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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178978
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ステータおよび回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086145
(22)【出願日】2021-05-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】591201952
【氏名又は名称】株式会社一宮電機
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】木梨 好一
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604CC16
5H604DA21
5H604DB26
(57)【要約】
【課題】スペースファクタの低下を招かない。
【解決手段】ステータ33や回転電機10では、各スロット45内で周方向105に隣り合う2個のコイル39の間で、絶縁シート47Bが拡がる。絶縁シート47Bは、軸方向102において端面442A,442Bの間、径方向103において内向面433Bおよび傾斜面445Bの間において、対応するティース44に巻かれたコイル39の第3向きA31における端を覆う。スロット45内には、隣のコイル39の包む絶縁シート47Aが存在するが、絶縁シート47Aは、対応するティース44に巻かれたコイル39の第4向きA32における端を覆わない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークおよびティースを有する複数の分割コアが、当該各ヨークを環状となるように連結されており、当該各ティースに2枚の絶縁シートを介在させてコイルがそれぞれ巻回されたステータであって、
上記2枚の絶縁シートは、第1絶縁シートおよび第2絶縁シートの少なくとも一方を含み、
上記第1絶縁シートは、上記ティースの側面と当該ティースに巻回された上記コイルとの間に位置して当該コイルを包んでおり、
上記第2絶縁シートは、上記ティースの側面と当該ティースに巻回された上記コイルとの間に位置しており、且つ当該コイルにおいて隣接する上記コイル側の一部分を覆わず、
上記第1絶縁シートと上記第2絶縁シートとは、隣接する上記コイルにおいて隣り合って位置するステータ。
【請求項2】
上記第1絶縁シートは、上記コイルを単一層で包む請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
上記第1絶縁シートは、上記ティースの先端側において開口する請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
上記ティースの両側面には、上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの一方が共に位置する請求項1から3のいずれかに記載のステータ。
【請求項5】
上記ティースにおいて、一方の側面には上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの一方が位置しており、他方の側面には上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの他方が位置する請求項1から3のいずれかに記載のステータ。
【請求項6】
上記ティースにおいて上記ステータの軸方向を向く第1端面を覆う第1絶縁体と、
上記ティースにおいて上記ステータの軸方向を向く第2端面を覆う第2絶縁体と、をさらに具備しており、
上記コイルは、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体を介して上記ティースに巻回される請求項1から5のいずれかに記載のステータ。
【請求項7】
上記第1絶縁体は上記ティースの両側面の一部を覆い、
上記第2絶縁体は上記ティースの両側面の一部を覆い、
上記2枚の絶縁シートの一方において上記軸方向の両端部は、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体と上記ティースの側面との間に位置しており、
上記2枚の絶縁シートの他方において上記軸方向の両端部は、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体と上記ティースの側面との間に位置する請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のステータと、
上記ステータに挿通されており、マグネットを有するロータと、を具備する回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよび、これを用いた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインナーロータ型のブラシレスモータ(以下、単にモータとも称す)において、複数の分割コアがロータの回転軸周りに円筒状に配列され、ステータをなしている。各分割コアは、軸方向から見て略T字形状である。各分割コアにおいて、コアバックからはティースがロータに向けて延びている。各ティースには、例えば樹脂製のインシュレータが取り付けられる。各ティースには、インシュレータを介してコイルが巻かれている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5866026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータを小型化するには、複数のコイルを回転軸の周方向において高密度にレイアウトし、スロットに占めるコイル導体の占有率(以下、本明細書において「スペースファクタ」とも称す)を向上させる必要がある。ここで、スロットは、主にコアバックおよびティースにより区画され、コイル導体が巻かれるスペースである。
【0005】
背景技術では、図7に示すように、各コイル701において、コアバック702とティース703の歯先704との間を通過する部分が絶縁シート705により包まれ、各絶縁シート705の両端705A,705Bが2層に重ね合わせられて接着されている。従って、背景技術では、同一スロット706において周方向707に隣り合う2つのコイル701間には、2枚分の絶縁シート705の両端705A,705Bが介在し、合計4層分の絶縁シート705が存在する部分が生じる。その結果、スペースファクタが低下してしまい、モータの小型化が難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータ等の回転電機を小型化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、ヨークおよびティースを有する複数の分割コアが、当該各ヨークを環状となるように連結されており、当該各ティースに2枚の絶縁シートを介在させてコイルがそれぞれ巻回されたステータである。上記2枚の絶縁シートは、第1絶縁シートおよび第2絶縁シートの少なくとも一方を含んでいる。上記第1絶縁シートは、上記ティースの側面と当該ティースに巻回された上記コイルとの間に位置して当該コイルを包んでいる。上記第2絶縁シートは、上記ティースの側面と当該ティースに巻回された上記コイルとの間に位置しており、且つ当該コイルにおいて隣接する上記コイル側の一部分を覆わない。上記第1絶縁シートと上記第2絶縁シートとは、隣接する上記コイルにおいて隣り合って位置する。
【0008】
上記構成によれば、隣接するコイル間に第1絶縁シートがあるため、これらコイル間の電気絶縁性が確保される。また、隣接するコイル間で、第1絶縁シートと上記第2絶縁シートとは重ならないため、スペースファクタが低下しない。
【0009】
(2) 上記第1絶縁シートは、上記コイルを単一層で包む。
【0010】
上記構成によれば、第1絶縁シートが単一層であるため、スペースファクタが低下しない。
【0011】
(3) 上記第1絶縁シートは、上記ティースの先端側において開口する。
【0012】
上記構成によれば、隣接するコイル同士が接し難い。
【0013】
(4) 上記ティースの両側面には、上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの一方が共に位置する。
【0014】
(5) 上記ティースにおいて、一方の側面には上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの一方が位置しており、他方の側面には上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの他方が位置する。
【0015】
(6) 上記ステータは、上記ティースにおいて上記ステータの軸方向を向く第1端面を覆う第1絶縁体と、上記ティースにおいて上記ステータの軸方向を向く第2端面を覆う第2絶縁体と、をさらに具備している。上記コイルは、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体を介して上記ティースに巻回される。
【0016】
上記構成によれば、コイルとティースの絶縁性を確保でき、コイルを巻きやすい。
【0017】
(7) 上記第1絶縁体は上記ティースの両側面の一部を覆い、上記第2絶縁体は上記ティースの両側面の一部を覆う。上記2枚の絶縁シートの一方において上記軸方向の両端部は、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体と上記ティースの側面との間に位置する。上記2枚の絶縁シートの他方において上記軸線方向の両端部は、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体と上記ティースの側面との間に位置する。
【0018】
上記構成によれば、各絶縁シートの一方端部が第1絶縁体とティースとの間に支持され、各絶縁シートの他方端部が第2絶縁体とティースとの間に支持される。よって、コイルとティースの絶縁性をより良好に確保でき、コイルをより巻きやすい。
【0019】
(8) 本発明は、上記ステータと、上記ステータに挿通されており、マグネットを有するロータと、を具備する回転電機である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モータを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】回転電機10の内部構成を示す断面図。
図2図1の線II-IIに沿う回転電機10の断面図。
図3】分割コア34の三面図であって、特に、(A)は、分割コア34を軸方向102から見た時の模式図、(B)は、第4向きA32から分割コア34を見た時の模式図、(C)は、第3向きA31から分割コア34を見た時の模式図。
図4】(A)は、ティース44に取り付けられた電気絶縁体46A,46B、および絶縁シート47A,47Bを、第3向きA31側から見たときの斜視図、(B)は、これらを、第4向きA32側から見たときの斜視図。
図5】(A)は、スロット45を示す模式図、(B)は、分割コア34に取り付けられる電気絶縁体46A,46Bを示す模式図、(C)は、絶縁シート47A,47Bの詳細な形状を示す模式図。
図6】回転電機10の変形例を示す模式図。
図7】背景技術に係る絶縁シート705の重なりを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るステータ33および回転電機10について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0023】
[回転電機10の概略構成]
図1において、回転電機10は、電動機であり、より特定的にはインナーロータ型のブラシレスモータ(以下、単に「モータ」とも称す)30である。モータ30は、工場出荷後の実使用時において、ロータ31、シャフト32、およびステータ33等を、ハウジング36の内部に備えている。モータ30は、ハーネス38を介してコントローラ37と電気的に接続されている。
【0024】
[ロータ31]
図1図2において、ロータ31は、軸方向102に延びる軸線104の周方向105に回転可能である。軸線104は、図1では一点鎖線で、図2では黒点(・)で示されている。ロータ31は、ロータコア49を備えている。ロータコア49は、略円環形状の薄い電磁鋼板を軸方向102に積層した積層体である。ロータコア49は、略円筒形状であり、互いに異なる径の外周面53および内周面55を有する。外周面53および内周面55は、軸線104を中心軸として共有する。内周面55は、貫通孔54を区画する。
【0025】
図2において、ロータ31は、8個のマグネット40を有する。各マグネット40は、永久磁石であり、互いに略同一形状を有する。8個のマグネット40は、軸方向102からの平面視で周方向105に等角度間隔でロータコア49に配置される。外周面53上には、8個のマグネット40により、N極およびS極が周方向105に交互に現れる。また、各磁極は、外周面53から露出する。即ち、ロータ31は、表面磁石型(SPM型とも称される)である。
【0026】
[シャフト32]
図1図2において、シャフト32は、貫通孔54に挿通され、ロータコア49の内周面55に固定される。図1において、シャフト32の両端は、貫通孔54から軸方向102に突き出て、ハウジング36に軸受52を介して支持される。シャフト32は、ロータ31とともに周方向105にハウジング36に対して回転可能である。シャフト32の一方端は、ハウジング36の内部から外部へと軸方向102に突出し、モータ30の出力軸になっている。
【0027】
以下、軸方向102において、シャフト32の一方端がハウジング36の内部から外部へと突出する向きを、軸方向102の第1向きA11とも称する。第1向きA11の逆向きを第2向きA12とも称する。
【0028】
[ステータ33の概略構成]
図2において、ステータ33は、互いに略同一形状の分割コア34を12個有する。
【0029】
図1において、各分割コア34は、複数枚の電磁鋼板42を軸方向102に積層した積層体である。以下、軸方向102に隣り合う2枚の電磁鋼板42を隣接鋼板42とも称する。図1には、2個の分割コア34の断面が示され、1個の分割コア34につき1枚の電磁鋼板のみに参照符号42を付している。各電磁鋼板42の軸方向102における厚さは、特に限定されない。隣接鋼板42は、ステータ33のヨーク60(図2参照)の外周面61となる位置でレーザ等により溶接される。しかし、隣接鋼板42は、溶接に限らず、接着剤や所謂ダボカシメにより接合されてもよい。また、一部の隣接鋼板42がレーザ溶接され、残りの隣接鋼板42が接着剤やダボカシメにより接合されてもよい。
【0030】
図2図3において、各分割コア34は、軸方向102からの平面視で略T字形状であり、コアバック43およびティース44を有している。
【0031】
図2において、各コアバック43は、軸線104の径方向103にロータ31から離れて位置する。径方向103は、軸線104と直交する方向であるが、各図には、径方向103の一例のみが示されている。以下では、径方向103において、ロータ31から離れる向きを離隔向きA21とも称し、離隔向きA21の逆向きを接近向きA22とも称する。
【0032】
図3において、各コアバック43は、2つの側面431A,431B、外向面432、2つの内向面433A,433B、および2つの端面434A,434Bを有する。
【0033】
図3(A)において、各側面431A,431Bは、コアバック43の周方向105における端面である。図3(A),(C)において、側面431Aは、周方向105に交差し、側面431Aの外形は、軸方向102に細長い略矩形である。図3(A),(B)において、側面431Bの外形は、側面431Aの外径と周方向105において対称である。分割コア34の数は12個であるため、側面431A,431Bは、周方向105に略30°の角度間隔をあけて互いに離れている。側面431A,431Bには、コアバック43同士の接合のために、互いに嵌り合う凹部435Aおよび凸部435B(図4参照)がそれぞれ形成される。
【0034】
図2図3において、外向面432は、コアバック43の離隔向きA21における端面である。外向面432は、軸方向102からの平面視で略円弧形状を有する。
【0035】
図3において、各内向面433A,433Bは、コアバック43の接近向きA22における先端面である。各内向面433Aの外形は、軸方向102に細長い略矩形状である。図3(A)において、内向面433Aは、側面431Aの接近向きA22における先端の辺から、ティース44の側面441Aに向かって接近向きA22と直交する方向に沿って延びる。図3(A)において、内向面433Bは、ティース44を挟んで周方向105において内向面433Aと対称な外形を有する。
【0036】
図3において、端面434A,434Bは、コアバック43の軸方向102における両端に位置する。
【0037】
図3(A)において、各ティース44は、内向面433A,433Bの間から接近向きA22へ向かって延びる。図2に示すように、各ティース44の延出端は、ロータコア49の外周面53から離隔向きA21に離れている。即ち、各ティース44および外周面53は、ギャップ(空間)を介して向かい合う。図3に示すように、各ティース44は、2つの側面441A,441Bと、2つの端面442A,442Bと、歯先面443とを有する。
【0038】
図3(A)に示すように、側面441Aは、内向面433Aの第3向きA31における端から接近向きA22に延出する。ここで、第3向きA31は、周方向105の一方向きであって、図2図3における時計回りの向きである。第4向きA32は、周方向105の他方向きであって、第3向きA31とは逆向きである。図3(A),(C)に示すように、側面441Aは、ティース44の第4向きA32における端面の一部であり、軸方向102に細長い略矩形状の平坦面である。
【0039】
図3(A),(B)に示すように、側面441Bは、内向面433Bの第4向きA32における端から、側面441Aと平行に延出する。側面441Bは、周方向105において側面441Aと対称な形状を有する。
【0040】
図3において、端面442Aは、ティース44の第1向きA11における端に位置し、第1向きA11を向いている。図3(B),(C)において、端面442Bは、ティース44の第2向きA12における端に位置し、第2向きA12を向いている。端面442A,442Bは、端面434A,434Bと面一である。面一とは、段差無く平行であることを意味する。
【0041】
図2図3(A)において、歯先面443は、ティース44の接近向きA22における先端面(即ち、延出端面)であって、軸方向102からの平面視で略円弧形状を有する。歯先面443の周方向105における両端間距離は、側面441A,441Bの間隔より長い。なお、図2には、1つの歯先面だけに参照符号443を付している。
【0042】
図3に示すように、ティース44は、延出端付近に、歯先面443を含む歯先444を有している。歯先444は、側面441A,441Bの接近向きA22における端付近から第3向きA31および第4向きA32の双方に突出する。歯先444は、歯先面443に加え、2つの傾斜面445A,445B、および2つの側面446A,446Bを有する。
【0043】
傾斜面445A,445Bは、軸方向102に細長い略矩形状の外形を有する。傾斜面445A,445Bの外形は、ティース44を挟んで周方向105に互いに対称な形状である。傾斜面445Aは、側面441Aの接近向きA22における端から延出し、側面441Aに対し傾斜する。詳細には、傾斜面445Aおよび側面441Aは、90°を超える角度で交差する。なお、交差角度は、90°でもよい。
【0044】
図2に示すように、12個の分割コア34は、各分割コア34の凸部435B(図4(B)参照)が別の分割コア34の凹部435A(図4(A)参照)に嵌まって各コアバック43の外向面432が円柱面をなすように接合される。これにより、ステータ33のヨーク60が形成され、ステータ33は、ロータ31の外周面53を包囲するように配置される。12個のティース44は、ヨーク60とロータ31との間で、周方向105において略30°の角度間隔をあけて配列される。
【0045】
図5(A)に示すように、ステータ33において、周方向105に隣り合う2個の分割コア34の間には、後述のコイル39をティース44に巻くための空間であるスロット45が形成される。詳細には、各スロット45は、2個の分割コア34の一方が有する内向面433B,側面441B,傾斜面445Bと、他方の分割コア34が有する内向面433A,側面441A,傾斜面445Aとにより区画される空間である。なお、図5(A)には、コイル39および絶縁シート47A,47Bは図示されていない。
【0046】
[電気絶縁体46A,46B]
図4において、ステータ33は、1個の分割コア34につき電気絶縁体46A,46Bを有している。電気絶縁体46A,46Bの各々は、互いに同じ形状を有しており、電気絶縁性を有する樹脂による一体成型品である。
【0047】
図5(B)に示すように、電気絶縁体46Aは、分割コア34の第1向きA11における端に取り付けられて、端面442Aの略全域を覆う。電気絶縁体46Aはさらに、端面434Aの一部と、側面441A(図3(C)参照)、側面441B、内向面433A(図3(C)参照)および内向面433Bの各々の第1向きA11における端付近と、を覆う。なお、図5(B)では、側面441Aおよび内向面433Aは隠れており、絶縁シート47A,47Bは、説明の都合上、図示されない。
【0048】
電気絶縁体46Aは、コアバック43の外向面432と、ティース44の歯先面443と、を覆わない。
【0049】
図4図5(B)において、電気絶縁体46Aは、径方向103に互いに離間する2個の鍔部461A,462Aを有する。鍔部461A,462Aの各々は、径方向103に薄い板状であり、鍔部461Aは、電気絶縁体46Aの離隔向きA21の端から第1向きA11に突出する。鍔部462Aは、電気絶縁体46Aの接近向きA22の端から第1向きA11に突出する。電気絶縁体46Aが分割コア34に取り付けられた状態では、鍔部461A,462Aは、分割コア34の端面434A,442Aから突出する。
【0050】
電気絶縁体46Bは、2個の鍔部461B,462Bを有しており、分割コア34の第2向きA12における端に取り付けられて、電気絶縁体46Aを軸方向102に反転させた形状を有する。そのため、鍔部461B,462Bの詳説を控える。なお、図5(B)では、電気絶縁体46Bは、分割コア34から取り外された状態で図示されている。
【0051】
[絶縁シート47A,47B]
図4図5(C)において、ステータ33は、1つの分割コア34につき2枚の絶縁シート47A,47Bを有する。絶縁シート47A,47Bは、ポリイミドフィルム等のような電気絶縁性を有するシートを長方形に裁断加工等することで作製される。
【0052】
図5(C)において、絶縁シート47Aは、スロット45の一部を形成する傾斜面445A、側面441Aおよび内向面433Aに沿って、傾斜面445A、側面441Aおよび内向面433Aの各々を覆うように配置され、ティース44に巻かれたコイル39において側面441Aに沿って延びる導体の束の部分を包む。
【0053】
図4(A)に示すように、絶縁シート47Aの軸方向102の両端部分は、傾斜面445A、側面441Aおよび内向面433Aと、電気絶縁体46A,46Bとの間に挟み込まれ、これらにより支持される。このとき、絶縁シート47Aにおいて、軸方向102に略平行な2辺のうち接近向きA22側に位置する辺471A(図4(A),図5(C)参照)は、傾斜面445Aより外へはみ出さない。また、絶縁シート47Aにおいて、軸方向102に略平行な2辺のうち離隔向きA21側に位置する他方の辺472A(図4(A),図5(B)参照)が内向面433Aより外へはみ出さない。
【0054】
図5(C)において、絶縁シート47Bは、スロット45の残りの部分を形成する傾斜面445B、側面441Bおよび内向面433Bに沿って、傾斜面445B、側面441Bおよび内向面433Bを覆うように配置される。絶縁シート47Bの軸線方向102の両端部分は、傾斜面445B、側面441Bおよび内向面433Bと、電気絶縁体46A,46Bとの間に挟み込まれ、これらにより支持される。ティース44に巻かれたコイル39において側面441Bに沿って延びる導体の束の部分を包む。絶縁シート47Bは、軸方向102に略平行で接近向きA22側に位置する辺471B(図4(B),図5(C)参照)が傾斜面445Aより外へはみ出さないように取り付けられる。絶縁シート47Bは、内向面433Bにおいて第3向きA31の端付近で、接近向きA22に向けて折り曲げられる。絶縁シート47Bは、ティース44に巻かれたコイル39の第3向きA31における端に沿って歯先444に向かって延び、絶縁シート47Bの延出端である辺472Bは、傾斜面445B上の辺471Bに到達せず且つ接触しない位置に至る。したがって、図5(C)に示すように、絶縁シート47Bにおいて、辺471B,472Bの間は開口473Bになっている。また、絶縁シート47Bにおいて、辺472Bは、辺471Bと接しないし重なり合わない。即ち、絶縁シート47Bは、コイル39の周囲において積層されずに、側面441Bと略平行に沿って延びるコイル導線の束を単層で略全周に亘って包み込む。
【0055】
[コイル39]
各コイル39は、各ティース44との間に電気絶縁体46A,46Bおよび絶縁シート47A,47Bを介在させて各ティース44に巻回されている。詳細には、各コイル39は、傾斜面445Aおよび内向面433Aの間、傾斜面445Bおよび内向面433Bの間、鍔部461A,462Aの間、鍔部461B,462Bの間を通ってティース44に巻回される。なお、各コイル39の巻き数および配置は、内向面433B,傾斜面445Bにおける第3向きA31の端を第3向きA31に超えないように、かつ内向面433A,傾斜面445Aにおける第4向きA32の端を第4向きA32に超えないように定められる。
【0056】
コイル39の巻回後、コイル39には接着剤やワニスが充填および含侵されてもよい。接着剤やワニスの硬化により、巻回されたコイル39の緩みが抑制される。また、接着剤やワニスにより、絶縁シート47Bをコイル39に接着させてもよい。
【0057】
回転電機10の実使用時、各コイル39には、コントローラ37の制御下でハーネス38(図1参照)を介してU相、V相およびW相の交流電圧が与えられ、これによって、ステータ33には回転磁界が形成され、その結果、ロータ31が回転する。
【0058】
[ステータ33,回転電機10の作用効果]
ステータ33や回転電機10では、図5(C)から理解されるように、各スロット45内で周方向105に隣り合う2個のコイル39の間で、絶縁シート47Bが拡がっている。絶縁シート47Bは、軸方向102においては端面442A,442Bの間、径方向103においては内向面433Bおよび傾斜面445Bの間において、絶縁シート47Bが取り付けられるティース44に巻かれたコイル39の第3向きA31における端を覆う(図4(B)参照)。これにより、絶縁シート47Bは、自身が包むコイル39と、このコイル39とスロット45内で隣のコイル39との間の電気絶縁性を確保できる。スロット45内には、隣のコイル39の包む絶縁シート47Aが存在するが、この絶縁シート47Aは、絶縁シート47Aが取り付けられるティース44に巻かれたコイル39の第4向きA32における端を覆っていない。また、絶縁シート47B自体、上記の通り、コイル39において側面441Bと略平行に沿って延びるコイル39の導線の束を単層で略全周に亘って包み込んでいる。即ち、スロット45内で隣り合う2個のコイル39の間には、単一層の絶縁シート47Bだけが介在する。従って、実施形態によれば、スペースファクタの低下を招かず、回転電機10を小型化できる。
【0059】
絶縁シート47Bが各スロット45内で周方向105に隣り合う2個のコイル39の間で拡がっているので、少なくとも一方のコイル39の巻き終わり部分が緩んだり、コイル39の導体の整列がスロット45内で乱れたりしても、他方のコイル39に接触することが防止される。
【0060】
絶縁シート47A,47Bの各々は、対応するコイル39を単層で包み込んでいる。これによっても、スペースファクタの低下を招かない。
【0061】
コイル39の巻き数は、コアバック43側よりも歯先444側の方が少ない。即ち、スロット45内で隣り合う2個のコイル39において、コアバック43側の周方向105における間隔よりも歯先444側の周方向105における間隔の方が広い。そのため、絶縁シート47Bは、コアバック43よりも歯先444に近い位置で開口473Bになっていても、コイル39同士が接し難く、かつ電気絶縁性を確保できる。
【0062】
ステータ33は、ティース44を基準として第4向きA32側に絶縁シート47Aを備え、ティース44を基準として第3向きA31側に絶縁シート47Bを備えている。これにより、全ての分割コア34を同じ工程で作製できる。即ち、後段の変形例のように、2種類の分割コア34を作製しなくて済む。
【0063】
絶縁シート47A,47Bの各々は、電気絶縁体46A,46Bと、分割コア34とにより挟み込まれて支持される。このように、実施形態では、コイル39と、分割コア34との電気絶縁性が絶縁シート47A,47Bだけでなく電気絶縁体46A,46Bによっても確保される。また、絶縁シート47A,47Bが分割コア34から位置ずれし難いため、コイル39をティース44に巻きやすい。
【0064】
[変形例]
実施形態では、ステータ33は、ティース44の周方向105における両側に絶縁シート47A,47Bを備えていた。しかし、これに限らず、図6に示すように、ステータ33において、周方向105において1つ置きの各ティース44の周方向105における両側に、このティース44を挟んで周方向105に対称となるように2枚の絶縁シート47Aを配置してもよい。この場合、介在するティース44の周方向105における両側に、このティース44を挟んで周方向105に対称となるように2枚の絶縁シート47Bが配置される。このような絶縁シート47A,47Bの配置は、周方向105に並ぶ全ティース44に適用される。
【0065】
[その他の変形例]
実施形態では、絶縁シート47Bは、歯先444に近接する位置で開口473Bを形成していた。しかし、これに限らず、絶縁シート47Bは、コアバック43よりも歯先444に近い位置で開口473Bを形成してもよいし、歯先444よりもコアバック43に近い位置で開口473Bを形成してもよい。
【0066】
また、電気絶縁体46A,46Bは必ずしも設けられなくてもよく、絶縁シート47A,47Bと他の部材によってティース44とコイル39とが絶縁されていてもよい。
【0067】
実施形態では、回転電機10は、電動機であったが、発電機でもよい。
【0068】
実施形態では、ロータコア49の外周面53は、概ね円柱形状であった。これに限らず、外周面53は、正多角柱形状でもよい。
【0069】
実施形態では、ステータ33は12スロットであり、ロータコア49は8極であるが、スロット数および磁極数は、これに限らない。
【0070】
実施形態では、ロータ31は、表面磁石型(SPM型)であった。しかし、これに限らず、ロータ31は、埋込磁石型(IPM型)であってもよい。
【0071】
実施形態では、ティース44の数は12個であった。しかし、これに限らず、ティース44は3個以上あればよい。即ち、分割コア34は3個以上であればよい。また、1個の分割コア34が複数のティース44を有していてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10・・・回転電機
30・・・ブラシレスモータ
31・・・ロータ
40・・・マグネット
33・・・ステータ
34・・・分割コア
43・・・コアバック
44・・・ティース
444・・・歯先
46A,46B・・・電気絶縁体(絶縁体)
47A,47B・・・絶縁シート
39・・・コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークおよびティースを有する複数の分割コアを備えており、複数の上記ティースの各々の側面が絶縁シートに覆われて上記ティースの各々にコイルが巻回された状態で複数の上記ヨークが環状となるように上記複数の分割コアが連結されたステータであって、
記絶縁シートは、第1絶縁シートまたは第2絶縁シートの一方であり
上記第1絶縁シートおよび上記第2絶縁シートは、隣り合う2つの上記ティースにより区画される各スロットにそれぞれ位置しており、
上記第1絶縁シートは、隣り合う2つのうちの一方の上記ティースの側面と当該ティースに巻回された上記コイルとの間に位置し、且つ上記各スロットにおいて隣り合う2つの上記ティースにそれぞれ巻回された上記コイルの間に位置しており、
上記第2絶縁シートは、隣り合う2つのうちの他方の上記ティースの側面と当該ティースに巻回された上記コイルとの間に位置し、且つ上記各スロットにおいて隣り合う2つの上記ティースにそれぞれ巻回された上記コイルの間に位置しないステータ。
【請求項2】
上記各スロットにおいて隣り合う2つの上記ティースにそれぞれ巻回された上記コイルの間には、単一層の上記第1絶縁シートが位置している請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
上記第1絶縁シートは、上記ティースの先端側において開口する請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
上記ティースの両側面には、上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの一方が共に位置する請求項1から3のいずれかに記載のステータ。
【請求項5】
上記ティースにおいて、一方の側面には上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの一方が位置しており、他方の側面には上記第1絶縁シートまたは上記第2絶縁シートの他方が位置する請求項1から3のいずれかに記載のステータ。
【請求項6】
上記ティースにおいて上記ステータの軸方向を向く第1端面を覆う第1絶縁体と、
上記ティースにおいて上記ステータの軸方向を向く第2端面を覆う第2絶縁体と、をさらに具備しており、
上記コイルは、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体を介して上記ティースに巻回される請求項1から5のいずれかに記載のステータ。
【請求項7】
上記第1絶縁体は上記ティースの両側面の一部を覆い、
上記第2絶縁体は上記ティースの両側面の一部を覆い、
上記ティースの一方の側面を覆う上記絶縁シートにおいて上記軸方向の両端部は、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体と上記ティースの側面との間に位置しており、
上記ティースの他方の側面を覆う上記絶縁シートにおいて上記軸方向の両端部は、上記第1絶縁体および上記第2絶縁体と上記ティースの側面との間に位置する請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のステータと、
上記ステータに挿通されており、マグネットを有するロータと、を具備する回転電機。