(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017900
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/215 20170101AFI20220119BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220119BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G06T7/215
G06T7/00 350B
H04N7/18 D
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120735
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 恵
(72)【発明者】
【氏名】土増 壯則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一紀
(72)【発明者】
【氏名】阿川 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】方 暁倩
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊二
【テーマコード(参考)】
5C054
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC15
5C054FC16
5C054FE05
5C054FE28
5C054HA19
5L096BA02
5L096CA02
5L096DA03
5L096FA19
5L096GA34
5L096GA51
5L096HA04
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】流動している塵芥と滞留している塵芥とを判別可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち取水口が設けられた場所が撮像されたことに基づき、撮像により得られた画像データを取得する取得手段と、画像データ内における塵芥の領域を検知する領域検知手段と、密なオプティカルフローを用いて、画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離する第1の分離手段と、検知された塵芥の領域を、静領域に含まれる第1の領域と、動領域に含まれる第2の領域とに分離する第2の分離手段と、第2の分離手段による分離結果に基づく報知を行う報知手段とを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち前記取水口が設けられた場所が撮像されたことに基づき、前記撮像により得られた画像データを取得する取得手段と、
前記画像データ内における塵芥の領域を検知する領域検知手段と、
密なオプティカルフローを用いて、前記画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離する第1の分離手段と、
検知された前記塵芥の領域を、前記静領域に含まれる第1の領域と、前記動領域に含まれる第2の領域とに分離する第2の分離手段と、
前記第2の分離手段による分離結果に基づく報知を行う報知手段とを備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記領域検知手段は、学習済みモデルであり、
前記学習済みモデルは、前記画像データを入力として受け付け、前記塵芥の領域を示す情報を出力する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像データにおける前記第1の領域の位置と、前記画像データにおける前記スクリーンの位置とに基づき、前記スクリーンへの前記塵芥の付着状況を判定する判定手段をさらに備える、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記第1の領域のうち前記スクリーンと前記水路の水面との交線に沿った部分領域の前記交線の方向の第1の長さに基づいて、前記スクリーンへの前記塵芥の付着状況を判定する請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記スクリーンの前記交線の方向の第2の長さに対する前記第1の長さの割合に基づき、前記スクリーンへの前記塵芥の付着状況を判定する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記割合が第1の閾値以上である場合には、前記スクリーン全体に前記塵芥が付着していると判定する、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記割合が前記第1の閾値以上である場合、前記画像データ内の水面領域に対する前記塵芥の領域の割合が第2の閾値以上であるときには、前記水路に濁りが発生していると判定する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第2の領域の面積に基づき、前記スクリーンに対する前記塵芥の付着状況を予測する予測手段をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記予測手段は、前記第2の領域の面積の値と前記塵芥が前記スクリーン全体に付着する時間との関係を示した参照用データに基づき、前記スクリーン全体に前記塵芥が付着するまでの時間を予測する、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記報知は、前記情報処理装置が前記第1の領域と前記第2の領域とを異なる表示態様で表示することである、請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記報知は、判定された前記塵芥の付着状況を外部の端末装置に通知することである、請求項3から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記報知は、予測された前記塵芥の付着状況を外部の端末装置に通知することである、請求項8または9に記載の情報処理装置。
【請求項13】
撮像装置と、サーバ装置と、端末装置とを備えた監視システムであって、
前記撮像装置は、スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち前記取水口が設けられた場所を撮像し、かつ撮像によりえら得た画像データを前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、
前記撮像装置から、前記撮像により得られた画像データを受信し、
学習済みモデルを用いて、前記画像データ内における塵芥の領域を検知し、
密なオプティカルフローを用いて、前記画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離し、
検知された前記塵芥の領域を、前記静領域に含まれる第1の領域と、前記動領域に含まれる第2の領域とに分離し、
前記塵芥の領域の分離結果に基づく情報を前記端末装置に送信し、
前記端末装置は、前記情報を前記サーバ装置から受信し、かつ前記情報に基づく出力を行う、監視システム。
【請求項14】
スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち前記取水口が設けられた場所が撮像されたことに基づき、前記撮像により得られた画像データを取得するステップと、
前記画像データ内における塵芥の領域を検知するステップと、
密なオプティカルフローを用いて、前記画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離するステップと、
検知された前記塵芥の領域を、前記静領域に含まれる第1の領域と、前記動領域に含まれる第2の領域とに分離するステップと、
前記第1の領域と前記第2の領域とへの分離結果に基づく報知を行うステップとを備える、情報処理方法。
【請求項15】
前記画像データにおける前記第1の領域の位置と、前記画像データにおける前記スクリーンの位置とに基づき、前記スクリーンへの前記塵芥の付着状況を判定するステップをさらに備える、請求項14に記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記第2の領域の面積に基づき、前記スクリーンに対する前記塵芥の付着状況を予測するステップをさらに備える、請求項14または15に記載の情報処理方法。
【請求項17】
情報処理装置を制御するプログラムであって、
スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち前記取水口が設けられた場所が撮像されたことに基づき、前記撮像により得られた画像データを取得するステップと、
前記画像データ内における塵芥の領域を検知するステップと、
密なオプティカルフローを用いて、前記画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離するステップと、
検知された前記塵芥の領域を、前記静領域に含まれる第1の領域と、前記動領域に含まれる第2の領域とに分離するステップと、
前記第1の領域と前記第2の領域とへの分離結果に基づく報知を行うステップとを、前記情報処理装置のプロセッサに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、監視システム、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水路には落ち葉などの塵芥が浮遊している。このような塵芥は、水路の取水口を詰まらせる。詳しくは、水流によって取水口の方向に流された塵芥が取水口に設置されたスクリーンに付着することにより、水路の詰まりを起こす。
【0003】
また従来、動体検知の手法として、オプティカルフロー(optical flow)が知られている。オプティカルフローは、密なオプティカルフローと、疎なオプティカルフローとに区別される。たとえば、国際公開第2017/145711号(特許文献1)には、多数の人によって混雑しているような動的な環境において撮影された連続画像に対して、疎なオプティカルフローを適用した処理が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流動している塵芥は、今後、スクリーンに付着する可能性がある。スクリーンに付着した塵芥は、その後もスクリーンにて滞留する。それゆえ、水路の取水口付近の塵芥を流動している塵芥と滞留している塵芥とを自動で判別できれば、水路の管理者にとって利便性が増す。
【0006】
本開示は、流動している塵芥と滞留している塵芥とを判別可能な情報処理装置、監視システム、情報処理方法、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従うと、情報処理装置は、スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち取水口が設けられた場所が撮像されたことに基づき、撮像により得られた画像データを取得する取得手段と、画像データ内における塵芥の領域を検知する領域検知手段と、密なオプティカルフローを用いて、画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離する第1の分離手段と、検知された塵芥の領域を、静領域に含まれる第1の領域と、動領域に含まれる第2の領域とに分離する第2の分離手段と、第2の分離手段による分離結果に基づく報知を行う報知手段とを備える。
【0008】
本開示の他の局面に従うと、監視システムは、撮像装置と、サーバ装置と、端末装置とを備える。撮像装置は、スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち取水口が設けられた場所を撮像し、かつ撮像により得られた画像データをサーバ装置に送信する。サーバ装置は、撮像装置から、撮像により得られた画像データを受信する。サーバ装置は、学習済みモデルを用いて、画像データ内における塵芥の領域を検知する。サーバ装置は、密なオプティカルフローを用いて、画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離する。サーバ装置は、検知された塵芥の領域を、静領域に含まれる第1の領域と、動領域に含まれる第2の領域とに分離し、塵芥の領域の分離結果に基づく情報を端末装置に送信する。端末装置は、情報をサーバ装置から受信し、かつ情報に基づく出力を行う。
【0009】
本開示のさらに他の局面に従うと、情報処理方法は、スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち取水口が設けられた場所が撮像されたことに基づき、撮像により得られた画像データを取得するステップと、画像データ内における塵芥の領域を検知するステップと、密なオプティカルフローを用いて、画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離するステップと、検知された塵芥の領域を、静領域に含まれる第1の領域と、動領域に含まれる第2の領域とに分離するステップと、第1の領域と第2の領域とへの分離結果に基づく報知を行うステップとを備える。
【0010】
本開示のさらに他の局面に従うと、情報処理装置を制御するプログラムは、スクリーンが設置された取水口を有する水路のうち取水口が設けられた場所が撮像されたことに基づき、撮像により得られた画像データを取得するステップと、画像データ内における塵芥の領域を検知するステップと、密なオプティカルフローを用いて、画像データ内の領域を静領域と動領域とに分離するステップと、検知された塵芥の領域を、静領域に含まれる第1の領域と、動領域に含まれる第2の領域とに分離するステップと、第1の領域と第2の領域とへの分離結果に基づく報知を行うステップとを、情報処理装置のプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記開示によれば、流動している塵芥と滞留している塵芥とを判別可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】監視システムのシステム構成を説明するための図である。
【
図4】監視カメラによって撮像された画像を示した図である。
【
図5】動体検知と領域検知とを説明するための図である。
【
図6】サーバ装置の機能的構成を説明するための図である。
【
図7】学習済みモデルの生成方法を説明するための模式図である。
【
図8】フレーム画像に対するデータ処理を説明するための図である。
【
図9】密なオプティカルフローを用いたマスク画像の生成方法の詳細を説明するための模式図である。
【
図10】制御部によって検知されるデータと、当該データの一部を用いた判定および予測の内容とを示した図である。
【
図11】監視カメラによって撮像された画像を示した図である。
【
図12】塵芥滞留領域のうちスクリーンと水面との交線に沿った部分領域の当該交線の方向の長さを説明するため図である。
【
図13】
図11で説明した比例関係が成り立つことを検証した結果を示した図である。
【
図14】塵芥滞留領域の面積と、スクリーン占有率との変化を示した図である。
【
図15】
図14における100番目のフレーム画像と、6272番目のフレーム画像と、12996番目のフレーム画像とに基づく画像を示した図である。
【
図17】濁り判定の閾値と、予測処理に用いる閾値の例とを示した図である。
【
図18】サーバ装置の処理の流れを表したフロー図である。
【
図19】サーバ装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る監視システムについて説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
また、以下では、水路に浮遊する塵芥(浮遊性塵芥)の例として、落ち葉を挙げて説明する。ただし、塵芥は、落ち葉に限定されるものではない。さらに、以下に示す、枚数、個数、および閾値等の各数値は、例示であって、記載された具体的数値に限定されるものではない。
【0015】
<A.水路>
図1は、水路を説明するための図である。
【0016】
図1を参照して、本例では、水路50は、河川40から分岐した水路である。水路50を流れる水は、小水力発電所90に供給される。小水力発電所90では、この水は発電設備の発電用水として利用される。その後、水は、河川40に放流される。なお、典型的には、10000kW以下が「小水力」と称される。
【0017】
河川40の流域は、通常、広葉落葉樹が多く樹勢している。それゆえ、秋になると大量の落ち葉が、河川40に流れ込む。流れ込んだ落ち葉(すなわち、塵芥)は、小水力発電所90用の水路50にも流れ込む。塵芥は、取水口のスクリーン60に付着して詰まりを起こすため、発電量低下(「溢水」とも称される)の原因となっている。なお、スクリーン60は、典型的には金属製の柵である。
【0018】
<B.監視システム>
図2は、監視システムのシステム構成を説明するための図である。
【0019】
図2を参照して、監視システム1は、サーバ装置10と、端末装置20と、監視カメラ30とを備える。監視カメラ30は、サーバ装置10と通信可能に接続されている。端末装置20は、ネットワークを介して通信可能にサーバ装置10に接続されている。
【0020】
端末装置20は、本例ではデスクトップ型のPC(Personal Computer)を挙げているが、これに限定されるものではない。端末装置20は、たとえば、ラップトップ型のPC、タブレット端末、またはスマートフォンであってもよい。
【0021】
監視カメラ30は、水路50を撮像するために水路50の傍に設置されている。本例では、監視カメラ30は、水路50のうち取水口70の状態を監視するために、取水口70が設けられた場所R1を撮像するように設置されている。なお、取水口70には、一定形状をした大きな異物(流木等)が発電設備に流れ込まないように、スクリーン60が設けられている。
【0022】
監視カメラ30による撮像によって得られた映像(すなわち連続する静止画像)は、サーバ装置10に送られる。小水力発電所90の管理者等は、当該映像を端末装置20で見ることができる。つまり、小水力発電所90の管理者等は、取水口70の状態を映像によって監視することができる。
【0023】
サーバ装置10は、このような監視カメラ30によって撮像された映像を利用した処理を実行する。詳しくは、サーバ装置10は、学習済みモデルを用いて、水路50の塵芥を検知する。また、詳細については後述するが、サーバ装置10は、検知された塵芥の領域を、密のオプティカルフローを用いて、塵芥が滞留している領域(以下、「塵芥滞留領域」とも称する)と、塵芥が流動している領域(以下、「塵芥流動領域」とも称する)とに分離する。
【0024】
小水力発電所90の管理者等が行きにくい場所の取水口70を監視対象とすることにより、監視システム1の利便性が増す。なお、水路50は、発電所用のものに限定されない。水路50は、大きな規模の発電所用の水路、あるいは農業用水路等の発電目的以外の水路であってもよい。
【0025】
<C.塵芥の付着状態>
図3は、
図1および
図2に示した場所R1における塵芥80の状態を表した模式図である。
【0026】
図3を参照して、水路50に流れこんだ塵芥80は、水底から水面まで拡がって浮遊している。なお、本例では、「浮遊」は、滞留状態での浮遊と、流動状態での浮遊とを含む。水面で浮遊する塵芥80もあれば、水面下(水中)で浮遊する塵芥80もある。
【0027】
水路を浮遊する塵芥80の一部は、水の流れの向き(矢印A1の向き)に流される。そのうちの一部の塵芥80は、スクリーン60に付着する。場所R1のうちスクリーン60の領域R2では、塵芥80は、スクリーン60を通過する水の流れによって、既に塵芥80が付着している場所を避けてスクリーン60に付着する。図の例では、領域R2の塵芥80は、矢印A2の方向ではなく、矢印A3の方向に流される。
【0028】
図4は、監視カメラ30によって撮像された画像を示した図である。
図4(A)は、スクリーン60に付着する塵芥80が少ないときの画像201を示した図である。
図4(B)は、スクリーン60全体に塵芥80が付着したときの画像202を示した図である。
【0029】
図4(A)を参照して、塵芥80は、既に塵芥80が付着している部分に重ならず、隙間によって水の流れが生じている箇所に付着する。これにより、
図4(B)に示すように、塵芥80は、スクリーン60に対して、水面から水底まで薄く、かつ万遍なく付着していく。
【0030】
<D.動体検知と領域検知>
図5は、動体検知と領域検知とを説明するための図である。
【0031】
図5を参照して、動体検知の手法として、密なオプティカルフローを用いた手法と、疎なオプティカルフローを用いた手法と、フレーム間差分を用いた手法と、背景差分を用いた手法とがある。
【0032】
密なオプティカルフローでは、画素毎に対象物の移動を追跡することにより、移動ベクトルを算出する。疎なオプティカルフローでは、特徴点のマッチングを行うことにより、対象物の移動を追跡する。フレーム間差分では、連続する前後のフレーム同士の差分に基づき、対象物の移動を検出する。背景差分では、過去のフレームから背景画像を生成し、かつ、生成された背景画像との差分に基づき対象物の移動を検出する。
【0033】
密なオプティカルフローによれば、流動する塵芥を検知できる。ただし、密なオプティカルフローでは、誤検知が多く発生する。疎なオプティカルフロー、フレーム間差分、および背景差分では、流動する塵芥の一部しか検知できない。
【0034】
また、動体検知では、動体を検知するため、滞留しているものは検知されない。それゆえ、図に示すように、「塵芥滞留領域と塵芥流動領域とに分離して塵芥を検知」の欄には、対象外として「-」を記載している。さらに、動体検知では、いずれの手法を用いても、塵芥の量を推定できない。
【0035】
次に、領域検知について説明する。領域検知には、典型的には、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いることができる。学習済みモデルは、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)、ニューラルネットワーク等に対して教師あり学習を実行させることにより生成される。ニューラルネットワークとして、ディープラーニングによって生成されたディープニューラルネットワークを利用できる。
【0036】
このような領域検知によれば、全ての塵芥を検知(捕捉)できる。ただし、塵芥滞留領域と塵芥流動領域とを分離した上での領域検知は行えない。すなわち、滞留している塵芥と、流動している塵芥とを区別できない。その一方で、領域検知によれば、動体検知とは異なり、塵芥の量を推定できる。
【0037】
各手法の上記特性を考慮し、本実施の形態では、学習済みモデルを用いて塵芥の領域を検知し、かつ、検知された塵芥の領域を密なオプティカルフローを用いて塵芥滞留領域と塵芥流動領域とに分離する。これらの処理の詳細および具体例については、後述する。
【0038】
<E.処理の詳細>
図6は、サーバ装置10の機能的構成を説明するための図である。
【0039】
図6を参照して、サーバ装置10は、制御部110と、取得部120と、送信部130と、表示部140とを備える。
【0040】
制御部110は、サーバ装置10の全体的な動作を制御する。制御部110は、塵芥領域検知部111と、第1領域分離部112と、第2領域分離部113と、判定部114と、予測部115と、送信制御部117と、表示制御部118とを含む。
【0041】
なお、送信制御部117と、表示制御部118と、送信部130と、表示部140とにより、報知部150が構成される。
【0042】
取得部120は、監視カメラ30からフレーム画像(フレーム画像データ)を取得(受信)する。取得部120は、監視カメラ30との間の通信インターフェイスとして機能する。本例では、取得部120は、1秒間に3枚のフレーム画像を監視カメラ30から取得する。取得部120は、取得されたフレーム画像を制御部110に送る。フレーム画像は、塵芥領域検知部111と、第1領域分離部112とに送られる。以下、各部の処理の詳細について、説明する。
【0043】
(e1.領域分離)
塵芥領域検知部111と、第1領域分離部112と、第2領域分離部113との処理について説明する。
【0044】
塵芥領域検知部111は、取得部120から送られてきたフレーム画像内における塵芥の領域を検知する。第1領域分離部112は、密なオプティカルフローを用いて、取得部120から送られてきたフレーム画像内の領域を静領域と動領域とに分離する。第2領域分離部113は、塵芥領域検知部111によって検知された塵芥の領域を、静領域に含まれる領域(すなわち、塵芥滞留領域)と、動領域に含まれる領域(塵芥流動領域)とに分離する。詳しく説明すると、以下のとおりである。
【0045】
(1)学習済みモデル
塵芥領域検知部111は、学習済みモデルによる検知処理を実行する。以下では、学習済みモデルの利用に先立ち、当該学習済みモデルの生成方法を説明する。すなわち、学習段階を説明する。
【0046】
図7は、学習済みモデルの生成方法を説明するための模式図である。
図7を参照して、学習用データ410として、複数の画像データを利用する。各画像データに対して、ピクセル単位で塵芥80であることを示すラベルを付ける。ラベル付けがされた画像データを学習することにより、学習済みモデル420が生成される。学習済みモデル420は、典型的には、ディープニューラルネットワーク構造と、パラメーターとで構成される。学習済みモデル420は、典型的には、逆誤差伝搬法を用いて生成される。なお、学習済みモデル420は、サーバ装置10で生成されてもよいし、他の装置で生成されてもよい。
【0047】
このような学習済みモデル420によれば、フレーム画像毎に、塵芥80の領域(画素)を判定することが可能となる。また、塵芥80の領域が判定されるため、当該領域の面積(具体的には、ピクセル数)も検知できる。
【0048】
なお、詳細については後述するが、本例では、動体検知との関係で、12枚のフレーム画像毎に塵芥80の領域の検出が行われる。具体的には、4秒に1回、学習済みモデルを用いた領域検知が行われる。
【0049】
(2)処理の概要
図8は、フレーム画像に対するデータ処理を説明するための図である。詳しくは、
図8は、塵芥領域検知部111による処理と、第1領域分離部112による処理と、第2領域分離部113による処理との概要を示した模式図である。
【0050】
図8を参照して、塵芥領域検知部111は、フレーム画像210を学習済みモデル420に入力することにより、出力として塵芥の領域を表したデータを得る。画像510は、フレーム画像210における塵芥の領域に対して、特定の第1の色(たとえば赤色)を付けた画像である。
【0051】
塵芥領域検知部111は、塵芥の領域の位置情報(フレーム画像内の位置を示す情報)を第2領域分離部113に通知する。また、塵芥領域検知部111は、塵芥の領域が特定されたことに基づき、塵芥の領域の面積を算出する。
【0052】
第1領域分離部112は、フレーム画像210に対して密なオプティカルフローを実行する。正確には、第1領域分離部112は、複数のフレーム画像210に基づき、密なオプティカルフローを用いた動体検知を実行する。なお、複数のフレーム画像210を用いる理由は、1枚のフレーム画像では動体検知できないためである。
【0053】
第1領域分離部112は、密なオプティカルフローによりフレーム画像210の領域(全体領域)を、静領域610Sと動領域610Mとに分離する。具体的には、第1領域分離部112は、静領域610Sを「0(黒)」、動領域610Mを「1(白)」としたマスク画像610(2値画像)を生成する。詳しくは、マスク画像610は、連続する複数のフレーム画像に基づいて生成される。詳細については、後述する(
図18)。
【0054】
第2領域分離部113は、マスク画像610を用いて、検出された塵芥の領域を、塵芥滞留領域と塵芥流動領域とに分離する。すなわち、塵芥80を、滞留している塵芥80Sと、流動している塵芥80Mとに分類する。
【0055】
画像510Sは、画像210における塵芥滞留領域(滞留している塵芥80S)に対して、特定の第2の色(たとえば、ピンク色)を付けた画像である。画像510Mは、画像210における塵芥流動領域(流動している塵芥80M)に対して、特定の第3の色(たとえば、緑色)を付けた画像である。
【0056】
以上のような2つの処理(塵芥領域の検知処理および密なオプティカルフローによる動体検知処理)によって、フレーム画像中の塵芥を、滞留している塵芥と流動している塵芥とに分離することが可能となる。
【0057】
第2領域分離部113は、判定部114と予測部115とに分離結果を通知する。詳しくは、第2領域分離部113は、塵芥滞留領域の位置情報を判定部114に通知する。第2領域分離部113は、塵芥流動領域の位置情報を予測部115に通知する。
【0058】
以下、上記のような分離手法を採る理由を説明する。
学習済みモデルで検知した塵芥の領域を塵芥滞留領域と塵芥流動領域とに分離するには、「動体検知により流動する塵芥を検知して、かつ当該検知結果と学習済みモデルの結果と合成する」といった手法が考えられる。
【0059】
しかしながら、動体検知のうち、疎なオプティカルフロー、フレーム間差分、背景差分は、上述したように、流動する塵芥の一部しか検知できない。それゆえ、塵芥の領域を塵芥滞留領域と塵芥流動領域とに正確に分離することは難しい。また、密なオプティカルフローでは、全ての画素の移動ベクトルを求められるが、流動する塵芥そのもの検知は難しい。
【0060】
そこで、本実施の形態では、画面全体を静と動との2領域に分割したマスク画像を生成し、かつ当該マスクと学習済みモデルで検知した塵芥の領域とを合成する手法を採用した。
【0061】
(3)密なオプティカルフロー
第1領域分離部112による密なオプティカルフローを用いたマスク生成について、具体的に説明すると以下のとおりである。なお、密なオプティカルフローは、オープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリであるOpenCV(Open Source Computer Vision Library)を用いることにより実現できる。
【0062】
図9は、密なオプティカルフローを用いたマスク画像の生成方法の詳細を説明するための模式図である。
【0063】
図9を参照して、第1領域分離部112は、フレーム画像220(状態(A))に対して、密なオプティカルフローを実行することにより、各画素の移動ベクトルを算出する。本例では、第1領域分離部112は、移動ベクトルを、HSV(HSV色空間)の値に変換する。これにより、HSV画像720が生成される(状態(B))。
【0064】
なお、HSVとは、色を色相(Hue)と彩度(Saturation)と明度(Value)との3要素で表現する方式である。本例では、Hの値は、移動方向を表す。Hの数値範囲(OpenCVでの数値範囲)は、0から180である。Vは、移動距離を表す。Vの数値範囲は、0から255である。
【0065】
第1領域分離部112は、HSVで示された画像を、Vに関する閾値を用いて2値化する。本例では、閾値を70としている。第1領域分離部112は、Vの値が70未満の画素を「0(黒)」とし、Vの値が70以上の画素を「1(白)」とする。すなわち、第1領域分離部112は、Vの値が70以上の画素を動体として検知する。
【0066】
第1領域分離部112は、フレーム画像220の領域を、Vの値が70未満である静領域620Sと、Vの値が70以上である動領域620Mとに分離する。これにより、HSV画像720からマスク画像620が生成される(状態(C))。
【0067】
次に、第2領域分離部113は、フレーム画像220とマスク画像620とを合成し、合成画像820を得る(状態(D))。このような合成処理により、第2領域分離部113は、検出された塵芥の領域を、塵芥滞留領域と塵芥流動領域とに分離することができる。
【0068】
(e2.判定および予測)
(1)概要
判定部114(
図6参照)による判定処理と予測部115による予測処理とについて説明する。
【0069】
図10は、制御部110によって検知されるデータと、当該データの一部を用いた判定および予測の内容とを示した図である。
【0070】
図10を参照して、学習済みモデル420によって、塵芥の領域の位置情報と、塵芥の領域の面積とが検知される。密なオプティカルフローによって、静領域と動領域とを示したマップ(すなわちマスク画像)が得られる。なお、マスク画像(
図8のマスク画像610を参照)では、フレーム画像のピクセル毎に静の領域と動の領域とが特定されている。上述したように、第2領域分離部113によるマスク処理によって、塵芥滞留領域の位置情報と、塵芥流動領域の位置情報とが検知される。
【0071】
判定部114は、フレーム画像における塵芥滞留領域の位置と、フレーム画像におけるスクリーン60の位置とに基づき、スクリーン60への塵芥の付着状況を判定する。
【0072】
具体的には、判定部114は、塵芥滞留領域の位置情報に基づいて、塵芥滞留領域の面積(ピクセル数)を算出する。判定部114は、塵芥滞留領域の位置情報に基づいて、塵芥滞留領域のスクリーン60に沿った長さ(以下、Ls)を算出する。詳しくは、判定部114は、塵芥滞留領域のうちスクリーン60と水路の水面との交線(
図12参照)に沿った部分領域における当該交線の方向の長さLsを算出する。
【0073】
さらに、判定部114は、当該交線の長さ(以下、L0)に対する長さLsの割合W(%)を算出する。すなわち、判定部114は、(Ls/L0)×100の値を算出する。なお、割合Wを百分率で算出する必要は必ずしもない。なお、以下では、割合Wを、「スクリーン占有率」とも称する。
【0074】
判定部114は、算出されたスクリーン占有率に基づいて、スクリーン60への塵芥の付着状況を判定する。たとえば算出されたスクリーン占有率が80%以上である場合には、判定部114は、塵芥がスクリーン60全体に付着していると判定する。判定部114は、判定結果を報知部150(
図6参照)に通知する。
【0075】
予測部115は、塵芥流動領域の位置情報に基づいて、塵芥流動領域の面積(ピクセル数)を算出する。予測部115は、算出された塵芥流動領域の面積に基づいて、塵芥の発生状況(傾向)を予測する。たとえば算出された面積が200ピクセル以上の場合には、予測部115は、1時間程度でスクリーン60全体に塵芥が付着すると予測する。予測部115は、予測結果を報知部150に通知する。
【0076】
詳しくは、予測部115は、塵芥流動領域の面積の値と、塵芥がスクリーン60全体に付着する時間との関係を示した参照用データを記憶している。予測部115は、参照用データに基づき、塵芥の発生状況を予測する。なお、参照用データは、予測部115とは異なる場所(図示しない記憶部等)に記憶されていてもよい。
【0077】
詳細については後述するが、塵芥滞留領域の位置情報と、塵芥滞留領域の面積と、塵芥流動領域の位置情報と、塵芥流動領域の面積とのうち、塵芥滞留領域の面積と、塵芥流動領域の面積とが、濁り判定に用いられる。濁り判定については、後述する(
図16,
図17)。
【0078】
なお、上記においては、判定部114が塵芥滞留領域の面積を算出し、予測部115が塵芥流動領域の面積を算出する構成を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されず、これらの面積を算出する面積算出部を別途設けてもよい。
【0079】
(2)詳細
濃霧等の特殊な気象条件とならない限り、水面上に取り付けた監視カメラ30の映像(フレーム画像)において確実に映るのは水面である。スクリーン60のうち水面下の部分に対する塵芥の付着状況は、濁り、光の反射等で映像に映らないことも想定される。それゆえ、映像に映る水面上の塵芥だけで、スクリーン60のうち水面下の部分も含めた塵芥の付着状況を推定する必要がある。以下、
図11~
図13に基づき、この点について説明する。
【0080】
図11は、
図4と同様、監視カメラ30によって撮像された画像を示した図である。詳しくは、
図11(A)は、
図4(A)の画像201において、スクリーン60と水面との交線に沿った領域R3を明示したものである。
図11(B)は、
図4(B)の画像202において、スクリーン60と水面との交線に沿った領域R3を明示したものである。なお、領域R3は、水面の領域である。
【0081】
図11(A)を参照して、スクリーン60に付着する塵芥80が少ないときの画像201では、塵芥滞留領域のうちスクリーン60(スクリーン面)と水面との交線に沿った部分領域の当該交線の方向の長さ(以下、「長さLs」と称する)は短い。なお、長さLsは、交線の方向に並んだ塵芥の長さを累積した長さとも言える。
図11(B)を参照して、スクリーン60全体に塵芥80が付着したときの画像202では、長さLsは長くなる。
【0082】
画像201,202には、水底も撮像できている。このような画像201,202から、「スクリーン60と水面との交線に沿った領域R3の当該交線の方向の長さ(水平方向の長さの累積)がスクリーン60全体の塵芥の付着状況に比例する」ことが判断できる。
【0083】
図12は、長さLsを説明するための図である。
図12(A)は、交線を説明するための図である。
図12(B)は、交線に沿った塵芥80Sの塊85を示した図である。
【0084】
図12(A)を参照して、交線は、水路50の水面と、スクリーン60を平面として捉えたスクリーン面とが交わっている線分である。
図12(B)を参照して、矢印は、交線の方向を示している。長さLsは、交線に沿って並んだ塵芥80Sの塊85の各長さL1~Lnの総和である。なお、nは、塊の数である。このように、長さLsは、塵芥80Sの塊85の各長さL1~Lnを累積したものである。
【0085】
図13は、
図11で説明した比例関係が成り立つことを検証した結果を示した図である。
図13(A)および
図13(B)は、塵芥滞留領域を示した図である。
【0086】
図13(A)を参照して、画像521Sは、フレーム画像において、滞留している塵芥80Sを特定の第2の色(たとえばピンク色)で着色したものである。画像521Sでは、水面下まで視認できない。画像521Sにおける塵芥滞留領域の面積は、9439ピクセルであった。また、上述したスクリーン占有率(W=(Ls/L0)×100)は、80.1%であった。
【0087】
図13(B)を参照して、画像522Sは、画像521Sが得られたときとは異なる時刻における塵芥滞留領域を表している。具体的には、画像522Sは、画像521Sと同様に、フレーム画像において、滞留している塵芥80Sを特定の第2の色(ピンク色)で着色したものである。
【0088】
画像522Sでは、画像521Sとは異なり、水面下まで確認できる。画像522Sにおける塵芥滞留領域の面積は、17657ピクセルであった。詳しくは、画像522Sにおける塵芥滞留領域の面積が画像521Sにおける塵芥滞留領域の面積よりも大きいため、画像522Sでは、画像521Sとは異なり水面下まで確認できる。また、上述したスクリーン占有率(W=(Ls/L0)×100)は、80.1%であった。
【0089】
図13(A)の塵芥滞留領域の面積と
図13(B)の塵芥滞留領域の面積とは異なるが、両者のスクリーン占有率は同じである。このことを
図11から考察すれば、
図13(A)のスクリーン全体の付着状況と
図13(B)のスクリーン全体の付着状況とは、同じであると推定できる。
【0090】
図14は、塵芥滞留領域の面積と、スクリーン占有率との変化を示した図である。なお、面積はピクセル数で表記している。
【0091】
図14を参照して、グラフには、0番目から14500番目のフレーム画像に対するデータが記載されている。なお、取得できたデータ数が少なかったため、グラフでは、12月2日のデータ後に、11月11日のデータ(先に取得したデータ)を連結している。
【0092】
グラフでは、流動する塵芥がない状態では、滞留する塵芥の増加も見られない。しかしながら、流動する塵芥が少量でも継続して観測されると、滞留する塵芥が増加する傾向が見て取れる。
【0093】
当該グラフにおいても、上述したように、塵芥流動領域の面積(ピクセル)の閾値を200とし、滞留している塵芥によるスクリーン占有率(割合W)の閾値を80%としている。塵芥流動領域の面積が200ピクセルを超えると、スクリーン占有率が1%/分(=10%/10分)で増加する傾向がわかる。
【0094】
図15は、
図14における100番目のフレーム画像と、6272番目のフレーム画像と、12996番目のフレーム画像とに基づく画像を示した図である。詳しくは、
図15は、塵芥滞留領域(滞留している塵芥80S)に対して上述した第2の色(ピンク色)を付けた画像と、塵芥流動領域(流動している塵芥80M)に対して、上述した第3の色(たとえば緑色)を付けた画像とを示した図である。
【0095】
図15を参照して、画像531S,531M(状態(A))は、100番目のフレーム画像に基づく画像である。詳しくは、画像531Sは、100番目のフレーム画像の塵芥滞留領域に対して上述した第2の色を付けた画像である。画像531Mは、100番目のフレーム画像の塵芥流動領域に対して上述した第3の色を付けた画像である。
【0096】
画像531Sに基づくと、スクリーン占有率は23.5%である。また、少量の塵芥80Sを適切に捉えている。大きな誤検知もない。画像531Mに基づくと、塵芥流動領域の面積は0ピクセルである。つまり、流動している塵芥はない。また、大きな誤検知もない。
【0097】
画像532S,532M(状態(B))は、6272番目のフレーム画像に基づく画像である。詳しくは、画像532Sは、6272番目のフレーム画像の塵芥滞留領域に対して上述した第2の色を付けた画像である。画像532Mは、6272番目のフレーム画像の塵芥流動領域に対して上述した第3の色を付けた画像である。
【0098】
画像532Sに基づくと、スクリーン占有率は66.2%である。また、滞留している塵芥80Sを適切に捉えている。大きな誤検知もない。画像532Mに基づくと、塵芥流動領域の面積は249ピクセルである。かなり小さい流動する塵芥については検知できていないが、流動している塵芥80Mを概ね捉えている。また、大きな誤検知もない。
【0099】
画像533S,533M(状態(C))は、12996番目のフレーム画像に基づく画像である。詳しくは、画像533Sは、12996番目のフレーム画像の塵芥滞留領域に対して上述した第2の色を付けた画像である。画像533Mは、12996番目のフレーム画像の塵芥流動領域に対して上述した第3の色を付けた画像である。
【0100】
画像533Sに基づくと、スクリーン占有率は83.4%である。また、滞留している塵芥80Sを適切に捉えている。大きな誤検知もない。画像533Mに基づくと、塵芥流動領域の面積は8574ピクセルである。流動している塵芥80Mを塊として捉えている。また、大きな誤検知もない。
【0101】
(3)濁り判定
判定部114が、スクリーン60への塵芥の付着状況を判定に加えて、濁り判定を行う構成について説明する。判定部114は、塵芥滞留領域の面積と、塵芥流動領域の面積とに基づき濁り判定を行う。
【0102】
詳しくは、判定部114は、塵芥滞留領域の面積と、塵芥流動領域の面積との和を算出する。判定部114は、フレーム画像全体の面積に対する上記面積和の割合を算出する。なお、判定部114は、塵芥流動領域の面積を算出してもよいし、あるいは予測部115から塵芥流動領域の面積を取得してもよい。
【0103】
図16は、濁り判定を説明するための図である。
図16(A)は、監視カメラ30によって撮像されたフレーム画像240を示した図である。
図16(A)を参照して、水が濁っていることがわかる。また、塵芥は視認できない。
【0104】
図16(B)は、フレーム画像240に対して、密なオプティカルフローを実行することにより生成されたマスク画像640を示した図である。
図16(B)を参照して、マスク画像640は、静領域640Sと動領域640Mとを含む。静領域640Sは、「0(黒)」、動領域640Mは、「1(白)」で表される。
【0105】
フレーム画像240に対しては、学習済みモデル420による塵芥領域の検知が行われる。検知された塵芥の領域は、マスク画像640によって、塵芥滞留領域と塵芥流動領域とに分離される。
【0106】
図16(C)は、フレーム画像240の領域のうち塵芥滞留領域に対して第2の色(ピンク色)を付けた図である。
図16(D)は、フレーム画像240の領域のうち塵芥流動領域に対して第3の色(緑色)を付けた図である。
【0107】
図17は、濁り判定の閾値と、予測処理に用いる閾値の例とを示した図である。
図17を参照して、判定部114は、本例では、スクリーン占有率が80%以上であって、かつ水面全体の面積(画面における水面領域(水面部分)の面積)に対する、塵芥滞留領域の面積と塵芥流動領域の面積との和(以下、「面積和」とも称する)の割合が30%未満であることを条件に、スクリーン占有率に基づいた塵芥のスクリーン60への付着状況の判定を行う。
【0108】
判定部114は、スクリーン占有率が80%以上であって、かつ水面全体の面積に対する上記面積和の割合が30%以上である場合には、水路50の水が濁っていると判定する。この場合、判定部114は、スクリーンへの塵芥の付着状況の判定を行わない。
【0109】
スクリーン占有率に関わらず、水面全体の面積に対する上記面積和の割合が30%未満であって、かつ塵芥流動領域の面積(ピクセル)が上述した閾値200以上となると、予測部115は、1時程度で塵芥がスクリーン60全体に付着すると予測する。
【0110】
図16の例の場合には、スクリーン占有率が80%以上であって、かつ塵芥滞留領域(
図16(C))の面積と塵芥流動領域(
図16(D))の面積との和(面積和)が水面全体の面積の30%以上となっている。このため、判定部114は、水路50の水が濁っていると判定し、スクリーンへの塵芥の付着状況の判定を行わない。
【0111】
(e3.報知処理)
再び
図6を参照して、報知部150による報知処理について説明する。
【0112】
報知部150は、判定部114から判定結果(判定された塵芥の付着状況)を受け付ける。報知部150は、予測部115から予測結果(予測された塵芥の付着状況)を受け付ける。
【0113】
ある局面において、送信制御部117は、送信部130を介して、判定部114による判定結果を端末装置20に通知する。送信制御部117は、送信部130を介して、予測部115による予測結果を端末装置20に送信する。
【0114】
他の局面において、表示制御部118は、表示部140に判定部114による判定結果を表示させる。また、表示制御部118は、表示部140に予測部115による予測結果を表示させる。
【0115】
表示部140を用いた表示による報知を行うか、送信部130を用いた遠隔地への報知とするかは、監視システム1において適宜、設定可能である。また、報知内容および報知先については、特に限定されるものではない。報知は、塵芥がスクリーン60に溜まっていること、およびスクリーン60に溜まりそうであることの少なくとも一方を、管理者が気付けるような内容であればよい。
【0116】
<F.制御構造>
図18は、サーバ装置10の処理の流れを表したフロー図である。なお、当該フロー図では、濁り検知の処理については記載していない。
【0117】
図18を参照して、ステップS1において、取得部120は、監視カメラ30で撮像されたフレーム画像の取得を開始する。これにより、フレーム画像が連続して、制御部110内に入力される。本例の場合、1秒間に3枚のフレーム画像が制御部110に入力される。第1領域分離部112は、フレーム画像を受け取る度に処理を繰り返す。一方、学習済みモデル420を利用する塵芥領域検知部111は、12フレーム毎(つまり、4秒毎)に結果を出力する。
【0118】
ステップS2において、第1領域分離部112は、予め設定された変数uの値を1にリセットする。ステップS3において、第1領域分離部112は、密なオプティカルフローにより各画素の移動ベクトルを算出する。ステップS4において、第1領域分離部112は、移動ベクトルから、移動方向をH、移動距離をVとするHSV画像を生成する(
図9の状態(B)参照)。ステップS5において、第1領域分離部112は、移動距離Vの閾値を70に設定して、2値化画像(以下、「mask」)を生成する(
図9の状態(C)参照)。
【0119】
ステップS6において、第1領域分離部112は、maskを予め設定した配列(以下、「queue」)に追加する。ステップS7において、第1領域分離部112は、queueの要素数が5であるか否かを判断する。すなわち、第1領域分離部112は、queueに5つのmaskが格納されたか否かを判断する。
【0120】
queueの要素数が5であると判断された場合(ステップS7においてYES)、第1領域分離部112は、ステップS8において、queueから一番古い要素を削除する。これにより、queueの要素数は4となる。第1領域分離部112は、その後、処理をステップS9に進める。queueの要素数が5でないと判断された場合(ステップS7においてNO)、第1領域分離部112は、処理をステップS9に進める。
【0121】
ステップS9において、第1領域分離部112は、queueの複数の要素(すなわち、mask)から、分離処理に用いる1つのmask(
図8の例の場合、マスク画像610)を生成する。ステップS10において、第1領域分離部112は、変数uの値が12であるか否かを判断する。
【0122】
ステップS9におけるmaskの生成について説明すると、以下のとおりである。第1領域分離部112は、画素毎に4つのマスク画像の値(0または1)を合計する。合計した値は、0~4の値の何れかとなる。第1領域分離部112は、合計した値が0なら、当該画素の値を0とする。第1領域分離部112は、合計した値が1以上である場合には、当該画素の値を1とする。このような処理を、画素毎に行い、1つのマスク画像を生成する。
【0123】
変数uの値が12でないと判断された場合(ステップS10においてNO)、第1領域分離部112は、ステップS11において、変数uの値をインクリメントする。すなわち、第1領域分離部112は、uの値を1だけ増加させる。ステップS12において、第1領域分離部112は、次のフレーム画像を読み込む。その後、第1領域分離部112は、処理をステップS3に戻す。
【0124】
変数uの値が12であると判断された場合(ステップS10においてYES)、ステップS13において、塵芥領域検知部111は、学習済みモデル420を用いて画素毎に塵芥が否かを判定し、判定結果をml_maskとして出力する。ステップS14において、第2領域分離部113は、maskによって、ml-maskを塵芥滞留領域(以下、「screen_mask」とも称する)と塵芥流動領域(以下、「float_mask」とも称する)とに分離する。
【0125】
ステップS15において、判定部114は、screen_maskに基づき、塵芥滞留領域の面積(以下、「screen_pixel」とも称する)と、スクリーン占有率(以下、「screen_cover」とも称する)とを算出する。ステップS16において、予測部115は、float_maskに基づき、塵芥流動領域の面積(以下、「float_pixel」とも称する)を算出する。
【0126】
ステップS17において、判定部114は、screen_coverに基づき、スクリーン60への塵芥の付着状況を判定する。ステップS18において、予測部115は、float_pixelに基づき、今後のスクリーン60への塵芥の付着状況を予測する。
【0127】
ステップS19において、報知部150は、判定結果および予測結果の少なくとも一方を報知する。ステップS20において、第1領域分離部112は、次のフレーム画像を読み込む。
【0128】
なお、判定結果および予測結果のうち、判定結果のみを報知するのか、予測結果のみを報知するのか、両方を報知するのかは、サーバ装置10の設定(ソフトウェアの設定)を変更することによって、適宜設定可能である。ただし、判定結果と予測結果との両方を報知することが、水路50の管理上好ましい。
【0129】
<G.ハードウェア構成>
図19は、サーバ装置10のハードウェア構成を説明するための図である。
【0130】
図19を参照して、サーバ装置10は、主たる構成要素として、プログラムを実行するプロセッサ151と、データを不揮発的に格納するROM152と、プロセッサ151によるプログラムの実行により生成されたデータ、又は入力装置を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM153と、データを不揮発的に格納するHDD154と、通信IF(Interface)155と、操作キー156と、電源回路157と、ディスプレイ158とを含む。各構成要素は、相互にデータバスによって接続されている。なお、通信IF155は、他の機器と間における通信を行なうためのインターフェイスである。
【0131】
サーバ装置10における処理は、各ハードウェアおよびプロセッサ151により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、HDD154に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、その他の記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。あるいは、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、読取装置によりその記憶媒体から読み取られて、あるいは、通信IF155等を介してダウンロードされた後、HDD154に一旦格納される。そのソフトウェアは、プロセッサ151によってHDD154から読み出され、RAM153に実行可能なプログラムの形式で格納される。プロセッサ151は、そのプログラムを実行する。
【0132】
同図に示されるサーバ装置10を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本発明の本質的な部分は、RAM153、HDD154、記憶媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、サーバ装置10の各ハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0133】
サーバ装置10の制御部110(
図6)の機能ブロックは、プロセッサ151がプログラムを実行することにより実現される。
【0134】
なお、端末装置20は、サーバ装置10と同様な構成を備えるため、端末装置20のハードウェア構成については、繰り返し説明しない。
【0135】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0136】
1 監視システム、10 サーバ装置、20 端末装置、30 監視カメラ、40 河川、50 水路、60 スクリーン、70 取水口、80,80M,80S 塵芥、90 小水力発電所、110 制御部、111 塵芥領域検知部、112 第1領域分離部、113 第2領域分離部、114 判定部、115 予測部、117 送信制御部、118 表示制御部、120 取得部、130 送信部、140 表示部、150 報知部、151 プロセッサ、158 ディスプレイ、201,202,510,510S,521S,522S,531M,531S,532M,532S,533M,533S,720 画像、210,220,240 フレーム画像、410 学習用データ、420 学習済みモデル、610,620,640 マスク画像、610M,620M,640M 動領域、610S,620S,640S 静領域、820 合成画像、A1,A2,A3 矢印、R1 場所、R2,R3 領域。