(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179116
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】タファミジス含有固形製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20221125BHJP
A61K 31/423 20060101ALI20221125BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221125BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221125BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221125BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221125BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221125BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K31/423
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/26
A61P25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086377
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊豆井 航
(72)【発明者】
【氏名】尾留川 大貴
(72)【発明者】
【氏名】夏目 文音
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD27
4C076DD68
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF02
4C076FF31
4C076FF33
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC70
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA10
4C086NA11
4C086NA12
4C086ZA02
(57)【要約】
【課題】 タファミジスの製剤からの溶出率の低下が抑制されたタファミジス含有固形製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の一実施形態によると、タファミジスと、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、およびケイ酸カルシウムからなる群から選択される一つ以上を含む担体と、を含有するタファミジス含有固形製剤及びその製造方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タファミジスと、
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンおよびケイ酸カルシウムからなる群から選択される一つ以上を含む担体と、を含有するタファミジス含有固形製剤。
【請求項2】
さらにポリソルベート80およびモノオレイン酸ソルビタンを含有する請求項1に記載のタファミジス含有固形製剤。
【請求項3】
前記担体はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびクロスポビドンからなる群から選択される一つ以上を含む請求項1または2に記載のタファミジス含有固形製剤。
【請求項4】
前記担体はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである請求項1または2に記載のタファミジス含有固形製剤。
【請求項5】
前記タファミジス含有固形製剤が粉末剤、又は錠剤である請求項1乃至4の何れか1項に記載のタファミジス含有固形製剤。
【請求項6】
タファミジスを分散媒に分散し、
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンおよびケイ酸カルシウムからなる群から選択される一つ以上を含む担体に吸着させること、
を含む、タファミジス含有固形製剤の製造方法。
【請求項7】
前記分散媒はポリソルベート80およびモノオレイン酸ソルビタンを含む請求項6に記載のタファミジス含有固形製剤の製造方法。
【請求項8】
前記担体はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびクロスポビドンからなる群から選択される一つ以上を含む請求項6または7に記載のタファミジス含有固形製剤の製造方法。
【請求項9】
前記担体はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである請求項6または7に記載のタファミジス含有固形製剤の製造方法。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れか1項に記載のタファミジス含有固形製剤がタファミジス含有粉末剤であり、前記タファミジス含有粉末剤を含む混合物を打錠する、タファミジス含有錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タファミジス含有固形製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タファミジス(2-(3,5-ジクロロフェニル)-1,3-ベンゾオキサゾール-6-カルボン酸)は、トランスサイレチン(TTR:Transthyretin)4量体のサイロキシン結合部位に結合して、TTR4量体を安定化させ、単量体への解離を阻害することで、アミロイドの形成や組織内への沈着を抑制するトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP:Transthyretin Familial Amyloid Polyneuropathy)治療薬である。タファミジスを含有する軟カプセル剤として、例えば、ビンダケル(登録商標)カプセル(Vyndaqel(登録商標)Capsules)がある(非特許文献1)。ビンダケルカプセルは、マクロゴール400、ポリソルベート80、モノオレイン酸ソルビタンにタファミジスメグルミンを分散させて軟カプセルに封入した製剤である。1軟カプセルあたりタファミジスメグルミン20.0mg(タファミジスとして12.2mg)を含有する。
【0003】
軟カプセル製剤は、原薬含有溶液または懸濁液をカプセル封入するための設備が必要であるため製造コストが高く、封入工程の管理も煩雑である。また、軟カプセル製剤は分割投与ができないため、投与量の調節が難しく、必ずしも利便性が高いとは言えない剤形である。従って、錠剤や顆粒剤などこれらの欠点をなくした剤形で製剤化されることが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ビンダケル(登録商標)カプセル 医薬品インタビューフォーム 2020年8月改訂(第8版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タファミジスの製剤からの溶出率の低下が抑制されたタファミジス含有固形製剤及びその製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、タファミジスと、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンおよびケイ酸カルシウムからなる群から選択される一つ以上を含む担体と、を含有するタファミジス含有固形製剤が提供される。タファミジス含有固形製剤は、さらにポリソルベート80およびモノオレイン酸ソルビタンを含有してもよい。
【0007】
本発明の一実施形態によると、タファミジスを分散媒に分散し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンおよびケイ酸カルシウムからなる群から選択される一つ以上を含む担体に吸着させること、を含むタファミジス含有粉末剤の製造方法が提供される。前記分散媒はポリソルベート80およびモノオレイン酸ソルビタンであってもよい。また前記分散媒は水を含んでもよい。
【0008】
担体はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびクロスポビドンからなる群から選択される一つ以上を含んでもよい。担体はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであってもよい。
【0009】
本発明の一実施形態によると、上記タファミジス含有粉末剤を含む混合物を打錠する、タファミジス含有錠剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、タファミジスの製剤からの溶出率の低下が抑制されたタファミジス含有固形製剤及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るタファミジス含有固形製剤及びその製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明のタファミジス含有固形製剤及びその製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0012】
本発明者らは、後述する実施例にも示すように、錠剤や顆粒剤などのタファミジス含有固形製剤を製造するために、タファミジスを分散した分散液を吸着させる種々の担体について検討を行ったところ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムをはじめとする特定の担体が吸着担体として有用であることを見いだした。また、タファミジスを分散した分散液を特定の担体に吸着させてタファミジス含有粉末剤を製造することで、タファミジスの製剤からの溶出率の低下が抑制され、かつ錠剤の製造にも最適な粉末剤を簡便に製造できることを見いだした。
【0013】
本実施形態のタファミジスは、タファミジスのフリー体、又はタファミジスメグルミン(2-(3,5-ジクロロフェニル)-1,3-ベンゾオキサゾール-6-カルボン酸モノ(1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール))であってもよい。しかしながらこれらに限定されず、タファミジスは、その薬理学的に許容可能な塩又は溶媒和物であってもよい。本願でタファミジスという際には、そのフリー体、及びその薬理学的に許容可能な塩又は溶媒和物を包含する場合がある。タファミジスメグルミンの含有量は、期待される治療効果に応じて適宜選択可能であるが、例えば、タファミジス含有錠剤の1錠中に20mg(タファミジスとして12.2mg)含まれている。
【0014】
本発明の一実施形態に係るタファミジス含有固形製剤は、タファミジスを含有する粉末剤、及び錠剤として提供されるが、それらに限定されるものではなく、カプセル剤、顆粒剤又は散剤等が含まれる。本実施形態に係るタファミジス含有錠剤は、錠剤の形態であれば、特に制限はなく、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠も含まれる。
【0015】
本発明の一実施形態に係るタファミジス含有粉末剤は、タファミジスと、分散媒と、担体を含有する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る担体は、例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンおよびケイ酸カルシウムからなる群から選択される一つ以上である。メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンおよびケイ酸カルシウムは、タファミジスのpH6.8における製剤からの溶出率に優れ、好ましい。メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびクロスポビドンは、タファミジスのpH6.8における溶出率に特に優れ、より好ましい。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびケイ酸カルシウムは、少量でタファミジス分散液を吸着することができ、高い液体保持能力を有することからより好ましい。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、タファミジスのpH6.8における製剤からの溶出率を維持することができ、かつ高い液体保持能力を有することから特に好ましい。本実施形態において、特定の担体は、タファミジスを分散した分散液を吸着させることにより、タファミジスを固形製剤化することができる。さらに、固形製剤化したタファミジスの製剤からの溶出率を維持することができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係るタファミジスを分散する分散媒は、例えば、ポリソルベート80およびモノオレイン酸ソルビタンを含む。ポリソルベート80およびモノオレイン酸ソルビタンは、分散媒として好ましい。また前記分散媒は水を含んでもよい。
【0018】
本実施形態に係るタファミジス含有粉末剤は、タファミジスを分散媒に分散させ、特定の担体に吸着させることにより製造することで、固形製剤化することができ、かつタファミジスの製剤からの溶出率の低下を抑制することができる。タファミジス含有粉末剤は、上記担体の含量がタファミジスに対して1質量%以上5000質量%以下となることが好ましい。タファミジス含有粉末剤は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム含量がタファミジスに対して1質量%以上5000質量%以下となることが好ましい。
【0019】
本発明に係るタファミジス含有粉末剤は、一実施形態において必要な添加物とともに、タファミジス含有錠剤とすることができる。
【0020】
添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、抗酸化剤、着色剤、滑沢剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また2種以上である場合、あらかじめ複数の添加剤を混合して造粒した、いわゆるプレミックス添加剤を含有していても良い。
【0021】
賦形剤としては、例えば、デンプン、結晶セルロース、セルロース誘導体およびその塩、デキストリン、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、メタクリル酸コポリマー、無水リン酸水素カルシウム、白糖、タルク(天然合水ケイ酸マグネシウム)、カオリン、沈降炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、酸化チタン、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
結合剤としては、例えば、デンプン、デキストリン、トラガント、ゼラチン、ポビドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、ヒプロメロース、エチルセルロース、カルメロース、メタクリル酸コポリマー、白糖、水あめ、アラビアゴム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カンテン末等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
抗酸化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、レシチン、α-トコフェロール、ヒドロキノン、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸イソアミル、ノルジヒドログアイアレティック酸、グアヤク脂、α-ナフチルアミン、プロトカテキュ酸エチル(EPG)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、システイン塩酸塩、アスコルビン酸ステアリン酸ナトリウム、チオグリセロール、チオソルビトール等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、タール色素等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
滑沢剤としては、例えば、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ホウ酸、パラフィン、ココアバター、マクロゴール、ロイシン、安息香酸ナトリウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本実施形態に係るタファミジス含有錠剤は、タファミジス含有粉末剤と添加剤を混合し、得られた混合物を打錠することにより製造することで、タファミジスの製剤からの溶出率の低下を抑制することができる。タファミジス含有錠剤は、1錠当たりの上記担体の含量が1質量%以上50質量%以下となることが好ましい。タファミジス含有錠剤は、1錠当たりのメタケイ酸アルミン酸マグネシウム含量が1質量%以上50質量%以下となることが好ましい。
【0028】
本実施形態に係るタファミジス含有錠剤の製造方法は、まずタファミジス含有粉末剤を製造し、次いでタファミジス含有粉末剤を含む混合物を打錠することでタファミジス含有錠剤を製造する。本実施形態に係るタファミジス含有錠剤は、薬学分野において公知の製造方法に従って製造することができる。
【0029】
本実施形態に係るタファミジス含有粉末剤の製造方法としては、まずタファミジスを分散媒に分散させる。次いでタファミジス分散液を、担体に吸着させる。このとき、他の添加剤を担体と混合し、この混合物に、タファミジス分散液を吸着させてもよい。また、タファミジス含有粉末剤は、さらに乾燥、整粒してもよい。
【0030】
担体にタファミジス分散液を吸着させる方法としては、担体にタファミジス分散液を混合して吸着させる方法、担体にタファミジス分散液を噴霧して吸着させる方法、タファミジス分散液に担体を混合して吸着させる方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。以上の工程により、本発明に係るタファミジス含有組成物を製造することができる。
【0031】
本実施形態に係るタファミジス含有錠剤は、タファミジス含有粉末剤に添加剤を混合して打錠することで製造することができる。その製造法は練合法、流動層造粒法、直打法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、打錠によって形成された錠剤は、例えばフィルムコーティングしてもよい。
【実施例0032】
本発明に係るタファミジス含有固形製剤、特に粉末剤と錠剤の製造方法の一例を以下に示すが、この記載は一例にすぎず、これに限定されるものではない。
【0033】
(タファミジス含有粉末剤の製造)
タファミジスメグルミン20mgを、567mgのマクロゴール400、75mgのポリソルベート80、8mgのモノオレイン酸ソルビタンの混合液に分散した。タファミジスメグルミンを分散した分散液670mgと各担体700mgまたは3000mgとを乳鉢にて混合して、タファミジス含有粉末剤を得た。各担体の種類と混合量を表1に示す
【0034】
【0035】
実施例1~5および比較例2、3ではタファミジス分散液が十分に吸着され粉末化した。実施例1および5に係るメタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびケイ酸カルシウムを担体として用いたタファミジス含有粉末剤は、少量の担体でタファミジス分散液を吸着することができ、担体の液体保持能力が特に高かった。なお、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの吸油量は2.7~3.4mL/g、ケイ酸カルシウムの吸油量は4.6mL/gである。一方で、比較例1に係るD-マンニトールを担体として用いたタファミジス含有粉末剤は、D-マンニトールの量が他の担体と同じ700mgの分量ではタファミジス分散液を吸着しきらず粉末化できなかった。比較例1に係るD-マンニトールを担体として用いた場合は、D-マンニトールを3000mg添加することで、かろうじて粉末として取り扱える状態となった。
【0036】
(pH変化溶解法)
タファミジス分散液および実施例1~5および比較例1~3に係るタファミジス含有粉末剤を、500mlの溶出試験第1液(pH1.2)中、37℃で撹拌(パドル速度150rpm/min)しながら30分後まで、経時的(0、5、15、30分後)にサンプリングした。得られたサンプルは孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、残渣をメタノールに溶解し、UV測定法により波長310nmにおける吸光度を測定した(pH1.2のサンプルとする)。
【0037】
その後、水酸化ナトリウムおよびリン酸二水素カリウム水溶液を加えることでpHを6.8に変化させ、37℃で撹拌(パドル速度50rpm/min)しながら120分後まで、経時的(45、60、90、120分後)にサンプリングした。得られたサンプルは孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、残渣をメタノールに溶解し、UV測定法により波長310nmにおける吸光度を測定した(pH6.8のサンプルとする)。0分後の溶出率を0%として各時間におけるタファミジスの製剤からの溶出率を算出した。
【0038】
タファミジス分散液および実施例1~5および比較例1~3に係るタファミジス含有粉末剤におけるタファミジスの製剤からの溶出率(%)を表2に示す。
【0039】
【0040】
表2の結果から、実施例1~5および比較例1に係るメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、ケイ酸カルシウムまたはD-マンニトールを担体に用いたタファミジス含有粉末剤は、タファミジス分散液と同様に、pH6.8における溶出率を維持することができた。比較例2、3に係る軽質無水ケイ酸または含水二酸化ケイ素を担体に用いたタファミジス含有粉末剤は、タファミジス分散液と比較してpH6.8における溶出率が低下した。実施例1に係るメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを担体に用いたタファミジス含有粉末剤は、タファミジス分散液と同様にpH6.8における溶出率を維持することができた。
【0041】
(タファミジス含有錠剤の製造)
実施例6~8の製造方法におけるタファミジスおよび各添加剤の分量は一錠あたりの分量として記載する。
[実施例6]
タファミジスメグルミン20mgを、75mgのポリソルベート80、8mgのモノオレイン酸ソルビタンの混合液に分散した。タファミジスメグルミンを分散したタファミジス分散液103mgとメタケイ酸アルミン酸マグネシウム103mgとを乳鉢にて混合して、タファミジス含有粉末剤を得た。タファミジス含有粉末剤に無水リン酸水素カルシウム216mg、結晶セルロース250mg、クロスカルメロースナトリウム21mg、ステアリン酸マグネシウム7mgを加えて混合後、一錠700mgで打錠した。
【0042】
[実施例7]
タファミジスメグルミン20mgを、75mgのポリソルベート80、8mgのモノオレイン酸ソルビタン、80mgの精製水の混合液に分散した。タファミジスメグルミンを分散したタファミジス分散液183mgとメタケイ酸アルミン酸マグネシウム103mgとを乳鉢にて混合した。得られた混合物を棚式乾燥機で乾燥した。乾燥したタファミジス含有粉末剤に、無水リン酸水素カルシウム216mg、結晶セルロース250mg、クロスカルメロースナトリウム21mg、ステアリン酸マグネシウム7mgを加えて混合後、一錠700mgで打錠した。
【0043】
[実施例8]
タファミジスメグルミン20mgを、75mgのポリソルベート80、8mgのモノオレイン酸ソルビタン、200mgの精製水の混合液に分散した。メタケイ酸アルミン酸マグネシウム103mg、無水リン酸水素カルシウム100mgおよび結晶セルロース100mgを、流動層造粒乾燥機に加え、タファミジスメグルミン分散液303mgを、担体を含む添加剤に噴霧・乾燥した。得られたタファミジス含有粉末剤に、無水リン酸水素カルシウム116mg、結晶セルロース150mg、クロスカルメロースナトリウム21mg、ステアリン酸マグネシウム7mgを加えて混合後、一錠700mgで打錠した。
【0044】
実施例6~8に係るタファミジス含有錠剤の組成を表3に示す。
【表3】
【0045】
(pH変化溶解法)
実施例6~8に係るタファミジス含有錠剤について、上述のタファミジス含有粉末剤と同様にpH変化溶解法における溶出試験を行った。実施例6~8に係るタファミジス含有錠剤のタファミジスの製剤からの溶出率を表4に示す。
【0046】
【0047】
表4の結果から、実施例6~8に係る直打法、練合法または流動層造粒法により製造したタファミジス含有錠剤は、いずれもpH6.8における溶出率を向上することができた。
【0048】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。