好ましい。また、電解コンデンサ電極用アルミニウム材の厚さも限定されず、箔と称される200μm以下のアルミニウム材の他、200μmを超えるアルミニウム板も含まれる。また、前記酸化皮膜11の厚さは0.001μm~0.05μmの範囲が好ましく、特に0.002μm~0.02μmの範囲が好ましい。
[電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法]
上述した電解コンデンサ電極用アルミニウム材1A、1B、1C、1Dは、例えば以下の方法によって作製することができる。
【0036】
所定の化学組成のアルミニウム鋳塊に対して均質化処理を施し、その後、熱間圧延、冷間圧延、最終焼鈍を順次行って酸化皮膜を形成して、アルミニウム基材10の表面に酸化皮膜11を有するアルミニウム素材を作製する。最終焼鈍後に化学研磨や電解研磨を施して表面平滑化を行う場合は、その後に大気中にさらして自然酸化皮膜を形成してアルミニウム素材とする。前記アルミニウム素材の表面粗さ(算術平均粗さ)は0.1μm未満が好ましく、特に0.05μm未満が好ましい。
【0037】
次に、前記アルミニウム素材の酸化皮膜に凹み12を形成して、電解コンデンサ電極用アルミニウム材1A、1B、1C、1Dを作製する。
【0038】
前記凹み12の形成方法として、多数の突起を有する母型を前記アルミニウム素材に押し付けて突起に対応する圧痕として凹みを形成する方法を例示することができる。前記母型において、多数の突起を上述した凹みの配置に対応させることにより、所望位置に凹みを形成することができる。
【0039】
母型の作製は、所望のパターニング加工が可能な微細形状が実現できる製法であればよいが、好ましくは金型加工やリソグラフィー技術を用いて作製する。材質はアルミニウム素材より硬質であれば、電気導電性の有無に関わらず何でもよい。突起の形状は円錐、角錐でも良く、突起の外面形状が凹みの内面形状となる。
【0040】
前記母型をアルミニウム素材に押し付ける際は、突起とアルミニウム素材が垂直に触れるようにする。アルミニウム素材の表面粗さに応じてプレス圧力を強くする必要がある。すなわちアルミニウム素材が平らであればプレス圧を低くしても、均一な凹みを形成させることができる。また、プレス方法は平面でもロールでもどちらでも構わない。
【0041】
作製した電解コンデンサ電極用アルミニウム材1A、1B、1C、1Dは、その後拡面率向上のためのエッチングが施される。凹み12がエッチングピットの開始点となり、結晶粒の(100)面に対して平行もしくは垂直に浸食が進行し、隣接するエッチングピットと結合することなくエッチングピットが形成される。エッチング条件は限定されず、電気化学エッチングの処理液として、塩酸水溶液、あるいは塩酸水溶液に硫酸、硝酸、リン酸を添加した液を例示できる。処理液温度は15℃~80℃が好ましい。また、アルミニウム材の対極にはアルミニウム材よりも十分に面積の大きい白金電極またはカーボン電極を用い、好ましい電流値は100mA/cm~3000mA/cmあり、好ましい電流印加時間は0.01s~30.0sである。また、静電容量を決定するエッチングピットの形態の評価は、ピット径が0.1μm~2μm、ピット長が0.1μm~2μmの立方体状に成長した初期ピット形成時点で可能である。この初期ピットは電流値が100mA/cm~3000mA/cm、電流印加時間0.01s~30.0sの間に形成される。この初期ピット形成時点で隣のピットと結合している場合、その後のトンネルピット成長過程において結合された状態が継続し、最終的なエッチングピット形成後の表面積低下につながる。逆に初期ピット形成時点で隣同士のピットが結合せず独立していることが、最終的なトンネルピット形成後の表面積拡大に繋がり、ひいては大きい静電容量につながる。以降説明する実施例、比較例ではこの初期ピット形成時点での評価を行っている。
【実施例0042】
アルミニウム素材に突起付母型を用いて凹みを形成し、電解コンデンサ電極用アルミニウム材を作製した。
【0043】
前記アルミニウム素材は、Si:22ppm、Fe:16ppm、Cu:59ppmを含み、Al純度99.99%のアルミニウム合金からなる厚みが130μmの箔であり、表面に厚さ0.003μmの酸化皮膜が形成されている。また、前記アルミニウム素材の表面の算術平均粗さRaは0.05μmである。
【0044】
母型は、ニッケルからなり、表面に高さが1.8μmの多数の角錐状突起が、2.1μm間隔で形成されている。前記多数の角錐状突起の正方形を単位格子として配置されている。
(実施例1)
前記アルミニウム素材に前記母型を面圧20MPaで押し付けて、角錐状突起に対応する凹みを形成した。このとき、前記母型は角錐状突起の正方形単位格子の1辺がアルミニウム素材の(100)面に対して平行、即ち正方形の1辺と(100)面のなす角度が0°になるように、アルミニウム素材と母型の角度を調整した。図3に、作製した電解コンデンサ電極用アルミニウム材の凹み12の配置を示す。
(比較例1)
アルミニウム素材と母型の角度を、角錐状突起の正方形単位格子の1辺と(100)面のなす角度が45°になるように調整したことを除いて実施例1と同じ方法で凹みを形成した。
【0045】
作製した2種類の電解コンデンサ電極用アルミニウム材に対し、6mol/Lの液温35℃の塩酸水溶液中に浸漬させて、800mA/cmの電流で0.5秒間の条件で電解エッチング処理を行い、純水で洗浄して乾燥させた。
【0046】
エッチング処理を施した電解コンデンサ電極用アルミニウム材をSEMで観察し、初期エッチングピットの発生状態を観察し、結合した初期エッチングピットの割合を調べた。その結果、実施例1は初期エッチングピットの結合はなかったが、比較例1は43%の初期エッチングピットが隣接する初期エッチングピットと結合していた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材はエッチングによって高い拡面率が得られ、電解コンデンサの静電容量の向上に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1A、1B、1C、1D…電解コンデンサ電極用アルミニウム材
10…アルミニウム基材
11…酸化皮膜
12…凹み
図1
図2
図3
図4
図5