(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179156
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086439
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二木 朋博
(72)【発明者】
【氏名】高崎 直樹
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC05
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD02
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE33
5E316GG15
5E316GG16
5E316GG17
5E316HH11
5E316JJ25
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板100は、第1面210を有する絶縁層21と、第1面210上に形成されていて部品搭載領域Aを含む導体層11と、第1面210及び導体層11を覆っていて部品搭載領域Aを露出させる貫通孔221を有する絶縁層22と、を備えている。導体層11は、部品搭載領域Aを含んでいて絶縁層22に部分的に覆われている導体パッド1を含み、第1面210は、導体パッド1と接している領域213において、貫通孔221と平面視で重なる第1領域211と第1領域211以外の第2領域212とを含み、第1面210と導体パッド1との界面は、絶縁層21と導体パッド1とが離れている部分である離間部5を含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する第1絶縁層と、
前記第1面上に形成されていて部品搭載領域を含む導体層と、
前記第1面及び前記導体層を覆っていて前記部品搭載領域を露出させる貫通孔を有する第2絶縁層と、
を備える配線基板であって、
前記導体層は、前記部品搭載領域を含んでいて前記第2絶縁層に部分的に覆われている導体パッドを含み、
前記第1面は、前記導体パッドと接している領域において、前記貫通孔と平面視で重なる第1領域と前記第1領域以外の第2領域とを含み、
前記第1面と前記導体パッドとの界面は、前記第1絶縁層と前記導体パッドとが離れている部分である離間部を含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1領域における前記離間部の占有率は、前記第2領域における前記離間部の占有率よりも高い。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1領域における前記離間部の占有率は、5%以上、20%以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1領域は、前記第2領域よりも低い面粗度を有している。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1絶縁層は、絶縁性樹脂と前記絶縁性樹脂に添加されているフィラーとを含み、
前記第1絶縁層における前記フィラーの体積含有率は30%以上、80%以下である。
【請求項6】
請求項5記載の配線基板であって、前記離間部は前記フィラーと前記絶縁性樹脂との間に介在している。
【請求項7】
請求項5記載の配線基板であって、前記離間部は、前記フィラー又は前記絶縁性樹脂と、前記導体パッドとの間に介在している。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドにおける前記第1絶縁層と反対側の表面のうちの前記貫通孔と重なる領域は、前記表面のうちの前記第2絶縁層に覆われている領域の面粗度よりも低い面粗度を有する部分を含んでいる。
【請求項9】
第1面を有する第1絶縁層を用意することと、
前記第1面上に、導体パッドを含む導体層を形成することと、
前記導体層及び前記第1面を覆う第2絶縁層を形成することと、
前記導体パッド上の前記第2絶縁層に貫通孔を形成することによって、底面に前記導体パッドを備える部品収容部を形成することと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記貫通孔を形成することは、前記第1面と前記導体パッドとの界面に、前記第1絶縁層と前記導体パッドとの離間部を形成することを含んでいる。
【請求項10】
請求項9記載の配線基板の製造方法であって、前記離間部は、前記第1面のうちの前記貫通孔と平面視で重なる第1領域における前記離間部の占有率が、前記第1面のうちの前記導体パッドと接している前記第1領域以外の領域における前記離間部の占有率よりも高くなるように形成される。
【請求項11】
請求項9記載の配線基板の製造方法であって、前記貫通孔を形成することは、前記第2絶縁層において前記貫通孔が形成されるべき領域全体に、照射位置を移動させながらレーザー光を照射することを含んでいる。
【請求項12】
請求項11記載の配線基板の製造方法であって、前記レーザー光を照射することは、開始位置から終了位置に至る前記レーザー光の照射位置の一連の移動を複数回行うことを含んでいる。
【請求項13】
請求項12記載の配線基板の製造方法であって、前記照射位置の前記一連の移動毎の各照射位置における前記レーザー光の照射回数は1回である。
【請求項14】
請求項9記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記導体層の形成の前に前記第1絶縁層の前記第1面を粗化することを含み、
前記貫通孔を形成することは、前記第1面のうちの前記貫通孔と平面視で重なる領域の面粗度を低下させることを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品が収容されるキャビティを有する電子部品内蔵用キャビティ付き配線板(以下、単に「配線板」と称される)が開示されている。配線板は、プレーン層を含むビルドアップ導体層を含んでいる。キャビティは、プレーン層上のビルドアップ絶縁層を貫通してプレーン層を露出させている。プレーン層はキャビティの底面全体を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の配線板では、電子部品やプレーン層自身の収縮などによる応力がプレーン層と下地のビルドアップ絶縁層との界面に発生し、プレーン層が下地のビルドアップ絶縁層から剥離することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1面を有する第1絶縁層と、前記第1面上に形成されていて部品搭載領域を含む導体層と、前記第1面及び前記導体層を覆っていて前記部品搭載領域を露出させる貫通孔を有する第2絶縁層と、を備えている。そして、前記導体層は、前記部品搭載領域を含んでいて前記第2絶縁層に部分的に覆われている導体パッドを含み、前記第1面は、前記導体パッドと接している領域において、前記貫通孔と平面視で重なる第1領域と前記第1領域以外の第2領域とを含み、前記第1面と前記導体パッドとの界面は、前記第1絶縁層と前記導体パッドとが離れている部分である離間部を含んでいる。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、第1面を有する第1絶縁層を用意することと、前記第1面上に、導体パッドを含む導体層を形成することと、前記導体層及び前記第1面を覆う第2絶縁層を形成することと、前記導体パッド上の前記第2絶縁層に貫通孔を形成することによって、底面に前記導体パッドを備える部品収容部を形成することと、を含んでいる。そして、前記貫通孔を形成することは、前記第1面と前記導体パッドとの界面に、前記第1絶縁層と前記導体パッドとの離間部を形成することを含んでいる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、絶縁層の貫通孔内に露出する部品搭載領域を含む導体パッドとその下層の絶縁層との剥離が抑制されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3】
図2に示される貫通孔及びその周辺部分の平面図。
【
図4】
図2の導体パッドとその下層の絶縁層との界面部分の拡大図。
【
図5】本発明の一実施形態の配線基板における導体パッド及びその周辺部の他の例を示す断面図。
【
図6A】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6B】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6C】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6D】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6E】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6F】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6G】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6H】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す平面図。
【
図6I】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す斜視図。
【
図6J】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6K】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。
図1には、本実施形態の配線基板の一例である配線基板100の断面図が示されており、
図2は、
図1のII部の拡大図を示している。
図2では、
図1に示される貫通孔221の明確化のために絶縁層24及びビア導体43が省略されると共に、部品E及び接着剤6についてそれぞれの輪郭だけが二点鎖線で示されている。
図3には、
図2に示される貫通孔221及びその周辺部の平面図が示されている。なお、
図1~
図3に例示される配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。実施形態の配線基板の積層構造、並びに、導体層及び絶縁層それぞれの数は、配線基板100の積層構造、並びに、配線基板100に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。
【0010】
図1に示されるように、配線基板100は、コア基板3と、コア基板3におけるその厚さ方向において対向する2つの主面(表面3a及び表面3b)それぞれの上に交互に積層されている絶縁層及び導体層とを含んでいる。コア基板3は、絶縁層32と、絶縁層32の両面それぞれの上に形成されている導体層31とを含んでいる。コア基板3は、さらに、絶縁層32を貫通して絶縁層32の両面の導体層31同士を接続するスルーホール導体33を含んでいる。
【0011】
コア基板3の表面3aの上には、表面3a側から順に、2つの絶縁層20それぞれと2つの導体層10それぞれとが交互に積層されている。そして、それら絶縁層20及び導体層10の上に、絶縁層21、導体層11、絶縁層22が順に積層されている。すなわち配線基板100は、絶縁層21(第1絶縁層)と、導体層11(第1導体層)と、絶縁層22(第2絶縁層)と、を含んでいる。絶縁層21は、コア基板3側と反対側の表面として第1面210を有している。導体層11は、絶縁層21の第1面210の上に形成されている。絶縁層22は、絶縁層21の第1面210及び導体層11を覆っている。絶縁層22の上には、さらに、導体層12、導体層12を保護する絶縁層23、絶縁層24(封止層)、及び導体層13が順に積層されている。
【0012】
一方、コア基板3の表面3b上には、4つの絶縁層20のそれぞれと4つの導体層10のそれぞれとが交互に積層され、さらに絶縁層25及び絶縁層26が積層された上に導体層14が形成されている。
【0013】
なお、実施形態の説明では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層32から遠い側は「上側」若しくは「外側」、「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層32に近い側は「下側」若しくは「内側」、「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層及び各絶縁層において、絶縁層32と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層32側を向く表面は「下面」とも称される。
【0014】
絶縁層20~22それぞれには、各絶縁層を貫通し、各絶縁層を介して隣接する導体層同士を接続するビア導体40が形成されている。絶縁層23及び絶縁層24には、導体層12と導体層13とを接続するビア導体41が形成され、絶縁層25及び絶縁層26には、導体層10と導体層14とを接続するビア導体42が形成されている。
【0015】
図1の配線基板100は、さらに、ソルダーレジスト7を備えている。ソルダーレジスト7は、コア基板3の表面3a側及び表面3b側それぞれにおいて配線基板100の表面に形成されている。ソルダーレジスト7は、導体層13又は導体層14の一部を露出させる開口を備えている。ソルダーレジスト7は、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの任意の絶縁性材料を用いて形成される。
【0016】
各絶縁層20、絶縁層21~26、及び絶縁層32は、それぞれ、主に任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などが例示される。
図1の例では、絶縁層32は、ガラス繊維やアラミド繊維などで形成される芯材(補強材)32aを含んでいる。
図1には示されていないが、絶縁層32以外の各絶縁層も、ガラス繊維などからなる芯材を含み得る。絶縁層20~26及び絶縁層32は、さらに、後述されるように、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂に添加されているフィラー21a(
図4参照)を含み得る。
【0017】
各導体層10、導体層11~14、及び導体層31、並びに、スルーホール導体33及びビア導体40~42は、それぞれ、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。
図1では、各導体層が1つの層で構成されるように描かれているが、各導体層は多層構造を有し得る。導体層31は、例えば、金属箔、無電解めっき膜、及び電解めっき膜を含む3層構造を有し得る。その場合、スルーホール導体33は、導体層31を構成する各めっき膜と一体的に形成され得る。
【0018】
一方、導体層10~14、及びビア導体40~42は、それぞれ、
図2に示される導体層11のように、電解めっき膜層10b、及び電解めっき膜層10bの形成時に給電層として機能する金属被膜層10aによって構成され得る。金属被膜層10aは、例えば無電解めっき膜又はスパッタリング膜である。ビア導体40~42は、ビア導体40~42それぞれの上に形成されている導体層(導体層10~14のいずれか)と一体的に形成されている。
【0019】
導体層10~14及び導体層31は、それぞれ、所定の導体パターンを含んでいる。例えば導体層13は、外部回路との接続に用いられる接続パッド131、132を含んでいる。そして導体層11は、導体パッド1(第1導体パッド)を含んでいる。
図1の例では、導体層11は、導体パッド1の他に、配線パターン111及び導体パッド112(第2導体パッド)を含んでいる。配線パターン111は、任意の電気信号の伝送や電力の供給に用いられる導電路として機能する導体パターンである。導体パッド112は、絶縁層21を貫通するビア導体40の所謂ビアパッドであって絶縁層22を貫通するビア導体40のための所謂受けパッドである。
【0020】
導体パッド1は、配線基板100に内蔵又は搭載される部品の載置に用いられる部品搭載パッドである。すなわち導体層11は、配線基板100に内蔵又は搭載される部品が載置されるべき領域である部品搭載領域Aを含んでいる。具体的には導体パッド1が、導体パッド1における絶縁層21と反対側の表面(導体パッド1の搭載面)1a上に部品搭載領域Aを含んでいる。
【0021】
図1~
図3に示されるように、絶縁層22は、絶縁層22を貫通する貫通孔221を有している。
図1~
図3の貫通孔221は絶縁層23も貫通している。貫通孔221は部品搭載領域Aを絶縁層22から露出させている。しかし貫通孔221の周囲では、導体パッド1における部品搭載領域A以外の部分を絶縁層22が覆っていて導体パッド1は絶縁層22に部分的に覆われている。具体的には、絶縁層22は、導体パッド1の周縁部を覆っている。
【0022】
導体パッド1は、絶縁層21の第1面210における平面視で貫通孔221と重なる領域を全体的に覆うと共に、部品搭載領域Aを貫通孔221内に露出させている。なお「平面視」は、実施形態の配線基板をその厚さ方向に沿った視線で見ることを意味する。また貫通孔221が
図1~
図3の例のようにテーパー形状を有している場合、「貫通孔221と重なる領域」は、貫通孔221における導体層11側の開口と重なる領域を意味している。貫通孔221と導体パッド1とによって、配線基板100に内蔵される部品が内部に収容される部品収容部(凹部又はキャビティ)Hが形成されている。導体パッド1の表面1aによって部品収容部Hの底面全体が構成されている。
【0023】
図1の例では、部品Eが部品収容部Hに収容されている。部品Eは、導体パッド1の部品搭載領域Aに載置されている。部品Eは、部品Eと外部回路との接続に用いられる電極E1を含んでいる。部品Eとしては、例えば、半導体集積回路装置やトランジスタなどの能動部品、又は電気抵抗などの受動部品などの電子部品が例示される。部品Eは、半導体基板上に形成された微細配線を含む配線材(例えばインターポーザ)であってもよい。部品Eは、はんだ若しくは金などの金属、導電性接着剤、又は、エポキシ樹脂などで構成される絶縁性接着剤などの任意の材料からなる接着剤6を用いて導体パッド1に接合されている。
【0024】
貫通孔221の内部は絶縁層24の構成材料で充填されている。絶縁層24は部品Eを覆っている。絶縁層24によって、貫通孔221内に部品Eが封止されている。従って
図1の配線基板100は部品内蔵配線基板である。部品E上にはビア導体43が設けられている。ビア導体43は部品E上の絶縁層24を貫通して部品Eの電極E1と接続パッド132とを接続している。ビア導体43は、導体層13と一体的に形成されており、ビア導体40~42と同様の構造を有し得る。
【0025】
図2及び
図3に示されるように、絶縁層21の第1面210は、導体パッド1と接している領域213を含んでいる。第1面210は、領域213において、貫通孔221と平面視で重なる第1領域211と、第1領域211以外の領域である第2領域212とを含んでいる。
図2及び
図3の例では、領域213は第1領域211及び第2領域212からなる。
図3に示されるように、第2領域212は第1領域211を囲んでおり、平面視で絶縁層22と重なっている。
【0026】
そして、絶縁層21の第1面210と導体パッド1との界面は、
図1では視認され得ない大きさのため省略されているが、
図2に示されるように1以上の離間部5を含んでいる。離間部5は、絶縁層21と導体パッド1との界面において絶縁層21と導体パッド1とが離れている部分である。
【0027】
導体パッド1のように配線基板に含まれる所謂部品搭載パッドでは、部品Eのような搭載部品の搭載時から配線基板の使用時まで、搭載部品に由来する歪みが、部品搭載パッドと部品搭載パッドの下層の絶縁層との界面に生じ得る。例えば、多くの場合、搭載部品及び部品搭載パッドと、部品搭載パッドの下層の絶縁層21のような絶縁層とは、互いに異なる熱膨張率を有し得る。そのため、部品搭載時における接着剤6のような接着剤に対する加熱時やその後の除熱時、及び、配線基板の使用中の周囲温度の変化時には、搭載部品及び部品搭載パッドと絶縁層との間の伸縮量の違いによって、部品搭載パッドと絶縁層との界面付近に歪みが生じ得る。そして、部品搭載パッドと絶縁層とが界面の全面で接合していると、界面の各部に生じる歪みが界面に沿って蓄積し、結果として部品搭載パッド及び絶縁層の一方が他方よりも撓むことによって広範な界面剥離が生じることがある。
【0028】
このような界面剥離の懸念に対して本実施形態では、前述したように絶縁層21の第1面210と導体パッド1との界面は離間部5を含んでいる。そのため、部品Eの搭載時や配線基板100の使用中の温度変化などによって部品Eに由来して導体パッド1と絶縁層21との界面に生じる歪みが、離間部5によって吸収若しくは緩和されると推察される。換言すると、歪みの逃げ場が離間部5によって提供される。従って、部品E由来の歪みの蓄積などによる導体パッド1と絶縁層21との界面剥離が抑制される。
【0029】
加えて本実施形態では、
図2の例のように、貫通孔221と平面視で重なる領域であって、部品搭載領域Aと重なる領域を含む第1面210の第1領域211における離間部5の占有率は、第2領域212における離間部5の占有率よりも高くてもよい。
図2の例の第2領域212は、絶縁層21と導体パッド1とが離れている離間部5を含んでいない。すなわち、離間部5の占有率に関して一方の領域が他方の領域よりも「高い」には、一方の領域(例えば第1領域211)に少なくとも1つの離間部5が存在していて他方の領域(例えば第2領域212)に離間部5が存在しない状態も含まれる。なお、実施形態において第2領域212は、離間部5を含んでいてもよい。ここで離間部5の「占有率」は、第1領域211及び第2領域212それぞれの面積に対する、各領域に含まれる1又は複数の離間部5の平面視での面積の総和の比率である。
【0030】
このように、第2領域212は、
図1~
図3の例では離間部5を含んでいない。離間部5が含まれる場合でも、第2領域212は、好ましくは、第1領域211よりも低い占有率で離間部5を含み得る。平面視で貫通孔221と重ならずに絶縁層22に覆われている第2領域212には、部品E由来の歪みが比較的生じ難い。そのため第2領域212では、導体パッド1と絶縁層21との界面に離間部5が存在するよりも、導体パッド1と絶縁層21とがより大きな面積で接合している方が、界面剥離の防止の面で有利なことがある。
【0031】
第1領域211においても、離間部5の占有率が高過ぎると、導体パッド1と絶縁層21との基本的な密着強度が不足したり、隣接する離間部5同士が比較的弱い機械的ストレスによって連結して密着強度が低下したりすることがある。そのため、第1領域211における離間部5の占有率の好ましい値としては、5%以上、20%以下が例示される。この程度の占有率で離間部5を第1領域211に含む導体パッド1では、絶縁層21との間に適切な密着強度が確保され、しかも、部品E由来の歪みによる界面剥離も抑制され易いと考えられる。
【0032】
離間部5は、後述されるように、例えば、貫通孔221の形成時のレーザー光の照射条件を調整することによって形成され得る。例えば、レーザー光の照射による局所的且つ瞬間的な発熱に伴って、絶縁層21と導体パッド1との界面が両者の熱膨張率の違いによって局所的に分離する。その結果離間部5が形成され得る。しかし本実施形態における離間部5の形成方法は、貫通孔221の形成時のレーザー光の照射による方法に限定されない。
【0033】
図2に示される絶縁層21は第1面210に凹凸を有している。第1面210は、絶縁層21の形成工程において凹凸を伴うように形成された粗面であってもよく、絶縁層21の形成後の粗化工程によって面粗度を高められた被粗化面であってもよい。
図2の例では、第1面210のうちの第1領域211は、第2領域212よりも低い面粗度を有している。第1領域211の面粗度が比較的低いため、部品E由来の歪みが生じても凹凸の頂部や最深部を起点とする絶縁層21のクラックが発生し難いと考えられる。一方、部品E由来の歪みが比較的生じ難い第2領域212では、比較的高い面粗度によって所謂アンカー効果が十分に得られるので、むしろ、導体パッド1と絶縁層21との剥離がさらに抑制されると推察される。
【0034】
なお
図2の例では導体パッド1も、表面1aに凹凸を有している。表面1a上に供給される接着剤6は、前述したように、はんだや金などの金属であり得るため、接着剤6では絶縁層21と比べてクラックのような不具合が生じ難い。むしろ、表面1aが平坦面でなく所定の面粗度を有する粗面(被粗化面)であると、所謂アンカー効果によって、導体パッド1と、接着剤6及び部品Eとの強固な接合が得られることがある。また、一定の凹凸を有する表面1aは、表面1aが平坦な場合に比べて高い放射率を有し得る。換言すると、一定の凹凸を有する表面1aを備える導体パッド1は、レーザー光のような電磁波から高度に吸熱する。そのため、絶縁層21と導体パッド1との界面への離間部5の形成において、より高い離間部5の占有率が望まれる場合に有利なことがある。
【0035】
図4には、
図2に示される絶縁層21の第1領域211における導体パッド1との界面付近の拡大図が示されている。前述したように、
図4に示される絶縁層21は、フィラー21aを含んでいる。従って絶縁層21は、前述したエポキシなどの絶縁性樹脂21bと絶縁性樹脂21bに添加されているフィラー21aとを含んでいる。フィラー21aとしては、シリカ(SiO
2)、アルミナ、又はムライトなどの無機物の粒体からなる無機フィラーが例示される。またフィラー21aは、シリコーン又はポリイミドなどの有機物の粒体からなる有機フィラーであってもよい。
【0036】
図4に示されるように、導体パッド1(金属被膜層10a)と絶縁層21との界面に複数の離間部5(離間部51~53)が形成されている。具体的には、離間部51はフィラー21aと導体パッド1との界面に形成され、離間部52は、フィラー21aを覆っている導体パッド1(金属被膜層10a)と絶縁性樹脂21bとの界面に形成されている。離間部53は、導体パッド1と接合しているフィラー21aと絶縁性樹脂21bとの界面に形成されている。このように、複数の離間部5それぞれは、フィラー21aと絶縁性樹脂21bとの間に介在していてもよく、フィラー21a又は絶縁性樹脂21bと、導体パッド1との間に介在していてもよい。互いに異なる熱膨張率を有し得るフィラー21a、絶縁性樹脂21b、及び導体パッド1は、例えば前述したレーザー光の照射によって、互いに異なる量で瞬間的に膨張すると推察される。その結果、微小な離間部5が各界面に形成され得る。
【0037】
絶縁層21におけるフィラー21aの体積含有率は、例えば、30%以上、80%以下である。絶縁層21に求められる機械的特性、電気的特性、及び熱的特性が満たされると共に、前述した適度な占有率で離間部5が形成され得ることがある。
【0038】
図5には、
図1の配線基板100の導体パッド1の他の例である導体パッド1α(第1導体パッド)及びその周辺部が、
図2に相当する範囲で示されている。
図5の例においても、絶縁層21の第1面210と導体パッド1αとの界面は離間部5を含んでいる。また、第1面210のうちの貫通孔221と平面視で重なる第1領域211における離間部5の占有率は、第2領域212における離間部5の占有率よりも高い。なお
図5の例においても、第2領域212は離間部5を含んでいない。
【0039】
図5の例において、導体パッド1αにおける絶縁層21と反対側の表面1aは、貫通孔221と平面視で重なる領域1aa(第3領域)と、貫通孔221に露出せずに絶縁層22に覆われている領域1ab(第4領域)とを有している。領域1aaは貫通孔221に露出している。一方、領域1abは、
図2の例の導体パッド1の表面1aと同様に、凹凸を有している。他方、領域1aaは、領域1abの面粗度よりも低い面粗度を有する部分である低粗度部1acと、領域1abの面粗度と略同じ面粗度を有していて低粗度部1acを囲む粗面部1adとを含んでいる。低粗度部1acは、
図5では領域1abの面粗度との違いが分かりやすいように平坦に描かれているが、領域1abの面粗度よりも低い任意の面粗度で凹凸を有していてもよい。
【0040】
図5の例の低粗度部1acは、粗面部1ad及び領域1abと比べて低い放射率を有し得る。そのため、低粗度部1acを備える導体パッド1αは、レーザー光のような電磁波からの吸熱性が比較的低い。そのため、前述した離間部5の形成においてより低い離間部5の占有率が望まれる場合に有利なことがある。実施形態の配線基板において部品搭載領域を含む導体パッドは、
図5の例の低粗度部1acのような、貫通孔に露出しない領域よりも低い面粗度を有する部分を貫通孔への露出面に有していてもよい。
【0041】
なお
図5の例では、絶縁層21の第1面210のうちの第1領域211と第2領域212とは、略同じ面粗度を有している。このように、絶縁層21は、導体パッド1αとの界面において略一定の面粗度を有していてもよい。
【0042】
つぎに、一実施形態の配線基板の製造方法が、
図1の配線基板100を例に用いて
図6A~
図6Kを参照して説明される。
【0043】
図6Aに示されるように、コア基板3が形成される。例えば、コア基板3の絶縁層32となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔を含む出発基板(例えば両面銅張積層板)が用意される。そして、貫通孔の形成及びパネルめっきに続くサブトラクティブ法を用いたパターニングによって、所望の導体パターンを有する導体層31と、スルーホール導体33が形成される。
【0044】
図6Bに示されるように、コア基板3の表面3a上及び表面3b上それぞれに、絶縁層20及び導体層10が交互に形成される。表面3a及び表面3bの上にそれぞれ2組の絶縁層20及び導体層10が形成された後、表面3a側にさらに絶縁層21が形成され、表面3b側にもさらに絶縁層20が形成される。絶縁層21は、コア基板3と反対側の表面として第1面210を有している。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、第1面210を有する絶縁層21(第1絶縁層)を用意することを含んでいる。
【0045】
各絶縁層20及び絶縁層21の形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、コア基板3の上、又は先に形成された絶縁層20及び導体層10の上に積層され、加熱及び加圧される。その結果、絶縁層21又は各絶縁層20が形成される。各絶縁層20には、ビア導体40を形成するための貫通孔が、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。
【0046】
各導体層10は、それぞれ、例えばセミアディティブ法によって形成される。すなわち、各導体層10の下地となる絶縁層20上の全面、及びその絶縁層20に形成された貫通孔内に無電解めっきやスパッタリングによって金属膜が形成される。その金属膜を給電層として用いる電解めっきを含むパターンめっきによってめっき膜が形成される。各絶縁層20に形成された貫通孔内にはビア導体40が形成される。その後、金属膜の不要部分が例えばエッチングなどで除去される。その結果、所定の導体パターンを含む2層構造の各導体層10が形成される。各導体層10は、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。
【0047】
図6Bに示されるように、絶縁層21、及びコア基板3の表面3b側の最も外側の絶縁層20にも、ビア導体を形成するための貫通孔40aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。貫通孔40aの形成後、必要に応じて、貫通孔40aの形成によって生じた樹脂残渣(スミア)を除去するデスミア処理が行われる。例えばアルカリ性過マンガン酸溶液などの処理液に貫通孔40aの内壁を晒すことによって貫通孔40a内のスミアが除去される。
【0048】
図1の配線基板100が製造される場合は、
図6Cに示されるように、絶縁層21の第1面210が粗化される。
図6Cには、
図6BのVIC部の拡大図が示されている。
図6Cには示されていないが、絶縁層21の第1面210の粗化の際には、コア基板3の表面3b側の最も外側の絶縁層20(
図6B参照)の表面、及び貫通孔40a(
図6B参照)の内壁の表面も粗化され得る。絶縁層21の第1面210は、好ましくは所定の表面粗さを有するように粗化され得る。第1面210の粗化によって、絶縁層21と、絶縁層21上に形成される導体層11(
図6D参照)との密着強度が一定程度向上する。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、導体層11の形成の前に絶縁層21の第1面210を粗化することを含み得る。
【0049】
第1面210は、例えば、前述したデスミア処理で用いられる処理液と同様の処理液を用いる過マンガン酸アルカリ溶液処理によって処理される。その結果、第1面210が、所望の表面粗さを有するように粗化される。絶縁層20の第1面210は、前述したデスミア処理によって、所定の表面粗さが得られるまで粗化されてもよい。
【0050】
図6Dに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、絶縁層21の第1面210上に、導体パッド1(第1導体パッド)を含む導体層11(第1導体層)を形成することを含んでいる。導体層11は、前述した導体層10の形成方法と同様に、例えばセミアディティブ法を用いて形成される。セミアディティブ法による導体層10の形成では、少なくとも導体パッド1の形成に適した開口を有するめっきレジストを用いてパターンめっきが行われる。
図6Dの例では、導体パッド1に加えて、配線パターン111及び導体パッド112を含む導体層11が形成されている。絶縁層21の貫通孔40a内にはビア導体40が形成される。コア基板3の表面3b側の最も外側の絶縁層20の上には、導体層11の形成方法と同様の方法で、さらに導体層10が形成される。
【0051】
図1の配線基板100が製造される場合は、
図6Eに示されるように、導体パッド1の表面1aのような導体層11の各導体パターンの露出面が粗化される。なお
図6Eは、
図6DのVIE部の拡大図を示している。導体層11の露出面の粗化は任意の方法で行われ得る。例えば、黒化処理又はブラウン処理と呼ばれる表面酸化処理や、酸性の溶剤を用いたマイクロエッチング処理によって、導体層11の露出面が粗化される。導体層11の露出面は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で、0.3μm以上、0.6μm以下の面粗度を有するように粗化される。なお、導体層11の粗化工程において、配線パターン111(
図6D参照)の表面が粗化されないように、配線パターン111の表面を覆うレジスト膜(図示せず)が設けられてもよい。高周波信号の伝送特性に優れた配線パターン111が得られることがある。
【0052】
図6Fに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、導体層11、及び絶縁層21の第1面210を覆う絶縁層22(第2絶縁層)を形成することを含んでいる。コア基板3の表面3b側には、さらに絶縁層20が形成される。絶縁層22及びさらに形成される絶縁層20は、絶縁層21と同様に、例えば、フィルム状のエポキシ樹脂の積層、並びに加熱及び加圧によって形成される。
【0053】
図6Fの例では、絶縁層22上に、例えば導体層11の形成方法と同様の方法で、導体層12が形成されている。絶縁層22には、導体層12と一体的にビア導体40が形成されている。また、コア基板3の表面3b側には、さらに導体層10が導体層11の形成方法と同様の方法で形成されている。
【0054】
さらに、絶縁層22及び導体層12の上に絶縁層23が形成され、コア基板3の表面3b側の最も外側の絶縁層20及び導体層10の上には絶縁層25が形成されている。絶縁層23及び絶縁層25は、例えば、前述した絶縁層21の形成方法と同様の方法で形成される。そして、本実施形態の配線基板の製造方法では、絶縁層22を貫通する貫通孔221が形成される。
図6Fの例では、絶縁層22と共に絶縁層23も貫く貫通孔221が形成される。貫通孔221は、例えば、絶縁層22及び絶縁層23へのレーザー光の照射によって形成される。例えば、炭酸ガスレーザー光が照射される。導体パッド1は、レーザー光のストッパーとして機能し得る。
【0055】
図6Gには、
図6FのVIG部における貫通孔221の形成後の状態が拡大して示されている。貫通孔221の形成によって、部品搭載領域を含む導体パッド1の表面1aを底面に有する部品収容部Hが形成されている。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、導体パッド1上の絶縁層22に貫通孔221を形成することによって、底面に導体パッド1を備える部品収容部Hを形成することを含んでいる。
【0056】
図6Gに示されるように、貫通孔221の形成後の絶縁層21の第1面210と導体パッド1との界面には、第1面210と導体パッド1とが離れている部分である1以上の離間部5が形成されている。すなわち、本実施形態の配線基板の製造方法において貫通孔221を形成することは、絶縁層21の第1面210と導体パッド1との界面に、絶縁層21と導体パッド1との離間部5を形成することを含んでいる。そのため、前述したように、導体パッド1に搭載される部品E(
図6J参照)由来の歪みの蓄積などによる導体パッド1と絶縁層21との界面剥離が抑制される。
【0057】
離間部5は、例えば、後に詳述されるレーザー光の照射による貫通孔221の形成方法の一例におけるレーザー光からの受熱によって形成され得る。すなわち、レーザー光からの受熱による局所的で瞬間的な温度上昇によって、互いに異なる熱膨張率を有し得る導体パッド1及び絶縁層21の構成材料が互いに異なる量で膨張し、各構成材料同士がその界面において局所的に分離する。その結果、離間部5が形成される。離間部5は、例えば、レーザー光が照射される貫通孔221の形成領域の真下の領域全体に渡って散在する第1面210の凹凸の頂部及び/又は底部において形成され得る。
【0058】
そして、本実施形態の配線基板の製造方法では、離間部5は、絶縁層21の第1面210のうちの貫通孔221と平面視で重なる第1領域211における離間部5の占有率が、第2領域212における離間部5の占有率よりも高くなるように形成されてもよい。その場合、前述したように、第2領域212においては、絶縁層21と導体パッド1とが大きな面積で接合し得ると共に、部品E(
図6J参照)由来の歪みの蓄積などによる導体パッド1と絶縁層21との間の広範な剥離が抑制される。すなわち、導体パッド1と絶縁層21との界面剥離による不具合が防止され得る。なお、第2領域212は、前述したように第1面210における導体パッド1と接している領域213のうちの第1領域211以外の領域である。
【0059】
また
図6Gに示される例では、第1領域211の面粗度が、先に参照した
図6Eに示される第1面210の面粗度よりも低下している。その結果、第1領域211の面粗度が第2領域212の面粗度よりも低下している。このように本実施形態の配線基板の製造方法において貫通孔221を形成することは、絶縁層21の第1面210の第1領域211の面粗度を低下させることを含み得る。
【0060】
図6H及び
図6Iには、レーザー光Lの照射による貫通孔221の形成方法の一例が示されている。
図6H及び
図6Iの例では、レーザー光Lの照射位置Pを開始位置P1から終了位置Pnまでピッチ送りしながら、貫通孔221が形成されるべき領域220全体に渡ってレーザー光Lを照射することによって貫通孔221が形成される。このように、貫通孔221を形成することは、絶縁層22及び絶縁層23における領域220全体に、照射位置Pを移動させながらレーザー光Lを照射することを含み得る。
【0061】
開始位置P1から終了位置Pnに至る照射位置Pの一連の移動中に、レーザー光Lは、照射位置P毎に任意の回数だけ照射される。また、照射位置Pの一連の移動と共に行われるレーザー光Lの照射は、1以上の任意の回数行われてもよい。例えば、照射位置Pの一連の移動毎の各照射位置Pにおけるレーザー光Lの照射回数(ショット数)は1回であってもよく、複数回であってもよい。また、レーザー光Lの照射を伴うレーザー光Lの照射位置Pの一連の移動は、1回だけ行われてもよく、複数回行われてもよい。例えば
図6Iに示されるように、レーザー光Lの照射を伴うレーザー光Lの照射位置Pの一連の移動は3回行われてもよい。このように貫通孔221を形成すべくレーザー光Lを照射することは、開始位置P1から終了位置Pnに至るレーザー光Lの照射位置Pの一連の移動を複数回行うことを含み得る。各照射位置Pでの照射回数や、一連の移動の回数などのレーザー光Lの照射条件を調整することによって、前述したような適度な占有率で離間部5を形成し得ることがある。
【0062】
貫通孔221の形成後、好ましくは、前述した貫通孔40a(
図6B参照)のデスミア処理と同様にデスミア処理が行われる。
【0063】
図6Jに示されるように、導体パッド1に部品Eが載置される。例えば、はんだ若しくは銅などの金属ペレット、又は、導電性若しくは絶縁性のペーストが接着剤6として導体パッド1上に供給され、さらに、部品Eが載置される。接着剤6によって部品Eが導体パッド1に接合される。
【0064】
そして、部品Eを覆う絶縁層24(封止層)が、絶縁層23の上に形成される。コア基板3の表面3b側の絶縁層25上には絶縁層26が形成される。絶縁層24及び絶縁層26は、例えば、前述した絶縁層21などの形成方法と同様の方法で形成される。その絶縁層24の形成時に、絶縁層24を構成するエポキシ樹脂などが、加熱及び加圧によって軟化して貫通孔221内に流入する。そして、貫通孔221内が、絶縁層24を構成する樹脂で充填され、絶縁層24を構成する樹脂で部品Eが貫通孔221内に封止される。
【0065】
図6Kに示されるように、導体層13、14、並びに、ビア導体41~43が形成される。導体層13には、外部回路との接続に用いられる接続パッド131、132が設けられる。導体層13は、絶縁層24及び絶縁層23を貫通するビア導体41によって導体層12と接続される。導体層14は、絶縁層26及び絶縁層25を貫通するビア導体42によって導体層10と接続される。そして接続パッド132は、部品E上の絶縁層24を貫通するビア導体43によって部品Eの電極E1と接続される。
【0066】
導体層13、14、ビア導体41、42は、前述した、導体層11及びビア導体40の形成方法と同様の方法及び同様の材料を用いて形成され得る。ビア導体43の形成では、部品Eの電極E1に向かって、絶縁層24の表面から例えば紫外線(UV)レーザー光を照射することによって電極E1を露出させる貫通孔が形成される。その貫通孔内に、導体層13の形成と共にめっき膜を充填することによってビア導体43が形成される。
【0067】
その後、導体層13及び絶縁層24上にソルダーレジスト7が形成されると共に、導体層14及び絶縁層26上にもソルダーレジスト7が形成される。導体層13上のソルダーレジスト7には接続パッド131、132を露出させる開口が設けられ、導体層14上のソルダーレジスト7にも適宜開口が設けられる。ソルダーレジスト7及びその開口は、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光及び現像とによって形成される。以上の工程を経る事によって
図1の例の配線基板100が完成する。
【0068】
なお、
図5に例示される導体パッド1αが形成される場合は、例えば、
図6Eを参照して説明された導体層11の露出面の粗化において、導体パッド1αの低粗度部1ac(
図5参照)上にレジスト膜(図示せず)が設けられる。そうすることによって、周囲よりも低い面粗度を有する低粗度部1acを設けることができる。
【0069】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。例えば、導体パッド1の表面1a及び絶縁層21の第1面210は、いずれも、凹凸を有していなくてもよい。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を有し得る。導体層11は、外層側に1つ以上の絶縁層が積層されている任意の階層の導体層であり得る。貫通孔221は、
図1などの例のようなテーパー形状を有していなくてもよい。
【0070】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば貫通孔221は、レーザー光の照射以外の発熱を伴う任意の方法で形成され得る。また貫通孔221は、発熱を伴わない、例えば適度な機械的衝撃によって離間部5が形成され得る任意の方法で形成されてもよい。導体層10~14はフルアディティブ法によって形成されてもよい。絶縁層20~26は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100 配線基板
1、1α 導体パッド
1a 導体パッドにおける絶縁層21と反対側の表面
1aa 貫通孔と重なる領域
1ab 絶縁層22と重なる領域
1ac 低粗度部
10~14 導体層
21 絶縁層(第1絶縁層)
21a フィラー
21b 絶縁性樹脂
210 第1面
211 第1領域
212 第2領域
213 導体パッドと接している領域
22 絶縁層(第2絶縁層)
220 貫通孔が形成されるべき領域
221 貫通孔
5、51~53 離間部
A 部品搭載領域
L レーザー光
H 部品収容部