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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179056
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G01M17/007 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086288
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】502383889
【氏名又は名称】キーコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋介
(72)【発明者】
【氏名】千秋 豊
(72)【発明者】
【氏名】関山 健太
(57)【要約】
【課題】室内において車載センサーを搭載した車両の走行状態を再現するとともに、限られたスペースで、車載センサーおよび車両の動作を総合的に検証すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの車載センサーを装着した自動車の車両の前後の車輪を載せるローラーを有するか、又はジャッキで該車両を持ち上げ、該前後の車輪が連動して回転する回転機構を有し、該車両に装着された該車載センサーの前方に、センサーを騙す装置を配する、試験システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの車載センサーを装着した自動車の車両の前後の車輪を載せるローラーを有するか、又はジャッキで該車両を持ち上げ、該前後の車輪が連動して回転する回転機構を有し、
該車両に装着された該車載センサーの前方に、センサーを騙す装置を配する、試験システム。
【請求項2】
前記車載センサーは、レーダー、単眼カメラ、ステレオカメラ、ライダー及びソナーからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の試験システム。
【請求項3】
前記車両の運転状況を監視するため、前記車両のメーターを監視するカメラを更に備える、請求項1又は2に記載の試験システム。
【請求項4】
前記センサーを騙す装置の指示値を基準値とし、該基準値と、前記カメラからの実測値とを比較して得られた誤差値を計算する、請求項3に記載の試験システム。
【請求項5】
前記前後の車輪の回転を監視するための監視カメラを更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項6】
前記センサーを騙す装置の指示値を基準値とし、該基準値と、前記監視カメラ並びに前記ローラーの回転数及び負荷変動からの実測値と比較して得られた誤差値を計算する、請求項5に記載の試験システム。
【請求項7】
前記センサーを騙す装置の指示値を基準値とし、該基準値と、前記車両が有するECU(Electric Control Unit)又は該ECUの代替器からの実測値とを比較して得られた誤差値を計算する、請求項1から6のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項8】
前記誤差値を解消できるように、前記ECU又は前記ECUの代替器のプログラムを変更して最適化を図る、請求項7に記載の試験システム。
【請求項9】
前記センサーを騙す装置をシナリオに基づいて動作させ、人の飛び出し及び/又は気象の変化及び/又は電磁波による妨害の突発事象を模擬又は発生させ、該突発事象を制御する装置を更に備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項10】
電波暗室内で構築された、請求項1から9のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項11】
自動車の車両の前後の車輪の回転を同期できるローラーを使用して、室内で該車両の走行状態を再現することと、
センサーを騙す装置を用いて標的を模擬することと、
カメラを用いて前記車両のメーターと前記前後の車輪の動きとを監視することと、を含む、車両及び/又は該車両に装着された車載センサーの試験をする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験システムに関し、詳しくは、ローラー(シャーシダイナモと称する場合がある。)、センサーを騙す装置等を利用した車載センサー搭載車両の室内総合実動試験をするための試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転車の開発にあたっては、車両に搭載したレーダーやカメラなどのセンサーを用いて周辺状況を観察し、観察して得たデータに基づいて自動的にブレーキをかける、加減速する、ハンドルを廻す等の機能を適切に実行できるかを総合的に検証する必要がある。例えば、特許文献1では、自動運転テストシステムに関する技術が提案されている。
【0003】
こうした機能の検証のためには、開発中の車両を実際に公道上で走行させ、上記の機能を検証するのが理想的であるが、気象状況や道路の混雑状況などの影響、関係者との調整にかかる手間などの非効率性の問題が発生する。
【0004】
この問題を解決するためには、室内における試験を適宜組み合わせる必要がある。しかし、車載センサーを搭載した車両を室内に設置するだけでは、車載センサーの機能しか検証できない。また、単にローラーに車両を載せて車輪を回転させても、前輪・後輪はそれぞれ別の平面(ローラーの回転機構)上にあるため、車輪の回転が同期せず、現実の走行状態からの乖離の問題が生じる。
【0005】
さらに、室内で試験を行う場合、スペースの制約から、前方車や歩行者などのセンサーの標的を実際に手配し動作させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-96958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、室内において車載センサーを搭載した車両の走行状態を再現するとともに、限られたスペースで、車載センサーおよび車両の動作を総合的に検証することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両の前後の車輪の回転を同期できるローラーを使用して、室内で車両の走行状態を再現するとともに、センサーを騙す装置を用いて標的(ターゲット)を模擬することで、コンパクトに車載センサー・車両の試験を実施できることを特徴とし、
少なくとも1つの車載センサーを装着した自動車の車両の前後の車輪を載せるローラーを有するか、又はジャッキで該車両を持ち上げ、該前後の車輪が連動して回転する回転機構を有し、該車両に装着された該車載センサーの前方に、センサーを騙す装置を配する、試験システムを提供する。なお、車輪はタイヤを含む概念としてとらえてもよい(以下、同じ。)。
【発明の効果】
【0009】
本発明におけるローラーは、前輪用と後輪用とが同期しているため、センサーで得た情報が自然に反映され、誤動作の原因にならない。なお、ローラーの回転数、負荷変動を利用することにより、自動車の運転動作および外部から自動車へ加える負荷動作が数値で分かる。また、メーター類を監視カメラで観察しているので、車両の動作の異常・正常が遠隔でもよく分かる。また、本発明においては、室内において車載センサーを搭載した車両の走行状態を再現し、車載センサーおよび車両の機能・動作を総合的に検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ローラーと監視カメラとの動作を説明するための図である。
図2図2は、条件設定器を中心にシナリオ発生器と突発発生器とで車両を試験することを説明するための図である。
図3図3は、車両の動作を最適化させることを説明するための図である。
図4図4は、センサー単品の試験をする方法を説明するための図である。
図5図5は、自動車の反応を見るための試験(HILS試験)をする方法を説明するための図である。
図6図6は、自動車の反応を見るための試験(実車試験)をする方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
車両Yには、車両の速度、各種センサーが示す前方車両や歩行者などのターゲットの大きさや距離などを示すメーター類EおよびレーダーA、カメラB、ライダーC、ソナーDなどが設置されている。
【0012】
この車両が、ローラーの上に載せられるか、ジャッキで持ち上げられるか、いずれかの状態になっている。本実施例はローラーの場合を想定したものであるが、いずれの場合であっても、前輪と後輪が連動しており、道路を走っている状態を実現し、車載センサーが正常に機能するようになっている。また、このローラーは、ハンドルの回転になどによるステアリング装置の動作にも対応でき、坂を上り下りする場合の負荷を加えることもできる。また、レーダー用のセンサーを騙す装置I、カメラ用のセンサーを騙す装置J、ライダー用のセンサー騙す装置L、及びソナー用のセンサーを騙す装置Mを、車両の周辺であって、各センサーの前に配置する。
【0013】
運転手は、車両の運転を開始し、正常に車輪が回転し、メーター類も正常に動作していることを確認する。運転手は車両の起動と停止の動作だけを行い、これ以外は車両から退出する。なお、これら停止・起動の動作をロボットに任せてもよい。
【0014】
次に、例えば、レーダーを騙す装置を使用し、前方をトラックが走り、このトラックが、車間距離100mから10mまで、相対速度50km/hで接近し、その後再び、車間距離100mまで離れる状況を繰り返してシミュレーションする。すると、車両は、前方車両が車間距離30mまで接近したところで減速を開始し、車間距離が10mになったところで停止しようとする。しかし、車間距離が離れると、車両は再び速度を上げていった。この繰り返しテストを10時間で行ったが、各種センサーは正常に機能し、車両も、正常な動作を続けた。
【0015】
なお、レーダーを騙す装置(レーダー騙し装置)の動作が不安定だったため、これとレーダーの間に電波吸収体でできたトンネルIIを配置したところ、動作が安定した。
【0016】
<第2の実施形態>
監視カメラを車両のメーター類Eの前に置き、車両の動作を監視させる。また、タイヤの動作も監視させる。監視結果については、遠隔の監視カメラ用ディスプレイHを通じて確認する。
【0017】
<第3の実施形態>
本実施形態の構成を図2に示した。上述のとおり、第1の実施形態を実施して、車両が正常に動作していることを確認した。条件設定器SETからの指示に基づいてシナリオ発生器Nの中のシナリオを選定し、センサーを騙す装置I、J及びMのそれぞれを操作する。また、SETからの指示に基づき、突発現象発生器EVNの中のシナリオを選択する。例えば、レーダー騙し装置は、人が車両の前を横断する状況を模擬することができる。この場合、レーダーとレーダー騙し装置の間に、少なくとも1つのアンテナが横方向に動くムービングアンテナなどを設置するとよい。なお、今までの実験を電波暗室以外で行っていた場合は、電波暗室内に移動する。
【0018】
電磁波を車両に照射するための装置として、イミュニティ用送信アンテナSと、イミュニティ用発振器と増幅器を設置した。なお、発振器の周波数は10KHzから6GHzまで可変できる。また、車両のウィンドウガラスの下端から100mm離れたボンネット上の電界強度は、0~300V/mまで調整できる。イミュニティ用発振器および増幅器Qとそれらを連結するケーブルを設置した。
【0019】
そして、加える電界の周波数と出力を設定して、第1の実施形態に示した実験を繰り返し行ったところ、周波数550MHz、電界強度150V/m以上で、レーダーを用いた運転制御に異常が出始め、加減速しなくなった。
【0020】
次に、車両から放射される電磁波を測定するための、エミッション受信アンテナSとエミッション受信器Rおよび接続用の同軸ケーブルを設置した。
【0021】
そして、第1の実施形態の実験中にエミッション用受信器Rを監視したところ、100KHz付近で規定以上の電波を受信した。これは、モーター起動用のインバータからの漏洩と思われる。そこで、インバータの改良の手配を行った。
【0022】
<第4の実施形態>
本実施形態を図3に示した。車両を正確に動作させるECUのプログラムを修正するシステムである。条件設定器SETの値を基準値とし、この基準値を、データ比較器COMPに送る。一方、車両のメーター類が示す実測値やタイヤ(車輪)の回転状況を監視カメラ用ディスプレイから出力した値や、ローラーの回転数および負荷変動値、およびECUまたはHILなどと言われるECUの代替器からの出力値をデータ比較器COMPに送る。そして、基準値と実測値との差をECUに送り、ECUのプログラムを最適化していく。または、これらの値の比較データを一旦条件設定器SETに送り、そこで総合評価をした後に、修正データをECUに送ってプログラムの最適化を行う。なお、運転手がいない場合、ロボットなどを用いて、条件設定器SETから、操縦器DINに、運転指示を与えるとよい。
【0023】
<第5の実施形態>
第5の実施形態を、図4を用いて説明する。上述したとおり、図4は、センサー単品の試験をする方法を説明するための図である。
【0024】
図4に示されるステップS41において、センサーを騙す装置(騙し装置)は、標的の情報(ターゲット情報)を、レーダー等の車載センサーに送る。標的の情報(ターゲット情報)は、例えば、50m先を100km/hで走行する車の情報等である。
【0025】
ステップS42において、標的の情報(ターゲット情報)に基づいて、レーダー等の車載センサーが正常に機能するかどうかの試験を行う。
【0026】
<第6の実施形態>
第6の実施形態を、図5を用いて説明する。上述したとおり、図5は、自動車の反応を見るための試験(HILS(Hardware In the Loop Simulator)試験)をする方法を説明するための図である。
【0027】
図5に示されるステップS51において、センサーを騙す装置(騙し装置)は、標的の情報(ターゲット情報)を、レーダー等の車載センサーに送る。標的の情報(ターゲット情報)は、例えば、50m先を100km/hで走行する車の情報等である。
【0028】
ステップS52において、標的の情報(ターゲット情報)に基づいて、レーダー等の車載センサーが正常に機能するかどうかの試験を行い、ステップS53において、ECUのプログラムを起動させ、また、ステップS54において、ドライビングシミュレータを起動させて、センサーを騙す装置に基づく指示値を基準値とし、基準値と、ECUからの実測値と比較した誤差値を計算して、誤差値を解消できるように、ECUのプログラムを変更して最適化を図る。
【0029】
<第7の実施形態>
第7の実施形態を、図6を用いて説明する。上述したとおり、図6は、自動車の反応を見るための試験(実車試験)をする方法を説明するための図である。
【0030】
図6に示されるステップS61において、センサーを騙す装置(騙し装置)は、標的の情報(ターゲット情報)を、レーダー等の車載センサーに送る。標的の情報(ターゲット情報)は、例えば、50m先を100km/hで走行する車の情報等である。
【0031】
ステップS62において、標的の情報(ターゲット情報)に基づいて、レーダー等の車載センサーが正常に機能するかどうかの試験を行い、ステップS63において、ECUのプログラムを起動させ、また、ステップS64において、本物の車(車)においてエンジンをかけて動かして、センサーを騙す装置に基づく指示値を基準値とし、基準値と、車両のメーター類が示す実測値及びタイヤ(車輪)の回転状況を監視カメラ用ディスプレイおよびローラーの回転数や負荷変動値から出力した実測値並びにECUからの実測値とを比較して得られた誤差値を計算して、誤差値を解消できるように、ECUのプログラムを変更して最適化を図る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
自動運転車は、搭載するセンサーの数が多く、しかも、これらのセンサーから取得した情報を適時適切に処理し、車両を正確に動作させなければならない。また、実際の自動運転車の走行環境においては、付近を走る自動車のセンサーや通信機器、ETCなどから発せられる電磁波が飛び交っており、これらの干渉に対する車載センサーの耐性も検証する必要がある。
【0033】
本発明により、室内において、車載センサー・車両の総合的な試験が可能になることで、効率的な自動運転車の開発、ひいては日本の自動運転技術の更なる発展につながることが期待される。以上より、本発明は、産業上の利用可能性があることは明らかである。
【符号の説明】
【0034】
A・・・レーダー、
B・・・カメラ、
C・・・ライダー、
D・・・ソナー、
E・・・車両のメーター類、
F・・・ローラー(シャーシダイナモ)、
G・・・監視カメラ、
H・・・監視カメラ用ディスプレイ、
I・・・レーダー用センサーを騙す装置、
J・・・カメラ用プロジェクタ、
K・・・スクリーン、
L・・・ライダー用センサーを騙す装置、
N・・・シナリオ発生器、
M・・・ソナー用センサーを騙す装置、
SET・・・条件設定器、
Q・・・イミュニティ用発振器と増幅器、
R・・・エミッション用受信器、
S・・・イミュニティ用送信アンテナ、
T・・・エミッション用受信アンテナ、
Y・・・車両、
W・・・暗室、
II・・・電波吸収体で構成されたトンネル、
ECU・・・車両制御用コンピュータ、
EVN・・・突発現象発生器、
COMP・・・比較器、
DIV・・・操縦器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6