IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ハブユニット軸受 図1
  • 特開-ハブユニット軸受 図2
  • 特開-ハブユニット軸受 図3
  • 特開-ハブユニット軸受 図4
  • 特開-ハブユニット軸受 図5
  • 特開-ハブユニット軸受 図6
  • 特開-ハブユニット軸受 図7
  • 特開-ハブユニット軸受 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179086
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
   B60B 35/14 20060101AFI20221125BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20221125BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20221125BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20221125BHJP
   F16J 15/3264 20160101ALI20221125BHJP
【FI】
B60B35/14 V
F16C19/18
F16C33/58
F16C33/78 Z
F16J15/3264
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086332
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彩水
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
【テーマコード(参考)】
3J043
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J043AA17
3J043BA02
3J043BA06
3J043CA02
3J043DA09
3J216AA02
3J216AA14
3J216AB03
3J216BA21
3J216BA30
3J216CA02
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB07
3J216CB18
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC14
3J216CC15
3J216CC33
3J216CC41
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA73
3J701BA53
3J701BA56
3J701FA15
3J701FA51
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】軽量化及び剛性向上を両立できるハブユニット軸受を提供する。
【解決手段】フランジ50は、内方部材20に接続して径方向外側に延び、且つ、ハブボルトが挿通されるボルト孔61が形成された複数の厚肉部60と、厚肉部60の軸方向内側面の周方向両縁及び径方向外側縁から、軸方向内側に延びるリブ70と、を有し、リブ70の径方向内側端部は、内方部材20に接続する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の転走面が形成された外方部材と、
外周面に複列の転走面が形成された内方部材と、
前記外方部材の前記複列の転走面と、前記内方部材の前記複列の転送面と、の間に配置される複数の転動体と、
を備えるハブユニット軸受において、
前記外方部材又は前記内方部材には、径方向外側へ延びる車輪取り付け用のフランジが設けられ、
前記フランジは、
前記外方部材又は前記内方部材に接続して径方向外側に延び、且つ、ハブボルトが挿通されるボルト孔が形成された複数の厚肉部と、
前記複数の厚肉部それぞれの軸方向一方側面の周方向両縁及び径方向外側縁から、軸方向一方側に連続して延びるリブと、
を有し、
前記リブの径方向内側端部は、前記外方部材又は前記内方部材に接続する
ハブユニット軸受。
【請求項2】
前記フランジは、前記外方部材又は前記内方部材に周方向に所定間隔で設けられた複数のフランジ厚肉部を有し、
周方向に隣り合う前記複数のフランジ厚肉部それぞれは、前記複数の厚肉部それぞれよりも薄肉である薄肉部によって接続される
請求項1に記載のハブユニット軸受。
【請求項3】
前記ハブユニット軸受は、前記外方部材の内周面と前記内方部材の外周面との間の前記転動体が設けられている内部空間への異物の侵入を防止する密封装置を備え、
前記密封装置は、
前記内方部材の外周面に固定されたスリンガと、
前記外方部材に固定され、前記スリンガに摺接するシール部材と、
を有し、
前記スリンガは、前記リブに軸方向一方側から接触して支持する
請求項1または2に記載のハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブユニット軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
ハブユニット軸受は、バネ下重量に影響を及ぼすため、車両の乗り心地向上及び燃費向上の為には軽量化や低回転慣性化が求められる一方、操安性向上の観点からは、高剛性であることも求められる。
【0003】
特許文献1に記載されたハブフランジは、内軸部材と、筒状の外輪と、内軸部材と前記外輪との間に設けられた複数の転動体と、を備えている。内軸部材は、軸状の本体部と、当該本体部の軸方向一方側に設けられ車輪を取り付けるためのボルト孔が複数形成されたフランジと、を含む内軸を有する。フランジは、本体部と連続している横断面円形のフランジ基部と、フランジ基部の径方向外方に周方向に等間隔で複数設けられボルト孔が形成された第一厚肉部と、第一厚肉部の間に設けられ当該第一厚肉部よりも薄肉である薄肉部と、を有する。フランジ基部は、第一厚肉部の径方向内方に位置し当該第一厚肉部よりも更に厚肉である第二厚肉部と、薄肉部の径方向内方に位置し第二厚肉部よりも小径である小径部と、を有する。このように、特許文献1においては、薄肉部の肉厚を減らすとともに、小径部の薄肉化することで、内軸部材の軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-15398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のハブフランジにおいては、第一厚肉部がフランジの周方向両縁及び径方向外側縁まで達しているため、内軸部材の質量及び回転慣性の低減効果が十分ではない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量化及び剛性向上を両立できるハブユニット軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内周面に複列の転走面が形成された外方部材と、
外周面に複列の転走面が形成された内方部材と、
前記外方部材の前記複列の転走面と、前記内方部材の前記複列の転走面と、の間に配置される複数の転動体と、
を備えるハブユニット軸受において、
前記外方部材又は前記内方部材には、径方向外側へ延びる車輪取り付け用のフランジが設けられ、
前記フランジは、
前記外方部材又は内方部材に接続して径方向外側に延び、且つ、ハブボルトが挿通されるボルト孔が形成された複数の厚肉部と、
前記複数の厚肉部それぞれの軸方向一方側面の周方向両縁及び径方向外側縁から、軸方向一方側に連続して延びるリブと、
を有し、
前記リブの径方向内側端部は、前記外方部材又は内方部材に接続する
ハブユニット軸受。
(2) 前記フランジは、前記外方部材又は前記内方部材に周方向に所定間隔で設けられた複数のフランジ厚肉部を有し、
周方向に隣り合う前記複数のフランジ厚肉部それぞれは、前記複数の厚肉部それぞれよりも薄肉である薄肉部によって接続される
(1)に記載のハブユニット軸受。
(3) 前記ハブユニット軸受は、前記外方部材の内周面と前記内方部材の外周面との間の前記転動体が設けられている内部空間への異物の侵入を防止する密封装置を備え、
前記密封装置は、
前記内方部材の外周面に固定されたスリンガと、
前記外方部材に固定され、前記スリンガに摺接するシール部材と、
を有し、
前記スリンガは、前記リブに軸方向一方側から接触して支持する
(1)または(2)に記載のハブユニット軸受。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軽量化及び剛性向上を両立できるハブユニット軸受を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係るハブユニット軸受を示す断面図である。
図2】ハブ輪をインナー側から見た図である。
図3】ハブ輪のフランジ周辺を示す斜視図である。
図4】変形例に係るハブユニット軸受を示す断面図である。
図5】他の変形例に係るハブユニット軸受を示す断面図である。
図6】他の変形例に係るハブ輪をインナー側から見た図である。
図7】他の変形例に係るハブ輪のフランジ周辺を示す斜視図である。
図8】係合機構を備えるハブユニット軸受を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態のハブユニット軸受1について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係るハブユニット軸受1を示す断面図である。
【0012】
ハブユニット軸受1は、車輪(駆動輪または従動輪)を回転自在に支持するものである。ハブユニット軸受1は、内周面に複列の転走面11a,11bが形成された外方部材10と、外周面に複列の転走面21a,21bが形成された内方部材20と、外方部材10の複列の転走面11a,11bと内方部材20の複列の転走面21a,21bとの間に配置される複数の転動体3と、複数の転動体3を転動自在に保持する保持器4と、を備えている。
【0013】
なお、本明細書において、「軸方向内側(軸方向一方側)」及び「インナー側」とは、車体に取り付けた際のハブユニット軸受1の車体側を表し、図1中の右側である。「軸方向外側(軸方向他方側)」及び「アウター側」とは、車体に取り付けた際のハブユニット軸受1の車輪側を表し、図1中の左側である。また、「径方向外側」とは、内方部材20の回転軸Oから遠ざかる方向を表し、図1中の上側である。「径方向内側」とは、内方部材20の回転軸Oに近づく方向を表し、図1中の下側である。「周方向」とは、内方部材20の回転軸Oを中心に旋回する方向を表す。
【0014】
外方部材10は、転がり軸受構造の外輪を構成する。外方部材10の内周面には、二列の転走面11a,11bが形成されている。二列の転走面11a,11bはそれぞれ、内方部材20の二列の転走面21a,21bに径方向に対向する。
【0015】
内方部材20は、転がり軸受構造の内輪を構成する。内方部材20は、ハブ輪30と、内輪40と、を有する。ハブ輪30は、外方部材10の径方向内側に配置された軸部35を有する。
【0016】
軸部35の外周面のうちインナー側端部には、段部31が形成されている。段部31の外径は、ハブ輪30の他の部分の外径に比べて小さい。また、段部31は、回転軸Oを中心軸とする円筒形状である。
【0017】
軸部35の外周面のうち段部31よりもアウター側には、転走面21bが形成されている。軸部35の転走面21bは、外方部材10のアウター側の転走面11bに対向する。
【0018】
軸部35の外周面のうち転走面21bよりもアウター側には、径方向外側へ延びる車輪取り付け用のフランジ50が形成されている。
【0019】
軸部35の外周面のうち、軸方向における転走面21bとフランジ50との間(外方部材10のアウター側端部の位置に対応)には、密封装置2が配置される。密封装置2は、外方部材10の内周面と内方部材20の軸部35の外周面との間の転動体3が設置された内部空間Sを密閉し、内部空間Sへの水や埃等の侵入を防止する。
【0020】
密封装置2は、断面L字形状で環状のスリンガ6と、スリンガ6に摺接するシール部材5と、を有する。軸部35の外周面のうち、軸方向における転走面21bとフランジ50との間には、回転軸Oを中心とする円筒形状の段部38が形成されている。この段部38に、スリンガ6が固定される。外方部材10のアウター側端部には、スリンガ6に摺接するシール部材5が固定される。
【0021】
図示されたハブユニット軸受1は駆動輪用のハブユニット軸受であるため、ハブ輪30(軸部35)の中心には、軸方向に延びるスプライン孔33が形成されている。しかし、本実施形態に係るハブユニット軸受1は従動輪用のハブユニット軸受としても適用可能であり、その場合、ハブ輪30(軸部35)の中心は孔の無い中実である。
【0022】
内輪40は、ハブ輪30のインナー側の段部31に嵌合される。内輪40の外周面のうちインナー側端部には、密封装置7が配置される。密封装置7は、外方部材10の内周面と内方部材20の外周面との間の内部空間Sを密閉する。
【0023】
内輪40の外周面のうち、密封装置7が配置される部分よりもアウター側には、転走面21aが形成されている。内輪40の転走面21aは、外方部材10のインナー側の転走面11aに対向する。
【0024】
次に、ハブ輪30のフランジ50について詳細に説明する。図2は、第一実施形態のハブ輪30をインナー側(軸方向内側)から見た図である。図3は、ハブ輪30の後述のフランジ厚肉部50a周辺を示す斜視図である。
【0025】
本実施形態のハブ輪30は、軸部35の外周面から径方向外側に延びる複数(本実施形態では五個)のフランジ厚肉部50aを有している。複数のフランジ厚肉部は、周方向に所定間隔で設けられている。本実施形態においては、フランジ厚肉部50aはハブ輪30の回転軸Oを中心に位相角72°ごとに設けられている。図2には、ハブ輪30の回転軸Oよりも上方の部分のみが示されているが、ハブ輪30は回転軸Oよりも上方に三つのフランジ厚肉部50aを有し、ハブ輪30は回転軸Oよりも下方に二つのフランジ厚肉部50aを有する。
【0026】
なお、フランジ厚肉部50aの個数は五個に限定されず任意に設定してよい。例えば、フランジ厚肉部50aがハブ輪30の回転軸Oを中心に位相角90°ごとに設けられることにより、フランジ厚肉部50aの個数が四個とされてもよい。また、フランジ厚肉部50aがハブ輪30の回転軸Oを中心に位相角60°ごとに設けられることにより、フランジ厚肉部50aの個数が六個とされてもよい。
【0027】
フランジ厚肉部50aは、軸部35に接続して径方向外側に延び、且つ、ハブボルト(不図示)が挿通されるボルト孔61が形成された厚肉部60と、厚肉部60の軸方向内側面(軸方向一方側面)の周方向両縁及び径方向外側縁から、インナー側(軸方向一方側)に延びるリブ70と、を有する。
【0028】
厚肉部60は、フランジ厚肉部50aの基部を構成し、軸部35と接続する第一厚肉部63と、第一厚肉部63と接続して径方向外側に延びる第二厚肉部65と、を有する。
【0029】
第一厚肉部63は、第二厚肉部65の径方向内側に位置しており、第二厚肉部65よりも厚肉である(軸方向幅が大きい)。第一厚肉部63は、インナー側の軸方向内側面63Aと、アウター側の軸方向外側面63Bを有する。軸方向内側面63Aは、径方向内側に向かうにしたがって(軸部35に近づくにしたがって)軸方向内側に向かう曲面形状である。軸方向外側面63Bは、回転軸Oに対して鉛直である略平面形状である。このように、第一厚肉部63は、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって厚肉となる(軸方向幅が増す)。
【0030】
第二厚肉部65は、第一厚肉部63の径方向外側に位置しており、第一厚肉部よりも薄肉である(軸方向幅が小さい)。第二厚肉部65は、インナー側の軸方向内側面65Aと、アウター側の軸方向外側面65Bを有する。軸方向内側面65A及び軸方向外側面65Bはともに、回転軸Oに対して鉛直である略平面形状である。軸方向内側面65Aは、第一厚肉部63の軸方向内側面63Aに接続する。軸方向外側面65Bは、第一厚肉部63の軸方向外側面63Bに接続する。このように、第二厚肉部65は、径方向位置によって軸方向幅が変化しない略直方体形状である。第二厚肉部65の略中央には、軸方向内側面65Aから軸方向外側面65Bに貫通するボルト孔61が設けられる。
【0031】
ここで、フランジ厚肉部50aの輪郭を構成する縁部のうち、周方向一方側(図2の時計回りの方向)の縁部を「第一縁部51」と呼び、周方向他方側(図2の反時計回りの方向)の縁部を「第二縁部52」と呼び、径方向外側の縁部を「第三縁部53」と呼ぶ。第一縁部51及び第二縁部52は、フランジ厚肉部50aの先端部(径方向外側端部)から基端部(径方向内側端部)まで延びる。第一縁部51の径方向外側端部及び第二縁部52の径方向外側端部は、第三縁部53によって周方向に接続される。したがって、これら第一~第三縁部51~53は、軸方向から見ると、逆U字形状である(図2参照)。
【0032】
そして、厚肉部60の軸方向内側面(軸方向一方側面)には、第一~第三縁部51~53に沿うようにリブ70が設けられている。すなわち、リブ70は、第一縁部51に沿う第一リブ71と、第二縁部52に沿う第二リブ72と、第三縁部53に沿う第三リブ73と、を備える。したがって、リブ70は、軸方向から見ると、逆U字形状である(図2参照)。
【0033】
以下に、第一リブ71~第三リブ73の形状について述べるが、単なる例示であって、適宜変更して構わない。
【0034】
径方向外側に位置する第三リブ73は、周方向に延びて、その周方向両端部73A,73Bが径方向内側に湾曲して第一リブ71及び第三リブ73の径方向外側端部に接続する。第三リブ73の軸方向幅は一定である。
【0035】
第一リブ71は、第三リブ73の周方向一方側端部73Aと接続して径方向内側に延びる第一接続部71Aと、第一接続部71Aと軸部35とを接続する第一基部71Bと、を有する。第一接続部71Aの軸方向内側面は、径方向内側に向かうにしたがってインナー側(軸方向内側)に位置する斜面である。すなわち、第一接続部71Aは、径方向内側に向かうにしたがって、厚肉となる(軸方向幅が大きくなる)。第一接続部71Aと第一基部71Bは、軸方向に延びる第一段部71Cによって接続される。したがって、第一基部71Bは第一接続部71Aよりも厚肉である(軸方向幅が大きい)。第一基部71Bは、略平面形状の軸方向内側面74を有する。第一基部71Bの軸方向内側面74は、環状のスリンガ6の軸方向外側面6A(図1参照)によって軸方向に接触されて支持される。
【0036】
第二リブ72は、第三リブ73の周方向他方側端部73Bと接続して径方向内側に延びる第二接続部72Aと、第二接続部72Aと軸部35とを接続する第二基部72Bと、を有する。第二接続部72Aの軸方向内側面は、径方向内側に向かうにしたがってインナー側(軸方向内側)に位置する斜面である。すなわち、第二接続部72Aは、径方向内側に向かうにしたがって、厚肉となる(軸方向幅が大きくなる)。第二接続部72Aと第二基部72Bは、軸方向に延びる第二段部72Cによって接続される。したがって、第二基部72Bは第二接続部72Aよりも厚肉である(軸方向幅が大きい)。第二基部72Bは、平面形状の軸方向内側面76を有する。第二基部72Bの軸方向内側面76は、環状のスリンガ6の軸方向外側面6A(図1参照)によって軸方向に接触されて支持される。
【0037】
なお、周方向における第一基部71Bの軸方向内側面74と第二基部72Bの軸方向内側面76との間には空隙が存在するため、スリンガ6が存在しない場合は、シール部材5とリブ70とが間欠的に接触してしまう。そのため、シール部材5とリブ70との間にスリンガ6を配置し、シール部材5とスリンガ6とを摺接させる。
【0038】
本実施形態においては、全てのフランジ厚肉部50aが回転軸Oを中心とする円板80の軸方向内側面上に形成されて一体化され、その間を後述のフランジ薄肉部81が繋いでいる。すなわち、本実施形態のハブ輪30は、丸フランジ付ハブ輪である。
【0039】
ここで、周方向に隣り合うフランジ厚肉部50a,50aの間に位置し、これらフランジ厚肉部50a,50aを接続する円板80の一部を、フランジ薄肉部81と呼ぶ。円板80はフランジ厚肉部50aの厚肉部60よりも薄肉である(軸方向幅が小さい)ため、フランジ薄肉部81も厚肉部60(第一厚肉部63及び第二厚肉部65)よりも薄肉である。したがって、フランジ薄肉部81は、周方向に隣り合うフランジ厚肉部50a,50aを接続して厚肉部60よりも薄肉である薄肉部を構成する。
【0040】
フランジ薄肉部81は、フランジ薄肉部81の径方向内側に配置された円弧状の傾斜面83によって軸部35に接続されている。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のハブユニット軸受1によれば、フランジ厚肉部50aは、内方部材20に接続して径方向外側に延び、且つ、ハブボルトが挿通されるボルト孔61が形成された厚肉部60と、厚肉部60の軸方向内側面の周方向両縁及び径方向外側縁から、軸方向内側に延びるリブ70と、を有し、リブ70の径方向内側端部は、内方部材20に接続する。
【0042】
したがって、厚肉部60の外周縁にリブ70が設けられるので、フランジ厚肉部50aの剛性を向上させることができ、その分、厚肉部60を従来技術に比べて薄肉にすることができる。これにより、ハブ輪30の剛性を維持しつつ、質量及び回転慣性を低減できる。
【0043】
さらに、リブ70は、厚肉部60の周方向両側のみならず径方向外側にも設けられるので、フランジ50の周方向剛性が向上できる。これにより、径方向から見たフランジ50の形状の変形が抑制できるので、駆動及び制動制御の遅れ感、ブレーキロータのフレッチングコロージョンによるホイールアライメントの狂い、ブレーキジャダ等の不具合の発生が抑制される。
【0044】
また、内方部材20には、周方向に所定間隔で複数のフランジ厚肉部50aが設けられ、周方向に隣り合うフランジ厚肉部50aは、厚肉部60よりも薄肉である薄肉部(フランジ薄肉部81)によって接続される。このような構成によれば、ハブ輪30の質量の増加を抑制しつつ剛性をさらに向上できる。
【0045】
さらに、ハブユニット軸受1は、外方部材10の内周面と内方部材20の外周面との間の転動体3が設けられている内部空間Sへの異物の侵入を防止する密封装置2を備える。密封装置2は、内方部材20の外周面に固定されたスリンガ6と、外方部材10に固定され、スリンガ6に摺接するシール部材5と、を有する。スリンガ6は、リブ70に軸方向一方側から接触して支持する。これにより、スリンガ6は確実に軸方向に位置決めされる。
【0046】
なお、本実施形態ではボルト孔61が形成される第二厚肉部65の軸方向内側面65Aは、略平面形状とされている。これにより、軸方向内側面65Aのうちボルト孔61周辺のボルト座面も略平面形状となるため、ボルト孔61に適切にハブボルトが挿入できる。しかしながら、軸方向内側面65Aは、上述の形状に限定されるものではない。図4に示されるように、軸方向内側面65Aのうちボルト孔61周辺のボルト座面は略平面形状とする一方、他の部分は径方向外側に向かうほどアウター側に位置する傾斜面としてもよい。
【0047】
また、ハブ輪30は、必ずしも円板80(フランジ薄肉部81)を備えなくてもよく、図5図7に示されるような、星形フランジ付ハブ輪としてもよい。図5図7の例では、ハブ輪30の質量と回転慣性をさらに低減できる。
【0048】
図8に示されるように、ハブユニット軸受1は、スリンガ6及びリブ70を互いに係合するための係合機構90を備えてもよい。係合機構90は、リブ70に設けられた係合溝78と、スリンガ6に設けられた係合突起6Bと、を有する。
【0049】
図8の例においては、シール部材5は、芯金8と、芯金8に固定された弾性シール9と、を有する。また、第一及び第二リブ71,72の第一及び第二接続部71A,72Aの軸方向内側面と、第一及び第二基部71B,72Bの軸方向内側面と、を接続する第一及び第二段部(径方向外側面)71C,72Cに、突起部77が設けられている。
【0050】
突起部77は、第一及び第二段部71C,72Cのインナー側端部から径方向外側に延びる。突起部77の外径は、シール部材5が固定される外方部材10のアウター側端部の内径よりも大きく外径よりも小さい。そして、突起部77と、第一及び第二接続部71A,72Aの軸方向内側面と、の間には、係合溝78が形成される。係合溝78の底部の外径は、シール部材5が固定される外方部材10のアウター側端部の内径と略等しい。なお、突起部77や係合溝78の形状や径等は特に限定されず、必要に応じて変更してよい。
【0051】
ここで、第一及び第二リブ71,72の第一及び第二接続部71A,72Aの軸方向内側面を径方向内側及び軸方向内側に延長した仮想平面が、図8中において符号71S,72S及び破線で示されている。係合溝78は、仮想平面71S,72Sよりも軸方向内側及び径方向外側に位置している。
【0052】
そして、スリンガ6には、軸方向外側面6Aの径方向外側端部からアウター側に延びるフック状の係合突起6Bが設けられる。この係合突起6Bが係合溝78に係合されることにより、スリンガ6が抜け止めされている。なお、係合突起6Bの係合溝78への係合は、パチン止めや加締め止め等によって行われる。このような構成によれば、スリンガ6のクリープによる軸方向移動が防止できる。
【0053】
なお、上述の実施形態のハブユニット軸受1では、車輪取り付け用のフランジ50が内方部材20に設けられていたが、車輪取り付け用のフランジ50は外方部材10に設けられても構わない。
【0054】
本願発明は、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において実施可能であり、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 ハブユニット軸受、2 密封装置、3 転動体、4 保持器、5 シール部材、6 スリンガ、6A 軸方向外側面、7 密封装置、10 外方部材、11a,11b 転走面、20 内方部材、21a,21b 転走面、30 ハブ輪、31 段部、33 スプライン孔、35 軸部、38 段部、40 内輪、50 フランジ、50a フランジ厚肉部、51 第一縁部、52 第二縁部、53 第三縁部、60 厚肉部、61 ボルト孔、63 第一厚肉部、63A 軸方向内側面、63B 軸方向外側面、65 第二厚肉部、65A 軸方向内側面、65B 軸方向外側面、70 リブ、71 第一リブ、71A 第一接続部、71B 第一基部、71C 第一段部、72 第二リブ、72A 第二接続部、72B 第二基部、72C 第二段部、73 第三リブ、73A 周方向一方側端部、73B 周方向他方側端部、74,76 軸方向内側面、77 突起部、78 係合溝、80 円板、81 フランジ薄肉部(薄肉部)、83 傾斜面、90 係合機構、O 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8