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特開2022-179049マイクロ流路チップ、マイクロ流体デバイス、送液システム、及び送液方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179049
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】マイクロ流路チップ、マイクロ流体デバイス、送液システム、及び送液方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20221125BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221125BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N37/00 101
G01N35/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086278
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健人
(72)【発明者】
【氏名】小原 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 創
(72)【発明者】
【氏名】内田 桂
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 辰典
【テーマコード(参考)】
2G058
4G075
【Fターム(参考)】
2G058DA00
2G058EA14
4G075AA13
4G075AA39
4G075BB10
4G075DA02
4G075EB50
4G075EC25
4G075FA12
4G075FB01
4G075FB04
4G075FB11
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】コンタミネーションを抑制することができ、検査精度を高めることができる、マイクロ流路チップを提供する。
【解決手段】内部に液体7が配置されている、マイクロ流路6と、液体7を送液するためのガスを排出する、ガス排出口4と、ガス排出口4を封止しており、かつガス排出口4を封止している領域が、光又は熱を与えることにより剥離可能とされている、テープ3と、
を備えるマイクロ流路チップ1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体が配置されている、マイクロ流路と、
前記液体を送液するためのガスを排出する、ガス排出口と、
前記ガス排出口を封止しており、かつ該ガス排出口を封止している領域が、光又は熱を与えることにより剥離可能とされている、テープと、
を備える、マイクロ流路チップ。
【請求項2】
前記テープが、光照射によりガスを発生させる光ガス発生テープである、請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項3】
ガス流入口をさらに備え、
前記テープの前記ガス排出口を封止している領域を第1の領域としたときに、前記テープの前記第1の領域とは異なる第2の領域において、前記テープが、前記ガス流入口を覆っている、請求項2に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項4】
ガス流入口と、
前記ガス排出口を封止しているテープを第1のテープとしたときに、前記第1のテープとは異なるテープであり、前記ガス流入口を覆っている、第2のテープと、
をさらに備え、
前記第2のテープが、光照射によりガスを発生させる光ガス発生テープである、請求項1又は2に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップと、
前記テープに光又は熱を与えるための照射手段と、
を備える、マイクロ流体デバイス。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップと、
前記テープに光又は熱を与えるための照射手段と、
を備え、
前記テープに光又は熱を与えることにより、前記テープの前記ガス排出口を封止している領域を剥離しつつ、前記マイクロ流路内の前記液体をガスにより送液する、送液システム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップを用いた送液方法であって、
前記テープに光又は熱を与えることにより、前記テープの前記ガス排出口を封止している領域を剥離する工程と、
前記マイクロ流路内の前記液体をガスにより送液する工程と、
を備える、送液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスにより液体が送液されるマイクロ流路が設けられたマイクロ流路チップ、並びに該マイクロ流路チップを用いたマイクロ流体デバイス、送液システム、及び送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体が送液されるマイクロ流路が設けられたマイクロ流路チップを用いて、各種検体又は試料の送液や反応を制御することにより、種々の検査や分析が試みられている。マイクロ流路内における送液方法としては、例えば、ガス発生材を用いて発生させたガスにより、液体を送液する方法が知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、核酸と夾雑物とを含む検体を導入するための検体導入部と、検体と混合される前処理液を導入するための前処理液導入部と、核酸増幅反応を進行させる核酸増幅部と、マイクロ流路部とを備える、マイクロ流路チップが開示されている。
【0004】
特許文献1では、検体導入部、前処理液導入部、及び核酸増幅部が、マイクロ流路部に接続されており、流路の上流側にマイクロポンプ部が接続されている。また、マイクロポンプ部は、ガス発生材からガスを発生させることで作動可能であり、マイクロポンプ部を作動させることによって流路内の液体を移動させることができるとされている。
【0005】
また、特許文献1では、核酸増幅部の下流側に、ガス排出部が接続されており、核酸増幅部などの内部空間に存在していた気体は、ガス排出部から排出させることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-23141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のマイクロ流路チップのようにガス排出部を設ける場合、初期状態でガス排出部を開放していると、コンタミネーション(異物混入)が生じたり、内包試薬が揮発したりするという問題がある。そのため、特許文献1のマイクロ流路チップでは、検査精度をなお十分に高められないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、コンタミネーションを抑制することができ、検査精度を高めることができる、マイクロ流路チップ、並びに該マイクロ流路チップを用いたマイクロ流体デバイス、送液システム、及び送液方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマイクロ流路チップは、内部に液体が配置されている、マイクロ流路と、前記液体を送液するためのガスを排出する、ガス排出口と、前記ガス排出口を封止しており、かつ該ガス排出口を封止している領域が、光又は熱を与えることにより剥離可能とされている、テープとを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係るマイクロ流路チップのある特定の局面では、前記テープが、光照射によりガスを発生させる光ガス発生テープである。
【0011】
本発明に係るマイクロ流路チップの他の特定の局面では、ガス流入口をさらに備え、前記テープの前記ガス排出口を封止している領域を第1の領域としたときに、前記テープの前記第1の領域とは異なる第2の領域において、前記テープが、前記ガス流入口を覆っている。
【0012】
本発明に係るマイクロ流路チップのさらに他の特定の局面では、ガス流入口と、前記ガス排出口を封止しているテープを第1のテープとしたときに、前記第1のテープとは異なるテープであり、前記ガス流入口を覆っている、第2のテープとをさらに備え、前記第2のテープが、光照射によりガスを発生させる光ガス発生テープである。
【0013】
本発明に係るマイクロ流体デバイスは、本発明に従って構成されるマイクロ流路チップと、前記テープに光又は熱を与えるための照射手段とを備えることを特徴としている。
【0014】
本発明に係る送液システムは、本発明に従って構成されるマイクロ流路チップと、前記テープに光又は熱を与えるための照射手段とを備え、前記テープに光又は熱を与えることにより、前記テープの前記ガス排出口を封止している領域を剥離しつつ、前記マイクロ流路内の前記液体をガスにより送液することを特徴としている。
【0015】
本発明に係る送液方法は、本発明に従って構成されるマイクロ流路チップを用いた送液方法であって、前記テープに光又は熱を与えることにより、前記テープの前記ガス排出口を封止している領域を剥離する工程と、前記マイクロ流路内の前記液体をガスにより送液する工程とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンタミネーションを抑制することができ、検査精度を高めることができる、マイクロ流路チップ、並びに該マイクロ流路チップを用いたマイクロ流体デバイス、送液システム、及び送液方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ流路チップの外観を示す模式的斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ流路チップを示す模式的断面図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロ流路チップを示す模式的断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体デバイスを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0019】
[マイクロ流路チップ]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ流路チップの外観を示す模式的斜視図である。また、図2は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ流路チップを示す模式的断面図である。
【0020】
図1に示すように、マイクロ流路チップ1は、矩形板状の形状を有する。具体的には、マイクロ流路チップ1は、対向している第1の主面1a及び第2の主面1bを有する。また、マイクロ流路チップ1は、第1の主面1a及び第2の主面1bを結ぶ第1~第4の側面1c~1fを有する。第1の側面1c及び第2の側面1dは対向している。また、第3の側面1e及び第4の側面1fも対向している。なお、マイクロ流路チップ1の形状は、このような矩形板状の形状に限定されず、他の形状を有していてもよい。
【0021】
マイクロ流路チップ1は、基板2と、テープ3とを備える。基板2は、基板本体2aと、基板本体2a上に設けられたカバー部材2bとにより構成されている。基板本体2aは、合成樹脂の射出成形体からなる。カバー部材2bは、エラストマーや合成樹脂からなる。もっとも、基板本体2a及びカバー部材2bは、他の材料により構成されていてもよい。また、マイクロ流路チップ1は、複数枚の合成樹脂シートを積層することにより構成されていてもよく、その構造や材質は特に限定されない。
【0022】
図2に示すように、基板2の内部には、マイクロ流路6が設けられている。マイクロ流路6とは、流体の搬送に際し、マイクロ効果が生じるような微細な流路をいう。このようなマイクロ流路6では、流体は、表面張力の影響を強く受け、通常の大寸法の流路を流れる流体とは異なる挙動を示す。
【0023】
マイクロ流路6の横断面形状及び大きさは、上記のマイクロ効果が生じる流路であれば特に限定はされない。例えば、マイクロ流路6に流体を流す際、ポンプや重力を用いるときに、流路抵抗を低下させる観点から、マイクロ流路6の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。マイクロ流路チップ1をより一層小型化する観点から、小さい方の辺の寸法で、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0024】
また、マイクロ流路6の横断面形状がおおむね円形の場合には、直径(楕円の場合には、短径)が、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。マイクロ流路チップ1をより一層小型化する観点から、直径(楕円の場合には、短径)は、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0025】
一方、例えば、マイクロ流路6に流体を流す際、毛細管現象を有効に活用する場合には、マイクロ流路6の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、小さい方の辺の寸法で、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0026】
図2に示すように、本実施形態では、マイクロ流路6の途中に液体7が設けられている。マイクロ流路6の上流側端部には、ガス流入口5が設けられている。また、マイクロ流路6の下流側端部には、ガス排出口4が設けられている。
【0027】
テープ3は、光照射によりガスを発生させる光ガス発生テープである。本実施形態において、テープ3は、図1に示す第1の領域3aにおいて、ガス排出口4を封止している。また、図1に示す第2の領域3bにおいて、ガス流入口5を封止している。従って、本実施形態においては、ガス排出口4及びガス流入口5が同じテープ3により封止されている。
【0028】
マイクロ流路チップ1では、使用する際に、テープ3の第1の領域3aにおいて部分的に光照射することにより、ガス排出口4周辺のテープ3を剥離し、ガス排出口4を開口させることができる。そして、その状態で、テープ3の第2の領域3bにおいて部分的に光照射することにより、ガスを発生させ、ガス流入口5からマイクロ流路6内にガスを送り込むことができる。マイクロ流路6内においてガスは、図2の矢印Xで示す方向に送られ、それによって液体7を下流側に送液することができる。なお、ガス排出口4周辺のテープ3を剥離させる際には、ガス排出口4が開放される程度に部分的に剥離することが好ましい。また、テープ3の第2の領域3bに光照射する際には、平面視において、ガス流入口5が設けられている領域に部分的に光照射することが好ましい。これにより、ガス流入口5周辺におけるテープ3の剥離をより一層抑制することができ、ガス流入口5の封止性をより一層向上させることができる。
【0029】
本実施形態のマイクロ流路チップ1は、上記の構成を備えるので、コンタミネーションを抑制することができ、検査精度を高めることができる。
【0030】
従来、マイクロ流路チップ内にガス排出部を設ける場合、初期状態でガス排出部を開口していると、コンタミネーション(異物混入)が生じたり、内包試薬が揮発したりするという問題があった。そのため、検査精度をなお十分に高められないという問題があった。
【0031】
これに対して、本実施形態のマイクロ流路チップ1では、使用するまでの保管時は、ガス排出口4を封止しておき、使用時に光照射することにより、ガス排出口4を容易に開口することができる。そのため、コンタミネーション(異物混入)を抑制することができ、内包試薬が揮発することを抑制することができる。従って、本実施形態のマイクロ流路チップ1では、検査精度を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態のマイクロ流路チップ1では、光照射装置等の装置を用いてガス排出口4を容易に開口させることができるので、テープ3を手で剥離し開口させる場合などと比べて、工程をより簡略化することができ、人為的なミスを削減することもできる。よって、マイクロ流路チップ1を用いた装置の自動化、簡易化、小型化等に寄与することができる。
【0033】
本実施形態において、テープ3は、基板2上に部分的に設けられているが、平面視において基板2全体を覆うように設けられていてもよい。本実施形態のように、テープ3が基板2上に部分的に設けられている場合は、少なくともガス排出口4が、テープ3により覆われていることが好ましく、ガス排出口4及びガス流入口5の双方が、テープ3により覆われていることがより好ましい。
【0034】
また、本実施形態では、平面視において、ガス流入口5が設けられている第2の領域3bが、テープ3の中央側に設けられている。また、平面視において、ガス排出口4が設けられている第1の領域3aが、テープ3の端部側に設けられている。本実施形態のような配置にすることにより、ガス流入口5が設けられている第2の領域3bにおいて、テープ3の剥離をより一層抑制することができ、ガス流入口5の封止性をより一層向上させることができる。また、ガス排出口4をより開口し易くすることができる。もっとも、本発明において、ガス流入口5及びガス排出口4の位置は、特に限定されない。
【0035】
なお、本実施形態では、テープ3として、光ガス発生テープを用いているが、熱によりガスを発生させるテープを用いてもよい。この場合、使用する際に、テープ3の第1の領域3aを部分的に加熱することにより、ガス排出口4周辺のテープ3を剥離し、ガス排出口4を開口させることができる。また、テープ3の第2の領域3bを部分的に加熱することにより、ガスを発生させ、ガス流入口5からマイクロ流路6内にガスを送り込むことができる。
【0036】
テープ3は、ガス発生剤を含んでいることが好ましい。ガス発生剤は、光又は熱などの刺激を与えることによりガスを発生させる化合物である。ガス発生剤としては、光応答性ガス発生剤又は熱応答性ガス発生剤を用いることができ、好ましくは光応答性ガス発生剤である。
【0037】
光応答性ガス発生剤は、光が照射された際にガスを発生させる。光応答性ガス発生剤としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物等が挙げられる。
【0038】
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルプロピル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-プロピル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-エチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾイリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾイリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾイリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラハイドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾイリン-2-イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾイリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシアシル)-2-メチル-プロピオンアミダイン]、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス(4-シアンカルボニックアシッド)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタノイックアシッド)等が挙げられる。
【0039】
アジド化合物としては、例えば、3-アジドメチル-3-メチルオキセタン、テレフタルアジド、アジド基を有するポリマー等が挙げられる。アジド基を有するポリマーの具体例としては、グリシジルアジドポリマー等が挙げられる。グリシジルアジドポリマーは、例えば、p-tert-ブチルベンズアジドと3-アジドメチル-3-メチルオキセタンとを開環重合することにより得られる。
【0040】
テープ3の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは500μm以下である。
【0041】
また、テープ3の粘着部は、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤により構成することができる。もっとも、シリコーン系粘着剤などの他の粘着剤により構成されていてもよい。なお、メタ(アクリル)とは、メタクリル又はアクリルのことをいうものとする。
【0042】
テープ3の粘着部の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0043】
テープ3は、光増感剤、架橋剤などをさらに含んでいてもよい。また、テープ3は、本発明の効果を阻害しない範囲において、フェノール系、リン系、アミン系又はイオウ系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系又はヒドロキシフェニルトリアジン系等の紫外線吸収剤、ヘキサブロモビフェニルエーテル又はデカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン化難燃剤、ポリリン酸アンモニウム又はトリメチルフォスフェート等の難燃剤、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレイ、アエロジル、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪砂等の無機充填剤、帯電防止剤、安定剤、顔料、染料、バインダー樹脂等のその他添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロ流路チップを示す模式的断面図である。図3に示すように、マイクロ流路チップ21では、第1のテープ23が、ガス排出口4を封止している。また、第2のテープ28が、ガス流入口5を封止している。従って、本実施形態では、ガス排出口4及びガス流入口5が、別々のテープにより封止されている。
【0045】
第1のテープ23は、光又は熱を与えることにより剥離可能なテープである限りにおいて、特に限定されない。第1のテープ23は、第1の実施形態と同様に光ガス発生テープであってもよく、熱によりガスを発生させるテープであってもよい。また、第1のテープ23は、ガス発生剤を含んでいなくてもよい。従って、第1のテープ23としては、例えば、従来公知のUV剥離テープなどを用いてもよい。
【0046】
第2のテープ28は、光又は熱を与えることにより、ガスを発生させるテープである。従って、第2のテープ28は、第1の実施形態と同様の光ガス発生テープや、熱によりガスを発生させるテープであることが好ましい。
【0047】
第1のテープ23及び第2のテープ28の厚みは、特に限定されないが、それぞれ、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは500μm以下である。
【0048】
マイクロ流路チップ21では、使用する際に、第1のテープ23に光照射することにより、ガス排出口4周辺の第1のテープ23を剥離し、ガス排出口4を開口させることができる。そして、その状態で、第2のテープ28に光照射することにより、ガスを発生させ、ガス流入口5からマイクロ流路6内にガスを送り込むことができる。マイクロ流路6内においてガスは、図3の矢印Xで示す方向に送られ、それによって液体7を下流側に送液することができる。なお、ガス排出口4周辺の第1のテープ23を剥離させる際には、ガス排出口4が開放される程度に部分的に剥離することが好ましい。また、第2のテープ28に光照射する際には、平面視において、ガス流入口5が設けられている領域に部分的に光照射することが好ましい。これにより、第2のテープ28の剥離をより一層抑制することができ、ガス流入口5の封止性をより一層向上させることができる。
【0049】
その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0050】
第2の実施形態のマイクロ流路チップ21においても、使用するまでの保管時は、ガス排出口4を封止しておき、使用時に光照射することにより、ガス排出口4を容易に開口することができる。そのため、コンタミネーション(異物混入)を抑制することができ、内包試薬が揮発することを抑制することができる。従って、マイクロ流路チップ21においても、検査精度を高めることができる。なお、マイクロ流路チップ21においても、光照射の代わりに、熱照射を行ってもよい。
【0051】
また、第2の実施形態のマイクロ流路チップ21においても、光照射装置等の装置を用いてガス排出口4を容易に開口させることができるので、第1のテープ23を手で剥離し開口させる場合などと比べて、工程をより簡略化することができ、人為的なミスを削減することもできる。よって、マイクロ流路チップ21を用いた装置の自動化、簡易化、小型化等に寄与することができる。
【0052】
[マイクロ流体デバイス、送液方法]
図4は、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体デバイスを示す模式的断面図である。
【0053】
図4に示すように、マイクロ流体デバイス31は、上述したマイクロ流路チップ1と、第1の光照射部39aと、第2の光照射部39bとを備える。
【0054】
第1の光照射部39aは、ガス排出口4周辺のテープ3に光を照射するために設けられている。本実施形態では、第1の光照射部39aから矢印Y1で示す方向に光を照射することによって、ガス排出口4周辺のテープ3を部分的に剥離させ、ガス排出口4を開口させることができる。なお、照射手段として、第1の光照射部39aの代わりに、熱照射部を設けて加熱することにより、テープ3を部分的に剥離させてもよい。
【0055】
第2の光照射部39bは、ガス流入口5を覆っているテープ3に光を照射するために設けられている。本実施形態では、第2の光照射部39bから矢印Y2で示す方向に光を照射することによって、ガス流入口5を覆っているテープ3からガスを発生させる。テープ3から発生したガスは、マイクロ流路6内の矢印Xに示す方向に送りこまれる。これにより、マイクロ流路6内に配置された液体7を下流側に送液することができる。なお、照射手段として、第2の光照射部39bの代わりに、熱照射部を設けて加熱することにより、ガスを発生させてもよい。
【0056】
本実施形態のマイクロ流体デバイス31では、使用するまでの保管時は、ガス排出口4を封止しておき、使用時に光照射することにより、ガス排出口4を容易に開口することができる。そのため、コンタミネーション(異物混入)を抑制することができ、内包試薬が揮発することを抑制することができる。従って、本実施形態のマイクロ流体デバイス31では、検査精度を高めることができる。
【0057】
また、本実施形態のマイクロ流体デバイス31では、光照射装置等の装置を用いてガス排出口4を容易に開口させることができるので、テープ3を手で剥離し開口させる場合などと比べて、工程をより簡略化することができ、人為的なミスを削減することもできる。
【0058】
本発明に係る送液システムでは、マイクロ流体デバイス31のような装置を用いることができる。このシステムにおいては、例えば、第1の光照射部39aにより、ガス排出口4周辺のテープ3に光を照射することによって、ガス排出口4周辺のテープ3を部分的に剥離させ、ガス排出口4を開口させる。次に、第2の光照射部39bにより、ガス流入口5を覆っているテープ3に光を照射することによって、ガス流入口5を覆っているテープ3からガスを発生させる。テープ3から発生したガスにより、マイクロ流路6内に配置された液体7を下流側に送液することができる。
【0059】
また、本発明の送液方法においても、マイクロ流体デバイス31のような装置を用いることができる。例えば、マイクロ流体デバイス31を用いた送液方法では、まず、第1の光照射部39aにより、ガス排出口4周辺のテープ3に光を照射する。具体的には、矢印Y1で示す方向に光を照射することによって、ガス排出口4周辺のテープ3を部分的に剥離させ、ガス排出口4を開口させる。なお、照射手段として、第1の光照射部39aの代わりに、熱照射部を設けて加熱することにより、テープ3を部分的に剥離させてもよい。
【0060】
次に、第2の光照射部39bにより、ガス流入口5を覆っているテープ3に光を照射する。具体的には、第2の光照射部39bから矢印Y2で示す方向に光を照射することによって、ガス流入口5を覆っているテープ3からガスを発生させる。テープ3から発生したガスは、マイクロ流路6内の矢印Xに示す方向に送りこまれる。これにより、マイクロ流路6内に配置された液体7を下流側に送液することができる。なお、照射手段として、第2の光照射部39bの代わりに、熱照射部を設けて加熱することにより、ガスを発生させてもよい。
【0061】
本発明に係る送液システム及び送液方法では、マイクロ流体デバイス31のように、本発明のマイクロ流路チップを備える装置を用いるので、コンタミネーションを抑制することができ、検査精度を高めることができる
【0062】
マイクロ流体デバイス31のようなマイクロ流体デバイスは、各種検体又は試料の送液や反応を制御することにより、各種検査に用いることができる。例えば、テープ3から発生したガスにより、核酸を含む回収液と、PCR反応試薬などの反応試薬とを合流させ混合させることができる。また、テープ3から発生したガスにより混合液を検出流路に送液し、検査を行うことができる。また、マイクロ流路6の途中に予め抽出溶液、洗浄溶液、回収液等の液体7を保持させておき、テープ3から発生したガスにより、保持させていた液体7を送液してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,21…マイクロ流路チップ
1a…第1の主面
1b…第2の主面
1c…第1の側面
1d…第2の側面
1e…第3の側面
1f…第4の側面
2…基板
2a…基板本体
2b…カバー部材
3…テープ
3a,3b…第1,第2の領域
4…ガス排出口
5…ガス流入口
6…マイクロ流路
7…液体
23,28…第1,第2のテープ
31…マイクロ流体デバイス
39a,39b…第1,第2の光照射部
図1
図2
図3
図4