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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179103
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】基板の位置決め構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/14 20060101AFI20221125BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H05K7/14 E
H05K5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086360
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松村 直輝
(72)【発明者】
【氏名】矢田 英利
(72)【発明者】
【氏名】大森 寛人
【テーマコード(参考)】
4E360
5E348
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360BA08
4E360BB22
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA03
4E360EA12
4E360EA24
4E360EC05
4E360EC16
4E360ED03
4E360ED23
4E360ED28
4E360GA08
4E360GB97
4E360GC02
4E360GC08
4E360GC14
5E348AA03
5E348AA13
5E348AA15
5E348AA40
(57)【要約】
【課題】筐体に収納される基板の位置精度を簡易に向上させることができる基板の位置決め構造を提供する。
【解決手段】基板の位置決め構造は、基板2と、基板2が収納される樹脂製の筐体1と、を備え、筐体1は、基板2を挿入可能な開口と、当該開口に対向する底面と、底面の周縁から立設される周壁13と、底面から立設される基準ピン14と、周壁13の内面から内方に突出して設けられ、当該筐体1に収納された基板2の周縁2aの一部に当接して基板2を周壁13の内方に押圧して押圧力P1,P2を作用させる複数の押圧部15と、を有し、基板2は、基準ピン14が挿通される貫通孔22を有し、貫通孔22に基準ピン14が挿通されて基板2が筐体1に収納された状態で、複数の押圧部15の夫々が作用させる複数の押圧力P1,P2の合力P3が基準ピン14に作用する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板が収納される樹脂製の筐体と、を備え、
前記筐体は、前記基板を挿入可能な開口と、当該開口に対向する底面と、前記底面の周縁から立設される周壁と、前記底面から立設される基準ピンと、前記周壁の内面から内方に突出して設けられ、当該筐体に収納された前記基板の周縁の一部に当接して前記基板を前記周壁の前記内方に押圧して押圧力を作用させる複数の押圧部と、を有し、
前記基板は、前記基準ピンが挿通される貫通孔を有し、
前記貫通孔に前記基準ピンが挿通されて前記基板が前記筐体に収納された状態で、複数の前記押圧部の夫々が作用させる複数の前記押圧力の合力が前記基準ピンに作用する基板の位置決め構造。
【請求項2】
複数の前記押圧部は、潰しリブによって構成されている請求項1に記載の基板の位置決め構造。
【請求項3】
複数の前記押圧部は、前記周壁において前記開口の側に切り込みを設けることで形成されるスナップフィットによって構成されている請求項1に記載の基板の位置決め構造。
【請求項4】
前記筐体の前記周壁は、平面視において多角形状であり、
複数の前記押圧部は、前記周壁のうち少なくとも非平行な二つの壁部の前記内面に配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の基板の位置決め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に収納される基板の位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)等の電子機器においては、基板が筐体内に収納されている。特許文献1には、基板が収納される電子機器収納ケースの構成が開示されている。特許文献1に記載の電子機器収納ケースでは、基板を収納する筐体が底面と側壁とを有する箱形状であり、側壁には内面に基板を固定するための潰しリブが分散配置されている。潰しリブは、筐体の底面に向かうにつれて内方への突出量が増大するように傾斜している。このような構成により、特許文献1の電子機器収納ケースでは、基板が筐体に形成された開口から筐体に挿入されて、基板の周縁が潰しリブの傾斜に案内されつつ潰しリブを潰すことで、当該基板は筐体の所定位置に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-9748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電子機器収納ケースでは、潰しリブが対向する側壁に夫々配置されている。このため、対向する側壁に配置される潰しリブの一方と他方との間で潰し量に差があると、筐体に収納された基板において筐体の底面に沿う方向における収納位置にバラツキが生じる。そのため、筐体に対して基板を精度よく位置決めすることができない。
【0005】
上記実情に鑑み、筐体に収納される基板の位置精度を簡易に向上させることができる基板の位置決め構造が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基板の位置決め構造の特徴は、基板と、前記基板が収納される樹脂製の筐体と、を備え、前記筐体は、前記基板を挿入可能な開口と、当該開口に対向する底面と、前記底面の周縁から立設される周壁と、前記底面から立設される基準ピンと、前記周壁の内面から内方に突出して設けられ、当該筐体に収納された前記基板の周縁の一部に当接して前記基板を前記周壁の前記内方に押圧して押圧力を作用させる複数の押圧部と、を有し、前記基板は、前記基準ピンが挿通される貫通孔を有し、前記貫通孔に前記基準ピンが挿通されて前記基板が前記筐体に収納された状態で、複数の前記押圧部の夫々が作用させる複数の前記押圧力の合力が前記基準ピンに作用する点にある。
【0007】
本構成では、筐体に収納された基板には、周縁において筐体の周壁の内側に設けられる複数の押圧部からの押圧力が作用し、更に複数の押圧部からの押圧力の合力が基板の貫通孔に挿通された基準ピンに作用する。これにより、基板は、複数の押圧部が基準ピンを押圧した状態で筐体に位置決めされる。すなわち、筐体に収納された基板は押圧部及び基準ピンに常時当接した状態で保持されるため、筐体内において基板は位置ずれし難くなる。したがって、本構成によれば、筐体に配置される基板の位置精度を容易に向上させることができる。また、本構成は、筐体に設けられた基準ピンと、筐体に設けられた複数の押圧部と、基板に形成された貫通孔のみを用いて筐体に収納される基板を位置決めする構成であるので、筐体に収納される基板の位置決め構造を簡素な構成で実現することができる。
【0008】
他の特徴構成は、複数の前記押圧部は、潰しリブによって構成されている点にある。
【0009】
本構成のように、複数の押圧部が潰しリブによって構成されていると、潰しリブの潰れ量に応じて基板又は筐体の寸法公差を容易に吸収することができ、筐体における基板の保持状態を容易に安定させることができる。
【0010】
他の特徴構成は、複数の前記押圧部は、前記周壁において前記開口の側に切り込みを設けることで形成されるスナップフィットによって構成されている点にある。
【0011】
本構成によれば、複数の押圧部がスナップフィットによって構成されていると、スナップフィットの変形量に応じて基板又は筐体の寸法公差を容易に吸収することができ、筐体における基板の保持状態を容易に安定させることができる。
【0012】
他の特徴構成は、前記筐体の前記周壁は、平面視において多角形状であり、複数の前記押圧部は、前記周壁のうち少なくとも非平行な二つの壁部の前記内面に配置されている点にある。
【0013】
本構成によれば、筐体の周壁が平面視において多角形状であるので、筐体に多角形状の基板を容易に収納することができる。また、複数の押圧部が周壁のうち少なくとも非平行な二つの壁部の内面に配置されると、複数の押圧部の夫々が基板を押圧することで作用する複数の押圧力の合力は一方向に作用する押圧力となる。したがって、当該合力を基準ピンに確実に作用させて基板を精度よく位置決めすることができる。また、複数の押圧部は周壁のうち少なくとも非平行な二つの壁部の内面に配置すればよいので、筐体において押圧部の数を少なくして筐体の形状を簡素にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図2】電子機器の分解斜視図である。
図3】電子機器の筐体側の平面図である。
図4】電子機器を筐体の開口側から見た平面図である。
図5】電子機器の部分断面図である。
図6】第1実施形態の変形例における筐体の部分斜視図である。
図7】第1実施形態の変形例の部分断面図である。
図8】第2実施形態に係る電子機器を筐体の開口側から見た平面図である。
図9】第3実施形態に係る電子機器を筐体の開口側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る基板の位置決め構造の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、基板として回路基板を用いて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1図5に示される電子機器100は、例えば、車両に搭載されるECU等である。図1に示される電子機器100は、筐体1、回路基板2(以下、「基板2」と称する。図2参照)、コネクタ3、及び、蓋体4を備えて構成される。以下では、図面に記したXを筐体1及び基板2の長手方向、Yを筐体1及び基板2の短手方向、Zを筐体1及び基板2の厚み方向として説明する。
【0017】
電子機器100は、筐体1、基板2、及び蓋体4が平面視(Z方向視)において矩形状に形成されている。図2に示されるように、筐体1は、基板2を挿入可能な開口11と、開口11に対向する底面12と、底面12の周縁から底面12に対して略垂直に立設される周壁13と、を有する。開口11は周壁13の底面12とは反対の側の端部13aによって形成されている。筐体1において開口11及び底面12は矩形状に形成されている。基板2は、平面視において開口11及び底面12の面積よりも小さく、筐体1に収納可能に形成されている。
【0018】
基板2は、例えば樹脂製であって、入出力回路、通信回路、マイコン、電源回路などの電子部品を、板面上に備えている。基板2には、複数の接続端子32を圧入してピンヘッダ30を構成するための複数の装着孔21と、後述の基準ピン14に挿通される1つの貫通孔22と、が形成されている。
【0019】
コネクタ3は、基板2に圧入されたピンヘッダ30と、筐体1に設けられたコネクタハウジング部31とによって構成される。電子機器100において、コネクタ3は基板2を外部装置(不図示)に電気的に接続するために備えられている。筐体1の底面12には、開口部33を有し外方に突設する筒状のコネクタハウジング部31が形成されている。図1図3に示されるように、本実施形態では、基板2に3つのピンヘッダ30が形成され、筐体1には各々のピンヘッダ30に対応する3つのコネクタハウジング部31が設けられることにより、3つのコネクタ3が構成されている。ピンヘッダ30を構成する複数の接続端子32の一方端が複数の装着孔21に圧入されて基板2上に形成された電気回路と接続され、接続端子32の他方端が対応するコネクタハウジング部31の開口部33から露出することにより、コネクタ3を介して基板2と外部装置(不図示)とが電気的に接続可能に構成されている(図3参照)。
【0020】
図1及び図2に示されるように、蓋体4は筐体1の開口11を覆うために設けられている。互いに対向する蓋体4と筐体1には、例えば一方に係合部(不図示)が設けられ他方に被係合部(不図示)が設けられ、蓋体4は係合部と被係合部との係合により筐体1に固定可能に構成されている。
【0021】
筐体1は、例えば、PBT樹脂等で形成され、蓋体4は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、PBT樹脂等で形成される。筐体1の底面12には補強用のリブ12aが格子状に形成されている。また、筐体1の底面12には、基板2の板面が当接可能な受けリブ(不図示)が分散配置されている。
【0022】
図2及び図4に示されるように、筐体1は平面視において周壁13が矩形状に形成されており、周壁13は矩形の辺部に相当する位置に4つの壁部13A~13Dを有する。基板2は、周縁2aとして、図4に示される平面視において、上辺部分に相当する第1辺部2A、右辺部分に相当する第2辺部2B、下辺部分に相当する第3辺部2C、及び、左辺部分に相当する第4辺部2Dを、夫々有する。周壁13の4つの壁部13A~13Dと基板2の周縁2aの4つの辺部2A~2Dとは、基板2が筐体1に収納された状態で、第1壁部13Aと第1辺部2A、第2壁部13Bと第2辺部2B、第3壁部13Cと第3辺部2C、第4壁部13Dと第4辺部2Dとが夫々対向する。第1壁部13Aと第1辺部2A、及び、第3壁部13Cと第3辺部2CはX方向に沿って延出し、第2壁部13Bと第2辺部2B、及び、第4壁部13Dと第4辺部2DはY方向に沿って延出している。
【0023】
筐体1は、底面12から立設される基準ピン14と、周壁13の内面から内方に突出して設けられる複数の押圧部15と、を有する。基準ピン14は、基板2に形成された貫通孔22に挿通可能な位置に形成されている。ここで、図4に示すように、X方向のうち、第4壁部13Dと第4辺部2Dに向かう方向をX1方向、第2壁部13Bと第2辺部2Bに向かう方向をX2方向と称し、Y方向のうち、第3壁部13Cと第3辺部2Cに向かう方向をY1方向、第1壁部13Aと第1辺部2Aに向かう方向をY2方向と称する。そして、平面視で筐体1、基板2の中心からX1方向に位置する部分をX1側、X2方向に位置する部分をX2側と称し、平面視で筐体1、基板2の中心からY1方向に位置する部分をY1側、Y2方向に位置する部分をY2側と称する。本実施形態では、図2及び図4に示されるように、基準ピン14は、底面12におけるX方向のX1側の第4壁部13D近くであってY方向のY2側の位置に配置されている。また、基板2の貫通孔22は、第1辺部2AのX1側であって第4辺部2DのY2側の位置に配置されており、基準ピン14に対応する位置に形成されている。基準ピン14は例えば筐体1に一体成形されている。基準ピン14は、筐体1とは別材料(例えば金属)で構成されて筐体1に埋設された状態で設けられてもよい。
【0024】
複数の押圧部15は、筐体1に収納された基板2の周縁2aの一部に当接して基板2を周壁13の内方に押圧して押圧力Pを作用させる。本実施形態では、複数の押圧部15は、4つの壁部13A~13Dのうち第2壁部13B及び第3壁部13Cに1つずつ設けられている。具体的には、第2壁部13Bの内面に1つの押圧部15aが設けられ、第3壁部13Cの内面に1つの押圧部15bが設けられている。すなわち、複数の押圧部15は、非平行な二つの壁部13B,13Cの内面に配置されている。本実施形態では、二つの壁部13B,13Cは直交する関係にある。
【0025】
図2に示されるように、押圧部15は潰しリブによって構成されている。潰しリブである押圧部15は、底面12から立設されて角柱状に形成されており、開口11側の上部に開口11から底面12に向かうほど周壁13の内方に向かう傾斜部16が設けられている。複数の押圧部15が潰しリブによって構成されていると、潰しリブの潰れ量に応じて基板2又は筐体1の寸法公差を容易に吸収することができ、筐体1における基板2の保持状態を容易に安定させることができる。
【0026】
次に、筐体1に対する基板2の組付け手順について説明する。基板2は、筐体1の開口11から筐体1内へ挿入され、基板2の貫通孔22に基準ピン14が挿通されつつ、底面12に向けて押し付けられる。その際、基準ピン14の先端を先細り形状にすると、基板2の貫通孔22に基準ピン14を容易に挿し込むことができる。
【0027】
基板2は、基準ピン14に挿通されてから不図示の受けリブ上に載置されるまで、基板2の周縁2aが押圧部15の傾斜部16を潰しつつ、底面12側へ向かって嵌め込まれる。図5は、基板2が受けリブ上に載置された状態を示す。このとき、複数の押圧部15(傾斜部16)は、筐体1に収納された基板2の周縁2aの一部に当接して基板2を周壁13の内方に押圧する。図4に示すように、複数の押圧部15のうち、第2壁部13Bの内側に設けられた押圧部15aによる押圧力P1は、X1方向に向けて作用し、第3壁部13Cの内側に設けられた押圧部15bによる押圧力P2は、Y2方向に向けて作用する。したがって、押圧力P1と押圧力P2との合力P3(=P1+P2)は一方向(図4における左上方向)に作用する押圧力となる。
【0028】
基板2は、貫通孔22に基準ピン14が挿通されて筐体1に収納された状態で、押圧力P1と押圧力P2との合力P3が基準ピン14に作用する。ここで、図4を参照し、基準ピン14(貫通孔22)と複数の押圧部15a,15bとの位置関係を見ると、基準ピン14(貫通孔22)は、第2壁部13Bの押圧部15aよりもY2側に位置し、第3壁部13Cの押圧部15bよりもX1側に位置する。この位置に基準ピン14を設けると、合力P3と同じ大きさで逆方向の力(反力P4)を基準ピン14から基板2に作用させることができる。したがって、押圧力P1と押圧力P2との合力P3は、基準ピン14周りに基板2を回動させるようには作用せず、反力P4と釣り合うように作用する。したがって、基準ピン14と基板2とが押し合った状態で力が釣り合うので、筐体1に対して基板2は動くことなく、保持状態が維持される。
【0029】
このように、基板2は、複数の押圧部15a,15bからの押圧力P(P1,P2)を受けて基準ピン14に押し付けられた状態で筐体1に位置決めされる。すなわち、筐体1に収納された基板2は押圧部15a,15b及び基準ピン14に常時当接した状態で合力P3と反力P4とが釣り合うため、基板2は位置ずれし難くなる。したがって、筐体1に配置される基板2の位置精度を向上させることができる。その結果、本実施形態の電子機器100では、筐体1に設けられたコネクタハウジング部31に、基板2に装着されたピンヘッダ30を精度よく位置合わせすることができる。また、本実施形態は、筐体1に設けられた基準ピン14と、筐体1に設けられた複数の押圧部15a,15bと、基板2に形成された貫通孔22のみを用いて筐体1に収納される基板2を位置決めする構成であるので、基板2の位置決め構造を簡素な構成で実現することができる。
【0030】
また、複数の押圧部15a,15bが周壁13のうち非平行な二つの壁部13B、13Cの内面に配置されることで、複数の押圧部15a,15bの夫々が基板2を押圧することで作用する複数の押圧力P1,P2の合力P3は、確実に一方向に作用する押圧力となる。そして、合力P3に対する反力P4を基板2に作用させることができる位置に基準ピン14を設けることにより、当該合力P3を基準ピン14に確実に作用させ且つ基準ピン14から基板2に反力P4を作用させて、基板2を筐体1に対して精度よく位置決めすることができる。また、複数の押圧部15a、15bは周壁13のうち少なくとも非平行な二つの壁部13B,13Cの内面に配置すればよいので、筐体1において押圧部15の数を少なくして筐体1の形状を簡素にすることもできる。
【0031】
〔第1実施形態の変形例〕
図6及び図7に示されるように、複数の押圧部15は、周壁13において開口11の側に切り込み17を設けることで形成されるスナップフィット18によって構成されてもよい。図6に示されるように、スナップフィット18を形成する2つの切り込み17は底面12に向けて直線状に設けられている。2つの切り込み17の間に形成されるスナップフィット18は、開口11の側に周壁13の内面よりも内方に突出する直方体状の押圧部分19を有する。押圧部分19は開口11の側に底面12に向かうほど周壁13の内方に向かう傾斜部19aと、傾斜部19aに連続し底面12に対して垂直方向に延設される当接部19bと、を有する。
【0032】
図7に示されるように、筐体1に収容されて不図示の受けリブ上に載置された状態の基板2は、周縁2aが筐体1においてスナップフィット18の当接部19bに当接した状態で保持される。このように、複数の押圧部15がスナップフィット18によって構成されていると、スナップフィット18の変形量に応じて基板2又は筐体1の寸法公差を容易に吸収することができ、筐体1における基板2の保持状態を容易に安定させることができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、筐体1において、複数の押圧部15として、第2壁部13Bの内面に1つの押圧部15aを設け、第3壁部13Cの内面に1つの押圧部15bを設ける例を示したが、図8に示されるように、第2壁部13B及び第3壁部13Cの内面に押圧部15を複数ずつ設けてもよい。なお、図8に示される第2実施形態は、筐体1及び基板2がコネクタ3を有しない構成であり、基準ピン14の位置及び押圧部15の数以外の構成については第1実施形態と同様である。第2実施形態では、第2壁部13Bの内面に2つの押圧部15a1、15a2が間隔を空けて設けられ、第3壁部13Cの内面に2つの押圧部15b1、15b2が間隔を空けて設けられている。
【0034】
図8に示されるように、筐体1には、X方向のX1側及びY方向のY2側の角部に基準ピン14が設けられ、基板2においても基準ピン14に対応する位置に貫通孔22が形成されている。第2実施形態においても、基板2は、基準ピン14に挿通されてから不図示の受けリブ上に載置されるまで、基板2の周縁2a(第2辺部2B及び第3辺部2C)が押圧部15を潰しつつ、底面12側へ嵌め込まれる。このとき、複数の押圧部15の傾斜部16は、筐体1に収納された基板2の周縁2a(第2辺部2B及び第3辺部2C)の一部に当接して基板2を周壁13の内方に押圧する。複数の押圧部15のうち、第2壁部13Bの内側に設けられた押圧部15a1,15a2による押圧力P1は、X1方向に向けて作用し、第3壁部13Cの内側に設けられた押圧部15b1,15b2による押圧力P2は、Y2方向に向けて作用する。したがって、押圧力P1と押圧力P2との合力P3は一方向に作用する押圧力となる。
【0035】
こうして、基板2は、貫通孔22に基準ピン14が挿通されて筐体1に収納された状態で、押圧力P1と押圧力P2との合力P3が基準ピン14に作用する。ここで、図8を参照し、基準ピン14(貫通孔22)と複数の押圧部15a1,15a2,15b1,15b2との位置関係を見ると、基準ピン14(貫通孔22)は、第2壁部13Bの押圧部15a1と押圧部15a2との中間位置Q1よりもY2側に位置し、第3壁部13Cの押圧部15b1と押圧部15b2との中間位置Q2よりもX1側に位置する。この位置に基準ピン14を設けると、合力P3と同じ大きさで逆方向の力(反力P4)を基準ピン14から基板2に作用させることができる。したがって、押圧力P1と押圧力P2との合力P3は、基準ピン14周りに基板2を回動させるようには作用せず、反力P4と釣り合うように作用する。したがって、基準ピン14と基板2とが押し合った状態で力が釣り合うので、筐体1に対して基板2は動くことなく、保持状態が維持される。
【0036】
このように、第2実施形態においても、基板2は、複数の押圧部15からの押圧力Pを受けて基準ピン14に押し付けられた状態で筐体1に位置決めされる。すなわち、筐体1に収納された基板2は押圧部15a1,15a2,15b1,15b2及び基準ピン14に常時当接した状態で合力P3と反力P4とが釣り合うため、基板2は位置ずれし難くなる。したがって、筐体1に配置される基板2の位置精度を向上させることができる。
【0037】
〔第3実施形態〕
第1実施形態及び第2実施形態では、筐体1に基準ピン14を1つ設ける例を示したが、図9に示されるように、基準ピン14は2つであってもよい。なお、図9に示される第3実施形態は、基準ピン14及び貫通孔22以外の構成については第2実施形態と同様である。第3実施形態では、筐体1には2つの基準ピン14a,14bが設けられ、基板2には第1基準ピン14aが挿通される第1貫通孔22aと、第2基準ピン14bが挿通される第2貫通孔22bとが形成されている。第1貫通孔22aは、X1側であってY2側の第1辺部2A近くに配置され、X方向に沿って延びる長円形状に形成されている。第2貫通孔22bは、X1側の第4辺部2D近くでY方向の中央付近に配置され、Y方向に沿って延びる長円形状に形成されている。これにより、基準ピン14a,14bは貫通孔22a,22bに挿通され易くなる。
【0038】
本実施形態では、基板2は、第1貫通孔22aに第1基準ピン14aが挿通され、第2貫通孔22bに第2基準ピン14bが挿通されて筐体1に収納された状態で、押圧部15a1,15a2による押圧力P1を第2基準ピン14bに作用させることができ、押圧部15b1、15b2による押圧力P2を第1基準ピン14aに作用させることができる。この位置に第1基準ピン14aを設けると、押圧力P2と同じ大きさで逆方向の力(反力P5)を第1基準ピン14aから基板2に作用させることができる。また、この位置に第2基準ピン14bを設けると、押圧力P1と同じ大きさで逆方向の力(反力P6)を第2基準ピン14bから基板2に作用させることができる。これにより、基板2は、筐体1内において、複数の押圧部15及び2つの基準ピン14a,14bによって底面12に沿う方向の移動が規制され、筐体1の内部において精度よく位置決めすることができる。
【0039】
また、基準ピン14として筐体1に2つの基準ピン14a,14bを設け、基準ピン14が挿通される貫通孔22として基板2に2つの貫通孔22a、22bを形成することで、基準ピン14及び貫通孔22の耐久性を向上させることもできる。
【0040】
〔他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、筐体1の周壁13が平面視において矩形状に形成される例を示したが、筐体1の周壁13の形状は平面視において矩形状に限定されず、三角形や五角形以上の多角形状でもよい。また、複数の押圧部15は周壁13のうち少なくとも非平行な二つの壁部の内面に配置されていればよい。
【0041】
筐体1の周壁13を平面視において多角形状にすることで、筐体1に多角形状の基板2を収納し易くなる。また、複数の押圧部15が周壁13のうち少なくとも非平行な二つの壁部の内面に配置されると、複数の押圧部15の夫々が基板2を押圧することで作用する複数の押圧力Pの合力は、ゼロとはならず一方向に作用する押圧力となる。したがって、当該合力を基準ピン14に確実に作用させて基板2を精度よく位置決めすることができる。また、複数の押圧部15は周壁13のうち少なくとも非平行な二つの壁部の内面に配置すればよいので、筐体1の周壁13に設ける押圧部15の数を少なくして筐体1の形状を簡素にすることもできる。なお、筐体1の周壁13の形状が五角形以上の多角形状である場合には、複数の押圧部15の夫々が基板2に作用させる複数の押圧力Pの合力が一方向に作用する押圧力であれば、複数の押圧部15が周壁13のうち非平行な3つ以上の壁部の内面に配置されていてもよい。
【0042】
(2)上記の実施形態では、筐体1に形成された基準ピン14が円柱状である例を示したが、基準ピン14は角柱状、楕円柱状、扇形柱状等、他の形状であってもよい。
【0043】
(3)上記の実施形態では、複数の押圧部15として、第2壁部13Bの内面に1つ又は2つの押圧部15a(15a1,15a2)を設け、第3壁部13Cの内面に1つ又は2つの押圧部15b(15b1,15b2)を設ける例を示したが、第2壁部13B及び第3壁部13Cの内面に押圧部15を3つ以上配置してもよいし、第2壁部13B及び第3壁部13Cの内面において異なる数の押圧部15を配置してもよい。
【0044】
(4)上記の実施形態では、基板2が樹脂製の回路基板である例を示したが、基板2は金属等樹脂以外で構成されていてもよく回路基板以外であってもよい。第1実施形態では、コネクタ3として、筐体1にコネクタハウジング部31を設けて基板2にピンヘッダ30を圧入する例に示したが、筐体1及び基板2はコネクタ3に係る構成を有しない形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、筐体に対する各種基板の位置決めにおいて広く利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 :筐体
2 :回路基板(基板)
2a :周縁
2A,2B,2C,2D:辺部
3 :コネクタ
4 :蓋体
11 :開口
12 :底面
13 :周壁
13a :端部
13A,13B,13C,13D:壁部
14 :基準ピン
15 :押圧部
15a,15a1,15a2:押圧部
15b,15b1,15b2:押圧部
16 :傾斜部
17 :切り込み
18 :スナップフィット
19 :押圧部分
19a :傾斜部
19b :当接部
22 :貫通孔
31 :コネクタハウジング部
100 :電子機器
P,P1,P2:押圧力
P3 :合力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9