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  • 特開-ゼリー入り飲料、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179062
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ゼリー入り飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A23L2/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086301
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 勇志
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC05
4B117LK03
4B117LK13
(57)【要約】
【課題】酸性であり、複数の液体色を有する新規なゼリー入り飲料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】容器詰めゼリー入り飲料を製造する方法であって、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、同一の容器に充填し、前記容器内で前記A液と前記B液とを混合してゼリー入り飲料を製造することを含み、前記A液は、難溶性カルシウム塩を実質的に含まず、前記A液の殺菌処理後のpHが、2.0以上5.5未満であり、単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記A液の殺菌処理後の粘度が、5mPa・s以上150mPa・s以下であり、単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記B液の殺菌処理後の粘度が、10mPa・s以上50mPa・s未満である、前記製造方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰めゼリー入り飲料を製造する方法であって、
カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、同一の容器に充填し、前記容器内で前記A液と前記B液とを混合してゼリー入り飲料を製造することを含み、
前記A液は、難溶性カルシウム塩を実質的に含まず、
前記A液の殺菌処理後のpHが、2.0以上5.5未満であり、
単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記A液の殺菌処理後の粘度が、5mPa・s以上150mPa・s以下であり、
単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記B液の殺菌処理後の粘度が、10mPa・s以上50mPa・s未満である、前記製造方法。
【請求項2】
前記ゼリー入り飲料を構成する液体のpHが2.5~4.5である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記A液の殺菌処理前のpHが、2.0以上6.5未満である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記A液における前記カチオン反応性を有するゲル化剤の量が、0.1質量%~2.0質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記カチオン反応性を有するゲル化剤が、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記B液が、4.5mmol/L以上のカルシウムイオンを含む、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記A液の比重SGと、前記B液の比重SGとが、以下の式(1)を満たす、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
SG/SG>1 (1)
【請求項8】
前記容器に前記A液を充填した後で、前記B液を充填する、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記A液の比重SGと、前記B液の比重SGとが、以下の式(2)を満たす、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
SG/SG<1 (2)
【請求項10】
前記容器に前記B液を充填した後で、前記A液を充填する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記A液の色と、前記B液の色とが異なる、請求項1~10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記容器に充填する時の前記A液の温度が、前記カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である、請求項1~11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記A液及び前記B液の合計に対する前記A液の量が70質量%以下である、請求項1~12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の製造方法で製造される、容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項15】
容器詰めゼリー入り飲料であって、
前記飲料中のゼリーと、前記飲料を構成する液体とが、互いに異なる色を呈し、かつマーブル模様の外観を呈する前記飲料。
【請求項16】
前記ゼリー入り飲料を構成する液体のpHが2.5~4.5である、請求項15に記載の飲料。
【請求項17】
前記ゼリーが、カチオン反応性を有するゲル化剤をゲル化してなる、請求項15又は16に記載の飲料。
【請求項18】
ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む、請求項15~17のいずれかに記載の飲料。
【請求項19】
さらに、カルシウムイオンを含む、請求項18に記載の飲料。
【請求項20】
前記容器がPET製である、請求項15~19のいずれかに記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー入り飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料の市場は拡大を続けている。RTD飲料としては、単一の液体色を有するものが主流となっているが、液体に加えてゼリー等の固形分を含む、複数の液体色を有する製品も数多く上市されている。
【0003】
特許文献1には、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有する溶液と、乳成分を含有する溶液とを混合することによってゼリー入り飲料を製造する方法が記載されている。
特許文献2には、多糖類溶液と金属塩を含有する溶液の混合液に、酸性溶液を添加することで、均一なサイズのゲル片を調製する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-189738号公報
【特許文献2】特開2019-054744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ゼリーを生成する方法として、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するpH6.5~8.5の溶液に、難溶性カルシウム塩を配合し、加熱殺菌によるpHの低下を利用して難溶性カルシウム塩を溶解させることで、所望のタイミングでゲル化反応を起こすことが記載されているが、難溶性カルシウム塩の性質上、溶液のpH域は中性域に制限されていた(例えば、段落[0019])。
また、特許文献2の方法で得られるゲル片は、大きさが十分ではなかった(例えば、段落[0014]、表1及び2)。
【0006】
本発明は、酸性であり、複数の液体色を有する新規なゼリー入り飲料、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下のゼリー入り飲料の製造方法等を提供できる。
1.容器詰めゼリー入り飲料を製造する方法であって、
カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、同一の容器に充填し、前記容器内で前記A液と前記B液とを混合してゼリー入り飲料を製造することを含み、
前記A液は、難溶性カルシウム塩を実質的に含まず、
前記A液の殺菌処理後のpHが、2.0以上5.5未満であり、
単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記A液の殺菌処理後の粘度が、5mPa・s以上150mPa・s以下であり、
単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記B液の殺菌処理後の粘度が、10mPa・s以上50mPa・s未満である、前記製造方法。
2.前記ゼリー入り飲料を構成する液体のpHが2.5~4.5である、1に記載の製造方法。
3.前記A液の殺菌処理前のpHが、2.0以上6.5未満である、1又は2に記載の製造方法。
4.前記A液における前記カチオン反応性を有するゲル化剤の量が、0.1質量%~2.0質量%である、1~3のいずれかに記載の製造方法。
5.前記カチオン反応性を有するゲル化剤が、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む、1~4のいずれかに記載の製造方法。
6.前記B液が、4.5mmol/L以上のカルシウムイオンを含む、1~5のいずれかに記載の製造方法。
7.前記A液の比重SGと、前記B液の比重SGとが、以下の式(1)を満たす、1~6のいずれかに記載の製造方法。
SG/SG>1 (1)
8.前記容器に前記A液を充填した後で、前記B液を充填する、7に記載の製造方法。
9.前記A液の比重SGと、前記B液の比重SGとが、以下の式(2)を満たす、1~6のいずれかに記載の製造方法。
SG/SG<1 (2)
10.前記容器に前記B液を充填した後で、前記A液を充填する、9に記載の製造方法。
11.前記A液の色と、前記B液の色とが異なる、1~10のいずれかに記載の製造方法。
12.前記容器に充填する時の前記A液の温度が、前記カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である、1~11のいずれかに記載の製造方法。
13.前記A液及び前記B液の合計に対する前記A液の量が70質量%以下である、1~12のいずれかに記載の製造方法。
14.1~13のいずれかに記載の製造方法で製造される、容器詰めゼリー入り飲料。
15.容器詰めゼリー入り飲料であって、
前記飲料中のゼリーと、前記飲料を構成する液体とが、互いに異なる色を呈し、かつマーブル模様の外観を呈する前記飲料。
16.前記ゼリー入り飲料を構成する液体のpHが2.5~4.5である、15に記載の飲料。
17.前記ゼリーが、カチオン反応性を有するゲル化剤をゲル化してなる、15又は16に記載の飲料。
18.ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む、15~17のいずれかに記載の飲料。
19.さらに、カルシウムイオンを含む、18に記載の飲料。
20.前記容器がPET製である、15~19のいずれかに記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸性であり、複数の液体色を有する新規なゼリー入り飲料、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で製造した容器詰めゼリー入り飲料を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のゼリー入り飲料の製造方法等の実施形態について説明する。
【0011】
[ゼリー入り飲料の製造方法]
本発明の一態様に係るゼリー入り飲料の製造方法は、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、同一の容器に充填し、容器内でA液とB液とを混合することを含む。
これにより、容器内でA液とB液とを混合した際に、ゲル化剤とカチオンとが反応して初めてゲル化反応が起こり、容器内にゼリーを生成することができる。A液中のゲル化剤とB液中のカチオンとが、混合により容器内で任意のランダムな場所で接触してゲル化することで、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造できる。
ここで、「大理石模様(マーブル模様)」とは、渦巻きや筋等の流線形状が多重に重なったり、練り込まれたりした模様を意味する。本発明の製造方法により得られるゼリー入り飲料は、硬化したゼリー部分と、液体である飲料部分とがランダムに組み合わさって大理石模様(マーブル模様)の外観を呈し、例えば、図1のような外観を呈する。図1においては、白い部分が液体である飲料部分であり、黒~灰色部分がゼリー部分である。
【0012】
一実施形態において、殺菌処理は、高温殺菌等の加熱殺菌、薬剤殺菌、電子線殺菌等で行うことができる。
【0013】
従来の容器詰め飲料の製造方法においては、飲料を構成する成分のすべてを容器内に充填した後、殺菌処理を行っていたため、容器としては殺菌温度に耐えられるもの(例えば、缶や瓶)を選択する必要があった。一方、本発明の一態様に係る容器詰めゼリー入り飲料の製造方法においては、容器内への充填前に、それぞれの成分に殺菌処理を施すことができるため、容器に耐熱性が要求されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン等のプラスチック容器(プラスチックボトル)を使用することができる。
【0014】
一実施形態において、A液の比重SGと、B液の比重SGとは、以下の式(1)を満たす。
SG/SG>1 (1)
【0015】
A液の比重SGと、B液の比重SGとが、式(1)を満たす場合、容器にA液を充填した後で、B液を充填することが好ましい。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、A液中のゲル化剤とB液中のカチオンとが容器内の任意のランダムな場所で接触することを契機としてゲル化が起こり、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造できる。
【0016】
一実施形態において、A液の比重SGと、B液の比重SGとは、以下の式(2)を満たす。
SG/SG<1 (2)
【0017】
A液の比重SGと、B液の比重SGとが、式(2)を満たす場合、容器にB液を充填した後で、A液を充填することが好ましい。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、A液中のゲル化剤とB液中のカチオンとが容器内の任意のランダムな場所で接触することを契機としてゲル化が起こり、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造できる。
【0018】
一実施形態において、A液の色と、B液の色とは異なる。
これにより、大理石模様(マーブル模様)の視認性がよくなり、美観にすぐれるゼリー入り飲料を製造できる。
【0019】
以下、各液の詳細について説明する。
【0020】
[A液]
A液は、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有する。
これにより、カチオンを含有するB液と混合することでゲル化反応が起こり、ゼリーを生成することができる。
【0021】
A液の殺菌処理後のpHは、2.0以上5.5未満であり、好ましくは3.0以上5.2以下であり、より好ましくは3.6以上5.0以下である。
これにより、ゲル化反応により得られるゼリーの強度を向上させながら、ゼリー入り飲料の酸味を飲料に適した範囲に抑えることができる。また、果汁等の酸性の材料を使用してゼリー入り飲料を製造することが可能となる。
【0022】
A液の殺菌処理後の粘度は、5mPa・s以上150mPa・s以下であり、好ましくは8mPa・s以上120mPa・s以下であり、より好ましくは12mPa・s以上100mPa・s以下である。
A液の粘度を上記範囲とし、後述の粘度を有するB液と組み合わせることで、A液とB液との混合を制御し、液体と混ざりながらも一繋ぎの大きなゼリーを形成しやすくなる。これにより、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造できる。
ゼリー部分と液体部分を別の味に分けることもでき、これにより複雑な味や質感を作り出すことができる。
【0023】
本発明において、「粘度」とは、単一円筒型回転粘度計を使用して、測定温度25℃で、M1ローターを使用して100rpmの条件で測定した粘度を示す。
【0024】
殺菌処理後の粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
A液は、難溶性カルシウム塩を実質的に含まない。
これにより、A液の殺菌処理前のpHを6.5以下とした場合であっても、A液の粘度を所望の範囲に調整することができる。また、A液の殺菌処理後のpHを5.5以下とした場合であっても、A液の粘度を所望の範囲に調整することができる。
「実質的に含まない」とは、A液が、難溶性カルシウムを全く含まないか、又は、難溶性カルシウムの量が、A液全体に対して、好ましくは0.0003質量%未満、より好ましくは0.0001質量%未満であることを意味するものとする。例えば、飲料を構成する果汁等の材料に不可避不純物として含まれる難溶性カルシウムがA液に含まれてもよい。
【0026】
A液の殺菌処理前のpHは、2.0以上6.5未満であり、好ましくは2.5以上6.0以下であり、より好ましくは3.0以上5.5以下である。
【0027】
一実施形態において、A液中に含まれるカチオン反応性を有するゲル化剤の量は、適度な硬度を持つゲルを得る観点から、A液全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.4質量%以上であり得、また、2.0質量%以下、1.0質量%以下、0.6質量%以下であり得る。
例えば、A液中に含まれるカチオン反応性を有するゲル化剤の量の範囲として、A液全体に対して、0.1質量%~2.0質量%、又は0.2質量%~1.0質量%が挙げられる。
【0028】
一実施形態において、カチオン反応性を有するゲル化剤としては、例えば、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、及びアルギン酸からなる群から選ばれる一種以上が挙げられるが、カチオンと反応してゲル化する性質を有するゲル化剤であれば特に限定されない。カチオン反応性を有するゲル化剤は単独で使用してもよく、グアーガム等の増粘剤をはじめとする、カチオン反応性を有しない他のゲル化剤を併用してもよい。
【0029】
一実施形態において、カチオン反応性を有するゲル化剤は、好ましくは、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む。
【0030】
一実施形態において、カチオン反応性を有するゲル化剤は、1価のカチオンと反応性を有さず、2価以上のカチオンと反応性を有することが好ましい。
カチオン反応性を有するゲル化剤は、酸性条件において安定であること、及びゲル化反応の時間が比較的短いことから、LMペクチンであることがより好ましい。
LMペクチンは、ペクチンのうち、ペクチン分子を構成するガラクツロン酸メチルエステル及びガラクツロン酸の合計に対するガラクツロン酸メチルエステルの割合(エステル化度)が50%未満のものをいう。
【0031】
一実施形態において、容器に充填する時のA液の温度が、カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、A液中のゲル化剤とB液中のカチオンとが容器内の任意のランダムな場所で接触することを契機としてゲル化が起こり、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造できる。
【0032】
一実施形態において、A液及びB液の合計に対するA液の含有量が70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造できる。
【0033】
A液は、本発明の効果を抑制しない範囲で、上記成分以外に、ゼリー入り飲料の製造に一般的に使用する成分を含んでもよい。例えば、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤、固形物(例えば、果物、食物繊維、ナタデココ等)、酸化防止剤、栄養強化剤(ビタミン等)、乳酸菌、増粘剤等を含んでもよい。
【0034】
A液の調製方法に限定はなく、水や液糖等のベースとなる材料を溶媒又は分散媒として、これにゲル化剤及び必要に応じて添加されるその他の成分を混合し、溶解又は分散させればよい。
【0035】
[B液]
B液は、カチオンを含有する。
これにより、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と混合することでゲル化反応が起こり、ゼリーを生成することができる。
【0036】
B液の殺菌処理後の粘度は10mPa・s以上50mPa・s未満であり、好ましくは11mPa・s以上40mPa・s未満であり、より好ましくは12mPa・s以上30mPa・s未満である。
B液の粘度を上記範囲とし、前述の粘度を有するA液と組み合わせることで、A液とB液との混合を制御し、液体と混ざりながらも一繋ぎの大きなゼリーを形成しやすくなる。これにより、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造できる。
また、甘味料や果汁等の材料を使用する場合に、材料の風味を大きく損なうことなくゼリー入り飲料を製造できる。
【0037】
殺菌処理後の粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0038】
B液の殺菌処理後のpHは、好ましくは2.0以上5.5未満であり、より好ましくは3.0以上5.2以下であり、さらにより好ましくは3.6以上5.0以下である。
これにより、ゲル化反応により得られるゼリーの強度を向上させながら、ゼリー入り飲料の酸味を飲料に適した範囲に抑えることができる。また、果汁等の酸性の材料を使用してゼリー入り飲料を製造することが可能となる。
【0039】
B液が含有するカチオンは、A液が含有するゲル化剤に応じて適切なカチオンを選択することができる。
例えば、A液が含有するゲル化剤がLMペクチンである場合、B液が含有するカチオンとしては、カルシウムイオンを選択できる。カルシウムイオンは、乳等の天然物に由来するものでもよく、乳酸カルシウムや塩化カルシウム等の形で添加してもよい。
【0040】
一実施形態において、B液は、4.5mmol/L以上のカルシウムイオンを含む。
【0041】
B液は、本発明の効果を抑制しない範囲で、上記成分以外に、ゼリー入り飲料の製造に一般的に使用する成分を含んでもよい。例えば、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤、固形物(例えば、果物、食物繊維、ナタデココ等)、酸化防止剤、栄養強化剤(ビタミン等)、乳酸菌、油脂、脱脂粉乳、バター、脱脂濃縮乳加工品、増粘剤等を含んでもよい。
【0042】
B液の調製方法に限定はなく、水や液糖等のベースとなる材料を溶媒又は分散媒として、これにカチオン及び必要に応じて添加されるその他の成分を混合し、溶解又は分散させればよい。
【0043】
[ゼリー入り飲料]
本発明の一態様に係るゼリー入り飲料は、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、容器に充填し、容器内でA液とB液とを混合することで製造できる。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造できる。
【0044】
本発明の別の態様に係るゼリー入り飲料は、飲料中のゼリーと、飲料を構成する液体とが、互いに異なる色を呈し、かつ大理石模様(マーブル模様)の外観を呈する。
飲料中のゼリーと、飲料を構成する液体とが、互いに異なる色を呈することで、大理石模様(マーブル模様)の視認性がよくなり、美観にすぐれたゼリー入り飲料となる。
また、ゼリー部分と液体部分を別の味に分けることもでき、これにより複雑な味や質感を作り出すことができる。
【0045】
ゼリー入り飲料が「酸性である」とは、飲料を構成する液体が酸性であることを意味する。
一実施形態において、ゼリー入り飲料を構成する液体のpHは2.5~4.5である。
ゼリー入り飲料を構成する液体のpHは、実施例に記載の方法で測定できる。
【0046】
一実施形態において、飲料中のゼリーは、カチオン反応性を有するゲル化剤をゲル化してなるゼリーである。
カチオン反応性を有するゲル化剤としては、例えば、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、及びアルギン酸からなる群から選ばれる一種以上が挙げられるが、カチオンと反応してゲル化する性質を有するゲル化剤であれば特に限定されない。
【0047】
一実施形態において、ゼリー入り飲料は、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む。
【0048】
一実施形態において、ゼリー入り飲料は、さらに、カルシウムイオンを含む。
【0049】
ゼリー入り飲料は、本発明の効果を抑制しない範囲で、上記成分以外に、ゼリー入り飲料の製造に一般的に使用する成分を含んでもよい。例えば、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤、固形物(例えば、果物、食物繊維、ナタデココ等)、酸化防止剤、栄養強化剤(ビタミン等)、乳酸菌、油脂、脱脂粉乳、バター、脱脂濃縮乳加工品、増粘剤等を含んでもよい。
【実施例0050】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1及び比較例1として、種々の組成でA液及びB液を調製し、評価した。
【0052】
A液及びB液の各物性は以下の方法に従って測定した。
[pH]
pHの測定は、殺菌後の試料の液温を20℃にした後、pHメーター(東亜ティーケーケー株式会社製、MH-25R)を使用して行った。
【0053】
[粘度]
粘度の測定は、殺菌後の試料の液温を25℃に調整し、単一円筒型回転粘度計(東機産業社製、VISCOMETER TVB-15)を使用して、M1ローターを使用して、100rpmの条件で測定した。
[Brix]
Brixの測定は、殺菌後の試料の液温を20℃に調整し、Density Brix計(京都電子工業株式会社製、DA-510C)を使用して行った。
【0054】
実施例1
[A液の調製]
水に液糖を溶解させた後、LMペクチン、グアーガムを順に添加し、完全に溶解させた後、クエン酸及びクエン酸ナトリウムの溶解水を添加した。その後、いちご果汁、リンゴ果汁、リコピン色素、香料を順に添加し、表1の組成になるように水を加えた。
表中、「残部」とは、水に溶解させた液糖に、水以外の原料をすべて添加した後、合計100質量%になるように水を加えることを意味する。
A液の殺菌は、110℃で30秒間行った。殺菌後のA液について、各物性の評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
[B液の調製]
水に液糖を溶解した後、HMペクチンを添加し、溶解させた。別途、脱脂粉乳とノンデイリークリーマーを水に溶解させ、HMペクチンの溶解液に投入し、10分間撹拌した。その後、クエン酸及びクエン酸ナトリウムの溶解水を添加し、さらに10分間撹拌した。香料を添加し、表2の組成になるように水を加えた。B液中のカルシウムイオン濃度は4.6mol/Lであった。カルシウムイオン濃度は、ICP発光分析法により分析した。
B液の殺菌は、110℃で30秒間行った。殺菌後のB液について、各物性の評価結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
[ゼリー入り飲料の製造]
予め殺菌しておいた270mLのPET製の容器に、25℃、無菌下で、135gのA液を充填した。
次に、25℃、無菌下で、135gのB液を充填した。B液を充填することにより、容器中でB液とA液とが混合しながら接触して部分的にゲル化が起こり、ゼリー入り飲料が製造された。
【0059】
[ゼリー入り飲料の評価]
A液及びB液を充填した後の外観を観察した。結果を図1に示す。
実施例1のゼリー入り飲料は、流線形状が多重に重なったり、練り込まれたりする形状に硬化したゼリー部分に加えて、飲料部分が液体として存在する大理石模様(マーブル模様)の外観を有することが確認できた。理論で括ることを意図するものではないが、脱脂粉乳のカルシウムイオンによって、LMペクチンの分子鎖中のガラクツロン酸部分と、LMペクチンの別の分子鎖中のガラクツロン酸部分とがカルシウムを介して結合してゲル化が起こったものと考えられる。このゲル化が、二液の充填に伴う液混合とともに起こり、歪な形状のゼリーができることで、従来のゼリー入り飲料では実現できなかった新規な大理石模様(マーブル模様)の外観を得ることができた。
実施例1のゼリー入り飲料の液体部分のpHは3.6であった。pHの測定は、ゼリー入り飲料をゼリーと液体とに分けた後、液体部分の液温を20℃にし、pHメーター(東亜ティーケーケー株式会社製、MH-25R)を使用して行った。
【0060】
比較例1
[A液の調製]
水に液糖を溶解させた後、LMペクチン、グアーガムを順に添加し、完全に溶解させた後、クエン酸及びクエン酸ナトリウムの溶解水を添加した。その後、いちご果汁、リンゴ果汁、難溶性カルシウム塩である乳酸カルシウムの溶解水を順に添加し、その後、リコピン色素、香料及びシリコンを添加し、表3の組成になるように水を加えた。
A液の殺菌は、110℃で30秒間行った。A液は、難溶性カルシウム塩である乳酸カルシウムを含むことから、殺菌工程後に、とろみのあるやや滑らかな半液体状のゼリーが形成され、ゼリー部分と飲料部分とが上下に分離し、ゼリー入り飲料の製造には適さなかった。そのため、各物性の測定、B液の調製、及びゼリー入り飲料の製造は行わなかった。
表3において、「-」は、測定を行わなかったことを意味する。
【0061】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、酸性の溶液を使用して、複数の液体色を有するゼリー入り飲料を製造する方法を提供できる。本発明のゼリー入り飲料を製造する方法は、大理石模様(マーブル模様)の外観を有するゼリー入り飲料を製造でき、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明のゼリー入り飲料は、飲料中のゼリーと、飲料を構成する液体とが、互いに異なる色を呈し、かつ大理石模様(マーブル模様)の外観を呈するゼリー入り飲料であり、従来のゼリー入り飲料とは異なる外観を呈するため、産業上の利用可能性が高い。
図1