(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179108
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】覚醒支援システム
(51)【国際特許分類】
A61M 21/00 20060101AFI20221125BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20221125BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20221125BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221125BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20221125BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20221125BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A61M21/00 A
B60H1/00 101Q
B60H1/34 651A
G08G1/16 F
B60N2/90
B60N2/56
A47C7/74 B
A47C7/74 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086365
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】松岡 孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有華里
(72)【発明者】
【氏名】小谷 彩子
(72)【発明者】
【氏名】林 哲洋
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3L211
5H181
【Fターム(参考)】
3B084JF00
3B084JG06
3B087DE08
3B087DE10
3L211BA44
3L211DA53
3L211EA01
3L211GA53
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC04
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】乗員の快適性が損なわれる恐れを低減可能な覚醒支援システムを提供する。
【解決手段】車載システムは、ドライバの生体情報や運転時間などに基づき、眠気レベルと疲労レベルを逐次判定する。覚醒支援システムSy1は眠気レベルが所定値以上となったことに基づき光や冷風などといった覚醒刺激をドライバに印加する。疲労緩和システムSy2は疲労レベルが所定値以上となったことに基づき温熱と冷却を交互に繰り返す疲労緩和刺激をドライバに印加する。調停部F53は覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2の両方学童する場合には疲労緩和システムSy2の動作に制限をかける。例えば、覚醒刺激としての冷風と属性が相反する温熱の出力は禁止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の座席に着座している乗員の眠気レベルを推定する眠気判定部(F3)と、
前記乗員の前記眠気レベルを改善するための複数種類の所定の覚醒刺激を順次又は並列的に発生させる覚醒支援部(Sy1)と、
前記乗員の疲労状態を改善するための複数種類の所定の疲労緩和刺激を順次又は並列的に発生させる疲労緩和部(Sy2)と、
前記覚醒支援部と前記疲労緩和部のそれぞれの動作を調停する調停部(F53)と、を備え、
前記調停部は、前記眠気レベルに応じて、前記疲労緩和部の動作態様を変更するように構成されている覚醒支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の覚醒支援システムであって、
前記座席は運転席であって、前記乗員は運転席乗員である覚醒支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の覚醒支援システムであって、
前記調停部は、前記眠気レベルが前記覚醒刺激を発生させる閾値である覚醒支援用閾値以上となっている場合には、前記疲労緩和刺激を出力させないように構成されている覚醒支援システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
複数種類の前記疲労緩和刺激の中には前記覚醒刺激と同じ種類のものが含まれており、
前記調停部は、前記眠気レベルが前記覚醒刺激を発生させる閾値である覚醒支援用閾値以上となっている場合、複数種類の前記疲労緩和刺激のうち、前記覚醒刺激と同じ種類の前記疲労緩和刺激の出力を停止させる覚醒支援システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
複数種類の前記疲労緩和刺激の中には、複数種類の前記覚醒刺激のいずれかと属性が相反するものと、が含まれており、
生体センサの出力又は運転を開始してからの走行履歴に基づき、前記乗員の疲労レベルを判定する疲労判定部(F4)を備え、
前記調停部は、前記眠気レベルが前記覚醒刺激を発生させる閾値である覚醒支援用閾値以上であり、且つ、前記疲労レベルが前記疲労緩和刺激を発生させる閾値である疲労緩和用閾値以上である場合には、複数種類の前記覚醒刺激のいずれかと属性が相反する前記疲労緩和刺激の出力は禁止する覚醒支援システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
前記調停部は、前記疲労緩和部と前記覚醒支援部の両方が動作する条件を充足している場合は、前記疲労緩和部と前記覚醒支援部を交互に動作させるように構成されている覚醒支援システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
前記疲労緩和部は、前記疲労緩和刺激として、温刺激と冷刺激とを選択的に出力可能に構成されており、
前記調停部は、前記疲労緩和部が動作中において、前記眠気レベルが前記覚醒刺激を発生させる閾値である覚醒支援用閾値以上に遷移した場合には、前記温刺激の出力を停止させるように構成されている覚醒支援システム。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
前記疲労緩和部は、前記疲労緩和刺激として、前記座席に内蔵されたシートヒータ(35)から温熱を出力可能であるとともに、前記座席に内蔵された送風機(361)を用いて座席側から前記乗員に冷感を付与可能に構成されており、
前記調停部は、前記眠気レベルが前記覚醒刺激を発生させる閾値である覚醒支援用閾値以上となっている場合には、前記疲労緩和部に前記温熱の出力を禁止する一方、前記送風機の動作は許容するように構成されている覚醒支援システム。
【請求項9】
請求項1から7の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
生体センサの出力又は運転を開始してからの走行履歴の少なくとも何れか一方に基づいて、前記乗員の疲労レベルを判定する疲労判定部(F4)を備え、
前記疲労緩和部は、前記疲労レベルが前記疲労緩和刺激を発生させる閾値である疲労緩和用閾値以上であることを条件として前記疲労緩和刺激を出力するように構成されており、
前記調停部は、前記眠気レベルが前記覚醒刺激を発生させる閾値である覚醒支援用閾値以上となっている場合において、前記疲労レベルが前記疲労緩和用閾値以上となっても、前記眠気レベルが所定値以下になるまでは前記疲労緩和刺激を出力させないように構成されている覚醒支援システム。
【請求項10】
請求項2に記載の覚醒支援システムであって、
前記運転席乗員の状態を表示装置(23、24)に表示する表示処理部(F6)を備え、
前記表示処理部は、同乗者がいるか否かに応じて前記運転席乗員の状態にかかる表示位置を変更するように構成されている覚醒支援システム。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
前記眠気判定部は、前記乗員としての運転席乗員に加え、運転席以外の所定の座席の乗員である同乗者の前記眠気レベルを判定し、
前記覚醒支援部は、前記同乗者に対して前記覚醒刺激を出力可能に構成されており、
前記疲労緩和部は、前記同乗者に対して前記疲労緩和刺激として、温刺激と冷刺激とを選択的に出力可能に構成されており、
前記同乗者の生体情報に基づいて前記同乗者の疲労レベルを判定する疲労判定部(F4)を備え、
前記調停部は、前記運転席乗員に対しては前記疲労緩和刺激よりも前記覚醒刺激を優先的に出力させる一方、前記同乗者に対しては前記覚醒刺激よりも前記疲労緩和刺激を優先的に出力させるように構成されている覚醒支援システム。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
前記眠気判定部は、前記乗員としての運転席乗員に加え、運転席以外の所定の座席の乗員である同乗者の前記眠気レベルを判定し、
前記覚醒支援部は前記同乗者に対して前記覚醒刺激を出力可能に構成されており、
前記疲労緩和部は前記同乗者に対して前記疲労緩和刺激を出力可能に構成されており、
前記疲労緩和部は、温刺激と冷刺激とを選択的に出力可能に構成されており、
前記同乗者の生体情報に基づいて前記同乗者の疲労レベルを判定する疲労判定部(F4)を備え、
前記調停部は、前記同乗者の前記眠気レベルが前記覚醒刺激を出力させるべきレベルである覚醒支援用閾値以上であり、且つ、前記同乗者の前記疲労レベルが前記疲労緩和刺激を出力すべき疲労緩和用閾値以上である場合には、前記同乗者に対しては前記温刺激を前記冷刺激よりも優先的に出力させるように構成されている覚醒支援システム。
【請求項13】
請求項1から11の何れか1項に記載の覚醒支援システムであって、
前記覚醒支援部及び前記疲労緩和部の動作状態を切り替えるための前記乗員の操作に対応する信号である操作信号を入力装置(22)から取得する操作信号取得部(F1)を備え、
前記操作信号取得部が前記操作信号を取得した場合には、前記眠気レベルの判定値によらず、当該操作信号に応じた制御を行うように構成されている覚醒支援システム。
【請求項14】
所定の座席に着座している乗員の疲労レベルを判定する疲労判定部(F4)と、
前記乗員の眠気レベルを改善するための複数種類の所定の覚醒刺激を順次又は並列的に発生させる覚醒支援部(Sy1)と、
前記乗員の前記疲労レベルを改善するための複数種類の所定の疲労緩和刺激を順次又は並列的に発生させる疲労緩和部(Sy2)と、
前記覚醒支援部と前記疲労緩和部のそれぞれの動作を調停する調停部(F53)と、を備え、
前記調停部は、前記乗員の前記疲労レベルに応じて、前記覚醒支援部の制御態様を変更するように構成されている覚醒支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗員の眠気レベルに応じて覚醒刺激を出力する覚醒支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはユーザの眠気又は漫然状態を検出した場合に、複数の振動パターンを順次出力する覚醒装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ユーザの疲労緩和を目的として、シートに内蔵されたヒータを駆動させることでユーザに温熱刺激を付与する疲労緩和装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-55527号公報
【特許文献2】特開2007-209446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
覚醒のための刺激としては、冷風や振動、光などが多様な刺激が想定される。覚醒装置においては、刺激の強さ等が異なる複数の動作パターンが用意されてあって、ドライバの眠気レベルに応じた動作パターンが適用されうる。一方、疲労緩和のための刺激としては、温熱などが想定される。
【0006】
温熱を主として出力する疲労緩和装置と、覚醒刺激の一種として冷風を出力しうる疲労緩和装置とを独立して動作させると、相反する刺激が同時に出力されることで乗員の快適性が損なわれうる。
【0007】
本開示は、上記の検討に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、乗員の快適性が損なわれる恐れを低減可能な覚醒支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される第1の覚醒支援システムは、所定の座席に着座している乗員の眠気レベルを推定する眠気判定部(F3)と、乗員の眠気レベルを改善するための複数種類の所定の覚醒刺激を順次又は並列的に発生させる覚醒支援部(Sy1)と、乗員の疲労状態を改善するための複数種類の所定の疲労緩和刺激を順次又は並列的に発生させる疲労緩和部(Sy2)と、覚醒支援部と疲労緩和部のそれぞれの動作を調停する調停部(F53)と、を備え、調停部は、眠気レベルに応じて、疲労緩和部の動作態様を変更するように構成されている。
【0009】
上記のシステムによれば眠気レベルに応じて疲労緩和部の動作、ひいては疲労緩和刺激の出力態様が変更される。これにより、覚醒支援部と疲労緩和部のそれぞれから相反する刺激が同時に出力される恐れを低減できる。それに伴い、乗員の快適性を損なわれる恐れを低減できる。
【0010】
また、ここに開示される第2の覚醒支援システムは、所定の座席に着座している乗員の疲労レベルを判定する疲労判定部(F4)と、乗員の眠気レベルを改善するための複数種類の所定の覚醒刺激を順次又は並列的に発生させる覚醒支援部(Sy1)と、乗員の疲労レベルを改善するための複数種類の所定の疲労緩和刺激を順次又は並列的に発生させる疲労緩和部(Sy2)と、覚醒支援部と疲労緩和部のそれぞれの動作を調停する調停部(F53)と、を備え、調停部は、乗員の疲労レベルに応じて、覚醒支援部の制御態様を変更するように構成されている。
【0011】
上記のシステムによれば疲労レベルに応じて覚醒支援部の動作、ひいては覚醒刺激の出力態様が変更され、覚醒支援部と疲労緩和部のそれぞれから相反する刺激が同時に出力される恐れを低減できる。その結果、乗員の快適性を損なわれる恐れを低減できる。
【0012】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車載システムIvSの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】シートヒータ35の種類について説明するための模式図である。
【
図4】覚醒支援制御部F51が選択可能な動作パターンの一例を示す図である。
【
図5】第1モードMd1が適用されている場合の覚醒支援システムSy1の作動を説明するための図である。
【
図6】第2モードMd2が適用されている場合の覚醒支援システムSy1の作動を説明するための図である。
【
図7】疲労緩和システムSy2の作動を説明するための図である。
【
図8】眠気レベルと疲労レベルの組み合わせに応じた各システムの動作の制御例を説明するための図である。
【
図9】眠気レベルと疲労レベルの組み合わせに応じた各システムの動作の制御例を説明するための図である。
【
図10】調停部F53の作動を説明するための図である。
【
図11】覚醒支援系と疲労緩和系とで共通する属性の刺激を出力可能な装置及びその制御態様の一例を示す図である。
【
図12】覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2を交互に動作させる場合の制御例の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。
図1は、本開示に係る刺激制御装置1の概略的な構成の一例を示す図である。
【0015】
<前置き>
本開示の刺激制御装置1は、ドライバを覚醒状態に導くための刺激である覚醒刺激、及び、ドライバの疲労を緩和するための疲労緩和刺激の出力態様を統合的に制御する装置であって、多様な車両に搭載されて使用される。覚醒刺激も疲労緩和刺激も、ドライバが視覚、触覚、圧覚、痛覚、冷覚、温覚、聴覚、嗅覚などのそれぞれに対応する感覚器で感じ取れる刺激である。例えば振動や、光、温熱、冷風などがその出力態様によって覚醒刺激又は疲労緩和刺激になりうる。
【0016】
なお、本開示におけるドライバとは、例えば運転席に着座している人物、すなわち運転席乗員を指す。ドライバとの表現には、実際に運転操作の一部又は全部を実施している人物に限らない。ドライバとの記載は、自動運転中においては、自動運転システムから運転操作の権限を受け取るべき人物を指す。また、本開示が適用される車両は、車両外部に存在するオペレータによって遠隔操作される遠隔操作車両であってもよい。ここでのオペレータとは、車両の外部から遠隔操作によって車両を制御する権限を有する人物を指す。本開示の刺激制御装置1は、オペレータ用のシートを含むコックピットシステムにも適用可能である。ドライバの概念にはオペレータを含めることができる。
【0017】
<刺激制御装置1を含むシステム構成について>
図1に示すように刺激制御装置1は、DSM21などの多様な車載装置と接続されて使用される。例えば刺激制御装置1は、DSM21、入力装置22、ディスプレイ23、HUD24、発光装置31、スピーカ32、アロマシューター33、空調装置34、シートヒータ35、SVS36、マッサージャ37、及び振動発生器38と接続されている。なお、部材名称としてのDSMはドライバステータスモニタ(Driver Status Monitor)の略であり、HUDは、ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)を意味する。SVSは、シートベンチレーションシステム(Seat Ventilation System)の略である。刺激制御装置1は、通信機39を介してウェアラブルデバイス40と相互通信可能に構成されている。
【0018】
また、刺激制御装置1は、車両内に構築されている通信ネットワークである車両内ネットワークNwを介して、
図1での図示を省略している多様なセンサ/デバイスとも接続されている。例えば刺激制御装置1には、車両内ネットワークNwを介して、多様な車載センサの検出結果等が入力される。
【0019】
車載センサとしては、例えば、車速、加速度、操舵角、シフトポジション、アクセルの踏み込み量、ブレーキの踏み込み量等、車両の状態を検出するための種々のセンサが挙げられる。また、車載センサにはパーキングブレーキの作動状態や、車両の電源状態を検出するセンサ/スイッチなども含まれる。座席ごとの着座センサの検出信号も、刺激制御装置1に入力される。着座センサは、人間が着座していることを検知するセンサであって、例えばシート毎に設けられている。着座センサは、例えば、各座席の着座面に埋設された圧力センサとすることができる。なお、着座センサは、車室内を撮像するカメラであってもよいし、ミリ波レーダであってもよい。また、シートベルトの装着状態を検出するシートベルトセンサも着座センサとして援用可能である。
【0020】
なお、刺激制御装置1と種々の車載装置とは専用線で接続されていても良いし、車両内ネットワークNwを介して接続されていてもよい。また、刺激制御装置1と車載装置との間にはECU(Electronic Control Unit)が介在していてもよい。例えば、刺激制御装置1は、空調ECUを介して、アロマシューター33、空調装置34、シートヒータ35、及びSVS36のそれぞれと接続されていても良い。便宜上、刺激制御装置1及び刺激制御装置1に連なる車載装置を含む構成を車載システムIvSと記載する。
【0021】
DSM21は、ユーザの顔画像に基づいてユーザの状態を逐次検出する装置である。DSM21は、例えば近赤外光源と、近赤外カメラと、これらを制御する制御モジュールと、を含む。DSM21は、近赤外カメラが運転席のヘッドレストが存在する方向に向いた姿勢にて、例えばステアリングコラム部の上面、又はインストゥルメントパネルの上面等に設置されている。DSM21は、近赤外光源によって近赤外光を照射されたドライバの頭部を、近赤外カメラによって撮影する。近赤外カメラによる撮像画像は、制御モジュールによって画像解析される。制御モジュールは、近赤外カメラから入力される撮像画像から、例えばドライバの目の開度など、ドライバの状態を示す情報であるドライバ状態情報を抽出する。DSM21は、ドライバの顔画像から抽出したドライバ状態情報を刺激制御装置1に出力する。
【0022】
ドライバ状態情報には、例えばドライバの顔の向きや、視線方向、目の開度、口の開度、姿勢などを含まれる。目の開度は、瞼の開き度合いと言い換えることができる。目の開度を示す情報は開眼度情報に相当する。また、DSM21は、目の開度の経時変化や、表情、顔の向きの少なくとも何れか1つに基づいて、DSM21は、いねむり、脇見、病気発生等を検出するように構成されていてもよい。ドライバの状態情報には、いねむり、脇見、体調不良などを含めることができる。加えて、DSM21は、口の開度の経時変化パターンに基づいてあくびを検出しうる。なお、画像解析に基づいてドライバの状態を検出する機能は、刺激制御装置1が備えていても良い。その場合、DSM21はドライバの顔部画像を刺激制御装置1に出力可能に構成されていればよい。DSM21と刺激制御装置1の間における機能配置は適宜変更可能である。
【0023】
入力装置22は、刺激制御装置1に対するドライバの指示を受け付けるための操作部材である。入力装置22は、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたメカニカルスイッチ(いわゆるステアスイッチ)であってもよいし、ドライバの発話内容を認識する音声入力装置であってもよい。また、入力装置22は、ディスプレイ23の表示パネル上に積層されたタッチパネルであってもよい。ディスプレイ23は、例えばインストゥルメントパネルの車幅方向の中央領域、又は、センターコンソールに設けられた、センターディスプレイを採用することができる。ディスプレイ23は、運転席の正面領域に配置された、いわゆるメータディスプレイであってもよい。なお、入力装置22はドライバのスマートフォンであっても良い。例えばドライバが所持するスマートフォンのタッチパネル及びディスプレイを入力装置22として援用する事ができる。入力装置22は、当該装置に対してユーザが行った操作に対応する電気信号をユーザ操作信号として車両内ネットワークNwに出力する。ユーザ操作信号は、ユーザの操作内容を示す情報を含む。
【0024】
HUD24は、刺激制御装置1やナビゲーション装置などから入力される制御信号及び映像データに基づき、フロントガラスの所定領域に画像光を投影することにより、ユーザによって知覚されうる虚像を映し出すデバイスである。HUD24は、車両の前方の風景と重畳した画像を表示する。また、HUD24は、刺激制御装置1からの入力信号に基づき、刺激制御装置1の動作状態や、認識しているドライバ状態、休憩提案など、多様な情報を提示する、情報提示装置としての役割を担いうる。刺激制御装置1の動作状態に関する情報としては、例えば、刺激制御装置1の起動情報、継続情報がある。
【0025】
起動情報は、これから覚醒刺激が起動することをドライバに知らせるための情報であって、例えばテキスト又はアイコン画像によって表現される。起動情報は、覚醒刺激が発生する前に表示される。継続情報は、覚醒刺激が継続しているときに表示される。継続情報は、覚醒刺激が継続していることをドライバに知らせる。継続情報は、現在出力中の刺激の概要を示すアイコン画像又はテキストを含んでいても良い。刺激の概要とは、光や音、振動、匂い、空調などといった刺激の種類を含む。その他、継続情報は次に出力される刺激の種類や強度を示す予告情報を含んでいても良い。
【0026】
ドライバ状態とは、例えば後述する眠気判定部F3が判定している眠気レベルや、疲労判定部F4が判定しているドライバの疲労レベルを指す。HUD24は刺激制御装置1の制御のもと、眠気レベル及び疲労レベルを示すアイコン画像又はテキストを表示する。休憩提案は、ドライバに対し休憩することを提案する内容の表示である。休憩提案は、例えば、HUD24及びディスプレイ23など、複数の表示装置のうちの何れか1つ以上に表示される。HUD24は刺激制御装置1の制御のもと、休憩提案として、例えばコーヒーカップを模したアイコン画像や、駐車して仮眠を取ることを促すアイコン画像を表示する。各種情報の提示は、HUD24に限らず、メータディスプレイ、又はセンターインフォーメーションディスプレイなどを用いて実施されても良い。
【0027】
発光装置31は、ドライバが視認可能な光を発生させるデバイスである。発光装置31は、例えば、光源として複数のLED(light emitting diode)を備える。発光装置31は、例えばステアリングのスポーク部や、インストゥルメントパネルの上面部、運転席前方の天井部など、ドライバの視界に入る位置に設けられている。
【0028】
発光装置31は、輝度、光の色等を調整可能に構成されている。発光装置31は、輝度を周期的に変化させることができる。発光装置31は、輝度が周期的に変化するとき、周期の長さ、波形、単位時間当たりの輝度の変化量等を調整することができる。発光装置31が発生させる光は、視覚に対する刺激に対応する。例えば所定の閾値以上の輝度を有する青白い光は、視覚的な覚醒刺激に対応する。白い光や、赤い光もまた覚醒刺激に該当する。また、輝度が抑制された、あるいは、揺らぎのあるオレンジ色、青色、緑色等の光は、リラックス効果が期待される光、ひいては疲労緩和刺激に該当しうる。
【0029】
スピーカ32は、車室内で音声を発生させる。音声との表現には、警告音や楽音、自然音などの単なる音も含まれる。自然音には、水の流れる音や、波音、雨音、鳥などの動物の鳴き声を含めることができる。音声は聴覚に対する刺激に対応する。スピーカ32は聴覚刺激を出力する装置に相当する。音と音の間隔が所定値以下となる出力パターンは、覚醒刺激該当として使用することはできる。一方、自然音などは疲労緩和刺激として採用することができる。
【0030】
アロマシューター33は、香料を車室内に噴射する。ドライバは、噴射された香料の香りを知覚する。アロマシューター33が発生させる香りは、嗅覚に対する覚醒刺激に対応する。アロマシューター33は、香りの種類、香りの強さ、香りの噴射時間等を変化させることができる。なお、アロマシューター33は空調装置34と一体化されていても良い。
【0031】
空調装置34は、車室内に空調空気としての冷風及び温風を選択的に発生させる。冷風は、冷覚や触覚(圧覚)を用いて覚醒刺激に対応する。空調装置34は、冷風の温度、風量、及びモードを変化させることができる。モードとして、オートモードと、フェイスモードとがある。オートモードは、冷風の噴き出し方向を、予め設定されたアルゴリズムにより変化させるモードである。フェイスモードは、ドライバの顔に向けて冷風を吹き出し続けるモードである。
【0032】
シートヒータ35は、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ等の電熱器であって、電流による発熱を利用してシートSt、ひいては着座者を温める。シートヒータ35が出力する温熱が温刺激に相当する。なお、本実施形態では種々の刺激の印加対象としてドライバを想定している。故に、シートStは運転席に対応する。また、着座者との記載はドライバを指す。
【0033】
シートヒータ35は、運転席としてのシートStの背もたれ部や、ヘッドレスト、着座部に内蔵されている。シートヒータ35としては
図2に示すように、腰部ヒータ35Aと、上部ヒータ35Bと、首ヒータ35Cとがある。腰部ヒータ35Aは、背もたれ部のうち、着座者の腰部が接すると想定される所定位置に設けられたシートヒータ35である。上部ヒータ35Bは、背もたれ部のうち、腰部ヒータ35Aよりも上側、例えば着座者の肩及び肩甲骨付近が接する位置に設けられたシートヒータ35である。首ヒータ35Cは、着座者の首を暖めるためのヒータであって、背もたれ部の上端部又はヘッドレストに配置されている。なお、通常の運転姿勢においては、ドライバの首は、シートStに当接しない(つまり浮いた)状態である事が多い。故に、本開示の首ヒータ35Cは、より好適な例として、赤外線(熱)を放出する、いわゆる輻射式のヒータとして構成されている。
【0034】
なお、車載システムIvSは、シートヒータ35として上述したすべての装置を備えている必要はない。一部のシートヒータ35は省略されても良いし、腰部ヒータ35Aと上部ヒータ35Bは背部ヒータとして統合されていても良い。シートヒータ35として、着座者の大腿部を温めるように着座部に配置された着座面ヒータを備えていても良い。
【0035】
SVS36は、シート内部、例えば背もたれ部に内蔵された送風機361を用いて着座者の体を冷やす装置である。SVS36によるドライバの背面に対する冷却が冷刺激に相当する。SVS36は、シートパッドに形成された溝を通してシート表面から風を吸込み、シート下部や側方、上方など、他の座席の乗員に不快感を与えにくい所定方向に吹き出すように構成されている。吸い込み式によれば、シートStにこもった熱を放出し、着座者に冷感を与えることができる。また、吸い込み式によれば、空調装置34から出力された冷風が人体に沿って吸い込まれるため、着座者の体を包み込むような冷却効果が期待できる。なお、SVS36は、着座者に向けて風を吹き出す方式のものであっても良い。風を吹き出す方式によっても、送風によって着座者の体表面の熱を奪い、体を冷やすことができる。また、SVS36は、送風機361を逆回転運転にすることで吸い込みモードと吹き出しモードとを切替可能に構成されていても良い。なお、SVS36は基本的に送風のみを行うものであって、空気の温度調整自体は行わない。
【0036】
マッサージャ37は、シートStに設けられた振動発生器を所定のパターンで振動させたり、可動式ローラーを駆動させたりすることで、着座者の体をほぐす装置である。マッサージャ37は、モータ等のアクチュエータを用いて、着座者の体に対して、押す、揉む、擦る、叩く、震わすといった触覚刺激を付加するように構成されている。
【0037】
振動発生器38は、刺激制御装置1からの制御信号に基づき振動を発生させる。振動発生器38は、例えばシートベルトを振動させるように構成されている。振動は覚醒刺激に対応する。なお、振動発生器38は、着座者の背中に振動を付与するものであっても良い。振動発生器38はマッサージャ37と統合されていても良い。
【0038】
以降では便宜上、発光装置31など、直接的に又は間接的にドライバに刺激を与えるデバイスのことを刺激発生装置とも称する。
【0039】
通信機39は、ウェアラブルデバイス40と刺激制御装置1とが通信接続するための装置である。ウェアラブルデバイス40と通信機39との接続態様は有線接続であっても良いし、無線接続であっても良い。例えば通信機39とウェアラブルデバイス40とはBluetooth(登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信規格に準拠した無線通信を実施するように構成されている。なお、通信機39とウェアラブルデバイス40との間には、それぞれとペアリングされているスマートフォンが介在していても良い。
【0040】
ウェアラブルデバイス40は、ドライバの例えば手首等に装着されて使用されるデバイスであって、例えばドライバの生体情報をセンシングする生体センサを含む。生体センサは、例えば心拍数を計測する心拍数センサである。血圧、心電位、脈波、発汗量、体温、人体からの放熱量、呼吸のリズム、呼吸の深さを検出対象とするセンサも生体センサに含まれる。ウェアラブルデバイス40としては、リストバンド型、腕時計型、指輪型、メガネ型、イヤホン型など、多様な形状のものを採用可能である。ウェアラブルデバイス40は、車両に搭載されている通信機39を介して刺激制御装置1と相互通信可能に構成されている。
【0041】
刺激制御装置1と通信接続する車載装置は以上で例示したものに限定されない。車載生体センサが刺激制御装置1と接続されていてもよい。車載生体センサは、ドライバ用のシートStに内蔵されていても良いし、ステアリングに設けられていても良い。また、探査波としてのミリ波を運転席に向けて送受信することで、ドライバの心拍数や体動、姿勢を検出するミリ波レーダも車載生体センサに含めることができる。
【0042】
<刺激制御装置1の構成について>
刺激制御装置1は、DSM21からの入力信号や入力装置22が出力するユーザの操作信号に基づいて各種刺激発生装置を作動させる装置である。刺激制御装置1は、プロセッサ11、RAM(Random Access Memory)12、ストレージ13、通信インターフェース14(I/O)、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えた、コンピュータとして構成されている。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算コアである。プロセッサ11は、RAM12へのアクセスにより、種々の処理を実行する。RAM12は揮発性のメモリである。
【0043】
ストレージ13は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ13には、コンピュータを刺激制御装置1として機能させるためのプログラムである刺激制御プログラムが格納されている。プロセッサ11が刺激制御プログラムを実行することは、刺激制御プログラムに対応する刺激制御方法が実行されることに相当する。
【0044】
また、ストレージ13には、覚醒刺激の出力パターンが複数登録されている。複数の出力パターンはそれぞれ、出力する覚醒刺激の組み合わせや強度が異なる。刺激の出力パターン、すなわち刺激パターンの詳細は別途後述する。通信インターフェース14は、刺激制御装置1が他の装置と通信するための回路である。通信インターフェース14は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
【0045】
刺激制御装置1は、プロセッサ11がストレージ13に保存されている刺激制御プログラムを実行することにより
図3に示す各機能部を提供する。すなわち、刺激制御装置1は、操作信号取得部F1、センサ情報取得部F2、眠気判定部F3、疲労判定部F4、統合制御部F5、及び表示処理部F6を備える。統合制御部F5はより細かい機能部として、覚醒支援制御部F51、疲労緩和制御部F52、及び調停部F53を備える。その他、刺激制御装置1は、所定の時間を計測するタイマー機能を有する。刺激制御装置1は、当該タイマー機能を用いて、各刺激を出力開始してからの経過時間などを特定する。
【0046】
操作信号取得部F1は、入力装置22からユーザ操作信号を取得する。すなわち、ユーザの入力装置22に対するユーザの操作内容を示す情報を取得する。具体的には、操作信号取得部F1は、疲労緩和刺激の出力開始、停止、パターン変更などにかかる指示を取得する。また、操作信号取得部F1は、覚醒刺激の出力開始、停止、パターン変更などにかかる指示を取得する。
【0047】
センサ情報取得部F2は、DSM21や生体センサとしてのウェアラブルデバイス40などから、ドライバの眠気レベルを判断するための情報(つまり判断材料)を取得する。眠気レベルは、眠気の度合いを表すパラメータである。眠気レベルの判断材料として利用可能な情報としては、例えば、目の開度や、瞬きの実行頻度、瞬きの実施間隔のばらつき度合い、顔の向きや、視線方向、姿勢、あくびの頻度、ハンドル角のふらつき度合いなどがある。センサ情報取得部F2は、眠気判定部F3が眠気レベルを判定するための各種情報を、DSM21を含む所定のセンサ群から逐次取得する。眠気レベルの判断材料は、眠気レベルの評価に使用可能なドライバ特徴と呼ぶこともできる。センサ情報取得部F2がドライバ状態取得部に相当する。
【0048】
また、センサ情報取得部F2は、DSM21などから、ドライバの疲労レベルを判断するための情報(つまり判断材料)を取得する。疲労レベルは、疲労の度合い(つまり疲労度)を表すパラメータである。疲労度の判断材料として利用可能な情報としては、例えば、ドライバの挙動のほか、ドライバの表情、顔色、心拍、体温、運転時間などがある。疲労度の判断材料となりうるドライバの挙動とは、例えば肩を動かす動作や、肩を揉む動作、体勢を変えること、首を傾ける動作等が挙げられる。
【0049】
運転時間は、運転を開始してからの経過時間であって、例えば走行用電源がオンになってからの時間を計測するタイマーや、走行用電源がオンになった時刻などを用いて特定されうる。走行用電源は、車両が走行するための電源であって、車両がガソリン車である場合にはイグニッション電源を指す。車両が電気自動車やハイブリッド車である場合、走行用電源とはシステムメインリレーを指す。疲労度の指標としては末梢部の皮膚温度の、走行開始時点を基準とする低下量も採用可能である。
【0050】
眠気判定部F3は、センサ情報取得部F2が取得している種々の情報に基づいて、ドライバの眠気レベルを判定する。本実施形態では一例として、眠気レベルを0~3の4段階に区分して判定する場合を例に挙げて説明を行う。眠気レベルは、値が小さいほど覚醒度合いが高い状態に対応する。例えばレベル0は全く眠くない状態に相当し、レベル1は、わずかに眠そうな状態、換言すればドライバ本人は眠気を自覚していないような状態に相当する。レベル2は、やや眠そうであって、ドライバ本人も眠気を自覚しうる状態に相当する。レベル3は眠そうな状態に相当する。眠気レベルとしては、かなり眠そうな状態に相当するレベル4や、ほとんど/完全に眠っている状態に相当するレベル5などが設けられていても良い。
【0051】
眠気レベルの判定方法としては、多様な方法を用いることができる。例えば、眠気判定部F3は、開眼度や、開眼度の経時的なゆらぎ度合い、左右の目の開眼度合いの差、視線の移動速度、瞬き(瞬目)の周期や速度、あくびの頻度などを複合的に用いて眠気レベルを判定する。なお、一般的に眠気が強いほど開眼量は小さくなる傾向が有る。そのため眠気判定部F3は開眼量が小さいほど眠気レベルが高いと判定してもよい。また、眠気が強いほど視線の移動速度や、瞬目の速度は低下しうる。故に、眠気判定部F3は、視線の移動速度や瞬目の速度が小さいほど眠気レベルを高く判定しても良い。加えて眠気レベルが高いほど、瞬目の周期は不安定となる傾向がある。故に眠気判定部F3は瞬目の周期の安定度合い、例えば一定時間以内の瞬目周期の分散値に基づいて、眠気レベルを評価しても良い。その他、眠気判定部F3は、ドライバの体からの放熱量や、体表面温度の変化傾向や分布、深呼吸の有無、肩の上下動の有無、顔部が下又は上方向を向いているか否かなどに基づいて眠気レベルを判定しても良い。
【0052】
疲労判定部F4は、センサ情報取得部F2が取得している種々の情報に基づいて、ドライバの疲労レベルを判定する。本実施形態では一例として、疲労レベルを0~1の2段階に区分して判定する場合を例に挙げて説明を行う。疲労レベルは、値が小さいほど疲労度が低い状態に対応する。例えばレベル0は疲労が見られない状態に相当し、レベル1は、疲労がある状態に相当する。このような疲労判定部F4は、疲労の有無を判定する構成に相当する。もちろん、疲労レベルは、3段階以上で評価されてもよい。例えば、やや疲れた状態をレベル1とし、かなり疲れている状態をレベル2としてもよい。
【0053】
疲労レベルの判定方法としては、多様な方法を用いることができる。例えば疲労判定部F4は、運転時間が所定の疲労判定閾値以上となった場合には疲労レベルを1と判定する。運転時間に対する疲労判定閾値は、例えば10分や30分、1時間などに設定されうる。疲労判定部F4は、肩を動かす頻度や、肩を揉む頻度、体勢を変える頻度、首/頭部を傾ける頻度が所定の閾値以上であることに基づいて疲労レベルを0から1に設定しても良い。疲労レベルを1に設定することはドライバが疲れていると判定することに対応する。なお、疲労判定部F4はドライバ挙動、ドライバの表情、顔色、心拍、体温、運転時間などを複合的に用いて疲労レベルを判定してもよい。例えば、運転者の表情や顔色が優れない場合には疲労度が高く評価してもよい。あるいは、運転者の心拍が正常値よりも高い場合や、体温が平熱よりも高い場合には疲労度を高く判定しても良い。その他、走行を開始してからの右左折の回数が所定値以上となったことや、山道を所定時間以上走行していることに基づいてドライバは疲労状態であると判定しても良い。疲労判定部F4は、生体センサの出力又は運転を開始してからの走行履歴の少なくとも何れか一方に基づき、ドライバの疲労レベルを判定する構成に相当する。
【0054】
覚醒支援制御部F51は、眠気レベルが1以上であることに基づいて、眠気レベルに応じたパターンで覚醒刺激を出力させる。覚醒支援制御部F51と、覚醒刺激を出力可能な刺激出力装置を含む構成は、覚醒支援システムSy1を形成する。なお、或る覚醒刺激を発生させるということは、当該覚醒刺激を出力可能な装置を作動させることに相当する。便宜上、覚醒刺激を出力させることを、覚醒用のアクチエーションとも記載する。眠気レベルが1以上であることが覚醒支援システムSy1を動作させる覚醒支援動作条件に相当する。また、ここではレベル1が覚醒支援用閾値に相当する。覚醒支援システムSy1又はその中枢である覚醒支援制御部F51が覚醒支援部に相当する。
【0055】
刺激制御装置1には、一例として
図4に示すように、覚醒支援用の刺激を出力する3つのモードが用意されている。すなわち、覚醒支援制御部F51は、眠気レベルの現在の判定値や過去の眠気レベルの履歴などに基づき、第1モードMd1、第2パターン、及び第3モードMd3を選択的に採用可能に構成されている。第1モードMd1は主として眠気レベルが1のときに適用されるモードである。第2モードMd2は眠気レベルが2のときに適用されるモードである。第3モードMd3は眠気レベルが3のときに適用されるモードである。
【0056】
覚醒刺激の種類としては、光、香り、冷風、振動、及び音声がある。光は、発光装置31が発生させる光による視覚的な覚醒刺激である。香りは、アロマシューター33が発生させる覚醒刺激である。冷風は、例えば空調装置34が発生させる覚醒刺激である。振動は、振動発生器38がシートベルトを介してドライバに印加する覚醒刺激である。音声は、スピーカ32が発生させる覚醒刺激である。
【0057】
発光装置31が発生させる光の覚醒刺激は、光の特徴に応じてタイプ1(図中#1)とタイプ2(#2)に区別されている。光の特徴として、例えば、光の色、輝度、光の明滅の仕方、ゆらぎの有無、光が発生する場所等が挙げられる。例えばタイプ1は水色の光とし、タイプ2は青白い光とすることができる。刺激の強度、換言すればドライバを覚醒させる効果は、タイプ1よりもタイプ2が高くなるように設定されている。例えば輝度が高いほど刺激の強度は高くなる。例えばタイプ2の光の輝度は、タイプ1の光の輝度の1.2倍などに設定されている。光の覚醒刺激は、発光装置31によるイルミネーションとして実現されうる。なお、光刺激としてのイルミネーションは、HUD24が出力しても良い。以下の発光装置31との記載は、HUD24と置き換え可能である。また、光刺激の出力元として、HUD24と発光装置31を併用しても良い。
【0058】
香りの覚醒刺激は、香りの特徴に応じてタイプ1(図中#1)とタイプ2(#2)に区別されている。香りの特徴として、例えば、香りの種類、香りの強さ等が挙げられる。ドライバを覚醒させる効果、すなわち刺激の強度は、タイプ1よりもタイプ2が高くなるように設定されている。例えばタイプ1の香りはレモンの香りとし、タイプ2の香りはミントの香りとする事ができる。
【0059】
冷風の覚醒刺激は、冷風の温度、風量、及びモードの3つの要素を含む。冷風の温度設定としては、オート(Auto)と、セミロー(Semi-Lo)、及びロー(Lo)がある。オートとは、予め設定されたアルゴリズムにより、温度を設定することである。ローは、例えば18度や17.5度など、空調装置34が出力可能な最低温度を指す。セミローは、例えば20度など、上記最低温度よりも所定量高い温度を指す。風量は、オート又は強である。オートとは、予め設定されたアルゴリズムにより、風量を設定することである。強は、空調装置34が出力可能な最大風量の70%以上のレベルを指す。モードは、上述したオートモード、又はフェイスモードである。ドライバを覚醒させる効果は、冷風の温度が低いほど高い。ドライバを覚醒させる効果は、冷風の風量が強いほど高くなる。また、ドライバを覚醒させる効果は、フェイスモードである場合の方が、オートモードである場合よりも高くなる。
【0060】
振動の覚醒刺激は、振動の強さ(振幅)に応じて、弱、中、強の3段階に区分されうる。もちろん、振動刺激の特徴としては、強さの他に、リズムや、振動印加箇所なども採用可能である。振動のタイプは3つ以上用意されていても良いし、1つだけであってもよい。
【0061】
音声の覚醒刺激は、一例として所定のメロディを出力する「音楽」と、警告音を出力する「アラーム」の2種類が用意されている。なお、アラームは、その音の大きや周波数に応じてタイプ1(#1)とタイプ2(#2)など、複数種類用意されていても良い。覚醒刺激としての強度は、タイプ1よりもタイプ2のほうが高くなるように設定されている。
【0062】
第1モードMd1は、発生させる覚醒刺激の特徴あるいは組み合わせがそれぞれ異なる複数の刺激パターンP11~P14を含む。刺激パターンP11はタイプ1のイルミネーション(光)を点灯させるパターンであり、刺激パターンP12はタイプ1の香りを出力させるパターンである。刺激パターンP13は、所定のメロディを出力させるパターンであり、刺激パターンP14はセミローの冷風を出力させるパターンである。前述の通り、パターンP11~P12のイルミネーション(光)はHUD24を用いて実現されてもよい。
【0063】
第1モードMd1が適用されているとき、覚醒支援システムSy1は
図5に示すように刺激パターンP11、刺激パターンP12、及び刺激パターンP13を順次実行して、刺激パターンP14を実行する。刺激パターンP14の時間帯が終了すると、再び刺激パターンP11の時間帯に戻る。すなわち、第1モードMd1が適用されている間は、刺激パターンP11~14が順番に繰り返される。
【0064】
第2モードMd2は、発生させる覚醒刺激の特徴あるいは組み合わせがそれぞれ異なる複数の刺激パターンP21~P23を含む。刺激パターンP21は、タイプ2のイルミネーションと、フェイスモードの冷風と、中レベルの振動と、タイプ1のアラームを並列的に出力させるパターンである。刺激パターンP22はタイプ2のイルミネーションと、タイプ1の香りと、オートモードの冷風と、タイプ1のアラームを並列的に出力するパターンである。刺激パターンP23は、タイプ2のイルミネーションと、フェイスモードの冷風と、を並列的に出力させるパターンである。第2モードMd2が適用されているとき、覚醒支援システムSy1は
図6に示すように刺激パターンP21~P23が順番に実行される。刺激パターンP23の時間帯が終了すると、再び刺激パターンP21の時間帯に戻る。つまり第2モードMd2中は刺激パターンP21~P23が繰り返される。パターンP21~P23、P31~P33のイルミネーション(光)はHUD24を用いて実現されてもよい。
【0065】
第3モードMd3は、複数の刺激パターンP31~P33を含む。香り刺激がタイプ1からタイプ2に変更されている点、アラームのタイプが1から2に変更されている点、及び休憩提案を行う点を除き、第3モードMd3は第2モードMd2と同様とすることができる。もちろん、第3モードMd3の構成は、第2モードMd2と全く異なっていても良い。以上で述べた各モードを構成する刺激パターンの数や、各刺激パターンの内容は適宜変更可能である。
【0066】
個々の刺激パターンの継続時間であるパターン継続時間Tpは、例えば45秒である。パターン継続時間Tpは例えば30秒や50秒、60秒などであっても良い。パターン継続時間Tpが長すぎると、当該作動パターンで出力される刺激にドライバが慣れてしまい、覚醒効果が得られにくい。また、パターン継続時間Tpが短すぎると頻繁に刺激の出力態様が変更されることとなり、ドライバに煩わしさを与えかねない。覚醒効果の確保と煩わしさの低減を両立させるため、パターン継続時間Tpは40秒以上、60秒以下に設定されていることが好ましい。パターン継続時間Tpが第1時間に相当する。覚醒支援制御部F51は、眠気レベルが変化しない限りは、パターン継続時間Tpに相当する周期で刺激パターンを変更することを基本動作として実行する。
【0067】
覚醒支援制御部F51は、覚醒刺激を出力しない停止モードを備える。停止モードに対して、第1モードMd1、第2モードMd2、及び第3モードMd3の何れかに設定されている状態は覚醒刺激出力モードと呼ぶことができる。停止モードは、眠気レベルが0に設定されている場合に適用される。覚醒支援制御部F51は、覚醒刺激の出力を開始した場合や、刺激出力モードを変更した場合、冒頭に10秒ほど、覚醒刺激の出力を停止しつつ、刺激出力モードを変更することの案内を画像又は音声にて実施する。
【0068】
その他、覚醒支援制御部F51は調停モードを備えていても良い。調停モードは疲労緩和システムSy2の動作に合わせて、一部の刺激の強度を高めたり弱めたり、一部の種類の刺激出力を中止したりするモードである。調停モードの詳細は別途後述する。
【0069】
覚醒支援制御部F51は、例えば、現行の刺激パターンに対応付けられた覚醒刺激を出力するための制御信号を調停部F53に出力する。あるいは、覚醒支援制御部F51は調停部F53から指示されたモードで動作する。覚醒支援制御部F51と調停部F53の相互作用については別途後述する。
【0070】
疲労緩和制御部F52は、疲労レベルが1以上である場合に、疲労レベルに応じたパターンで疲労緩和刺激を出力させる。疲労緩和制御部F52と、疲労緩和刺激を出力可能な刺激出力装置を含む構成は、疲労緩和システムSy2を形成する。なお、或る疲労緩和刺激を発生させるということは、当該刺激を出力可能な装置を作動させることに相当する。疲労レベルが1であることが疲労緩和システムSy2を動作させる疲労緩和動作条件に相当する。また、レベル1が疲労緩和用閾値に相当する。疲労緩和システムSy2又はその中枢である疲労緩和制御部F52が疲労緩和部に相当する。
【0071】
疲労緩和制御部F52は、一例として
図7に示すように、疲労レベルが1以上に設定された場合に、マッサージャ37を所定のマッサージ時間Tmgだけ動作させた後に、シートヒータ35とSVS36を交互に駆動させる温冷サイクルを開始する。
【0072】
温冷サイクルは、シートヒータ35を所定の温時間Twm作動させるタームである温タームと、SVS36を所定の冷時間Tcl作動させるタームである冷タームを含む。温時間Twmは例えば3.5分や、4分、5分などである。冷時間Tclは、温時間Twmよりも短いことが好ましく、例えば3分や2.5分、1.5分などとすることができる。温時間Twmは3分から5分の中でユーザが設定可能に構成されていても良い。また、冷時間Tclは1.5分から3分の範囲でユーザが設定可能に構成されていても良い。温冷サイクルは1サイクルが例えば6.5分など、5分~7分程度に収まるように構成されている。温冷サイクルによれば、熱による血管の膨張と収縮を繰り返すポンプ作用により、血流が改善し、疲労緩和効果が期待できる。また、温冷サイクルの前にマッサージを行うことにより、温冷サイクルによる疲労回復効果を高める効果が期待できる。なお、温時間Twmや冷時間Tclが短すぎると、ポンプ作用が得られにくい。よって、疲労緩和の観点において温時間Twmは1分以上、冷時間Tclは30秒以上とすることが好ましい。
【0073】
温時間Twmにおいて駆動させるシートヒータ35は、腰部ヒータ35A、上部ヒータ35B、及び首ヒータ35Cの全てであってもよいし、一部であってもよい。例えば温冷サイクルで動作させるシートヒータ35は上部ヒータ35Bだけであってもよい。温時間Twmにおいて動作させるシートヒータ35は、所定の設定変更画面を介してユーザが指定可能に構成されていても良い。
【0074】
また、より好適な例として、疲労緩和制御部F52は、マッサージャ37やシートヒータ35、SVS36の駆動に連動させて、発光装置31を作動させる。例えば疲労緩和制御部F52は、マッサージャ37を駆動させている間は発光装置31に緑色のイルミネーションを点灯させる。また、疲労緩和制御部F52はシートヒータ35を駆動させているときには黄橙色(琥珀色)あるいはアンバー色のイルミネーションを、点灯箇所ごとの輝度が揺らぐように点灯させる。当該構成によれば、ドライバが視覚的に温熱を感じ、シートヒータ35が付与する温熱による疲労緩和効果の向上が期待できる。さらに疲労緩和制御部F52は、SVS36を駆動させている間は発光装置31に青色又は白色のイルミネーションを点灯させる。SVS36駆動時に青色又は白色の光を点灯/点滅させる構成によれば、視覚的な冷感を付与できることに加え、覚醒効果も期待できる。なお、疲労緩和時におけるイルミネーションは、眠気レベルが1のときのオプションとして実行されても良い。
【0075】
疲労緩和制御部F52は、疲労レベルが1に設定されている場合には上記制御態様を基本制御として例えば、各時刻に対応する疲労緩和刺激を出力するための制御信号を調停部F53に出力する。又は、覚醒支援制御部F51は調停部F53から指示されたモードで動作する。疲労緩和制御部F52と調停部F53の相互作用については別途後述する。
【0076】
調停部F53は、覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2との動作を調停する。調停部F53は、例えば、覚醒支援制御部F51が出力させようとする刺激の内容と、疲労緩和制御部F52が出力させようとしている刺激の内容とを比較し、両者が競合する所定関係にある場合には、疲労緩和刺激の出力を中止させたり、強度を弱めたりする。競合関係にある場合とは、例えば逆属性の刺激付加する場合がある。逆属性とは、例えば温熱の付与(つまり加温)と冷却である。なお、黄橙などの暖色系のイルミネーションと冷風/SVS36の駆動もまた、逆属性の関係に含めることができる。調停部F53の詳細については別途後述する。
【0077】
表示処理部F6は、HUD24又はディスプレイ23に、刺激制御装置1の動作状態や、認識しているドライバの状態、休憩提案などに係る画像を表示する。例えば表示処理部F6は、疲労レベルが1以上であると判定されている場合にはドライバが疲労状態にあることを示すアイコン画像をディスプレイ23に表示する。また、表示処理部F6は、眠気レベルが1以上であると判定されている場合には、眠気レベルに応じたアイコン画像をディスプレイ23に表示する。表示処理部F6は眠気レベルが3以上となった場合には、休憩提案にかかる画像をディスプレイ23又はHUD24に表示する。
【0078】
<調停部F53の作動例について>
調停部F53は、覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2の両方が動作する場合、換言すれば眠気レベルと疲労レベルの両方が1以上となる場合において、各システムの作動を調停する。
【0079】
調停の仕方としては例えば次のような方針(A)~(E)が挙げられる。
(A)疲労緩和システムSy2を停止させる。
(B)疲労緩和システムSy2の機能/動作を縮退させつつ両システムを駆動させる。
(C)各システムに共通属性の刺激のみを出力させる。
(D)各システムを動作させる時間帯を分ける。
(E)疲労緩和システムSy2の作動を変えずに、覚醒刺激の強度を強めるか、パターン継続時間を長くする。
【0080】
方針(B)には、出力されようとしている覚醒刺激と種類又は対象部位が同じ刺激を疲労緩和システムSy2が出力しようとしている場合には、覚醒支援システムSy1を優先させる方針(B1)が含まれる。また、眠気の要因となる疲労緩和刺激の出力を停止又は弱める方針(B2)も、方針(B)に含まれる。方針(C)は、各システムを交互に動作させることに対応する。方針(D)は、覚醒支援用時間を疲労緩和用時間よりも長めに設定するパターン(D1)と、覚醒支援用時間を疲労緩和用時間よりも短めに設定するパターン(D2)と、に区分することができる。覚醒支援用時間は、覚醒支援システムSy1を動作させる時間を指す。疲労緩和用時間は疲労緩和システムSy2を動作させる時間を指す。
【0081】
方針(A)や、(B)、(D1)、(E)は、疲労緩和システムSy2よりも覚醒支援システムSy1を優先させるべく、疲労緩和システムSy2の作動に制限をかける方針に相当する。疲労緩和よりも覚醒を優先させることにより、ドライバの眠気が高まることを抑制可能となる。また、何れの方針においても、競合する刺激が同時に出力される恐れを低減できる。それに伴いドライバに煩わしさを与える恐れも低減可能となる。
【0082】
<方針(A)を採用する場合の調停部F53について>
図8は、方針(A)に基づく、眠気レベルと疲労レベルの組み合わせに応じた、覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2の制御例を示す図である。眠気レベル及び疲労レベルがともに0である場合には、覚醒支援システムSy1及び疲労緩和システムSy2は作動しない。
【0083】
眠気レベルが0であり且つ疲労レベルが1である場合には、覚醒支援システムSy1は覚醒刺激を出力しようとしない。そのため、調停部F53は特段の調停処理を実施せず、疲労緩和システムSy2を通常通り動作させる。眠気レベルが1以上、且つ、疲労レベルが1である場合には、調停部F53は疲労緩和制御部F52の指示信号を無効化するか、あるいは、疲労緩和制御部F52に対して疲労緩和のための制御を停止するように指示する。これにより、眠気レベルが1以上の場合には疲労緩和システムSy2の動作は中止され、覚醒支援システムSy1のみが動作することとなる。疲労緩和システムSy2が停止することにより、マッサージや温熱が付与するリラックス効果によってドライバの眠気が高まることを抑制可能となる。或る疲労緩和刺激を出力させないといった表現には、疲労緩和制御部F52から出力された当該刺激の出力指示信号を調停部F53が無効化することと、調停部F53の制御により疲労緩和制御部F52が当該出力指示信号を出力しなくすることの両方が含まれる。
【0084】
<方針(B)を採用する場合の調停部F53について>
図9は方針(B)に基づく、眠気レベルと疲労レベルの組み合わせに応じた、覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2の制御例を示す図である。眠気レベルが1以上である場合には、眠気レベルの高さに応じて疲労緩和システムSy2の動作に制限をかける。
【0085】
例えば調停部F53は、方針(B1)に対応する制御として、疲労緩和刺激のうち覚醒刺激と刺激の種類が同じものに関しては出力しないように調停を行う。疲労緩和刺激と覚醒刺激とで刺激の種類が重なるものとしては、マッサージと振動、イルミネーションがある。また、シートヒータ35とSVS36による温冷サイクルと、空調装置34による冷風も同じ種類の刺激に該当する。種類が同じ刺激とは当該刺激を感受する感覚器が同じ刺激と解することができる。同じ種類の刺激が混在して出力されると、狙った効果が得られない可能性がある。特に、温熱と冷風のように、種類が同じであって属性が真逆のような2つの刺激が同時に出力されると、効果が弱まる可能性がある。
【0086】
そのような事情を踏まえ、調停部F53は、疲労レベル及び眠気レベルがともに1以上である場合には、マッサージャ37の駆動と、疲労緩和系のイルミネーション、及び温冷サイクルを停止させてもよい。疲労緩和系のイルミネーションとは、シートヒータ35やSVS36の駆動に連動したイルミネーションを指す。この場合、覚醒用の刺激パターンの実行スケジュールに応じて、覚醒刺激としての振動やイルミネーションがドライバに提供される。
図10は、覚醒支援制御部F51及び疲労緩和制御部F52によるイルミネーションの点灯指示に対する調停部F53の作動を概念的に示した図である。調停部F53は、同種類の刺激については、覚醒のための刺激を優先させて出力する。
【0087】
調停部F53による、覚醒刺激と種類が重複(衝突)する疲労緩和刺激の出力制限は、当該種類の覚醒刺激が出力される時間帯のみ適用されても良いし、眠気レベルが1以上である間は常に適用されても良い。ここでの出力制限は出力しないことを指す。
【0088】
また、調停部F53は、方針(B2)に対応する制御として、疲労レベルが1以上かつ眠気レベルが1の場合には調停部F53は、温冷サイクルの温時間Twmを所定量短くするとともに、冷時間Tclを長めに設定する。シートヒータ35が提供する温熱が、眠気の要因に該当するためである。また、眠気レベルが2以上の場合、調停部F53は、シートヒータ35の駆動を中止させる。疲労レベルが1以上かつ眠気レベルが2以上の場合、SVS36が間欠的に動作する。
【0089】
なお、調停部F53は、眠気レベルに応じて段階的にシートヒータ35の作動範囲を縮退させても良い。例えば調停部F53は、疲労レベルが1である状態において、眠気レベルが1の時には首ヒータ35Cのみ動作は中止させる一方、眠気レベルが2のときには上部ヒータ35Bと首ヒータ35Cを停止させてもよい。そのような制御態様は、眠気レベルが高くなるについて駆動させるシートヒータ35の数や、温熱を与える部位の面積を小さくする制御に相当する。
【0090】
また、調停部F53は、眠気レベルが1の時には上部ヒータ35Bと首ヒータ35Cの動作は中止させる一方、眠気レベルが2の時には全てのシートヒータ35の動作は中止させてもよい。このような調停制御は、眠気レベルが1のときは一部のシートヒータ35を停止させる一方、眠気レベルが2のときは全てのシートヒータ35を停止させる制御に相当する。なお、冷感を付与するSVS36は、空調装置34による冷風と同属性である。換言すればSVS36に関しては、覚醒刺激としての冷風と競合しない刺激を出力する装置である。そのため、SVS36に関しては間欠的な動作を許容しても良い。また、腰部ヒータ35Aに関しては、覚醒刺激としての冷風が吹き付けられる顔部から離れた部位(腰)に対して温熱を付与するため、仮に同時に印加されても相互の影響は少ない。故に、腰部ヒータ35Aに関しては、眠気レベルが2以上であっても温冷サイクルとしての間欠動作を継続させても良い。
【0091】
他の態様として調停部F53は、疲労レベルが1且つ眠気レベルが1の場合、疲労緩和システムSy2は基本動作で動作させる一方、覚醒支援システムSy1の動作を基本動作から変更しても良い。例えば、覚醒支援システムSy1に関しては、温タームの間は冷風以外の覚醒用アクチエーションを巡回的に出力させる。そして、冷タームとなったときに、所定のパターン継続時間Tp、冷風をフェイスモードで出力させても良い。当該構成によれば、一気に冷感を与えることができるため、さらなる覚醒効果が期待できる。また、温ターム中に空調装置34から冷風刺激が出力されることもないため、相反する刺激が同時に出力されることで、ドライバの快適性が損なわれる恐れも低減できる。なお、SVS36と空調装置34による冷風出力を同期させる場合には、ドライバの体が急速に冷えることを鑑みて、冷風を出力する時間は所定のパターン継続時間Tpよりも10秒ほど短くしても良い。
【0092】
<方針(C)を採用する場合の調停部F53について>
疲労緩和と覚醒とで共通する属性の刺激としては、例えば空調装置34による冷風とSVS36、マッサージャ37によるマッサージと振動発生器38による振動といった組み合わせが挙げられる。寒色系のイルミネーションもまた、疲労緩和と覚醒とで共通する属性の刺激煮含めることができる。調停部F53は、疲労レベル及び眠気レベルがともに1以上である場合には、覚醒支援制御部F51及び疲労緩和制御部F52から入力される、上述した共通属性の刺激の出力指示信号のみを後段に出力するように構成されていても良い。
【0093】
あるいは、調停部F53は、疲労レベル及び眠気レベルがともに1以上である場合には、覚醒支援制御部F51及び疲労緩和制御部F52に所定の指示信号を出力し、調停モードで動作させてもよい。覚醒支援制御部F51及び疲労緩和制御部F52は、調停モードにおいて、上述した共通属性の刺激だけを用いて覚醒支援のための制御と、疲労緩和のための制御を実行しうる。具体的には、覚醒支援制御部F51は、調停モード時、冷風と、振動と、タイプ1又はタイプ2のイルミネーションとを順番に出力しうる。疲労緩和制御部F52は、調停モード時、マッサージャ37を1回だけ、あるいは間欠的に駆動させうる。また、疲労緩和制御部F52は、調停モード時、SVS36を間欠的に駆動させてもよい。
図11は、方針(C)において覚醒支援制御部F51及び疲労緩和制御部F52が刺激出力元として動作させるデバイスとその動作態様をまとめたものである。振動の強さや、冷風の強さといった刺激の強度を構成するパラメータは、眠気レベルが高いほど大きく設定することができる。
【0094】
<方針(D)を採用する場合の調停部F53について>
図12は方針(D)に基づく、眠気レベルと疲労レベルの組み合わせに応じた、覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2の制御例を示す図である。眠気レベルと疲労レベルがともに1以上である場合には、調停部F53は、覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2を交互に動作させる。例えば
図12に示すTrfは、疲労緩和システムSy2を動作させる時間である疲労緩和用時間を表し、Tasは、覚醒支援システムSy1を動作させる時間である覚醒支援用時間を表す。
図12では覚醒支援用時間Tasを疲労緩和用時間Tfrよりも長く設定した場合を例示している。疲労緩和用時間Tfrは主として温冷サイクルの1周期の整数倍、例えば1倍に設定されることが好ましい。マッサージは初回のみ実施されても良いし、毎回実施されても良い。マッサージを行う場合、疲労緩和用時間Tfrは、温冷サイクルの1周期分の時間に、マッサージ時間Tmgを加算した値に設定されれば良い。覚醒支援用時間Tasは、疲労緩和用時間Tfrの1倍よりも長い範囲において、パターン継続時間Tpの整数倍となる長さに設定されうる。
【0095】
もちろん、他の態様として覚醒支援用時間Tasは疲労緩和用時間Tfrよりも短く設定されても良い。例えば、疲労レベルが2、眠気レベルが1である場合など、眠気レベルよりも疲労レベルのほうが高い場合には、疲労緩和用時間Tfrを覚醒支援用時間Tasよりも長く設定しても良い。また、眠気レベルが1である場合には疲労緩和用時間Tfrを覚醒支援用時間Tas以上に設定する一方、眠気レベルが2以上の場合には覚醒支援用時間Tasを疲労緩和用時間Tfrよりも長くしても良い。調停部F53は、眠気レベルが高くなるほど疲労緩和用時間Tfrを短くするように構成されていても良い。疲労緩和用時間Tfrを動的に変更する場合には、基本動作として設定されている温時間Twmと冷時間Tclの比率が維持されるように、各温/冷タームの長さが調整されることが好ましい。調停部F53は、疲労緩和用時間Tfrを短くするにつれて単位時間当りの発熱量や吸熱量が上がるように、シートヒータ35及びSVS36の制御目標値(出力)を変更しても良い。
【0096】
<方針(E)を採用する場合の調停部F53について>
方針(E)は、疲労緩和システムSy2を基本動作で動作させつつ、温熱によってドライバの眠気が上昇することを抑制するために、覚醒支援システムSy1の覚醒刺激の強度を強めるか、冷風の出力時間を長くするといった技術思想に対応するものである。覚醒刺激の強度調整やパターン継続時間の変更は、例えば調停部F53からの指示に基づき覚醒支援制御部F51が実行することができる。より具体的には、覚醒支援制御部F51は、調停部F53からの指示に基づき調停モードに設定されていることに基づいて以下の調整を行いうる。
【0097】
例えば覚醒支援制御部F51は、調停モード時、疲労レベルが1かつ眠気レベルが1である場合には、疲労レベルが0かつ眠気レベルが1である場合よりも、各刺激の強度を所定量(例えば1.2倍などに)高める。なお、疲労レベルが0かつ眠気レベルが1である場合とは、疲労緩和システムSy2が並列的に動作せずに、覚醒支援システムSy1が単独で動作する場合に対応する。また、例えば疲労レベルが1かつ眠気レベルが2である場合には、疲労レベルが0かつ眠気レベルが2である場合よりも、各刺激の強度を所定量高める。
【0098】
また、覚醒支援制御部F51は、疲労レベルが1かつ眠気レベルが1である場合には、疲労レベルが0かつ眠気レベルが1である場合よりも、パターン継続時間Tpを所定量(例えば10秒ほど)長くしても良い。覚醒支援制御部F51は、疲労レベルが1かつ眠気レベルが2である場合には、疲労レベルが0かつ眠気レベルが2である場合よりも、パターン継続時間Tpを所定量(例えば10秒ほど)長くしても良い。なお全ての刺激パターンについてパターン継続時間Tpを長くするのではなく、冷風の出力を含む刺激パターンだけを長くしてもよい。
【0099】
このように調停部F53は、2つのシステムが並列的に動作する場合には、覚醒支援システムSy1が単独で動作する場合よりも、覚醒刺激を強めたりパターン継続時間を延長したりしてもよい。当該制御態様によれば、疲労緩和システムSy2によってドライバの眠気レベルが上がる恐れを低減できる。
【0100】
<その他、刺激制御装置1の作動例>
上述した調停部F53の処理は、疲労緩和システムSy2が作動中に眠気レベルが0から1以上に判定された場合にも適用可能であるし、覚醒支援システムSy1が動作中において疲労レベルが0から1以上に判定された場合にも適用可能である。
【0101】
なお、疲労レベルが0から1に遷移した時点において既に眠気レベルが1以上である場合には、眠気レベルが0又は1になるまで、疲労緩和システムSy2の動作開始を保留にしても良い。調停部F53は、眠気レベルが1以上である場合には疲労緩和システムSy2の動作を中止する一方、眠気レベルが2から1に下がった場合や1から0に下がったことに基づいて、疲労緩和システムSy2を動作させても良い。
【0102】
表示処理部F6は、同乗者が存在する場合、同乗者からは見えにくい表示領域に、眠気レベルや疲労レベルの判定結果の画像を表示する。当該構成によれば、同乗者に不安を与えにくくできる。なお、同乗者からは見えにくい位置とは、例えばメータディスプレイやHUD24を指す。同乗者がいるか否かは、助手席又は後部座席の着座センサの検出信号に基づき特定可能である。つまり、運転席以外の座席に対応する着座センサの少なくとも何れかから、人間が着座していることを示す信号が入力されている場合には、同乗者がいるものとみなして、ドライバの状態の認識結果の表示先してHUD24又はメータディスプレイを採用する。なお、同乗者がいない場合、ドライバの状態の認識結果の表示位置は、任意であって例えばセンターディスプレイであってもよい。当該構成は同乗者の有無に応じてドライバ状態に対するシステムの認識結果の表示先を変更する構成に相当する。
【0103】
また、表示処理部F6は、疲労レベルが0である場合には眠気レベルが3となったことに基づいて休憩提案を実施する一方、疲労レベルが1以上である場合には眠気レベルが1又は2の状態であっても休憩提案を実施してもよい。このように通常は眠気レベルが3で休憩を促す一方、ドライバが疲労状態にある場合には休憩を促す眠気レベルを下げることで、早めに休憩を提案可能となる。それに伴い、ドライバが疲労と眠気がある状態で運転を継続するおそれを低減可能となる。
【0104】
統合制御部F5は、ユーザ指示に基づき、覚醒支援システムSy1及び疲労緩和システムSy2の動作状態を制御するように構成されていても良い。統合制御部F5は、覚醒支援システムSy1又は疲労緩和システムSy2の何れか一方を起動/停止させるためのユーザによる指示入力があった場合、ユーザの指示を優先させるものとする。例えば、統合制御部F5は、覚醒支援システムSy1又は疲労緩和システムSy2を動作させるための操作信号を取得した場合には、眠気レベルや疲労レベルの判定値に関わらず、指示されたシステムを駆動させうる。
【0105】
より具体的には、統合制御部F5は、入力装置22から覚醒支援システムSy1の起動指示信号が入力された場合には、眠気レベルや疲労レベルの判定値に関わらず、覚醒支援システムSy1を動作させる。その際、疲労緩和システムSy2が動作中であった場合には疲労緩和システムSy2を停止させても良い。
【0106】
また、統合制御部F5は、入力装置22から疲労緩和システムSy2の起動指示信号が入力された場合には、眠気レベルや疲労レベルの判定値に関わらず、疲労緩和システムSy2を動作させる。その際、覚醒支援システムSy1が動作中であった場合には覚醒支援システムSy1を停止させても良い。あるいは、覚醒支援システムSy1の動作を弱めるなど、調停モードで動作させてもよい。
【0107】
さらに、統合制御部F5は、疲労緩和システムSy2が動作中において、疲労緩和システムSy2に対する停止指示信号が入力された場合には、疲労レベルの判定値に関わらず、疲労緩和システムSy2を停止させる。覚醒支援システムSy1についても同様である。
【0108】
なお、或るシステムの起動指示信号とは、当該システムを駆動させるための操作が行われたことを示す操作信号に相当する。或るシステムの停止指示信号とは、当該システムの駆動を停止させるための操作が行われたことを示す操作信号に相当する。起動指示信号や停止指示信号は、入力装置22に対するユーザの操作又は発話に基づいて、入力装置22から刺激制御装置1に入力される。
【0109】
このように統合制御部F5は、覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2のどちらかの起動指示信号が入力された場合や、どちらかに対する停止指示信号が入力された場合は、ドライバの希望を最優先とする。このようにドライバの希望を最優先とすることにより、ドライバの利便性又は快適性を向上させることができる。また、統合制御部F5が眠気レベルや疲労レベルを誤判定している場合には、ドライバの指示操作に基づきシステム挙動を修正可能となる。
【0110】
統合制御部F5は、眠気レベルが2又は3以上と判定している状態において、覚醒支援システムSy1に対する停止指示信号が入力された場合、覚醒支援システムSy1の停止前/後において、眠気報知処理を実施してもよい。眠気報知処理は、高い眠気を検知していることを知らせる画像表示又は音声出力を出力する処理に相当する。具体的には、刺激制御装置1は、覚醒支援システムSy1を停止する前に「眠気が高いようです。覚醒支援システムを停止してもよろしいですか?」のアナウンスを行うことで、ドライバに覚醒支援システムSy1の作動の停止/継続を選択する機会を設けてもよい。また、ドライバの指示操作に基づき覚醒支援システムSy1を停止させた後は、「眠気が高いようですので、早めに休憩してください」等のアナウンスを行うとともに、ディスプレイ23/HUD24の画面に休憩しましょうとのアイコンを出しても良い。これにより、眠気レベルが高い状態の時に、覚醒支援システムSy1を停止した場合でも安全運転を促すことができる。
【0111】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の補足や変形例などは、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、以上で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については上記説明を適用することができる。
【0112】
以上では運転席の乗員(つまりドライバ)に対して覚醒刺激を付加したり、疲労緩和刺激を付加したりする構成について述べたが、刺激の付与対象は、助手席乗員や後部座席の乗員であってもよい。つまり、本開示は、助手席や後部座席に適用されても良い。本開示を助手席に適用する場合、上記のドライバとの記載は、助手席乗員に置き換えて実施することができる。本開示は、運転席と助手席の両方に並列的に適用することもできる。後部座席についても同様である。
【0113】
以下、一例として助手席乗員に対して覚醒支援と疲労緩和を実施可能なシステムにおける調停部F53の制御態様の一例について述べる。以下の説明は、後部座席の乗員に対しても同様に適用可能である。
【0114】
前述の眠気判定部F3は、助手席乗員の顔画像などの生体情報に基づき、助手席乗員の眠気レベルを判定する。また、疲労判定部F4は、助手席乗員の生体情報に基づいて助手席乗員の疲労レベルを判定する。覚醒支援システムSy1や疲労緩和システムSy2は、助手席乗員にもドライバ同様に種々の刺激を印加可能に構成されている。例えば助手席にもシートヒータ35やSVS36が設けられている。
【0115】
調停部F53は、助手席乗員の疲労レベルが0から1に遷移した時点において助手席乗員の眠気レベルが1以上である場合には、疲労緩和システムSy2を優先的に実施させてもよい。また、調停部F53は、助手席乗員の疲労レベルが0から1に遷移した時点において眠気レベルが1以上である場合には、助手席のシートヒータ35を駆動させて眠気を促進させても良い。助手席乗員は、必ずしも起き続ける必要はないためである。助手席乗員に対する覚醒支援システムSy1と疲労緩和システムSy2の調停方針として、疲労緩和と覚醒支援のどちらを優先させるかは、予め登録されていても良い。また、HUD24等を用いてドライバに選択肢を提示することにより、ドライバが入力装置22を介し、疲労緩和と覚醒支援のどちらを優先させるかを選択可能に構成されていても良い。
【0116】
仮に助手席乗員に対する各種刺激出力の調停方針として、覚醒支援を優先させるよう設定されている場合には、眠気レベルが所定値未満(例えば0)に下がった場合に、疲労緩和システムSy2を動作させることができる。疲労緩和システムSy2を動作制限を解除する眠気レベルは0であってもよいし1であってもよい。
【0117】
なお、ドライバと助手席乗員の両方の眠気レベルが1以上である場合には、助手席乗員に対しても覚醒支援を優先させるように構成されていても良い。助手席乗員の覚醒状態を維持する制御によれば助手席乗員との対話によってドライバの眠気レベルを低減(改善)する効果が期待できるためである。一方、ドライバの眠気レベルが0である状態において、助手席乗員の眠気レベルが1以上且つ疲労レベルが1となった場合には、助手席乗員に対して疲労緩和システムSy2を優先的に動作させても良い。このようにドライバの眠気レベルに応じて助手席乗員に対する調停方針として、疲労緩和と覚醒支援のどちらを優先させるかを切り替えても良い。
【0118】
なお、ドライバと助手席乗員の眠気レベルがともに2の状況で、助手席乗員に疲労緩和システムSy2を作動させる場合、助手席乗員には眠くなりにくい態様で疲労緩和にかかる刺激を付加することが好ましい。助手席乗員が起きている時間を伸ばすことで、対話によるドライバの覚醒が期待できるためである。なお、眠くなりにくい疲労緩和とは、例えば温刺激の出力停止や、温タームの短縮、温タームにおいて駆動させるシートヒータ35の削減などが挙げられる。
【0119】
<付言>
本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。例えば刺激制御装置が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。プロセッサ(演算コア)としては、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)などを採用可能である。また、刺激制御装置が備える機能の一部又は全部は、複数種類の演算処理装置を組み合わせて実現されていてもよい。刺激制御装置が備える機能の一部又は全部は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)や、FPGA、ASICなどを用いて実現されていても良い。FPGAはField-Programmable Gate Arrayの略である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。
【0120】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていてもよい。プログラムの保存媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、SD(Secure Digital)カード等を採用可能である。
【0121】
上述した刺激制御装置の他、当該刺激制御装置を構成要素とするシステムなど、種々の形態も本開示の範囲に含まれる。例えば、コンピュータを刺激制御装置として機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1 刺激制御装置、21 DSM(生体センサ)、22 入力装置、23 ディスプレイ(表示装置)、24 HUD(表示装置)、34 空調装置、35 シートヒータ、36 SVS、361 送風機、F1 操作信号取得部、F2 センサ情報取得部、F3 眠気判定部、F4 疲労判定部、F5 統合制御部、F6 表示処理部、F51 覚醒支援制御部、F52 疲労緩和制御部、F53 調停部、Sy1 覚醒支援システム(覚醒支援部)、Sy2 疲労緩和システム(疲労緩和部)