(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179009
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】自覚式検眼装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A61B3/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086210
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康雅
(72)【発明者】
【氏名】上川 知宏
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA14
4C316FA01
4C316FA06
4C316FA19
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】 被検眼の光学特性を精度よく測定できる自覚式検眼装置を提供する。
【解決手段】 被検眼に向けて視標光束を投光する投光光学系と、視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、投光光学系の光路中に固定配置され、被検眼に視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示するための固定光学部材と、を有する自覚式検眼装置であって、投光光学系を少なくとも含む測定ユニットを、固定光学部材に対して移動させることで、被検眼に投光光学系の光軸を位置合わせするための第1移動手段と、測定ユニット及び固定光学部材を、互いの位置関係を維持した状態で被検眼に対して移動させることで、被検眼に視標光束の像を所定の光学倍率で投影するように位置合わせするための第2移動手段と、被検眼と測定ユニットとの位置合わせにおいて、第1移動手段及び第2移動手段を制御する移動制御手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に向けて視標光束を投光する投光光学系と、
前記視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、
前記投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、前記被検眼に前記視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示するための固定光学部材と、
を有し、
前記被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置であって、
前記投光光学系を少なくとも含む測定ユニットを、前記固定光学部材に対して移動させることによって、前記被検眼に前記投光光学系の光軸を位置合わせするための第1移動手段と、
前記測定ユニット及び前記固定光学部材を、前記測定ユニットと前記固定光学部材との位置関係を維持した状態で、前記被検眼に対して移動させることによって、前記被検眼に前記視標光束の像を所定の光学倍率で投影するように位置合わせするための第2移動手段と、
前記被検眼と前記測定ユニットとの位置合わせにおいて、前記第1移動手段及び前記第2移動手段を制御する移動制御手段と、
を備えることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項2】
請求項1の自覚式検眼装置において、
前記移動制御手段は、前記第2移動手段の制御による位置合わせを実行した後に、前記第1移動手段の制御による位置合わせを実行することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項3】
請求項1または2の自覚式検眼装置において、
前記移動制御手段は、前記第2移動手段を制御して、前記被検眼に対する前記測定ユニットの粗アライメントを実行するとともに、前記第1移動手段を制御して、前記被検眼に対する前記測定ユニットの微アライメントを実行することによって、前記被検眼と前記測定ユニットとのアライメントを調整することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項4】
請求項3の自覚式検眼装置において、
前記移動制御手段は、前記被検眼と前記測定ユニットとの前記アライメントを実行した後に、前記第1移動手段を制御して、前記被検眼を追尾するトラッキングを実行することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記移動制御手段は、前記第2移動手段を制御し、前記被検眼に対して前記測定ユニット及び前記固定光学部材を少なくとも前後方向に移動させるとともに、前記第1移動手段を制御し、前記固定光学部材に対して前記測定ユニットを少なくとも左右方向及び上下方向に移動させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記測定ユニットは、左右一対の左眼用測定ユニットと右眼用測定ユニットを有し、
前記固定光学部材は、前記左眼用測定ユニットからの視標光束の光路と、前記右眼用測定ユニットからの視標光束の光路と、において共用され、
前記第2移動手段は、前記左眼用測定ユニット及び前記右眼用測定ユニットと、前記固定光学部材と、を一体的に移動させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記測定ユニットの位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報に基づいて、前記視標光束が前記固定光学部材を介すことで発生する光学収差を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記測定ユニットは、前記投光光学系とともに前記矯正光学系を含み、
前記固定光学部材は、前記矯正光学系に矯正された前記視標光束を前記被検眼に導光することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記固定光学部材は、凹面鏡であることを特徴とする自覚式検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置が知られている。例えば、特許文献1において、被検眼には、測定部からの視標光束が、固定配置された固定光学部材(凹面鏡)を介して導光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、固定配置された固定光学部材に対して測定部が移動するために、被検眼の光学特性を精度よく測定できない可能性が考えられた。例えば、測定部が大きく移動すると、被検眼から固定光学部材までの距離と、測定部から固定光学部材までの距離と、の関係が変化し、光学倍率が変化しやすくなる。また、例えば、測定部が大きく移動すると、光学収差が発生しやすくなる。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼の光学特性を精度よく測定できる自覚式検眼装置の提供を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
本開示の第1態様に係る自覚式検眼装置は、被検眼に向けて視標光束を投光する投光光学系と、前記視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、前記投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、前記被検眼に前記視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示するための固定光学部材と、を有し、前記被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置であって、前記投光光学系を少なくとも含む測定ユニットを、前記固定光学部材に対して移動させることによって、前記被検眼に前記投光光学系の光軸を位置合わせするための第1移動手段と、前記測定ユニット及び前記固定光学部材を、前記測定ユニットと前記固定光学部材との位置関係を維持した状態で、前記被検眼に対して移動させることによって、前記被検眼に前記視標光束の像を所定の光学倍率で投影するように位置合わせするための第2移動手段と、前記被検眼と前記測定ユニットとの位置合わせにおいて、前記第1移動手段及び前記第2移動手段を制御する移動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】装置内部の光学部材を直線上に配置して簡略化した図である。
【
図8】被検眼に対する第1ユニットと第2ユニットの位置を示す図である。
【
図9】凹面ミラーに対する第1ユニットの位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本開示の実施形態に係る自覚式検眼装置の概要について説明する。本実施形態では、自覚式検眼装置の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向(作動距離方向)をZ方向とする。符号に付されるL及びRは、それぞれ左眼用及び右眼用を示すものとする。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0010】
本実施形態の自覚式検眼装置は、被検眼の光学特性を自覚的に測定する。例えば、眼屈折力(球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、コントラスト感度、両眼視機能(斜位量、立体視機能、等)、等の少なくともいずれかを測定してもよい。自覚式検眼装置は、測定手段(例えば、測定部7)を備える。例えば、測定手段は、自覚式測定手段を備えていてもよい。また、例えば、測定手段は、他覚式測定手段を備えていてもよい。なお、本実施形態において、測定手段は少なくとも自覚式測定手段を備えていればよく、自覚式測定手段と他覚式測定手段をどちらも備えていてもよい。
【0011】
<自覚式測定手段>
自覚式検眼装置は、自覚式測定手段(例えば、自覚式測定光学系25)を備える。例えば、自覚式測定手段は、被検眼に向けて視標光束を投光する投光光学系(例えば、投光光学系30)を少なくとも有する。さらに、自覚式測定手段は、視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系(例えば、矯正光学系60)を有してもよい。
【0012】
<投光光学系>
投光光学系は、被検眼に向けて視標光束を投光する。投光光学系は、被検眼に向けて視標光束を導光する少なくとも1つの光学部材を有してもよい。
【0013】
投光光学系は、視標呈示手段を備えてもよい。視標呈示手段は、被検眼に視標を呈示する。この場合、投光光学系は、被検眼に向けて視標呈示手段から出射された視標光束を投光する。例えば、視標呈示手段としては、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ31)を用いることができる。また、例えば、視標呈示手段としては、光源とDMD(Digital Micromirror Device)を用いることができる。一般的に、DMDは反射率が高く明るいため、LCDを用いるよりも、視標光束の光量を維持することができる。また、例えば、視標呈示手段としては、視標呈示用の可視光源と視標板を用いることができる。視標板は回転可能なディスク板であり、複数の視標をもっていてもよい。被検眼に視標光束が導光される光路上で、視標板がモータ等により回転されることで、視標が切り換え配置される。
【0014】
投光光学系は、左右一対に設けられた左眼用投光光学系と右眼用投光光学系を有してもよい。例えば、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系は、左眼用投光光学系を構成する部材と右眼用投光光学系を構成する部材とが、同一の部材で構成されていてもよいし、少なくとも一部の部材が異なる部材で構成されていてもよい。また、例えば、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系は、左眼用投光光学系を構成する部材と右眼用投光光学系を構成する部材とで、少なくとも一部の部材を兼用する構成であってもよい。
【0015】
<矯正光学系>
矯正光学系は、投光光学系の光路中に配置され、視標光束の光学特性(球面度数、円柱度数、乱視軸角度、偏光特性、収差量、等の少なくともいずれか)を変化させる。
【0016】
例えば、矯正光学系は、光学素子を制御することで、視標光束の球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度、等の少なくともいずれかを変更可能としてもよい。光学素子は、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリプリズム、波面変調素子、可変焦点レンズ、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、これらの光学素子とは異なる光学素子であってもよい。
【0017】
また、例えば、矯正光学系は、被検眼に対する視標の呈示距離を光学的に変更することで、被検眼の球面度数を矯正してもよい。この場合、視標の呈示距離を光学的に変更するために、視標呈示手段を光軸方向に移動させる構成としてもよい。また、この場合、視標の呈示距離を光学的に変更するために、光路中に配置された光学素子(例えば、球面レンズ等)を光軸方向に移動させる構成としてもよい。
【0018】
なお、矯正光学系は、光学素子を制御する構成と、視標呈示手段を光軸方向に移動させる構成と、光路中に配置された光学素子を光軸方向に移動させる構成と、を組み合わせた構成であってもよい。
【0019】
本実施形態において、矯正光学系は、被検眼の眼前に光学素子を配置する眼屈折力測定ユニット(フォロプタ)であってもよい。例えば、眼屈折力測定ユニットは、可変焦点レンズを有し、可変焦点レンズの屈折力を変化させる構成であってもよい。また、例えば、眼屈折力測定ユニットは、複数の光学素子が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスクを回転させるための駆動手段(例えば、モータ)と、を有し、駆動手段の駆動によって、光学素子を電気的に切り換える構成であってもよい。もちろん、眼屈折力測定ユニットは、可変焦点レンズと、レンズディスク及び駆動手段と、を有する構成であってもよい。これらの構成を備える場合、被検眼に向けた視標光束は、眼屈折力測定ユニットを介して投影される。
【0020】
また、本実施形態において、矯正光学系は、視標呈示手段と、被検眼に向けて投光光学系からの視標光束を導光するための光学部材と、の間に光学素子を配置し、光学素子を制御することで、視標光束の光学特性を変更する構成であってもよい。すなわち、矯正光学系は、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正光学系)の構成であってもよい。この場合、矯正光学系によって矯正された視標光束は、光学部材を介して被検眼に導光される。
【0021】
矯正光学系は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系を有してもよい。例えば、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系は、左眼用矯正光学系を構成する部材と右眼用矯正光学系を構成する部材とが、同一の部材で構成されていてもよいし、少なくとも一部の部材が異なる部材で構成されていてもよい。また、例えば、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系は、左眼用矯正光学系を構成する部材と右眼用矯正光学系を構成する部材とで、少なくとも一部の部材を兼用する構成であってもよい。
【0022】
<他覚式測定手段>
自覚式検眼装置は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式測定手段(例えば、他覚式測定光学系10)を備えてもよい。例えば、他覚式測定手段は、被検眼の眼底に測定光束を投影する投影光学系(例えば、投影光学系10a)と、眼底にて測定光束が反射された反射光束を受光する受光光学系(例えば、受光光学系10b)と、を有してもよい。なお、他覚的な光学特性としては、眼屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、眼軸長、角膜形状、等の少なくともいずれかが測定されてもよい。
【0023】
<固定光学部材>
自覚式検眼装置は、固定光学部材を備える。固定光学部材は、投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、被検眼に視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示するための固定光学部材である。例えば、固定光学部材は、投光光学系からの視標光束を、被検眼に導光してもよい。また、例えば、固定光学部材は、投光光学系から投光され、さらに矯正光学系に矯正された視標光束を、被検眼に導光してもよい。なお、固定光学部材は、左眼用測定ユニット(後述)からの視標光束の光路と、右眼用測定ユニット(後述)からの視標光束の光路と、において共用されてもよい。例えば、固定光学部材としては、凹面鏡(例えば、凹面ミラー85)、レンズ、等の少なくともいずれかを用いることができる。
【0024】
本実施形態では、凹面鏡を使用して、被検眼に視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示する。これによって、所定の光学部材を実距離に配置する必要がないため、装置を省スペース化することができる。
【0025】
<第1移動手段>
自覚式検眼装置は、第1移動手段(例えば、第1移動ユニット9)を備える。第1移動手段は、測定ユニット(例えば、第1ユニットA1)を固定光学部材に対して移動させることによって、被検眼に投光光学系の光軸を位置合わせする。本実施形態において、第1移動手段は、少なくとも測定ユニットをX方向及びY方向へ移動可能な構成であればよい。例えば、被検眼はXY方向に動きやすく、被検眼と光軸のずれによって視標を適切に呈示できない可能性が生じるが、このような構成によって低減される。なお、被検眼のZ方向の動きには、後述の第2移動手段を用いることで対応することも可能であるが、もちろん、第1移動手段は測定ユニットをZ方向へ移動可能な構成であってもよい。つまり、第1移動手段は、測定ユニットを固定光学部材に対して3次元方向に移動させてもよい。これによって、被検眼の動きに応じて、投光光学系の光軸をより適切な位置に配置することができる。
【0026】
例えば、測定ユニットは、少なくとも投光光学系を含むユニットであればよい。一例としては、投光光学系を含む測定ユニットとして構成されてもよいし、投光光学系及び矯正光学系を含む測定ユニットとして構成されてもよい。もちろん、投光光学系とともに、他の光学部材を含む測定ユニットとして構成されてもよい。なお、測定ユニットは、左眼用投光光学系(及び、左眼用矯正光学系)を含む左眼用測定ユニットと、右眼用投光光学系(及び、右眼用矯正光学系)を含む右眼用測定ユニットと、を左右一対に有していてもよい。
【0027】
本実施形態では、被検眼の視線を検出して、その視線(言い換えると、視軸)と投光光学系の光軸と位置合わせするために、第1移動手段が用いられてもよい。被検眼の視線とは、被検眼が視標光束の像を注視する視線の位置であってもよい。例えば、被検眼の瞳孔間距離に基づく視線の位置、被検眼に対する視標の光学的な呈示距離に応じた輻輳角に基づく視線の位置、等であってもよい。もちろん、被検眼の瞳孔間距離及び輻輳角の双方に基づく視線の位置であってもよい。
【0028】
<第2移動手段>
自覚式検眼装置は、第2移動手段(例えば、第2移動ユニット8)を備える。第2移動手段は、測定ユニット及び固定光学部材を、測定ユニットと固定光学部材との位置関係を維持した状態で、被検眼に対して移動させることによって、被検眼に視標光束の像を所定の光学倍率で投影するように位置合わせする。つまり、測定ユニット及び固定光学部材を被検眼に対して一体的に移動させることによって、被検眼に視標光束の像を所定の光学倍率で投影するように位置合わせする。これによって、被検眼に投影される視標光束の像の光学倍率が維持される。本実施形態において、第2移動手段は、少なくとも測定ユニットと固定光学部材を、Z方向へ一体的に移動可能な構成であればよい。例えば、被検眼がZ方向へ動くと光学倍率が変化しやすく、視標を適切に呈示できない可能性が生じるが、このような構成によって低減される。
【0029】
もちろん、第2移動手段は、測定ユニットと固定光学部材を、X方向及びY方向へ移動可能な構成であってもよい。つまり、第2移動手段は、測定ユニットと固定光学部材を被検眼に対して一体的に3次元方向へ移動させてもよい。また、本実施形態において、第2移動手段は、左眼用測定ユニット及び右眼用測定ユニットと、固定光学部材と、を被検眼に対して一体的に移動させてもよい。
【0030】
<移動制御手段>
自覚式検眼装置は、移動制御手段(例えば、制御部70)を備える。移動制御手段は、被検眼と測定ユニットとの位置合わせにおいて、第1移動手段及び第2移動手段を制御する。例えば、移動制御手段は、第1移動手段の制御と、第2移動手段の制御と、を同一タイミングで実行してもよい。また、例えば、移動制御手段は、第1移動手段の制御と、第2移動手段の制御と、を異なるタイミングで実行してもよい。この場合、第1移動手段の制御と第2移動手段の制御は、いずれの制御が先に実行されてもよい。これによって、被検眼と投光光学系の光軸が一致されるとともに、被検眼に視標光束の像を所定の光学倍率で投影することができる。
【0031】
本実施形態において、移動制御手段は、第2移動手段の制御による位置合わせを実行した後に、第1移動手段の制御による位置合わせを実行してもよい。この場合には、まず、被検眼に対し、測定ユニットと固定光学部材との位置関係を維持した状態で、これらを一体的に移動させ、光学倍率を合わせることによって、被検眼に適切な視標光束の像を投影することができる。続いて、被検眼に対して(固定光学部材に対して)測定ユニットを移動させ、被検眼に投光光学系の光軸を一致させることによって、被検眼に適切な視標光束の像を投影することができる。なお、第2移動手段の制御による位置合わせを先に行うことによって、第1移動手段の制御による測定ユニットの移動が最小限に抑えられるため、発生し得る光学収差をより小さくできる。
【0032】
また、本実施形態において、移動制御手段は、第2移動手段を制御して、被検眼に対する測定ユニットの粗アライメントを実行するとともに、第1移動手段を制御して、被検眼に対する測定ユニットの微アライメントを実行することによって、被検眼と測定ユニットとのアライメントを調整してもよい。すなわち、第2移動手段の制御によって、被検眼に対する測定ユニットの大まかなアライメントが行われ、第1移動手段の制御によって、被検眼に対する測定ユニットの細かなアライメントが行われてもよい。例えば、光学倍率を粗アライメントで一致させておき、その上で被検眼と投光光学系の光軸を微アライメントで一致させることで、光学収差の発生を最小限に抑え、被検眼に適切な視標を呈示することができる。
【0033】
なお、移動制御手段は、被検眼と測定ユニットのアライメント(粗アライメント及び微アライメント)を実行した後、さらに第1移動手段を制御して、被検眼を追尾するトラッキングを実行してもよい。例えば、被検眼の自覚式測定中の動き(一例として、固視微動、等)に応じて、測定ユニットを移動させてもよい。被検眼の動きに素早く対応し、被検眼と投光光学系の光軸を適宜一致させることで、被検眼に適切な視標を呈示することができる。
【0034】
また、本実施形態において、移動制御手段は、第2移動手段を制御し、被検眼に対して測定ユニット及び固定光学部材を少なくともZ方向に移動させるとともに、第1移動手段を制御し、固定光学部材に対して測定ユニットを少なくともX方向及びY方向に移動させてもよい。これにより、被検眼のZ方向のずれに対応させて、所定の光学倍率を維持することができる。また、被検眼のXY方向のずれ(すなわち、被検眼に対する光軸のずれ)に対応させて、被検眼に視標を適切に呈示することができる。
【0035】
<位置情報取得手段>
自覚式検眼装置は、位置情報取得手段(例えば、制御部70)を備える。位置情報取得手段は、測定ユニットの位置情報を取得する。例えば、測定ユニットの位置情報は、測定ユニットの位置座標として表されてもよい。また、例えば、測定ユニットの位置情報は、被検眼から測定ユニットまでの3次元方向の距離、固定光学部材から測定ユニットまでの3次元方向の距離、等として表されてもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、測定ユニットが固定光学部材とともに移動ユニット(例えば、第2ユニットA2)として一体的に移動する。例えば、測定ユニットは、移動ユニットの内部に設けられ、第1移動手段の制御によって移動ユニット内を移動する。このため、位置情報取得手段は、移動ユニットの位置情報に対する測定ユニットの位置情報を取得してもよい。より詳細には、移動ユニットを基準とした測定ユニットの位置座標を求めてもよいし、移動ユニットを基準とした3次元方向の距離を求めてもよい。
【0037】
<補正手段>
自覚式検眼装置は、補正手段(例えば、制御部70)を備える。補正手段は、測定ユニットの位置情報に基づいて、視標光束が固定光学部材を介すことで発生する光学収差を補正する。例えば、補正手段は、被検眼の光学特性と測定ユニットの位置情報とに基づく演算処理を実行することによって、光学収差を補正してもよい。また、例えば、補正手段は、被検眼の光学特性と測定ユニットの位置情報とに基づく補正テーブルを参照することによって、光学収差を補正してもよい。なお、補正テーブルは、記憶手段(例えば、メモリ75)に予め記憶されていてもよい。これによって、例えば、光学倍率の関係性が崩れて光学収差が発生するような場合であっても、被検眼と投光光学系の光軸が適切に位置合わせされる。
【0038】
例えば、補正手段は、補正量設定手段を備えてもよい。補正量設定手段は、視標光束が固定光学部材を介すことで発生する光学収差を補正するための補正量を設定してもよい。この場合、一例として、補正手段は、投光光学系及び矯正光学系の少なくともいずれかを制御し、視標光束の光学特性を補正量に基づいて変化させることによって、光学収差を補正してもよい。なお、このような補正量は、被検眼の光学特性と測定ユニットの位置情報に基づく演算処理や補正テーブルによって求められてもよい。これによって、被検眼の光学特性を精度よく取得することができる。
【0039】
<実施例>
本実施形態に係る自覚式検眼装置(以下、検眼装置)の一実施例について説明する。
【0040】
図1は、検眼装置100の外観図である。例えば、検眼装置100は、筐体2、呈示窓3、額当て4、顎台5、コントローラ6、撮像部90、等を備える。筐体2は、その内部に、測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85、等を有する。呈示窓3は、被検眼Eに視標を呈示するために用いる。額当て4及び顎台5は、被検眼Eと検眼装置1との距離を一定に保つために用いる。コントローラ6は、モニタ6a、スイッチ部6b、等を有する。モニタ6aは、各種の情報(例えば、被検眼の測定結果、等)を表示する。モニタ6aは、スイッチ部6bの機能を兼ねたタッチパネルでもよい。スイッチ部6bは、各種の設定(例えば、開始信号の入力、等)を行うために用いる。コントローラ6からの操作指示に応じた信号は、有線通信または無線通信により、制御部70へと出力される。
【0041】
撮像部90は、被検者の顔を撮影し、被検眼のY方向の位置を調整するために用いる。撮像部90は、図示なき撮像光学系を備える。例えば、撮像光学系は、撮像素子とレンズで構成されてもよい。本実施例では、撮像部90が後述の第2ユニットA2に設けられ、第2ユニットA2とともにZ方向へ移動する。
【0042】
<測定部>
測定部7は、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rを備える。左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、は同一の部材で構成される。もちろん、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、はその少なくとも一部が異なる部材で構成されてもよい。測定部7は、左右一対の自覚式測定部と、左右一対の他覚式測定部と、を有する(詳細は後述)。被検眼Eには、測定部7からの視標光束及び測定光束が、呈示窓3を介して導光される。
【0043】
図2は、左眼用測定部7Lを示す図である。右眼用測定部7Rは、左眼用測定部7Lと同様の構成であるため、省略する。例えば、左眼用測定部7Lは、他覚式測定光学系10、自覚式測定光学系25、第1指標投影光学系45、第2指標投影光学系46、観察光学系50、等を備える。
【0044】
<他覚式測定光学系>
他覚式測定光学系10は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力が測定される。例えば、他覚式測定光学系10は、投影光学系10aと、受光光学系10bと、で構成される。
【0045】
投影光学系10aは、被検眼Eの瞳孔中心部を介して、被検眼Eの眼底にスポット状の測定視標を投影する。例えば、投影光学系10aは、光源11、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、対物レンズ93、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、等を備える。光源11は、測定光束を出射する。光源11は、被検眼Eの眼底と共役な関係となっている。ホールミラー13のホール部は、被検眼Eの瞳孔と共役な関係となっている。プリズム15は、光束偏向部材である。プリズム15は、被検眼Eの瞳孔と共役な位置から外れた位置に配置され、プリズム15を通過する測定光束を光軸L1に対して偏心させる。プリズム15は、光軸L1を中心として、駆動部(モータ)23により回転駆動される。ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光路と、自覚式測定光学系25の光路と、を共通光路にする。つまり、他覚式測定光学系10の光軸L1と、自覚式測定光学系25の光軸L2と、を同軸にする。ダイクロイックミラー29は、光路分岐部材である。ダイクロイックミラー29は、投影光学系10aによる測定光束と、投光光学系30(後述)による視標光束と、を反射して被検眼Eに導く。
【0046】
受光光学系10bは、被検眼Eの眼底で反射された眼底反射光束を、被検眼Eの瞳孔周辺部を介してリング状に取り出す。例えば、受光光学系10bは、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、対物レンズ93、プリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22、等を備える。リングレンズ20は、リング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外の領域に遮光用のコーティングを施した遮光部と、から構成される。リングレンズ20は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。受光絞り18と撮像素子22は、被検眼Eの眼底と共役な関係となっている。撮像素子22からの出力は、制御部70に入力される。
【0047】
なお、本実施例において、プリズム15は、投影光学系10aと受光光学系10bの共通光軸に配置されている。例えば、投影光学系10aからの測定光束はプリズム15を通過して被検眼Eに入射し、被検眼Eの眼底で反射した眼底反射光束は同じプリズム15を通過するため、それ以降の光学系では、あたかも瞳孔上における投影光束・眼底反射光束(受光光束)の偏心がなかったかのように逆走査される。
【0048】
<自覚式測定光学系>
自覚式測定光学系25は、被検眼Eの光学特性を自覚的に測定する自覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力が測定される。例えば、自覚式測定光学系25は、投光光学系30と、矯正光学系60と、で構成される。
【0049】
<投光光学系>
投光光学系30は、被検眼Eに向けて視標光束を投光する。例えば、投光光学系30は、ディスプレイ31、投光レンズ33、投光レンズ34、反射ミラー36、対物レンズ92、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、等を備える。ディスプレイ31には、視標(固視標、検査視標、等)が表示される。
【0050】
<矯正光学系>
矯正光学系60は、投光光学系30の光路内に配置される。また、矯正光学系60は、ディスプレイ31から出射した視標光束の光学特性を変化させる。例えば、矯正光学系60は、乱視矯正光学系63、駆動機構39、等を備える。乱視矯正光学系63は、被検眼Eの円柱度数や乱視軸角度を矯正するために用いる。乱視矯正光学系63は、投光レンズ33と投光レンズ34との間に配置される。乱視矯正光学系63は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ61aと円柱レンズ61bで構成される。円柱レンズ61aと円柱レンズ61bは、回転機構62aと回転機構62bの駆動によって、光軸L2を中心として、各々が独立に回転する。
【0051】
なお、本実施例では、乱視矯正光学系63として、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。乱視矯正光学系63は、円柱度数、乱視軸角度、等を矯正できる構成であればよい。一例としては、投光光学系30の光路に、矯正レンズを出し入れしてもよい。
【0052】
投影光学系10aが備える光源11及びリレーレンズ12と、受光光学系10bが備える受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、及び撮像素子22と、投光光学系30が備えるディスプレイ31と、は駆動機構39によって光軸方向へ一体的に移動可能となっている。つまり、ディスプレイ31、光源11、リレーレンズ12、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、及び撮像素子22、が駆動ユニット95として同期し、駆動機構39によって、これらが一体的に移動される。駆動機構39は、モータ及びスライド機構からなる。
【0053】
駆動機構39は、駆動ユニット95を光軸方向へ移動させることで、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる。これによって、他覚式測定では、被検眼Eに雲霧をかけることができる。自覚式測定では、被検眼Eに対する視標の呈示距離を光学的に変更し、被検眼Eの球面度数を矯正することができる。すなわち、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる構成が、被検眼Eの球面度数を矯正する球面矯正光学系として用いられ、ディスプレイ31の位置を変更することによって、被検眼Eの球面度数が矯正される。なお、球面矯正光学系の構成は、本実施例とは異なっていてもよい。例えば、多数の光学素子を光路内に配置することで、球面度数を矯正してもよい。また、例えば、レンズを光路内に配置し、レンズを光軸方向に移動させることで、球面度数を矯正してもよい。
【0054】
また、駆動機構39は、駆動ユニット95を光軸方向へ移動させることで、光源11とリレーレンズ12、及び、受光絞り18から撮像素子22、を光軸L1方向へ移動させる。これによって、被検眼Eの眼底に対し、光源11、受光絞り18、及び撮像素子22が光学的に共役となるように配置される。なお、駆動ユニット95の移動にかかわらず、ホールミラー13とリングレンズ20は、被検眼Eの瞳と一定の倍率で共役になるように配置されている。このため、投影光学系10aの測定光束が反射された眼底反射光束は、常に平行光束として受光光学系10bのリングレンズ20に入射し、被検眼Eの眼屈折力に関わらず、リングレンズ20と同一の大きさのリング状光束が、ピントの合った状態で、撮像素子22に撮像される。
【0055】
<第1指標投影光学系及び第2指標投影光学系>
第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46は、ダイクロイックミラー29と、偏向ミラー81(後述)と、の間に配置される。第1指標投影光学系45は、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。第2指標投影光学系46は、第1指標投影光学系45とは異なる位置に配置され、被検眼の角膜に有限遠のアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。第2指標投影光学系46から出射される近赤外光(アライメント光)は、観察光学系50によって被検眼の前眼部を撮影するための前眼部撮影光としても用いられる。
【0056】
<観察光学系>
観察光学系(撮像光学系)50は、ダイクロイックミラー29、対物レンズ103、撮像レンズ51、撮像素子52、等を備える。ダイクロイックミラー29は、前眼部観察光及びアライメント光を透過する。撮像素子52は、被検眼Eの前眼部と共役な位置に配置された撮像面をもつ。撮像素子52からの出力は、制御部70に入力される。これによって、被検眼Eの前眼部画像は撮像素子52により撮像され、モニタ6a上に表示される。なお、この観察光学系50は、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46によって、被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によってアライメント指標像の位置が検出される。
【0057】
<検眼装置の内部構成>
検眼装置100の内部構成について説明する。
図3は、検眼装置100の内部を正面方向から見た概略図である。
図4は、検眼装置100の内部を側面方向から見た概略図である。
図5は、検眼装置100の内部を上面方向から見た概略図である。なお、
図4と
図5では、説明の便宜上、左眼用測定部7Lの光軸のみを示す。
【0058】
検眼装置100は、他覚式測定部を備える。例えば、他覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85、等で構成される。また、検眼装置100は、自覚式測定部を備える。例えば、自覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85、等で構成される。なお、他覚式測定部及び自覚式測定部は、この構成に限定されない。例えば、反射ミラー84を有さない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの光束が、偏向ミラー81を介した後に、凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの光束が、ハーフミラーを介して凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。
【0059】
例えば、偏向ミラー81は、左右一対にそれぞれ設けられた左眼用偏向ミラー81Lと右眼用偏向ミラー81Rとを有する。例えば、偏向ミラー81は、矯正光学系60と被検眼Eとの間に配置される。すなわち、本実施例における矯正光学系60は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系とを有しており、左眼用偏向ミラー81Lは左眼用矯正光学系と左眼ELの間に配置され、右眼用偏向ミラー81Rは右眼用矯正光学系と右眼ERの間に配置される。例えば、偏向ミラー81は、瞳共役位置に配置されることが好ましい。
【0060】
例えば、左眼用偏向ミラー81Lは、左眼用測定部7Lから投影される光束を反射して、左眼ELに導光する。また、例えば、左眼用偏向ミラー81Lは、左眼ELからの眼底反射光束を反射して、左眼用測定部7Lに導光する。例えば、右眼用偏向ミラー81Rは、右眼用測定部7Rから投影される光束を反射して、右眼ERに導光する。また、例えば、右眼用偏向ミラー81Rは、右眼ERからの眼底反射光束を反射して、右眼用測定部7Rに導光する。
【0061】
例えば、偏向ミラー81は、駆動部82によって回転移動される。例えば、偏向ミラー81の回転移動によって、被検眼の眼前に視標光束の像を形成するためのみかけの光束を偏向させ、光学的に視標光束の像の形成位置を補正することができる。例えば、駆動部82は、モータ等からなる。例えば、駆動部82は、水平方向(X方向)の回転軸及び鉛直方向(Y方向)の回転軸に対して、偏向ミラー81を回転させる。すなわち、駆動部82は、偏向ミラー81をXY方向に回転させる。なお、偏向ミラー81の回転は、水平方向又は鉛直方向の一方であってもよい。例えば、駆動部82は、左眼用偏向ミラー81Lを駆動するための駆動部82Lと、右眼用偏向ミラー81Rを駆動するための駆動部82Rと、を有する。
【0062】
なお、本実施例では、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射させて導光する偏向部材として、偏向ミラー81を用いる構成を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。偏向部材は、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射して導光することができればよく、プリズム、レンズ、等であってもよい。
【0063】
また、例えば、偏向ミラー81は、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて複数設けられてもよい。例えば、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれに、2つの偏向ミラーを設ける構成(例えば、左眼用光路に2つの偏向ミラーを設ける構成、等)が挙げられる。この場合、一方の偏向ミラーがX方向に回転され、他方の偏向ミラーがY方向に回転されてもよい。
【0064】
例えば、凹面ミラー85は、被検眼Eに矯正光学系60を通過した視標光束を導光し、被検眼Eの眼前に矯正光学系60を通過した視標光束の像を形成する。例えば、凹面ミラー85は、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、において共有される。例えば、凹面ミラー85は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、において共有される。すなわち、凹面ミラー85は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、が共に通過する位置に配置されている。もちろん、凹面ミラー85は、左眼用光路と右眼用光路とで共有される構成でなくてもよい。すなわち、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、のそれぞれに凹面ミラーが設けられる構成であってもよい。
【0065】
<他覚式測定部と自覚式測定部の光路>
他覚式測定部の光路について、左眼用光路を例に挙げて説明する。右眼用光路は、左眼用光路と同様の構成である。投影光学系10aの光源11から出射した測定光束は、各光学部材を経由して、左眼ELに到達する。例えば、測定光束は、リレーレンズ12からダイクロイックミラー29までの光学部材を順に経由することによって、左眼用測定部7Lから左眼用偏向ミラー81Lへと導光される。さらに、視標光束は、左眼用偏向ミラー81Lに反射され、反射ミラー84と凹面ミラー85を介して、左眼ELに導光される。左眼ELの眼底上には、スポット状の点光源像が形成される。このとき、光軸周りに回転するプリズム15によって、ホールミラー13におけるホール部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は、高速に偏心回転される。
【0066】
被検眼Eの眼底において、測定光束は反射されて射出し、凹面ミラー85、反射ミラー84、及び偏向ミラー81を経由して左眼用測定部7Lに導光される。さらに、ダイクロイックミラー29とダイクロイックミラー35に反射され、対物レンズ93によって集光し、高速回転するプリズム15と、ホールミラー13からミラー17までの光学部材と、を介して受光絞り18の開口上で再び集光すると、コリメータレンズ19とリングレンズ20により、リング状の像として撮像素子22に結像する。撮像素子22が撮像したリング状の像を解析することで、被検眼Eの光学特性を他覚的に測定することができる。
【0067】
自覚式測定部の光路について、左眼用光路を例に挙げて説明する。右眼用光路は、左眼用光路と同様の構成である。自覚式測定光学系25のディスプレイ31から出射した視標光束は、各光学部材を経由して、左眼ELに到達する。例えば、視標光束は、投光レンズ33からダイクロイックミラー29までの光学部材を順に経由することによって、左眼用測定部7Lから左眼用偏向ミラー81Lへと導光される。さらに、視標光束は、左眼用偏向ミラー81Lに反射され、反射ミラー84と凹面ミラー85を介して、左眼ELに導光される。
【0068】
これにより、左眼ELの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、左眼ELの眼底上に、矯正光学系60で矯正された視標光束の像が形成される。従って、矯正光学系による球面度数の調整(本実施例では、駆動機構39の駆動)が眼前で行われたことと、乱視矯正光学系63があたかも眼前に配置されたことと、が等価になっている。被検者は、凹面ミラー85を介して光学的に所定の検査距離で眼前に形成された視標光束の像を、自然な状態で視準することができる。
【0069】
<第1ユニットと第2ユニット>
本実施例において、検眼装置100の内部は、第1ユニットA1と、第2ユニットA2と、により構成される。例えば、第1ユニットは、左右一対に設けられた、左眼用ユニットA1Lと右眼用ユニットA1Rとを有する。左眼用ユニットA1Lは、左眼用測定部7Lと左眼用偏向ミラー81Lを一体的に移動させるためのユニットである。つまり、左眼用測定部7Lに含まれる投光光学系30及び矯正光学系60と、左眼用偏向ミラー81Lと、を一体的に移動させるためのユニットである。同様に、右眼用ユニットA1Rは、右眼用測定部7Rと右眼用偏向ミラー81Rを一体的に移動させるためのユニットである。つまり、右眼用測定部7Rに含まれる投光光学系30及び矯正光学系60と、右眼用偏向ミラー81Rと、を一体的に移動させるためのユニットである。例えば、第2ユニットA2は、第1ユニットA1(左眼用ユニットA1Lと右眼用ユニットA1R)、反射ミラー84、及び凹面ミラー85を一体的に移動させるためのユニットである。
【0070】
例えば、第1ユニットA1は、第2ユニットA2内に固設された基台86(基台86Lと基台86R)に対して、第1移動ユニット9により、3次元方向に移動される。これによって、例えば、第1ユニットA1は、凹面ミラー85に対して3次元方向に移動可能となる。なお、第1ユニットA1におけるX方向及びY方向の少なくともいずれかの移動によって、被検眼の眼前に視標光束の像を形成するためのみかけの光束の、凹面ミラー85に対する入射位置が変更される。また、第1ユニットA1におけるZ方向の移動によって、凹面ミラー85から第1ユニットA1までの間の距離が変化し、測定部7からの視標光束の像の呈示距離が変更される。
【0071】
例えば、第1移動ユニット9は、X移動部、Y移動部、Z移動部、駆動部、等で構成される。一例として、X移動部は、基台86に対してX方向へY移動部を移動させるスライド機構でもよい。また、Y移動部は、X移動部に対してY方向へZ移動部を移動させるスライド機構でもよい。また、Z移動部は、Y移動部に対してZ方向へ第1ユニットA1を移動させるスライド機構でもよい。つまり、第1ユニットA1はZ移動部に連結され、Z移動部の移動、Y移動部の移動、及びX移動部の移動を介して、基台86に対して3次元方向に移動される。駆動部は、各移動部をそれぞれに駆動するための複数のモータ等を備えてもよい。
【0072】
例えば、第1移動ユニット9は、左眼用ユニットA1Lを移動させるための左眼用移動ユニット9Lと、右眼用ユニットA1Rを移動させるための右眼用移動ユニット9Rと、を有する。これによって、左眼用ユニットA1Lと右眼用ユニットA1Rは、それぞれが3次元方向に独立して移動する。なお、左眼用ユニットA1Lと右眼用ユニットA1Rの各方向に対する移動量は、モータのパルス数等を利用して検出される。
【0073】
例えば、第2ユニットA2は、筐体2内に固設された基台87に対して、第2移動ユニット8により、Z方向に移動される。これによって、例えば、第2ユニットA2は、被検眼Eに対してZ方向に移動可能となる。例えば、第2ユニットA2におけるZ方向の移動によって、凹面ミラー85から第1ユニットA1までの距離を変化させることなく、第1ユニットA1(測定部7)をZ方向へ移動させることができる。つまり、凹面ミラー85と第1ユニットA1との位置関係を維持したまま、第1ユニットA1(測定部7)をZ方向へ移動させることができる。例えば、第2移動ユニット8は、Z移動部と駆動部で構成される。一例として、Z移動部は、基台87に対してZ方向へ第2ユニットA2を移動させるスライド機構でもよい。つまり、第2ユニットA2はZ移動部に連結され、Z移動部の移動を介して、基台87に対してZ方向に移動される。駆動部は、Z移動部を駆動するためのモータ等を備えてもよい。なお、第2ユニットA2のZ方向に対する移動量は、モータのパルス数等を利用して検出される。
【0074】
図6は、検眼装置100の内部の光学部材を直線上に配置して簡略化した図である。例えば、第1ユニットA1は、第2ユニットA2の内部において、初期位置D1に配置される。初期位置D1は、被検眼Eから凹面ミラー85までを適切な作動距離WDに合わせた際に、被検眼Eの瞳孔位置(つまり、瞳位置)と、自覚式測定部の瞳共役位置と、が一定の位置関係となるような、Z方向の位置である。例えば、第2ユニットA2は、測定位置T1に配置される。測定位置T1は、被検眼Eから凹面ミラー85までを適切な作動距離WDとするZ方向の位置である。
【0075】
本実施例では、被検眼Eに対し第2ユニットA2を移動させて測定位置T1に配置し、被検眼Eと凹面ミラー85を適切な作動距離WDに保つことで、第2ユニットA2とともに移動された第1ユニットA1が初期位置D1に配置される。このとき、被検眼Eから凹面ミラー85までの距離(すなわち、適切な作動距離WD)と、凹面ミラー85から第1ユニットA1までの距離wdと、は同一になり、被検眼Eと偏向ミラー81が凹面ミラー85を介して光学的に共役となる。また、被検眼Eから凹面ミラー85までの光学倍率と、凹面ミラー85から第1ユニットA1までの光学倍率と、が等倍になる。これによって、被検眼Eには視標光束の像が良好に投影される。
<制御部>
図7は、検眼装置100の制御系を示す図である。制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、検眼装置100における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、検眼装置100の動作を制御するための各種プログラム、視標、初期値、等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0076】
例えば、制御部70には、モニタ6a、光源11、撮像素子22、ディスプレイ31、撮像素子52、不揮発性メモリ75(以下、メモリ75)等の各種部材が電気的に接続されている。また、例えば、制御部70には、第1移動ユニット9の駆動部、第2移動ユニット8の駆動部、駆動機構39、等が電気的に接続されている。例えば、メモリ75は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ75としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。
【0077】
<制御動作>
検眼装置100の制御動作について説明する。
【0078】
<被検眼のアライメント>
検者は、被検者に、顔を額当て4と顎台5に当接させて呈示窓3を観察するように指示を出す。なお、被検者の顔が固定されるため、被検眼EはX方向、Y方向、及びZ方向へずれにくくなる。続いて、検者は、スイッチ部6bを操作し、被検眼Eを固視させるための固視標をディスプレイ31に表示させる。これによって、被検眼Eには固視標が投影される。
【0079】
さらに、検者は、スイッチ部6bを操作し、被検眼Eに対するアライメントを実行するためのスイッチを選択する。制御部70は、スイッチ部6bからの入力信号に応じて、第1指標投影光学系45、第2指標投影光学系46、及び観察光学系50を制御し、被検眼Eの角膜にアライメント指標を投影するとともに、被検眼Eのアライメント指標像を含む前眼部画像を取得する。また、制御部70は、前眼部画像のアライメント指標像を用いて角膜頂点位置を検出し、アライメント基準位置に対する角膜頂点位置のX方向、Y方向、及びZ方向のずれに基づいて、第1ユニットA1及び第2ユニットA2を移動させる。
【0080】
まず、各ユニットのZ方向の移動について説明する。
図8は、被検眼Eに対する第1ユニットA1と第2ユニットA2の位置を示す図である。
図8(a)は、被検眼Eに対して第2ユニットA2が待機位置にある状態を示す。
図8(b)は、被検眼Eに対して第2ユニットA2が測定位置T1にある状態を示す。
図8(a)のように、被検眼Eのアライメント開始時には、第2ユニットA2が待機位置に位置している。例えば、このとき、被検眼Eと凹面ミラー85を適切な作動距離WDとする位置Bから、距離δz1だけZ方向に離れて、凹面ミラー85が位置する。なお、被検眼Eの形状(一例として、奥目や出目)によって、距離δz1は変化し得る。また、被検眼Eから凹面ミラー85までの距離(すなわち、作動距離WD+距離δz1)と、凹面ミラー85から第1ユニットA1までの距離wdと、において距離δz1の差が生じているため、被検眼Eには視標が所定の光学倍率とは異なる倍率で呈示される。
【0081】
制御部70は、被検眼Eと凹面ミラー85を適切な作動距離WDに一致させるため、第2移動ユニット8の駆動部を制御し、基台87に対して第2ユニットA2をZ方向へ移動させる。また、制御部70は、角膜頂点位置のZ方向のずれが許容範囲に入ると、第2移動ユニット8の駆動部の制御を停止することで、第2ユニットA2の移動を停止させる。これによって、
図8(b)のように、被検眼Eに対して第2ユニットA2が距離δz1だけ移動して測定位置T1に配置されるとともに、凹面ミラー85が位置Bに配置される。被検眼Eと凹面ミラー85が適正な作動距離WDに一致し、被検眼Eに対する第1ユニットA1(測定部7)のZ方向のアライメントが完了する。
【0082】
なお、第1ユニットA1は、第2ユニットA2の内部にて、基台86を介して初期位置D1に位置している。第1ユニットA1は、第2ユニットA2の移動にともなって距離δz1だけ移動し、被検眼Eから凹面ミラー85までの距離(作動距離WD)と、凹面ミラー85から第1ユニットA1までの距離wdと、が同一距離に合わせられる。このため、被検眼Eには、視標が所定の光学倍率で呈示されるようになる。
【0083】
次に、第1ユニットA1のX方向及びY方向の移動について説明する。被検眼Eの位置は、瞳孔間距離や輻輳角(詳細には、視標の光学的な呈示距離に応じた輻輳角)等によって変化する。被検眼Eに視標光束を適切に導光するためには、被検眼Eの位置に基づいて、凹面ミラー85に対する視標光束のXY方向の入射位置を変更する必要がある。すなわち、被検眼Eに光軸を一致させる必要がある。なお、被検眼Eと光軸とにXY方向のずれがある場合、被検眼Eは視標を良好に視認できない可能性がある。例えば、視標の一部が欠けて見える、左右眼で上手く視標を融像できない、等の問題が起こり得る。
【0084】
制御部70は、被検眼Eに光軸を一致させるため、第1移動ユニット9の駆動部を制御し、基台86に対して第1ユニットA1をX方向及びY方向へ移動させる。また、制御部70は、角膜頂点位置のX方向及びY方向のずれが許容範囲に入ると、第1移動ユニット9の各駆動部の制御を停止することで、第1ユニットA1の移動を停止させる。これにより、凹面ミラー85に対して第1ユニットA1がXY方向へ移動され、被検眼Eと光軸とが一致し、被検眼Eに対する第1ユニットA1(測定部7)のXY方向のアライメントが完了する。被検眼Eは、視標を適切に視認することができる。
【0085】
<自覚式測定>
検者は、被検眼Eと第1ユニットA1とのアライメントが完了すると、被検眼Eに対する自覚式測定を開始する。検者は、スイッチ部6bを操作して、被検眼Eを矯正する矯正度数を設定する。一例として、被検眼Eの他覚的な眼屈折力(他覚値)に基づき、被検眼Eを矯正する球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度を選択してもよい。
【0086】
制御部70は、スイッチ部6bからの選択信号に応じ、投光光学系30と、矯正光学系60と、の少なくともいずれかを制御する。例えば、制御部70は、駆動機構39を駆動し、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させることで、被検眼Eの球面度数を矯正してもよい。また、例えば、制御部70は、回転機構62aと回転機構62bを駆動し、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを光軸L2bの軸周りに回転させることで、被検眼Eの円柱度数と乱視軸角度の少なくともいずれかを矯正してもよい。これによって、被検眼Eは所定のディオプタ値(例えば、0D等)で矯正される。
【0087】
検者は、スイッチ部6bを操作して、被検眼Eに呈示する視標の視力値を切り換えながら、被検眼Eを矯正する矯正度数が適切であるかを確認する。例えば、被検者に視標の向きを問い、被検者が正答すれば1段階高い(すなわち、小さな値の)視力値に切り換え、被検者が誤答すれば1段階低い(すなわち、大きな値の)視力値に切り換える。制御部70は、スイッチ部6bからの変更信号に基づき、ディスプレイ31に表示する視標を変更する。なお、被検眼Eを矯正する矯正度数が不適切であった場合等には、矯正度数を変更する。これによって、被検眼Eの自覚的な眼屈折力(自覚値)が取得される。
【0088】
<被検眼のトラッキング>
上記では、被検眼Eの自覚式測定を開始する前にアライメントを完了させているが、自覚式測定の途中で、被検眼Eと第1ユニットA1の関係性が必ずしも維持されるとは限らない。例えば、被検眼Eが動いたり、視標の呈示距離が変更されたりすることで、アライメント基準位置に対して角膜頂点位置がずれ、許容範囲から外れる可能性がある。そこで、制御部70は、自覚式測定の途中においても常にずれを検出し、角膜頂点位置が許容範囲から外れた場合には、被検眼Eに第1ユニットA1を追尾(トラッキング)させてもよい。
【0089】
本実施例では、被検眼Eの細かな動きに応じて第1移動ユニット9を制御し、第1ユニットA1のみを移動させることによって、被検眼Eがトラッキングされる。被検眼のZ方向の動きに関しては、第2移動ユニット8の制御で第2ユニットA2を移動させることも可能であるが、第2ユニットA2は一体移動する光学部材が多く大掛かりであるため、素早い対応は難しい。
【0090】
図9は、凹面ミラー85に対する第1ユニットA1の位置を示す図である。
図9(a)は、第1ユニットA2が初期位置D1にある状態を示す。
図9(b)は、第1ユニットA1が初期位置D1から移動した移動位置D2にある状態を示す。なお、自覚式測定の途中では、角膜頂点位置のずれに応じて、第1ユニットA1がX方向、Y方向、及びZ方向の少なくともいずれかの方向へ移動されるが、ここでは、便宜上、Z方向について説明する。
【0091】
例えば、被検眼Eが
図9(a)の状態から凹面ミラー85へ近づく方向へ距離δz2だけ移動すると、
図9(b)の状態となり、被検眼Eから凹面ミラー85までの距離が作動距離WD´に変化する。このとき、制御部70は、第1移動ユニット9の駆動部を制御し、第1ユニットA1を基台86に対して凹面ミラー85から離れる方向へ距離δz3だけ移動させる。被検眼EのZ方向のずれ量と、第1ユニットA1のZ方向の移動量と、の関係は予め設定されていてもよい。これによって、被検眼Eに対する視標の光学的な呈示距離が保たれる。同様に、被検眼EがX方向及びY方向へ移動した場合、制御部70は、第1移動ユニット9の駆動部を制御し、第1ユニットA1を基台86に対して凹面ミラー85のX方向及びY方向へ移動させる。被検眼EのXY方向のずれ量と、第1ユニットA1のXY方向の移動量と、の関係は予め設定されていてもよい。これによって、被検眼Eと光軸が一致し、被検眼Eは視標を適切に視認することができる。
【0092】
<光学収差の補正>
なお、被検眼Eのトラッキングにおいては、凹面ミラー85に対して第1ユニットA1を移動させることで、被検眼Eから凹面ミラー85までの距離(作動距離WD´)と、凹面ミラー85から第1ユニットA1までの距離(距離wd+距離δz3)と、における光学倍率の関係性がわずかに崩れる。このため、光学収差が発生して、被検眼Eに適切な視標を呈示できないことがある。
【0093】
そこで、制御部70は、第1ユニットA1の各方向の位置情報を利用して、光学倍率の変化を補正するための補正量を設定する。すなわち、初期位置D1から移動位置D2への各方向の移動量に基づき、光学倍率の変化を補正するための補正量を設定する。一例としては、光学倍率を1倍に補正するための補正量を設定してもよい。例えば、メモリ75には、第1ユニットA1の位置情報に補正量を対応付けた、実験やシミュレーションに基づく補正テーブルが記憶されていてもよい。
【0094】
例えば、制御部70は、補正テーブルから取得した補正量に基づいて、ディスプレイ31の表示を制御し、視標の大きさを変更する等してもよい。これによって、第1ユニットA1の移動にともなう光学収差を考慮した、適切な視標を呈示することができる。
【0095】
以上、説明したように、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、投光光学系を少なくとも含む測定ユニットを固定光学部材に対して移動させる第1移動手段と、測定ユニットと固定光学部材との位置関係を維持した状態で、測定ユニット及び固定光学部材を被検眼に対して移動させる第2移動手段とを、被検眼と測定ユニットとの位置合わせにおいてそれぞれ制御する。例えば、被検眼と投光光学系の光軸の位置合わせでは、第1移動手段を制御することによって、測定ユニットの移動にともなう光学収差の発生を抑制することができる。また、例えば、被検眼に視標光束の像を所定の光学倍率で投影するための位置合わせでは、第2移動手段を制御することによって、光学倍率の変化を抑制することができる。これらの結果として、被検眼の光学特性を精度よく測定することができる。
【0096】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、第2移動手段の制御による位置合わせを実行した後に、第1移動手段の制御による位置合わせを実行する。例えば、先に第2移動手段を制御し、予め所定の光学倍率に調整しておくことによって、その後の第1移動手段の制御において測定ユニットの移動が最小限に抑えられ、発生し得る光学収差がより小さくなる。なお、例えば、先に第1移動手段を制御する場合は、測定ユニットが固定光学部材に対して大きく移動するために、光学収差が大きくなりやすい。また、後の第2移動手段の制御によってこの光学収差を小さくするには、再び第1移動手段を移動させる必要が生じる。一例としては、測定ユニットを前方向へ移動させた後に、測定ユニット及び固定光学部材の一体的な前方向の移動量を考慮して、測定ユニットを後方向へ移動させる必要が生じる。このため、制御が複雑になりやすい。
【0097】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、第2移動手段を制御して、被検眼に対する測定ユニットの粗アライメントを実行するとともに、第1移動手段を制御して、被検眼に対する測定ユニットの微アライメントを実行することによって、被検眼と測定ユニットとのアライメントを調整する。第2移動手段を制御して所定の光学倍率に一致させ、その上で第1移動手段を制御して被検眼と投光光学系の光軸を一致させることによって、被検眼に適切な視標を呈示することができる。
【0098】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、被検眼と測定ユニットとのアライメント(粗アライメント及び微アライメント)を実行した後に、第1移動手段の制御によって、被検眼を追尾するトラッキングを実行する。例えば、被検眼の自覚式測定中の細かな動きに、第1移動手段の制御で素早く対応することによって、被検眼に適切な視標が呈示される。
【0099】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、被検眼に対して測定ユニット及び固定光学部材を少なくとも前後方向に移動させるとともに、固定光学部材に対して測定ユニットを少なくとも左右方向及び上下方向に移動させる。例えば、被検眼の前後方向のずれは光学倍率への影響が大きいが、第2移動手段を制御することによって、所定の光学倍率を維持しやすくなる。また、例えば、被検眼の左右方向及び上下方向のずれ(すなわち、被検眼と光軸とのずれ)は、第1移動手段を制御することによって、その発生が抑えられる。
【0100】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、測定ユニットの位置情報を取得し、この位置情報に基づいて、視標光束が固定光学部材を介すことで発生する光学収差を補正する。これによって、例えば、測定ユニットが固定光学部材に対して移動され、光学倍率の関係性が崩れて光学収差が発生するような場合であっても、被検眼に投光光学系の光軸が適切に位置合わせされる。
【0101】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、固定光学部材として凹面鏡を使用する。例えば、凹面鏡によって、視標が光学的に所定の検査距離で呈示され、各々の光学系を構成する部材を、実距離に配置する必要がなくなる。このため、装置が小型化される。なお、例えば、固定光学部材として凹面鏡を使用する場合は、レンズ等を使用する場合よりも、固定光学部材に対する測定ユニットの移動にともなう光学収差が大きく発生しやすい。しかし、被検眼に投光光学系の光軸を位置合わせするための第1移動手段と、被検眼に視標光束の像を所定の光学倍率で投影するように位置合わせするための第2移動手段と、をそれぞれに設けることで、光学収差の影響をより小さく抑えるように、測定ユニットを移動できる。
【0102】
<変容例>
なお、本実施例では、第1ユニットA1として偏向ミラー81と測定部7を凹面ミラー85に対して一体的に移動させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、測定部7のみを凹面ミラー85に対して移動させる構成としてもよい。この場合には、測定部7をX方向、Y方向、及びZ方向へ移動可能とする駆動部を設け、測定部7が偏向ミラー81の回転に合わせて移動されてもよい。一例としては、測定部7が偏向ミラー81に対してX方向及びY方向へ移動されることで、被検眼Eの瞳孔間距離や輻輳角に応じた位置に視標光束の入射位置(視標光束の光軸)を一致させてもよい。また、測定部7が偏向ミラー81に対してZ方向へ移動されることで、視標の呈示距離を変更してもよい。
【0103】
なお、本実施例では、第2移動ユニット8が第2ユニットA2をZ方向へ移動可能とする構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第2移動ユニット8は、第2ユニットA2を少なくともZ方向へ移動可能とする構成であればよい。これは、被検眼EのZ方向の位置が、被検眼Eの形状(奥目や出目)によって変化するためである。例えば、このような構成であれば、被検眼Eの形状にかかわらず、光学倍率を維持することができる。被検眼EのX方向及びY方向の位置は、額当て4や顎台5によっておおよそ固定されるが、第2ユニットA2は、もちろんX方向及びY方向へ移動可能とされてもよい。
【0104】
なお、本実施例では、第2移動ユニット8が、第2ユニットA2において凹面ミラー85と第1ユニットA1とを一体的に移動させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第2移動ユニット8は、実質的に凹面ミラー85と第1ユニットA1とを一体的に移動させる構成であってもよい。例えば、この場合、第2移動ユニット8は、凹面ミラー85をZ方向へ移動させるためのZ移動部及び駆動部と、第1ユニットA1をZ方向へ移動させるためのZ移動部及び駆動部と、をそれぞれ備えてもよい。第2移動ユニット8は、凹面ミラー85の移動量と第1ユニットA1の移動量が同じとなるように各々の駆動部を制御することで、凹面ミラー85及び第1ユニットA1の位置関係を維持し、所定の光学倍率を維持してもよい。
【0105】
なお、本実施例では、被検眼Eのアライメントにおいて、前眼部を撮影した前眼部画像を利用し、角膜頂点位置とアライメント基準位置とのずれを検出することで、第1ユニットA1をX方向及びY方向へ移動させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検者の顔を撮影した顔画像を利用し、瞳孔間距離を検出することで、第1ユニットA1をX方向及びY方向へ移動させる構成としてもよい。また、例えば、前眼部画像と顔画像をいずれも利用して、アライメントを行ってもよい。この場合には、顔画像に基づく瞳孔間距離に応じて、第1ユニットA1をXY方向へ粗アライメントさせるとともに、前眼部画像に基づくアライメント基準位置からのずれに応じて、第1ユニットA1をXY方向へ微アライメントさせてもよい。
【0106】
なお、本実施例では、被検眼Eのアライメントにおいて、第2ユニットA2をZ方向へ移動させた後に、第1ユニットA1をXY方向へ移動させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第2ユニットA2をZ方向へ移動させつつ、第1ユニットA1をXY方向へ同時に移動させる構成としてもよい。これによって、効率よくアライメントを行うことができる。
【0107】
なお、本実施例では、被検者の顔を額当て4及び顎台5で固定する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検者の顔を額当て4のみで固定する構成としてもよい。例えば、被検者の回答に基づいて進行される自覚式測定では、被検者が顎を顎台5に当接させて話すことによって、被検眼Eが特にY方向へ動きやすくなる。顎台5を使用せず、額当て4のみを使用することで、このようなY方向への動きを抑制してもよい。
【符号の説明】
【0108】
7 測定部
10 他覚式測定光学系
25 自覚式測定光学系
70 制御部
75 メモリ
81 偏向ミラー
84 反射ミラー
85 凹面ミラー
100 自覚式検眼装置