(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179112
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】伸縮可能電線
(51)【国際特許分類】
H01B 7/06 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H01B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086372
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】森内 英輝
【テーマコード(参考)】
5G311
【Fターム(参考)】
5G311BA03
5G311BB01
5G311BB05
5G311BB06
5G311BC01
(57)【要約】
【課題】 十分に変形できるとともに、耐久性を有する電線を提供する。
【解決手段】 伸縮方向に伸縮可能に形成された導電性を有する導電体と、
弾性変形可能に連続的に形成され、前記導電体が接合された第1の接合点と、前記第1の接合点から前記伸縮方向に離隔し前記導電体が接合された第2の接合点と、を有する可撓体と、を備え、
前記第1の接合点から前記第2の接合点までの前記導電体に沿った第1の最短長さが、前記第1の接合点から前記第2の接合点までの前記可撓体に沿った第2の最短長さよりも長い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮方向に伸縮可能に形成された導電性を有する導電体と、
弾性変形可能に連続的に形成され、前記導電体が接合された第1の接合点と、前記第1の接合点から前記伸縮方向に離隔し前記導電体が接合された第2の接合点と、を有する可撓体と、を備え、
前記第1の接合点から前記第2の接合点までの前記導電体に沿った第1の最短長さが、前記第1の接合点から前記第2の接合点までの前記可撓体に沿った第2の最短長さよりも長い、伸縮可能電線。
【請求項2】
前記導電体は、前記第1の接合点から前記第2の接合点までの間に、湾曲する湾曲部又は屈曲する屈曲部の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の伸縮可能電線。
【請求項3】
前記湾曲部は、前記伸縮方向に対して垂直な方向に湾曲し、
前記屈曲部は、前記伸縮方向に対して垂直な方向に屈曲する、請求項2に記載の伸縮可能電線。
【請求項4】
前記第1の接合点から前記第2の接合点までを単位伸縮部として、複数の単位伸縮部を前記伸縮方向に有する請求項1に記載の伸縮可能電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
容易に変形できる伸縮可能電線に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮可能電線は、ロボットなどの可動部を有する各種の装置の配線に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際第2008/078780号公報
【特許文献2】特開2009-266401号公報
【特許文献3】特開2014-229568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伸縮可能電線は、可動部を有する各種の装置の配線に用いられる。このため、可動部の様々な動きとともに、電気的接続を維持しつつ伸縮可能電線も変形できる必要がある。可動部の動きは、繰り返される場合が多く、可動部の動きに伴って伸縮可能電線も繰り返し変形できる必要がある。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、十分に変形できるとともに、耐久性を有する電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による伸縮可能電線の特徴は、
伸縮方向に伸縮可能に形成された導電性を有する導電体と、
弾性変形可能に連続的に形成され、前記導電体が接合された第1の接合点と、前記第1の接合点から前記伸縮方向に離隔し前記導電体が接合された第2の接合点と、を有する可撓体と、を備え、
前記第1の接合点から前記第2の接合点までの前記導電体に沿った第1の最短長さが、前記第1の接合点から前記第2の接合点までの前記可撓体に沿った第2の最短長さよりも長いことである。
【発明の効果】
【0007】
十分に変形できるとともに、耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1の積層構造を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【
図3】第2の実施の形態による伸縮可能電線10-2の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【
図4】第3の実施の形態による伸縮可能電線10-3の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【
図5】第4の実施の形態による伸縮可能電線10-4の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【
図6】第5の実施の形態による伸縮可能電線10-5の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【
図7】第6の実施の形態による伸縮可能電線10-6の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【
図8】第7の実施の形態による伸縮可能電線10-7の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【
図9】第8の実施の形態による伸縮可能電線10-8の組み立て前の断面を示す断面図(a)と、組み立て後の断面を示す断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<<<本実施の形態の概要>>>>
<<第1の実施の態様>>
伸縮方向に伸縮可能に形成された導電性を有する導電体と、
弾性変形可能に連続的に形成され、前記導電体が接合された第1の接合点と、前記第1の接合点から前記伸縮方向に離隔し前記導電体が接合された第2の接合点と、を有する可撓体と、を備え、
前記第1の接合点から前記第2の接合点までの前記導電体に沿った第1の最短長さが、前記第1の接合点から前記第2の接合点までの前記可撓体に沿った第2の最短長さよりも長い、伸縮可能電線が提供される。
【0010】
伸縮可能電線は、導電体と可撓体とを備える。
【0011】
導電体は、導電性を有する。導電体は、電流を流れる媒体であればよい。導電体は、伸縮方向に伸縮可能に形成されている。導電体は、伸縮可能であればよく、例えば、繊維で構成されたり、箔やフィルム状や線状などの連続体で構成されたりすることができる。さらには、全体が導電性を有する必要はなく、一部が導電性を有するものでもよい。例えば、樹脂を基材として表面に導電性を有する物質で被覆したものでもよい。導電体は、金属繊維構造体であるものが好ましい。
【0012】
可撓体は、弾性変形可能に連続的に形成されている。連続的とは、可撓体のいずれかの箇所が連結又は接続されて連続していればよく、全体的、全面的に連続している必要はない。例えば、可撓体が繊維や網目などで構成されていてもいずれかの箇所が連結又は接続されていればよい。
【0013】
可撓体は、第1の接合点と第2の接合点とを有する。第1の接合点は、可撓体と導電体とが接合された第1の箇所である。第2の接合点は、第1の接合点から前記伸縮方向に離隔した第2の箇所である。第2の接合点は、可撓体と導電体とが接合された第2の箇所である。
【0014】
なお、接合は、接触とは異なる。接合は、つなぎあわされた状態であり、接触は、近づきふれることである。接合は、恒久的、半恒久的につなぎあわされた状態が維持される。接触は、相対的に移動して、一時的に近づいて触れるだけであり、離れることが前提である。第1の接合点と第2の接合点とが形成された後に、可撓体と導電体とが近づいて一時的にふれるものは、接合点ではない。
【0015】
第1の接合点と第2の接合点との間には、他の接合点は存在しない。伸縮変形の過程などで、第1の接合点と第2の接合点との間で一時的、偶発的に接触することがあっても、接合点は存在しない。
【0016】
第1の接合点から第2の接合点までの長さは、導電体に沿った第1の長さと可撓体に沿った第2の長さとの2種類がある。第1の長さのうちの最短の長さを第1の最短長さとする。第2の長さのうちの最短の長さを第2の最短長さとする。第1の最短長さは第2の最短長さよりも長い。最短長さは、二点間を結ぶ曲線のうちで、もっとも短い長さである。導電体が可撓体に対して迂回する形状を有するものであれば、第1の最短長さは第2の最短長さよりも長い。
【0017】
このように構成することによって、可撓体が弾性変形、伸縮変形などの変形に伴って、導電体も変形することができる。導電体の一部のみが可撓体に接合されているので、可撓体が変形する際に、導電体の変形の自由度を高めることができる。
【0018】
<<第2の実施の態様>>
第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、
前記導電体は、前記第1の接合点から前記第2の接合点までの間に、湾曲する湾曲部又は屈曲する屈曲部(例えば、後述する突条部110及び溝部120など)の少なくとも一方を有する。
【0019】
湾曲部や屈曲部が広がったり狭まったりすることで、導電体が伸縮することができる。可撓体の変形に伴って導電体が円滑に変形することができる。湾曲部や屈曲部によって、変形するための余地や余裕(伸び代)を形成することができる。
【0020】
湾曲部や屈曲部は、第1の接合点と第2の接合点との間に少なくとも1つ存在する。第1の接合点と第2の接合点との間に複数個が存在してもよい。
【0021】
<<第3の実施の態様>>
第3の実施の態様は、第2の実施の態様において、
前記湾曲部は、前記伸縮方向に対して垂直な方向に湾曲し、
前記屈曲部は、前記伸縮方向に対して垂直な方向に屈曲する。
【0022】
湾曲部や屈曲部は、伸縮方向に対して垂直な方向に凸又は凹に変形している。伸縮に応じて凹凸の程度を変えることで、湾曲部や屈曲部が広がったり狭まったりでき、導電体が円滑に伸縮することができる。
【0023】
<<第4の実施の態様>>
第4の実施の態様は、第1の実施の態様において、
前記第1の接合点から前記第2の接合点までを単位伸縮部として、複数の単位伸縮部を前記伸縮方向に有する。
【0024】
複数の単位伸縮部を有することで、全体的に大きく伸縮することが可能となる。
【0025】
<<他の態様>>
導電体は、導電性を有する金属繊維構造体を少なくとも含む構成が好ましい。すなわち、導電体は、金属繊維構造体のみを有する構成のみならず、金属繊維構造体と他の構造体などとを有する構成にすることができる。他の構造体は、導電性を有しても有しなくてもよい。導電性を有する構造体と併用することで、電気伝導率を高めたり、熱伝導率を調節したりすることができる。具体的には、金属繊維構造体と金属箔と積層させた構造や、金属繊維構造体に金属箔を部分的に重ねた構造などにすることができる。金属箔だけでなく、導電体は、他の電気伝導体と併用することができる。また、導電性を有しない構造体を併用した場合には、強度をさらに高めたり、絶縁性を高めたりすることができる。
【0026】
可撓体がシリコーンであるのが好ましい。
【0027】
導電体と可撓体とを接合するための接合体をさらに備えるのが好ましい。
【0028】
接合体は、ゴムであるのが好ましい。
【0029】
接合体は、シリコーンゴムであるのが好ましい。
【0030】
接合体が占める面積の比は、厚み方向について1%~70%であるのが好ましい。
【0031】
接合体が占める面積の比は、伸縮方向について10%~80%であるのが好ましい。
【0032】
<<<<本実施の形態の詳細>>>>
以下に、第1の実施の形態~第8の実施の形態について図面に基づいて説明する。まず、第1の実施の形態~第8の実施の形態で共通する構成及び定義などについて説明する。
図1は、第1の実施の形態~第8の実施の形態で共通する構成を示す伸縮可能電線10-1~10-8の概要を示す斜視図である。第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1~第8の実施の形態による伸縮可能電線10-8は、共通して導電体100及び弾性可撓性体200を有する。導電体100及び弾性可撓性体200は、第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1~第8の実施の形態による伸縮可能電線10-8において、共通する構成及び機能を有する。なお、
図1では、明瞭のため、弾性接合体300-1~300-8を省略して示した。
【0033】
後述するように、第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1は、弾性接合体300-1を有し、第2の実施の形態による伸縮可能電線10-2は、弾性接合体300-2を有し、第3の実施の形態による伸縮可能電線10-3は、弾性接合体300-3を有し、第4の実施の形態による伸縮可能電線10-4は、弾性接合体300-4を有し、第5の実施の形態による伸縮可能電線10-5は、弾性接合体300-5を有し、第6の実施の形態による伸縮可能電線10-6は、弾性接合体300-6を有し、第7の実施の形態による伸縮可能電線10-7は、弾性接合体300-7を有し、第8の実施の形態による伸縮可能電線10-8は、弾性接合体300-8を有する。第1の実施の形態~第8の実施の形態において、弾性接合体300-1~弾性接合体300-8による接合の態様が互いに異なる。以下では、伸縮可能電線10-1~10-8を区別する必要がない場合には、簡便のため、単に伸縮可能電線10と称する。弾性接合体300-1~300-8を区別する必要がない場合には、簡便のため、単に弾性接合体300と称する。
【0034】
<<<導電体100>>>
導電体100は、各種の電気信号を伝える導線(電線)として機能する。電気信号は、制御信号や駆動信号などがある。電気信号は、直流でも交流でもパルス信号でも所望する波形の信号にすることができる。なお、導電体100は、電流を流すことで熱を発する発熱体として機能させてもよい。導電体100が有する抵抗値などによって適宜に使用を定めればよい。
【0035】
<導電体100の形態>
【0036】
導電体100は、平板状、薄板状、箔状の形状を有し、可撓性を有する導電性素材から構成される。導電体100は、電気的接続を維持しつつ変形可能な導電性素材から構成されればよい。特に、導電体100は、電気的接続を維持しつつ変形容易な導電性素材から構成されるのが好ましい。導電体100の変形は、塑性変形でも弾性変形でもよく、電気的接続を維持しつつ変形するものであればよい。電気的接続は、変形する前の変形前の状態、変形が進行している変形過程状態、変形した後の変形後の状態のいずれの状態でも、途切れることなく形成されている。
【0037】
さらに、導電体100は、電気的接続を維持しつつ伸縮変形など繰り返し変形できる導電性素材から構成されるのが好ましい。例えば、導電体100は、金属繊維構造体から構成されることができる。金属繊維構造体の詳細については、後述する。導電体100の厚さは、電気的接続を維持しつつ変形可能であれば、いかなるものでもよい。
【0038】
導電体100は、長尺な形状を有する。導電体100を、いわゆるシールドケーブルなどの導電線として機能させることができる。導電体100をシールドケーブルなどに用いる場合には、導電体100は、内部導体に使用しても外部導体に使用してもよい。
【0039】
図1などに示すように、導電体100は、予め湾曲した形状や屈曲した形状を有する。予めとは、伸縮可能電線10-1などが、伸張や湾曲など変形していない自然な状態や初期状態をいう。導電体100は、周期的に湾曲したり屈曲したりしている形状を有する。例えば、導電体100は、コルゲート状の形状や蛇腹状の形状を予め有する。コルゲート状とは、断面形状が波状に形成された形状である。蛇腹状は、山折り部分と谷折り部分とが繰り返し形成された構造を有する。
【0040】
導電体100の形状は、コルゲート状の形状や蛇腹状の形状に限られない。導電体100は、突条部110と溝部120とが隣り合って繰り返す形状を有するものであればよい。突条部110は、突出した筋状の形状や、畦状の形状などの形状を有し、断面が凸状の形状を有する。溝部120は、断面が凹状の形状を有する。例えば、突条部110は、断面が逆U字状や逆V字状や逆馬蹄形状や逆Ω状の形状を有する。溝部120は、断面がU字状やV字状や馬蹄形状やΩ状の形状を有する。逆Ω状やΩ状は、中心角が180度より大きい円弧や楕円弧など湾曲線をいう。
【0041】
特に、突条部110の断面形状を逆馬蹄形状や逆Ω状にし、溝部120の断面形状を馬蹄形状やΩ状にすることにより、長手方向(後述する)だけでなく、厚み方向(後述する)にも、導電体100を湾曲させたり屈曲させたりできる。このため、導電体100に沿った長さ(導電体100自体が有する長さ)を長くできる。導電体100が伸張できる余裕を持たせて、導電体100の伸張度を高めることができ、伸縮可能電線10-1をより長く伸ばすことが可能となる。また、伸縮動作に対する耐久性にも優れる。
【0042】
突条部110及び溝部120の繰り返しの波長(周期)は、一定でも不規則でも徐々に変化するものでもよい。波長は、隣り合う2つの突条部110の頂点を結ぶ長さや、隣り合う2つの溝部120の底部を結ぶ長さなどにすることができる。突条部110及び溝部120の振幅も、一定でも不規則でも徐々に変化するものでもよい。振幅は、隣り合う突条部110の頂点と溝部120の底部との差などにすることができる。
【0043】
溝部120は、後述する弾性可撓性体200に近づく方向に変位する領域である。突条部110は、弾性可撓性体200から離れる方向に変位する領域である。
【0044】
<<方向の定義>>
<波長方向WL(主として伸縮可能な方向)>
突条部110及び溝部120が繰り返される方向(
図1に示す矢印WL)を、波長方向と称する。導電体100は、突条部110及び溝部120が繰り返される方向に沿って伸縮することができ、波長方向は、伸縮方向や長手方向と称することもできる。導電体100は、波長方向に沿って延在する。導電体100は、波長方向に沿って、突条部110及び溝部120が繰り返し形成され、うねった形状を有する。
【0045】
<波面方向WS>
突条部110及び溝部120の同じ位相(同じ高さや同じ深さ)を結んで形成される方向(
図1に示す矢印WS)を、波面方向と称する。波面方向は、非伸縮方向や短手方向や幅方向と称することもできる。突条部110及び溝部120の波面方向に沿った長さは、適宜に定めることができる。各種のケーブルなどの一般的な形状に合わせて定めればよい。
【0046】
<積層方向ML(厚さ方向)>
後述するように、伸縮可能電線10-1などは、導電体100と弾性可撓性体200とが重ねられて構成される。重ねられた方向(
図1に示す矢印ML)を積層方向と称する。また、積層方向は、伸縮可能電線10-1や弾性可撓性体200などの厚さの方向であるので、厚さ方向とも称することができる。
【0047】
<導電体100の材料>
導電体100の材料は、必要とされる抵抗率や、耐電圧、耐電流などの各種の電気的特性に応じて、適宜に定めればよい。導電体100としては、変形可能で導電性を有する材料とすればよく、従来公知の電線、金属箔等を使用可能であるが、導電体100は、金属繊維体を含む導電構造体を有することが好ましい。
【0048】
以下、金属繊維体を含む導電構造体を有する導電体100について詳述する。金属繊維体は、以下に示す態様であってもよいし、導電体の一部に金属繊維体が用いられる態様であってもよい。
【0049】
導電体100は、単独組成の金属繊維で構成されていてもよく、2種類以上の金属繊維を併用して構成されていてもよい。または、有機物繊維の周りを金属で被覆された金属被覆繊維あるいは金属被覆繊維を含有する構造体で構成されていてもよい。
【0050】
金属被覆繊維は、金属被覆された有機物繊維を抄紙してから繊維間を融着してもよく、有機物繊維を抄紙してから金属被覆してもよい。
【0051】
本発明において「金属繊維」とは、金属を主成分とする繊維を意味する。例えば「銅繊維」とは、銅を主成分とする繊維を意味する。銅を主成分とするとは、不可避的不純物を含め、本発明の効果を妨げない限り、その他の成分を一定量含んでいてもよい状態を意味する。
【0052】
金属繊維を構成する金属成分としては、銅、ステンレス、鉄、アルミニウム、ニッケル、及びクロム等が挙げられるが特に制限されない。前記金属成分は、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、及びオスミウム等の貴金属であってもよい。これらの中でも金属繊維を構成する金属成分としては、銅、ステンレス、及びアルミニウムが好ましい。特に、銅繊維は、剛直性と塑性変形性とのバランスに優れるため好ましい。
【0053】
金属以外の成分としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル樹脂、アラミド樹脂、ナイロン、及びアクリル樹脂、並びにこれらの繊維状物等の結着性、及び担持性を有する有機物等が挙げられる。これらの有機物は、例えば導電体100を作製する時の形態維持性、及び機能性を補助・向上させるため等に用いることができる。
【0054】
導電体100をなす金属繊維は部分的に結着されている。金属繊維が結着されているとは、金属繊維同士が物理的に固定され、結着部を形成していることを意味する。導電体100は、金属繊維同士が結着部で直接的に固定されていてもよいし、金属繊維の一部同士が、上記金属成分以外の成分を介して間接的に固定されていてもよい。
【0055】
例えば、金属繊維が焼結されて結着していると、導電体100の熱伝導性、及び均質性が安定し、ひいては優れた屈曲性及び耐断線性を得やすい。
【0056】
複数の金属繊維が結着されていると、金属繊維間に空隙が形成され得る。導電体100が結着による複数の固定部と、当該空隙を備えることにより、導電体100をなす金属繊維が変形し、これにより伸縮可能電線10-1自体が変形、収縮、または伸長でき、優れた屈曲性を得ることができる。
【0057】
導電体100のシート抵抗率は伸縮可能電線10-1の通電条件によって設計されるものであり、限定されないが、100mΩ/□以下であることが好ましく、より好ましくは50mΩ/□以下、さらに好ましくは30mΩ/□以下、そして最も好ましくは10mΩ/□以下である。導電構造体のシート抵抗率が100mΩ/□以下であれば、伸縮可能電線10-1に通電した際の発熱を抑え易い。
【0058】
導電体100の構造は、帯状であることが好ましい。例えば、帯状の導電体100は、金属繊維がランダムに結着している不織布であってもよく、規則性を有する織布、又はメッシュ材であってもよい。
また、導電体100の表面は、平らであってもよく、コルゲート加工等が施され、凹凸を有していてもよく、特に制限されない。
【0059】
また、導電体100の鉛直方向の厚みは、0.005mm~10mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下、そして最も好ましくは0.5mm以下である。導電体100の厚みが0.005mm以上であれば、伸縮可能電線10-1が変形した場合であっても断線し難い。導電体100の厚みが10mm以下であれば、優れた屈曲性を得やすい。
【0060】
導電体100の厚みは、後述するプレス工程で適宜調整することができる。
【0061】
導電体100の坪量は、10g/m2~1,000g/m2の範囲であることが好ましい。導電体100の坪量が10g/m2以上であれば、所定の厚さを得ることができ、断線し難い。導電体100の坪量が1,000g/m2以下であれば、導電体100を軽量化しやすくなり、ひいては伸縮可能電線10-1を軽量化しやすい。
【0062】
金属繊維の平均繊維径は、本発明の効果を損なわない範囲で任意に設定することができる。金属繊維の平均繊維径は、0.1μm~100μmであることが好ましく、0.5μm~50μmであることがより好ましく、1~30μmであることがさらに好ましい。金属繊維の平均繊維径が0.1μm以上であれば、適度な導電金属繊維の剛直性が得られるため、導電体100を製造する際に所謂ダマが生じ難い。ダマが生じないと、導電体100の均質性が安定し易い。これにより優れた屈曲性及び耐断線性を得やすい。金属繊維の平均繊維径が30μm以下であれば、適度な金属繊維の剛直性が得られるため、繊維の絡まりが発生し難い。
【0063】
金属繊維の長手方向に垂直な断面の形状は、任意の形状とすることができる。かかる断面の形状は、例えば、円形、楕円形、略四角形、及び不定形等のいずれの形状であってもよい。
【0064】
金属繊維の平均繊維長は、本発明の効果を損なわない範囲で任意に設定することができる。金属繊維の平均繊維長は、0.1mm~10mmの範囲であることが好ましく、0.3mm~5mmの範囲であることがより好ましく、0.5~3mmであることがさらに好ましい。金属繊維の平均繊維長が0.1mm~10mmの範囲であれば、導電体100を抄造により得る場合であっても、均質性が安定しやすい。
【0065】
金属繊維のアスペクト比は、10~10,000であることが好ましい。アスペクト比が10以上であれば、金属繊維同士を部分的に結着し易く、伸縮可能電線10-1の適度な強度を保つことができる。一方、アスペクト比が10,000以下であれば、導電体100の優れた均質性を得やすく、ひいては優れた屈曲性を得易い。
【0066】
導電体100の占積率は、70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。占積率が70%以下であれば、導電体100の柔軟性を維持できる。
【0067】
導電体100の1cm2当たりのJIS Z8101に規定する坪量の変動係数(CV値)は、10%以下であることが好ましい。坪量は、単位体積当たりの重量を示す指標であるから、坪量の変動係数が一定の値以下であることは、導電体100の占積率についても安定した値であるといえる。すなわち、導電体100の坪量の変動係数が10%以下であれば、導電体100に極端なサイズのダマ、及び空隙が存在しにくく、導電体100の均質性が優れ、伸縮可能電線10-1の優れた屈曲性及び耐断線性を得やすい。
【0068】
<<<弾性可撓性体200>>>
弾性可撓性体200は、大きく弾性変形できる弾性係数(弾性率)を有する。さらに、弾性可撓性体200は、弾性接合体300との接合性が高いものが好ましい。例えば、弾性可撓性体200は、液状状態の弾性接合体300との濡れ性や親和性が高いものが好ましい。弾性接合体300は、硬化後のゴム硬度が低く圧縮性に優れた弾性係数(弾性率)を有するものが好ましい。弾性接合体300は、弾性可撓性体200との接合性が高いとともに、導電体100との接合性が高いものが好ましい。伸縮可能電線10は、弾性変形したり撓んだりする。伸縮可能電線10の弾性変形や撓みの程度や傾向に応じて、弾性可撓性体200、弾性接合体300の引張弾性率、剪断弾性率、体積弾性率などの各種の弾性係数(弾性率)を適宜に定めればよい。伸縮可能電線10の製造工程については、後で詳述する。
【0069】
弾性可撓性体200及び弾性接合体300は、可撓性や弾性を有する。伸縮可能電線10の全体が、弾性変形したり撓んだりすることができる。伸縮可能電線10の全体が、弾性変形できるので、伸縮変形することができる。また、伸縮可能電線10の全体が、撓むことができるので、全体的に撓ったり曲がったりすることができる。
【0070】
弾性可撓性体200及び弾性接合体300は、非導電性(誘電性、絶縁性)を有する。導電体100は、弾性接合体300によって弾性可撓性体200に接合された状態となって保持される(
図1及び
図2参照)。弾性接合体300による接合の態様は、後で詳述する。
【0071】
<弾性可撓性体200の形態>
弾性可撓性体200は、製造工程における下層や基部として機能する。弾性可撓性体200は、自然状態で、薄いフィルム状や板状の形状を有するのが好ましい。弾性可撓性体200は、自然状態で、直方体状や四角柱状の形状を有してもよい。弾性接合体300によって接合されたときには、弾性可撓性体200は、導電体100を安定的に保持する保持部材として機能する。また、導電体100の伸縮状態は、弾性可撓性体200の伸縮に従って定められ、弾性可撓性体200は伸縮制御部材として機能する。
【0072】
<<<弾性接合体300>>>
弾性接合体300は、製造工程においては、溶融した状態のときに接着剤として機能する。弾性接合体300が硬化したときには、導電体100と弾性可撓性体200とを接合し、導電体100を保持する。
【0073】
<弾性可撓性体200及び弾性接合体300の材料>
弾性可撓性体200及び弾性接合体300の材料としては、絶縁性及び柔軟性を有する公知の樹脂材料とすることができる。
【0074】
例えば、ポリメタクリル酸、及びポリシアノアクリル酸(ポリシアノアクリレート)等のポリアクリル酸樹脂;ポリビニルピロリドン樹脂;ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリイミド樹脂;アラミドを含むポリアミド樹脂;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等を挙げることができる。これら樹脂は1種類で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0075】
これらの中でも、導電体100が変形した際の追随性を考慮すると、シリコーンまたはフッ素系樹脂またはアクリルゴムなどが好ましい。
【0076】
弾性可撓性体200及び弾性接合体300は、各々異種の材料としてもよいが、2つ以上または全てを同種の材料としてもよい。
【0077】
<<<導電体100の配置及び伸縮可能電線10の作製>>>
導電体100は、弾性可撓性体200上に配置されている。導電体100及び弾性可撓性体200は、長尺な形状を有する。導電体100の長手方向が、弾性可撓性体200の長手方向と一致するように、導電体100が配置される。
【0078】
導電体100は、波長方向WLに沿って繰り返し湾曲したり屈曲したりする形状を有する。導電体100は、弾性可撓性体200に近づいたり遠ざかったりする。導電体100が最も弾性可撓性体200に近づいた最近接部分で、弾性接合体300によって導電体100と弾性可撓性体200とを接合する。導電体100を弾性可撓性体200に接合することによって、弾性可撓性体200の伸縮に伴って導電体100を伸縮させることができる。
【0079】
具体的には、まず、弾性可撓性体200をある程度伸張させて伸張状態にする。次に、液状状態の弾性接合体300を弾性可撓性体200の表面に付着させる。次に、自然状態の導電体100を液状状態の弾性接合体300上に配置する。次に、弾性接合体300を硬化させて、導電体100の最近接部分を弾性可撓性体200に固定する。最後に、弾性可撓性体200を伸張状態から自然状態に戻す。このようにして、弾性可撓性体200の伸縮に伴って導電体100も伸縮する伸縮可能電線10を作ることができる。
【0080】
以下では、弾性接合体300の態様などに応じて、第1の実施の形態~第8の実施の形態について説明する。
【0081】
<<<第1の実施の形態>>>
図2は、第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1は、導電体100と弾性可撓性体200と弾性接合体310A1~An(弾性接合体310)とを有する。nは、1以上の値であり、導電体100の長手方向の長さや柔らかさや変形の自由度や、弾性可撓性体200の長手方向の長さや弾性係数などに応じて適宜の値となる。伸縮可能電線10-1は、長尺な形状を有する。
【0082】
<<接合工程の概要>>
複数の弾性接合体310A1~Anが、弾性可撓性体200の波長方向WLに沿った複数の位置に配置される。弾性接合体310A1~Anは、接合工程の当初では液状状態であり、液状状態の弾性接合体310A1~Anが弾性可撓性体200上に塗布される。導電体100が弾性接合体310A1~Anを介して弾性可撓性体200上に配置されると、弾性接合体310A1~Anは硬化される。導電体100の配置や弾性接合体310A1~Anの位置などについては、後述する。
【0083】
<弾性接合体310A1~Anの硬化>
弾性接合体310A1~Anは、硬化すると薄いフィルム状の形状を有する。弾性接合体310A1~Anは、硬化すると弾性及び可撓性を有する。弾性接合体310A1~Anの硬化によって、導電体100が弾性可撓性体200に接合される。弾性接合体310A1~Anは、硬化すると弾性可撓性体200の変形に伴って変形することができる。弾性可撓性体200及び弾性接合体310A1~Anの伸縮変形に伴って、導電体100が伸縮することができる。
【0084】
<<弾性接合体310A1~Anの配置位置>>
弾性接合体310A1~Anは、弾性可撓性体200の波長方向WLに沿って互いに離隔した複数の位置(配置位置LP1~LPn)の各々に配置される。i番目の弾性接合体310Ai(i=1~n)は、i番目の配置位置LPi(i=1~n)に位置づけられる。複数の配置位置LP1~LPnは、等間隔である。隣り合う2つのi番目の配置位置LPi(i=1~n)とi+1番目の配置位置LPi+1(i=1~n-1)との長さは等しい。
【0085】
<<弾性接合体310A1~Anの形状>>
弾性接合体310A1~Anは、配置位置LP1~LPnの各々において、波面方向WSに沿って連続的に延在する。配置位置LP1~LPnの各々における弾性接合体310は、波面方向WSに延在する長尺な形状を有する。配置位置LP1~LPnの各々における弾性接合体310A1~Anの各々の長手方向(波面方向WS)の長さは、同じである。弾性接合体310A1~Anの長さは、導電体100の幅(波面方向WSの長さ)よりも長いのが好ましい。配置位置LP1~LPnの各々における弾性接合体310は、互いに平行である。
【0086】
<<導電体100と弾性可撓性体200との接合の態様>>
導電体100は、弾性可撓性体200に最も近づく複数の最近接部分CP1~CPnを有する。導電体100のi番目の最近接部分CPiが、i番目の弾性接合体310Aiに対応する。導電体100のi番目の最近接部分CPiが、i番目の弾性接合体310Aiの配置位置LPiに位置付けられる。導電体100の最近接部分CP1~CPnが、対応する弾性接合体310A1~Anの配置位置LP1~LPnに位置付けられて弾性可撓性体200に接合される。
【0087】
導電体100の最近接部分CP1~CPnの各々は、波面方向WSに延在する。導電体100の最近接部分CP1~CPnの各々は、波面方向WSに延在する長尺な形状を有する。例えば、導電体100の最近接部分CP1~CPnの各々は、波面方向WSに沿った直線状や細長い長方形状の形状を有する。導電体100の最近接部分CP1~CPnの各々は、弾性接合体310よりも細い。導電体100の最近接部分CP1~CPnの各々は、弾性接合体310A1~Anと少なくとも一部が重なる。導電体100の最近接部分CP1~CPnの各々は、長尺な形状を有し、弾性接合体310A1~Anが延在する領域と少なくとも一部が重なるように配置されればよい。
【0088】
<<伸縮可能電線10-1の形成>>
液状状態の弾性接合体310A1~Anを、対応する配置位置LP1~LPnにおいて弾性可撓性体200上に塗布する導電体100の最近接部分CP1~CPnを、対応する弾性接合体310A1~Anと重なるように位置づけ、導電体100の全体を弾性可撓性体200上に配置する。弾性接合体310A1~Anを硬化させる。硬化により、導電体100の最近接部分CP1~CPnが弾性可撓性体200に接合される。弾性接合体310によって導電体100と弾性可撓性体200とを一体化することができる。
【0089】
硬化により、弾性接合体310A1~Anは、弾性及び可撓性を有する。弾性可撓性体200が伸縮変形すると、弾性接合体310A1~Anも伸縮変形する。弾性接合体310A1~Anの伸縮変形に応じて、導電体100の最近接部分CP1~CPnが変位する。最近接部分CP1~CPnの変位に応じて、導電体100の全体が伸縮変形することができる。したがって、伸縮可能電線10-1の全体が伸縮することができる。
【0090】
導電体100は、長手方向の両端部130a及び130bを有する。端部130a及び130bは、他の電線などの電気的部品との電気的接続を形成するための端子として機能する。導電体100の端部130a及び130bは、弾性可撓性体200に接合されておらず、弾性可撓性体200からある程度離隔可能に構成されている。このようにすることで、他の電線などの電気的部品との電気的接続をするための作業を容易にすることができる。両端部130a及び130bの長手方向WLの長さは、接続される部品の大きさや形状や数などに応じて適宜に定めればよい。
【0091】
<<単位伸縮部>>
このように構成することで、伸縮可能電線10-1は、配置位置LPi~LPi+1や、最近接部分CPi~CPi+1などを単位伸縮部として、配置位置LP1~LPn、最近接部分CP1~CPnなどの複数の単位伸縮部を伸縮方向(波長方向WL)に有する。
【0092】
<<導電体100と弾性可撓性体200との離隔及び迂回>>
配置位置LPiからLPi+1までの導電体100に沿った長さCLi(最短長さ(最短の道のり))は、配置位置LPiからLPi+1までの弾性可撓性体200に沿った長さFLi(最短長さ(最短の道のり))よりも長い。最短長さは、二点間を結ぶ曲線のうちで、もっとも短いものである。
【0093】
配置位置LPiからLPi+1までの導電体100は、湾曲したり屈曲したりしている。このため、配置位置LPiからLPi+1に至るまでに、導電体100は弾性可撓性体200から迂回する(遠回り、大回り、回り道などを含む)。導電体100の迂回によって、長さCLiは、長さFLiよりも長くなる。導電体100の迂回によって、導電体100は弾性可撓性体200から離隔した状態となる。導電体100の迂回によって、導電体100は弾性可撓性体200から離隔する構成を有すれば、第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1の概念に含まれる。
【0094】
<<一時的な接触や経時変化による接触>>
なお、弾性可撓性体200が伸縮変形するとともに、導電体100も伸縮変形する。このため、伸縮の過程や収縮状態や伸長状態などで、配置位置LPiからLPi+1までの間で、導電体100が弾性可撓性体200と接触し、導電体100が弾性可撓性体200から離隔しない箇所が生ずる場合もある。
【0095】
また、伸縮変形が繰り返されることによって、導電体100が部分的に経時的に変化する可能性もある。例えば、導電体100の一部がほつれたり部分的に破断したりする可能性もある。
【0096】
しかしながら、これは、接合などによる恒久的な接触ではなく一時的な接触や経時変化による接触によって生ずるものであり、伸縮可能電線10-1が自然状態や製造当初状態や出荷状態などに戻ることができれば、導電体100が弾性可撓性体200から離隔する状態が再現される。
【0097】
一時的な接触や経時的変化による接触が生じたとしても、接合点である配置位置LPiからLPi+1までの間で、弾性可撓性体200に対して導電体100が迂回していることには変わりはない。一時的な接触や経時的変化による接触の有無にかかわらず、接合点である配置位置LPiからLPi+1までの間で、弾性可撓性体200に対して導電体100が迂回している伸縮可能電線は、第1の実施の形態による伸縮可能電線10-1の概念に含まれる。
【0098】
なお、
図2(b)では、弾性接合体310A1~Anの波面方向WSの長さを、導電体100の波面方向WSの幅よりも短くして示したが、幅と同じ又は幅よりも長くしてもよい。導電体100との接触面積を大きくして、導電体100を弾性可撓性体200に的確に接合することができる。
【0099】
<<<第2の実施の形態>>>
図3は、第2の実施の形態による伸縮可能電線10-2の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【0100】
伸縮可能電線10-2は、導電体100と弾性可撓性体200と弾性接合体320(320A11、A12、A13~An1、An2、An3)とを有する。弾性接合体320は、第1の実施の形態の弾性接合体310と同様の機能や作用を有する。
【0101】
弾性接合体320A11、A12、A13~An1、An2、An3は、第1の実施の形態の弾性接合体310と配置の態様が異なる。
図3(a)に示すように、弾性接合体320A11、A12、A13~An1、An2、An3は、弾性可撓性体200において、マトリクス状に配置される。具体的には、弾性接合体320Aij(i=1~n、j=1~3)は、波長方向WLに沿って1~n箇所に、かつ、波面方向WSに沿って、複数の箇所、例えば、3箇所(j=1、2、3)に配置される。なお、波面方向WSに沿った箇所は、3か所に限られず、導電体100及び弾性可撓性体200の波面方向WSの長さ(幅)などに応じて、適宜に定めればよい。
【0102】
弾性接合体320Aij(i=1~n、j=1~3)の各々は、略長方形状を有する。なお、形状は、円や楕円などでもよい。弾性接合体320Aij(i=1~n、j=1~3)の各々の形や大きさは、導電体100や弾性可撓性体200の材質や硬さなどに応じて適宜に定めればよい。弾性接合体320Aijの波面方向WSに沿った間隔や数や位置は、導電体100や弾性可撓性体200の波面方向WSの長さや弾性接合体320Aijの大きさなどに応じて適宜に定めればよい。弾性接合体320Aijの波面方向WSに沿った間隔や数や位置は、配置位置LPiの各々で同じである必要はなく、異ならしめてもよい。
【0103】
弾性接合体320Aij(i=1~n、j=1~3)は、弾性可撓性体200が延在する平面において、第1の方向と、第1の方向とは異なる第2の方向との各々に沿って、互いに離隔して分散して配置されればよい。第1の方向と第2の方向とが直交する場合には限られない。
【0104】
波面方向WSに分散させて複数の弾性接合体320i1、i2、i3(i=1~n)を配置することによって、波長方向WLだけでなく、波面方向WSにも湾曲したり屈曲したりしやすくでき、多様な伸縮変形に対応させることができる。
【0105】
<<<第3の実施の形態>>>
図4は、第3の実施の形態による伸縮可能電線10-3の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【0106】
伸縮可能電線10-3は、導電体100と弾性可撓性体200と弾性接合体330とを有する。弾性接合体330は、第1の実施の形態の弾性接合体310と同様の機能や作用を有する。
【0107】
弾性接合体330は、第1の実施の形態の弾性接合体310と配置の態様が異なる。
図4(a)に示すように、弾性接合体330は、単一であり、弾性可撓性体200の波長方向WL及び波面方向WSの双方の方向に全体的に延在する。弾性接合体330は、長尺な長方形状の形状を有する。弾性接合体330の長手方向は、弾性可撓性体200の長手方向と同じである。
【0108】
弾性接合体330の波長方向WLの長さと、波面方向WSの長さとは、導電体100や弾性可撓性体200の大きさなどに応じて適宜に定めればよい。
【0109】
単一の弾性接合体330にしたことにより、液状の状態の弾性接合体330の位置について精度を高めることなく容易に塗布することができる。弾性接合体330を弾性可撓性体200の全体的に延在するようにしたことにより、導電体100の最近接部分CP1~CPnの各々の位置を調整することなく、弾性接合体330上に配置することができ、簡便に伸縮可能電線10-3を形成することができる。
【0110】
図4(b)では、弾性接合体330の波面方向WSの長さを、導電体100の波面方向WSの幅よりも短くして示したが、幅と同じ又は幅よりも長くしてもよい。導電体100との接触面積を大きくして、導電体100を弾性可撓性体200に的確に接合することができる。
【0111】
<<<第4の実施の形態>>>
図5は、第4の実施の形態による伸縮可能電線10-4の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【0112】
伸縮可能電線10-4は、導電体100と弾性可撓性体200と弾性接合体340(340A1~A3)とを有する。弾性接合体340は、第1の実施の形態の弾性接合体310と同様の機能や作用を有する。
【0113】
3本の弾性接合体340A1~A3は、長尺な形状を有する。弾性接合体340A1~A3の長手方向は、波長方向WLである。3本の弾性接合体340A1~A3が、互いに平行に波面方向WSに離隔して配置される。弾性接合体340A1~A3は、弾性可撓性体200の波長方向WLに延在する。
【0114】
第3の実施の形態の330よりも弾性接合体340A1~A3の量を減らすことができ、コストを抑えることができる。弾性可撓性体200の長手方向に延在するようにしたことで、第3の実施の形態の330と同様に、導電体100の最近接部分CP1~CPnの各々の位置を調整することなく、弾性接合体340A1~A3上に配置することができ、簡便に伸縮可能電線10-4を形成することができる。
【0115】
図5(b)では、3本の弾性接合体340A1~A3を示したが、導電体100の波面方向WSの幅などに応じて、弾性接合体340の数や幅を定めることができる。また、3本の弾性接合体340A1~A3の各々は、波長方向WLに沿って一体に構成された例を示したが、弾性可撓性体200の、波長方向WLの長さなどに応じて複数に分割した構成としてもよい。複数に分割することで、弾性接合体340を弾性可撓性体200に配置する作業を容易にすることができる。
【0116】
<<<第5の実施の形態>>>
図6は、第5の実施の形態による伸縮可能電線10-5の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
図6(b)では、明瞭のため、弾性接合体310A1~310Anや最近接部分CP1~CPnを実線で示した。
【0117】
伸縮可能電線10-5は、導電体100と弾性可撓性体200と弾性接合体310と絶縁被覆体410とを有する。伸縮可能電線10-5は、第1の実施の形態の弾性接合体310A1~Anを有する。言い換えれば、第5の実施の形態による伸縮可能電線10-5は、第1の実施の形態の伸縮可能電線10-1に絶縁被覆体410を設けたものである。
【0118】
絶縁被覆体410は、絶縁性を有し、薄いフィルム状の形状を有する。絶縁被覆体410は、長尺な形状を有する。絶縁被覆体410の長手方向は、導電体100の長手方向と同じである。絶縁被覆体410は、弾性及び可撓性を有する。
【0119】
絶縁被覆体410は、導電体100の長手方向の両端部130a及び130bを除いて導電体100を全体的に被覆する。なお、導電体100の端部130a及び130bは、露出した状態となる。端部130a及び130bは、他の電線などの電気的部品との電気的接続を形成するために、露出した状態が維持される。
【0120】
前述したように、絶縁被覆体410は弾性及び可撓性を有し、導電体100及び弾性可撓性体200の伸縮変形に伴って伸縮変形することができる。このため、伸縮変形においても導電体100の被覆状態が維持され、的確に絶縁することができる。
【0121】
図6(b)では、絶縁被覆体410の波面方向WSの長さを、弾性可撓性体200の波面方向WSの幅よりも短くして示したが、幅と同じ又は幅よりも長くしてもよい。絶縁被覆体410によって導電体100を的確に被覆することができる。
【0122】
<<<第6の実施の形態>>>
図7は、第6の実施の形態による伸縮可能電線10-6の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
図7(b)では、明瞭のため、弾性接合体310A1~310Anや最近接部分CP1~CPnを実線で示した。
【0123】
伸縮可能電線10-6は、導電体100と弾性可撓性体200と弾性接合体310と絶縁被覆体420とを有する。伸縮可能電線10-6は、第1の実施の形態の弾性接合体310A1~Anを有する。言い換えれば、第6の実施の形態による伸縮可能電線10-6は、第1の実施の形態の伸縮可能電線10-1に絶縁被覆体420を設けたものである。
【0124】
絶縁被覆体420は、絶縁被覆体410と同様である。絶縁被覆体420は、絶縁性を有し、薄いフィルム状の形状を有する。絶縁被覆体420は、長尺な形状を有する。絶縁被覆体420の長手方向は、導電体100の長手方向と同じである。絶縁被覆体420は、弾性及び可撓性を有する。
【0125】
絶縁被覆体420は、導電体100の長手方向の両端部130a及び130bを除いて導電体100を全体的に被覆する。なお、導電体100の端部130a及び130bは、露出した状態となる。端部130a及び130bは、他の電線などの電気的部品との電気的接続を形成するために、露出した状態が維持される。
【0126】
絶縁被覆体420は、導電体100の隣り合う2つの突条部110の間に、導電体100の溝部120に向かって湾曲する湾曲間隙部422を有する。
【0127】
前述したように、絶縁被覆体420は弾性及び可撓性を有し、導電体100及び弾性可撓性体200の伸縮変形に伴って伸縮変形することができる。さらに湾曲間隙部422を設けたことにより、導電体100及び弾性可撓性体200の伸長の程度が小さい場合には、湾曲間隙部422は、未だ伸長せずに湾曲を解除して張設状態に近づけることで対応することができる。さらに、導電体100及び弾性可撓性体200の伸長の程度がある程度大きくなると、湾曲間隙部422は、張設状態から伸長状態に移行する。このように、湾曲間隙部422によって伸長の余裕をもたせることができ、高伸長でも絶縁状態を維持できる伸縮可能電線10-6を提供することができる。
【0128】
図7(b)では、絶縁被覆体420の波面方向WSの長さを、弾性可撓性体200の波面方向WSの幅よりも短くして示したが、幅と同じ又は幅よりも長くしてもよい。絶縁被覆体420によって導電体100を的確に被覆することができる。
【0129】
<<<第7の実施の形態>>>
図8は、第7の実施の形態による伸縮可能電線10-7の断面を示す断面図(a)と、平面を示す平面図(b)である。
【0130】
伸縮可能電線10-7は、導電体100と弾性可撓性体200と弾性接合体310と弾性接合体370a及び370bとを有する。伸縮可能電線10-7は、第1の実施の形態の弾性接合体310A1~Anを有する。言い換えれば、第7の実施の形態による伸縮可能電線10-7は、第1の実施の形態の伸縮可能電線10-1に弾性接合体370a及び370bを設けたものである。
【0131】
導電体100の長手方向の両端部130a及び130bを有する。端部130a及び130bは、露出した状態である。端部130a及び130bは、他の電線などの電気的部品との電気的接続を形成するための端子と同様に機能する。
【0132】
弾性接合体370a及び370bは、弾性接合体310と同様の材質によって構成され、同様の機能及び作用を有する。弾性接合体370aは、端部130aを弾性可撓性体200に接合し、弾性接合体370bは、端部130bを弾性可撓性体200に接合する。導電体100の両端部130a及び130bを一定の位置に保つとともに、両端部130a及び130bの強度を高めることができる。
【0133】
図8(b)では、弾性接合体370aを310A1から離隔し、弾性接合体370bを310Anから離隔して配置したが、弾性接合体370aを310A1と一体化し、弾性接合体370bを310Anと一体化して、連続するように構成してもよい。接触面積を大きくでき、導電体100の両端部130a及び130bを的確に弾性可撓性体200に配置することができる。
【0134】
図8(b)では、弾性接合体370a及び弾性接合体370bが導電体100から露出する状態を示したが、弾性接合体370a及び弾性接合体370bを小さくして、導電体100の両端部130a及び130bに含まれるようにしてもよい。弾性接合体370a及び弾性接合体370bの量を減らすことができるとともに、他の部材などが弾性接合体370a及び弾性接合体370bに接着することを防止できる。
【0135】
<<<第8の実施の形態>>>
図9は、第8の実施の形態による伸縮可能電線10-8の組み立て前の断面を示す断面図(a)と、組み立て後の断面を示す断面図(b)である。
【0136】
伸縮可能電線10-8は、導電体100と弾性可撓性体200と弾性接合体310を有する。伸縮可能電線10-8は、第1の実施の形態の弾性接合体310A1~Anを有する。第8の実施の形態による伸縮可能電線10-8は、第1の実施の形態の伸縮可能電線10-1と同様の構成を有する(
図2参照)。
【0137】
第1の実施の形態の伸縮可能電線10-1は、全体的に長尺な平坦な形状を有する。第8の実施の形態による伸縮可能電線10-8は、円筒状(チューブ状)の形状を有する(
図9(b))。第1の実施の形態の伸縮可能電線10-1の弾性可撓性体200の波面方向WSの2つの端部280a及び280bを接合することで(
図9(a))、円筒状(チューブ状)の形状を形成することができる(
図9(b))。接合は、弾性接合体310と同様の材質を用いることができる。
【0138】
このように形成することで、全体を弾性可撓性体200によって覆うことができ、絶縁するとともに、保護することができる。
【0139】
図9(b)では、円筒状(チューブ状)の形状となる場合を示した、楕円筒状や長円筒状などの筒状の形状でもよく、弾性可撓性体200が導電体100を囲繞する形態であればよい。
【0140】
<<<実施例>>>
図10A及び
図10Bは、実施例を示す表である。
図10A及び
図10Bは、実施例1~9並びに比較例1及び2を示す。形状(実施形態)の欄のカッコ内の数値が、前述した第1の実施の形態~第8の実施の形態を示す。
【0141】
配線部が、導電体100に対応する。ゴム伸縮部が、弾性可撓性体200に対応する。ゴム接合部が、弾性接合体310~380に対応する。
【0142】
<配線部の材質>
配線部の材質は、導電体100を構成する材質である。実施例1~9及び比較例1の配線部の材質は、金属繊維構造体である。比較例2の配線部の材質は、金属箔である。
【0143】
<配線部の幅>
配線部の幅は、導電体100の波面方向WSの長さである。実施例1~5、実施例8、9及び比較例1及び2の配線部の幅は、10mmである。実施例6、7の配線部の幅は、3mmである。
【0144】
<配線部の長さ>
配線部の長さは、導電体100に突条部110及び溝部120が未だ形成されていない状態の加工前の導電体100の波長方向WLの長さである。実施例1~9並びに比較例1及び2(全て)の配線部の長さは、100mmである。
【0145】
<配線部の高さ>
配線部の高さは、突条部110及び溝部120が形成されたときの積層方向MLの高さである。実施例1~5、実施例8、9並びに比較例1及び2の配線部の高さは、5mmである。実施例6、7の配線部の高さは、2mmである。
【0146】
<配線部のピッチ>
配線部のピッチは、隣り合う2つの突条部110の頂点の間隔、又は隣り合う2つの溝部120の谷底の間隔である。実施例1~5、実施例8、9並びに比較例1及び2の配線部のピッチは、2mmである。実施例6、7の配線部のピッチは、1mmである。
【0147】
<配線部の厚み>
配線部の厚みは、導電体100の厚みである。実施例1の配線部の厚みは、200μmである。実施例2の配線部の厚みは、203μmである。実施例3の配線部の厚みは、199μmである。実施例4の配線部の厚みは、195μmである。実施例5の配線部の厚みは、198μmである。実施例6の配線部の厚みは、98μmである。実施例7の配線部の厚みは、103μmである。実施例8の配線部の厚みは、208μmである。実施例9の配線部の厚みは、205μmである。比較例1の配線部の厚みは、197μmである。比較例2の配線部の厚みは、201μmである。
【0148】
まとめると、実施例1~5、実施例8、9並びに比較例1及び2の配線部の厚みは、おおよそ200μmである。実施例6、7の配線部の厚みは、おおよそ100μmである。
【0149】
<配線部の占積率>
配線部の占積率は、金属繊維体の体積に対して金属繊維が存在する部分の割合である。配線部の占積率は、金属繊維のみから金属繊維体が構成される場合には、金属繊維体の坪量と厚み、及び金属繊維の真密度から以下の式により算出される。
占積率(%)=(金属繊維体の坪量/(金属繊維体の厚み×金属繊維の真密度)×100
【0150】
実施例1の配線部の占積率は、15%である。実施例2の配線部の占積率は、21%である。実施例3の配線部の占積率は、10%である。実施例4の配線部の占積率は、11%である。実施例5の配線部の占積率は、29%である。実施例6の配線部の占積率は、36%である。実施例7の配線部の占積率は、34%である。実施例8の配線部の占積率は、13%である。実施例9の配線部の占積率は、14%である。比較例1の配線部の占積率は、14%である。比較例2の配線部の占積率は、100%である。
【0151】
<ゴム伸縮部の材質>
ゴム伸縮部の材質は、弾性可撓性体200の材質である。実施例1~5、実施例8、9並びに比較例1及び2のゴム伸縮部の材質は、シリコーンである。実施例6、7のゴム伸縮部の材質は、エラストマーである。
【0152】
<ゴム伸縮部の厚み>
ゴム伸縮部の厚みは、弾性可撓性体200の厚みである。実施例1~9のゴム伸縮部の厚みは、おおよそ500μmである。比較例1、2のゴム伸縮部の厚みは、おおよそ6mmである。
【0153】
<ゴム伸縮部のプリストレッチ>
ゴム伸縮部のプリストレッチは、弾性可撓性体200のプリストレッチである。弾性可撓性体200を予め伸長させた状態で、導電体100を弾性可撓性体200に接合することが意味する。実施例1~9並びに比較例1及び2の全てで、プリストレッチをしている。
【0154】
<ゴム接合部の材質>
ゴム接合部の材質は、弾性接合体310~380の材質である。実施例1~5、実施例8、9並びに比較例1及び2のゴム接合部の材質は、シリコーンである。実施例6、7のゴム接合部の材質は、エラストマーである。
【0155】
<ゴム接合部の部分被覆の形状>
ゴム接合部の部分被覆の形状は、弾性接合体310~380の形状である。第1の実施の形態~第8の実施の形態で説明した通りである。実施例1、3、4及び6~9のゴム接合部の部分被覆の形状は、ドット状である。実施例2及び5のゴム接合部の部分被覆の形状は、ライン状である。
【0156】
<ゴム接合部の幅方向の面積比率>
ゴム接合部の幅方向の面積比率は、伸縮領域の面積に対する弾性接合体310~380の面積の比率である。具体的には、伸縮領域の面積DS(
図2参照)に対する弾性接合体310~380が設けられた面積の比率である。伸縮領域は、突条部110及び溝部120が存在する領域である。伸縮領域の面積DSは、波長方向に沿った面積である。言い換えれば、伸縮領域の面積DSは、弾性可撓性体200に沿った面積であり、導電体100に沿った面積ではない。突条部110及び溝部120が存在する領域を弾性可撓性体200に投影した領域としてとらえてもよい。弾性接合体310~380の面積は、弾性接合体310~380のみが存在する領域の総面積である。
【0157】
実施例1のゴム接合部の幅方向の面積は、23%である。実施例2のゴム接合部の幅方向の面積は、78%である。実施例3のゴム接合部の幅方向の面積は、11%である。実施例4のゴム接合部の幅方向の面積は、75%である。実施例5のゴム接合部の幅方向の面積は、56%である。実施例6のゴム接合部の幅方向の面積は、38%である。実施例7のゴム接合部の幅方向の面積は、12%である。実施例8のゴム接合部の幅方向の面積は、21%である。実施例9のゴム接合部の幅方向の面積は、86%である。比較例1のゴム接合部の幅方向の面積は、100%である。比較例2のゴム接合部の幅方向の面積は、100%である。
【0158】
以上から、ゴム接合部の幅方向の面積比率は、10%~86%であるのが好ましく、10%~80%であるのがより好ましく、11%~78%であるのが更に好ましい。
【0159】
<ゴム接合部の厚み方向の面積比率>
ゴム接合部の厚み方向の面積比率は、配線部の高さPT(
図2参照)に対するゴム接合部の高さ(弾性接合体310~380の高さET(
図2参照))である。
【0160】
実施例1のゴム接合部の厚み方向の面積は、15%である。実施例2のゴム接合部の厚み方向の面積は、32%である。実施例3のゴム接合部の厚み方向の面積は、3%である。実施例4のゴム接合部の厚み方向の面積は、3%である。実施例5のゴム接合部の厚み方向の面積は、47%である。実施例6のゴム接合部の厚み方向の面積は、65%である。実施例7のゴム接合部の厚み方向の面積は、68%である。実施例8のゴム接合部の厚み方向の面積は、74%である。実施例9のゴム接合部の厚み方向の面積は、14%である。比較例1のゴム接合部の厚み方向の面積は、100%である。比較例2のゴム接合部の厚み方向の面積は、100%である。
【0161】
以上から、ゴム接合部の厚み方向の面積比率は、1%~74%であるのが好ましく、1%~70%であるのがより好ましく、3~68%であるのが更に好ましい。
【0162】
<伸縮耐久性>
伸縮耐久性は、50%伸縮を繰り返した際の抵抗変化が10%未満であることと、破断・クラックを生じないことである。伸縮量は50%、伸縮回数は1,000回、伸長時に90度のひねりを加えた。伸縮回数の偶数回目は+90度にひねり、伸縮回数の奇数回目は-90度にひねった。
【0163】
<抵抗変化>
抵抗変化は、導電体100の両端部130a及び130bに、電圧30V及び電流250mAを印加した結果である。実施例1~9は、良好であった。比較例1及び2は、不良であった。
【0164】
<外観変化>
目視確認によって外観変化を確認した。実施例1~9は、良好であった。比較例1及び2は、不良であった。
【0165】
<<<<実施の形態の範囲>>>>
上述したように、第1の実施の形態~第8の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面は、限定するものと理解すべきでない。ここで記載していない様々な実施の形態等が含まれる。
【0166】
<<<<変形例>>>>
前述した第1の実施の形態~第8の実施の形態では、導電体100が、金属繊維構造体で構成される例を示したが、導電体100が、箔やフィルム状や線状などの連続体で構成されてもよい。さらには、導電体の全体が導電性を有する必要はなく、導電体の一部のみが導電性を有するものでもよい。例えば、樹脂を基材として表面に導電性を有する物質で被覆したものを導電体としてもよい。すなわち、第1の実施の形態~第8の実施の形態の伸縮可能電線10-1~10-8の導電体100として、箔やフィルム状などの連続体で構成される金属を用いてもよい。
【符号の説明】
【0167】
10-1、10-2、10-3、10-4、10-5、10-6、10-7、10-8 伸縮可能電線
100 導電体
200 弾性可撓性体
300-1、300-2、300-3、300-4、300-5、300-6、300-7、300-8 弾性接合体