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特開2022-179072静電荷像現像用トナーの製造方法、及び、静電荷像現像用トナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179072
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法、及び、静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20221125BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20221125BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/087 331
G03G9/097 375
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086314
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山下 敬弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 一彦
(72)【発明者】
【氏名】一色 勇治
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA09
2H500BA15
2H500BA31
2H500CA06
2H500CB12
2H500EA12B
2H500EA39B
2H500EA45D
2H500EA52D
2H500EA62D
(57)【要約】
【課題】転写性、及び、画像ムラ抑制性に優れる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、前記混合工程に使用される混合装置が、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、下記条件(1)及び条件(2)を満たす静電荷像現像用トナーの製造方法。条件(1):前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃≦Ti<Tg(式1)を満たす。条件(2):0.08≦(Pm-P0)/w≦0.50(式2)を満たす。式2中、Pmは前記混合装置の前記撹拌羽根を駆動させるモーターの平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、
前記混合工程に使用される混合装置が、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、
下記条件(1)及び条件(2)を満たす
静電荷像現像用トナーの製造方法。
条件(1):前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃≦Ti<Tg(式1)を満たす。
条件(2):0.08≦(Pm-P0)/w≦0.50(式2)を満たす。
式2中、Pmは前記混合工程における前記混合装置の前記撹拌羽根を駆動するモーターの平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記混合装置内の前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
【請求項2】
非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、
前記混合工程に使用される混合装置が、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、
下記条件(1)及び条件(3)を満たす
静電荷像現像用トナーの製造方法。
条件(1):前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃≦Ti<Tg(式1)を満たす。
条件(3):40≦(Pm-P0)・t/w≦300(式3)を満たす。
式3中、tは前記混合工程における混合時間(sec)を表し、Pmは前記混合工程における前記混合装置の前記撹拌羽根を駆動するモーターの平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記混合装置内の前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
【請求項3】
前記混合工程における前記ジャケットの通水により冷却を開始する前記混合装置内温度設定値が、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-30℃以上前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-5℃以下である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記混合工程における前記撹拌羽根の回転数が、20m/sec以上80m/sec以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記混合工程における混合終了時の装置内温度Teが、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-25℃以上前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-10℃以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
前記添加剤粒子が、1種以上の算術平均粒径60nm以上の大径添加剤粒子と、2種以上の算術平均粒径60nm未満の小径添加剤粒子とを含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項7】
前記大径添加剤粒子の算術平均粒径が、100nm以上である請求項6に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項8】
前記混合工程で混合されたトナーにおいて、前記トナー粒子に付着していない前記添加剤粒子の割合を表す遊離率が60%以下であり、かつ超音波脱離処理後のトナーに付着している添加剤の割合を表す強付着率が、前記大径外添剤は30%以下であり、前記小径外添剤は80%以下である請求項6又は請求項7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
前記添加剤粒子が、無機酸化物粒子を含む請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項10】
前記無機酸化物粒子が、算術平均粒径60nm以上の大径無機酸化物粒子と、算術平均粒径60nm未満の小径無機酸化物粒子とを含む請求項9に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項11】
前記混合工程の混合時間が、5分間以上30分間以下である請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項12】
前記混合工程において混合終了時の装置内温度をTe、混合開始後2分から混合終了までの装置内の平均温度をTaとし、連続して2回以上混合工程を実施した際の1回目のTeであるTe1とn回目のTeであるTen及び1回目のTaであるTa1とn回目のTaであるTanが常に|Ten-Te1|≦10℃、かつ、|Tan-Ta1|≦10℃を満たす請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。前記式中、|Ten-Te1|、|Tan-Ta1|はそれぞれ、Ten-Te1、Tan-Ta1の絶対値を表す。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法により製造された静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーの製造方法、及び、静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等、画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、帯電及び静電荷像形成により、像保持体の表面に画像情報として静電荷像を形成する。そして、トナーを含む現像剤により、像保持体の表面にトナー画像を形成し、このトナー画像を記録媒体に転写した後、トナー画像を記録媒体に定着する。これら工程を経て、画像情報を画像として可視化する。
【0003】
例えば、特許文献1には、結着樹脂及び着色剤を含有する母体着色粒子100重量部と、体積中位粒径30~100nmの大粒径シリカ4.0~7.0重量部とを含有する粉体を、(a)混合羽根を有する混合装置を用いて、混合羽根の先端周速を40~80m/secの範囲、粉体の単位重量当たりに投下する動力エネルギー量を0.01~0.05kwh/kgの範囲として混合することにより、(b)粉体の温度を母体着色粒子のガラス転移温度(Tg)より高い温度に到達させる工程、を有する電子写真用トナーの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-224159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、前記混合工程に使用される混合装置が、ジャケットを有する撹拌槽及び撹拌羽根を有し、かつ前記ジャケットに冷却水を通水可能な温度制御機構を有し、前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが、前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃未満若しくはTg以上であるか、又は、下記式2若しくは式3を満たさない場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性に優れる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、前記混合工程に使用される混合装置が、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、下記条件(1)及び条件(2)を満たす静電荷像現像用トナーの製造方法。
条件(1):前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃≦Ti<Tg(式1)を満たす。
条件(2):0.08≦(Pm-P0)/w≦0.50(式2)を満たす。
式2中、Pmは前記混合工程における前記混合装置のモーター平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記混合装置内の前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
<2> 非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、前記混合工程に使用される混合装置が、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、下記条件(1)及び条件(3)を満たす静電荷像現像用トナーの製造方法。
条件(1):前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃≦Ti<Tg(式1)を満たす。
条件(3):40≦(Pm-P0)・t/w≦300(式3)を満たす。
式3中、tは前記混合工程における混合時間(sec)を表し、Pmは前記混合工程における前記混合装置のモーター平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記混合装置内の前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
<3> 前記混合工程における前記ジャケットの通水により冷却を開始する前記混合装置内温度設定値が、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-30℃以上前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-5℃以下である<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<4> 前記混合工程における前記撹拌羽根の回転数が、20m/sec以上80m/sec以下である<1>乃至<3>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<5> 前記混合工程における混合終了時の装置内温度Teが、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-25℃以上前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-10℃以下である<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<6> 前記添加剤粒子が、1種以上の算術平均粒径60nm以上の大径添加剤粒子と、2種以上の算術平均粒径60nm未満の小径添加剤粒子を含む<1>乃至<5>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<7> 前記大径添加剤粒子の算術平均粒径が、100nm以上である<6>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<8> 前記混合工程で混合されたトナーにおいて、前記トナー粒子に付着していない前記添加剤粒子の割合を表す遊離率が60%以下であり、かつ超音波脱離処理後のトナーに付着している添加剤の割合を表す強付着率が、前記大径外添剤は30%以下であり、前記小径外添剤は80%以下である<6>又は<7>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<9> 前記添加剤粒子が、無機酸化物粒子を含む<1>乃至<8>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<10> 前記無機酸化物粒子が、算術平均粒径60nm以上の大径無機酸化物粒子と、算術平均粒径50nm未満の小径無機酸化物粒子とを含む<9>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<11> 前記混合工程の混合時間が、5分間以上30分間以下である<1>乃至<10>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<12> 前記混合工程において混合終了時の装置内温度をTe、混合開始後2分から混合終了までの装置内の平均温度をTaとし、連続して2回以上混合工程を実施した際の1回目のTeであるTe1とn回目のTeであるTen及び1回目のTaであるTa1とn回目のTaであるTanが常に|Ten-Te1|≦10℃、かつ、|Tan-Ta1|≦10℃を満たす<1>乃至<11>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。前記式中、|Ten-Te1|、|Tan-Ta1|はそれぞれ、Ten-Te1、Tan-Ta1の絶対値を表す。
<13> <1>乃至<12>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法により製造された静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0007】
<1>、<2>、<9>又は<10>に係る発明によれば、非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、前記混合工程に使用される混合装置が、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが、前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃未満若しくはTg以上であるか、又は、下記式2若しくは式3を満たさない場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性に優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<3>に係る発明によれば、前記混合工程における前記ジャケットの通水により冷却を開始する前記混合装置内温度設定値が、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-30℃未満又は前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-5℃超である場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性により優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<4>に係る発明によれば、前記混合工程における前記撹拌羽根の回転数が、20m/sec未満又は80m/sec超である場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性により優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<5>に係る発明によれば、前記混合工程における混合終了時の装置内温度Teが、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-25℃未満又は前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-10℃超である場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性により優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<6>に係る発明によれば、前記添加剤粒子が、1種のみを含む場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性により優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<7>に係る発明によれば、前記大径添加剤粒子の算術平均粒径が、100nm未満である場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性により優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<8>に係る発明によれば、前記混合工程で混合されたトナーにおいて、前記トナー粒子に付着していない前記添加剤粒子の割合を表す遊離率が60%未満であるか、又は、超音波脱離処理後のトナーに付着している添加剤の割合を表す強付着率が、前記大径外添剤は30%未満であるか、若しくは、前記小径外添剤は80%未満である場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性により優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<11>に係る発明によれば、前記混合工程の混合時間が、5分間未満又は30分間超である場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性により優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<12>に係る発明によれば、前記混合工程において混合終了時の装置内温度をTe、混合開始後2分から混合終了までの装置内の平均温度をTaとし、連続して2回以上混合工程を実施した際の1回目のTeであるTe1とn回目のTeであるTen及び1回目のTaであるTa1とn回目のTaであるTanのいずれか1つが、|Ten-Te1|≦10℃、かつ、|Tan-Ta1|≦10℃を満たさない場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性により優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<13>に係る発明によれば、トナーの製造方法において、非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが、前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃未満若しくはTg以上であるか、又は、下記式2若しくは式3を満たさない場合に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に好適に用いられる混合装置一例を示す模式概略図である。
図2】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる混合装置における撹拌羽の一例を示す模式概略図である。
図3】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる混合装置における撹拌羽の他の一例を示す模式概略図である。
図4】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる混合装置における撹拌羽の他の一例を示す模式概略図である。
図5】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる混合装置における撹拌羽の他の一例を示す模式概略図である。
図6】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる混合装置における撹拌羽の他の一例を示す模式概略図である。
図7】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる混合装置における撹拌羽の他の一例を示す模式概略図である。
図8】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる混合装置における撹拌羽の他の一例を示す模式概略図である。
図9】本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる混合装置における撹拌羽の他の一例を示す模式概略図である。
図10】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図11】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
図12】本実施形態に好適に用いられる添加剤投入装置一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
なお、段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
また、数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
(静電荷像現像用トナーの製造方法)
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法の第一の実施態様は、非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、下記条件(1)及び条件(2)を満たす静電荷像現像用トナーの製造方法。
条件(1):前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃≦Ti<Tg(式1)を満たす。
条件(2):0.08≦(Pm-P0)/w≦0.50(式2)を満たす。
式2中、Pmは前記混合工程における前記混合装置の前記撹拌羽根を駆動させるモーターの平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記混合装置内の前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
【0011】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法の第二の実施態様は、非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、前記混合工程に使用される混合装置が、ジャケットを有する撹拌槽及び撹拌羽根を有し、下記条件(1)及び条件(3)を満たす。
条件(1):前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃≦Ti<Tg(式1)を満たす。
条件(3):40≦(Pm-P0)・t/w≦300(式3)を満たす。
式3中、tは前記混合工程における混合時間(sec)を表し、Pmは前記混合工程における前記混合装置の前記撹拌羽根を駆動させるモーターの平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記混合装置内の前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
【0012】
なお、本明細書において、特に断りなく、単に「本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法」という場合は、上記第一の実施態様及び上記第二の実施態様の両方について述べるものとする。また、特に断りなく、単に「混合装置」等という場合は、上記第一の実施態様及び上記第二の実施態様の全ての混合装置等について述べるものとする。
また、本実施形態においては、トナー粒子の表面近傍とは、トナー粒子表面から深さ200nmまでの部分をいうものとする。
また、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法により製造されたトナーである。
【0013】
近年、電子写真法により画像形成は、高画質及び高信頼性の両立が求められている。高画質と高信頼性とを同時に実現する方法として、湿式製法により小粒径かつ粒度分布の狭いトナーが開発されている。しかし、湿式製法で得られたトナー粒子単体では、トナーの転写性、帯電特性、流動性等の諸特性が現像剤としての要求を満たせない。そこでこれらの改善を図る目的で、従来より無機酸化物粒子等を外添剤として混合することが実施されている。これらの外添剤粒子のトナー粒子表面への付着状態は、トナー粒子の帯電性のみならず、画質に対し大きく影響する。例えば、外添剤粒子とトナー粒子との付着力が弱すぎる(遊離成分が多い)と、比較的高い粉体流動性が得られるものの、外添剤粒子がキャリアに付着することでトナーの帯電量や帯電量分布が悪化し現像ムラの原因となる。逆にトナー粒子との付着力が強すぎると、トナー粒子の流動性悪化による転写効率低減やトナーへの外添剤の埋没による帯電量分布が広がる。したがって、トナー製造工程において外添剤粒子のトナー粒子表面への付着状態を最適化する。
外添剤粒子のトナー粒子表面へ良好に付着させる方法として、トナーのガラス転移温度より高い温度で混合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、トナーのガラス転移温度より高い温度で混合する場合、比較的付着力の弱い平均粒径60nm以上の外添剤粒子は適度な付着性が得られるが、比較的付着力の強い平均粒径60nm未満の添加剤粒子の付着状態は過剰となり、トナーに外添剤が埋没し帯電量分布が広がり画像ムラが生じる。
【0014】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法では、前記条件(1)、及び、前記条件(2)又は前記条件(3)を満たすことにより、混合装置内の温度と動力又は仕事量とを調整することにより、添加剤粒子の付着強度(均一分散性)を良好な範囲に制御され、転写性、及び、画像ムラ抑制性に優れる静電荷像現像用トナーが得られると推定している。
また、添加剤粒子が、大径添加剤粒子と、小径添加剤粒子とを含む場合は、画像ムラがより生じやすいが、その場合であっても、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、転写性、及び、画像ムラ抑制性に優れる静電荷像現像用トナーが得られる。
【0015】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0016】
<混合工程>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法の第一の実施態様は、非晶性樹脂を含むトナー粒子(単に「トナー粒子」ともいう。)と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、前記混合工程に使用される混合装置が、ジャケットを有する撹拌槽及び撹拌羽根を有し、かつ前記ジャケットに冷却水を通水可能な温度制御機構を有し、前記条件(1)及び条件(2)を満たす。
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法の第二の実施態様は、非晶性樹脂を含むトナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合工程を含み、前記混合工程に使用される混合装置が、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを有し、前記条件(1)及び条件(3)を満たす。
【0017】
-条件(1)-
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記条件(1)を満たす。
条件(1):前記混合工程における前記混合装置内温度Tiが前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、Tg-50℃≦Ti<Tg(式1)を満たす。
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法においては、前記Tiは、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、Tg-40℃以上Tg-5℃以下であることが好ましく、Tg-30℃以上Tg-10℃以下であることがより好ましい。
また、前記混合工程における前記混合装置内温度Tiは、前記撹拌槽内温度であることが好ましい。
なお、前記トナー粒子の表面近傍に含まれる前記非晶性樹脂が2種以上である場合、前記Tgは、表面近傍において最も含有量の多い非晶性樹脂のガラス転移温度とする。
【0018】
-条件(2)-
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法の第一の実施態様は、下記条件(2)を満たす。
条件(2):0.08≦(Pm-P0)/w≦0.50(式2)を満たす。
式2中、Pmは前記混合工程における前記混合装置の前記撹拌羽根を駆動するモーターの平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記混合装置内の前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
また、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法の第二の実施態様は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、上記条件(2)を満たすことが好ましい。
【0019】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、下記式(2-1)を満たすことがより好ましく、下記式(2-2)を満たすことが特に好ましい。
0.10≦(Pm-P0)/w≦0.40(式2-1)
0.15≦(Pm-P0)/w≦0.35(式2-2)
【0020】
-条件(3)-
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法の第二の実施態様は、下記条件(3)を満たす。
条件(3):40≦(Pm-P0)・t/w≦300(式3)を満たす。
式3中、tは前記混合工程における混合時間(sec)を表し、Pmは前記混合工程における前記混合装置の前記撹拌羽根を駆動数モーターの平均動力(kW)を表し、P0は前記モーターの空動力(kW)を表し、wは前記混合装置内の前記トナー粒子及び前記添加剤粒子の総質量(kg)を表す。
また、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法の第一の実施態様は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、上記条件(3)を満たすことが好ましい。
【0021】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、下記式(3-1)を満たすことがより好ましく、下記式(3-2)を満たすことが特に好ましい。
60≦(Pm-P0)・t/w≦240(式3-1)
100≦(Pm-P0)・t/w≦200(式3-2)
【0022】
前記混合工程に使用される混合装置は、ジャケットを有する撹拌槽及び撹拌羽根を有し、かつ前記ジャケットに冷却水を通水可能な温度制御機構を有する。
前記混合装置としては、撹拌槽、撹拌羽根、及び、前記撹拌槽を冷却可能であるジャケットを備えた装置であれば、特に制限はなく、公知の混合装置が用いられる。
【0023】
前記混合装置としては、図1に示す混合装置が好適に挙げられる。
図1に示す混合装置400は、撹拌槽411、撹拌羽根として、上羽根406及び下羽根407からなる撹拌羽根、及び、前記撹拌槽411を冷却可能であるジャケット(不図示)を有し、を備える。
原料粉体であるトナー粒子及び添加剤粒子は、撹拌槽411の上部より投入され、バッチ処理される。撹拌槽411内は、常に大気圧となるよう通気フィルター403を介して開放されている。
上羽根406及び下羽根407からなる撹拌羽根は、モーター405を動力として回転する。
下羽根407の回転により上方向に流動した処理物が、上羽根406によって強力に剪断される。これらの回転運動による遠心力により処理物は、撹拌槽411の壁に偏る。これを、角度を調整可能なディフレクタ404により撹拌槽411の中心方向へに押し戻す。これら一連の流れにより循環流が発生し、均一性に優れた混合物が得られる。

なお、撹拌槽411内はジャケット(不図示)に5℃冷水などの冷却水を通水することにより冷却される。冷却水は、冷却水入口401から入り、冷却水出口402から排出される。撹拌槽411内温度は、熱電対や測温抵抗体などの温度センサ410によって測定可能である。また、前記ジャケットは、冷却水だけでなく、温水等を通水してもよい。更に、前記ジャケットは、前記温度センサ410と連動した温度制御機構を有していてもよい。また、前記温度制御機構による温度制御は、手動操作により行っても、自動で行ってもよい。
【0024】
また、本実施形態に用いられる撹拌槽の形状、及び、材質は、特に制限はなく、公知のものが用いられるが、前記ジャケットによる冷却効率の観点から、金属製撹拌槽であることが好ましい。
【0025】
本実施形態に用いられる撹拌羽根の形状、及び、材質は、特に制限はなく、公知のものが用いられる。
中でも、撹拌羽根としては、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、上羽根及び下羽根を組み合わせた撹拌羽根が好適に挙げられる。
上羽根及び下羽根の形状、及び、材質は、特に制限はなく、公知のものが用いられ、また、用途に応じて適宜組み合わせられる。
好ましい上羽根及び下羽根は、図2乃至図9に示す形状の羽根が好適に挙げられる。
上羽根としては、図2又は図6乃至図9に示す形状の羽根がより好適に挙げられ、下羽根としては、図3乃至図5に示す形状の羽根がより好適に挙げられる。
図4に示す下羽根S0(下)は、掻き上げる力が非常に強い下羽根である。
図6に示す上羽根Z0(上)は、激しいモーションを起こし、比較的多量の処理や粘度の高いスラリー状、餅状のものを練るような処理に適している。
図7に示す上羽根CK(上)は、処理物を撹拌槽壁面へ押し付ける作用を有し、また、羽根が二段で高い位置にあるため大量処理性に優れる。
図8に示す上羽根P0(上)は、羽根が最も周速の速い部位で立ち上がっているため、低速で粒度を整えやすい羽根である。
図9に示す上羽根Y2(上)は、一段目と二段目の間にフィンが設けられており、リング状の羽根の効果により上下の脈動が無く、バランスの良い撹拌を行える。
これらの中でも、図6に示す上羽根Z0(上)と図5に示す下羽根B0(下)とを組み合わせた撹拌羽根が、大径及び小径両方の添加剤粒子の遊離率の制御が容易であるため、特に好ましい。
【0026】
前記混合工程における前記撹拌羽根の回転数は、特に制限はないが、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、5m/sec以上100m/sec以下であることが好ましく、10m/sec以上90m/sec以下であることがより好ましく、20m/sec以上80m/sec以下であることが特に好ましい。
【0027】
前記撹拌槽内の冷却は、5℃冷水などの冷却水をジャケットに通水することで行う。
前記撹拌槽内の温度制御は、例えば、前記混合工程のバッチ開始時にジャケット通水は停止させておき、前記撹拌槽内の温度を熱電対や測温抵抗体などで常時監視し、混合開始から混合熱などによる槽内温度上昇が処方条件で設定した温度を超えたタイミングでジャケット通水を開始し、バッチ終了又は処方条件で設定した温度より低下したタイミングで通水を停止する態様が挙げられる。また、制御上位の工程制御計算機から品種毎に設定する処方条件により、前記撹拌槽内の温度制御を実施することが好ましい。
前記温度制御方法を用いることによって、バッチ毎の最終到達温度を一定の範囲に制御でき、連続バッチでの槽内の温度プロファイルを安定させることができる。前記混合工程の各バッチは混合時間によって規定している。また、軸冷却を行うオイルの温度は、冷却水で安定した温度にすることによって、安定した設備混合が行われる。
冷却水のジャケット通水の制御は、例えば、冷却水入口に接続した設備配管に設置した自動弁により行う方法が挙げられる。自動弁を開することでジャケット通水を開始し、自動弁を閉することでジャケット通水を停止させることにより行われる。なお、前記混合工程の自動制御装置が、前記撹拌槽内の温度を熱電対や測温抵抗体などで監視を行い、処方条件で設定した温度で設備配管に設置した自動弁を開することで実現してもよい。また、自動弁は自動制御装置を手動モードに切り替えることによって、任意のタイミングで操作してもよい。
【0028】
前記混合工程における前記ジャケットの通水により冷却を開始する前記混合装置内温度設定値は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-30℃以上前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-5℃以下であることが好ましく、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-20℃以上前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-5℃以下であることがより好ましい。
【0029】
また、前記混合工程において、複数の添加剤粒子の秤量及び撹拌装置への投入を効率的に実施するために、添加剤投入装置を用いることができる。添加剤投入装置としては、例えば、図12に示す装置が好適に挙げられる。
図12に示す添加剤投入装置500としては、例えば、添加剤粒子を秤量可能な計量ホッパー502及びホッパーを搬送可能な車輪等の搬送機構504を有しており、複数の添加剤粒子の秤量及び混合装置600への投入の際に、前記添加剤投入装置は各添加剤粒子の切出し機506a,506b,506cの計量排出手段512a,512b,512cに移動し、前記切出された添加剤を計量ホッパー502にて所定量計量することができる。また、添加剤投入装置500は、複数の添加剤粒子を秤量後、トナー粒子と添加剤粒子とを混合する混合装置600へ秤量した添加剤を投入してもよい。
添加剤投入装置500の各計量排出手段512a,512b,512cへの移動、所定量計量の設定、動作回数などの処方設定を行うことも可能であり、処方設定は工程制御計算機(不図示)から添加剤投入装置500に設定することも可能である。また、添加剤投入装置500は、添加剤投入装置の単独動作、他工程との連動動作の選択が可能である。
【0030】
前記混合工程における混合終了時の装置内温度Teは、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-30℃以上前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-5℃以下であることが好ましく、前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-25℃以上前記非晶性樹脂のガラス転移温度Tg-10℃以下であることがより好ましい。
【0031】
前記混合工程の混合時間は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、1分間以上60分間以下であることが好ましく、2分間以上40分間以下であることがより好ましく、5分間以上30分間以下であることが特に好ましい。
【0032】
転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、前記混合工程において混合終了時の装置内温度をTe、混合開始後2分から混合終了までの装置内の平均温度をTaとし、連続して2回以上混合工程を実施した際の1回目のTeであるTe1とn回目のTeであるTen及び1回目のTaであるTa1とn回目のTaであるTanが常に|Ten-Te1|≦10℃、かつ、|Tan-Ta1|≦10℃を満たすことが好ましく、常に|Ten-Te1|≦8℃、かつ、|Tan-Ta1|≦8℃を満たすことがより好ましく、常に|Ten-Te1|≦5℃、かつ、|Tan-Ta1|≦5℃を満たすことが特に好ましい。
【0033】
前記混合工程における非晶性樹脂を含むトナー粒子に含まれる結着樹脂、離型剤、着色剤等の各成分の好ましい態様については、まとめて後述する。
【0034】
前記混合工程における添加剤粒子は、トナーの外添剤が好適に挙げられる。
前記添加剤粒子としては、例えば、無機粒子、有機粒子が挙げられる。
前記無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0035】
無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0036】
添加剤粒子としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される脂肪酸金属塩粒子、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0037】
中でも、本実施形態における効果をより発揮する観点から、前記添加剤粒子は、前記添加剤粒子が、1種以上の算術平均粒径60nm以上の大径添加剤粒子と、1種以上の算術平均粒径60nm未満の小径添加剤粒子を含むことが好ましく、1種以上の算術平均粒径60nm以上の大径添加剤粒子と、2種以上の算術平均粒径60nm未満の小径添加剤粒子を含むことがより好ましく、1種又は2種の算術平均粒径60nm以上の大径添加剤粒子と、2種又は3種の算術平均粒径60nm未満の小径添加剤粒子を含むことが特に好ましい。
前記大径添加剤粒子の算術平均粒径は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、70nm以上であることが好ましく、85nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが特に好ましい。
また、前記大径添加剤粒子の算術平均粒径の上限は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、8μm以下であることが好ましく、5.0μm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。
更に、前記小径添加剤粒子の算術平均粒径は、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、5nm以上60nm未満であることが好ましく、5nm以上40nm以下であることがより好ましく、5nm以上30nm以下であることが特に好ましい。
【0038】
本実施形態における添加剤粒子の算術平均粒径の測定方法は、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-4100)により観察して画像を撮影する。撮影した画像を画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事(株)製)に取り込み、画像解析によって粒子ごとの面積を求め、面積から円相当径(nm)を求める。粒子100個以上の円相当径の算術平均を算出し、算術平均粒径とする。
【0039】
また、本実施形態における効果をより発揮する観点から、前記添加剤粒子は、無機酸化物粒子を含むことが好ましく、算術平均粒径60nm以上の大径無機酸化物粒子と、算術平均粒径60nm未満の小径無機酸化物粒子とを含むことが好ましく、1種以上の算術平均粒径60nm以上の大径無機酸化物粒子と、2種以上の算術平均粒径60nm未満の小径無機酸化物粒子とを含むことがより好ましく、1種又は2種の算術平均粒径60nm以上の大径無機酸化物粒子と、2種又は3種の算術平均粒径60nm未満の小径無機酸化物粒子を含むことが特に好ましい。
【0040】
無機酸化物粒子としては、シリカ粒子、チタニア粒子、シリカ-チタニア複合粒子、アルミナ粒子等が挙げられる。中でも、シリカ粒子、チタニア粒子、及び、シリカ-チタニア複合粒子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子が好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。
【0041】
また、前記添加剤粒子としては、脂肪酸金属塩粒子も好適に挙げられる。
脂肪酸金属塩粒子としては、例えば、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ラウリン酸、その他有機酸等の脂肪酸)と、金属(例えばカルシウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、その他金属(Na、Li等))との塩の粒子が挙げられる。
脂肪酸金属塩粒子として具体的には、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉛、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛等の粒子が挙げられる。
脂肪酸金属塩粒子は、これらの中でも、潤滑性、疎水性及び濡れ性等の観点から、ステアリン酸亜鉛粒子が好ましい。
【0042】
添加剤粒子の添加量としては、特に制限はないが、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、トナー粒子の全質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.01質量%以上8質量%以下がより好ましい。
また、大径添加剤粒子の添加量としては、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、トナー粒子の全質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1.0質量%以上8質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上6質量%以下が更に好ましい。
小径添加剤粒子の添加量としては、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、トナー粒子の全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
更に、前記混合工程においては、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、小径添加剤粒子の添加量よりも、大径添加剤粒子の添加量が多いことが好ましい。
【0043】
前記混合工程で混合されたトナーにおいて、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、前記トナー粒子に付着していない前記添加剤粒子の割合を表す遊離率は、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましく、10%以上50%以下であることが特に好ましい。
また、前記混合工程で混合されたトナーにおいて、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、超音波脱離処理後のトナーに付着している添加剤の割合を表す強付着率が、前記大径外添剤は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、1%以上10%以下であることがより好ましい。
更に、前記混合工程で混合されたトナーにおいて、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、超音波脱離処理後のトナーに付着している添加剤の割合を表す強付着率が、前記小径外添剤は、80%以下であることが好ましく、20%以上70%以下であることがより好ましく、25%以上60%以下であることが特に好ましい。
【0044】
また、前記混合工程で混合されたトナーにおいて、転写性、及び、画像ムラ抑制性の観点から、前記トナー粒子に付着していない前記添加剤粒子の割合を表す遊離率が60%以下であり、かつ超音波脱離処理後のトナーに付着している添加剤の割合を表す強付着率が、前記大径外添剤は30%以下であり、前記小径外添剤は80%以下であることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、前記混合工程以外の公知の工程を更に含んでいてもよい。具体的には、例えば、以下に示す各工程が挙げられる。
また、実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、非晶性樹脂を含むトナー粒子を準備する準備工程を含むことが好ましい。
【0046】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、高画質、高信頼性を有するトナー粒子を容易作製する観点から、凝集合一法により、トナー粒子を得ることが好ましい。
【0047】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
非晶性樹脂粒子が分散された非晶性樹脂粒子分散液、結晶性樹脂粒子が分散された結晶性樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、
非晶性樹脂粒子分散液(必要に応じて、結晶性樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液を混合した後の分散液中で)、非晶性樹脂粒子(必要に応じて、結晶性樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤粒子等)を凝集させ、第1凝集粒子を形成する工程(第1凝集粒子形成工程)と、
第1凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、非晶性樹脂粒子分散液を混合し、第1凝集粒子の表面に非晶性樹脂粒子を付着するように凝集し、第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子工程)と
第2凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、
を経て、トナー粒子を製造する。
【0048】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0049】
-樹脂粒子分散液準備工程-
まず、結着樹脂となる各樹脂粒子が分散された各樹脂粒子分散液(非晶性樹脂粒子分散液及び結晶性樹脂粒子分散液)と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0050】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0051】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、第四級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0054】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下が更に好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0055】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0056】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0057】
-第1凝集粒子形成工程-
次に、非晶性樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、非晶性樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、非晶性樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む第1凝集粒子を形成する。
【0058】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0059】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0060】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、非晶性樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0061】
-第2凝集粒子形成工程-
第1凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、非晶性樹脂粒子分散液を混合する。
【0062】
そして、第1凝集粒子、及び非晶性樹脂粒子が分散された分散液中で、第1凝集粒子の表面に非晶性樹脂粒子を凝集する。
具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、非晶性樹脂粒子分散液を添加し、この分散液に対して、非晶性樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
そして、分散液のpHを調整し、凝集の進行を停止させる。
【0063】
-融合・合一工程-
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、非晶性樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば非晶性樹脂粒子のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0064】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
【0065】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0066】
以下、上述した以外の静電荷像現像用トナーに含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0067】
<結着樹脂>
結着樹脂は、非晶性樹脂を含有することが好ましく、画像強度、及び、得られる画像における濃度ムラ抑制の観点から、非晶性樹脂、及び、結晶性樹脂を含有することがより好ましい。すなわち、前記凝集工程においては、前記結着樹脂粒子として、非晶性樹脂粒子、及び、結晶性樹脂粒子を含有することがより好ましい。
また、前記トナー粒子は、非晶性樹脂を含む。
更に、前記トナー粒子は、コアシェル型トナー粒子であることが好ましい。
【0068】
ここで、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いた熱分析測定において、明確な吸熱ピークではなく、階段状の吸熱変化のみを有するものであり、常温固体で、ガラス転移温度以上の温度において熱可塑化するものを指す。
一方、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものをいう。
具体的には、例えば、結晶性樹脂とは、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを意味し、非晶性樹脂とは、半値幅が10℃を超える樹脂、又は明確な吸熱ピークが認められない樹脂を意味する。
【0069】
非晶性樹脂について説明する。
非晶性樹脂としては、例えば、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂(例えばスチレンアクリル樹脂等)、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等の公知の非晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、得られる画像における濃度ムラ抑制及び白抜け抑制の観点から、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂(特にスチレンアクリル樹脂)が好ましく、非晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
なお、非晶性樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂と、スチレンアクリル樹脂とを併用することも好ましい態様である。
【0070】
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0071】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、芳香族ジオールがより好ましい。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
非晶性ポリエステル樹脂は、公知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と重縮合させるとよい。
【0074】
結着樹脂、特に非晶性樹脂としては、スチレンアクリル樹脂が挙げられる。
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系単量体(スチレン骨格を有する単量体)と(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル基を有する単量体、好ましくは(メタ)アクリロキシ基を有する単量体)とを少なくとも共重合した共重合体である。スチレンアクリル樹脂は、例えば、スチレン類の単量体と(メタ)アクリル酸エステル類の単量体との共重合体を含む。
なお、スチレンアクリル樹脂におけるアクリル樹脂部分は、アクリル系単量体及びメタクリル系単量体のいずれか、又は、その両方を重合してなる部分構造である。また、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含む表現である。
【0075】
スチレン系単量体としては、例えば、具体的には、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等が挙げられる。スチレン系単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中で、スチレン系単量体としては、反応し易さ、反応の制御の容易さ、さらに入手性の点で、スチレンが好ましい。
【0076】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル等)、(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル等)、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、(メタ)アクリル系単量体のうち、これらの(メタ)アクリルエステルの中でも、定着性の点から、炭素数2以上14以下(好ましくは炭素数2以上10以下、より好ましくは3以上8以下)のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
中でも、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。
【0077】
スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合比(質量基準、スチレン系単量体/(メタ)アクリル系単量体)は、特に制限はないが、85/15乃至70/30であることが好ましい。
【0078】
スチレンアクリル樹脂は、架橋構造を有していてもよい。架橋構造を有するスチレンアクリル樹脂は、例えば、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と架橋性単量体とを少なくとも共重合したものが好ましく挙げられる。
【0079】
架橋性単量体としては、例えば、2官能以上の架橋剤が挙げられる。
2官能の架橋剤としては、例えば,ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、デカンジオールジアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)、ポリエステル型ジ(メタ)アクリレート、メタクリル酸2-([1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、トリ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等)、テトラ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート等)、2,2-ビス(4-メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート等が挙げられる。
中でも、架橋性単量体としては、画像濃度低下の発生が抑制されるとともに、画像濃度ムラの発生が抑制される、及び、定着性の観点から、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましく、2官能(メタ)アクリレート化合物がより好ましく、炭素数6以上20以下のアルキレン基を有する2官能(メタ)アクリレート化合物が更に好ましく、炭素数6以上20以下の直鎖アルキレン基を有する2官能(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。
【0080】
全単量体に対する架橋性単量体の共重合比(質量基準、架橋性単量体/全単量体)は、特に制限はないが、2/1,000乃至20/1,000であることが好ましい。
【0081】
スチレンアクリル樹脂の作製方法は、特に制限はなく、種々の重合方法(例えば、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等)が適用される。また、重合反応は、公知の操作(例えば、回分式、半連続式、連続式等)が適用される。
【0082】
スチレンアクリル樹脂は、全結着樹脂に占める割合が0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0083】
非晶性樹脂は、全結着樹脂に占める割合が60質量%以上98質量%以下であることが好ましく、65質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。
【0084】
非晶性樹脂の特性について説明する。
非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0085】
非晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上1,000,000以下が好ましく、7,000以上500,000以下がより好ましい。
非晶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、2,000以上100,000以下が好ましい。
非晶性樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0086】
結晶性樹脂について説明する。
結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル樹脂(例えば、ポリアルキレン樹脂、長鎖アルキル(メタ)アクリレート樹脂等)等の公知の結晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、得られる画像における濃度ムラ抑制及び白抜け抑制の観点から、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0087】
結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香環を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族の重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0088】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば、主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0091】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0092】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0093】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステル樹脂と同様に、公知の製造方法により得られる。
【0094】
結晶性ポリエステル樹脂としては、結晶構造を容易に形成する観点と、非晶性ポリエステル樹脂との相溶性が良好であり、その結果、画像の定着性が向上する観点とから、α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸とα,ω-直鎖脂肪族ジオールとの重合体が好ましい。
【0095】
α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、2個のカルボキシ基をつなぐアルキレン基の炭素数が3以上14以下であるα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、前記アルキレン基の炭素数は4以上12以下がより好ましく、前記アルキレン基の炭素数は6以上10以下が更に好ましい。
α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸(慣用名スベリン酸)、1,7-ヘプタンジカルボン酸(慣用名アゼライン酸)、1,8-オクタンジカルボン酸(慣用名セバシン酸)、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、1,8-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸が好ましい。
α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
α,ω-直鎖脂肪族ジオールとしては、2個のヒドロキシ基をつなぐアルキレン基の炭素数が3以上14以下であるα,ω-直鎖脂肪族ジオールが好ましく、前記アルキレン基の炭素数は4以上12以下がより好ましく、前記アルキレン基の炭素数は6以上10以下が更に好ましい。
α,ω-直鎖脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール等が挙げられ、中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
α,ω-直鎖脂肪族ジオールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸とα,ω-直鎖脂肪族ジオールとの重合体としては、結晶構造を容易に形成する観点と、非晶性ポリエステル樹脂との相溶性が良好であり、その結果、画像の定着性が向上する観点とから、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、1,8-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、及び1,10-デカンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種との重合体が好ましく、中でも、1,10-デカンジカルボン酸と1,6-ヘキサンジオールとの重合体がより好ましい。
【0098】
結晶性樹脂は、全結着樹脂に占める割合が1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0099】
・その他の結着樹脂
結着樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和ニトリル類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体が挙げられる。
ほかに結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0100】
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0101】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0102】
離型剤としては、得られる画像における濃度ムラ抑制及び白抜け抑制、非晶性ポリエステル樹脂との相溶性が良好であり、その結果、画像の定着性が向上する観点から、エステルワックスが好ましく、炭素数10以上30以下の高級脂肪酸と、1価又は多価の炭素数1以上30以下のアルコール成分とのエステルワックスがより好ましい。
【0103】
エステルワックスは、エステル結合を有するワックスである。エステルワックスとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステルのいずれでもよく、公知の天然または合成のエステルワックスが採用できる。
エステルワックスとしては、高級脂肪酸(炭素数10以上の脂肪酸等)と1価又は多価の脂肪族アルコール(炭素数8以上の脂肪族アルコール等)とのエステル化合物で、融解温度60℃以上110℃以下(好ましくは、65℃以上100℃以下、より好ましくは70℃以上95℃以下)のエステル化合物が挙げられる。
エステルワックスとしては、例えば、高級脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸等)と、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の1価アルコール;グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール)とのエステル化合物が挙げられ、具体的には、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油、木ろう、蜜ろう、イボタワックス、ラノリン、モンタン酸エステルワックス等が挙げられる。
【0104】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
離型剤の融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0105】
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0106】
-着色剤-
前記凝集工程において、前記分散液は、着色剤粒子を更に含むことが好ましい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0108】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0109】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0110】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コアシェル構造のトナー粒子(コアシェル型粒子)であってもよい。コアシェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等を含む芯部と、結着樹脂を含む被覆層と、で構成されていてもよい。
コアシェル構造のトナー粒子の場合、シェル層の平均厚さは、トナー粒子の変形抑制の観点から、120nm以上が好ましく、130nm以上がより好ましく、140nm以上が更に好ましく、また、550nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましい。
【0111】
シェル層の平均厚さは、次の方法により測定する。
トナー粒子をエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。SEM画像から10個のトナー粒子断面を無作為に選択し、トナー粒子1個につきシェル層の厚さを20か所計測して平均値を算出し、トナー粒子10個の平均値を平均厚さとする。
【0112】
トナーの体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0113】
トナーの体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2mL中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100mL以上150mL以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子について、各々の粒径を測定する。サンプリングする粒子数は50,000個である。
測定された粒径について、小径側から体積基準の累積分布を描いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vと定義する。
【0114】
本実施形態においてトナー粒子の平均円形度は、特に制限はないが、像保持体からのトナーのクリーニング性を良化する観点からは、0.91以上0.98以下が好ましく、0.94以上0.98以下がより好ましく、0.95以上0.97以下が更に好ましい。
【0115】
本実施形態においてトナー粒子の円形度とは、(粒子投影像と同じ面積をもつ円の周囲長)÷(粒子投影像の周囲長)であり、トナー粒子の平均円形度とは、円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度である。トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像解析装置でトナー粒子を少なくとも3,000個解析して求める。
【0116】
トナー粒子の平均円形度は、例えば、融合工程における、分散液の撹拌速度、分散液の温度又は保持時間を調整することによって制御しうる。
【0117】
また、トナー粒子表面の離型剤量は、例えば、離型剤の仕込み量、離型剤の種類、溶融混錬時の温度の調整、粉砕後熱風による表面処理等を施すことで制御しうる。
【0118】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法により製造されたトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法により製造されたトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0119】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0120】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0121】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0122】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0123】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0124】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0125】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0126】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中でも、像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた画像形成装置が好適に挙げられる。また、クリーニング手段としては、クリーニングブレードが好ましい。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0127】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0128】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0129】
図10は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図10に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0130】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0131】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0132】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0133】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0134】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0135】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0136】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0137】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0138】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0139】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0140】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性を更に向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0141】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0142】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0143】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0144】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0145】
図11は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図11に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、図11中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0146】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0147】
なお、図10に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例0148】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、量を示す「部」及び「%」とは、特に断りがない限り、質量基準である。
【0149】
〔ポリエステル樹脂1の合成〕
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器中に、ポリオキシプロピレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン80モル部、エチレングリコール10モル部と、シクロヘキサンジオール10モル部と、テレフタル酸80モル部と、イソフタル酸10モル部と、n-ドデセニルコハク酸10モル部を投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。その後、触媒として、チタンテトラブトキサイドを前記モノマー成分100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間撹拌反応させた後、温度を更に210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間撹拌反応させて、ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂を、示差走査熱量計(DSC)を用いて樹脂のガラス転移温度を測定したところ、56℃であった。
【0150】
〔ポリエステル樹脂2の合成〕
触媒として、チタンテトラブトキサイドの投入量を、前記モノマー成分100質量部に対して0.50質量部に変更した以外は、ポリエステル樹脂1の合成と同様にして、ポリエステル樹脂2を作製した。得られた樹脂を、示差走査熱量計(DSC)を用いて樹脂のガラス転移温度を測定したところ、48℃であった。
【0151】
〔ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製〕
次に、コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き反応槽に、ポリエステル樹脂1を200質量部と、メチルエチルケトン100質量部と、イソプロピルアルコール70質量部とを入れ、水循環式恒温槽にて70℃に維持しながら、100rpmで撹拌混合しつつ樹脂を溶解させた。その後撹拌回転数を150rpmにし、水循環式恒温槽を66℃に設定し、10%アンモニア水(試薬)10部を10分間かけて投入した後、66℃に保温されたイオン交換水を5質量部/分の速度で、合計600質量部滴下し転相させて、乳化液を得た。得られた乳化液600部とイオン交換水525質量部とをナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーターにセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が825部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。イオン交換水を加えて、固形分濃度が20質量%のポリエステル樹脂粒子分散液1を得た。
【0152】
〔ポリエステル樹脂粒子分散液2の調製〕
ポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂2に変更した以外はポリエステル樹脂粒子分散液1と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液2を作製した。
【0153】
〔離型剤粒子分散液1の調製〕
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、FNP92、吸熱ピークオンセット81℃):45部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):5部
・イオン交換水:200部
以上を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液1(固形分濃度:20%)を調製した。離型剤粒子の体積平均粒径は0.19μmであった。
【0154】
〔離型剤粒子分散液2の調製〕
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、HNP-9、吸熱ピークオンセット:67℃):45部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):5部
・イオン交換水:200部
以上を混合して90℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液2(固形分濃度:20%)を調製した。離型剤粒子の体積平均粒径は0.23μmであった。
【0155】
〔着色剤粒子分散液の調製〕
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)):98部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR):2部
・イオン交換水:400部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径0.16μm、固形分量20%の着色剤粒子分散液を得た。
【0156】
〔キャリアの作製〕
フェライト粒子(パウダーテック(株)製、平均粒径50μm)100部とポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン(株)製、重量平均分子量95,000、重量平均分子量10,000以下の成分比率は5%)1.5部とを、トルエン500部とともに加圧式ニーダーに入れ、常温で15分間撹拌混合した後、減圧混合しながら70℃まで昇温してトルエンを留去し、その後冷却し、105μmの篩を用いて分級して樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
【0157】
(実施例1)
〔トナーの作製〕
-トナー粒子(1)の作製-
・ポリエステル樹脂粒子分散液1:100質量部
・着色剤粒子分散液:10質量部
・離型剤粒子分散液1:9質量部
・アニオン性界面活性剤(テイカ(株)製、TaycaPower BN2060):1質量部
・イオン交換水:200質量部
上記原料を円筒ステンレス容器に入れ、0.3M(=0.3mol/L)の硝酸水溶液3部を加えて、pHを3.0に調整した。
次いで、Ultraturrax(IKA社製)により6,000rpmでせん断力を加えながら、凝集剤として硫酸アルミニウム10%水溶液50部を滴下し、5分間撹拌した。
次いで、上記原料混合物をマントルヒーターにて45℃まで加熱し、30分保持した後、凝集粒子被覆用として、ポリエステル樹脂粒子分散液1を25部とイオン交換水を10部とを混合したものを予めpH3.0に調製した被覆用樹脂粒子分散液を調製したものを加え、10分間保持した。その後、被覆した凝集粒子(付着粒子)の成長を停止させるために、1M(=1mol/L)の水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料混合物のpHを8.0に制御した。次いで、凝集粒子を融合させるために、昇温速度1℃/minで90℃まで昇温した。90℃に到達したのち4時間保持した。その後、40℃まで冷却し、トナースラリーA1を得た。次いで、水溶液中に分散した状態のトナー粒子を濾過し、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水3Lに再分散し、15分300rpmで撹拌、洗浄した。これを更に5回繰り返した後、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行い、得られた固形物を12時間かけて真空乾燥させ、体積平均粒径6.1μmのトナー粒子1を得た。
【0158】
〔シリカ粒子(1)の作製〕
SiCl、水素ガス、酸素ガスを燃焼バーナーの混合室内で混合後に、1,000℃以上3,000℃以下の温度で燃焼させる。燃焼後のガスからシリカ粉末を取りだすことでシリカ粒子を得た。この時、水素ガスと酸素ガスのモル比を1.3:1にすることで体積平均粒径136nmのシリカ粒子(R1)を得た。
得られたシリカ粒子(R1)100部とエタノール500部とをエバポレーターに入れ、温度を40℃に維持したまま15分間撹拌した。次に、シリカ粒子100部に対して20部のヘキサメチルジシラザン(HMDS)を入れ15分間撹拌した。最後に温度を90℃に上げエタノールを減圧乾燥させた、その後、処理物を取り出して更に120℃で30分間真空乾燥を行い、ヘキサメチルジシラザンで処理された体積平均粒径136nmのシリカ粒子(1)を得た。
【0159】
次いで、続く添加剤混合装置には、三井鉱山(株)製のヘンシェルミキサーFM75J/Iを用い、混合羽根として図6にZ0(上)として示すような羽根(上羽根:第2混合羽根)と図5にB0(下)として示すような羽根(下羽根:第1混合羽根)を用いた。
トナー粒子1:100質量部に、外添剤として、シリカ粒子(1)5部、酸化チタン粒子(平均一次粒径15nm、JMT-150IB、テイカ(株)製)1.0部を添加し、前記ヘンシェルミキサーにて冷却を開始する混合装置内温度設定値、(Pm-P0)/wの値、(Pm-P0)・t/wの値が表1に記載の値となるようにして、35分間混合した。混合装置内温度Tiは初期温度25℃、最大温度55℃、最終温度(Te)46℃であった。その後、同一条件で連続して2回目以降の混合を実施したが、2回目以降と1回目の差の絶対値(|Ten-Te1|及び|Tan-Ta1|)は共に1℃以下であった。
次に、風力篩分装置(ハイボルター300、新東京機械(株)製)にて篩分しトナー1(静電荷像現像用トナー)を得た。
【0160】
次いで、トナー1中の添加剤粒子の遊離率を以下の方法で測定した。
測定対象となる0.5%界面活性剤(ノイゲンET-165、第一工業製薬(株)製)水溶液50mL中に測定対象となるトナー4gを添加し、マグネチックスターラーにて100rpmで5分間撹拌し、トナー分散液を調整した。次に、このトナー分散液を3,000rpmで2分間遠心分離機により遠心分離し、上澄み液を除去した。その後、沈殿しているトナーにイオン交換水を50mL加えて再度分散し、その分散液を吸引ろ過(桐山ロート用ろ紙No.5C 60φm/m、(有)桐山製作所製)し、ろ紙上に残ったトナーを回収し、イオン交換水を50mL加えて分散し、吸引ろ過を行って洗浄した。洗浄後、ろ紙上に残留したトナーを回収し、40℃恒温槽で12時間乾燥させた。得られたトナー3gを自動加圧成型機(BRE-32、(株)前川試験機製作所製)により、荷重10t、加圧時間60秒の条件で、直径30mm、厚さ2mmのペレットに成型して試料1とした。次に、別途、上記処理を施していないトナーを用いて、荷重10t、加圧時間60秒の条件で、直径30mm、厚さ2mmのペレットに成型し、試料2とした。更に、添加剤粒子混合前のトナー粒子も加圧成型し、試料0とした。次に、蛍光X線装置(ZSX-100e、(株)リガク製)により添加剤の構成元素の定量分析を行った。前記各試料の金属元素含有量を測定した。金属元素含有量は、あらかじめ作成した検量線によって各割合を算出した。これらの値を用いて遊離率を下記式(A)によって算出した。
式(A) 遊離率={(C2-C1)/(C1-C0)×100}
式(A)中、C0は、試料0の金属元素含有量、C1は、試料1の金属元素含有量、C2は、試料2の金属元素含有量を表す。
【0161】
トナー1中の添加剤粒子の強付着率の測定は、以下の方法で測定した。
測定対象となる0.5%界面活性剤(ノイゲンET-165、第一工業製薬(株)製)水溶液50mL中に測定対象となるトナー4gを添加し、マグネチックスターラーにて100rpmで5分間撹拌し、トナー分散液を調整した。次に、このトナー分散液の超音波脱離処理を行った。トナー分散液に対して、超音波ホモジナイザー(VCX750、Sonic and Material社製)を用いて超音波を付与(底面からの超音波振動部高さ1.0cm、強度40W、10分間)した。次に、このトナー分散液を3,000rpmで2分間遠心分離機により遠心分離し、上澄み液を除去した。その後、沈殿しているトナーにイオン交換水を50mL加えて再度分散し、その分散液を吸引ろ過(桐山ロート用ろ紙No.5C 60φm/m、(有)桐山製作所製)し、ろ紙上に残ったトナーを回収し、イオン交換水を50mL加えて分散し、吸引ろ過を行って洗浄した。洗浄後、ろ紙上に残留したトナーを回収し、40℃恒温槽で12時間乾燥させた。得られたトナー3gを自動加圧成型機(BRE-32、(株)前川試験機製作所製)により、荷重10t、加圧時間60秒の条件で、直径30mm、厚さ2mmのペレットに成型して試料1とした。次に、別途、上記処理を施していないトナーを用いて、荷重10t、加圧時間60秒の条件で、直径30mm、厚さ2mmのペレットに成型し、試料2とした。更に、添加剤粒子混合前のトナー粒子も加圧成型し、試料0とした。次に、蛍光X線装置(ZSX-100e、(株)リガク製)により添加剤の構成元素の定量分析を行った。前記各試料の金属元素含有量を測定した。金属元素含有量は、あらかじめ作成した検量線によって各割合を算出した。これらの値を用いて強付着率を下記式(B)によって算出した。
式(B) 強付着率={(C1-C0)/(C2-C0)×100}
(ここで、C0は、試料0の金属元素含有量、C1は、試料1の金属元素含有量、C2は、試料2の金属元素含有量を表す。)
【0162】
〔トナーとキャリアとの混合〕
得られたトナー1とキャリアとを、トナー:キャリア=5:95(質量比)の割合でVブレンダーに入れ、20分間撹拌し、現像剤1(静電荷像現像剤)を得た。
【0163】
(実施例2乃至12、及び、比較例1乃至3)
混合工程における各種条件を表1又は表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤をそれぞれ作製した。
【0164】
(実施例13)
〔シリカ粒子(2)の作製〕
水素ガスと酸素ガスのモル比を1.6:1にすること以外は、シリカ粒子(1)と同様の条件及び方法で、体積平均粒径82nmのシリカ粒子(2)を得た。
【0165】
混合工程における外添剤として、シリカ粒子(1)をシリカ粒子(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤をそれぞれ作製した。各種条件は表2に記載。
【0166】
(実施例14)
混合工程における外添剤として、酸化チタン粒子(平均一次粒径15nm、JMT-150IB、テイカ(株)製)を酸化チタン粒子(平均一次粒径40nm、STT-30EHJ、チタン工業(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤をそれぞれ作製した。
【0167】
(実施例15)
-トナー粒子(2)の作製-
ポリエステル樹脂粒子分散液1をポリエステル樹脂粒子分散液2に変更した以外は、トナー粒子(1)と同様にして、トナー粒子(2)を作製した。体積平均粒径は6.2μmであった。
【0168】
混合工程において、トナー粒子1をトナー粒子2に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤をそれぞれ作製した。
【0169】
(実施例16)
混合工程における添加剤混合装置として、三井鉱山(株)製のヘンシェルミキサーFM75J/Iをレーディゲミキサー((株)マツボー製、FKM50D)に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤をそれぞれ作製した。
【0170】
〔評価〕
得られた現像剤を用いて、転写性、及び、画像ムラ抑制性の評価を実施した。
【0171】
<転写性>
富士ゼロックス(株)製700Digital Color Press改造機に現像剤を装填した。感光体上にトナー載り量が5g/mになるように現像電位を調整し、低温低湿(温度10℃/相対湿度20%)下、画像面積割合5%の画像をA4サイズの普通紙に1,000枚連続で出力した。次いで1枚出力する際に、感光体上のトナー像が中間転写体(中間転写ベルト)へ移行した直後に(つまり、感光体のクリーニング前に)評価機を止めた。転写されずに感光体上に残留しているトナーをメンディングテープで取り、その重量を測定した。現像時のトナー載り量と、トナー残留量とから、下記式(A)により、初期の転写効率を求め、下記のとおり分類した。A及びBが許容範囲である。
式(A):転写効率=(現像時のトナー載り量-トナー残留量)÷現像時のトナー載り量×100
-評価基準-
A:転写効率が98%以上
B:転写効率が95%以上、98%未満
C:転写効率が90%以上、95%未満
D:転写効率が90%未満
【0172】
<画像ムラ抑制性>
富士ゼロックス(株)製画像形成装置「DocuCentre500CP」の現像器に現像剤を充填した。この画像形成装置を用いて、10℃、15%RH環境下で、部分的に非画像部が含まれる画像濃度90%のベタ画像をA4紙に連続で1,000枚出力した。その後、画像濃度50%のハーフトーン画像をA4紙に出力し、出力したハーフトーン画像について、部分的に非画像部が含まれるベタ画像の非画像部に相当する部分、ベタ画像部に相当する部分について、X-rite濃度計(X-rite404、X-rite社製)によって画像濃度をそれぞれ12点測定しその平均値を取り、非画像部に相当する部分とベタ画像部に相当する部分の画像濃度の差を算出し、画像ムラの評価を行った。評価基準は以下の通りである。A及びBが許容範囲である。
-評価基準-
A:画像濃度差が0.2以下
B:画像濃度差が0.2より大きく0.3以下
C:画像濃度差が0.3より大きく0.4以下
D:画像濃度差が0.4より大きい
【0173】
評価結果をまとめて、表1及び表2に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
【表2】
【0176】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、転写性、及び、画像ムラ抑制性に優れる静電荷像現像用トナーが得られることがわかる。
【符号の説明】
【0177】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
118 露光のための開口部
117 筐体
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
P 記録紙(記録媒体の一例)
400 混合装置
401 冷却水入口
402 冷却水出口
403 通気フィルタ
404 ディフレクタ
405 モーター
406 上羽根(撹拌羽根)
407 下羽根(撹拌羽根)
408 排出弁
409 排出口
410 温度センサ
411 撹拌槽
500 添加剤投入装置
502 計量ホッパー
504 搬送機構
506a,506b,506c 切出し機
508a,508b,508c 切出し手段
510a,510b,510c 撹拌手段
512a,512b,512c 計量排出手段
600 混合装置
602 撹拌槽
604 投入口
606 排出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12