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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179165
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】測定装置、及び測定装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20221125BHJP
   G01B 5/28 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G01B5/00 P
G01B5/28 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086453
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 海斗
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA66
2F062CC10
2F062CC27
2F062DD21
2F062DD22
2F062DD23
2F062DD25
2F062DD27
2F062DD28
2F062EE01
2F062FF02
2F062FF12
2F062JJ04
(57)【要約】
【課題】校正処理及び校正の確認を容易に実施可能な測定装置、及び測定装置の校正方法を提供する。
【解決手段】表面性状測定機1は、スタイラス13を有し、スタイラス13と測定対象との接触位置に応じた検出信号を出力する検出器10と、表面粗さが既知の標準値となる標準片を測定対象とした校正処理において、標準片の所定の評価長さの評価領域に対する1走査の測定を実施する測定部422と、評価領域のうちの第一領域で得られる検出信号と標準値とに基づいてゲインを調整する校正部425と、評価領域のうちの第二領域の検出信号及び調整されたゲインを用いて算出される表面粗さの測定値と、標準値とに基づいてゲインの精度を判定する校正精度判定部426と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に対して接触可能な触針を有し、前記触針と前記測定対象との接触位置に応じた検出信号を出力する検出器と、
前記触針により前記測定対象を走査した際の前記検出信号を測定する測定部と、
表面粗さが既知の標準値となる標準片を前記測定対象として用いた校正処理において、前記標準片に対する走査によって測定される前記検出信号と、前記標準値とに基づいて、前記検出信号から表面粗さを算出するためのゲインを調整する校正部と、
調整された前記ゲインの精度を判定する校正精度判定部と、を備え、
前記測定部は、前記校正処理を実施する場合に、前記標準片の所定の評価長さの評価領域に対する1走査の測定を実施し、
前記校正部は、前記評価領域のうちの第一領域で得られる前記検出信号と、前記標準値とに基づいて前記ゲインを調整し、
前記校正精度判定部は、前記評価領域のうちの前記第一領域とは異なる第二領域の前記検出信号と前記校正部で調整された前記ゲインとを用いて算出される表面粗さの測定値と、前記標準値とに基づいて前記ゲインの精度を判定する、測定装置。
【請求項2】
前記評価領域、前記第一領域、及び前記第二領域は、所定の基準長さの基準区間を含み、整数個の前記基準区間により構成されている、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第一領域及び前記第二領域に含まれる前記基準区間の個数は同数である、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記評価領域において、前記第一領域に含まれる前記基準区間のうちの一部と、前記第二領域に含まれる前記基準区間の一部とは重複する、
請求項2または請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記校正部は、前記評価領域に対する走査によって得られた前記検出信号に基づいて算出される表面粗さと前記標準値との差が所定の許容値以内である場合に前記ゲインを調整し、前記許容値を超える場合に校正エラーとして前記ゲインの調整を実施しない、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
測定対象に対して接触可能な触針を有し、前記触針と前記測定対象との接触位置に応じた検出信号を出力する検出器と、前記触針により前記測定対象を走査した際の前記検出信号を測定する測定部と、を備えた測定装置の校正方法であって、
表面粗さが既知の標準値となる標準片を前記測定対象とし、前記測定部により、前記標準片の所定の評価長さの評価領域に対する1走査の測定を実施する測定ステップと、
前記評価領域のうちの第一領域で得られる前記検出信号と、前記標準値とに基づいて、前記検出信号から表面粗さを算出するためのゲインを調整する校正ステップと、
前記評価領域のうちの前記第一領域とは異なる第二領域の前記検出信号と前記校正ステップで調整された前記ゲインとを用いて算出される表面粗さの測定値と、前記標準値とに基づいて前記ゲインの精度を判定する校正精度判定ステップと、
を実施する測定装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面粗さを測定する測定装置、及び当該測定装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象の表面粗さを測定する測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような形状測定装置では、触針(スタイラス)を揺動させながら測定対象に接触させ、触針を測定対象の表面に沿って移動させる。
また、このような測定装置では、正常な測定値が得られるように校正処理が必要となる。一般的に、測定装置の校正処理では、表面粗さが既知である校正用の標準片(例えば、特許文献2参照)を用いた測定を実施し、測定値が標準片の表面粗さとなるように、測定装置の内部ゲインを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-169641号公報
【特許文献2】特開2007-33291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10は、従来の表面粗さを測定する測定装置における標準片を用いた校正処理での操作画面の例である。従来の測定装置では、標準片を用いた校正を行う場合、図10(A)の校正案内画面90において、ユーザが、標準片の既知の表面粗さ(基準値)を所定の入力欄91に入力または選択し、測定装置により標準片の測定を行う。これにより、図10(B)のように、測定結果92が画面上に表示され、さらに、図10(C)のように、算出された表面粗さ(測定値)が結果出力欄93に表示される。そして、ユーザにより、「更新」ボタンが選択される等、更新を行う旨の操作が実施されると、測定値が基準値となるように、測定装置の内部ゲインが自動的に調整される。
【0005】
しかしながら、この場合、ユーザが、校正が正しく行われたか否か、また、どの程度のレベルで校正が行われたかを知るためには、再び、図10(A)に戻り、再度、標準片に対する測定を実施し、その測定値を表示する必要がある。すなわち、ユーザは、標準片に対して少なくとも2回測定を実施する必要があり、煩雑であるとの課題があった。
また、標準片に対して接触型のスタイラスを複数接触させると、標準片及びスタイラスの摩耗が進行し、標準片及びスタイラスの寿命を短くする原因になるとの課題もあった。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑み、校正処理及び校正の確認を容易に実施可能な測定装置、及び測定装置の校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の測定装置は、測定対象に対して接触可能な触針を有し、前記触針と前記測定対象との接触位置に応じた検出信号を出力する検出器と、前記触針により前記測定対象を走査した際の前記検出信号を測定する測定部と、表面粗さが既知の標準値となる標準片を前記測定対象として用いた校正処理において、前記標準片に対する走査によって測定される前記検出信号と、前記標準値とに基づいて、前記検出信号から表面粗さを算出するためのゲインを調整する校正部と、調整された前記ゲインの精度を判定する校正精度判定部と、を備え、前記測定部は、前記校正処理を実施する場合に、前記標準片の所定の評価長さの評価領域に対する1走査の測定を実施し、前記校正部は、前記評価領域のうちの第一領域で得られる前記検出信号と、前記標準値とに基づいて前記ゲインを調整し、前記校正精度判定部は、前記評価領域のうちの前記第一領域とは異なる第二領域の前記検出信号と前記校正部で調整された前記ゲインとを用いて算出される表面粗さの測定値と、前記標準値とに基づいて前記ゲインの精度を判定する。
【0008】
つまり、本態様では、標準片の評価領域に対して1回の走査を行い、その評価領域に含まれる第一領域で得られる測定結果と、標準値とに基づいてゲインを算出する校正処理を実施する。そして、調整後のゲインを用いて、評価領域のうちの第二領域の検出信号から表面粗さ(測定値)を算出し、校正精度の判定(つまり、算出されたゲインが適正であるか否かの確認)を行う。
これにより、ユーザは、標準片に対して複数の測定を実施することなく、1走査の測定で得られた測定結果から、校正処理と、校正精度の判定とを行うことができる。また、標準片に対して、1回の走査で、校正及び校正精度の判定を行うことができるので、従来に比べて、標準片への測定回数を減らすことができ、標準片の摩耗を抑制することができる。
【0009】
本態様の測定装置において、前記評価領域、前記第一領域、及び前記第二領域は、所定の基準長さの基準区間を含み、整数個の前記基準区間により構成されている。
表面粗さの算出は、基準長さの区間毎に算出されることが一般的であり、第一領域及び第二領域を基準長さの整数倍とすることで、ゲインの調整、及び、調整されたゲインの合否判定を、適正に実施することができる。
【0010】
ここで、本態様の測定装置では、前記第一領域及び前記第二領域に含まれる前記基準区間の個数は同数であることが好ましい。
これにより、校正を行うための第一領域に含まれる基準区間の個数と、校正の確認を行うための第二領域に含まれる基準区間の個数とが同一であるため、各々の処理(校正,確認)で算出される測定値の精度を同程度にできる。
【0011】
また、本態様の測定装置では、前記評価領域において、前記第一領域に含まれる前記基準区間のうちの一部と、前記第二領域に含まれる前記基準区間の一部とは重複してもよい。
本態様の測定装置では、標準片における第一領域と第二領域を全く別の領域としてもよいが、この場合、評価領域の長さが長くなる。これに対し、第一領域の一部と第二領域の一部が重複することで、評価領域の長さを短くでき、校正に係る時間も短縮することができる。
【0012】
本態様の測定装置において、前記校正部は、前記評価領域に対する走査によって得られた前記検出信号に基づいて算出される表面粗さと前記標準値との差が所定の許容値以内である場合に前記ゲインを調整し、前記許容値を超える場合に校正エラーとして前記ゲインの調整を実施しない。
本態様では、標準片の評価領域に対する測定を行うことで、表面粗さの測定値を算出し、その値が標準値から大きく乖離する場合、測定時にエラーが発生している可能性が高い。このような場合、校正処理を続けると、不適正な校正が実施されることになる。これに対して、本態様では、測定値と標準値とが大きく異なる場合には、校正処理を実施しない。これにより、不適正な校正が実施される不都合を回避することができる。
【0013】
本発明の第二態様の測定装置の校正方法は、測定対象に対して接触可能な触針を有し、前記触針と前記測定対象との接触位置に応じた検出信号を出力する検出器と、前記触針により前記測定対象を走査した際の前記検出信号を測定する測定部と、を備えた測定装置の校正方法であって、表面粗さが既知の標準値となる標準片を前記測定対象とし、前記測定部により、前記標準片の所定の評価長さの評価領域に対する1走査の測定を実施する測定ステップと、前記評価領域のうちの第一領域で得られる前記検出信号と、前記標準値とに基づいて、前記検出信号から表面粗さを算出するためのゲインを調整する校正ステップと、前記評価領域のうちの前記第一領域とは異なる第二領域の前記検出信号と前記校正ステップで調整された前記ゲインとを用いて算出される表面粗さの測定値と、前記標準値とに基づいて前記ゲインの精度を判定する校正精度判定ステップと、を実施する。
これにより、上記第一態様と同様、ユーザは、標準片に対して複数の測定を実施することなく、校正が適正に実施されたか否かを確認することができ、かつ、従来に比べて、標準片への測定回数を減らすことで標準片の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る一実施形態の表面性状測定機の外観を示す斜視図。
図2】本実施形態の表面性状測定機の内部機構を示す図。
図3】本実施形態の表面性状測定機の校正方法を示すフローチャート。
図4】本実施形態における校正案内情報の一例を示す図。
図5】本実施形態における測定結果情報の一例を示す図。
図6】本実施形態における測定を実施する評価領域と、ゲイン調整を行うための第一領域と、校正の確認を行うための第二領域との関係を示す図。
図7】本実施形態における校正処理後の校正案内情報の一例を示す図。
図8】変形例1における評価領域と、第一領域と、第二領域との関係を示す図。
図9】変形例2における評価領域と、第一領域と、第二領域との関係を示す図。
図10】従来の測定装置における校正案内情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る表面性状測定機(測定装置)について説明する。
(1.表面性状測定機の概略構成)
図1は、本実施形態の表面性状測定機1の外観を示す斜視図であり、図2は、表面性状測定機1の内部機構を示す図である。
本実施形態の表面性状測定機1は、ワーク表面(測定対象)の変位を検出する検出器10と、検出器10を移動させる駆動部20と、ユーザインターフェイス30と、各種制御を行う制御部40とを備える。なお、本実施形態で例示される表面性状測定機1は、ハンディタイプの測定機であって、検出器10、駆動部20および制御部40を一体に収容するケース2をさらに備える。
【0016】
検出器10は、駆動部20に保持された検出器本体11と、検出器本体11により揺動可能に支持されたスタイラスアーム12と、スタイラスアーム12の先端に突設されたスタイラス13(触針)と、スタイラスアーム12の基端の揺動量を検出する検出素子14とを備える。
スタイラス13が被測定物の表面に沿って移動すると、ワーク表面の表面性状、すなわち表面粗さによって、スタイラス13が上下動する。スタイラス13の上下動は、検出素子14によって検出信号として検出される。
【0017】
駆動部20は、ケースに固定されたモータ21と、モータ21に連結された送りねじ機構22と、送りねじ機構22によって測定方向に送られる保持部材23とを備える。保持部材23には、上述の検出器本体11が保持される。また、送りねじ機構22には、X軸方向における保持部材23の移動量を検出するためのエンコーダが設けられている。
【0018】
ユーザインターフェイス30は、各種情報を表示する表示部31と、ユーザによる入力操作を受け付ける操作部32とを有する。操作部32は、ケース表面に設置される操作ボタンであってもよいし、表示部31と共に構成されるタッチディスプレイでもよい。
なお、本実施形態において、表示部31および操作部32は、ケース2の表面部に配置されているが、これに限定されない。例えば、表面性状測定機1と通信可能に端末装置が接続され、当該端末装置に設けられた表示部に各種情報を表示させたり、当該端末装置に設けられた操作手段でユーザの入力操作を受け付けたりしてもよい。
【0019】
制御部40は、コンピュータにより構成されており、検出器10および駆動部20を制御する。この制御部40は、図2に示すように、メモリ等により構成される記憶部41と、CPU(Central Processing Unit)等により構成される演算部42と、を備える。
また、演算部42は、記憶部41に記憶されたプログラムを読み込み実行することで、駆動制御部421、測定部422、表面粗さ算出部423、パラメータ設定部424、校正部425、校正精度判定部426、および出力部427として機能する。
【0020】
駆動制御部421は、駆動部20を制御することにより、測定方向における検出器10の移動を制御する。
測定部422は、スタイラス13をワーク表面に沿って移動させた際の、スタイラス13の上下動に応じた検出信号の変化(スタイラス13とワーク表面との接触位置の変化)を測定する。つまり、測定部422は、所定のサンプリング間隔で検出信号を取得する。
表面粗さ算出部423は、測定部422で測定された検出信号の変化に基づいて、ワーク表面の表面粗さ(例えば、算術平均高さRa)を算出する。より具体的には、表面粗さ算出部423は、検出信号の信号値の平均に対して、記憶部41に記憶されたゲインGを乗算することで、算術平均高さRaを算出する。なお、ゲインGは、後述する校正部425により算出される。
【0021】
パラメータ設定部424は、表面性状測定機1の校正を行う場合に用いる各種パラメータを設定する。
校正部425は、標準片に対して検出器10により測定を行った際の検出信号と、標準片の既知の標準値とに基づいて、検出信号から表面粗さを算出するためのゲインGを算出、すなわちゲイン調整を行う。つまり、表面粗さ算出部423により算出される表面粗さが、標準値と一致または略一致させるためのゲインGの校正を行う。
校正精度判定部426は、校正部425により実施された校正の精度判定、つまり算出されたゲインGの精度判定を行う。精度判定として、調整されたゲインに基づいて表面粗さ算出部423により算出される表面粗さ(測定値)と標準値との差を判定結果としてもよく、当該差が所定の誤差範囲内であるかの合否判定を行ってもよい。
出力部427は、校正処理において実施した測定の測定結果や、校正精度判定部426により判定された精度判定等を表示部31に表示させる。
【0022】
(2.表面性状測定機の校正方法)
次に、本実施形態の表面性状測定機1の校正処理について説明する。
図3は、表面性状測定機1の校正方法を示すフローチャートである。
表面性状測定機1の校正処理を実施する場合、測定対象のワークとして標準片を用いる。この標準片は、例えば、特開2007-33291号公報に記載のものを用いることができ、表面粗さRaが既知の標準値Bとなるように製造されている。
【0023】
まず、表面性状測定機1は、ユーザの操作によって校正処理を行う旨の入力操作を受け付けると、出力部427が、表示部31に校正案内情報を表示させる(ステップS1)。
図4は、本実施形態における校正案内情報の一例である。図4に示すように、校正案内情報50には、例えば、規格情報51、速度情報52、カットオフ情報53、区間数情報54、測定項目情報55、標準値情報56、測定値情報57等を含む。
【0024】
規格情報51は、表面性状測定機1による表面粗さ測定の対応規格を示す。
速度情報52は、駆動部20によりスタイラス13(検出器10)を移動させる移動速度を示す。
カットオフ情報53は、表面粗さ測定を実施する際の基準長さを示す。
区間数情報54は、測定を実施する際の測定領域の長さを示す。つまり、本実施形態の表面性状測定機1は、カットオフ情報53に示される基準長さ(カットオフλc)の区間(基準区間)を、区間数情報54に示される区間数(整数)の分だけ、ワーク表面(標準片の表面)に沿って走査する。標準片の表面のうち、校正処理により走査される領域が本発明の評価領域であり、評価領域の長さである評価長さは、(評価長さ)=(基準長さ)×(区間数)となる。
測定項目情報55は、測定条件等を示す。例えば、表面粗さとして算出するパラメータ(算術平均高さRa、二乗平均平方根高さRq等)、許容される誤差の範囲(例えば±3%等)の情報が示される。
標準値情報56は、設定された標準片の表面粗さ(標準値B)を示す。
なお、規格情報51、速度情報52、カットオフ情報53、区間数情報54、測定項目情報55、標準値情報56は、ユーザの入力操作によって適宜変更することができる。
【0025】
測定値情報57は、標準片を測定した際に得られた測定値を示す。測定値としては、算出された表面粗さが示されてもよく、標準値との差が示されてもよい。また、測定値情報57には、標準値との差が許容される誤差の範囲内であるか否かを示す合否情報が示される。また、校正処理において、標準片の測定を行っていない初期状態である場合、図4に示すように、測定値情報57として、測定を開始する旨の測定開始アイコン57Aが示される。なお、図4は、標準片の測定前の画面例であるため、測定値情報57には値が表示されていない。
【0026】
そして、パラメータ設定部424は、各種パラメータの変更指示を受け付けたか否かを判定し(ステップS2)、受け付けた場合(YESの場合)は、変更指示に基づいて、パラメータを変更(更新)する(ステップS3)。各種パラメータは、規格情報51、速度情報52、カットオフ情報53、区間数情報54、測定項目情報55、標準値情報56であり、変更されたパラメータは適宜、記憶部41に記憶される。すなわち、本実施形態では、校正処理を実施する前に、標準値の他、許容される許容誤差等をも設定することができる。
【0027】
また、ユーザが測定開始アイコン57Aを選択すると、駆動制御部421及び測定部422は、標準片の測定を行う(ステップS4:測定ステップ)。
つまり、駆動制御部421は、検出器10を速度情報52で示される走査速度で測定方向に、カットオフ情報53及び区間数情報54に基づく評価長さ以上の距離を移動させ、測定部422は、検出器10から出力される検出信号を受信する。なお、ここで、評価長さ以上の距離を移動させるのは、検出器10を移動させる際の加減速距離が含まれるためである。測定部422は、検出器10の速度が速度情報52に示される一定速度となったタイミングから、検出器10が評価長さの距離を移動するまでの間の検出信号を、所定のサンプリング間隔で取り込み、評価領域に対する測定結果データとして記憶部41に記憶する。
そして、出力部427は、ステップS4で得られた測定結果データを、例えばグラフ形式で示した測定結果情報を表示部31に表示させる(ステップS5)。
【0028】
図5は、表示部31に表示される測定結果情報60の一例である。
図5の例では、校正案内情報50の測定項目情報55、標準値情報56、及び測定値情報57を非表示とし、代わりに、測定により得られた検出信号の値の変化をグラフ形式で表示した測定結果情報60を表示している。なお、タブレット端末やパーソナルコンピュータ等の他の端末装置が接続されており、測定結果をこれらの端末装置のディスプレイに表示させる場合では、測定結果情報60を、別画像(別ウィンドウ)として表示させてもよい。
【0029】
次に、表面粗さ算出部423は、ステップS4で得られた測定結果データ、つまり、評価領域に対する走査により所定のサンプリング間隔で得られた検出信号に基づいて、測定項目情報55で示される表面粗さ(例えば、算術平均高さRa等)を算出する(ステップS6)。すなわち、表面粗さ算出部423は、評価領域の区間毎に、検出信号の平均信号値を算出し、これらの平均信号値に対して、ゲインGを乗算して各区間の表面粗さRa(iは区間を示す添え字)を算出する。そして、全区間の表面粗さRaに基づいて、評価領域の測定値Aを算出する。測定値Aは、例えば、全区間の表面粗さRaの平均値であってもよく、最頻値であってもよい。
そして、校正部425は、ステップS6で算出された測定値Aと表面粗さと標準値Bとの差が、所定の許容値C以下であるか否かを判定する(ステップS7)。このステップS7は、算出された測定値Aが、明らかに不適正な値であるか否かを判定するための処理であり、許容値Cとしては、測定項目情報55で設定される誤差の範囲に対して十分な大きい値が設定される。すなわち、ステップS7の処理は、検出器10の故障、検出器10のコネクタ部の接触不良、標準片に大きな傷がある等の標準片の不都合、校正測定中での振動を判定する処理となる。
【0030】
ステップS7において、NOと判定される場合、校正部425は校正エラーと判定する。この場合、出力部427は、表示部31に校正エラーが発生した旨を表示させ、ステップS1に戻る。なお、校正処理を終了させてもよい。
【0031】
ステップS7においてYESと判定される場合、校正部425は、ステップS4で得られた評価領域の測定結果のうちの第一領域の測定結果を用いて、測定値を標準値に一致させるためのゲインGを算出、すなわちゲイン調整を行う(ステップS8:校正ステップ)。
図6は、測定を実施する評価領域Q1と、ゲイン調整(校正)を行うための第一領域Q2と、校正の確認を行うための第二領域Q3との関係を示す図である。
本実施形態では、ステップS4によって、評価領域Q1に対する測定結果データ(サンプリング周波数で検出される検出信号の信号値)を得る。そして、ステップS8では、ステップS4で得られた測定結果データのうちの一部を第一領域Q2として、この第一領域Q2の測定結果データを用いたゲイン調整を行う。この第一領域Q2の長さは、基準長さ(カットオフλc)の整数倍であり、例えば本実施形態では、評価領域Q1のうちの前半の半分(図6に示す図では、最初の3区間分)の測定結果データを用いる。
具体的には、校正部425は、第一領域Q2の各区間で得られる検出信号から、各区間での信号値の平均Sを算出し、さらに、第一領域Q2の全区間での信号平均A=ΣS/I(Iは第一領域Q2に含まれる区間数であり、図6の例では3)を算出する。そして、校正部425は、信号平均Aを、標準片の標準値Bに一致(または略一致)させるためのゲインG(=B/A)を算出する。
【0032】
次に、校正精度判定部426は、ステップS8による校正精度が誤差範囲内であるか否かを判定(校正精度の合否判定)する(ステップS9)。すなわち、ステップS8での校正が適正であるか否かの確認を行う。これには、校正精度判定部426は、図6に示すように、ステップS4で得られた評価領域Q1に対する測定結果データのうちの後半を第二領域Q3として、この第二領域Q3の測定結果データを用いた校正精度の判定を行う。この第二領域Q3の長さは、基準長さ(カットオフλc)の整数倍である。
校正精度判定部426は、表面粗さ算出部423に、第二領域Q3の測定結果データと、ステップS8で算出されたゲインGとを用いて表面粗さ(測定値A)を算出させる。そして、校正精度判定部426は、算出された測定値Aと標準値Bとの差を算出し、当該差が、測定項目情報55で示される誤差の範囲内である場合、合格であると判定し、誤差の範囲外である場合、校正エラーと判定する。
【0033】
図7は、校正処理後の校正案内情報50の一例を示す図である。
ステップS9の後、出力部427は、図7に示すように、測定値情報57に、校正精度が合否判定結果を表示させる(ステップS10)。なお、図7に示すように標準値B及び測定値Aの差をさらに表示させてもよい。または、ステップS8で算出される表面粗さの測定値Aをさらに表示してもよく、標準値B及び測定値Aの差と測定値Aとの双方を表示してもよい。
このステップS10では、さらに、出力部427は、ステップS8で算出されたゲインGを採用する旨の更新アイコン58A、及び、ゲインGを不採用とする旨の破棄アイコン58Bとを表示させる。
そして、校正部425は、ユーザの入力操作によって更新アイコン58Aを選択する旨の入力情報を受け付けると、ステップS8で算出したゲインGを採用し、記憶部41に記憶する。つまり、以降、測定部422により表面粗さRaを算出する際に用いるゲインGとして設定する(ステップS11)。
一方、図3での図示は省略するが、ユーザの入力操作によって破棄アイコン58Bを選択する旨の入力情報を受け付けた場合、ステップS1に戻る。なお、この場合、校正処理を終了させてもよい。
【0034】
[3.本実施形態の作用効果]
本実施形態の表面性状測定機1は、ワーク表面に接触可能なスタイラス13を有し、スタイラス13とワーク表面との接触位置に応じた検出信号を出力する検出器10を備える。また、表面性状測定機1は、記憶部41及び演算部42を有する制御部40を備え、演算部42が記憶部41に記憶されたプログラムを読み込み実行することで、測定部422、校正部425、及び校正精度判定部426として機能する。
測定部422は、スタイラス13によりワーク表面を走査した際の検出器10からの検出信号を測定し、校正処理を実施する場合では、標準片の所定の評価長さの評価領域Q1に対する1走査の測定を実施する。
校正部425は評価領域Q1のうちの第一領域Q2で得られる検出信号と、標準値Bとに基づいて、検出信号から表面粗さを算出するためのゲインを調整(算出)する。
校正精度判定部426は、評価領域Q1のうちの第一領域Q2とは異なる第二領域Q3の検出信号、及び、校正部425で調整されたゲインGを用いて算出される表面粗さの測定値Aと、標準値Bとに基づいてゲインGの精度を判定する。
【0035】
このため、本実施形態では、標準片に対する1回の走査で、ゲインGの調整と、当該ゲインGが適正か否かの確認と、の双方を実施することができる。したがって、ユーザは、標準片に対して複数の測定を実施する必要がなく、表面性状測定機1の校正に係る手間を低減できる。また、標準片に対する測定回数を減らすことができるので、標準片の摩耗、及びスタイラス13の摩耗を抑制することができ、標準片やスタイラス13の交換に係るコストを抑えることができる。
【0036】
本実施形態では、測定部422により測定が行われる評価領域Q1、校正部425によるゲインの調整を行うための第一領域Q2、及び校正精度判定部426により校正の確認(調整されたゲインの確認)を行うための第二領域Q3は、それぞれ、基準長さの基準区間を含み、整数個の基準区間により構成されている。
一般に表面粗さの算出は、基準長さの区間毎に算出される。したがって、第一領域Q2及び第二領域Q3を基準長さの整数倍とすることで、ゲインの調整、及び、調整されたゲインの合否判定を、適正に実施することができる。
【0037】
本実施形態では、第一領域Q2及び第二領域Q3に含まれる基準区間の区間数は同数である。
これにより、校正部425によるゲインの算出と、校正精度判定部426によるゲインの合否判定のそれぞれの精度を同程度にできる。
【0038】
本実施形態では、校正部425は、評価領域Q1に対する走査によって得られた検出信号に基づいて算出される表面粗さ(測定値A)と標準値Bとの差が所定の許容値以内である場合にゲイン調整を実施し、許容値を超える場合に校正エラーとしてゲイン調整を実施しない。
つまり、標準片の測定で得られた測定結果データが明らかに不適正である場合、校正処理を継続すると、不適正なゲインが設定されることになる。本実施形態では、ステップS10での校正精度の合否判定が実施されるため、このようなゲインが記憶部41に記憶される可能性は極めて低いが、ゲインの算出や確認を行う処理に係る時間が無駄になる。これに対して、本実施形態では、明らかなエラーが発生している場合は、上記のようなゲインの算出が行われず、校正処理の迅速化を図れる。
なお、本実施形態では、校正精度判定部426により、調整されたゲインの合否判定を行うため、不適正なゲインが設定されることはないが、従来のように、ゲインの調整と、ゲインの確認とが別工程である場合では、ステップS7のようなエラー判定が実施されず、ユーザによるゲインの確認も実施されなかったときに、不適正なゲインが設定される可能性が高くなり、適正な測定処理が実施できなくなる。本実施形態では、このような不適正なゲインが設定される不都合が、ステップS7とステップS9の処理により回避できる。
【0039】
[4.変形例]
[4-1.変形例1]
上記実施形態では、校正部425は、評価領域Q1のうちの前半の第一領域Q2の測定結果データに基づいてゲインGを算出し、校正精度判定部426は、評価領域Q1のうちの後半の第一領域Q2の測定結果データに基づいてゲインGを算出した。ここで、上記実施形態では、第一領域Q2と第二領域Q3とが同一の区間数(走査距離が同じ)であるとしたが、これに限定されない。
図8は、変形例1における評価領域、第一領域、及び第二領域の関係を例示した図である。
図8に示す例では、第一領域Q2は、基準長さを有する3つの区間で構成され、第二領域Q3は、基準長さを有する2つの区間で構成されている。このような場合でも、上記実施形態と同様の校正処理を実施できる。
【0040】
また、評価領域Q1のうちの前半が第一領域Q2であり、後半が第二領域Q3とする例を示したが、第一領域Q2が評価領域Q1の後半であり、第二領域Q3が評価領域Q1の前半であってもよい。
【0041】
[4-2.変形例2]
上記実施形態及び変形例1は、評価領域Q1において、第一領域Q2と第二領域Q3とが全く別の区間を含むものとしたが、これに限定されず、第一領域Q2に含まれる区間と、第二領域Q3に含まれる区間との一部が、共通(重なり合う)であってもよい。
図9は、変形例2における評価領域、第一領域、及び第二領域の関係を例示した図である。
図9に示す例では、評価領域Q1が区間C1~C5の5つの区間を有し、第一領域Q2は、そのうちの区間C1~C3で構成され、第二領域Q3は、区間C3~C5により構成されている。つまり、本例では、第一領域Q2の区間C3と、第二領域Q3の区間C3が共通となり、当該区間C3で検出される検出信号の測定結果データは、校正部425によるゲインGの算出に利用されるとともに、校正精度判定部426によるゲインGの合否判定にも利用される。
なお、変形例1で示したように、第一領域Q2に含まれる区間数と、第二領域Q3に含まれる区間数が異なっていてもよい。
変形例2のように、第一領域Q2及び第二領域Q3の一部の区間を共通とすることで、評価領域Q1の長さを短くすることができ、その結果、校正処理に係る時間を短縮することができる。
【0042】
[4-3.変形例3]
上記実施形態では、ステップS3において、標準片に対する走査を行った後、走査によって得られた測定結果データに基づいてステップS4~ステップS8の処理を行った。
これに対して、標準片に対する走査と並行して、ステップS5~ステップS9の処理を実施してもよい。つまり、ステップS4の測定結果データを表示させる処理は、ステップS4の処理と同時に行われてもよい。この場合、測定により検出信号が得られる度に、得られた検出信号の値を測定結果情報に表示して更新させる。
また、ステップS4の評価領域Q1に対する走査において、第一領域Q2の走査が終了したタイミングで、続く第二領域Q3への走査と並行して、ステップS8の処理、つまり、校正部425によるゲインGの算出を行ってもよい。
この場合、ステップS4の評価領域Q1に対する走査で第二領域Q3の走査が終了したタイミングで、ステップS9の処理、つまり、校正精度判定部426によるゲインGの合否判定を実施すればよい。なお、本例では、ステップS6及びステップS7のエラー判定を省略してもよい。
【0043】
[4-4.変形例4]
上記実施形態では、表面性状測定機1として、図1に示すようなハンディタイプの測定装置を例示したが、台座に設置され、門型コラムや多関節アーム等によって検出器10が移動可能に支持される大型の測定装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、測定対象の表面性状を測定する測定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…表面性状測定機(測定装置)、10…検出器、13…スタイラス(触針)、31…表示部、40…制御部、42…演算部、421…駆動制御部、422…測定部、423…表面粗さ算出部、424…パラメータ設定部、425…校正部、426…校正精度判定部、427…出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10