(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017906
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】筋肉量率の増加剤、水分量率の増加剤および体脂肪率の減少剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/702 20060101AFI20220119BHJP
A61P 21/06 20060101ALI20220119BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220119BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220119BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220119BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220119BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20220119BHJP
【FI】
A61K31/702
A61P21/06
A61P3/04
A61P43/00 171
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/16
A23L33/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120744
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(71)【出願人】
【識別番号】000114282
【氏名又は名称】ミヤリサン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】門田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 巧
(72)【発明者】
【氏名】寺井 崇二
(72)【発明者】
【氏名】土屋 淳紀
(72)【発明者】
【氏名】冨永 顕太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 志達
(72)【発明者】
【氏名】岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】峯村 采花
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD31
4B018ME14
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC40
4C076FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA70
4C086ZA94
4C086ZC80
(57)【要約】
【課題】 1-ケストースについて新規な生理作用を見出し、もって、1-ケストースの新規な用途を提供する。
【解決手段】 1-ケストースを有効成分とする、筋肉量率の増加剤。本発明によれば、筋肉に負荷のかかる運動(レジスタンス運動)を要さずに、骨格筋を増やすことができる。よって、レジスタンス運動が困難な虚弱者や高齢者においても、身体能力の向上あるいは維持を図ることができる。特に、本発明によれば、サルコペニア(筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態)の予防または改善に寄与することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ケストースを有効成分とする、筋肉量率の増加剤。
【請求項2】
サルコペニアの予防または改善に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
さらに体脂肪率を減少させるために用いられることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の剤。
【請求項4】
1-ケストースを有効成分とする、体の水分量率の増加剤。
【請求項5】
脱水症の予防または改善に用いられることを特徴とする、請求項4に記載の剤。
【請求項6】
1-ケストースを有効成分とする、体脂肪率の減少剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-ケストースを有効成分とする、筋肉量率の増加剤、体の水分量率の増加剤および体脂肪率の減少剤に関する。
【背景技術】
【0002】
1-ケストースは、1分子のグルコースと2分子のフルクトースからなる三糖類のオリゴ糖である。1-ケストースは、タマネギやニンニク、大麦、ライ麦などの野菜や穀物にも含まれていて、古来より食経験を有することや、変異原性試験、急性毒性試験、亜慢性毒性試験および慢性毒性試験のいずれにおいても毒性が認められていないことから、安全性は極めて高い(非特許文献1)。
【0003】
また、1-ケストースは、ショ糖と同等の高い溶解性や耐熱性を有し、甘味度はショ糖の3分の1程度で、ショ糖に似た良好な甘味を呈する。さらに、種々の有用な生理作用を有しており、例えば、アレルギーを抑制すること(特許文献1)や、イヌの急性出血性下痢の原因微生物として示唆されるフソバクテリウム属細菌やステレラ属細菌の菌数を抑制すること(特許文献2)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4162147号公報
【特許文献2】国際公開第2019/054396号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】食品と開発、Vol.49、No.12、第9頁、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1-ケストースは、上述のとおり極めて高い安全性を有し、取り扱いが容易で優れた物性を備える物質であるが、その生理作用については、十分に解明されている状況ではない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、1-ケストースについて新規な生理作用を見出し、それをもって1-ケストースの新規な用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、1-ケストースの新規な生理作用として、1-ケストースが筋肉量を増加させることを見出した。また、1-ケストースが、体の水分量を増加させることを見出した。また、1-ケストースが、体脂肪率を減少させることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)本発明に係る筋肉量率の増加剤は、1-ケストースを有効成分とする。
【0009】
(2)本発明に係る筋肉量率の増加剤は、サルコペニアの予防または改善に用いることができる。
【0010】
(3)本発明に係る筋肉量率の増加剤は、さらに体脂肪率を減少させるために用いることができる。
【0011】
(4)本発明に係る体の水分量率の増加剤は、1-ケストースを有効成分とする。
【0012】
(5)本発明に係る体の水分量率の増加剤は、脱水症の予防または改善に用いることができる。
【0013】
(6)本発明に係る体脂肪率の減少剤は、1-ケストースを有効成分とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1-ケストースの新規な用途として、「筋肉量率の増加」、「サルコペニアの予防または改善」、「筋肉量率の増加、かつ、体脂肪率の減少」、「体の水分量率の増加」、「脱水症の予防または改善」および「体脂肪率の減少」が提供される。
【0015】
上述のとおり、1-ケストースは、水溶性が高く、良好な甘味質を有するため、そのまま、あるいは甘味料等の調味料として、日常的に簡便に摂取することができるほか、様々な食品や医薬品、飼料等に容易に配合することができる。したがって、本発明によれば、安全性が高く、そのまま、あるいは様々な食品や医薬品、飼料等に容易に配合して日常的に簡便に摂取することができる、筋肉量率の増加剤、サルコペニアの予防または改善剤、筋肉量を増加させ、体脂肪率を減少させる剤、体の水分量率の増加剤、脱水症の予防または改善剤および体脂肪率の減少剤を得ることができる。
【0016】
本発明によれば、ヒトや動物の体における筋肉量率を増加することができる。後述する実施例で示すように、本発明によれば、筋肉に負荷のかかる運動(レジスタンス運動)を要さずに、骨格筋を増やすことができる。よって、レジスタンス運動が困難な虚弱者や高齢者においても、身体能力の向上あるいは維持を図ることができる。特に、本発明によれば、サルコペニア(筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態)の予防または改善に寄与することができる。また、本発明によれば、筋肉量を増やすとともに、体脂肪率を減少させることができる。よって、サルコペニア肥満(サルコペニアと肥満とが合併した状態)の予防または改善に寄与することができる。
【0017】
水はヒトの体の主要な構成成分であり、標準的には、成人男性で体重の約60%、成人女性で約55%、新生児・乳児期で約70~75%、高齢者では約50%が水で占められている。飲料水や食事などで摂取された水分は、腸から吸収され、血液などの「体液」として下記(ア)~(ウ)のような、生命維持に関わる重要な役割を果たしている;
(ア)運搬;酸素や栄養分を身体中に運ぶとともに、老廃物を体外に排出する。
(イ)体温調節;皮膚への血液の循環を増やし、発汗により熱を逃がして体温を一定に保つ。
(ウ)環境維持;新陳代謝がスムーズに行われるよう、体液の性状を一定に保つ。
【0018】
一方、脱水症は、体内の水分(体液)が不足した状態をいう。その症状としては、体液が通常時から2%(初期体重を100%とした百分率)失われると、喉の渇きを感じるとともに、運動能力が低下し始める。3%失われると、強い喉の渇き、ぼんやり、食欲不振などが起こり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどが現れる。そして、10%以上になると死に至ることもある。
【0019】
本発明によれば、ヒトや動物の体における水分含有量の割合を増加することができる。よって、本発明によれば、脱水症の予防や、自覚症状に乏しいかくれ脱水などの改善に寄与することができ、あるいは、体液の働きを維持して健康に寄与することができる。
【0020】
脂肪は身体の構成成分の一つとして、エネルギーを貯蔵したり、内臓を保護するなど、生命活動に欠かせない重要な役割を担っている。しかし、体脂肪が適正量以上であると肥満となり、多くの疾患をまねく要因となる。従来、体脂肪の減少には、エネルギー摂取を抑制する食事改善と、エネルギー消費を増加させる運動習慣改善とを継続的に行うことが一般的である。
【0021】
本発明によれば、ヒトや動物の体脂肪率を減少させることができる。後述する実施例で示すように、本発明によれば、特段の食事改善や運動習慣改善を要さずに、体脂肪率を減少させることができる。よって、食事改善や運動習慣改善が困難な状況であっても、手軽に、体脂肪率の減少ないし肥満やそれに伴う各種疾患の予防または改善を図ることができる。あるいは、食事改善や運動習慣改善と組み合わせて、より効果的に体脂肪率を減少させ、ないしは肥満やそれに伴う各種疾患の予防または改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】1-ケストースを摂取させた被験者における、筋肉量(kg)、骨格筋量(kg)、骨格筋指数(kg/m
2)、体水分量(L)、体重(kg)、体脂肪量(kg)および体脂肪率(%)の経時的変化を示す折れ線グラフである。横軸について、0Wは1-ケストースの摂取前(0週)を、12Wは1-ケストースの摂取期間終了時(12週)を、52Wは摂取終了から40週間経過後(52週)を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る筋肉量率の増加剤、サルコペニアの予防または改善剤、筋肉量を増加させ、体脂肪率を減少させる剤、体の水分量率の増加剤、脱水症の予防または改善剤および体脂肪率の減少剤(以下、これらをまとめて、または、これらのうちのいずれか1以上を指して、「本発明の剤」という場合がある。)について詳細に説明する。
【0024】
「筋肉」は、骨格筋、心筋および平滑筋のうちのいずれか1以上を意味する。また、「筋肉量率」は、体重に占める筋肉重量の割合をいう。すなわち、「筋肉量率の増加」は、体において筋肉が占める割合が大きくなったことを意味する。
【0025】
「体の水分量率」は、体重に占める、体が含有する水分(体水分)重量の割合をいう。すなわち、「体の水分量率の増加」は、体において水分が占める割合が大きくなったことを意味する。
【0026】
「体脂肪率」は、体重に占める体脂肪重量の割合をいう。すなわち、「体脂肪率の減少」は、体において脂肪が占める割合が小さくなったことを意味する。
【0027】
体重はバネばかりなどの市販の秤で容易に測定することができる。また、筋肉量は、コンピュータ断層撮影(CTスキャン)、磁気共鳴画像法(MRI)、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)または生体電気インピーダンス法(BIA法)に基づく市販の測定装置により測定することができる。体水分量および体脂肪量も、BIA法に基づく市販の測定装置により測定することができる。
【0028】
サルコペニアとは、進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群である。サルコペニアの原因には、加齢のほか、寝たきりや不活発などの低活動に起因するもの、重症臓器不全や内分泌疾患などの疾患に起因するもの、吸収不良などに伴う摂取エネルギーやタンパク質の摂取量不足に起因するものがある。サルコペニアは、運動障害や転倒・骨折の危険性の増大、日常生活の活動能力の低下、自立性の喪失、死亡する危険性の増大などにつながるため、予防ないし改善する必要があるといえる。
【0029】
サルコペニアは、(i)筋肉量が低いことに加えて(ii)筋力が低いこと、あるいは(iii)身体機能が低いこと、を満たす場合に診断される(高齢者のサルコペニアに関する欧州ワーキンググループ(European Working Group on Sarcopenia in Older People, EWGSOP)の診断基準)。すなわち、筋肉量あるいは骨格筋量を増加することができれば、サルコペニアの予防または改善に寄与できると考えられる。したがって、本発明の剤は、サルコペニアを予防または改善する用途に用いることができる。
【0030】
なお、筋肉量は、上述のとおり、CTスキャン、MRI、DXA法またはBIA法により評価することができる。また、筋力は、簡便には、握力計を用いた握力測定により評価することができる。また、身体機能は、簡易身体能力バッテリー(Short Physical Performance Battery, SPPB)や通常歩行速度などにより評価することができる(サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A、厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業)高齢者における加齢性筋肉減弱現象 (サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究 研究班)。
【0031】
本発明の剤は、1-ケストースを有効成分とする。1-ケストースは、スクロースを基質として、特開昭58-201980号公報に開示されているような酵素による酵素反応を行うことにより作ることができる。具体的には、まず、β-フルクトフラノシダーゼをスクロース溶液に添加し、37℃~50℃で20時間程度静置することにより酵素反応を行って、1-ケストースを生成させる。生成した1-ケストースを含有する酵素反応液を、特開2000-232878号公報で開示されているようなクロマト分離法に供することにより、1-ケストースと他の糖(ブドウ糖、果糖、ショ糖、4糖以上のオリゴ糖)とを分離して精製する。これにより得られた、高純度で1-ケストースを含有する溶液を濃縮した後、特公平6-70075号公報に開示されているような結晶化法で結晶化することにより、1-ケストースの結晶、あるいは、純度98質量%以上で1-ケストースを含有する組成物を得ることができる。
【0032】
また、1-ケストースは市販のフラクトオリゴ糖に含まれているため、これをそのまま、あるいは、フラクトオリゴ糖から上述の方法により1-ケストースを分離精製して用いてもよい。すなわち、本発明の1-ケストースとして、1-ケストースを含有するオリゴ糖などの1-ケストース含有組成物を用いてもよい。1-ケストース含有組成物を用いる場合、1-ケストースの純度は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお、本発明において、1-ケストースの「純度」とは、糖の総質量を100とした場合の、1-ケストースの質量%をいう。
【0033】
本発明の剤は、ヒトまたは動物に経口摂取させることにより使用することができるほか、有効成分を経腸栄養剤に添加して、これを、胃や小腸などの消化管に挿入したチューブを経由して経腸栄養法により投与する方法で使用してもよい。
【0034】
本発明の剤は、有効成分である1-ケストースのみからなるもののほか、医薬品や食品添加剤、サプリメント、食品組成物(飲料、調味料、パン、菓子、惣菜、健康食品、乳幼児食品、その他加工食品など)、飼料などの形態で用いることができる。
【0035】
本発明の剤を医薬品や食品添加剤、サプリメントの形態とする場合、その剤型としては、例えば、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、液剤、シロップ剤、ドロップ剤、ドリンク剤等の固形または液状の剤型を挙げることができる。各剤型は、当業者に公知の方法で製造することができ、例えば、散剤であれば、1-ケストース800gおよび乳糖200gをよく混合した後、90%エタノール300mLを添加して湿潤させる。続いて、湿潤粉末を造粒した後、60℃で16時間通風乾燥し、その後、整粒して、適当な細かさの散剤1000g(1-ケストース含有量800mg/1g)を得ることができる。また、錠剤であれば、1-ケストース300g、粉末還元水飴380g、コメデンプン180gおよびデキストリン100gをよく混合した後、90(v/v)%エタノール300mLを添加して湿潤させ、湿潤粉末を得る。この湿潤粉末を押し出し造粒した後、60℃で16時間通風乾燥して顆粒を得る。この顆粒を850μmの篩を用いて整粒した後、顆粒470gに対してショ糖脂肪酸エステル50gを添加して混合する。これを、ロータリー打錠機(6B-2、菊水製作所)に供して打錠することにより、直径8mm、重量200mgの錠剤5000錠(1-ケストース含有量60mg/1錠)を得ることができる。
【0036】
また、本発明の剤を食品組成物の形態とする場合は、通常の飲食物の製造過程で、1-ケストースを添加して製造すればよい。1-ケストースの甘味度は30で、その味質・物性・加工性はショ糖に近いことから、各種飲食物の製造過程において、砂糖の一部または全部を1-ケストースに置き換えるなどして、砂糖と同様に扱って各種飲食物を製造することができる。
【0037】
本発明の剤等をヒトや動物に対して用いる場合の有効成分の摂取量(投与量)としては、例えば、1日あたり0.04g/kg体重以上を挙げることができる。係る摂取量は、1日1回に限らず、複数回に分割して摂取してもよい。
【0038】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。また、本実施例においては、「1-ケストース」として、純度98質量%以上で1-ケストースを含有する組成物(物産フードサイエンス社)を用いた。
【実施例0039】
被験者(被験者1~6とする)は、高齢の男女6名(被験者1~6とする)とした。被験者1~6の属性を表1に示す。被験者は全員、欧州ワーキンググループの基準(Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, Bauer JM, et al. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis: Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age Ageing. 2010; 39(4): 412-23. doi: 10.1093/ageing/afq034. Epub 2010 Apr 13.)に基づきサルコペニアと診断されており、ECOGパフォーマンスステータスは3(限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。;Common Toxicity Criteria, Version2.0 Publish Date April 30, 1999 )で、長く入院生活を送っており、活動量は非常に少ない。
【表1】
【0040】
被験者1~6に、1日2回に分けて、1日あたり10グラムの1-ケストースを12週間、経口摂取させた。1-ケストースの摂取前(0週)、摂取後(12週)および摂取終了から40週間経過後(52週)に、体組成計「InBody S10」(インボディジャパン)を用いて、BIA法により筋肉量(kg)、骨格筋量(kg)、骨格筋指数(kg/m
2)、体脂肪量(kg)、体脂肪率(%)、細胞内水分量(L)、細胞外水分量(L)、体水分量(L)および細胞外水分比(Extracellular Water / Total Body water; ECW/TBW)を測定した。また、同時に体重(kg)も測定した。その結果を
図1に示す。なお、12週~52週の間に2名の被験者が死亡したため、52週の測定は4名について行った。
【0041】
0週および12週の測定結果について、全被験者の平均値および標準偏差を算出し、統計的有意差検定を行ってP値を算出した。P値は
図1に、平均値および標準偏差は表2に、それぞれ示す。なお、試験期間中、抗生物質やプロバイオティクスは摂取しなかった。また、試験期間中、筋肉量の増加や体脂肪量の減少が期待できるような、比較的強度の高い運動も行わなかった。
【表2】
【0042】
表2および
図1に示すように、0週と12週とでは、体重に有意な差は無かった。それにもかかわらず、0週よりも12週の方が、細胞内水分量(L)、細胞外水分量(L)および体水分量が大きかった。一方、細胞外水分比は0週と12週とでほとんど変化が無かった。これらのことから、細胞内水分および細胞外水分のいずれも、同程度に増加したと考えられた。これらの結果から、1-ケストースは、体の水分量率を増加させることが明らかになった。
【0043】
また、体重に有意差が無かったにもかかわらず、0週よりも12週の方が、筋肉量、骨格筋量および骨格筋指数が有意に大きかった。この結果から、1-ケストースは、筋肉量率を増加させることが明らかになった。
【0044】
また、体重に有意差が無かったにもかかわらず、0週よりも12週の方が、体脂肪率が有意に小さく、体脂肪量も小さい傾向であった。この結果から、1-ケストースは、体脂肪率を減少させることが明らかになった。