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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178998
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】水散布冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 25/06 20060101AFI20221125BHJP
   F28D 5/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F28F25/06 A
F28D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086183
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嘉田 善仁
(72)【発明者】
【氏名】中川 高基
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA36
(57)【要約】
【課題】熱交換器に水を散布し、熱交換器の冷却能力を向上させる水散布冷却装置において、熱交換器に均一に水を供給する。
【解決手段】予め定められた送風方向Wへ流れる空気と内部を流通する冷却水との間で熱交換を行うラジエータ13に対し、送風方向Wの上流側から水を散布する散布装置20を備え、散布装置20は、ラジエータ13に散布される水を供給する複数の供給孔206を有する水供給管201と、複数の供給孔206のそれぞれに対応して設けられるとともに、供給孔206から重力方向下側に延びるように形成されて、供給孔206から供給される水を誘導するガイド部207、208と、ガイド部207、208の先端部における送風方向の下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制する乱れ抑制部201aと、を含んでいる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた送風方向へ流れる空気と内部を流通する熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(13)に対し、前記送風方向の上流側から水を散布する散布装置(20)を備え、
前記散布装置は、
前記熱交換器に散布される水を供給する複数の供給孔(206)を有する水供給部(201)と、
前記複数の供給孔のそれぞれに対応して設けられるとともに、前記供給孔から重力方向下側に延びるように形成されて、前記供給孔から供給される水を誘導するガイド部(207、208)と、
前記ガイド部の先端部における前記送風方向の下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制する乱れ抑制部(201a、207、208)と、を含んでいる水散布冷却装置。
【請求項2】
前記水供給部は、前記熱交換器における熱交換面(13a)の重力方向上方側の端部(13b)よりも重力方向上方側に配置されており、
前記ガイド部の先端部(207a、208a)は、前記熱交換面の重力方向上方側の端部よりも重力方向下方側に位置しており、
前記乱れ抑制部は、前記ガイド部を含む請求項1に記載の水散布冷却装置。
【請求項3】
前記水供給部における前記送風方向の上流側の端部(201a)は、前記送風方向の上流側に向かって前記ガイド部の延設方向の寸法が小さくなるように形成されており、
前記乱れ抑制部は、前記水供給部の前記上流側の端部を含む請求項1に記載の水散布冷却装置。
【請求項4】
前記ガイド部の延設方向の長さが20mm以上であり、
前記乱れ抑制部は、前記ガイド部を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の水散布冷却装置。
【請求項5】
前記散布装置は、前記ガイド部における空気流れの剥離の発生を抑制する剥離抑制部(207、208)を含んでおり、
前記乱れ抑制部は、前記剥離抑制部を含む請求項1に記載の水散布冷却装置。
【請求項6】
前記ガイド部の前記送風方向の上流側端部における前記ガイド部の延設方向に垂直な断面形状は、前記送風方向の上流側に向かって寸法が小さくなるように形成されており、
前記剥離抑制部は、前記ガイド部を含む請求項5に記載の水散布冷却装置。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記ガイド部の延設方向及び前記送風方向の双方に直行する方向である配置方向に、複数並んで配置されており、
前記ガイド部における前記配置方向の長さ(Wa)は、複数の前記ガイド部の配置周期であるガイドピッチ(Pg)の1/2以下であり、
前記剥離抑制部は、前記ガイド部を含む請求項5に記載の水散布冷却装置。
【請求項8】
前記散布装置は、隣り合う前記ガイド部間を通過する空気の流速を低減する流速低減部(207、208)を含んでおり、
前記乱れ抑制部は、前記流速低減部を含む請求項1に記載の水散布冷却装置。
【請求項9】
複数の前記ガイド部は、延設方向の長さが互いに等しく、
前記流速低減部は、前記ガイド部を含む請求項8に記載の水散布冷却装置。
【請求項10】
予め定められた送風方向へ流れる空気と内部を流通する熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(13)に対し、前記送風方向の上流側から水を散布する散布装置(20)を備え、
前記散布装置は、
前記熱交換器に散布される水を供給する複数の供給孔(206)を有する水供給部(201)と、
前記複数の供給孔のそれぞれに対応して設けられるとともに、前記供給孔から重力方向下側に延びるように形成されて、前記供給孔から供給される水を誘導するガイド部(207、208)と、
前記ガイド部に設けられるとともに、前記供給孔から供給された水を誘導する溝部(207b、208b)と、を備え、
前記ガイド部の延設方向及び前記送風方向の双方に直交する方向を、幅方向としたとき、
前記溝部における幅方向の寸法(Wg)は、前記供給孔の直径寸法以上である水散布冷却装置。
【請求項11】
予め定められた送風方向へ流れる空気と内部を流通する熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(13)に対し、前記送風方向の上流側から水を散布する散布装置(20)を備え、
前記散布装置は、
前記熱交換器に散布される水を供給する複数の供給孔(206)を有する水供給部(201)と、
前記複数の供給孔のそれぞれに対応して設けられるとともに、前記供給孔から重力方向下側に延びるように形成されて、前記供給孔から供給される水を誘導するガイド部(207、208)と、
前記ガイド部に設けられるとともに、前記供給孔から供給された水を誘導する溝部(207b、208b)と、を備え、
前記溝部における前記送風方向の寸法(Lg)は、前記供給孔の半径寸法以上、前記水供給部の板厚寸法未満である水散布冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に水を散布することによって、熱交換器の冷却能力を向上させる水散布冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池システム等においては、燃料電池を冷却する為の熱交換器(例えば、ラジエータ)に水を散布する水散布冷却装置が用いられている。例えば特許文献1に記載された水散布冷却装置は、熱交換器に散布される水を供給する供給孔を有する水供給部と、供給孔から重力方向下側に延びるように形成されるとともに、供給孔から供給される水を誘導するガイド部と、を備えている。そして、供給孔は複数設けられており、ガイド部は複数の供給孔のそれぞれに対応して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-56564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水散布冷却装置では、熱交換器を通過する外部流体(例えば、冷却風)が水供給部に当たることによって、外部流体の流れが乱されて一様流れを保てなくなる可能性がある。その結果、供給孔から流出した水滴がガイドから均一に離脱せず、熱交換器の熱交換面に均一に供給されなくなる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みて、熱交換器に水を散布し、熱交換器の冷却能力を向上させる水散布冷却装置において、熱交換器に均一に水を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の水散布冷却装置は、予め定められた送風方向へ流れる空気と内部を流通する熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(13)に対し、送風方向の上流側から水を散布する散布装置(20)を備え、
散布装置は、
熱交換器に散布される水を供給する複数の供給孔(206)を有する水供給部(201)と、
複数の供給孔のそれぞれに対応して設けられるとともに、供給孔から重力方向下側に延びるように形成されて、供給孔から供給される水を誘導するガイド部(207、208)と、
ガイド部の先端部における送風方向の下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制する乱れ抑制部(201a、207、208)と、を含んでいる。
【0007】
これによれば、乱れ抑制部(201a、207、208)を設けることで、水供給部(201)の存在によりガイド部(207、208)の先端部(207a、208a)における送風方向(W)の下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制できる。その結果、ガイド部(207、208)の先端部(207a、208a)から熱交換器(13)に水を均一に供給することができる。
【0008】
また、請求項10に記載の水散布冷却装置は、予め定められた送風方向へ流れる空気と内部を流通する熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(13)に対し、送風方向の上流側から水を散布する散布装置(20)を備え、
散布装置は、
熱交換器に散布される水を供給する複数の供給孔(206)を有する水供給部(201)と、
複数の供給孔のそれぞれに対応して設けられるとともに、供給孔から重力方向下側に延びるように形成されて、供給孔から供給される水を誘導するガイド部(207、208)と、
ガイド部に設けられるとともに、供給孔から供給された水を誘導する溝部(207b、208b)と、を備え、
ガイド部の延設方向及び送風方向の双方に直交する方向を、幅方向としたとき、
溝部における幅方向の寸法は、供給孔の直径寸法以上である。
【0009】
これによれば、ガイド部(207、208)の溝部(207b、208b)における幅方向の寸法(Wg)を供給孔(206)の直径寸法以上とすることで、溝部(207b、208b)の体積が大きくなる。このため、溝部(207b、208b)から外部に露出する水滴の体積が小さくなる。これにより、ガイド部(207、208)の先端部(207a、208a)における送風方向(W)の下流側において、乱れた空気流れによって揺らぐ水滴の量を低減できる。その結果、ガイド部(207、208)の先端部(207a、208a)から熱交換器(13)に水を均一に供給することができる。
【0010】
また、請求項11に記載の水散布冷却装置は、予め定められた送風方向へ流れる空気と内部を流通する熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(13)に対し、送風方向の上流側から水を散布する散布装置(20)を備え、
散布装置は、
熱交換器に散布される水を供給する複数の供給孔(206)を有する水供給部(201)と、
複数の供給孔のそれぞれに対応して設けられるとともに、供給孔から重力方向下側に延びるように形成されて、供給孔から供給される水を誘導するガイド部(207、208)と、
ガイド部に設けられるとともに、供給孔から供給された水を誘導する溝部(207b、208b)と、を備え、
溝部における送風方向の寸法は、供給孔の半径寸法以上、水供給部の板厚寸法未満である。
【0011】
これによれば、ガイド部(207、208)の溝部(207b、208b)における送風方向(W)の寸法(Lg)を、供給孔(206)の半径寸法以上、水供給部(201)の板厚寸法未満とすることで、溝部(207b、208b)の体積が大きくなる。このため、溝部(207b、208b)から外部に露出する水滴の体積が小さくなる。これにより、ガイド部(207、208)の先端部(207a、208a)における送風方向(W)の下流側において、乱れた空気流れによって揺らぐ水滴の量を低減できる。その結果、ガイド部(207、208)の先端部(207a、208a)から熱交換器(13)に水を均一に供給することができる。
【0012】
尚、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における燃料電池システムを示す全体構成図である。
図2】第1実施形態における散布装置を示す正面図である。
図3】第1実施形態における散布装置の一部を拡大した斜視図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5】第1実施形態におけるラジエータ及び散布装置を示す側面図である。
図6】第1実施形態における水供給管の周囲の送風空気流れを説明するための説明図である。
図7】比較例における水供給管の周囲の送風空気流れを説明するための説明図である。
図8】第2実施形態におけるラジエータ及び散布装置を示す側面図である。
図9】第2実施形態における散布装置を示す正面図である。
図10】第2実施形態における水供給管の周囲の送風空気流れを説明するための説明図である。
図11】第3実施形態におけるガイド部を示す断面図である。
図12】比較例におけるガイド部を示す断面図である。
図13】第4実施形態におけるガイド部を示す断面図である。
図14】比較例におけるガイド部を示す断面図である。
図15】第5実施形態におけるガイド部を示す断面図である。
図16】比較例におけるガイド部を示す断面図である。
図17】第6実施形態における散布装置の一部を拡大した正面図である。
図18】比較例における散布装置の一部を拡大した正面図である。
図19図18のXIX-XIX断面図である。
図20】比較例におけるラジエータ及び散布装置を示す側面図である。
図21図17のXXI-XXI断面図である。
図22】第6実施形態におけるラジエータ及び散布装置を示す側面図である。
図23】他の実施形態(2)における水供給管の周囲の送風空気流れを説明するための説明図である。
図24】他の実施形態(3)におけるガイド部を示す断面図である。
図25】他の実施形態(3)におけるガイド部を示す断面図である。
図26】他の実施形態(4)におけるガイド部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。尚、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
本第1実施形態においては、本発明に係る水散布冷却装置を、燃料電池システム1の散布装置20に適用している。第1実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池2を電源として走行する電気自動車(燃料電池車両)に搭載されている。そして、第1実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池2にて生じた電力を、図示しないインバータを介して、走行用モータ等の車載機器等に供給するように構成されている。
【0016】
以下の各図における上下、左右、前後を示す矢印は、電気自動車のシートに座った乗員からの視点を基準として示している。
【0017】
図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池2と、冷却水回路10とを有している。燃料電池2は、固体高分子電解質型燃料電池(PEFC)である。燃料電池2は、多数のセルが積層されたスタック構造となっている。各セルは、電解質膜を一対の電極で挟み込んで形成されている。
【0018】
燃料電池2は、水素と酸素との化学反応を利用して電力を発生する。具体的に説明すると、燃料電池2には、空気通路3を介して、酸素を含む空気が供給される。空気通路3には、図示しないエアポンプが配置されており、エアポンプの作動によって空気を圧送して、燃料電池2に供給している。また、燃料電池2には、水素通路4を介して水素が供給される。
【0019】
そして、燃料電池2では、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり、電気エネルギが発生する。当該電気化学反応に用いられなかった未反応の酸素及び水素は、排気ガス及び排気水素として燃料電池2から排出される。
(負極側)H→2H+2e
(正極側)2H+1/2O+2e→H
電気化学反応の為には、燃料電池2内の電解質膜は、水分を含んだ湿潤状態となっている必要がある。燃料電池システム1は、燃料電池2に供給される空気及び水素、若しくは何れか一方に加湿を行い、これらの加湿されたガスを燃料電池2に供給することで、燃料電池2内の電解質膜を加湿するように構成されている。
【0020】
また、燃料電池2では、発電の際の電気化学反応により熱及び水分が発生する。燃料電池2内部で生じた生成水は、排気ガスに含まれた状態で、燃料電池2の外部に排出される。
【0021】
燃料電池2の発電効率を考慮すると、燃料電池2は、燃料電池システム1が作動している間、一定温度(例えば80℃程度)に維持されている必要がある。また、燃料電池2内部の電解質膜は、所定の許容上限温度を超えると、高温により破壊されてしまう。この為、燃料電池2の温度が許容温度以下となるようにしておく必要がある。
【0022】
図1に示すように、燃料電池システム1には、燃料電池2の温度を一定の許容範囲内に維持するために、冷却水回路10が配置されている。燃料電池システム1は、熱媒体としての冷却水を用いて、燃料電池2を冷却して燃料電池2の温度を制御している。
【0023】
尚、熱媒体である冷却水としては、低温時における凍結を防止する為に、例えば、エチレングリコールと水の混合溶液を用いることができる。
【0024】
冷却水回路10は、冷却水循環流路11と、ウォータポンプ12と、ラジエータ13と、送風ファン14とを有して構成されている。冷却水回路10は、燃料電池2とラジエータ13の間で冷却水を循環させることで、燃料電池2で発生した熱を系外へ放出するように構成されている。
【0025】
冷却水循環流路11は、熱媒体である冷却水が流れる流路であり、燃料電池2とラジエータ13とを経由して循環するように構成されている。ウォータポンプ12は、冷却水循環流路11に配置されており、冷却水を圧送することで、冷却水循環流路11の内部において冷却水を循環させている。
【0026】
ラジエータ13は、燃料電池2で発生した熱を系外に放熱するように構成されており、本発明における熱交換器として機能する。ラジエータ13は、熱交換部と、上部タンクと、下部タンクとを有して構成されている。
【0027】
ラジエータ13の熱交換部は、冷却水循環流路11に接続された上部タンク及び下部タンクの間に配置された複数のチューブ及びフィンによって構成されている。ラジエータ13の熱交換部は、各チューブの内部を流通する冷却水と電気自動車の前方から後方へ向かう送風方向Wに流れる空気とを熱交換させる。
【0028】
燃料電池システム1においては、冷却水回路10の冷却水は、燃料電池2を流れる過程で、電気化学反応で発生した熱を吸熱して流出し、冷却水循環流路11を介して、ラジエータ13へ流入する。ラジエータ13では、冷却水と送風空気との熱交換が行われ、冷却水の熱が送風空気に放熱される。その後、冷却水は、ラジエータ13から燃料電池2へ向かって流れ、冷却水回路10の冷却水循環流路11を循環する。
【0029】
即ち、ラジエータ13は、熱媒体としての冷却水との熱交換によって、燃料電池2の電気化学反応で生じた熱を放熱して、燃料電池2を冷却している。
【0030】
また、ラジエータ13の後方側には、送風ファン14が配置されており、送風方向Wへ向かう空気の流れをつくりだしている。従って、送風ファン14は、ラジエータ13における熱交換を補助している。送風ファン14の周囲には、ファンシュラウド15が配置されており、送風ファン14の送風性能を向上させている。
【0031】
尚、ラジエータ13を通過する送風方向Wの空気の流れは、送風ファン14の作動による流れに限定されるものではなく、電気自動車の走行時に生じる走行風を利用することも可能であるし、両者を併用することもできる。
【0032】
燃料電池システム1では、冷却水回路10における冷却水の温度制御は、後述する制御装置30によって、ウォータポンプ12による流量制御、送風ファン14の送風量制御を行うことで実現される。
【0033】
燃料電池システム1において、燃料電池2による発電の際に発生した生成水は、燃料電池2から空気通路3を介して、空気に含まれた状態(即ち、気液二相状態)で排出される。この為、空気通路3における燃料電池2の下流側には、気液分離器5が配置されている。
【0034】
気液分離器5は、燃料電池2での発電の際に発生した生成水を、空気通路3から排出された空気と共に回収し、水蒸気と水に分離する。そして、気液分離器5で分離された水蒸気は、燃料電池システム1の外部に排出される。
【0035】
一方、気液分離器5で分離された水は、凝縮により温度が下げられた状態で気液分離器5の内部に回収されて蓄えられる。気液分離器5の内部に蓄えられた水は、燃料電池2の電解質膜に対する加湿と、ラジエータ13の冷却に用いられる。
【0036】
気液分離器5には、加湿用流路16と散布用流路17が接続されている。加湿用流路16は、気液分離器5に蓄えられた水を燃料電池2の電解質膜の加湿に用いる為の流路である。加湿用流路16は、空気通路3及び水素通路4における燃料電池2の上流側に伸びており、燃料電池2に供給される空気及び水素の加湿に用いられる。
【0037】
燃料電池システム1は、空気通路3及び水素通路4を介して、燃料電池2の電解質膜を加湿して湿潤状態とすることで、燃料電池2における電気化学反応を安定させることができる。
【0038】
そして、散布用流路17は、気液分離器5に蓄えられた水をラジエータ13の冷却に用いる為の流路である。散布用流路17は、電気自動車におけるラジエータ13の前方側まで伸びている。
【0039】
散布用流路17には、散布用ポンプ18と散布装置20が配置されている。散布装置20は、ラジエータ13に対して送風方向Wの上流側において、散布用流路17の先端部に接続されており、気液分離器5に蓄えられた水をラジエータ13に散布する。即ち、散布装置20は、水散布冷却装置の散布装置として機能する。
【0040】
散布装置20は、電気自動車におけるラジエータ13の前方側(即ち、送風方向Wにおけるラジエータ13の上流側)に配置されている。ラジエータ13と散布装置20との間には、所定の隙間が設けられている。散布装置20は、ラジエータ13や図示しない車体等に固定することができる。散布装置20の具体的な構成については後述する。
【0041】
散布装置20による水の散布により、水の蒸発潜熱を利用してラジエータ13の冷却能力を向上させることができる。そして、ラジエータ13の冷却能力を向上させることで、燃料電池2による発電能力を向上させることができる。
【0042】
そして、散布用ポンプ18は、散布用流路17にて気液分離器5と散布装置20との間に配置された電動式ポンプである。散布用ポンプ18は、気液分離器5内に蓄えられた水を吸込み、散布装置20へ向かって圧送する。
【0043】
図1に示すように、燃料電池システム1には、制御装置30が配置されている。制御装置30は、燃料電池システム1を構成する各制御対象機器の作動を制御する制御部である。制御装置30は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置30は、ROMに記憶されている制御プログラムに基づいて、燃料電池システム1の作動を制御することができる。
【0044】
制御装置30の入力側には、燃料電池2及び図示しない水温センサが接続されている。従って、制御装置30は、燃料電池2の出力や水温センサで検出された冷却水温度を取得することができる。また、制御装置30の出力側には、ウォータポンプ12、送風ファン14、散布用ポンプ18等の各制御対象機器が接続されている。
【0045】
続いて、第1実施形態に係る散布装置20の具体的構成について、図2図6を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、散布装置20は、散布用流路17の端部に接続されており、ラジエータ13に対する送風方向Wの上流側にて、ラジエータ13の上部と対向するように配置されている。散布装置20は、例えば樹脂材料や金属材料によって構成することができる。
【0046】
図2及び図3に示すように、散布装置20には、水供給部である水供給管201が設けられている。水供給管201は、中空状部材として構成されている。
【0047】
水供給管201には、内部に水を流入させる流入口205が設けられている。流入口205は散布用流路17の端部に接続されている。流入口205から水供給管201に流入した水は、水供給管201の端部に向かって流れる。
【0048】
水供給管201には、内部の水を外部に供給するための供給孔206が設けられている。水供給管201には、複数の供給孔206が所定間隔で配置されている。供給孔206の孔径は、水供給管201から水を均一に噴出できる大きさに設定されている。
【0049】
水供給管201には、ガイド部207、208が設けられている。ガイド部207、208は、供給孔206から供給される水を供給孔206から離れた位置まで誘導する。
【0050】
ガイド部207、208は、供給孔206から重力が作用する方向の下方に向かって延びるように設けられている。すなわち、ガイド部207、208は、供給孔206から重力方向下側に延びるように形成されている。このため、ガイド部207、208の先端部207a、208aは、供給孔206よりも重力方向下方に位置している。ガイド部207、208は、複数の供給孔206のそれぞれに対応して設けられている。
【0051】
ガイド部207、208は、ガイド部207、208の延設方向及び送風方向Wの双方に直行する方向である配置方向(即ち、左右方向)に、複数並んで配置されている。複数のガイド部207、208は互いに交わらないように並列して配置されている。複数のガイド部207、208は、櫛状に配置されている。
【0052】
図3に示すように、ガイド部207、208は、板面が送風方向Wに沿って配置された板状部材となっている。図4に示すように、ガイド部207、208の断面形状は、長方形となっている。
【0053】
図2及び図3に示すように、ガイド部207、208には、溝部207b、208bが設けられている。溝部207b、208bは、ガイド部207、208における送風方向Wの下流側に設けられている。
【0054】
溝部207b、208bの一端側は、供給孔206に接続して設けられており、供給孔206から供給された水をガイド部207、208に誘導する。溝部207b、208bの他端側は、ガイド部207、208の先端部207a、208aまで設けられている。つまり、溝部207b、208bは、ガイド部207、208の最下端まで設けられている。
【0055】
図4に示すように、本実施形態の溝部207b、208bは、ガイド部207、208の延設方向に直交する断面形状がU字状となっている。ガイド部207、208の延設方向は、ガイド部207、208における供給孔206との接続部と、ガイド部207、208の先端部207a、208aとを結ぶ方向であり、図4の紙面垂直方向である。
【0056】
図3に示すように、ガイド部207、208の先端部207a、208aは、鋭利な形状となっている。即ち、ガイド部207、208の先端部207a、208aは、延設方向に交わる断面の面積が先端に向かって小さくなっている。換言すると、ガイド部207、208は、延設方向に交わる断面の面積が先端部207a、208aで最も小さくなっている。
【0057】
本実施形態では、ガイド部207、208の先端部207a、208aにおける送風方向Wの下流側の角部が鋭角になっている。このため、ガイド部207、208の先端部207a、208aにおける溝部207b、208bが設けられている側の角が鋭角になっている。また、ガイド部207、208における溝部207b、208bが設けられている側の角がガイド部207、208の最下端部になる。つまり、ガイド部207、208の延設方向に交わる断面の面積は、先端部207a、208aにおける溝部207b、208bが設けられている部位で最も小さくなっている。
【0058】
図5に示すように、供給孔206から供給される水は、重力と溝部207b、208bによって生じる表面張力によって、ガイド部207、208を伝って下方に移動し、ガイド部207、208の先端部207a、208aまで誘導される。ガイド部207、208の先端部207a、208aまで移動した水は、液滴に成長する前に走行風によってガイド部207、208から離脱し、ラジエータ13の表面に散布される。
【0059】
ガイド部207、208からラジエータ13の表面に水を均一に散布するためには、隣接するガイド部207、208をできるだけ近づけて配置することが望ましい。一方、隣接するガイド部207、208が近すぎると、隣接するガイド部207、208から散布される水が結合して大きな液滴になりやすい。このため、隣接するガイド部207、208の間隔は、隣接するガイド部207、208から供給される水同士が結合しない距離に設定することが望ましい。
【0060】
本実施形態では、長さが異なる複数種類のガイド部207、208が設けられている。ガイド部207、208には、第1ガイド部207と、第1ガイド部207よりも長い第2ガイド部208とが含まれている。
【0061】
第1ガイド部207と第2ガイド部208は交互に設けられているため、隣接するガイド部207、208は長さが異なっている。隣接するガイド部207、208は長さが異なる構成は、隣接するガイド部207、208の長さが同じである構成に比べて、隣接するガイド部207、208の先端部207a、208aの間隔が大きくなる。このため、隣接するガイド部207、208が近接配置された場合であっても、隣接するガイド部207、208から散布される水が結合しにくい。
【0062】
ここで、図6に示すように、水供給管201における送風方向Wの上流側の端部を、水供給管201の上流端部201aという。
【0063】
水供給管201の上流端部201aは、送風方向W及びガイド部207、208の延設方向の双方に垂直な方向(即ち、左右方向)における断面形状が送風方向Wの上流側に向かって寸法が小さくなるように形成されている。つまり、水供給管201の上流端部201aは、送風方向Wの上流側に向かってガイド部207、208の延設方向(即ち、上下方向)の寸法が小さくなるように形成されている。本実施形態では、水供給管201の上流端部201aは、左右方向における断面形状が送風方向Wの上流側に向かって膨らんだ円弧状に形成されている。
【0064】
このように、水供給管201の上流端部201aを断面円弧状とすることで、図6の矢印に示すように、水供給管201の周囲を流れる送風空気が水供給管201の外表面から剥離せず、水供給管201の外表面に沿って流れる。これにより、水供給管201を設けることに起因してガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制できる。
【0065】
従って、本実施形態における水供給管201の上流端部201aは、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制する乱れ抑制部に相当する。換言すると、本実施形態の水散布冷却装置は、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制する乱れ抑制部として、断面円弧状の上流端部201aを備えている。
【0066】
続いて、上述のように構成された燃料電池システム1の作動を説明する。まず、空気通路3及び水素通路4を介して、燃料電池2に空気及び水素が供給されることにより、燃料電池2では電気エネルギが発生する。燃料電池2にて発生した電力は、走行用モータ等に供給される。
【0067】
燃料電池2では、発電に伴って電気化学反応による熱が生じる。燃料電池2にて発生した熱は、冷却水循環流路11内を循環する冷却水に伝えられ、冷却水はラジエータ13にて、送風方向Wへ流れる空気と熱交換することで冷却される。ラジエータ13にて冷却された冷却水は、燃料電池2に再循環し、燃料電池2が冷却される。これにより、燃料電池2は発電に適した一定温度(例えば、80℃程度)に維持される。
【0068】
図1に示すように、燃料電池2に供給された空気及び水素のうち、電気化学反応に用いられなかった未反応ガスは、排気ガスとして燃料電池2から排出される。燃料電池2内にて電気化学反応で生じた生成水は、排気ガス中に含まれた状態で燃料電池2から排出される。燃料電池2の空気通路3より排出された排気ガスは、気液分離器5に導入される。排気ガス中に含まれる水分は、気液分離器5にて分離されて貯留される。
【0069】
気液分離器5に貯留された回収水の一部は、加湿用流路16を介して空気通路3及び水素通路4に供給され、空気及び水素の加湿に用いられる。これにより、燃料電池システム1は、燃料電池2に加湿された空気及び水素を供給することができ、燃料電池2内部の電解質膜を加湿して電気化学反応を促進することができる。
【0070】
また、気液分離器5に貯蔵された回収水の一部は、散布用ポンプ18により予め定められた供給圧で圧送され、散布用流路17を介して散布装置20に供給される。図5に示すように、散布装置20では、水供給管201の供給孔206から供給された水がガイド部207、208によって誘導され、ガイド部207、208の先端部207a、208aから離脱する。ガイド部207、208の先端部207a、208aから離脱した水は、落下しながら送風方向Wの下流側に移動してラジエータ13の熱交換部に散布される。
【0071】
ラジエータ13に散布された水はラジエータ13の表面で蒸発し、蒸発潜熱によりラジエータ13が冷却される。これにより、ラジエータ13の冷却能力を向上させることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の水散布冷却装置は、供給孔206から供給される水を供給孔206から離れた位置まで誘導するガイド部207、208を備えている。これにより、供給孔206から供給される水が大きな液滴に成長する前にラジエータ13に水を散布することができる。
【0073】
ここで、比較例として、図7に示すように、水供給管201の上流端部201aを、送風方向Wに垂直な平面状に形成した水散布冷却装置が考えられる。尚、図7に示す水散布冷却装置では、上流端部201aに送風方向の上流側に向けて突出した凸部を201b設けている。
【0074】
比較例の水散布冷却装置では、水供給管201の存在により、水供給管201の周囲を流れる送風空気が水供給管201の外表面から剥離して、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側に巻き込み流れが生じる。このため、ガイド部207、208の先端部から流出した水滴が巻き込み流れの影響を受け、ラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することができない可能性がある。
【0075】
一方、本実施形態の水散布冷却装置は、図6に示すように、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制する乱れ抑制部を備えている。具体的には、本実施形態の水散布冷却装置は、乱れ抑制部として、水供給管201の上流端部201aを、左右方向における断面形状が送風方向Wの上流側に向かって寸法が小さくなるように形成している。
【0076】
これによれば、水供給管201の周囲を流れる送風空気が水供給管201の外表面から剥離せず、水供給管201の外表面に沿って流れる。このため、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側に生じる巻き込み流れの規模を小さくすることができる。即ち、水供給管201の存在によりガイド部207、208の先端部207a、208aにおける送風方向Wの下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制できる。その結果、ガイド部207、208の先端部207a、208aからラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することができる。
【0077】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8図10に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して、水供給管201の配置及び第1ガイド部207の延設方向の長さ等を変更している。
【0078】
図8及び図9に示すように、本実施形態の水散布冷却装置では、水供給管201は、ラジエータ13における熱交換面13aの重力方向上方側の端部13bよりも重力方向上方側に配置されている。ガイド部207、208の先端部207a、208aは、ラジエータ13における熱交換面13aの重力方向上方側の端部13bよりも重力方向下方側に位置している。このとき、第1ガイド部207の延設方向の長さL1、及び第2ガイド部208の延設方向の長さL2の各々が20mm以上である。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の水散布冷却装置によれば、ガイド部207、208における延設方向の長さ寸法を長くすることができる。このため、図10に示すように、水供給管201の周囲を流れる送風空気が水供給管201の外表面から剥離して巻き込み流れが生じた場合でも、当該巻き込み流れとガイド部207、208の先端部207a、208aとの距離を離すことができる。このため、ガイド部207、208の先端部207a、208aを、巻き込み流れの影響を受けない位置に配置することができる。その結果、巻き込み流れの影響を受けない位置から、ラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することができる。
【0080】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図11及び図12に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して、ガイド部207、208の溝部207b、208bの形状を変更している。尚、図11及び図12は、第1実施形態で説明した図4に対応する図面である。
【0081】
以下、ガイド部207、208の延設方向及び送風方向Wの双方に直交する方向を、幅方向という。幅方向は、左右方向に平行である。また、ガイド部207、208の溝部207b、208bにおける幅方向の寸法を、溝幅Wgという。また、溝部207b、208bにおける送風方向Wの寸法を、溝長さLgという。
【0082】
図11に示すように、本実施形態の水散布冷却装置では、溝部207b、208bの溝幅Wgを長くしている。具体的には、溝部207b、208bの溝幅Wgを、供給孔206の直径寸法以上としている。
【0083】
さらに、本実施形態の水散布冷却装置では、溝部207b、208bの溝長さLgを長くしている。具体的には、溝部207b、208bの溝長さLgを、供給孔206の半径寸法以上、水供給管201の板厚寸法未満としている。
【0084】
ここで、比較例として、図12に示すように、ガイド部207、208における溝部207b、208bの溝幅Wg及び溝長さLgの双方を短くした水散布冷却装置が考えられる。具体的には、比較例の水散布冷却装置では、溝部207b、208bの溝幅Wgを、供給孔206の直径寸法より短くしている。さらに、比較例の水散布冷却装置では、溝部207b、208bの溝長さLgを、供給孔206の半径寸法より短くしている。
【0085】
比較例の水散布冷却装置では、ガイド部207、208における溝部207b、208bの溝幅Wg及び溝長さLgの双方が短いので、溝部207b、208bの体積が小さくなる。このため、溝部207b、208bから外部に露出する水滴の体積が大きくなる。その結果、ガイド部207、208の周囲を流れる送風空気がガイド部207、207の外表面から剥離した場合に、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側を通過する乱れた空気流れにより水滴が揺らぎやすくなる。これにより、供給孔206から供給される水がガイド部207、208から均一に離脱せず、ラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することが困難となる。
【0086】
これに対し、本実施形態の水散布冷却装置では、ガイド部207、208における溝部207b、208bの溝幅Wg及び溝長さLgの双方を長くしている。このため、溝部207b、208bの体積が大きくなり、溝部207b、208bから外部に露出する水滴の体積が小さくなる。その結果、ガイド部207、208の先端部207a、208aにおける送風方向Wの下流側において、乱れた空気流れによって揺らぐ水滴の量(即ち、水滴の体積)を低減できる。その結果、ガイド部207、208の先端部207a、208aからラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することができる。
【0087】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図13及び図14に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して、ガイド部207、208の形状を変更している。尚、図13及び図14は、第1実施形態で説明した図4に対応する図面である。
【0088】
図13に示すように、本実施形態の水散布冷却装置では、ガイド部207、208の送風方向の上流側端部におけるガイド部207、208の延設方向に垂直な断面形状を、送風方向Wの上流側に向かって寸法が小さくなるように形成している。具体的には、ガイド部207、208の送風方向の上流側端部におけるガイド部207、208の延設方向に垂直な断面形状を、送風方向Wの上流側に向かって膨らんだ円弧状としている。
【0089】
ここで、比較例の水散布冷却装置では、図14に示すように、ガイド部207、208の送風方向の上流側端部におけるガイド部207、208の延設方向に垂直な断面形状が、長方形状に形成されている。このため、ガイド部207、208の周囲を流れる送風空気がガイド部207、207の外表面から剥離して、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側を通過する空気流れが乱れてしまう。そして、この乱れた空気流れにより水滴が揺らいでしまい、供給孔206から供給される水がガイド部207、208から均一に離脱せず、ラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することが困難となる。
【0090】
一方、本実施形態の水散布冷却装置では、図13に示すように、ガイド部207、208の送風方向の上流側端部におけるガイド部207、208の延設方向に垂直な断面形状を、送風方向Wの上流側に向かって膨らんだ円弧状としている。これにより、ガイド部207、208の周囲を流れる送風空気がガイド部207、207の外表面から剥離することを抑制できる。
【0091】
このため、ガイド部207、208の先端部207a、208aにおける送風方向Wの下流側において空気流れが乱れることを抑制できるので、ガイド部207、208の先端部207a、208aから供給される水滴の揺らぎを抑制できる。その結果、ガイド部207、208の先端部207a、208aからラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することができる。尚、本実施形態におけるガイド部207、208の送風方向の上流側端部が、剥離抑制部及び乱れ抑制部に相当する。
【0092】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図15及び図16に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して、ガイド部207、208の形状を変更している。尚、図15及び図16は、第1実施形態で説明した図4に対応する図面である。
【0093】
図13に示すように、本実施形態の水散布冷却装置では、ガイド部207、208における配置方向(即ち、左右方向)の長さWaを短くしている。具体的には、ガイド部207、208における配置方向の長さWaを、ガイドピッチPgの1/2以下としている。
【0094】
ガイドピッチPgとは、複数のガイド部207、208の配置周期である。即ち、ガイドピッチPgとは、同一種類のガイド部207、208同士の繰り返しの周期である。例えば、ガイドピッチPgを、任意のガイド部207、208の配置方向の中央部から隣り合う同一種類のガイド部207、208における配置方向の中央部までの距離とすることができる。
【0095】
ここで、比較例の水散布冷却装置では、図16に示すように、ガイド部207、208における配置方向の長さWaが、ガイドピッチPgの1/2より長い。このため、ガイド部207、208の周囲を流れる送風空気がガイド部207、207の外表面から剥離して、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側を通過する空気流れが乱れてしまう。そして、この乱れた空気流れにより水滴が揺らいでしまい、供給孔206から供給される水がガイド部207、208から均一に離脱せず、ラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することが困難となる。
【0096】
これに対し、本実施形態の水散布冷却装置では、図15に示すように、ガイド部207、208における配置方向の長さWaを、ガイドピッチPgの1/2以下としている。これにより、ガイド部207、208の周囲を流れる送風空気がガイド部207、207の外表面から剥離することを抑制できる。
【0097】
このため、ガイド部207、208の先端部207a、208aにおける送風方向Wの下流側において空気流れが乱れることを抑制できるので、ガイド部207、208の先端部207a、208aから供給される水滴の揺らぎを抑制できる。その結果、ガイド部207、208の先端部207a、208aからラジエータ13の熱交換部に水を均一に散布することができる。尚、本実施形態におけるガイド部207、208が、剥離抑制部及び乱れ抑制部に相当する。
【0098】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図17図22に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して、ガイド部207、208の構成を変更している。
【0099】
図17に示すように、本実施形態の水散布冷却装置では、複数のガイド部207、208における延設方向の長さを互いに等しくしている。即ち、水供給管201に接続される全てのガイド部207、208は、延設方向の長さが互いに等しい。
【0100】
ここで、比較例の水散布冷却装置では、図18に示すように、隣り合うガイド部207、208における延設方向の長さが互いに異なっている。このため、図19に示すように、延設方向の長さ寸法が長い第2ガイド部208の存在により、第1ガイド部207の周囲を流れる送風空気の風速が増加してしまう。そして、第1ガイド部207の先端部における送風方向Wの下流側を通過する空気の流れが乱れてしまう。このため、図20に示すように、第1ガイド部207の先端部からラジエータ13の熱交換面13aに供給される水滴の濡れ面積が小さくなる可能性がある。
【0101】
これに対し、本実施形態の水散布冷却装置では、複数のガイド部207、208における延設方向の長さを互いに等しくしている。このため、図21に示すように、第2ガイド部208の周囲を流れる送風空気の風速が増加することを抑制できる。これにより、ガイド部207、208の先端部における送風方向Wの下流側を通過する空気の流れが乱れることを抑制でできる。そして、図22に示すように、ガイド部207、208の先端部からラジエータ13の熱交換面13aに供給される水滴の濡れ面積を増大することができる。尚、本実施形態におけるガイド部207、208が、隣り合うガイド部207、208間を通過する空気の流速を低減する流速低減部、及び乱れ抑制部に相当する。
【0102】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0103】
(1)上記各実施形態では、本発明の水散布冷却装置を燃料電池用のラジエータ13に水を散布する散布装置20に適用した例について説明したが、本発明の水散布冷却装置を他の用途に用いてもよい。本発明の水散布冷却装置は、例えば内燃機関冷却用のラジエータに水を散布する用途に用いてもよく、あるいは冷凍サイクル装置の凝縮器に水を散布する用途に用いてもよい。
【0104】
(2)上記第1実施形態では、水供給管201の上流端部201aを、左右方向における断面形状が送風方向Wの上流側に向かって膨らんだ円弧状となるように形成した例について説明した。しかしながら、水供給管201の上流端部201aの形状はこの態様に限定されない。例えば、図23に示すように、水供給管201の上流端部201aを、左右方向における断面形状が三角形状となるように形成してもよい。
【0105】
(3)上記第3実施形態では、溝部207b、208bの溝幅Wgを供給孔206の直径寸法以上とするとともに、溝部207b、208bの溝長さLgを供給孔206の半径寸法以上、水供給管201の板厚寸法未満とした例について説明した。しかしながら、溝部207b、208bの形状はこの態様に限定されない。
【0106】
例えば、図24に示すように、溝部207b、208bの溝幅Wgを供給孔206の直径寸法以上とするとともに、溝部207b、208bの溝長さLgを供給孔206の半径寸法より小さくしてもよい。また、図25に示すように、溝部207b、208bの溝幅Wgを供給孔206の直径寸法より小さくするとともに、溝部207b、208bの溝長さLgを供給孔206の半径寸法以上、水供給管201の板厚寸法未満としてもよい。
【0107】
(4)上記第4実施形態では、ガイド部207、208の送風方向の上流側端部におけるガイド部207、208の延設方向に垂直な断面形状を、送風方向Wの上流側に向かって膨らんだ円弧状とした例について説明した。しかしながら、ガイド部207、208の形状はこの態様に限定されない。例えば、図26に示すように、ガイド部207、208の送風方向の上流側端部におけるガイド部207、208の延設方向に垂直な断面形状を、三角形状としてもよい。
【0108】
(5)上記第6実施形態では、流速低減部として、延設方向の長さを互いに等しくした複数のガイド部207、208を採用した例について説明したが、この態様に限定されない。例えば、ガイド部207、208のガイドピッチPgを大きくすることで、隣り合うガイド部207、208間を通過する空気の流速を低減させてもよい。
【0109】
(6)上記各実施形態では、水供給管201、202のガイド部207、208を重力方向に平行となるように設けたが、これに限らず、ガイド部207、208は重力方向に対して傾斜していてもよい。複数のガイド部207、208の重力方向に対する角度は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0110】
(7)上記各実施形態では、散布装置20に1本の水供給管201を設けた例について説明したが、これに限らず、散布装置20に2本以上の水供給管を設けてもよい。
【0111】
(8)上記第1~第5実施形態では、散布装置20に長さが異なる2種類のガイド部207、208を設けたが、同一の長さの1種類のガイド部を設けてもよく、あるいは長さが異なる3種類以上のガイド部を設けてもよい。
【0112】
(9)上記各実施形態では、複数の供給孔206のすべてにガイド部207、208を設けたが、これに限らず、少なくとも一部の供給孔206にガイド部207、208が設けられていればよい。つまり、ガイド部207、208が設けられていない供給孔206が存在してもよい。
【符号の説明】
【0113】
13 ラジエータ(熱交換器)
20 散布装置
201 水供給管(水供給部)
201a 上流端部(乱れ抑制部)
206 供給孔
207 第1ガイド部(ガイド部)
208 第2ガイド部(ガイド部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26