(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179023
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】蓋体および包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/02 20060101AFI20221125BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B65D43/02
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086240
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光信
【テーマコード(参考)】
3E013
3E084
【Fターム(参考)】
3E013BA02
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC05
3E013BC13
3E013BC14
3E013BC20
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF22
3E013BF33
3E084AA06
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB10
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084FB09
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA06
3E084LD30
(57)【要約】
【課題】適度な通気量を確保しつつ、フラップ状の弁部を定位置に保持させ、意図しない隙間から異物が混入しないようにする異物混入予防性を向上させた包装容器の蓋体、および蓋体を備えた包装容器を提供することを目的とする。
【解決手段】容器本体2に装着される蓋体3であって、容器本体2の開口部Mを塞ぐ天面部32と、天面部32に形成され、且つ湾曲している切れ込み部5の両端を結ぶ直線領域Laを支点にして開閉可能なフラップ弁4と、を備え、天面部32は、直線領域Laに交差するように延在する副切れ込み部6を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に装着される蓋体であって、
前記容器本体の開口部を塞ぐ天面部と、
前記天面部に形成され、且つ湾曲している切れ込み部の両端を結ぶ直線領域を支点にして開閉可能なフラップ弁と、を備え、
前記天面部は、前記直線領域に交差するように延在する一または複数の副切れ込み部を備えている、蓋体。
【請求項2】
前記副切れ込み部は複数設けられており、
前記複数の副切れ込み部は、前記直線領域の延在方向に並んで配置されている、請求項1記載の蓋体。
【請求項3】
前記切れ込み部は一方の端と他方の端とを備え、
前記複数の副切れ込み部は、前記直線領域の延在方向の中央部分よりも前記一方の端に近い第1の副切れ込み部と、前記中央部分よりも前記他方の端に近い第2の副切れ込み部と、を備え、
前記第1の副切れ込み部と前記第2の副切れ込み部との間には、副切れ込み部を形成しない抵抗部が設けられている、請求項2記載の蓋体。
【請求項4】
前記天面部は、前記開口部を覆う基準面部と、前記基準面部よりも厚く、前記副切れ込み部の周縁に沿って設けられた膨出部とを備えており、前記膨出部は、前記基準面部よりも厚い、請求項1または2記載の蓋体。
【請求項5】
前記副切れ込み部の幅は、0.1mm以上、1.0mm以下である、請求項1~4のいずれか一項記載の蓋体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項記載の前記蓋体と、前記容器本体とを備えた包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器の蓋体と、蓋体を備えた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジで加熱する食品等を包装する包装容器においては、容器内への異物侵入を防止しながら、内容物から発生する水蒸気等を容器外に排出させる必要がある。例えば、特許文献1には、水蒸気を容器外に排出するために蓋体に設けられたフラップ状の弁部が開示されている。フラップ状の弁部は、蓋体の天面部のU字状のスリットによって形成され、内圧が高まると弁部は開き、水蒸気等を排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に食品用の包装容器では、例えば、その蓋体に設けられる通気用の細孔やフラップ状の弁部は、なるべく通気量が多い、即ち開口の面積が広い方が好ましい。一方で、開口から異物が混入しないように十分な配慮が必要である。従来のフラップ状の弁部を備えた蓋体では、通気量は比較的確保し易いが、隙間が閉じた状態、あるいは隙間が最小限となるように弁部を定位置に保持させておくための強度が必ずしも高いとは言えなかった。その結果、フラップ状の弁部が自重によって垂れ下がるなどして定位置からずれ、生じた隙間から異物が混入する可能性もあった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされた発明である。即ち本発明は、適度な通気量を確保しつつ、フラップ状の弁部を定位置に保持させ、意図しない隙間から異物が混入しないようにする異物混入予防性を向上させた包装容器の蓋体、および蓋体を備えた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、包装容器の内外の圧力差に応じて自動的に開閉するフラップ弁の構造について鋭意検討した。本発明者らは、所謂U字型の単純な切れ込み部のみで形成されるフラップ弁よりも、例えば、フラップ弁の開閉の支点となる領域、具体的には、U字状の切れ込み部の両端を結ぶ直線領域に交差するように、更なる切れ込み部を設けることで、フラップ弁を定位置に保持させておく保持強度を高めることができることを知見し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明は、容器本体に装着される蓋体であって、容器本体の開口部を塞ぐ天面部と、天面部に形成され、且つ湾曲している切れ込み部の両端を結ぶ直線領域を支点にして開閉可能なフラップ弁と、を備え、天面部は、直線領域に交差するように延在する一または複数の副切れ込み部を備えている。
【0008】
上記の蓋体では、フラップ弁を形成するための切れ込み部に加え、一または複数の副切れ込み部を備えているので、適度な通気量を確保するために設けたフラップ弁を定位置に保持させておくための保持強度を高めることができ、異物混入予防性を向上させることができる。
【0009】
副切れ込み部は複数設けられており、複数の副切れ込み部は、直線領域の延在方向に並んで配置されていてもよい。直線領域の延在方向に並ぶ複数の副切れ込み部を設けることで、フラップ弁は直線領域を支点とした傾動を行い難くなり、フラップ弁を定位置に保持させておくための保持強度を高める上で有利になり、異物混入予防性を更に向上させることができる。
【0010】
切れ込み部は一方の端と他方の端とを備え、複数の副切れ込み部は、直線領域の延在方向の中央部分よりも一方の端に近い第1の副切れ込み部と、中央部分よりも前記他方の端に近い第2の副切れ込み部と、を備え、第1の副切れ込み部と第2の副切れ込み部との間には、副切れ込み部を形成しない抵抗部が設けられていてもよい。抵抗部は、フラップ弁が開閉する際の抵抗になるため、フラップ弁を定位置に保持させておくための保持強度を高める上で有利になる。
【0011】
天面部は、開口部を覆う基準面部と、基準面部よりも厚く、副切れ込み部の周縁に沿って設けられた膨出部とを備えていてもよい。膨出部を設けることで、フラップ弁を定位置に保持させておくための保持強度を更に高めることができ、異物混入予防性を向上させることができる。
【0012】
副切れ込み部の幅は、0.1mm以上、1.0mm以下であってもよい。副切れ込み部の幅を0.1mm以上にすることでフラップ弁を定位置に保持させておくための保持強度の最適化を図り易くなり、1.0mm以下にすることで、異物混入予防性の向上に有利になる。
【0013】
また、本発明は、上記の蓋体と、容器本体とを備えた包装容器である。この包装容器では、蓋体のフラップ弁を定位置に保持させておくための保持強度を高めることができ、異物混入予防性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、適度な通気量を確保するために設けたフラップ弁を定位置に保持させておくための保持強度を高めることができ、異物混入予防性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る包装容器の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】実施形態に係る包装容器の一例を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係るフラップ弁を示し、(a)図は平面図であり、(b)図は(a)図のb-b線に沿った断面図である。
【
図4】
図3の(a)図のIV-IV線に沿った断面図であり、(a)図はフラップ弁が閉じている状態を示す断面図であり、(b)図はフラップ弁が開いている状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係るフラップ弁を示し、(a)図は平面図であり、(b)図は(a)図のb-b線に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係るフラップ弁を示し、(a)図は平面図であり、(b)図は(a)図のb-b線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係るフラップ弁を示す平面図である。
【
図8】
図8は、フラップ弁を撮影した写真を示し(a)図は、第1の実施例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真であり、(b)図は、第2の実施例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真であり、(c)図は、第3の実施例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真である。
【
図9】
図9は、フラップ弁を撮影した写真を示し(a)図は、第4の実施例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真であり、(b)図は、第1の比較例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真であり、(c)図は、第2の比較例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真である。
【
図10】
図10は、フラップ弁の開閉に係る保持強度、具体的には所定の距離だけ押し込むために要する荷重(押し込み強度)を測定した値を示し、板厚補正した押し込み強度を示すグラフである。
【
図11】
図11は、フラップ弁を撮影した写真を示し(a)図は、第5の実施例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真であり、(b)図は、第6の実施例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真である。
【
図12】
図12は、フラップ弁を撮影した写真を示し(a)図は、第7の実施例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真であり、(b)図は、第3の比較例に係るフラップ弁を平面視した場合の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参酌しながら以下に説明する。但し、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
(包装容器全体の説明)
図1は、本発明の実施態様の一例である包装容器の形状を示す分解斜視図であり、
図2は主として蓋体を示す平面図である。包装容器1は、食品等を収納して保持する容器本体2と、容器本体2の開口部Mを閉鎖するように容器本体2に装着される蓋体3とを備えている。
【0018】
容器本体2は、例えば、円形の開口部Mを有する鉢型形状である。容器本体2は、食品等が載置される底部21と、底部21の外周に沿って立設された周壁22とを備えている。周壁22の上端には、開口部Mの外縁を形成するように本体嵌合部23が設けられている。本体嵌合部23は、周方向で途切れることなく連続的に設けられている。
【0019】
蓋体3は、本体嵌合部23に嵌合する蓋体嵌合部31と、蓋体嵌合部31で取り囲まれた内側の天面部32とを備えている。蓋体嵌合部31は、本体嵌合部23に沿うように周方向で連続的に設けられており、実質的に、全周にわたって本体嵌合部23に嵌合して装着されている。天面部32は、容器本体2の開口部Mの全面を塞ぐような形状及び寸法を備えている。天面部32には、内部の空気や蒸気を逃がすために開閉するフラップ弁4が設けられている。
【0020】
実施形態に係る蓋体3は、容器本体2の開口部Mを塞ぐように上方から容器本体2に被せられ、容器本体2の本体嵌合部23の内側に嵌合(内嵌)されて開口部Mを塞ぐ内嵌合方式の蓋である。なお、蓋体3の蓋体嵌合部31が本体嵌合部23に装着される形態は、内嵌合方式に限定されず、例えば、本体嵌合部23の外側に嵌合(外嵌)する外嵌合方式の蓋体3であってもよい。なお、蓋体3を容器本体2に装着する形態は、嵌合方式に限定されず、例えば、テープ止めなどによって安定した装着が可能であれば、蒸気が漏れない程度の僅かな遊びを有するように装着される形態であってもよい。
【0021】
(容器本体について)
上述の通り、実施形態に係る容器本体2の形状は、円形の開口部Mを有する鉢型形状である。しかしながら、容器本体2の形状は鉢型形状に限定されず、また開口部Mの形状も円形に限定されない。したがって、容器本体2は、矩形の壁面を有するような箱型形状であったり、有底の筒状であったりしてもよい。また、開口部Mの形状は、円形に限定されず、楕円形、矩形、三角形、五角形、六角形等、種々の形状を選択することが可能である。容器本体2の厚みは、例えば、0.5mm以上で、且つ5.0mm以下である。
【0022】
(容器本体の材料)
容器本体2の素材に特に限定は無いが、例えば、食品等を収納したまま電子レンジで加熱して食事に供する容器として考えると、金属以外の素材であることが好ましい。具体的には合成樹脂、紙、木、或いはこれらを組み合わせた素材を用いることができ、これらの素材を鉢状に成形することで容器本体2を成形することができる。これらの素材のうち、合成樹脂を用いると工業生産性の面で好適である。
【0023】
容器本体2の素材を合成樹脂とする場合、合成樹脂の種類は、後述の蓋体3と同一種類としても異なる種類としてもよい。また、電子レンジで加熱した後、食品等の保温や素手で容器本体2を保持する際の火傷防止を考慮して、容器本体2の全部或いは側面部を発泡素材製とすることもできる。容器本体2の材料について、更に詳しく説明する。
【0024】
容器本体2の材料としては、発泡合成樹脂のシート材料を使用することができる。発泡合成樹脂のシート材料としては、代表的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン等、各種の合成樹脂シートを使用できる。特に、これらの中でもポリスチレンを発泡させた発泡ポリスチレンシートや、耐熱性に優れたポリスチレンを発泡させた耐熱性発泡ポリスチレンシートが好ましい。このような発泡シートとしては、例えば、スチレン樹脂単独、あるいは、スチレンモノマーと共重合可能なブタジエン、無水マレイン酸、メタクリル酸などのモノマーとスチレンモノマーとの共重合体樹脂単独、または、スチレン樹脂と前記共重合体樹脂やポリフェニレンエーテル系樹脂などの耐熱性樹脂などとの混合物に、ブタンやペンタンなどの物理的発泡剤や、アゾジカルボンアミドなどの化学的発泡剤や、二酸化炭素、窒素、空気などの発泡剤とともに押出機で混練して押出し発泡させてなる発泡シートや、その片面もしくは両面に樹脂フィルムを積層させたものを挙げることができる。また、容器本体2の材料としては非発泡シートを使用してもよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン等、各種の合成樹脂シートを使用できる。
【0025】
(容器本体の成形方法)
容器本体2は、各種のシート成形方法により行うことができる。シート成形方法として、例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形等があり、いずれかの方法により合成樹脂製シートを熱成形することにより形成することができ、特に、発泡シートを成形する場合は、外型と内型とから構成されるマッチモールド成形が適している。
【0026】
(蓋体について)
蓋体3は、容器本体2の開口部Mを覆うことができる形状、寸法を備えていればよく、円形に限定されない。例えば、容器本体2の開口部Mの形状に対応し、円形、楕円形、矩形、三角形、五角形、六角形等、種々の形状を選択することが可能である。蓋体3の厚みは、例えば、0.1mm以上で、且つ0.5mm以下である。なお、蓋体3に設けられるフラップ弁4の開閉性、つまり通期量の最適化という観点では蓋体3の厚みは、0.2mm以上で、0.4mm以下が好ましい。
【0027】
(蓋体の材料)
蓋体3の材料としては、合成樹脂を使用することができる。特に、蓋体3の素材は、包装容器1内の食品等(内容物)を目視で確認できるように、透明または半透明な合成樹脂を使用することが好ましい。透明合成樹脂としては、スチレン系、ポリプロピレン系、ポリエステル系、ポリエチレン系の合成樹脂を好ましく用いることができる。
【0028】
スチレン系樹脂は、スチレンモノマーの単独重合体でもよいが、スチレンモノマーと他のビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。他のビニル系モノマーとしては、スチレンモノマーと共重合可能なオレフィン性二重結合を有するものであればよく、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類が挙げられる。スチレンモノマー単位の含有率は50質量%以上であることが好ましい。
【0029】
蓋体3は、例えば、合成樹脂を延伸したシートを成形することによって製造することができる。延伸シートは、一軸延伸シートよりも二軸延伸シートの方が物性バランスに優れており、好ましい。特にスチレン系樹脂の二軸延伸シートは、剛性、耐熱性、透明性、環境性、加工性においてバランスのとれた性能を有しており、蓋体3の素材として適している。また、フラップ弁4等を形成するためにレーザーの照射によって蓋体3を穿孔する場合、スチレン系樹脂を用いると、穿孔速度が他の合成樹脂より早いため生産効率の面からも優れている。
【0030】
また電子レンジでの加熱用として考える場合、包装容器1には耐熱性を考慮した材料を用いることが好ましい。実用的な電子レンジとして、例えば業務用1500W級の電子レンジを用いたときの加熱に耐え得ることが必要とされる。特に蓋体3においては、水蒸気による温度上昇を考慮すると、蓋体3を構成する合成樹脂は、ビカット軟化点で107℃以上の耐熱性を有することが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることがさらに好ましい。ビカット軟化点が107℃以上の耐熱性を有するスチレン系樹脂の一例としては、(メタ)アクリル酸等を共重合させたスチレン系樹脂等がある。
【0031】
ここでビカット軟化点は、JIS-K7206:1999に準拠して測定される値である。即ち前記ビカット軟化点は、蓋体3の素材と同じ合成樹脂製で、23℃×50%RHの恒温恒湿槽にて24時間放置して状態調整された試験片(厚さ3.2mmの射出成形品)を用い、5kgfのウェイトを使用し、50℃/hrの昇温速度下で、前記試験片に圧子が1mm進入したときの温度を3回繰り返し測定して算出した平均温度値である。
【0032】
(蓋体の成形方法)
蓋体3は、各種のシート成形方法により行うことができる。シート成形方法としては、例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形等を利用して成形される。なお、真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法において、シートの加熱手段として熱板を用いる場合には、熱板成形法とは別名で称されることがある。また、これらの成形方法に限らず、射出成形やブロー成形によって蓋体3を成形することも可能である。本実施形態に係る蓋体3は、例えば、加熱した熱板上で、スチレン系樹脂の二軸延伸シートを真空圧空成形する熱板成形法によって成形された蓋体3である。
【0033】
(フラップ弁について)
次に、
図3及び
図4を参照し、第1の実施形態に係る蓋体3の天面部32に設けられるフラップ弁4及びフラップ弁4の保持強度を高める構造について説明する。第1の実施形態に係る天面部32には、湾曲しながら線状に連続する切れ込み部5が設けられている。フラップ弁4は、切れ込み部5によって形成されており、切れ込み部5によって部分的に囲まれた領域は、フラップ弁4の弁体41として機能する。具体的には、切れ込み部5は一方の端5aと他方の端5bを有し、フラップ弁4は、切れ込み部5の両端5a,5bを結ぶ直線領域Laを支点として傾動するように開閉可能である。
【0034】
フラップ弁4を設ける位置としては、凹凸の無い平坦面部分が好ましいが、それ以外の部分、例えば凹状または凸状の形状を有する部位の側面部分であってもよい。またフラップ弁4の数や大きさについては、包装容器1の使用目的や必要とされる通気量に応じて適宜に設けて、調整すればよい。
【0035】
切れ込み部5は、有底の長溝(非貫通の溝)を想定しておらず、天面部32を貫通している態様を意図している。また、切れ込み部5は、例えば、隙間を有するスリット状の形態と、実質的に隙間がない切断線状の形態との両方を含む。スリット状の形態の場合、天面部32のフラップ弁4と、フラップ弁4以外の部分とは、隙間を空けて分かれているので、互いに干渉し難く、フラップ弁4が引っ掛かって開閉に支障を来すということが生じ難い。本実施形態では、スリット状の形態を例示するが、切断線状の形態も任意に採用できる。
【0036】
切れ込み部5は、フラップ弁4の開閉の支点となる直線領域Laを形成可能となるように湾曲している。本実施形態では、湾曲した切れ込み部5の形状としてU字状を例示しているが、厳密なU字状である必要はなく、弁体41として機能するフラップ弁4を形成可能な形状であればよい。例えば、湾曲した切れ込み部5の形状は、U字状に限らず、C字状、V字状、波状、その他の任意の湾曲形状を選択することもできる。
【0037】
ここで更に詳しく説明すると、U字状の切れ込み部5は、対向する一対の直線部分5xと、直線部分5xの一方の端部同士を湾曲しながら結ぶ曲線部分5yとを備えている。これに対し、C字状とは、例えば、一対の直線部分が無く、曲線部分のみで形成された形状を想定している。また、V字状とは、曲線部分が無く、一対の直線部分が互に斜めに傾いた状態で一方の端部同士が直接接続された形状を想定している。なお、V字状等の屈曲した形状であっても、微視的には、屈曲点は湾曲しているため、湾曲に含めて考えることができる。また、U字状やV字状の直線部分5xについては、波線状に置き換えた形状であってもよく、また、複数の直線部分や曲線部分が組み合わさった形状であってもよい。また、本実施形態に係る切れ込み部5は、直線領域Laの中央部分Cpを通って直線領域Laに直交する仮想線を基準にして線対称であるが、非線対称な形状であってもよい。
【0038】
天面部32は、開口部Mを覆うための主要部である平坦な基準面部32aを備えている。切れ込み部5は、基準面部32aの一部分がレーザー照射等によって切除されることで形成されており、切除された部分が切れ込み部5の周縁5eに沿って盛り上がることで膨出部51が形成されている。つまり、膨出部51は、基準面部32aに対して膨らむように、あるいは突出するように設けられた部分であり、膨出部51の厚みは、基準面部32aの厚みよりも厚くなっている。本実施形態に係る膨出部51は、切れ込み部5の周縁5eの全周に亘り、途切れることなく連続的に設けられている。また、膨出部51は、基準面部32aの両面から突出するように設けられている。なお、膨出部51は、切れ込み部5の周縁5eに沿いながら、途中で途切れるように設けられていてもよく、また、基準面部32aの一方の表面から突出するように設けられていてもよい。
【0039】
本実施形態に係る切れ込み部5はスリット状であるため、一定の隙間Saを有する。切れ込み部5の幅Waとは、この隙間幅を意味している。切れ込み部5の長手方向に沿った複数位置で隙間幅を測定した場合に、隙間幅は、微妙に誤差を生じる可能性がある。切れ込み部5の幅Waとは、切れ込み部5の両端近傍を除き、複数個所で隙間幅を測定した場合の平均値を意味する。切れ込み部5の幅Waは、0.1mm以上であると好ましく、0.3mm以上であるとさらに好ましい。切れ込み部5の幅Waを0.1mm以上にすることで、切れ込み部5の内側に微小なバリが残っていたとしても、そのバリがフラップ弁4の開閉に干渉して障害になるという不具合を防止する。
【0040】
また、切れ込み部5の幅Waは、1.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。切れ込み部5の幅Waを1.0mm以下にすることにより、フラップ弁4が閉じた状態、即ち通常状態(静置状態)において、包装容器1の内部への異物の混入を予防することができる。例えば、切れ込み部5の幅Waを1.0mm以下にすることにより、ショウジョウバエ等の微小な虫類の侵入を防止することができる。
【0041】
また、切れ込み部5の全長は、20mm以上とすることが好ましく、30mm以上とすることがさらに好ましい。また切れ込み部5の全長は、50mm以下とすることが好ましく、40mm以下とすることがさらに好ましい。切れ込み部5の全長を20mm以上とすることで、通常必要な通気量を確保するのに有効であり、また全長を50mm以下に設定しておくことで、フラップ弁4の自重による垂れ下がりを未然に防ぐことができる。
【0042】
フラップ弁4の開閉の支点となる直線領域Laには、開閉を規制してフラップ弁4の保持強度を高める構造として、線状に連続している副切れ込み部6が設けられている。副切れ込み部6は、有底の長溝(非貫通の溝)を想定しておらず、天面部32を貫通している形態を意図している。また、副切れ込み部6の「連続的に延在する」について、途中に糸引きなどの要素が存在しないことが望ましいが、フラップ弁4の開閉に抵抗する機能を損なわない範囲であれば、これらの要素が存在していてもよい。
【0043】
副切れ込み部6は、例えば、隙間Sbを有するスリット状の形態と、実質的に隙間がなく、切断線状の形態との両方を含む。本実施形態では、スリット状の形態を例示しているが、副切れ込み部6の形状などは、切断線状の形態も任意に選択できる。
【0044】
本実施形態に係る副切れ込み部6は、一本の直線状であり、フラップ弁4の開閉の支点となる直線領域Laに直交するように設けられている。副切れ込み部6は、フラップ弁4の弁体41側(フラップ弁4側)に配置された一方の端部6aと、一方の端部6aに対して反対側であり、弁体41から外れた外側に配置された他方の端部6bとを備えている。一方の端部6aから直線領域Laまでの距離と、他方の端部6bから直線領域Laまでの距離とは実質的に等しい。また、フラップ弁4を形成する切れ込み部5の一方の端5aから副切れ込み部6までの距離と、切れ込み部5の他方の端5bから副切れ込み部6までの距離とは実質的に等しい。なお、一方の端部6aから直線領域Laまでの距離と、他方の端部6bから直線領域Laまでの距離とは異なっていてもよく、例えば、一方の端部6aから直線領域Laまでの距離よりも他方の端部6bから直線領域Laまでの距離の方が長くてもよく、その逆であってもよい。また、フラップ弁4を形成する切れ込み部5の一方の端5aから副切れ込み部6までの距離と、切れ込み部5の他方の端5bから副切れ込み部6までの距離とは異なっていてもよい。
【0045】
副切れ込み部6は、基準面部32aの一部分がレーザー照射等によって切除されることで形成されており、切除された部分が副切れ込み部6の周縁6eに沿って盛り上がることで膨出部61が形成されている。つまり、膨出部61は、基準面部32aに対して膨らむように、あるいは突出するように設けられた部分であり、膨出部61の厚みは、基準面部32aの厚みよりも厚くなっている。本実施形態に係る膨出部61は、副切れ込み部6の周縁6eの全周に亘り、途切れることなく連続的に設けられており、また基準面部32aの両面から突出するように設けられている。なお、膨出部61は、副切れ込み部6の周縁6eに沿いながら、途中で途切れるように設けられていてもよく、また、基準面部32aの一方の表面から突出するように設けられていてもよい。
【0046】
本実施形態において、副切れ込み部6は、フラップ弁4の開閉の支点となる直線領域Laに直交するように設けられている。しかしながら、直線領域Laに対する副切れ込み部6の交差態様は直交に限らず、斜めに交差していてもよい。また、副切れ込み部6は、直線状に限定されず、湾曲形状、屈曲形状、波状等の形態であっても良く、フラップ弁4の形状や寸法に合わせて任意の形状にすることができる。
【0047】
本実施形態では、スリット状の副切れ込み部6であり、一定の隙間Sbを有する。副切れ込みの幅Wbとは、この隙間幅を意味している。副切れ込み部6の長手方向に沿った複数位置で隙間幅を測定した場合に、隙間幅は、微妙に誤差を生じる可能性がある。副切れ込みの幅Wbとは、副切れ込み部6の両端部近傍を除き、複数個所で隙間幅を測定した場合の平均値を意味する。副切れ込み部6の幅Wbは、0.1mm以上であると好ましく、0.3mm以上であるとさらに好ましい。
【0048】
また、副切れ込み部6の幅Wbは、1.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。副切れ込み部6の幅Wbを1.0mm以下にすることにより、フラップ弁4が閉じた状態、即ち通常の状態において、包装容器1の内部への異物の混入を予防することができる。例えば、副切れ込み部6の幅Wbを1.0mm以下にすることにより、ショウジョウバエ等の微小な虫類の侵入を防止することができる。
【0049】
また、副切れ込み部6の全長は、3mm以上とすることが好ましく、5mm以上とすることがさらに好ましい。また副切れ込み部6の全長は、20mm以下とすることが好ましく、15mm以下とすることがさらに好ましい。
【0050】
(切れ込み部及び副切れ込み部の形成方法)
本実施形態では、切れ込み部5及び副切れ込み部6は、それぞれスリット状の形態である。切れ込み部5及び副切れ込み部6の形成方法の一例として、スリット状の切れ込み部5及び副切れ込み部6を形成する方法を説明する。
【0051】
切れ込み部5及び副切れ込み部6を形成するための穿孔方法としては、各種の方法がある。例えば、蓋体3は合成樹脂製であり、この蓋体3をレーザー照射によって穿孔することで切れ込み部5及び副切れ込み部6を形成することができる。レーザー照射を利用した形成方法によれば、簡便で、且つ短時間での穿孔が可能になり、また寸法精度の高い穿孔が可能である。
【0052】
レーザーには、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー等の各種レーザーがあるが、波長領域9~11μmの炭酸ガスレーザーを用いることが好ましい。特に、10~100Wの出力の炭酸ガスレーザーを照射することが好ましい。炭酸ガスレーザーの出力範囲が、10Wよりも低出力である場合には、作業性が悪く、また、樹脂を貫通できないことがある一方、100Wを超えると過負荷な状態となり、所望の径の穿孔を達成できないことがある。
【0053】
また、レーザーの照射位置の移送速度については、樹脂表面に5~30000mm/sの移送速度で照射光線を動作することで行われるものであれば、円滑に穿孔することができる。レーザーの移動速度が5mm/sより低速になると、作業性が悪く、また、過剰な照射となることがあり、好ましくない。一方、レーザーの移動速度が30000mm/sを超える場合には、所望の径の穿孔を達成できない場合がある。
【0054】
上記のレーザー照射を利用した形成方法によれば、穿孔時に溶融した樹脂が集合して膨出部51,61が形成される。その結果、切れ込み部5または副切れ込み部6の形成と、膨出部51,61の形成とを同時に行うことができる。具体的には、蓋体3の天面部32をレーザー照射により穿孔した際、溶けた合成樹脂は切れ込み部5の周縁5eまたは副切れ込み部6の周縁6eで冷えて盛り上がり、膨出部51,61となる。切れ込み部5の周縁5eに膨出部51が形成されることにより、フラップ弁4のしなり強度が増すため、垂れ下がり現象を抑制する効果が向上する。また、副切れ込み部6の周縁6eに膨出部61が形成されることにより、フラップ弁4の開閉の抵抗となり、フラップ弁4の保持強度が向上する。
【0055】
次に、
図5を参照し、他の実施形態(第2の実施形態)に係る蓋体3について説明する。第2の実施形態に係る蓋体3は、副切れ込み部6Aの構造を除き、実質的に第1の実施形態に係る蓋体3と共通の構造や要素を備えており、共通の構造や要素を備えていることで奏される作用、効果は共通する。そこで、共通の構造や要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
第2の実施形態では、二本(複数)の副切れ込み部6Aが設けられている。具体的には、第1の副切れ込み部6A及び第2の副切れ込み部6Aは、それぞれ直線領域Laを交差するように延在している。第1の副切れ込み部6A及び第2の副切れ込み部6Aが直線領域Laに交差する態様は、直交に限定されず、直線領域Laに対して斜めに交差していてもよく、また、副切れ込み部6Aの形状は直線状に限定されず、湾曲していたり、屈曲していたりしてもよい。また、副切れ込み部6Aの一方の端部6aから直線領域Laまでの距離と、他方の端部6bから直線領域Laまでの距離とは、同じ長さであっても、異なる長さであってもよい。例えば、副切れ込み部6Aの一方の端部6aから直線領域Laまでの距離よりも、他方の端部6bから直線領域Laまでの距離の方が長くてもよく、その逆であってもよい。
【0057】
第1の副切れ込み部6A及び第2の副切れ込み部6Aは、スリット状の形態であり、所定の幅Wbを有する。第1の副切れ込み部6A及び第2の副切れ込み部6Aの各幅Wbを0.1mm以上にすることで、フラップ弁4を定位置に保持させておくための保持強度の最適化を図り易くなる。また、この各幅Wbを1.0mm以下にすることにより、異物混入予防性の向上に有利になる。
【0058】
第2の実施形態において、蓋体3には、第1の副切れ込み部6Aの周縁6eに沿った膨出部61は設けられておらず、第2の副切れ込み部6Aの周縁6eに沿った膨出部61は設けられていない。なお、第2の実施形態において、膨出部61を設けるようにしてもよく、例えば、複数の副切れ込み部6Aの全ての周縁6eに沿って膨出部61を設けてもよく、一部の副切れ込み部6Aの周縁6eのみに沿って膨出部61を設けてもよい。
【0059】
また、第2の実施形態において、第1の副切れ込み部6Aは、直線領域Laの延在方向の中央部分Cpを基準にすると、第1の副切れ込み部6Aは、中央部分Cpよりも切れ込み部5の一方の端部6aに近く、第2の副切れ込み部6Aは、中央部分Cpよりも、切れ込み部5の他方の端部6bに近い。また、第1の副切れ込み部6Aと第2の副切れ込み部6Aとの間には、副切れ込み部6Aは形成されていない。第1の副切れ込み部6Aと第2の副切れ込み部6Aとの間の領域はフラップ弁4の開閉に抵抗する抵抗部7として機能する。
【0060】
次に、
図6を参照し、他の実施形態(第3の実施形態)に係る蓋体3について説明する。第3の実施形態に係る蓋体3は、副切れ込み部6Bの構造を除き、実質的に第1、第2の実施形態に係る蓋体3と共通の構造や要素を備えており、共通の構造や要素を備えていることで奏される作用、効果は共通する。そこで、共通の構造や要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
第3の実施形態に係る副切れ込み部6Bはスリット状ではなく、切断線状の態様である。副切れ込み部6Bには実質的な隙間は無く、したがって副切れ込み部6Bは幅を持たない。副切れ込み部6Bは、フラップ弁4の開閉の支点となる直線領域Laを交差するように延在しており、一方の端部6aはフラップ弁4側に配置され、他方の端部6bはフラップ弁4から外れた外側に配置されている。副切れ込み部6Bの一方の端部6aから直線領域Laまでの距離と、他方の端部6bから直線領域Laまでの距離とは同じである。なお、副切れ込み部6Bが直線領域Laに交差する態様は、直交に限定されず、直線領域Laに対して斜めに交差していてもよく、また、副切れ込み部6Bの形状は直線状に限定されず、湾曲していたり、屈曲していたりしてもよい。また、副切れ込み部6Bの一方の端部6aから直線領域Laまでの距離と、他方の端部6bから直線領域Laまでの距離とは異なる長さであってもよい。この場合、フラップ弁4側の一方の端部6aから直線領域Laまでの距離よりも他方の端部6bから直線領域Laまでの距離の方が長くてもよいし、その逆であってもよい。
【0062】
第3の実施形態に係る副切れ込み部6Bは、切断線状であって隙間が形成されないので、異物混入予防性を向上させるという観点で有利である。
【0063】
次に、
図7を参照し、他の実施形態(第4の実施形態)に係る蓋体3について説明する。第4の実施形態に係る蓋体3は、第1~第3の実施形態に係る蓋体3と共通の構造や要素を備えており、共通の構造や要素を備えていることで奏される作用、効果は共通する。そこで、共通の構造や要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施形態に係る蓋体3は、対向するように配置された複数のフラップ弁4を備えている。具体的に説明すると、蓋体3には、複数のフラップ弁4を形成するために、複数の湾曲した切れ込み部5Cが形成されている。本実施形態では、例えば、二つのフラップ弁4が形成されており、一方のフラップ弁4の開閉の支点となる直線領域La及び他方のフラップ弁4の開閉の支点となる直線領域Laは、互いに対向するように配置されている。副切れ込み部6Cは、両方の直線領域Laに交差するように延在している。副切れ込み部6Cが両方の直線領域Laに交差する態様は、直交に限定されず、斜めに交差していてもよい。また、本実施形態では、単体の副切れ込み部6Cが、複数のフラップ弁4の直線領域Laの各中央部分を直交するように設けられているが、複数のフラップ弁4の一部または全てが直線領域Laに対して斜めに交差するように設けられていてもよく、交差する位置が直線領域Laの中央部分から外れていてもよい。また、単体の副切れ込み部6Cではなく、複数の副切れ込み部6Cが、それぞれ別の直線領域Laに交差するように配置されていてもよい。
【0065】
また、本実施形態に係る複数の切れ込み部5Cは、スリット状の形態であっても、切断線状の形態であってもよく、両方の態様がそれぞれ異なっていてもよい。また、副切れ込み部6Cは、スリット状の形態であっても、切断線状の形態であってもよい。本実施形態に係る蓋体3は、複数の切れ込み部5Cの周縁5eに沿った膨出部51を備えていてもよく、副切れ込み部6Cの周縁6eに沿った膨出部61を備えていてもよい。また、膨出部51を備えていない構造であってもよい。
【0066】
本実施形態に係る蓋体3は複数のフラップ弁4を備えているので、適度な通期量を確保するという観点で有利になる。
【0067】
次に、実施形態に係る包装容器1及び蓋体3の作用、効果について説明する。まず、フラップ弁4を設ける技術的意義について説明する。
【0068】
蓋体3と容器本体2との間に通期可能な箇所を無くしてしまうと、食品等を収容する包装容器1の密閉性は高まる反面、蓋体3を閉める際に、内部の空気は逃げ場を失う。すると蓋体3を閉める際に、逃げ場を失った空気が邪魔して蓋体3を閉め難くなるという現象が発生する。また、蓋体3を容器本体2に装着した際の嵌合力が小さいと、一旦蓋体3を閉めても容器本体2の内圧の上昇により、蓋体3が外れるという現象も生じることがある。例えば、収納した食品等を、そのまま電子レンジで加熱するような場合、食品等から発生する水蒸気により包装容器1の内圧が上昇し、蓋体3が外れるという現象につながる可能性がある。
【0069】
以上を踏まえ、容器本体2内の空気を逃がしたり、内部で生じた水蒸気等を逃がしたりするために、蓋体3にフラップ弁4が設けられている。つまり、フラップ弁4は、蓋体3が外れない程度に内圧が上昇した際に、内部の空気や水蒸気を適切に排出する開閉性が重要である。
【0070】
一方で、包装容器1の内部への異物侵入は防止する必要がある。特に、本実施形態に係る包装容器1は、食品等を収納する容器であるため、フラップ弁4の隙間から異物が混入しないようにする配慮は非常に重要である。つまり、フラップ弁4の開閉によって適切な通期量を確保しつつ、通常状態(静置状態)において、フラップ弁4が自重によって垂れ下がってしまうことが無いように、フラップ弁4を定位置に保持させておくための保持強度は確保することは重要である。
【0071】
ここで、実施形態に係る蓋体3では、フラップ弁4の開閉の支点となる直線領域Laに交差するように、副切れ込み部6,6A~6Cが設けられている。その結果、実施形態に係る蓋体3によれば、適度な通気量を確保しつつ、フラップ状の弁部を定位置に保持させ、意図しない隙間から異物が混入しないようにする異物混入予防性を向上させることができる。
【0072】
具体的に説明すると、副切れ込み部6,6A~6Cが設けられた直線領域Laは、フラップ弁4の開閉の支点となる部分であり、フラップ弁4は、この直線領域Laが撓むことで開閉する。つまり、直線領域Laに沿った撓み部分が連続的につながっていると、撓み部分は、フラップ弁4の撓みの支点になり易いと推察されるが、本実施形態の場合、副切れ込み部6,6A~6Cを設けることで撓み部分の連続性が途切れることになる。その結果として、フラップ弁4の撓みに対して抵抗となるような作用が働き、フラップ弁4の保持強度を高めることができる。
【0073】
また、副切れ込み部6の周縁に沿って設けられた膨出部61を備えた形態によれば、フラップ弁4を定位置に保持させておくための保持強度を高めるのに有効であり、異物混入予防性を向上させる上で有利になる。
【0074】
また、スリット状の副切れ込み部6,6A,6Cを備えた形態の場合、副切れ込み部6,6A,6Cの幅Wbを0.1mm以上にすることで、フラップ弁4を定位置に保持させておくための保持強度の最適化を図り易くなる。また、副切れ込み部6,6A,6Cの幅Wbを1.0mm以下にすることにより、異物混入予防性の向上に有利になる。
【0075】
また、第2の実施形態に係る蓋体3のように、直線領域Laの延在方向に並んで配置された複数の副切れ込み部6Aを設けることで、フラップ弁4は直線領域Laを支点とした傾動を行い難くなる。その結果、フラップ弁4を定位置に保持させておくための保持強度を高める上で有利になり、異物混入予防性を更に向上させることができる。
【0076】
さらに第2の実施形態に係る蓋体3は、第1の副切れ込み部6Aと第2の副切れ込み部6Aとの間に副切れ込み部を設けていない抵抗部7を備えている。抵抗部7は、フラップ弁4が開閉する際の抵抗になるため、フラップ弁4を定位置に保持させておくための保持強度を高める上で有利になる。
【0077】
また、上記の包装容器1は、各実施形態に係る蓋体3と、容器本体2とを備えている。この包装容器1によれば、蓋体3のフラップ弁4を定位置に保持させておくための保持強度を高めることができ、異物混入予防性を向上させることができる。
【実施例0078】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。各実施例及び比較例は、単体のフラップ弁に対する保持強度の検証を行うものであるが、実際の蓋体に切れ込み部を設けたものではなく、蓋体に準ずるシートに切れ込み部等を設けることで各実施例及び比較例を作製した。なお、各実施例及び各比較例の切れ込み部等はスリット状である。そのため、切れ込み部や副切れ込み部の形成途中に生じる貫通孔を単にスリットと称し、切れ込み部として完成した状態を主スリットと称し、副切れ込み部として完成した状態を副スリットと称する。
【0079】
<実施例1>
厚さ約0.25mmのスチレン系樹脂による二軸延伸シート上に、レーザーの照射により、半円の中心からスリットの中央線までの距離を基準とする半径を7mmとする半円状のスリットを穿孔し、さらにその両端部に長さ9mmの直線状のスリットを繋げるように穿孔してU字型の主スリット50Sを形成した。主スリット50Sの幅は、0.8±0.2mm、主スリット50Sの端は半円状、主スリット50Sの両端を結ぶ直線領域の距離は14mmとした。さらに、直線領域に直交するように直線状のスリットをレーザーの照射によって穿孔し、副スリット60Sを形成した。副スリット60Sの幅は、0.8±0.2mm、副スリット60Sの端部は半円状とした。また、副スリット60Sは、直線領域の中央に交差するように延在しており、主スリット50Sの一方の端から副スリット60Sまでの距離が7mmとなり、他方の端からに副スリット60Sまでの距離が7mmとなるようにした。主スリット50S及び副スリット60Sには膨出部が形成された。このように形成されたフラップ弁を実施例1とした(
図8の(a)図参照)。なお、実施例1及び以下の実施例及び比較例に関し、シートのより精密な厚さは、ダイヤルシートゲージで測定し、表1に記載した。
【0080】
<実施例2>
実施例1と同じ主スリット50Sを穿孔した。また、実施例1と同じサイズの副スリット61Sを二本形成した。二本の副スリット61Sは、主スリット50Sの両端を結ぶ直線領域に直交するようにレーザーの照射によって穿孔した。二本の副スリット61Sは直線領域の中央を挟んで対称に並ぶように形成した。主スリット50Sの一方の端から一方の副スリット61Sまでの距離が4mmとなり、主スリット50Sの他方の端からに他方の副スリット61Sまでの距離が4mmとなるようにした。主スリット50S及び二本の副スリット61Sの周縁には膨出部が形成された。このように形成されたフラップ弁を実施例2とした(
図8の(b)図参照)。
【0081】
<実施例3>
実施例2の副スリット62Sの全長を、共に4.5mmとし、それ以外は、実施例2と同様にした。このように形成されたフラップ弁を実施例3とした(
図8の(c)図参照)。
【0082】
<実施例4>
実施例2の副スリット63Sの全長を、共に18mmとし、それ以外は、実施例2と同様にした。このように形成されたフラップ弁を実施例4とした(
図9の(a)図参照)。
【0083】
<比較例1>
実施例1の副スリットを設けず、それ以外は、実施例1と同様にした。このように形成されたフラップ弁を比較例1とした(
図9の(b)図参照)。
【0084】
<比較例2>
実施例2の副スリットの代わりに、単なる有底の長溝70を形成した。長溝は、シートを貫通させないようにレーザーを照射することで形成した。レーザーを照射した側にのみ、膨出部が形成されていた。それ以外は、実施例2と同様にした。このように形成されたフラップ弁を比較例2とした(
図9の(c)図参照)。
【0085】
<評価方法>(押し込み強度の測定方法)
各実施例及び比較例は、上述の通り、蓋体に準ずるシートに切れ込み部等を設けることで作製しており、実質的にフラップ弁を含む一部分を蓋体から切り出したような形態のサンプルである。まず、各実施例、比較例のサンプルに対し、フラップ弁を構成する主スリット50SのU字状の頂点部分から内側に5mmほど離れた位置に印を付けた。印が付けられた各サンプルを上下(2個)の円形枠によって挟み付けることで固定した。上下の円形枠は、略同心になるように配置しており、下側の円形枠の内径は、4.5cmとした。上側の円形枠の内径は下側の円形枠の内径よりも大きく、7.5cm程度とした。各サンプルのフラップ弁は円形枠の略中央に配置されており、フラップ弁の開閉を許容すべく、フラップ弁の上方及び下方には空間を形成した。その状態で、フラップ弁の印が付けられた位置を、直径3mmφの円柱治具で押し込むことで、フラップ弁を垂直方向に押し込んだ。フラップ弁を垂直方向に押し込んだ際に得られる歪み(押し込み距離)と応力(押し込み強度)カーブとを、ロードセルを装着した材料試験機(テンシロン万能材料試験機、エーアンドデー社製)を用いて測定した。押し込み速度は30mm/分とした。
【0086】
得られた歪みに対する応力カーブの最大値(最大荷重値:fmax)として読み取られた値は表1に示される通りである。なお、応力カーブの最大値とは、押し込み距離が0mmから10mmに至る過程で、押し込み強度が最も大きくなった値を意味している。また、この最大値を厚みの実測値(単位mm)で除した値は、表1に示される通りである。さらに、この値に対し、基準板厚である0.25mmを乗じた値は表1及び
図10に示される通りである。この値は、フラップ弁の保持強度の目安値(フラップ保持強度)として表1に記載した。押し込み距離は、装置の都合上、最大10mmとしたが、実施例、比較例いずれの最大荷重値も、押し込み距離が10mmに達する以前に得られた。
【0087】
【0088】
表1及び
図10に示される通り、各比較例に比べ、各実施例の方がフラップ保持強度は高くなっている。また、傾向として、副スリット60Sが一本である実施例1に比べ、副スリット61Sが二本である実施例2の方がフラップ保持強度は大きくなっている。また、傾向として、実施例3と実施例4とを比較すると、実施例3の副スリット62Sの長さよりも実施例4の副スリット63Sの長さの方が長くなっており、実施例3よりも実施例4の方がフラップ保持強度は大きくなっている。
【0089】
<実施例5>
実施例1と同様に主スリット50Sを形成して新たにフラップ弁を作成し、さらに、実施例1と同様に副スリット64Sを形成して実施例5とした(
図11の(a)図参照)。実施例5の主スリット50Sの長さは33mmであり、副スリット64Sの長さは12mmである。また、主スリット50S及び副スリット64Sの幅は、0.8±0.2mmである。実施例5及び以下の実施例及び比較例に関し、より精密な厚さは、ダイヤルシートゲージで測定し、表2に記載した。
【0090】
<実施例6>
実施例5と同様に主スリット50Sを形成して新たにフラップ弁を作成し、さらに、実施例2と同様に二本の副スリット65Sを形成して実施例6とした(
図11の(b)図参照)。副スリット65Sの長さは12mmであり、副スリット64Sの幅は、0.8±0.2mmである。
【0091】
<実施例7>
実施例6に対し、二本の副スリット66Sの位置が外側にずれるように形成した。具体的には、直線領域に交差する副スリット66Sにおいてフラップ弁側に位置する一方に端部から直線領域までの距離は、3mmとし、他方の端部から直線領域までの距離は、9mmとなるよう形成した(
図12の(a)図参照)。
【0092】
<比較例3>
副スリットを形成していない点を除き、実施例5と同様に主スリット50Sを形成して新たなフラップ弁を作成し、比較例3とした(
図12の(b)図参照)。
【0093】
<評価方法>(押し込み強度の測定方法)
上述同様の評価方法を実施し、押し込み強度の測定を行った。この測定によって得られた歪みに対する応力カーブの最大値(最大荷重値:fmax)を読み取り、これを厚みの実測値(単位mm)で除してから、さらに(0.25mm)を乗じた値を、フラップ弁の保持強度の目安値(フラップ保持強度)として表2に記載した。押し込み距離は、装置の都合上、最大10mmとしたが、実施例、比較例いずれの最大荷重値も、押し込み距離が10mmに達する以前に得られた。
【0094】
【0095】
表2に示される通り、各比較例に比べ、各実施例の方がフラップ保持強度は高くなっている。また、実施例6と実施例7とを比較すると、実施例7の方が実施例6よりも副スリットの位置は外側にずれている。つまり、一つの傾向として、フラット弁側の一方の端部から直線領域までの距離と他方の端部から直線領域までの距離とが等しい実施例6に比べ、一方の端部から直線領域までの距離に対して他方の端部から直線領域までの距離の方が長い実施例7の方がフラップ保持強度は大きくなっている。
【0096】
以上、各実施形態、及び各実施例に基づいて、本発明に係る包装容器及び蓋体を説明したが、本発明は、これらの形態のみには限定されず、例えば、各実施形態それぞれの構造を適宜に組み合わせることも可能である。具体的には、第1の実施形態において、副切れ込み部の周縁に沿った膨出部を設けない構造であってもよく、逆に第2の実施形態や第3の実施形態において、副切れ込み部の周縁に沿った膨出部を設けたり、第1の実施形態、第2の実施形態、または第4の実施形態においてスリット状ではなく、切断線状の複数の副切れ込み部を設けたりするような態様であってもよい。
1…包装容器、2…容器本体、3…蓋体、32…天面部、32a…基準面部、4…フラップ弁、5,5C…切れ込み部、5a…切れ込み部の一方の端、5b…切れ込み部の他方の端、6,6A,6B,6C…副切れ込み部、6a…副切れ込み部の一方の端部、6b…副切れ込み部の他方の端部、6e…副切れ込み部の周縁、61…膨出部、7…抵抗部、50S…主スリット(切れ込み部)、60S,61S,62S,63S,64S,65S,66S…副スリット(副切れ込み部)、M…開口部、La…直線領域、Cp…直線領域の中央部分。