(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179161
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】定置網監視システム、定置網監視方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 15/88 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G01S15/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086447
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】狭間 拓人
(72)【発明者】
【氏名】林 孝二
(72)【発明者】
【氏名】長谷 堅信
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB01
5J083AB05
5J083AC28
5J083AD01
5J083AD06
5J083AE10
5J083AF19
5J083BE19
5J083BE23
5J083CA01
5J083EB00
(57)【要約】
【課題】定置網の底の深度を取得して定置網の状態を監視することが可能な定置網監視システム、定置網監視方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】定置網監視システム1は、水中に設置された定置網の底に向かって音波を送波し、音波の反射波を受波してエコー信号を出力する送受波部22bと、エコー信号に基づいて定置網の底の深度を算出する網底深度算出部41aと、底の深度の算出結果に基づく報知情報を生成する報知情報生成部41bと、外部通信網32を介して端末装置50に報知情報を送信する送信処理部41cと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設置された定置網の底に向かって音波を送波し、前記音波の反射波を受波してエコー信号を出力する送受波部と、
前記エコー信号に基づいて前記定置網の底の深度を算出する網底深度算出部と、
前記底の深度の算出結果に基づく報知情報を生成する報知情報生成部と、
外部通信網を介して端末装置に前記報知情報を送信する送信処理部と、を備える、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の定置網監視システムにおいて、
前記網深度算出部は、現時点から所定回数前までの前記音波の送波によりそれぞれ得られた前記エコー信号から前記定置網の底を推定して、前記底の深度を算出する、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の定置網監視システムにおいて、
前記報知情報生成部は、基準深度に対する前記底の深度の変化の程度を示す情報を、前記報知情報として生成する、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載の定置網監視システムにおいて、
前記報知情報生成部は、前記基準深度に対する変化レベルを複数設定し、前記基準深度に対する前記底の深度の変化に対応する前記変化レベルを示す情報を、前記報知情報として生成する、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の定置網監視システムにおいて、
地表上における前記定置網の位置を検出する位置検出部を備え、
前記送信処理部は、前記定置網の位置に関する情報を、前記端末装置に送信する、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の定置網監視システムにおいて、
複数の定置網に対して前記送受波部がそれぞれ配置され、
前記網底深度算出部は、前記各送受波部から出力される前記各エコー信号に基づいて前記各定置網の底の深度を算出する、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の定置網監視システムにおいて、
地上に配置され、前記外部通信網に接続されたサーバと、
前記定置網に設置され、前記サーバと通信可能な洋上ユニットと、を備え、
前記送受波部は、前記洋上ユニットに配置され、
前記報知情報生成部および前記送信処理部は、前記サーバに配置される、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項8】
請求項7に記載の定置網監視システムにおいて、
前記網底深度算出部は、前記サーバに配置される、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項9】
請求項7に記載の定置網監視システムにおいて、
前記網底深度算出部は、前記洋上ユニットに配置される、
ことを特徴とする定置網監視システム。
【請求項10】
水中に設置された定置網の底に向かって送波された音波の反射波に応じたエコー信号に基づいて前記定置網の底の深度を算出し、
前記底の深度の算出結果に基づく報知情報を生成し、
外部通信網を介して端末装置に前記報知情報を送信する、
ことを特徴とする定置網監視方法。
【請求項11】
外部通信網に接続可能な端末装置の制御部に所定の機能を実行させるプログラムであって、
前記外部通信網を介してサーバから定置網の底の深度の算出結果に基づく報知情報を受信する機能と、
前記端末装置の表示部に前記報知情報を表示させる機能と、を含む、プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムにおいて、
前記報知情報は、基準深度に対する前記底の深度の変化の程度を示す情報を含み、
前記報知情報を表示させる機能は、前記基準深度に対する前記底の深度の変化の程度を、前記表示部に表示させる機能を含む、プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムにおいて、
前記報知情報は、前記基準深度に対して予め設定された複数の変化レベルのうち、前記基準深度に対する前記底の深度の変化に対応する前記変化レベルを示す情報を含み、
前記報知情報を表示させる機能は、前記変化レベルを前記表示部に表示させる機能を含む、プログラム。
【請求項14】
請求項11ないし13の何れか一項に記載のプログラムにおいて、
前記報知情報を受信する機能において、前記定置網の位置に関する情報をさらに受信し、
前記報知情報を表示させる機能は、前記定置網の位置に関する情報を前記表示部に表示させる機能を含む、プログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムにおいて、
前記定置網の位置に関する情報を前記表示部に表示させる機能は、前記定置網の位置を含む領域の地図を表示させ、前記地図上に、前記定置網の位置を示すマークと、前記定置網の底の状態を示す画像とを含める、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定置網を監視するための定置網監視システム、定置網監視方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中探知装置を用いて網の形状を監視する装置が知られている。特許文献1には、超音波振動子の各旋回角における縦断面形状を求め、各旋回角における断面形状の面積を積算することにより養殖網の容積を演算し、断面形状に規定以上の変形が生じたとき、または容積が既定値を下回るとき、警報を出力する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定置網の運用においては、ユーザは、魚群探知機等のエコーグラムを参照して自ら深度を判断することにより、定置網の状態を監視していた。しかしながら、このような監視方法では、ユーザにかかる負担が大きくなる。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、定置網の底の深度を取得して定置網の状態を監視することが可能な定置網監視システム、定置網監視方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、定置網監視システムに関する。本態様に係る定置網監視システムは、水中に設置された定置網の底に向かって音波を送波し、前記音波の反射波を受波してエコー信号を出力する送受波部と、前記エコー信号に基づいて前記定置網の底の深度を算出する網底深度算出部と、前記底の深度の算出結果に基づく報知情報を生成する報知情報生成部と、外部通信網を介して端末装置に前記報知情報を送信する送信処理部と、を備える。
【0007】
本態様に係る定置網監視システムによれば、端末装置を介して、定置網の底の深度に関する報知情報を出力させることができる。これにより、報知情報の参照者は、定置網の底の状態を監視でき、当該定置網に船を進めて漁獲を行うべきかを判断できる。
【0008】
本発明の第2の態様は、定置網監視方法に関する。本態様に係る定置網監視方法は、水中に設置された定置網の底に向かって送波された音波の反射波に応じたエコー信号に基づいて前記定置網の底の深度を算出し、前記底の深度の算出結果に基づく報知情報を生成し、外部通信網を介して端末装置に前記報知情報を送信する。
【0009】
本態様に係る定置網監視方法によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏される。
【0010】
本発明の第3の態様は、外部通信網に接続可能な端末装置の制御部に所定の機能を実行させるプログラムに関する。本態様に係るプログラムは、前記外部通信網を介してサーバから定置網の底の深度の算出結果に基づく報知情報を受信する機能と、前記端末装置の表示部に前記報知情報を表示させる機能と、を含む。
【0011】
本態様に係るプログラムによれば、端末装置において、定置網の底の深度に関する報知情報を出力させることができる。これにより、報知情報の参照者は、定置網の底の状態を監視でき、当該定置網に船を進めて漁獲を行うべきかを判断できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、定置網の底の深度を取得して定置網の状態を監視することが可能な定置網監視システム、定置網監視方法およびプログラムを提供することができる。
【0013】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る、海上に設置された定置網および定置網に設置された洋上ユニットの使用形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る、定置網監視システムの構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る、定置網監視システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る、制御部が送信する送信パケットの構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、それぞれ、実施形態に係る、網データベース、時系列データベース、およびユーザデータベースの構成を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る、洋上ユニットおよびサーバの処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る、網底深度算出処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る、ラインnからラインn+6に向かって時間が経過する際の各ラインのエコー信号を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る、サーバおよび端末装置の処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態に係る、報知情報の構成を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る、表示入力部に表示される画面を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、変更例1に係る、他の報知情報が送信される処理を示すフローチャートである。
【
図13】
図13(a)~(c)は、変更例1に係る、時間と網底深度との関係を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、変更例2に係る、洋上ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、変更例2に係る、報知情報の構成を模式的に示す図である。
【
図16】
図16は、変更例2に係る、表示入力部に表示される画面を模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、網底深度算出部が洋上ユニットに設けられる変更例に係る、定置網監視システムの構成を示すブロック図である。
【
図18】
図18は、網底深度算出部が洋上ユニットに設けられる変更例に係る、洋上ユニットおよびサーバの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0016】
図1は、海上に設置された定置網10および定置網10に設置された洋上ユニット20の使用形態を示す斜視図である。
【0017】
定置網10は、垣網11と、囲い網12と、昇り網13と、主網14と、を備える。
【0018】
垣網11は、囲い網12内に魚群を導くよう、囲い網12の出入口から外側に向かって直線状に延びた網である。囲い網12は、垣網11によって導かれた魚群を逃さないよう、内部を取り囲む網である。昇り網13は、囲い網12内の魚群を主網14に導くとともに、主網14から囲い網12へと魚群が移動しないよう、斜面形状を有する。主網14は、最終的に魚群を捕獲するための網である。主網14は、箱網と呼ばれることもある。洋上ユニット20は、平面視において主網14の上部中央付近に位置付けられるよう、主網14に対して紐により保持されている。
【0019】
図2は、定置網監視システム1の構成を示す模式図である。
【0020】
定置網監視システム1は、洋上ユニット20と、サーバ40と、端末装置50と、を備える。
【0021】
洋上ユニット20は、主網14の水面付近に位置付けられている。洋上ユニット20は、海底に向かって超音波を送波し、海底側から戻ってくる超音波を受波することにより、主網14内の魚群および底14aを検出する。また、洋上ユニット20は、定置網10の位置をGPSに基づいて検出する。
【0022】
洋上ユニット20は、陸側(地上側)に設置されている基地局31を介して、外部通信網32に対して通信可能となるよう接続される。洋上ユニット20は、基地局31および外部通信網32を介して、
図4を参照して後述する送信パケットをサーバ40に送信する。
【0023】
サーバ40は、陸側(地上側)に設置されており、外部通信網32に対して通信可能となるよう接続されている。サーバ40は、基地局31および外部通信網32を介して、洋上ユニット20から送信パケットを受信し、受信した送信パケット内の情報を記憶する。サーバ40は、端末装置50から要求を受信すると、送信パケット内の情報に基づいて報知情報を生成し、生成した報知情報を対応する端末装置50に送信する。報知情報については、追って
図10を参照して説明する。
【0024】
端末装置50は、スマートフォンやタブレットなどの情報端末装置である。無線ルータ33や基地局34等を介して、外部通信網32に対して通信可能となるよう接続されている。端末装置50は、外部通信網32と、無線ルータ33または基地局34とを介して、サーバ40から報知情報を受信し、受信した報知情報を表示する。
【0025】
図3は、定置網監視システム1の構成を示すブロック図である。
【0026】
洋上ユニット20は、制御部21と、物標検出器22と、位置検出部23と、通信部24と、を備える。洋上ユニット20には、図示しない電力供給部から電力が供給される。電力供給部は、たとえばリチウムイオンバッテリー等の充電可能な二次電池や、ソーラーパネル等の洋上発電装置などを備える。
【0027】
物標検出器22は、いわゆる魚群探知機であり、信号処理部22aと送受波部22bを備える。
【0028】
送受波部22bは、電気信号と超音波振動を相互に変換可能な素子を備える。送受波部22bは、洋上ユニット20の筐体の下面において、鉛直下向きに設置される。送受波部22bは、水面付近から水中に向かって下向きに超音波(送信波)を送波し、水中の物標から反射する反射波を受波する。送受波部22bは、受波した反射波に基づく電気信号を信号処理部22aに送信する。信号処理部22aは、反射波の電気信号に基づいて、深度に応じた反射波の強度を含むエコー信号を生成し、生成したエコー情報を制御部21に送信する。
【0029】
位置検出部23は、GPSに基づいて洋上ユニット20の位置を検出する。位置検出部23は、検出した位置情報を制御部21に送信する。
【0030】
制御部21は、マイクロコンピュータおよびメモリ等により構成される。制御部21は、洋上ユニット20の各部を制御する。制御部21は、物標検出器22からのエコー信号および位置検出部23からの位置情報から、送信パケットを生成する。通信部24は、基地局31と無線通信可能なモジュールにより構成される。制御部21は、通信部24を介して基地局31と無線通信を行って、生成した送信パケットを、基地局31および外部通信網32を介して、サーバ40に送信する。
【0031】
図4は、制御部21が送信する送信パケットの構成を模式的に示す図である。
【0032】
送信パケットは、所定の時間幅(以下、「ライン」と称する)ごとに生成される。送信パケットは、定置網10を識別するための網IDと、当該ラインにおけるエコー信号と、当該ラインにおける位置情報と、を含む。
図4には、エコー信号をグラフ上にプロットした状態が模式的に示されている。エコー信号のグラフの横軸は、水深を示している。水深は、送信波の送波から反射波の受波までの時間に水中の音速を乗算した値を2で除することにより取得される。エコー信号のグラフの縦軸は、強度を示しており、たとえばデシベル値である。すなわち、エコー信号は、深さに応じて受波した反射波の強度を含む情報である。
【0033】
図3に戻り、サーバ40は、制御部41と、記憶部42と、通信部43と、を備える。
【0034】
制御部41は、CPU等により構成される。記憶部42は、ROM、RAM、ハードディスク等により構成される。記憶部42には、各種のプログラムが記憶されている。制御部41は、記憶部42に記憶されたプログラムにより、網底深度算出部41a、報知情報生成部41b、および送信処理部41cの機能を実行する。すなわち、
図3の制御部41には、プログラムに基づいて制御部41が実行する機能ブロックが示されている。
【0035】
記憶部42は、制御部41が実行する各種のプログラムのほか、DB群42aを記憶している。DB群42aは、網データベースと、網IDごとの時系列データベースと、ユーザデータベースと、を含んでいる。通信部43は、外部通信網32と通信可能に接続されている。
【0036】
図5(a)~(c)は、それぞれ、網データベース、時系列データベース、およびユーザデータベースの構成を模式的に示す図である。
【0037】
図5(a)に示すように、網データベースは、複数の定置網10を個別に識別するための網IDと、定置網10の名称と、あらかじめ設定された定置網10の底14aの基準深度と、あらかじめ設定された定置網10の基準位置と、を項目として備える。基準深度は、当該定置網10の底14aの設計上の深度値である。基準位置は、地表上における定置網10の位置である。基準深度および基準位置は、定置網10を網データベースに登録する際に設定される。
【0038】
図5(b)に示すように、時系列データベースは、網IDごとに設けられている。時系列データベースは、対応する網IDから受信したエコー信号と、エコー信号から算出された定置網10の底14aの深度(網底深度)と、対応する網IDから受信した位置情報と、を項目として備える。
【0039】
図5(c)に示すように、ユーザデータベースは、複数のユーザ(端末装置50の使用者)を個別に識別するためのユーザIDと、ユーザIDに対応付けられた定置網10の網IDと、を項目として備える。
【0040】
図3に戻り、網底深度算出部41aは、洋上ユニット20から受信した送信パケットに基づいて、エコー信号から定置網10の底14aの深度を算出する。制御部41は、対応する時系列データベースに、エコー信号、網底深度、現在位置を記憶する。報知情報生成部41bは、定置網10の底14aの深度の算出結果に基づく報知情報を生成する。送信処理部41cは、通信部43および外部通信網32を介して、端末装置50に報知情報を送信する。このとき、送信処理部41cは、ユーザデータベースを参照し、生成した報知情報を、対応するユーザIDの端末装置50に送信する。
【0041】
端末装置50は、制御部51と、記憶部52と、表示入力部53と、通信部54と、を備える。
【0042】
制御部51は、CPU等により構成される。記憶部52は、ROMやRAM等により構成される。制御部51は、記憶部52に記憶されたプログラムにより、各種の機能を実行する。また、記憶部52には、サーバ40から受信した報知情報を表示入力部53に表示するためのプログラムが記憶されている。表示入力部53は、静電容量方式などのタッチパネルにより構成される。通信部54は、無線ルータ33(
図2参照)や外部通信網32と通信可能に接続されている。
【0043】
次に、洋上ユニット20、サーバ40および端末装置50の処理について説明する。
【0044】
図6は、洋上ユニット20およびサーバ40の処理を示すフローチャートである。
【0045】
洋上ユニット20の制御部21は、物標検出器22を駆動させて、水中に向かって送信波を送波して水中から反射波を受波し、反射波の電気信号に基づいて、深度に応じて受波した反射波の強度を含むエコー信号を取得する(S11)。制御部21は、位置検出部23を駆動させて、GPSに基づいて洋上ユニット20(定置網10)の位置情報を取得する(S12)。続いて、制御部21は、通信部24を介して、網IDと、ステップS11で取得したエコー信号と、ステップS12で取得した位置情報とを、送信パケット(
図4参照)としてサーバ40に送信する(S13)。ステップS11~S13の処理は、1ラインに相当する処理であり、所定の時間間隔で繰り返し行われる。
【0046】
サーバ40の制御部41は、洋上ユニット20から送信パケットを受信すると(S21:YES)、網底深度算出部41aの機能により網底深度算出処理を行って(S22)、送信パケットの送信元となる洋上ユニット20が設置された定置網10の底14aの深度(網底深度)を取得する。網底深度算出処理は、追って
図7を参照して説明する。そして、制御部41は、ステップS22で取得した網底深度と、ステップS21で受信したエコー信号および位置情報とを、対応する時系列データベース(
図5(b)参照)に記憶する(S23)。
【0047】
ステップS21~S23の処理は、1つの洋上ユニット20から受信した1ライン分の送信パケットに基づく処理である。制御部41は、複数の洋上ユニット20から送信パケットを受信すると、各送信パケットに応じてステップS21~S23の処理を繰り返し行う。
【0048】
図7は、網底深度算出処理を示すフローチャートである。
【0049】
サーバ40の制御部41は、
図6のステップS21で受信したエコー信号に基づいて、ステップS101~S105の処理を行う。制御部41は、エコー信号を深度方向に走査し(S101)、当該走査位置においてエコー信号の強度が閾値Eth以上であるか否かを判定する(S102)。閾値Ethは、底14aからの反射波の強度より小さく、一般的な魚群からの反射波の強度より大きく設定される。
【0050】
エコー信号の強度が閾値Eth未満である場合(S102:NO)、制御部41は、処理をステップS101に戻し、走査位置を深度方向に進める。他方、エコー信号の強度が閾値Eth以上である場合(S102:YES)、制御部41は、さらに当該走査位置が海底深度に到達したか否かを判定する(S103)。具体的には、制御部41は、たとえば、走査位置におけるエコー信号の強度が、海底深度に相当するエコー信号の強度以上である場合に、走査位置が海底深度に到達したと判定する。
【0051】
走査位置が海底深度に到達していない場合(S103:NO)、制御部41は、直近のLth以内のラインにおいて、深度±Dth以内に網底判定が閾値Pth%以上あるか否かを判定する(S104)。制御部41は、ステップS104でNOと判定すると、処理をS101に戻し、走査位置を深度方向に進める。他方、制御部41は、ステップS104でYESと判定すると、走査位置を底14aの位置と判定し、走査位置から深度(網底深度)を取得する。
【0052】
また、制御部41は、走査位置が海底深度に到達したと判定すると(ステップS103:YES)、処理を終了する。こうして網底深度算出処理が終了する。
【0053】
図8は、ラインnからラインn+6に向かって時間が経過する際の各ラインのエコー信号を模式的に示す図である。
【0054】
現在のラインがラインn+6である場合、
図7のステップS101において、制御部41は、走査位置を深度方向に進める。走査位置が深度D1に到達すると、このときのエコー信号の強度は閾値Eth未満であるため、制御部41は、ステップS102においてNOと判定し、処理をステップS101に戻して、走査位置をさらに深度方向に進める。
【0055】
走査位置が深度D2に到達すると、このときのエコー信号の強度は閾値Eth以上であり、かつ、海底深度に相当するエコー信号の強度未満であるため、制御部41は、処理をステップS104に進める。そして、制御部41は、直近のLth以内のラインにおいて、深度±Dth以内に網底判定が閾値Pth%以上あるかを判定する。
【0056】
図8に示す例では、Lthの値は5であり、直近の5つのラインが破線で囲まれている。そして、直近のLth以内において、当該走査位置の深度±Dth以内で、ラインn+2、n+4、n+5、n+6において網底判定が行われている。すなわち、直近のLth以内のラインかつ深度±Dth以内において、網底判定が計4回行われている。したがって、
図8に示す例の場合、当該走査位置における深度±Dth以内に網底判定が行われた割合は、4/5=80%である。網底判定のための閾値Pth%をたとえば60%とすると、上記割合は閾値Pth%以上である。よって、制御部41は、この場合の走査位置を底14aの位置と判定し、当該走査位置から網底深度を取得する。
【0057】
こうして、走査位置が海底深度に到達するまで、
図7のステップS101~S104の処理が繰り返し行われる。
【0058】
上記のように、直近のLth以内のラインの網底判定に基づいて、走査位置が網底位置であるか否かを判定することにより、一時的に魚群が横切ってエコー信号の強度が高くなったような場合を排除して、精度よく定置網10の底14aの位置を取得できる。
【0059】
図9は、サーバ40および端末装置50の処理を示すフローチャートである。
【0060】
端末装置50の制御部51は、表示入力部53を介してユーザから報知情報の表示を受け付けると(S41:YES)、サーバ40に対して、ユーザIDを含む開始要求情報を送信する(S42)。
【0061】
サーバ40の制御部41は、端末装置50から開始要求情報を受信すると(S31:YES)、報知情報生成部41bの機能により、報知情報を生成する(S32)。
【0062】
【0063】
報知情報は、網IDと、定置網10の名称と、底14aの基準深度と、底14aの網底深度と、基準深度に対する網底深度の変化の程度を示す変化値と、網底深度の変化レベルを示す情報と、エコー信号と、定置網10の基準位置と、定置網10(洋上ユニット20)の位置情報(現在位置)と、を項目として備える。変化値および変化レベルを示す情報は、いずれも、変化の程度を示す情報である。
【0064】
報知情報の生成処理において、制御部41は、端末装置50から受信した端末装置50のユーザIDに基づいて、
図5(c)に示したユーザデータベースを参照して、対応する定置網10の網IDを取得する。
図10に示す例には、こうして得られた網IDが、N001~N005の5つである状態が示されている。そして、制御部41は、取得した網IDに基づいて、
図5(a)に示した網データベースを参照して、対応する名称、基準深度、および基準位置を取得する。また、制御部41は、取得した網IDに基づいて、
図5(b)に示した時系列データベースを参照して、直近の1ライン分のエコー信号、網底深度、および位置情報を取得する。
【0065】
そして、制御部41は、取得した基準深度と網底深度に基づいて、変化値を取得する。たとえば、制御部41は、変化値として、基準深度と網底深度との差分を算出する。
図10に示す例では、網IDがN001~N005の定置網10において、基準深度と網底深度との差分(変化値)は、それぞれ、5m、0m、10m、15m、20mである。また、制御部41は、差分が0m以上10m未満の場合、変化レベルを示す情報を「小」とし、差分が10m以上15m未満の場合、変化レベルを示す情報を「中」とし、差分が15m以上の場合、変化レベルを示す情報を「大」とする。したがって、
図10に示す例の場合、網IDがN001、N002では変化レベルを示す情報が「小」となり、網IDがN003では変化レベルを示す情報が「中」となり、網IDがN004、N005では変化レベルを示す情報が「大」となる。
【0066】
図9に戻り、サーバ40の制御部41は、
図10に示すように報知情報を生成し(S32)、生成した報知情報を、送信処理部41cの機能により、ステップS31で開始要求情報を受け付けた端末装置50に対して送信する(S33)。
【0067】
端末装置50の制御部51は、報知情報を受信すると(S43:YES)、表示入力部53に報知情報を表示する(S44)。その後、制御部51は、表示入力部53を介してユーザから表示終了を受け付けると(S45:YES)、サーバ40に対して、ユーザIDを含む終了要求情報を送信し(S46)、処理を終了する。他方、制御部51は、表示終了を受け付けない場合(S45:NO)、言い換えれば表示終了を受け付けるまで、ステップS43~S45の処理を繰り返し行って、サーバ40から送信される報知情報を、逐一表示入力部53に表示する。
【0068】
サーバ40の制御部41は、端末装置50から終了要求情報を受信すると(S34:YES)、処理を終了する。他方、制御部51は、終了要求情報を受信しない場合(S34:NO)、言い換えれば終了要求情報を受信するまで、ステップS32、S33の処理を繰り返し行って、ラインごとに生成した報知情報を、逐一端末装置50に送信する。
【0069】
図11は、
図9のステップS44で表示入力部53に表示される画面100を模式的に示す図である。
【0070】
画面100は、エコー信号表示領域110および地図情報表示領域120を含んでいる。
【0071】
エコー信号表示領域110は、プルダウンメニュー111で選択された網IDおよび名称の定置網10のエコー信号を表示する。エコー信号表示領域110の縦方向は深度を示している。右端位置が直近のエコー信号を示しており、左に進むにつれて過去のエコー信号が示されている。
図11に例示するエコー信号表示領域110には、網IDがN002のエコー信号が表示されており、45m付近に定置網10の底14aが表示されており、90m付近に海底が表示されている。
【0072】
地図情報表示領域120には、複数の定置網10にそれぞれ対応する複数の丸いアイコン121が示されている。各アイコン121は、対応する定置網10の位置情報(報知情報に含まれる位置情報)に基づいて配置されており、対応する定置網10の位置を示している。アイコン121には、網ID、名称および網底深度が、吹き出し122により表示されている。また、アイコン121には、濃淡により変化レベルを示す情報(
図10参照)が示されている。
図11に示す例では、最も薄い色が、変化レベルを示す情報が「小」であることを示しており、最も濃い色が、変化レベルを示す情報が「大」であることを示しており、中程度の色が、変化レベルを示す情報が「中」であることを示している。
【0073】
図11のような画面100を参照することにより、たとえば、ユーザ(参照者)は以下のような判断を行うことができる。
【0074】
ユーザは、地図情報表示領域120を参照して、網底深度を確認する。N001の定置網10(1号)とN002の定置網10(2号)のように網底深度が深い場合、一般に定置網10付近の流速が遅いと判断できるため、ユーザは、1号と2号について、漁獲行動を起こすことができる。
【0075】
なお、1号および2号のように網底深度が深い場合に、ユーザは、エコー信号表示領域110を参照して、漁獲行動を起こすか否かを最終決定してもよい。たとえば、2号のように、網底深度が深くても、エコー信号にほとんど魚群が写っていない場合、漁獲行動を見送ることができる。
【0076】
また、N004の定置網10(4号)とN005の定置網10(5号)のように、網底深度が浅い場合、一般に定置網10付近の流速が速いと判断できるため、ユーザは、4号と5号について、漁獲行動を見送ることができる。また、N003の定置網10(3号)のように、網底深度が中程度の場合、ユーザは、あわせてエコー信号表示領域110を参照して、エコー信号に魚群が写っていれば、漁獲行動を起こすこともできる。
【0077】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0078】
網底深度算出部41aは、エコー信号に基づいて定置網10の底14aの深度(網底深度)を算出し、報知情報生成部41bは、網底深度の算出結果に基づく報知情報を生成し、送信処理部41cは、外部通信網32を介して端末装置50に報知情報を送信する。この構成によれば、端末装置50を介して、定置網10の底14aの深度に関する報知情報を出力させることができる。これにより、報知情報の参照者は、定置網10の底14aの状態を監視でき、当該定置網10に船を進めて漁獲を行うべきかを判断できる。
【0079】
網底深度算出部41aは、現時点から所定回数前までの音波の送波によりそれぞれ得られたエコー信号から定置網10の底14aを推定して、底14aの深度を算出する。この構成によれば、これら複数のエコー信号により略同様の深度で物標の検出が連続する場合、当該物標を定置網10の底14aと推定できる。
【0080】
報知情報生成部41bは、基準深度に対する底14aの深度の変化の程度を示す情報(たとえば、変化レベルを示す情報)を、報知情報として生成する。この構成によれば、報知情報の参照者は、現時点において、潮流等により定置網10の底14aが基準深度に対してどの程度変化した状態にあるか(たとえば、どの程度浮き上がった状態にあるか)を把握できる。
【0081】
報知情報生成部41bは、基準深度に対する変化レベルを複数設定し、基準深度に対する底14aの深度の変化に対応する変化レベルを示す情報(たとえば、大、中、小)を、報知情報として生成する。この構成によれば、報知情報の参照者は、変化レベルを示す情報を参照することにより、現時点において、定置網10の底14aが基準深度に対してどの程度変化した状態にあるかを、より直感的に把握できる。
【0082】
位置検出部23は、地表上における定置網10の位置を検出し、送信処理部41cは、定置網10の位置に関する情報(
図10の位置情報)を、端末装置50に送信する。この構成によれば、報知情報の参照者は、報知情報とともに、さらに、その報知情報が示された定置網10の位置(
図11においてアイコンが示す地図上の位置)を把握できる。これにより、参照者は、定置網10の位置を確実に把握できる。
【0083】
送受波部22bは、複数の定置網10に対してそれぞれ配置されており、網底深度算出部41aは、各送受波部22bから出力される各エコー信号に基づいて各定置網10の底14aの深度を算出する。この構成によれば、報知情報の参照者は、定置網10ごとに、底14aの状態を把握できる。
【0084】
地図情報表示領域120には、網ID(定置網10)に対応するアイコン121が表示される。アイコン121は、定置網10の位置を示すマークと、定置網10の底14aの状態を示す画像(濃淡のある画像)とにより構成されている。この構成によれば、参照者は、定置網10の位置と底14aの状態とを互いに関連付けて直感的に把握できる。
【0085】
<変更例1>
上記実施形態では、端末装置50からサーバ40に対して開始要求情報が送信された場合に、サーバ40から端末装置50に報知情報が送信された。これに対し、本変更例では、サーバ40において網底深度が所定の条件を満たした場合に、サーバ40から端末装置50に他の報知情報が送信される。
【0086】
図12は、本変更例において他の報知情報が送信される処理を示すフローチャートである。
図12に示す処理は、上記実施形態の処理と並行して、網ID(定置網10)ごとに繰り返し行われる。
【0087】
サーバ40の制御部41は、
図6のステップS22において網底深度を算出すると(S51:YES)、
図5(b)に示した時系列データベースの網底深度を参照して、網底深度が、所定の範囲Dr外となってから所定の時間Tthが経過したか否かを判定する(S52)。たとえば、
図13(a)に示す例では、網底深度が時間の経過に応じて変化し、網底深度が範囲Dr外となってから時間Tthが経過している。この場合、制御部41は、ステップS52においてYESと判定する。
【0088】
ステップS52においてYESと判定されると、制御部51は、送信処理部41cの機能により、他の報知情報を端末装置50に送信する(S53)。他の報知情報は、ステップS52に示す条件が満たされたことを示す情報、具体的には、網底深度が範囲Dr外となってから時間Tthが経過したことを示す情報を含む。本変更例では、
図5(c)に示したユーザデータベースが、メールアドレスや電話番号などの項目を含む。制御部51は、ステップS53において、ユーザデータベースを参照して、対応するメールアドレスや電話番号を用いて、電子メールやSMSにより他の報知情報を端末装置50に送信する。他方、ステップS52においてNOと判定されると、ステップS53はスキップされる。
【0089】
端末装置50の制御部51は、サーバ40から他の報知情報を受信すると(S61:YES)、他の報知情報を表示入力部53に表示する(S62)。
【0090】
なお、他の報知情報を送信するための条件(S52)は、上記に限らない。以下に示す条件が満たされる場合に、他の報知情報が端末装置50に送信されてもよい。
【0091】
たとえば、ステップS52において、制御部41は、網底深度が、所定の範囲Dr内となってから所定の時間Tthが経過したか否かを判定してもよい。たとえば、
図13(b)に示す例では、網底深度が範囲Dr内となってから時間Tthが経過している。この場合、制御部41は、ステップS52においてYESと判定する。
【0092】
また、ステップS52において、制御部41は、所定の時間Tth内に網底深度が所定量ΔD以上変化したか否かを判定してもよい。たとえば、
図13(c)に示す例では、所定の時間Tthの間に網底深度が所定量ΔD以上変化している。この場合、制御部41は、ステップS52においてYESと判定する。
【0093】
また、ステップS52において、制御部41は、網底深度が所定の深度に到達する可能性があるか否かを判定してもよい。また、ステップS52において、制御部41は、1つ前のラインから現在のラインまでの間の網底深度の変化量や変化率が所定量以上であるか否かを判定してもよく、現在のラインの網底深度から所定時間後の気象予報に基づく網底深度の予測値までの変化量が所定量以上であるか否かを判定してもよい。また、ステップS52において、制御部41は、直近の所定数のラインにおける網底深度の平均値、最大値、または最小値が、所定値以上または所定値以下であるか否かを判定してもよい。
【0094】
<変更例1の効果>
網底深度が所定の状態となった場合に(S52:YES)、サーバ40の制御部41は、電子メールやSMSにより他の報知情報を端末装置50に送信する。これにより、ユーザは、ステップS52の条件が満たされたことを迅速に把握できる。
【0095】
<変更例2>
上記実施形態において、洋上ユニット20は、さらに海象状態を検出するための装置を備えてもよい。
【0096】
図14は、本変更例に係る、洋上ユニット20の構成を示すブロック図である。
【0097】
洋上ユニット20は、
図2と同様の制御部21、物標検出器22、位置検出部23、および通信部24に加えて、潮流計25を備える。潮流計25は、複数の深度範囲(層)における潮流の方向および速さを計測する。潮流計25の計測結果(潮流情報)は、制御部21に出力され、制御部21は、
図4に示した送信パケットに潮流情報を付加して、上記実施形態と同様、送信パケットをサーバ40に送信する。
【0098】
サーバ40の制御部41は、受信した送信パケット内の潮流情報を、
図5(b)に示した網IDごとの時系列データベースに潮流情報を記憶する。制御部41は、端末装置50から開始要求情報を受信すると、
図9のステップS32において、
図15に示すような報知情報を生成する。
図15の報知情報は、
図10の報知情報と比較して、潮流情報が付加されている。制御部41は、
図9のステップS33において、上記実施形態と同様、生成した報知情報を端末装置50に送信する。
【0099】
端末装置50の制御部51は、
図9のステップS44において、サーバ40から受信した報知情報を、表示入力部53に表示する。
【0100】
図16は、本変更例に係る、
図9のステップS44で表示入力部53に表示される画面100を模式的に示す図である。
【0101】
本変更例の画面100には、上記実施形態と比較して、潮流情報表示領域112が追加されている。潮流情報表示領域112は、報知情報に基づいて表示され、潮流計25の設置方向(洋上ユニット20が向いている方向)と、複数の深度範囲(層)における潮流の方向および速さとが表示されている。潮流情報表示領域112には、プルダウンメニュー111で選択された定置網10における潮流の方向および速さが表示される。
【0102】
また、本変更例の地図情報表示領域120内のアイコン121は、上記実施形態と比較して、矢印に変更されている。アイコン121の矢印が示す方向は、報知情報に基づいて設定され、複数の層のうち予め決められた層の潮流の方向を示している。また、吹き出し122には、網ID、名称および網底深度に加えて、定置網10における潮流の速さが表示されている。吹き出し122内の潮流の速さは、複数の層のうち予め決められた層の潮流の速さである。
【0103】
なお、アイコン121および吹き出し122により示される潮流の方向および速さは、予め決められた層の潮流の方向および速さに限らず、ユーザが、表示入力部53に表示される受付画面を介して設定した層の潮流の方向および速さであってもよい。また、地図情報表示領域120の各アイコンの位置に、定置網10に対応する潮流情報表示領域112が、アイコンに代えて表示されてもよい。
【0104】
図16のような画面100を参照することにより、たとえば、ユーザ(参照者)は、上記実施形態と同様の判断に加えて、以下のような判断を行うことができる。
【0105】
ユーザは、地図情報表示領域120を参照して、網底深度を確認する。N001の定置網10(1号)とN002の定置網10(2号)のように網底深度が深い場合、一般に定置網10付近の流速が遅く漁獲に適していると判断できるが、流速が速い場合にも定置網10に対する潮流の当たり方で、まれに網底深度が深くなる場合がある。ユーザは、このような状態を、潮流情報表示領域112および吹き出し122の潮流の速さを参照することにより想定できる。よって、ユーザは、このような場合には、漁獲行動を見送ることができる。
【0106】
また、N004の定置網10(4号)とN005の定置網10(5号)のように、網底深度が浅い場合、一般に定置網10付近の流速が速いと判断できるが、定置網10に何らかの異常が生じた場合、定置網10付近の流速が遅いにもかかわらず、網底深度が浅くなる場合がある。ユーザは、このような状態を、潮流情報表示領域112および吹き出し122の潮流の速さを参照することにより想定できる。よって、ユーザは、このような場合には、底14aの状態を確認する必要があると判断できる。
【0107】
さらに、ユーザは、潮流の速さが安定しない場合には、網底深度にかかわらず、漁獲行動を見送ることができる。また、ユーザは、潮流の方向と定置網10の設置角度から、漁獲のしやすさを判断できる。
【0108】
<変更例2の効果>
潮流計25の計測結果に基づいて、潮流情報表示領域112に複数の深度範囲(層)における潮流の方向および速さが表示される。アイコン121の矢印が示す方向は、定置網10における潮流の方向であり、吹き出し122には、定置網10における潮流の速さが表示される。この構成によれば、参照者は、定置網10の底14aの状態に加えて、定置網10における潮流の状況を把握できる。
【0109】
<その他の変更例>
本発明は、上記実施形態に制限されるものではない。また、本発明の実施形態は、上記構成の他に種々の変更が可能である。
【0110】
たとえば、上記実施形態では、端末装置50は、スマートフォンやタブレットなどの情報端末装置であったが、これに限らず、ディスプレイ等の表示部と、キーボードやマウス等の入力部とを備えたパソコンでもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、定置網10の底14aの深度を算出する網底深度算出部41aは、サーバ40の制御部41の機能として設けられたが、ハードウェアとしてサーバ40に設けられてもよい。また、網底深度算出部41aは、洋上ユニット20に設けられてもよい。また、洋上ユニット20とサーバ40との間に制御装置が介在し、この制御装置に網底深度算出部が配置されてもよい。また、上記実施形態において、網底深度算出部41a、報知情報生成部41bおよび送信処理部41cは、1つのサーバ40に設けられたが、複数のサーバに分散して設けられてもよい。
【0112】
図17は、網底深度算出部が洋上ユニット20に設けられる変更例に係る、定置網監視システム1の構成を示すブロック図である。
【0113】
本変更例では、
図3に示した上記実施形態の構成と比較して、洋上ユニット20の制御部21は、制御部21内のメモリに記憶されたプログラムにより、網底深度算出部21aの機能を実行する。また、
図3の構成と比較して、サーバ40の制御部41から、網底深度算出部41aの機能が削除されている。
【0114】
図18は、網底深度算出部が洋上ユニット20に設けられる変更例に係る、洋上ユニット20およびサーバ40の処理を示すフローチャートである。
【0115】
図18の処理では、
図3に示した上記実施形態の処理と比較して、ステップS12とステップS13の間にステップS14が追加され、ステップS22が削除されている。以下、
図3の処理と異なる部分について説明する。
【0116】
洋上ユニット20の制御部21は、網底深度算出部21aの機能により、ステップS11で取得したエコー信号に基づいて、
図7のステップS101~S105の処理を行う(S14)。そして、制御部21は、通信部24を介して、網IDと、ステップS11で取得したエコー信号と、ステップS12で取得した位置情報と、ステップS14で取得した網底深度とを、送信パケットとしてサーバ40に送信する(S13)。サーバ40の制御部41は、洋上ユニット20から送信パケットを受信すると(S21:YES)、ステップS21で受信したエコー信号、位置情報、および網底深度を、対応する時系列データベース(
図5(b)参照)に記憶する(S23)。
【0117】
図17、18に示す変更例においても、サーバ40の制御部41は、報知情報生成部41bの機能により、網底深度等に基づいて報知情報を生成し、送信処理部41cの機能により、報知情報を端末装置50に送信する。そして、端末装置50の制御部51は、受信した報知情報を画面100に表示する。これにより、報知情報の参照者は、定置網10の底14aの状態を監視でき、当該定置網10に船を進めて漁獲を行うべきかを判断できる。また、本変更例によれば、網底深度の算出が洋上ユニット20で行われるため、サーバ40にかかる負荷を軽減できる。
【0118】
また、上記実施形態では、基準深度および基準位置は、あらかじめ網データベース(
図5(a)参照)に設定されたが、基準深度は、通常状態の定置網10の網底深度により設定されてもよく、基準位置は、通常状態の定置網10の位置情報により設定されてもよい。また、基準深度および基準位置は、ユーザが端末装置50を操作することにより設定および変更されてもよい。この場合、たとえば、端末装置50の表示入力部53に受付画面が表示され、ユーザは、受付画面を介して、定置網10の網IDと、基準深度および基準位置とを対応付けて、サーバ40の網データベースに登録する。受付画面には、基準位置を入力するための地図が表示され、ユーザは、地図上の位置をタップ等で指定することにより基準位置を入力してもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、
図8のステップS104において、Lthの値は5であり、Pth%は60%であったが、一時的な魚群を排除して精度よく底14aの位置を取得できれば、これらの値は他の値であってもよい。また、ステップS104の判定で用いるDthは、海中で上下する定置網10の底14aを捉えることができれば、適宜変更可能である。
【0120】
また、
図8のステップS104において、網底判定が閾値Pth%以上であるか否かの判定に代えて、網底判定が閾値Pth%以上連続しているか否かが判定されてもよい。また、ステップS104において、直近のLth以内のラインが判定対象とされることに代えて、直近の(現在の)ラインのみが判定対象とされてもよい。また、ステップS104において、深さに応じたエコー信号の強度の移動平均の値が、閾値Eth以上であるか否かが判定されてもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、
図9のステップS32において、制御部41は、基準深度に対する網底深度の変化の程度を示す変化値として、基準深度と網底深度との差分を算出したが、これに限らず、基準深度に対する網底深度の比率を算出してもよい。この場合、比率が3種類の範囲に含まれるか否かに応じて、変化レベルを示す情報が設定される。
【0122】
また、上記実施形態では、地図情報表示領域120のアイコン121(
図11参照)は、対応する定置網10の位置情報に基づいて配置されたが、端末装置50の制御部51は、報知情報に含まれる基準位置に基づいて、各定置網10に対応するアイコン121を配置してもよい。また、制御部51は、報知情報に含まれる位置情報と基準位置との差分を算出し、各定置網10の現在の位置が基準位置からどの程度ずれているかを画面100に表示してもよい。こうすると、不測の事態により定置網10が大きく流された場合に、ユーザは、このような事態を迅速に把握できる。
【0123】
また、上記実施形態では、アイコン121において、濃淡により変化レベルを示す情報が表示されたが、変化レベルを示す情報に対応する色はこれに限らない。たとえば、緑色、黄色、赤色が、それぞれ、変化レベルを示す情報「小」、「中」、「大」に対応してもよい。また、アイコン121の大きさが、変化レベルを示す情報に応じて変化してもよい。たとえば、「大」、「中」、「小」の大きさのアイコン121が、それぞれ、変化レベルを示す情報「大」、「中」、「小」に対応してもよい。
【0124】
また、上記実施形態において、アイコン121に代えて、定置網10の位置を示すマークと、定置網10の底14aの状態を示す画像とが、地図情報表示領域120に別々に配置されてもよい。また、吹き出し122に、網底深度の変化値(報知情報の変化値)が表示されてもよい。この場合、吹き出し122内の変化値の文字に、変化レベルを示す情報に応じた色が付されてもよい。
【0125】
また、上記実施形態において、地図情報表示領域120の情報(網ID、名称、網底深度、位置情報、変化レベルを示す情報)の一部または全部が、画面100においてリスト表示されてもよい。
【0126】
また、上記実施形態において、洋上ユニット20が、洋上ユニット20の動揺を計測するための動揺センサを備えてもよい。この場合、洋上ユニット20は、動揺センサにより計測された洋上ユニット20の傾きを、送信パケットに付加する。サーバ40の制御部41は、洋上ユニット20の傾きに基づいて、送信パケット内のエコー信号が、洋上ユニット20の真下方向を対象とした適正なエコー信号であるか否かを判定し、送信パケット内のエコー信号が適正である場合に限り、当該エコー信号を網底深度の算出に用いる。これにより、算出する網底深度の精度を高めることができる。
【0127】
また、上記実施形態において、サーバ40の制御部41は、
図9のステップS32において、海象(潮流)の予測結果に基づいて、底14aが所定の網底深度に到達するまでの予測時間を算出し、算出した予測時間を報知情報に付加してもよい。この場合、画面100には、底14aが所定の網底深度に到達するまでの予測時間が表示される。
【0128】
また、上記実施形態において、洋上ユニット20は、水温、塩分濃度、溶存酸素量などの他の海象情報を検出するセンサを備えてもよい。この場合、他の海象情報は、送信パケットに付加されてサーバ40に送信され、サーバ40のデータベースに記憶される。そして、端末装置50の画面100には、これらの他の海象情報が適宜表示される。
【0129】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 定置網監視システム
10 定置網
14a 底
20 洋上ユニット
21a 網底深度算出部
22b 送受波部
23 位置検出部
32 外部通信網
40 サーバ
41a 網底深度算出部
41b 報知情報生成部
41c 送信処理部
50 端末装置
51 制御部
53 表示入力部(表示部)
120 地図情報表示領域(地図)
121 アイコン(マーク、画像)