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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179105
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】マイクロフォン
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/04 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H04R3/04 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086362
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】種村 友貴
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220BA21
5D220BC01
(57)【要約】
【課題】音源がなくとも補正値を設定することのできるマイクロフォンを提供する。
【解決手段】マイクロフォンは、MEMSデバイス200と、ドライバ330と、制御部320と、を有する。MEMSデバイスは音響圧力に応じた第1電気信号を出力する。ドライバは駆動信号によってMEMSデバイスを振動させる。制御部は、駆動信号によって振動させられている際にMEMSデバイスから出力される第2電気信号に基づいて、第1電気信号を補正するための補正値を算出する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響圧力に応じた第1電気信号を出力する振動デバイス(200)と、
駆動信号によって前記振動デバイスを振動させる駆動部(330)と、
前記駆動信号によって振動させられている際に前記振動デバイスから出力される第2電気信号に基づいて、前記第1電気信号を補正するための補正値を算出する補正部(320)と、を有するマイクロフォン。
【請求項2】
前記補正部は、前記第2電気信号から前記振動デバイスの特性を示す等価回路のパラメータを算出する演算部(322)を有する請求項1に記載のマイクロフォン。
【請求項3】
前記補正部は、前記パラメータと前記振動デバイスの感度周波数特性の関係、および、前記振動デバイスの所望感度周波数特性それぞれが記憶された記憶部(321)を有し、
前記演算部は、算出した前記パラメータに対応する前記感度周波数特性と前記所望感度周波数特性それぞれを前記記憶部から読み出し、読み出した前記感度周波数特性と前記所望感度周波数特性の差分値に基づいて前記補正値を算出する請求項2に記載のマイクロフォン。
【請求項4】
前記補正部は、前記等価回路の所望パラメータ、および、前記パラメータと前記所望パラメータとの差分値に対応する前記補正値が記憶された記憶部(321)を有し、
前記演算部は、前記所望パラメータを前記記憶部から読み出し、算出した前記パラメータと読み出した前記所望パラメータとに基づいて前記差分値を算出し、前記差分値に対応する前記補正値を前記記憶部から読み出す請求項2に記載のマイクロフォン。
【請求項5】
前記駆動部は前記第1電気信号で示される音レベルが静音レベルよりも低い場合に前記駆動信号を前記振動デバイスに出力する請求項1~4のいずれか1項に記載のマイクロフォン。
【請求項6】
前記駆動部は前記振動デバイスの温度の変化量が温度判定値よりも大きい場合に前記駆動信号を前記振動デバイスに出力する請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロフォン。
【請求項7】
前記振動デバイスは、前記音響圧力に応じた前記第1電気信号を出力し、前記駆動信号によって振動させられた際に前記第2電気信号を出力する振動子(220)を有する請求項1~6のいずれか1項に記載のマイクロフォン。
【請求項8】
前記振動デバイスは、前記音響圧力に応じた前記第1電気信号を出力する第1検出部(DA)と、前記駆動信号によって振動させられる第2検出部(VA)と、を有する請求項1~6のいずれか1項に記載のマイクロフォン。
【請求項9】
前記振動デバイスは、前記第1検出部と前記第2検出部それぞれを備える振動子(220)を有する請求項8に記載のマイクロフォン。
【請求項10】
外部空間と連通された検出空間、および、前記外部空間と前記検出空間それぞれと非連通の検査空間を備える収納部(400)を有し、
前記第1検出部は前記検出空間に設けられ、
前記第2検出部は前記検査空間に設けられる請求項8に記載のマイクロフォン。
【請求項11】
前記振動デバイスには、圧電定数が窒化アルミニウムよりも高い圧電材料が含まれている請求項1~10のいずれか1項に記載のマイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、マイクロフォンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、放音用イコライジング処理部とCPUを有する音響特性補正システムが知られている。放音用イコライジング処理部はマイクで収音された収音信号を補正する。CPUは、スピーカから放音された音響特性測定用信号と、メモリに記憶された所望音響特性と、に基づいて、放音用イコライジング処理部の補正パラメータを設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-268257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の音響特性補正システムでは、補正パラメータを設定する際、スピーカから放音するためのテスト音源が必要になる。テスト音源(音源)がないと補正パラメータ(補正値)を設定することができなかった。
【0005】
本開示の目的は、音源がなくとも補正値を設定することのできるマイクロフォンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるマイクロフォンは、音響圧力に応じた第1電気信号を出力する振動デバイス(200)と、
駆動信号によって振動デバイスを振動させる駆動部(330)と、
駆動信号によって振動させられている際に振動デバイスから出力される第2電気信号に基づいて、第1電気信号を補正するための補正値を算出する補正部(320)と、を有する。
【0007】
これによれば音源がなくとも補正値を演算することができる。また、補正値が音源の特性に依存しなくなる。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】圧電型MEMSマイクロフォンの概略構成を示す断面図である。
図2】MEMSデバイスの上面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4】MEMSデバイスの等価回路を説明するための回路図である。
図5】MEMSデバイスの感度周波数特性を示すグラフ図である。
図6】圧電型MEMSマイクロフォンを説明するためのブロック図である。
図7】補正値演算処理を示すフローチャートである。
図8】記憶部に記憶された感度周波数特性を示す模式図である。
図9】補正処理を示すフローチャートである。
図10】記憶部に記憶された補正値を説明するための模式図である。
図11】補正値演算処理を示すフローチャートである。
図12】圧電型MEMSマイクロフォンを示す断面図である。
図13】圧電型MEMSマイクロフォンを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0011】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせが可能である。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、組み合わせが可能であることを明示していなくても、実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1図9に基づいて圧電型MEMSマイクロフォンを説明する。
【0013】
<圧電型MEMSマイクロフォン>
図1に示すように圧電型MEMSマイクロフォン100は、MEMSデバイス200、ASIC300、および、パッケージ400を有する。MEMSはMicro Electro Mechanical Systemsの略である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。
【0014】
MEMSデバイス200とASIC300は電気的に接続されている。パッケージ400は基板410と蓋部420を有する。基板410の内面410aにMEMSデバイス200とASIC300それぞれが搭載されている。この内面410aが蓋部420によって覆われている。基板410と蓋部420とによって構成されるパッケージ400の内部空間にMEMSデバイス200とASIC300が収納されている。
【0015】
基板410には、内面410aとその裏側の外面410bとに開口する導入孔410cが形成されている。導入孔410cはパッケージ400の内部空間とその外側の外部空間とを連通している。この導入孔410cの内部空間側の開口がMEMSデバイス200によって覆われている。
【0016】
係る構成のため、外部空間で空気の振動(音)が発生すると、その振動が音響圧力としてMEMSデバイス200に作用する。MEMSデバイス200はその音響圧力に応じた電気信号をASIC300に出力する。これにより外部空間で発生した音が検出される。
【0017】
<MEMSデバイス>
以下、MEMSデバイス200を詳説する。それにあたって、以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。図面では「方向」の記載を省略して、単に、x、y、zと表記している。
【0018】
図2図3に示すようにMEMSデバイス200は支持台210と振動子220を有する。支持台210に振動子220が一体的に連結されている。
【0019】
<支持台>
支持台210はz方向で積層された基部211と設計層212を有する。基部211はシリコンから成る。設計層212は酸化シリコンから成る。
【0020】
基部211と設計層212とが一体的に連結されている。基部211と設計層212それぞれはz方向に開口する開放孔210aを有する。基部211と設計層212それぞれはz方向まわりの周方向で環状を成している。
【0021】
<振動子>
MEMSデバイス200は複数の振動子220を有する。これら複数の振動子220それぞれが支持台210の設計層212に一体的に連結されている。複数の振動子220は設計層212に片持ち支持されている。複数の振動子220によって、開放孔210aの設計層212側の開口が覆われている。
【0022】
図2に示すように、1つの振動子220はz方向に直交する平面で三角形を成している。振動子220の備える3辺のうちの1つの下辺220a側が支持台210に固定されている。残り2つの斜辺220bは下辺220aから離間するように延びた後、交差して先端220cを構成している。この振動子220の先端220c側が支持台210から開放されている。
【0023】
以下においては説明を簡便とするため、振動子220の下辺220a側を支持端部221、先端220c側を開放端部222と示す。そして支持端部221と開放端部222とが並ぶ方向を延長方向と示す。
【0024】
振動子220は延長方向に延びている。振動子220は支持台210から離れるにしたがって先細りになっている。振動子220の下辺220a側の支持端部221はz方向に直交する平面で台形を成している。振動子220の先端220c側の開放端部222はz方向に直交する平面で三角形を成している。
【0025】
台形を成す支持端部221の下辺側が支持台210のz方向への投影領域に位置している。支持端部221の上辺側が開放孔210aのz方向への投影領域に位置している。図2では、振動子220における支持台210のz方向への投影領域に位置する部位と開放孔210aの投影領域に位置する部位との境界を一点鎖線で示している。この一点鎖線は、支持端部221の下辺側と上辺側の間にある。
【0026】
開放端部222は支持端部221の上辺側に一体的に連結されている。開放端部222は支持端部221の上辺側とともに、開放孔210aのz方向への投影領域に位置している。図2では、支持端部221と開放端部222の境を破線で示している。
【0027】
<隙間>
図2に示すように、MEMSデバイス200は振動子220を4つ有する。これら4つの振動子220はz方向まわりの周方向で順に並んでいる。周方向で隣り合って並ぶ2つの振動子220のうちの一方の備える2つの斜辺220bのうちの1つと、他方の備える2つの斜辺220bのうちの1つとが微小な隙間を介して周方向で対向している。この隙間は振動子220のz方向で離間して並ぶ上面220d側と下面220e側それぞれで開口している。
【0028】
周方向で並ぶ4つの振動子220それぞれの斜辺220bの間の隙間は、z方向に直交する平面でバツ印を構成している。このバツ印の隙間の中心をz方向に通る中心軸上に、MEMSデバイス200の中心点が位置している。図2ではこのバツ印の中心を通る2つのガイド線を二点鎖線で示している。2つのガイド線の一方はx方向に沿い、他方はy方向に沿っている。
【0029】
<音響圧力による振動>
図1図3に示すように、振動子220の備える支持端部221と開放端部222それぞれにおける開放孔210aのz方向への投影領域に位置する部位は、開放孔210aの設計層212側の開口を覆っている。そして、支持端部221と開放端部222それぞれにおける開放孔210aのz方向への投影領域に位置する部位と、支持台210の開放孔210aを区画する部位とが、導入孔410cの内部空間側の開口を覆っている。
【0030】
係る構成のため、外部空間で音が発生すると、その音によって開放孔210aの空気が振動する。その空気の振動が音響圧力として振動子220に作用する。これにより振動子220の支持端部221と開放端部222それぞれが振動する。支持端部221と開放端部222に撓みが生じる。
【0031】
なお、音響圧力の一部は、上記した隙間を介して、パッケージ400の内部空間に抜ける。係る構成のため、隙間が設計値よりも広がると、音響圧力がパッケージ400の内部空間へと抜けやすくなる。音響圧力によって振動子220が振動しがたくなる。係る不具合が生じることを避けるために、隙間は微小になっている。
【0032】
<材料>
振動子220には圧力を電圧に変換する圧電素子が含まれている。図3に示すように、振動子220は圧電層230と電極層240を有する。圧電層230と電極層240がz方向で積層されている。
【0033】
圧電層230は窒化アルミニウム(AlN)よりも圧電定数の高い材料を含んでいる。圧電層230に含まれる材料(圧電材料)としては、スカンジウム窒化アルミニウム(ScAlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、および、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)などがある。電極層240はモリブデンなどの導電材料を含んでいる。
【0034】
圧電層230は第1圧電層231と第2圧電層232を有する。電極層240は第1電極層241と、第2電極層242と、第3電極層243と、を有する。
【0035】
図3に示すように、第1電極層241、第1圧電層231、第2電極層242、第2圧電層232、および、第3電極層243がz方向で順次積層されている。第1電極層241が支持台210に連結されている。第1電極層241が振動子220の下面220e側に位置している。第3電極層243が振動子220の上面220d側に位置している。
【0036】
第1電極層241と第2電極層242が第1圧電層231を介してz方向で並ぶことで、下層コンデンサが形成されている。第2電極層242と第3電極層243が第2圧電層232を介してz方向で並ぶことで、上層コンデンサが形成されている。
【0037】
これら2つのコンデンサは第2電極層242を共通の構成要素として備えている。この共通の構成要素を介して、2つのコンデンサはz方向で電気的に直列接続されている。MEMSデバイス200は、これら電気的に直列接続された2つのコンデンサから成る合成コンデンサを複数備えている。
【0038】
<取り出し電極>
振動子220の支持端部221には、これら複数の合成コンデンサそれぞれを電気的に直列接続するとともに、電気的に接続された複数の合成コンデンサの電圧を検出するための複数の取り出し電極250が形成されている。
【0039】
複数の取り出し電極250のうちの一部は、電気的に接続される2つの合成コンデンサのうちの一方の第2電極層242と、他方の第1電極層241および第3電極層243それぞれとを電気的に接続している。
【0040】
残り2つの取り出し電極250のうちの1つは、電位的に最低電位に位置する合成コンデンサの第1電極層241と第3電極層243それぞれに電気的に接続されている。これら第1電極層241と第3電極層243はグランドに接続される。最後の1個の取り出し電極250は電位的に最高電位に位置する合成コンデンサの第2電極層242に接続されている。
【0041】
これら残り2個の取り出し電極250それぞれがワイヤ510を介してASIC300に接続される。この結果、電気的に接続された複数の合成コンデンサの両端がASIC300に接続される。
【0042】
<音響圧力の検出>
音響圧力が作用すると、振動子220はz方向に振動する。振動子220の第1圧電層231と第2圧電層232のうちの一方に引張応力が作用し、他方に圧縮応力が作用する。
【0043】
この作用する応力の相違のため、第1圧電層231と第2圧電層232に極性の異なる電圧が発生する。この電圧が合成コンデンサの電極層240に発生する。複数の合成コンデンサそれぞれで発生した電圧を合わせた電圧が、MEMSデバイス200で発生する。この電圧に応じた複数の合成コンデンサの静電容量変化若しくは複数の合成コンデンサの電荷変化が、第1電気信号としてASIC300に出力される。以下においては表記を簡便とするため、電気的に接続された複数の合成コンデンサを、必要に応じて、単にコンデンサと記載する。
【0044】
<検知領域と振動領域>
本実施形態の振動子220は、音響圧力の作用による振動によって電圧を発生する検知領域DAと、後述の駆動信号の入力によって強制的に振動させられる振動領域VAと、を有する。図2において、4つの振動子220のうちの1つに、検知領域DAをハッチングによって示している。振動領域VAを二点鎖線で囲って示している。
【0045】
検知領域DAは振動子220の中央側に位置している。振動領域VAは振動子220の端側に位置している。2つの振動領域VAの間に1つの検知領域DAが位置している。1つの振動領域VAに1つの斜辺220bが含まれている。なお、本実施形態とは異なり、検知領域DAが振動子220の端側に位置し、振動領域VAが振動子220の中央側に位置する構成を採用することもできる。
【0046】
検知領域DAと振動領域VAとは電気的に絶縁されている。図示しないが、振動領域VAに含まれるコンデンサの電極層240とASIC300とをワイヤ510などによって電気的に接続する駆動電極が振動子220に形成されている。この駆動電極に後述の駆動信号が入力される。MEMSデバイス200が振動デバイスに相当する。検知領域DAが第1検出部に相当する。振動領域VAが第2検出部に相当する。
【0047】
なお、本実施形態に記載のように、振動子220を検知領域DAと振動領域VAとに分けなくともよい。この構成の場合、上記の駆動電極は振動子220に形成されなくなる。駆動信号が上記の取り出し電極250に入力される。音響圧力の作用による振動によって電圧を発生する場合と、駆動信号の入力によって強制的に振動させる場合と、が時間的にずらして実行される。
【0048】
係る変形例において、後述の補正処理が実行される場合、ASIC300から取り出し電極250へ駆動信号は入力されない。後述の補正値演算処理が実行される場合、ASIC300から取り出し電極250へ駆動信号が入力される。
【0049】
<等価回路>
これまでに説明したように、外部空間で音が発生すると、開放孔210aの空気が振動する。その空気の振動によって振動子220が振動する。これにより振動子220で電圧が発生する。
【0050】
このように、外部空間で発生した音の電気信号への変換には、開放孔210aの空気の振動しやすさ、振動子220の振動しやすさ、振動子220での電圧変換、の3つが関連している。開放孔210aの空気の振動しやすさは流体力学で求められる。振動子220の振動しやすさは機械力学で求められる。振動子220での電圧変換は電磁気学で求められる。
【0051】
音の電気信号への変換には、3つの異なる物理分野の物理現象が関連している。これら3つの物理現象は微分方程式で表される。そしてこれら3つの微分方程式は等価回路で表すことができる。図4に、これら3つの異なる物理現象を表す微分方程式の等価回路を示す。
【0052】
開放孔210aの空気の振動しやすさは音場SFで表される。振動子220の振動しやすさは力場FFで表される。振動子220での電圧変換は電場EFで表される。これら3つの場は電気的に接続されている。
【0053】
図4に示すように、音場SF、力場FF、電場EFそれぞれにはリアクトル、静電容量、および、抵抗などの各種パラメータが含まれている。音場SFのパラメータにはL1,C1,C2,R1が含まれている。力場FFのパラメータにはL2,C3,R2が含まれている。電場EFのパラメータにはC4,C5,R3が含まれている。
【0054】
これら音場SF、力場FF、電場EFのうち、力場FFのパラメータが温度などによって変化しやすくなっている。そのためにASIC300は、後述するように、MEMSデバイス200から出力された第1電気信号を補正するための補正値を、力場FFのパラメータに基づいて算出する。以下においては表記を簡便とするために力場FFのパラメータを力場パラメータと示す。
【0055】
<検出感度>
MEMSデバイス200の音響圧力に対する検出感度は、音響圧力に対して発生する電圧量で表すことができる。図5に検出感度の周波数依存性(感度周波数特性)を示す。図5の縦軸は検出感度を示している。横軸は周波数を示している。縦軸の単位はV/Paである。横軸の単位はHzである。検出感度は低周波領域で徐々に増大し、周波数によって変化せずに一定になった後、高周波領域で徐々に増大する振る舞いを示す。
【0056】
図5では、理想的な感度周波数特性(所望感度周波数特性)を実線で示している。補正されていない感度周波数特性を破線で示している。上記した補正によって、この破線で示す感度周波数特性の低周波領域の感度が増幅される。感度周波数特性の高周波領域の感度が減衰される。
【0057】
係る補正により、検出感度が周波数によって変化する領域が狭められる。検出感度が周波数に依存しない周波数帯域が、第1周波数帯域FB1から第2周波数帯域FB2に近づけられる。感度周波数特性が所望感度周波数特性に近づけられる。係る周波数帯域の拡張が、ASIC300で行われる。
【0058】
なお、ASIC300は周波数帯域の拡張とは異なる補正を行ってもよい。ASIC300は例えば特定の周波数帯域の感度を増幅若しくは減衰してもよい。
【0059】
<ASIC>
図6に示すようにASIC300は、変換部310、制御部320、および、ドライバ330を有する。図面では変換部310をCSと表記している。ドライバ330をDRと表記している。ASIC300の各構成要素は、以下に示す補正処理と補正値演算処理を実行する。
【0060】
<補正処理>
変換部310は音響圧力によって振動しているMEMSデバイス200から出力されたコンデンサの静電容量変化若しくは電荷変化を示す第1電気信号を電圧に変換する。そして変換部310はその変換した第1電気信号(収音信号)を制御部320に出力する。
【0061】
制御部320は変換部310から出力された収音信号の周波数帯域を拡張するための補正を行う。そして制御部320はその補正した収音信号をスピーカなどに出力する。
【0062】
<補正値演算処理>
制御部320はMEMSデバイス200を強制的に振動するための振動信号をドライバ330に出力する。振動信号は周期的に電圧レベルがハイレベルとローレベルに変化するパルス信号である。振動信号の振幅は一定である。ハイレベルは例えば2.5Vである。ローレベルは例えば-2.5Vである。振動信号の周波数は不変である。なお、駆動信号の周波数は変化してもよい。
【0063】
ドライバ330は入力された振動信号を増幅する。そしてドライバ330はその増幅した振動信号(駆動信号)をMEMSデバイス200の振動子220に出力する。駆動信号が振動子220の振動領域VAに入力されると、振動子220には、周期的にz方向での作用方向の変化する圧力が生じる。この結果、振動子220がz方向に振動する。なお、ドライバ330は振動信号を増幅しなくともよい。例えば、ドライバ330は増幅度が1のボルテージフォロワ回路でもよい。ドライバ330が駆動部に相当する。
【0064】
変換部310は駆動信号によって振動しているMEMSデバイス200から出力されたコンデンサの静電容量変化若しくは電荷変化を示す第2電気信号を電圧に変換する。そして変換部310はその変換した第2電気信号(参考信号)を制御部320に出力する。
【0065】
制御部320は変換部310から出力された参考信号を用いて、収音信号の周波数帯域を拡張するための補正値を算出する。
【0066】
<制御部>
図6に示すように、制御部320は記憶部321と演算部322を有する。図面では記憶部321をMEと表記している。演算部322をOPと表記している。制御部320が補正部に相当する。
【0067】
記憶部321はコンピュータやプロセッサによって読み取り可能なデータとプログラムを非一時的に記憶する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶部321は揮発性メモリと不揮発性メモリとを有している。記憶部321は入力された諸情報や演算部322の処理結果を記憶する。記憶部321は演算部322が演算処理するための各種プログラムと各種参照値を記憶している。
【0068】
演算部322にはプロセッサが含まれている。演算部322は入力された諸情報を記憶部321に記憶する。演算部322は記憶部321に記憶された情報に基づいて各種演算処理を実行する。
【0069】
<補正値演算処理フロー>
次に、補正値演算処理を詳説する。図7に、補正値演算処理において演算部322の実行する処理を示す。演算部322は補正値演算処理をサイクルタスクで行っている。
【0070】
ステップS10において演算部322は、圧電型MEMSマイクロフォン100に電源電力を供給する電源がオフからオンになったか否かを判定する。電源がオフからオンになった場合、演算部322はステップS20へ進む。電源がオン状態若しくはオフ状態の場合、演算部322はステップS30へ進む。
【0071】
なお、圧電型MEMSマイクロフォン100が車両に搭載される場合、演算部322は車両のイグニッションスイッチがオフからオンになったか否かをステップS10で判定してもよい。イグニッションスイッチがオフからオンになった場合に演算部322はステップS20へ進む。イグニッションスイッチがオフからオンになっていない場合、演算部322はステップS30へ進む。
【0072】
また、演算部322は車両の動力源がオフからオンになったか否かをステップS10で判定してもよい。動力源がオフからオンになった場合に演算部322はステップS20へ進む。動力源がオフからオンになっていない場合、演算部322はステップS30へ進む。
【0073】
さらに例示すると、演算部322はステップS10を実行しなくともよい。この場合、演算部322はステップS30の処理を補正値演算処理の始めに実行する。
【0074】
ステップS30へ進んだ場合、演算部322は収音信号を取得する。そして演算部322はその収音信号に基づいて、外部環境の音の大きさ(音レベル)を検出する。演算部322はその音レベルが記憶部321に参照値として記憶された静音レベルよりも低いか否かを判定する。
【0075】
音レベルが静音レベルよりも低い場合、外部環境の音による振動子220の振動が補正値に影響を及ぼさないことが期待される。この場合、演算部322はステップS40へ進む。
【0076】
音レベルが静音レベルよりも高い場合、外部環境の音による振動子220の振動が補正値に影響を及ぼすことが想定される。この場合、演算部322は補正値演算処理を終了する。
【0077】
ステップS40へ進むと、演算部322はMEMSデバイス200に設けられた物理量センサ520から温度を取得する。そして演算部322はこの温度を記憶部321に記憶する。演算部322は補正値演算処理をサイクルタスクとして繰り返し実行している。そのために演算部322には異なる時刻で検出された複数の温度が記憶されている。演算部322は取得した最新の温度と、記憶部321に記憶された過去の温度とに基づいて、MEMSデバイス200の温度変化を算出する。
【0078】
この温度変化の算出に用いられる過去の温度は、例えば、この処理時点において記憶部321に記憶されている補正値を算出した時の温度である。MEMSデバイス200の力場パラメータは温度に依存している。そのため、補正値を算出した際の温度から例えば10℃程度の大きな変化がある場合、感度周波数特性が変化していることが想定される。逆に言えば、補正値を算出した際の温度から大きな変化がない場合、感度周波数特性が変化していないことが期待される。なお、温度変化の算出に用いられる過去の温度は、例えば、電源がオンからオフ若しくはオフからオンに切り替わった際の温度、温度変化の想定される時間経過前の温度などを採用することもできる。
【0079】
ステップS40において演算部322は、算出した温度変化が記憶部321に参照値として記憶された温度判定値よりも大きいか否かを判定する。温度変化が温度判定値よりも大きい場合、演算部322はステップS20へ進む。温度変化が温度判定値よりも低い場合、演算部322は補正値演算処理を終了する。
【0080】
なお、ステップS30とステップS40の処理順序は特に限定されない。ステップS30とステップS40の処理順序を逆転させてもよい。
【0081】
ステップS10のみ若しくはステップS30とステップS40を経てステップS20へ進むと、演算部322は振動信号をドライバ330に出力する。これによりドライバ330からMEMSデバイス200に駆動信号が出力される。この結果、振動子220が強制的に振動させられる。振動子220が自励振動する。この後に演算部322はステップS50へ進む。
【0082】
ステップS50へ進むと演算部322は、振動信号を出力してから所定時間経過したか否かを判定する。所定時間経過した場合、演算部322は振動子220の振動が安定したとみなす。演算部322は振動信号の出力を止める。こうすることで、振動子220の振動を減衰させる。演算部322は係る振動の減衰時の振る舞いを参考信号として取得する。制御部320はこの参考信号の振る舞いから、振動子220の共振周波数とQ値とを算出する。この後に演算部322はステップS60へ進む。
【0083】
なおステップS50において演算部322は、ドライバ330に出力している振動信号の周波数を、経時的に低周波から高周波に徐々に変化させてもよい。これにより振動子220の振動が変化する。演算部322は係る振動の変化時の振る舞いを参考信号として取得する。振動子220はこの参考信号から振動子220の共振周波数とQ値とを算出してもよい。
【0084】
ステップS60へ進むと演算部322は、算出した共振周波数とQ値、および、図4に示す等価回路に基づいて、力場パラメータを算出する。係る演算処理において、演算部322は音場SFと電場EFの各種パラメータを固定値としている。力場パラメータの算出の後、演算部322はステップS70へ進む。
【0085】
ステップS70へ進むと演算部322は、算出した力場パラメータに応じた感度周波数特性を記憶部321から読み出す。それとともに演算部322は所望感度周波数特性を記憶部321から読み出す。ステップS70において演算部322は、例えば図5に実線で示す所望感度周波数特性と、破線で示す感度周波数特性とを記憶部321から読み出す。
【0086】
図8に示すように記憶部321には、参照値として、理想とする周波数帯域を含む所望感度周波数特性が記憶されている。記憶部321には、参照値として、力場パラメータに対応する第1感度周波数特性~第n感度周波数特性が記憶されている。nは2以上の整数である。記憶部321には力場パラメータと感度周波数特性との関係性が記憶されている。図8では力場パラメータの図示を省略している。なお、力場パラメータは温度に依存する。そのために第1感度周波数特性~第n感度周波数特性それぞれの温度に対する関係性が記憶部321に記憶されていてもよい。
【0087】
ステップS70からステップS80へ進むと演算部322は、読み出した感度周波数特性と所望感度周波数特性とを差分した差分値を算出する。演算部322は各周波数の差分値を算出する。この後に演算部322はステップS90へ進む。
【0088】
ステップS90へ進むと演算部322は、各周波数の差分値を少なくするための補正値(補正ゲイン)を算出する。演算部322はこの補正ゲインを記憶部321に記憶する。この後に演算部322は補正値演算処理を終了する。
【0089】
<補正処理フロー>
次に、補正処理を詳説する。図9に、補正処理において演算部322の実行する処理を示す。演算部322は収音信号(入力音声)が入力されるたびに補正処理を行っている。すなわち、演算部322は圧電型MEMSマイクロフォン100の使用時に補正処理を絶えず行っている。
【0090】
ステップS110において演算部322は、変換部310から入力された収音信号をフーリエ変換する。演算部322は収音信号を複数の周波数の波に分解する。この後に演算部322はステップS120へ進む。
【0091】
ステップS120へ進むと演算部322は、収音信号に含まれる複数の周波数の波それぞれに各周波数の補正ゲインを乗算する。こうすることで複数の周波数の波それぞれを補正する。この後に演算部322はステップS130へ進む。
【0092】
ステップS130へ進むと演算部322は、補正された複数の周波数の波を逆フーリエ変換によって1つの収音信号に戻す。そして演算部322はこの補正された収音信号をスピーカなどに出力する。
【0093】
<作用効果>
これまでに説明したように、演算部322は振動信号によって振動子220を自励振動させる。そして演算部322は振動子220の自励振動時に変換部310から入力される参考信号を用いて、収音信号を補正するための補正値(補正ゲイン)を算出する。
【0094】
このように、音源がなくとも補正値を算出することができる。補正値が音源の特性に依存しなくなる。
【0095】
演算部322は外部環境の音レベルが静音レベルよりも低い場合に、補正値を算出する。これによれば、外部環境の音(音響圧力)のために、精度の良くない補正値を算出することが抑制される。収音信号の補正が不適正になることが抑制される。
【0096】
演算部322は振動子220の温度変化量が温度判定値よりも大きい場合に、補正値を算出する。換言すれば、演算部322は振動子220の温度変化量が温度判定値以下の場合に、補正値の算出をやめる。これによれば演算部322の処理負荷が軽減される。
【0097】
1つの振動子220に検知領域DAと振動領域VAが含まれている。これによれば、MEMSデバイス200の体格の増大が抑制される。
【0098】
1つの振動子220の中央側に検知領域DAが位置し、端側に振動領域VAが位置している。これによれば、斜辺220bを含む縁側で温度変化などのために反りや撓みが生じたとしても、それによって検知領域DAで静電容量変化や電荷変化が生じがたくなっている。斜辺220bを含む縁側の反りや撓みなどのために、音響圧力の検出精度が低下することが抑制される。
【0099】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図10図11に基づいて説明する。
【0100】
第1実施形態では、所望感度周波数特性、および、力場パラメータと感度周波数特性との関係性が記憶部321に記憶されている例を示した。これに対して本実施形態では、所望パラメータ、および、所望パラメータと力場パラメータとの差分値と補正ゲインとの関係性が記憶部321に記憶されている。
【0101】
図10では、所望力場パラメータに含まれるリアクタンス、静電容量、抵抗をL0,C0,R0と表記している。この所望力場パラメータと実際の力場パラメータとの差分値に対応する補正ゲインをG1…Gnと表記している。所望力場パラメータは、所望感度周波数特性のときの力場パラメータである。図10では差分値の図示を省略している。なお、補正ゲインの温度に対する関係性が記憶部321に記憶されていてもよい。
【0102】
本実施形態の演算部322は図7に示す補正値演算処理に代わって、図11に示す補正値演算処理を実行する。図7に示す補正値演算処理と、図11に示す補正値演算処理との相違は、ステップS60以降の処理である。
【0103】
ステップS60において力場パラメータを算出した後、演算部322はステップS210へ進む。
【0104】
ステップS210へ進むと演算部322は、所望力場パラメータを記憶部321から読み出す。この後に演算部322はステップS220へ進む。
【0105】
ステップS220へ進むと演算部322は、算出した力場パラメータと読み出した所望力場パラメータとを差分した差分値を算出する。この後に演算部322はステップS230へ進む。
【0106】
ステップS230へ進むと演算部322は、算出した差分値に対応する補正値(補正ゲイン)を記憶部321から読み出す。この後に演算部322は補正値演算処理を終了する。
【0107】
なお本実施形態に記載の圧電型MEMSマイクロフォン100には、第1実施形態に記載の圧電型MEMSマイクロフォン100と同等の構成要素が含まれている。そのために本実施形態の圧電型MEMSマイクロフォン100が第1実施形態に記載の圧電型MEMSマイクロフォン100と同等の作用効果を奏することは言うまでもない。そのためにその記載を省略する。以下に示す他の実施形態と変形例でも重複する作用効果の記載を省略する。
【0108】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図12図13に基づいて説明する。
【0109】
第1実施形態では、MEMSデバイス200に含まれる振動子220が検知領域DAと振動領域VAそれぞれを有する例を示した。これに対して本実施形態では、MEMSデバイス200が第1MEMSデバイス201と第2MEMSデバイス202を有する。
【0110】
図13において破線で囲って模式的に示すように、第1MEMSデバイス201に含まれる振動子220は検知領域DAと振動領域VAのうち検知領域DAのみを有している。第2MEMSデバイス202に含まれる振動子220は検知領域DAと振動領域VAのうち振動領域VAのみを有している。
【0111】
第1MEMSデバイス201と第2MEMSデバイス202それぞれは同一のインゴットから取り出された半導体チップを微細加工することで形成されている。そのために第1MEMSデバイス201と第2MEMSデバイス202とは物性が同質になっている。第1MEMSデバイス201と第2MEMSデバイス202それぞれの基本構成は、上記した検知領域DAと振動領域VAの有無の差はあるものの、第1実施形態で説明したMEMSデバイス200の基本構成と同等になっている。
【0112】
図12に示すように、パッケージ400は基板410と蓋部420の他に隔壁430を有する。基板410と蓋部420とによって構成されるパッケージ400の内部空間が隔壁430によって第1内部空間と第2内部空間とに隔てられている。第1内部空間と第2内部空間とは非連通になっている。
【0113】
パッケージ400が収納部に相当する。第1内部空間が検出空間に相当する。第2内部空間が検査空間に相当する。
【0114】
導入孔410cは基板410の内面410aにおける第1内部空間を区画する部位に開口している。そのために導入孔410cは第1内部空間と外部空間とを連通している。導入孔410cは第2内部空間と外部空間とを連通していない。第2内部空間は外部空間から隔離されている。第2内部空間と外部空間とは非連通になっている。
【0115】
以上に示した構成のため、外部空間で生じた音によって第1内部空間の空気が振動しやすくなっている。外部空間で生じた音によって第2内部空間の空気は振動しがたくなっている。この第1内部空間に第1MEMSデバイス201が設けられる。第2内部空間に第2MEMSデバイス202が設けられる。
【0116】
係る配置構成のため、第1MEMSデバイス201に含まれる振動子220は外部空間で生じた音によって振動しやすくなっている。第2MEMSデバイス202に含まれる振動子220は外部空間で生じた音によって振動しがたくなっている。
【0117】
したがって、例え外部環境の音レベルが静音レベルよりも高くとも、第2MEMSデバイス202を強制振動させることで、補正ゲインを算出することができる。本実施形態の場合、例えば図7図11に示すステップS30を省略することができる。
【0118】
(第1の変形例)
第1実施形態では、基板410にMEMSデバイス200が1つ搭載される例を示した。しかしながら基板410に複数のMEMSデバイス200が搭載されることで、アレイマイクが構成されてもよい。
【0119】
(第2の変形例)
各実施形態では演算部322が補正値演算処理をサイクルタスクで行っている例を示した。そして補正値演算処理のステップS10において、電源がオン状態若しくはオフ状態の場合、演算部322はステップS30へ進む例を示した。ステップS30へ進む前に、演算部322は電源がオン状態なのかオフ状態なのかを判定してもよい。
【0120】
電源がオン状態の場合、圧電型MEMSマイクロフォン100が使用状態であり、外部環境の音レベルが静音レベルよりも高いことが想定される。そのためにこの場合、演算部322は補正値演算処理のサイクル周期を長くすることを決定してもよい。
【0121】
電源がオフ状態の場合、圧電型MEMSマイクロフォン100が非使用状態であり、外部環境の音レベルが静音レベルよりも低いことが期待される。そのためにこの場合、演算部322は補正値演算処理のサイクル周期を短くすることを決定してもよい。
【0122】
また、補正値を算出したのち、MEMSデバイス200の物理パラメータがすぐに変化することは想定しがたい。そのために演算部322は、補正値を算出してから所定時間経過しない限り、新たに補正値演算処理を実行しないようにしてもよい。これによれば演算部322の処理負荷が軽減される。
【0123】
(第3の変形例)
各実施形態では演算部322が補正値演算処理のステップS10において、電源がオフからオンになった場合にステップS20へ進む例を示した。この場合、外部環境の音レベルに関係なく、演算部322は補正値を算出する。そのため、この補正値が不適正である可能性がある。このようにステップS10のみを経てステップS20の処理を実行した場合、演算部322は算出した補正値と、記憶部321に記憶された補正値とを比較してもよい。そして両者の差が記憶部321に参照値として記憶された閾値を超える場合、演算部322は算出した補正値を不適正と判断してもよい。
【0124】
(その他の変形例)
各実施形態では複数の振動子220の間で隙間が構成される例を示した。しかしながら、振動子220とともに支持台210に規定部が支持されてもよい。そして、この規定部と振動子220との間で隙間が構成されてもよい。
【0125】
各実施形態では振動子220が先細りの三角形を成す例を示した。しかしながら振動子220の形状は特に限定されない。例えば振動子220は長方形を成してもよい。
【0126】
各実施形態では振動子220の数が4である例を示した。しかしながら振動子220の数は特に限定されない。振動子220の数は単数でもよい。
【0127】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0128】
100…圧電型MEMSマイクロフォン、200…MEMSデバイス、201…第1MEMSデバイス、202…第2MEMSデバイス、220…振動子、300…ASIC、320…制御部、321…記憶部、322…演算部、330…ドライバ、400…パッケージ、DA…検知領域、VA…振動領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13