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特開2022-179083角度検出モジュールおよび角度検出モジュールの補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179083
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】角度検出モジュールおよび角度検出モジュールの補正方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20221125BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A61B5/11 230
G01B7/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086328
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】鴻野 勝正
【テーマコード(参考)】
2F063
4C038
【Fターム(参考)】
2F063AA33
2F063BA29
2F063BB08
2F063DA02
2F063DA05
2F063HA01
4C038VA04
4C038VA14
4C038VB14
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】個々の被訓練者や計測対象部位に応じて適切に校正でき、感度が変化しても対応可能な角度検出モジュールを提供する。
【解決手段】人または動物の計測対象部位に装着する装具に用いられ、前記計測対象部位の屈曲または伸展に伴う姿勢変化を角度変化として検出する角度検出モジュールであって、前記装具に搭載され、前記計測対象部位の姿勢変化に対応する動的な角度変化を検出可能な第1角度センサと、前記装具に搭載され、前記計測対象部位の静的な姿勢に対応する角度が検出可能な第2角度センサと、前記第1角度センサの環境による感度変化を前記第2角度センサの出力に基づいて補正する補正回路と、を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人または動物の計測対象部位に装着する装具に用いられ、前記計測対象部位の屈曲または伸展に伴う姿勢変化を角度変化として検出する角度検出モジュールであって、
前記装具に搭載され、前記計測対象部位の姿勢変化に対応する動的な角度変化を検出可能な第1角度センサと、
前記装具に搭載され、前記計測対象部位の静的な姿勢に対応する角度が検出可能な第2角度センサと、
前記第1角度センサの環境による感度変化を前記第2角度センサの出力に基づいて補正する補正回路と、
を備えている角度検出モジュール。
【請求項2】
前記補正回路は、
前記計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに前記第1角度センサの出力が第1基準角度を示し、前記計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに前記第1角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する前記第1角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第1の角度校正回路と、
前記計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに前記第2角度センサの出力が第1基準角度を示し、前記計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに前記第2角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する前記第2角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第2の角度校正回路と、
前記第2の角度校正回路の出力に基づいて前記第1の角度校正回路の出力を補正する補正値を算出する補正値算出回路と、
を備えている請求項1記載の角度検出モジュール。
【請求項3】
前記第1角度センサは、基材と、前記基材の両端部間に配されセンサ領域を構成する可撓性のセンサ本体と、を備え、前記センサ本体は、表裏其々に配された一対の外側電極層と、前記外側電極層の間に配された内側電極層と、前記外側電極層と前記内側電極層との間の其々に配された一対の外側絶縁層と、を備えて構成されている積層型曲げセンサで構成され、
前記第2角度センサは、前記基材の両端部の延在方向で前記センサ領域を挟んで配置される一対の慣性センサで構成されている請求項1または2記載の角度検出モジュール。
【請求項4】
請求項1記載の角度検出モジュールの補正回路で実行される角度検出モジュールの補正方法であって、
前記計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに前記第1角度センサの出力が第1基準角度を示し、前記計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに前記第1角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する前記第1角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第1の角度校正処理と、
前記計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに前記第2角度センサの出力が第1基準角度を示し、前記計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに前記第2角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する前記第2角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第2の角度校正処理と、
前記第2の角度校正処理の出力に基づいて前記第1の角度校正処理の出力を補正する補正値を算出する補正値算出処理と、
前記補正値算出処理で算出した補正値で前記第1の角度校正処理の出力を補正する補正処理と、
を実行する角度検出モジュールの補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度検出モジュールおよび角度検出モジュールの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身に纏う衣服などの装具に機械電気変換装置を取り付けて、着用者の身体の姿勢の変化などの動きを計測することを目的とするセンサ付き衣服が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、編物又は織物の伸縮を静電容量の変化として検出することにより、検知システムとしての消費電力を抑制する引張変形検知布が提案されている。
【0004】
当該引張変形検知布は、複数の導電糸を含んで構成された編物又は織物を一方向に伸縮自在にすると共に、その伸縮に伴って前記導電糸の隣接するもの同士の間隔が変化し、その隣接する導電糸同士間は絶縁状態が維持されるように構成され、隣接する各導電糸の端部が静電容量を測定するための一対の電極とされていることを特徴とする。
【0005】
また、特許文献2には、伸縮状態により電気抵抗値が変化する特性を備えた導電糸を用いた導電性伸縮生地なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-177565号公報
【特許文献2】特開2018-202058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願出願人は、表裏其々に配された一対の可撓性の外側電極層と、外側電極層の間に配された可撓性の内側電極層と、外側電極層と内側電極層との間の其々に配された一対の可撓性の外側絶縁層と、を備え、内側電極層は外側絶縁層の端縁より内側に延在するように配置された積層型曲げセンサを提案している(特願2019-206847号)。
【0008】
上述した積層型曲げセンサを含むモジュールを備えた装具を人または動物の計測対象部位に装着することにより、計測対象部位の姿勢の変化や変化の程度を計測することができる。例えば、痛めた関節の機能回復訓練を行なう被訓練者の膝関節に上述した装具を装着することで、膝関節の屈伸角度や屈伸回数などの機能回復訓練の程度を数値化して管理することができる。
【0009】
しかし、積層型曲げセンサのサイズや出力特性などの具体的な仕様は計測対象部位に応じて異なり、計測対象部位が同じであっても被訓練者の状態によって検出感度などの出力特性を異ならせることが好ましい場合もあり、積層型曲げセンサの出力特性を予め想定される標準的な姿勢変化に基づいて、一律に校正すると個々の被訓練者の機能回復の程度を適切に把握できなくなる虞があった。
【0010】
また、初期に積層型曲げセンサの出力特性を校正しても、その後の使用に伴なう温度や湿度などの環境によって積層型曲げセンサの感度が変化すると、計測対象部位の姿勢に応じた適切な出力が得られなくなる虞もある。
【0011】
本発明の目的は、上述の事情に鑑み、個々の被訓練者や計測対象部位に応じて適切に校正でき、感度が変化しても対応可能な角度検出モジュールおよび角度検出モジュールの補正方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明による角度検出モジュールの第一の特徴構成は、人または動物の計測対象部位に装着する装具に用いられ、前記計測対象部位の屈曲または伸展に伴う姿勢変化を角度変化として検出する角度検出モジュールであって、前記装具に搭載され、前記計測対象部位の姿勢変化に対応する動的な角度変化を検出可能な第1角度センサと、前記装具に搭載され、前記計測対象部位の静的な姿勢に対応する角度が検出可能な第2角度センサと、前記第1角度センサの環境による感度変化を前記第2角度センサの出力に基づいて補正する補正回路と、を備えている点にある。
【0013】
計測対象部位の屈曲または伸展に伴う姿勢変化を角度変化として検出する角度検出モジュールは、第1角度センサと第2角度センサと補正回路を備えて構成される。第1角度センサにより計測対象部位の姿勢変化に対応する動的な角度変化が検出され、第2角度センサにより計測対象部位の静的な姿勢に対応する角度が検出される。例えば、第1角度センサに環境特性による大きな感度変化が生じる場合でも、感度変化が小さな第2角度センサの静的な姿勢に対応する出力に基づいて第1角度センサの出力特性が補正回路により補正される結果、第1角度センサの感度変化の影響を抑制することができる。
【0014】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記補正回路は、前記計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに前記第1角度センサの出力が第1基準角度を示し、前記計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに前記第1角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する前記第1角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第1の角度校正回路と、前記計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに前記第2角度センサの出力が第1基準角度を示し、前記計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに前記第2角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する前記第2角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第2の角度校正回路と、前記第2の角度校正回路の出力に基づいて前記第1の角度校正回路の出力を補正する補正値を算出する補正値算出回路と、を備えている点にある。
【0015】
第1の角度校正回路によって第1角度センサの値が校正され、第2の角度校正回路によって第2角度センサの値が校正される。初期の校正段階では第1角度センサおよび第2角度センサの校正値は一致する。その後、環境の影響を受けて第1角度センサおよび第2角度センサの出力に相違が生じると、第1角度センサに感度変化が生じたと判断し、補正値算出回路によって第2の角度校正回路の出力を基準に第1の角度校正回路の出力が補正される。
【0016】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記第1角度センサは、基材と、前記基材の両端部間に配されセンサ領域を構成する可撓性のセンサ本体と、を備え、前記センサ本体は、表裏其々に配された一対の外側電極層と、前記外側電極層の間に配された内側電極層と、前記外側電極層と前記内側電極層との間の其々に配された一対の外側絶縁層と、を備えて構成されている積層型曲げセンサで構成され、前記第2角度センサは、前記基材の両端部の延在方向で前記センサ領域を挟んで配置される一対の慣性センサで構成されている点にある。
【0017】
第1角度センサとして積層型曲げセンサを用いることで、計測対象部位の動的な角度変化が良好に検出できる。また、第2角度センサとして基材の両端部の延在方向で前記センサ領域を挟んで配置される一対の慣性センサを用いることで、計測対象部位の静的な姿勢に対応する角度が良好に検出できる。
【0018】
積層型曲げセンサは、内側電極層と一対の外側電極層との間の其々に外側絶縁層が配されることによって一対のコンデンサが厚み方向に重畳配置された可撓性を示すセンサ本体が構成される。当該センサ本体が湾曲変形すると、一方の外側電極層の表面が凸状に湾曲し、他方の外側電極層の表面が凹状に湾曲する。内側電極層を基準にすると、凸状に湾曲する一方の外側電極層側に配された外側絶縁層は湾曲頂部から周辺に向けて引っ張り力が作用して相対的に層厚が薄くなるように変形し、凹状に湾曲する他方の外側電極層側に配された外側絶縁層は周辺から湾曲底部に向けて圧縮力が作用して相対的に層厚が厚くなるように変形する。その結果、両端縁を基準に全体として一方の外側電極層側に位置するコンデンサの容量と他方の外側電極層側に位置するコンデンサの容量の変化が生じ、この容量の変化に基づいて曲げの角度が検出できる。
【0019】
本発明による角度検出モジュールの補正方法の第一の特徴構成は、上述した第一の特徴構成を備えた角度検出モジュールの補正回路で実行される角度検出モジュールの補正方法であって、前記計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに前記第1角度センサの出力が第1基準角度を示し、前記計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに前記第1角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する前記第1角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第1の角度校正処理と、前記計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに前記第2角度センサの出力が第1基準角度を示し、前記計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに前記第2角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する前記第2角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第2の角度校正処理と、前記第2の角度校正処理の出力に基づいて前記第1の角度校正処理の出力を補正する補正値を算出する補正値算出処理と、前記補正値算出処理で算出した補正値で前記第1の角度校正処理の出力を補正する補正処理と、を実行する点にある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被訓練者及び計測対象部位に応じて適切に校正でき、感度が変化しても対応可能な角度検出モジュールおよび角度検出モジュールの補正方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は角度検出モジュールを備えた装具の側面図、(b)は同平面図、(c)は膝関節に装着された装具の説明図である。
図2】(a)は第1角度センサとなる積層型曲げセンサの側面視の説明図、(a)は他の態様を示す積層型曲げセンサの側面視の説明図、(c)は積層型曲げセンサを構成するセンサ本体と基材の長さ関係の説明図である。
図3】(a),(b)は積層型曲げセンサの原理説明図、(c)は積層型曲げセンサの信号処理回路の説明図である。
図4】角度変換回路および校正処理回路の説明図である。
図5】(a)は装具が装着された膝関節が伸展した第1姿勢の説明図、(b)は装具が装着された膝関節が90°に屈曲した第2姿勢の説明図である。
図6】(a)は第1角度センサに対する校正処理の説明図、b)は第2角度センサに対する校正処理の説明図である。
図7】校正処理の手順を示すフローチャートである。
図8】補正処理の手順を示すフローチャートである。
図9】(a)は第1角度センサとなる積層型曲げセンサの別の実施形態を示す側面視の説明図、(b)はさらに別の実施形態を示す側面視の説明図、(c)は(b)の具体的な構造を示す説明図である。
図10】(a)は膝関節に装着された装具の別実施形態を示す説明図、(b)は装具が装着された膝関節が屈曲した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による角度検出モジュールおよび角度検出モジュールの補正方法を図面に基づいて説明する。
[本発明が適用される装具の構成]
図1(a),(b),(c)には、本発明が適用される装具100の一例が例示されている。当該装具100は、人または動物の計測対象部位に装着して、計測対象部位の屈曲または伸展に伴う姿勢変化を検出するための装具100である。
【0023】
この例では、人の膝関節の機能回復を目的とする被訓練者に装着される装具が示され、第1の骨部(本実施形態では大腿骨)と第2の骨部(本実施形態では脛骨)とを屈曲および伸展可能に連結する蝶番関節(本実施形態では膝関節)の動作をモニタする装具100である。
【0024】
当該装具100には、計測対象部位の屈曲または伸展に伴う姿勢変化を角度変化として検出する角度検出モジュールMが搭載されている。
【0025】
装具100は、第1の骨部に対応する膝関節上部に巻き付ける平面視弧状の上部支持部20と、第2の骨部に対応する膝関節下部に巻き付ける平面視弧状の下部支持部30と、膝関節を挟んで上部支持部20および下部支持部30を連結する一対の連結具40を備えている。連結具40は屈曲変形自在な弾性棒状体で構成され、非装着状態で上部支持部20と下部支持部30を所定の間隔に維持するとともに、装着状態では膝関節の屈曲または伸展に応じて屈曲変形または伸展変形する。
【0026】
弧状に形成された上部支持部20および下部支持部30の其々の解放端部の一端に固定用のベルト25,35が設けられ、解放端部の他端およびベルト25,35に一対の面ファスナ25A,25B,35A,35Bが設けられている。膝関節上部に上部支持部20を巻き付けてベルト25で固定するとともに、膝関節下部に下部支持部30を巻き付けてベルト35で固定するように構成されている。
【0027】
角度検出モジュールMは、計測対象部位の姿勢変化に対応する動的な角度変化を検出可能な第1角度センサ10と、計測対象部位の静的な姿勢に対応する角度が検出可能な第2角度センサ50S,60Sと、第1角度センサ10の環境による感度変化を第2角度センサ50S,60Sの出力に基づいて補正する補正回路70とを備えている。環境による感度変化とは温度や湿度のみならず、累積使用回数や累積使用時間などによる感度変化をいう。第1角度センサ10の感度特性は環境変動によりある程度の影響を受け、第2角度センサ50S,60Sの感度特性は環境変動により殆ど影響を受けない。
【0028】
角度検出モジュールMは、装具100の正面となる膝頭側に設けられている。第1角度センサ10の上端側が上部支持部20に固定され下端側が下部支持部30に固定されている。第2角度センサ50Sは上部支持部20に固定されたケーシング50に収容され、第2角度センサ60Sは下部支持部30に固定されたケーシング60に収容されている。
【0029】
第1角度センサ10として、膝関節の屈曲または伸展状態を動的に検出する積層型曲げセンサが使用され、第2角度センサ50S,60Sとして、静的な状態における姿勢を検出する慣性センサ(以下、符号50S,60Sを付す。)が使用されている。慣性センサとして、本実施形態では3軸の加速度センサが用いられているが、ジャイロセンサを用いることも可能である。
【0030】
膝関節の動的な屈曲または伸展動作に追従して連続的に曲げ変形する第1角度センサ10を用いることにより膝関節の屈曲角度または伸展角度が動的に求まる。また、静止またはほぼ静止した状態で第2角度センサ50S,60Sにより其々検出される水平方向に対する傾斜角度の差分値で膝関節の屈曲角度または伸展角度が求まる。第2角度センサ50S,60Sは姿勢が動的に変化する場合には、出力が定まらず正確な値が検出できないという特性を備えている。
【0031】
ケーシング50には一方の第2角度センサ50Sに対する角度検出回路50Cが収容され、ケーシング60には他方の第2角度センサ60Sに対する角度検出回路60Cが収容されている(図4参照)。角度検出回路50Cは、第2角度センサ50Sからの出力に基づいて水平方向に対する傾斜角度を算出し、角度検出回路60Cは、第2角度センサ60Sからの出力に基づいて水平方向に対する傾斜角度を算出する。其々の角度の差分値により膝関節の屈曲角度または伸展角度が求まる。
【0032】
さらにケーシング50には第1角度センサ10の信号処理回路(角度検出回路)10Cおよび補正回路70が収容されている。第2角度センサ60Sの角度検出回路60Cと第2角度センサ50Sの角度検出回路50Cは、I2C(Inter-Integrated Circuit)のような低速のシリアルバスで接続されている。また、ケーシング50には補正回路70と携帯型の端末機器74との間で通信可能なBLEインタフェース回路が収容されている(図4参照。)。
【0033】
[積層型曲げセンサの構成]
図2(a)に示すように、積層型曲げセンサ10は、伸縮性を有する基材8と、基材8に両端縁1A,1Bが重畳するように固定され中間部1Mが基材8から遊離するように取り付けられた可撓性のセンサ本体1と、を備えている。
【0034】
つまり、第1角度センサ10は、基材8と、基材8の両端部間に配されセンサ領域を構成する可撓性のセンサ本体1と、を備えて構成された積層型曲げセンサで構成されている。そして、第2角度センサは、基材8の両端部の延在方向でセンサ領域を挟んで配置されている。
【0035】
図2(b)に示すように、基材8から遊離した中間部1Mの一部が位置規制部材1Fにより基材8に近接または接触するように規制されていてもよい。センサ本体1の中間部1Mの基材8からの遊離状態が小さくなるように制限できるので、積層型曲げセンサの取り扱いが容易になる。位置規制部材1Fとして縫着糸、接着剤、バックルなどを用いることができる。
【0036】
図2(c)に示すように、センサ本体1の基材8の伸縮方向に沿った自由長さをLS、基材8の最大伸長状態における伸縮方向長さをLBmax、とするときに、LBmax≦LSに設定されている。なお、基材8の収縮状態における伸縮方向長さをLBとすると、LB<LBmax≦LSとなる。基材8の収縮状態とは基材8が伸長することなく最小長さに収縮した状態をいう。
【0037】
基材8が最大伸長状態となってもセンサ本体1の伸長が回避されるため、センサ本体1が伸長および収縮を繰り返すことによる検出精度の劣化や寿命の短縮化が抑制される。なおセンサ本体1に撓みが生じたときに外側絶縁層3A,3Bの厚みが変動するような特性を備えていればよく、センサ本体1は十分な伸特性を備えていてもよいし、僅かな伸縮特性を備えていてもよいし、非伸縮性であってもよい。
【0038】
図3(a)に示すように、センサ本体1は、表裏其々に配された一対の外側電極層2A,2Bと、外側電極層2A,2Bの間に配された内側電極層4と、外側電極層2A,2Bと内側電極層4との間の其々に配された一対の外側絶縁層3A,3Bと、を備えて構成されている。また、基材8として織ゴムなどの伸縮性布帛が用いられる。
【0039】
内側電極層4と一対の外側電極層2A,2Bとの間の其々に外側絶縁層3A,3Bが配されることによって一対のコンデンサが厚み方向に重畳配置された可撓性を示すセンサ本体1が構成される。
【0040】
図3(b)に示すように、当該センサ本体1が湾曲変形すると、一方の外側電極層2Aの表面が凸状に湾曲し、他方の外側電極層2Bの表面が凹状に湾曲する。内側電極層4を基準にすると、凸状に湾曲する一方の外側電極層側2Aに配された外側絶縁層3Aは湾曲頂部から周辺に向けて引っ張り力が作用して相対的に層厚が薄くなるように変形し、凹状に湾曲する他方の外側電極層側2Bに配された外側絶縁層3Bは周辺から湾曲底部に向けて圧縮力が作用して相対的に層厚が厚くなるように変形する。その結果、両端縁を基準に全体として一方の外側電極層側2Aに位置するコンデンサの容量と他方の外側電極層側2Bに位置するコンデンサの容量の変化が生じ、この容量の変化に基づいて曲げの角度が検出できる。
【0041】
以上説明したように、第1角度センサ10は、基材8と、基材8の両端部間に配されセンサ領域を構成する可撓性のセンサ本体1と、を備え、センサ本体1は、表裏其々に配された一対の外側電極層2A,2Bと、外側電極層2A,2Bの間に配された内側電極層4と、外側電極層2A,2Bと内側電極層4との間の其々に配された一対の外側絶縁層3A,3Bと、を備えて構成され、センサ本体1は、基材8に両端縁1A,1Bが重畳固定され中間部1Mが基材8から遊離するように取り付けられ、基材8の伸長の程度にかかわらずセンサ本体1に基材8の伸長方向への張力が作用しないように構成されている積層型曲げセンサで構成されている。
【0042】
具体的には、厚み方向に重畳配置された一対のコンデンサの湾曲変形時に変化する容量(C1,C2)の差(ΔC=C1-C2)に基づいて曲げ角度を算出することができる。容量の差ΔCを変数とする所定の関数に基づいて曲げ角度を算出し、或いは容量の差ΔCに対応して予め設定した角度テーブルに基づいて曲げ角度を求めることができる。
【0043】
所定の関数として線形関数を好適に用いることができる。容量の差以外に容量の比率C1/C2を用い、或いは(C1-C2)/(C1+C2)を用いることも可能である。この場合も、容量の比率C1/C2や(C1-C2)/(C1+C2)を変数とする所定の関数に基づいて曲げ角度を算出し、或いは容量の比率C1/C2や(C1-C2)/(C1+C2)に対応して予め設定した角度テーブルに基づいて曲げ角度を求めることができる。
【0044】
なお、電極の面積S、電極間距離d、絶縁層の誘電率εとすると、静電容量C=ε・(S/d)の関係があり、電極間の距離dが短くなると静電容量は増大し、電極間の距離dが長くなると静電容量は減少する。また、電極の面積Sが大きくなると静電容量は増大し、電極の面積Sが小さくなると静電容量は減少する。
【0045】
図3(c)には、センサ本体1に対する信号処理回路10Cの構成が示されている。信号処理回路10Cは、クロック発振回路を備え、1kHzから100kHz程度の矩形波信号を基準信号として出力する基準信号生成部11、ダイオードブリッジで構成される整流回路12A,12B、抵抗とコンデンサが信号端子とグランド端子間に並列接続されたローパスフィルタ13A,13B、オペアンプを備えた増幅器14A,14B、ADコンバータ15、論理演算回路を備えた信号処理部16の各機能ブロックを備えて構成され、角度検出回路として機能する。
【0046】
基準信号生成部11から出力された基準信号が内側電極層4に印加されると、対向電極である外側電極層2A,2Bからそれぞれの容量を反映した時定数に応じた参照信号が出力される。各外側電極層2A,2Bから出力された参照信号が整流回路12A,12Bで整流され、ローパスフィルタ13A,13Bでノイズが除去された直流成分が増幅器14A,14Bで増幅された後にADコンバータ15に入力される。信号処理部16で曲げ角度が算出される。
【0047】
外側電極層2A,2B及び内側電極層4と信号処理回路10とを電気的に接続するために、外側電極層2A,2B及び内側電極層4の其々に端子を形成し、端子と信号処理回路10とがリード線で接続される。例えば、端子として凹側ボタンに凸側ボタンを嵌め込み固定する金属製のスナップボタンが好適に用いられる。凹側ボタンに凸側ボタンの何れか一方を外側電極層2A,2B及び内側電極層4に取り付け、他方を信号処理回路10に接続されるリード線の端部に固定すればよい。
【0048】
センサ本体1を構成する外側電極層2A,2B、外側絶縁層3A,3B、内側電極層4、内側絶縁層5は、何れも可撓性材料で構成されていればよく、伸縮性を備えているとさらに好ましい。
【0049】
各電極層は各種の金属や導電性樹脂を用いて形成した薄膜、金属繊維或いは導電性繊維を用いて編成または織成した布帛などを用いることができる。
【0050】
各絶縁層はポリウレタンフィルム、PETフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)などの樹脂フィルムを好適に用いることができる。また、絶縁糸を用いて編成または織成した布帛などを用いることも可能である。内側絶縁層5として織ゴムなどの伸縮性布帛を用いることも可能である。外側絶縁層3A,3Bの層厚は数十μmから数百μmの範囲に調整するのが好ましい。
【0051】
また、外側電極層2A,2Bと外側絶縁層3A,3Bとの間、外側絶縁層3A,3Bと内側電極層4、4A,4Bとの間、及び、内側電極層4A,4Bと内側絶縁層5との間は、其々接着剤を用いた接着層を介して接合されていることが好ましい。
【0052】
[角度検出モジュールに備えた補正回路および補正回路による補正方法]
図4に示すように、補正回路70は、第1の角度校正回路71と、第2の角度校正回路72と、補正値算出回路73とを備えている。
【0053】
第1の角度校正回路71は、計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに第1角度センサ10の出力(つまり角度検出回路10Cの出力)が第1基準角度を示し、計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに第1角度センサ10の出力(つまり角度検出回路10Cの出力)が第2基準角度を示すように校正し、計測対象部位の任意の姿勢に対する第1角度センサ10の出力(つまり角度検出回路10Cの出力)を内挿法または外挿法により校正する演算回路である。
【0054】
第2の角度校正回路72は、計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに第2角度センサ50S,60Sの出力(角度検出回路50C,60Cの出力の差分値)が第1基準角度を示し、計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに第2角度センサ50S,60Sの出力(角度検出回路50C,60Cの出力の差分値)が第2基準角度を示すように校正し、前記計測対象部位の任意の姿勢に対する第2角度センサ50S,60Sの出力(角度検出回路50C,60Cの出力の差分値)を内挿法または外挿法により校正する演算回路である。
【0055】
補正値算出回路73は、第1角度センサ10に感度変化が生じた場合に、第2の角度校正回路72の出力に基づいて第1の角度校正回路71の出力を補正する補正値を算出して補正する演算回路である。
【0056】
第1の角度校正回路71によって第1角度センサ10の値が校正され、第2の角度校正回路72によって第2角度センサ50S,60Sの値が校正される。初期に校正が完了した段階で、第1角度センサ10および第2角度センサ50S,60Sの校正値は一致する。補正値算出回路73は、温度や湿度などの環境変化に伴って第1角度センサ10および第2角度センサ50S,60Sの出力に相違が生じると、第1角度センサ10に感度変化が生じたと判断して、第2の角度校正回路72の出力を基準に第1の角度校正回路71の出力を補正する。
【0057】
補正値算出回路73は、BLEインタフェース回路を介して携帯型の端末機器74であるスマートフォンやタブレット型のコンピュータと通信可能に構成されている。端末機器74には校正処理用のアプリケーションプログラムがインストールされ、校正処理の際の必要な処理について操作者に案内表示するとともに、使用状態における膝関節の屈伸状態を表示する。
【0058】
なお、端末機器74を用いることなく、補正値算出回路73に表示部や操作部を備えてスタンドアロンで構成することも可能である。逆に、第1の角度校正回路71、第2の角度校正回路72、補正値算出回路73の各機能ブロックを校正処理用のアプリケーションプログラムをインストールした端末機器74で構成することも可能である。つまり、補正回路70の具体的な態様は、角度検出モジュールMのみに備えたスタンドアロン型、角度検出モジュールM以外の端末機器74のみに備えた別体型、角度検出モジュールMと端末機器74の双方に備えたハイブリッド型の何れでもよい。
【0059】
図5(a)には膝関節を伸展して屈曲角度を0度とする第1姿勢が示され、図5(b)には膝関節を90度屈曲する第2姿勢が示されている。図6(a)には第1姿勢および第2姿勢に対する第1角度センサ10の出力Ang11,Ang12が黒丸で示され、図6(b)には第1姿勢および第2姿勢に対する第2角度センサ50S,60Sの出力である差分値Ang21,Ang22が黒丸で示されている。
【0060】
図7に基づいて、補正回路70で実行される角度校正処理を説明する。携帯型の端末機器74の一例としてスマートフォンが使用される。先ず、スマートフォンにインストールされた装具専用のアプリケーションプログラムを起動し、補正値算出回路73と通信可能な状態に設定する(SA1)。スマートフォンの初期画面に角度校正モードと角度表示モードの二つのモードが選択可能に表示され、角度校正モードを選択すると(SA2)、スマートフォンの液晶表示部やスピーカを介して、装具100の装着を促し、校正処理を開始する旨のメッセージが出力され、計測対象部位(膝関節)を第1姿勢に保ち、液晶表示部に表示された校正スイッチをタッチ入力するように案内される(SA3)。
【0061】
被装着者が計測対象部位(膝関節)を第1姿勢に姿勢調節した後に校正スイッチをタッチすると(SA4,Y)、第1の角度校正回路71は角度検出回路10Cの出力を読み込み、その値Ang11を第1基準角度0度に対応付け、第2の角度校正回路72は角度検出回路50C,60Cの出力の差分値を読み込み、その値Ang21を第1基準角度0度に対応付ける(SA5)。
【0062】
さらに、液晶表示部やスピーカを介して、計測対象部位(膝関節)を第2姿勢に保ち、液晶表示部に表示された校正スイッチをタッチするように案内される(SA6)。
【0063】
被装着者が計測対象部位(膝関節)を第2姿勢に姿勢調節した後に校正スイッチをタッチすると(SA7,Y)、第1の角度校正回路71は角度検出回路10Cの出力を読み込み、その値Ang12を第2基準角度90度に対応付け、第2の角度校正回路72は角度検出回路50C,60Cの出力の差分値を読み込み、その値Ang22を第2基準角度90度に対応付ける(SA8)。
【0064】
第1基準角度および第2基準角度に対応する角度検出回路10C,50C,60Cの出力に基づいて所定の近似関数を調整することで、その後の計測対象部位(膝関節)の任意の変位Ang1a,Ang2aに対する角度θ1,θ2が内挿法または外挿法により算出されるようになる(SA9)。
【0065】
膝を伸展させた第1姿勢で第1基準角度を0°に設定し、膝を略直角に屈曲させた第2姿勢で第2基準角度を90°に設定すると、0°~90°の範囲の屈曲角度が内挿法により算出され、90°以上の屈曲角度が外挿法により算出される。つまり、膝を伸展させた姿勢を第1姿勢が正確に0°である必要はなく、膝を略直角に屈曲させた姿勢を第2姿勢が正確に90°である必要はなく、被装着者が膝を伸展させたと認識する姿勢が第1姿勢であり、膝を略直角に屈曲させたと認識する姿勢が第2姿勢であればよい。
【0066】
近似関数は線形関数、二次関数など其々のセンサ特性に合わせて設定することができる。例えば、図6(a),(b)に示すように、計測対象部位(膝関節)の屈曲角度θが角度検出回路10C,50C,60Cの出力である変数Xの線形関数Fを用いてθ=F(x)=aX+bで表わされる場合には、第1基準角度および第2基準角度とその時の変数Xの値から定数a,bを算出することにより近似関数が得られる。
【0067】
この例では、校正処理時に第1姿勢と第2姿勢の二つの姿勢を用い、第1姿勢に対する基準角度を0°、第2姿勢に対する基準角度を90°とする例を説明しているが、基準角度の値は特に限定するものではなく適宜設定すればよい。少なくとも被装着者が実際に装着して使用する際に屈曲または伸展可能な角度範囲の上下限近傍に基準角度を設定するのが好ましく、その値を基準にして計測対象部位(膝関節)の屈曲角度の大きさを相対評価できるようになる。
【0068】
例えば、膝を伸展させた第1姿勢で関節がある程度曲がった状態の被着用者であっても、その状態を0°に設定することで初期状態が認識でき、機能回復訓練の結果、マイナスの値が表示されるようになると膝の伸展状態が改善されたと評価できるようになる。予め一律に校正処理された装具を装着する場合には、膝を伸展させた第1姿勢で0°を示すことが困難な場合があるが、このような校正方法を採用すると、個々の装着者に応じて適切に構成することができる。
【0069】
また、校正処理時に第1姿勢と第2姿勢の二つの姿勢以外に第3姿勢を設定するようにしてもよい。近似関数が二次関数(θ=F(x)=aX+bX+c)など定数が2より多くなる場合には、定数の数だけ基準角度を設定することで適切に近似関数を調整できる。
【0070】
角度校正モードによる校正処理が終了すると初期画面に戻り、角度表示モードが選択されると、第1の角度校正回路71および第1の角度校正回路71により計測対象部位(膝関節)の任意の変位に対する角度が内挿法または外挿法により算出され、感度変化がない場合には補正値算出回路73を介して第1の角度校正回路71の出力がスマートフォンの表示画面に表示される。
【0071】
なお、表示画面への表示態様は単なる角度の数値表示に限らず、機能回復訓練で伸展および屈曲が繰り返される角度変化を、横軸を時間、縦軸を角度とする二次元座標系にプロットした表示態様や、伸展および屈曲の1サイクルを同じ二次元座標系に重畳表示する態様など、複数の表示態様が選択可能に構成できる。後者の態様では訓練開始時と訓練後の状態を対比して効果を目視確認することができるようになる。
【0072】
上述したステップSA9が実行された時点で、任意の姿勢に対する第1の角度校正回路71の出力と第2の角度校正回路72の出力は一致する。その後、膝関節の屈伸運動を繰り返すに連れて、温度や湿度といった環境変化の影響を受けて、第1の角度校正回路71の出力が変動する場合に、補正値算出回路73は、第2の角度校正回路72の出力に基づいて第1の角度校正回路71の出力を補正する補正値を算出する補正値算出処理を実行し、補正値算出処理で算出した補正値で第1の角度校正回路71の出力を補正する補正処理を実行する。
【0073】
図8に示すように、補正値算出回路73は、第1の角度校正回路71の出力および第2の角度校正回路72の出力を入力すると(SB1,SB2)、静止状態であるか否かを判断して、静止状態であると判断すると(SB3,Y)、第1の角度校正回路71の出力および第2の角度校正回路72の出力の差分値が、現在の補正値に対して許容閾値内であるか否かを判定する(SB4)。
【0074】
補正値の初期値は、最初に校正処理した際の第1の角度校正回路71の出力および第2の角度校正回路72の出力の差分値、つまりゼロが設定される。その後、第1角度センサ10に環境による感度変化が生じると、第1の角度校正回路71の出力および第2の角度校正回路72の出力の差分値が次第に大きくなる。第2角度センサ50S,60Sは環境による感度変化が殆ど生じないためである。
【0075】
第1の角度校正回路71の出力および第2の角度校正回路72の出力の差分値が、現在の補正値に対する許容閾値より大きくなると(SB4,Y)、補正値を更新し(SB5)、第1の角度校正回路71の出力を更新した補正値で補正する(SB6)。
【0076】
ステップSB4で、現在の補正値に対する許容閾値以内であると(SB4,N)、現在の補正値を維持する(SB7)。
【0077】
ステップSB3で、静止状態でなく、動的な状態であると判断すると(SB3,N)、ステップSB6の処理を実行する。
【0078】
ステップSBの静止状態であるか否かの判断は、以下のように行われる。第1角度センサ10および第2角度センサ50S,60Sは、予め設定された数ミリ秒から数十ミリ秒のサンプリング間隔で角度を検出し、第1の角度校正回路71の出力および第2の角度校正回路72から同じ間隔で校正値が出力される。第1の角度校正回路71の出力および第2の角度校正回路72の出力がサンプリング間隔より長い所定時間(例えば500ミリ秒など十分に長い時間)にわたって所定の閾値を超えて大きく変動しない場合に静止状態であると判断し、所定の閾値を超える場合に動的な状態であると判断する。
【0079】
ステップSB5の補正値の更新について説明する。環境変化により第1角度センサ10の感度が変化すると、図6(a)に実線で示す近似直線が、図中二点鎖線で示すように上方にシフトすると、第1の角度校正回路71の出力がθ1であるべきところ、θ1uと大きな値が出力され、下方にシフトすると、第1の角度校正回路71の出力がθ1であるべきところ、θ1dと小さな値になる。
【0080】
このとき、第2角度センサ50,60の感度は環境による変動がなく、第2の角度校正回路72の出力はθ2に維持される。補正値算出回路73は、第1の角度校正回路71の出力と第2の角度校正回路72の出力の差分値Δθが所定の許容値以上になると差分値Δθを補正値として設定し、第1の角度校正回路71の出力を差分値Δθだけ補正する。その後、環境変動によって差分値Δθを基準に第1の角度校正回路71の出力と第2の角度校正回路72の出力の差分値が所定の許容値以上になると、その時の差分値を新たな補正値に設定する。
【0081】
校正処理が完了した時点で、膝関節の任意の角度に対してθ1=θ2の関係となっているので、補正値の初期値はゼロに設定することになる。
【0082】
つまり、角度検出モジュールの補正方法は、計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに第1角度センサの出力が第1基準角度を示し、計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに第1角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、計測対象部位の任意の姿勢に対する第1角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第1の角度校正処理と、計測対象部位を第1姿勢に姿勢調節したときに第2角度センサの出力が第1基準角度を示し、計測対象部位を第2姿勢に姿勢調節したときに第2角度センサの出力が第2基準角度を示すように校正し、計測対象部位の任意の姿勢に対する第2角度センサの出力を内挿法または外挿法により校正する第2の角度校正処理と、第2の角度校正処理の出力に基づいて第1の角度校正処理の出力を補正する補正値を算出する補正値算出処理と、補正値算出処理で算出した補正値で第1の角度校正処理の出力を補正する補正処理と、を実行するように構成されている。
【0083】
上述した実施形態では、第1角度センサとして、伸縮性を有し、収縮状態における伸縮方向長さをLBとする基材と、基材の伸縮方向に沿った自由長さをLSとするとき、LB<LSの関係を有する幅のある可撓性のセンサ本体であって、基材に両端縁が重畳固定され中間部が基材から遊離するように取り付けられ、基材の伸長の程度にかかわらずセンサ本体に基材の伸長方向への張力が作用しないように構成された例を説明したが、基材の伸縮性は必須ではなく、非伸縮性の基材に可撓性のセンサ本体を備えていればよい。
【0084】
つまり、図9(a)に示すように、第1角度センサ10は、基材8と、基材8の両端部間に配されセンサ領域を構成する可撓性のセンサ本体1と、を備えていればよい。センサ本体1は、上述と同様に、表裏其々に配された一対の外側電極層と、外側電極層の間に配された内側電極層と、外側電極層と内側電極層との間の其々に配された一対の外側絶縁層と、を備えていればよい。
【0085】
また、図9(b)に示すように、第1角度センサ10は、基材8の表裏両面に其々センサ本体1が重畳配置された構成であってもよい。
【0086】
図9(c)には、図9(b)に示した第1角度センサ10の具体的な構造が示されている。当該センサ本体1は、基材8を挟んで一対の内側電極層4A,4Bが配置され、一対の外側電極層2A,2Bと内側電極層4A,4Bとの間に絶縁層3A,3Bが設けられている。
【0087】
図9(a)から(c)に示すような第1角度センサ10を用いて、基材8及びセンサ本体1の幅を狭く構成することで、膝関節を挟んで脚の側面に配置するように構成することができる。
図10(a),(b)に示すように、上部支持部20と下部支持部30との間に固定具を介して樹脂製のボーンでなる連結具40を固定し、連結具40に沿うように第1角度センサ10を配置すればよい。なお、膝関節の屈曲によって、ともに撓む連結具40と第1角度センサ10の機械的な干渉を回避するために、第1角度センサ10の長さを連結具40より若干長く構成している。
【0088】
上述した実施形態では装具が装着される計測対象部位が人の膝関節である場合を説明したが、本発明の装具は他の関節や、背中などの屈曲/伸展するような部位にも使用でき、動物の計測対象部位に装着することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明により、機能回復訓練用の補助具として利用される装具を、計測対象部位に応じて適切に校正することができ、効果的に訓練できる角度校正方法および角度校正装置として活用される。
【符号の説明】
【0090】
100:装具
20:上部支持部
30:下部支持部
40:連結具
M:角度検出モジュール
10:第1角度センサ
10C:角度検出回路
50S,60S:第2角度センサ
50C,60C:角度検出回路
70:補正回路
71:第1の角度校正回路
72:第2の角度校正回路
73:補正値算出回路
74:携帯型の端末機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10