(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178961
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法及び電解コンデンサ用アルミニウム電極材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20221125BHJP
H01G 9/055 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01G9/00 290D
H01G9/055
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086122
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】521407924
【氏名又は名称】堺アルミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】西方 丈智
(72)【発明者】
【氏名】大籏 英樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 克俊
(72)【発明者】
【氏名】矢部 正二
(57)【要約】
【課題】アルミニウム基材にエッチングピットの起点となる多数の凹部が形成されたアルミニウム材であって、エッチング特性に優れ拡面率を向上でき、ひいては大きな静電容量を得ることができる電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法等を提供する。
【解決手段】表面に酸化皮膜を有するアルミニウム基材に、多数の突起を有する母型を押し付けることによって、前記アルミニウム基材の表面にエッチングピットの形成予定部位である多数の凹部を形成する工程と、前記凹部の形成後、大気雰囲気の温度(K)をa、湿度(%)をb、時間(hour)をcとしたとき、a×c+a×b×c=d×10
4におけるdの値が0~202を満たす条件でエッチングを開始する工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化皮膜を有するアルミニウム基材に、多数の突起を有する母型を押し付けることによって、前記アルミニウム基材の表面にエッチングピットの形成予定部位である多数の凹部を形成する工程と、
前記凹部の形成後、大気雰囲気の温度(K)をa、湿度(%)をb、時間(hour)をcとしたとき、a×c+a×b×c=d×104におけるdの値が0~202を満たす条件でエッチングを開始する工程と、
を備えたことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
【請求項2】
前記dの値が0~100である請求項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法によって製造されたアルミニウム材に、電解エッチングまたは化学エッチングを実施することを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム電極材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法及び電解コンデンサ用アルミニウム電極材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサ用電極材料として一般に用いられるアルミニウム箔は、静電容量を大きくする目的で、電気化学的あるいは化学的エッチング処理を施して、アルミニウム箔の表面積を拡大する工程が行われる。表面積を拡大するには、エッチングが開始される起点を等間隔に配置し、より多くのエッチングピットの起点を作る必要がある。そのために従来はアルミニウムに含まれる不純物の分布によって制御する方法が取られている。しかしながら、この方法においては、不純物分布の制御に限界があり、エッチングの起点を一点一点精密に制御することは不可能である。すなわちエッチングによる表面積の拡大において、従来方法では限界に達している。
【0003】
そのため、突起を有する母型を押し付けることにより、アルミニウム箔表面または酸化皮膜を有するアルミニウム箔表面に、所望とするパターンで窪みを形成し、これらの窪みをエッチングの開始点とすることにより開始点位置の制御を行い、高い拡面効率を有する電極箔を作製する技術が提案されている(特許文献1参照)。
また、表面粗度(算術平均粗さ:Ra)が0.30未満の平滑な電極箔用アルミニウム材の表面に突起を有するモールドを押し付けることにより、アルミニウム酸化皮膜を突き破る凹部もしくは、圧痕転写による凸部といった圧痕を所望のパターンで形成し、これをエッチングの開始点とすることにより開始点位置の制御を行い、高い拡面効率を有する電極箔を作製する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-74162号公報
【特許文献2】特開2007-042789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アルミニウム基材平面と母型の押し付け等によって、エッチングピットの開始点となる多数の凹部を形成しても、期待した静電容量を得ることができない場合があることが、発明者らの研究により判明した。
【0006】
この原因について、発明者らは更に研究を重ねた結果、アルミニウム基材の表面に多数の凹部を形成した後、エッチングに供されるまでにアルミニウム材が曝される雰囲気中の温度、湿度及び時間がエッチングピットの発生と進行に大きく影響していることを見いだした。
【0007】
この発明は、このような知見に基づいてなされたものであって、アルミニウム基材にエッチングピットの起点となる多数の凹部が形成されたアルミニウム材であって、エッチング特性に優れ拡面率を向上でき、ひいては大きな静電容量を得ることができる電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法及び電解コンデンサ用アルミニウム電極材の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は以下の手段によって解決される。
(1)表面に酸化皮膜を有するアルミニウム基材に、多数の突起を有する母型を押し付けることによって、前記アルミニウム基材の表面にエッチングピットの形成予定部位である多数の凹部を形成する工程と、
前記凹部の形成後、大気雰囲気の温度(K)をa、湿度(%)をb、時間(hour)をcとしたとき、a×c+a×b×c=d×104におけるdの値が0~202を満たす条件でエッチングを開始する工程と、
を備えたことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(2)前記dの値が0~100である前項(1)に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(3)前項(1)または(2)に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法によって製造されたアルミニウム材に、電解エッチングまたは化学エッチングを実施することを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム電極材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法は、表面に酸化皮膜を有するアルミニウム基材に、多数の突起を有する母型を押し付けることによって、前記アルミニウム基材の表面にエッチングピットの形成予定部位である多数の凹部を形成した後、大気雰囲気の温度(K)をa、湿度(%)をb、時間(hour)をcとしたとき、a×c+a×b×c=d×104におけるdの値が0~202を満たす条件でエッチングを開始するから、凹部の形成後エッチング開始までに凹部内面の酸化皮膜の成長を抑制できる。このため、エッチング時には凹部内面の酸化皮膜の部分がエッチングピットの起点となってエッチングが進行し、ひいては多数の凹部の位置にエッチングピットが確実に形成されることになる。その結果、各面率を向上でき、大きな静電容量を実現可能な電解コンデンサ電極用アルミニウム材を製造することができる。
【0010】
この発明に係る電解コンデンサ用アルミニウム電極材の製造方法によれば、大きな静電容量を有する電解コンデンサ用電極材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】アルミニウム機材の表面に多数の凹部を形成した状態を示す断面図である。
【
図2】多数の凹部を形成するための母型をアルミニウム基材に押しつける前の状態を示す断面図である。
【
図3】同じく、母型をアルミニウム基材に押しつけた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[電解コンデンサ電極用アルミニウム材]
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法によって製造されたアルミニウム材は、表面に酸化皮膜を有するアルミニウム基材に、多数の突起を有する母型を押し付けることによって、表面にエッチングピットの形成予定部位である多数の凹部が形成されている。
【0013】
図1に、アルミニウム材の一例を模式的断面図にて示す。
【0014】
アルミニウム材は、酸化皮膜2を有するアルミニウム基材1の表面に、多数の凹部3が形成されてなる。
【0015】
図1では、各凹部3の形状が錐体であり、各凹部3のアルミニウム基材の平面と平行な断面(以下、横断面ともいう)の形状は多角形もしくは円もしくは楕円のいずれであっても良い。これらの凹部3の内面は、全体が酸化皮膜4で被覆されている。
【0016】
酸化皮膜4の表面には凹凸やボイド、亀裂が多数あり、また酸化皮膜4の平均的な厚みは酸化皮膜2よりも薄い。酸化皮膜2の平均的な厚みは1nm~50nmの範囲が好ましく、特に2nm~20nmの範囲が好ましい。酸化皮膜4の平均的な厚さは0.5nm~40nmの範囲が好ましく、特に0.5nm~10nmが好ましい。
【0017】
また、凹部3の開口部の最大長さは0.01μm~10μmの範囲が好ましく、特に0.1μm~2.0μmの範囲が好ましい。
図1の例では凹部3の形状が錐体である場合を示したが、凹部3の形状は錐体の他、柱体、球体、楕円球体等のいずれでもよい。凹部3の深さは0.1μm~1.0μmの範囲が好ましく、特に0.2μm~0.6μmの範囲が好ましい。
【0018】
凹部3同士の間隔は1μm~10μmが好ましい。凹部3同士の間隔とは、最も近い凹部との間の最小離間距離をいう。凹部3同士の間隔が1μm未満では、エッチング時に凹部3に形成されるエッチングピットが隣同士で互いに連通して、エッチングピットによる拡面効果が阻害される恐れがある。凹部3同士の間隔が10μmを超えると、エッチングピットの数が減少し、やはり大きな拡面効果を得ることができない恐れがある。より好ましい凹部3同士の間隔は2μm~5μmである。
【0019】
本実施形態に係る製造方法によって製造される電解コンデンサ電極用アルミニウム材において、アルミニウム基材1を構成するアルミニウムの化学組成は限定されず、電解コンデンサ電極材料として使用されているものを適宜使用することができる。具体的には、不純物量を規制して過溶解によるエッチング特性の低下を防ぐために、アルミニウム純度が99.9%以上であることが好ましく、特に99.99%以上が好ましい。アルミニウム材の立方体方位占有率、あるいは(100)の占有率は90%以上が好ましく、95%以上が一層好ましく、特に99.9%以上が最も好ましい。また、電解コンデンサ電極用アルミニウム材の厚さも限定されず、箔と称される200μm以下のアルミニウム材の他、200μmを超えるアルミニウム板も含まれる。前記アルミニウム基材1の表面粗さ(算術平均粗さ)は0.1μm未満が好ましく、特に0.05μm未満が好ましい。
[電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法]
上述した電解コンデンサ電極用アルミニウム材は、例えば以下の方法によって作製することができる。
【0020】
所定の化学組成のアルミニウム鋳塊に対して均質化処理を施し、その後、熱間圧延、冷間圧延、最終焼鈍を順次行って酸化皮膜を形成して、表面に酸化皮膜2を有するアルミニウム基材を作製する。最終焼鈍後に化学研磨や電解研磨を施して表面平滑化を行う場合は、その後に大気中に曝し自然酸化皮膜を生成してアルミニウム基材とする。酸化皮膜2は自然酸化皮膜ではなく、化成処理により生成した化成酸化皮膜であっても良い。
【0021】
次に、前記アルミニウム基材1に多数の凹部3を形成する。凹部3の形成方法として、限定はされないが、
図2に示すように多数の突起101を有する母型100を、
図3に示すようにアルミニウム基材1に押し付けて、突起101に対応する圧痕として凹部3を形成する方法を例示することができる。母型100において、多数の突起101を上述した凹部3の配置に対応させることにより、アルミニウム基材1の所望位置に所望のパターンで凹部3を形成することができる。
【0022】
母型100の作製は、所望のパターニング加工が可能な微細形状が実現できる製法であればよいが、好ましくは金型加工やリソグラフィー技術を用いて作製する。材質はアルミニウム基材1より硬質であれば、電気導電性の有無に関わらず何でもよい。突起101の形状は錐体、柱体、球体、楕円球体のいずれでも良く、突起の外面形状が凹部3の内面形状となる。
【0023】
母型100をアルミニウム基材1に押し付ける際は、突起101とアルミニウム基材1が垂直に触れるようにする。アルミニウム基材1の表面粗さに応じてプレス圧力を強くする必要がある。すなわちアルミニウム基材1が平坦であればプレス圧を低くしても、均一な凹部3を形成させることができる。プレス方法は平面でもロールでもどちらでも構わない。
【0024】
上記のような手法で母型100を押し込むことによって凹部3を形成する過程で、凹部3の内面に応力がかかり酸化皮膜4に凹凸やボイド、亀裂等が生じる。さらに深く母型100を押し込むと、角度が大きくなるほど酸化皮膜4が引き伸ばされやすくなり平均的な厚みが減少する。
【0025】
こうして多数の凹部3を形成されたアルミニウム材は、エッチングに供されるまで大気中にて保管または移動等の取り扱いが行われる。保管中または移動等の取り扱い中に、凹部3の表面の酸化皮膜4は大気に曝露されることによって、酸素や水とアルミニウムが反応し、非晶質の酸化アルミニウムや、酸化アルミニウムの水和物が形成される。特に凹凸やボイド、亀裂部分でそれらが形成されやすく、それによって酸化皮膜4の平均的な厚みが増す。酸化皮膜2も同様に厚みが増すが、凹部3の形成前に大気に十分に長い時間曝されていることによって酸化皮膜4に比べて十分に厚くなっているため、成長速度は酸化皮膜4に比べて非常に遅く、酸化皮膜2の成長は無視してもよい。
本願発明者は、酸化皮膜4の成長量は大気中の温度、湿度、曝露した時間に依存することを発見し、それらがエッチング後の拡面効率、ひいては静電容量に影響することを見出した。
酸化皮膜4はアルミニウムイオンや酸素イオンが酸化皮膜中を拡散する過程を経て成長する。その拡散量は温度と時間に依存し、温度が高いほど、時間が長いほど拡散量が多くなる。また、酸化アルミニウムの水和物を形成する際は水分量に依存する。水分量が多いほどすなわち湿度が高いほど成長量が多くなる。すなわち大気中の温度、湿度、曝露した時間のそれぞれの値が大きいほど酸化皮膜4の成長量が大きくなり、エッチングピットの起点とならず、エッチング時の選択性が失われる。
【0026】
具体的には、大気中の雰囲気において温度(K)をa、湿度(%)をb、時間(hour)をcとしたとき、a×c+a×b×c=d×104におけるdの値が0~202であることが必要である。a×c+a×b×c=d×104におけるdの値が202を超えると、酸化皮膜4の成長量が大きくなり、エッチング時の選択性が失われる。dの値は特に0~100であることが望ましい。ここで大気中とは対流圏中の空気の組成である窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素などを含む1気圧の状態をいう。
【0027】
さらに室内環境における母型100の押し付けのためのプレス設備から、エッチング設備の稼働環境を考慮し、各数値は以下の範囲であることが好ましい。
[1]a:288~353K
[2]c:0.0008~ hour (3sec~)
温度aはエッチング液の制御可能な温度範囲にあることが望ましい。また時間cはプレス設備からエッチング設備までの搬送方法を考慮すると、3秒以内に搬送することは実際上難しい。
アルミニウム基材1の温度が雰囲気の温度aより低いときは空気中の水分がアルミニウム基材に結露し、酸化皮膜の成長量を増加させるため、アルミニウム基材1は常に雰囲気と同温以上であることが望ましい。
【0028】
作製した電解コンデンサ電極用アルミニウム材は、その後拡面率向上のためのエッチングが施される。凹部3の内面の酸化皮膜4における凹凸やボイド、亀裂では、エッチング時に反応性が高いため優先的にピットが形成される。そのため凹部3がエッチングピットの開始点となり、結晶粒の(100)面に対して平行もしくは垂直に浸食が進行しトンネルピットが形成される。規則的に配列した所望の凹部3に対してエッチングピットを発生させることで、エッチングピットの結合やピットの空隙領域による有効面積の低下を減らすことが可能となる。すなわち所望の凹部3におけるピット発生率の向上が有効面積を向上させることにつながる。
所望の位置の凹部3に対するピット発生率は、トンネルピット形成前の初期ピット形成時点で判断が可能である。ここでいう初期ピットとはピット径と深さが0.1μm~2μmのファセット型のピットである。
エッチング条件は限定されず、電気化学エッチングでも良いし化学エッチングでも良い。一例として初期ピット形成の条件を示す。電気化学エッチングの処理液として、塩酸水溶液、あるいは塩酸水溶液に硫酸、硝酸、リン酸を添加した液を例示できる。処理液温度は15℃ ~80℃が好ましい。また、アルミニウム材の対極にはアルミニウム材よりも十分に面積の大きい白金電極またはカーボン電極を用い、好ましい電流値は100mA/cm2~3000mA/cm2あり、好ましい電流印加時間は0.01s~30.0sである。
【実施例0029】
以下に本発明の実施例と比較例を示す。
【0030】
アルミニウム基材1に突起付母型100を用いて凹部3を形成し、電解コンデンサ電極用アルミニウム材を作製した。
【0031】
アルミニウム基材1は、(組成)Si : 22 ppm, Fe : 16 ppm, Cu : 59 ppm, Al 純度99.99%からなる厚みが120μmのアルミニウム箔であり、表面に厚さ0.003μmの酸化皮膜2が形成されている。また、アルミニウム基材1の表面の算術平均粗さRaは0.05である。
【0032】
母型100は、ニッケルからなり、表面に高さが1.8μmの多数の角錐状突起101が、2.1μm間隔で形成されているものを使用した。また、多数の角錐状突起101は、それらで構成される正方形を単位格子として配置されている。
(実施例1)
温度293K、湿度40%の大気雰囲気下で、前記母型100を前記アルミニウム基材1に面圧30MPaで押し付けて、アルミニウム基材1の表面に角錐状突起101に対応する凹部3を形成した。
(実施例2)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度293K、湿度0.8%の大気雰囲気中に24時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(実施例3)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度293K、湿度40%の大気雰囲気中に72時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(実施例4)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度293K、湿度40%の大気雰囲気中に168時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(実施例5)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度293K、湿度5%の大気雰囲気中に960時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(実施例6)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度308K、湿度85%の大気雰囲気中に24時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(実施例7)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度333K、湿度85%の大気雰囲気中に24時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(比較例1)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度308、湿度85%の大気雰囲気中に168時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(比較例2)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度333K、湿度85%の大気雰囲気中に80時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(比較例3)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度293K、湿度40%の大気雰囲気中に960時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(比較例4)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度293K、湿度5%の大気雰囲気中に4800時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
(比較例5)
実施例1のあとに、アルミニウム基材1を温度293K、湿度0.8%の大気雰囲気中に4800時間静置させて、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とした。
以上により得られた10種類の電解コンデンサ電極用アルミニウム材に対し、6mol/Lの液温35℃の塩酸水溶液中に浸漬させて、800mA/cm2の電流で0.5秒間の条件で電解エッチング処理を行ったのち、純水で洗浄して乾燥させた。
【0033】
エッチング処理を施した各電解コンデンサ電極用アルミニウム材をSEMで観察し、エッチングピットの発生状態を観察し、凹部3に対するピット発生率を確認した。それらの結果と、各温度、湿度、時間及びa×c+a×b×c=d×104におけるdの値を表1に示す。
【0034】
なお、実施例1においては、凹部3の形成後、直ちに(実際には0.00083hour後)エッチングを開始したため、dはゼロとした。
【0035】
【0036】
表1に示すように、実施例1~7に係る電解コンデンサ電極用アルミニウム材では、凹部3から発生したエッチングピットが75%以上の割合であった。このため、拡面率が大きく高い静電容量が得られることが予想されるものであった。
【0037】
これに対し、a×c+a×b×c=d×104におけるdの値が本発明範囲を逸脱する比較例1~5では、凹部3から発生したエッチングピットが60%以下と少なく、実施例に較べて拡面率が小さく静電容量に劣ることが予想されるものであった。
本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法によって製造されたアルミニウム材は、エッチングによって高い拡面率が得られ、電極材として用いられることで電解コンデンサの静電容量の向上に有用である。