(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179172
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】軌条走行機械の転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
B61F 9/00 20060101AFI20221125BHJP
B66C 9/16 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B61F9/00
B66C9/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086463
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】502424403
【氏名又は名称】株式会社今井鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】片山 周二
(72)【発明者】
【氏名】今井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 弘
【テーマコード(参考)】
3F203
【Fターム(参考)】
3F203DA02
3F203EB01
(57)【要約】
【課題】レールの歪などを吸収する機能を高くでき、小型のクレーンであっても設置することができる軌条走行機械の転倒防止装置を提供する。
【解決手段】レールR上を走行する軌条走行機械1の転倒防止装置10が、レールRの頭部RWを挟むように配設される一対の係合部材21,21を有する支持部20と、支持部20を軌条走行機械1の走行方向と交差する方向に沿って移動可能となるように軌条走行機械1の走行部2のフレーム4に取り付ける支持部連結部30とからなり、支持部連結部30は、軌条走行機械1の走行部2のフレーム4に取り付けられる一対の取付部材31,31を有しており、支持部20は、一対の取付部材31,31を軌条走行機械1の走行部2のフレーム4に取り付けた状態において、一対の取付部材31,31における軌条走行機械1の走行部2のフレーム4よりも下方に位置する部分の間に設置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を走行する軌条走行機械の転倒防止装置であって、
該転倒防止装置が、
前記レールの頭部に引っ掛ける爪が第一端部に設けられた、該レールの頭部を挟むように配設される一対の係合部材を有する支持部と、
該支持部を軌条走行機械の走行方向と交差する方向に沿って移動可能となるように前記軌条走行機械のフレームに取り付ける支持部連結部とからなり、
該支持部連結部は、
前記軌条走行機械のフレームに取り付けられる一対の取付部材を有しており、
前記支持部は、
前記一対の取付部材を前記軌条走行機械のフレームに取り付けた状態において、該一対の取付部材における前記軌条走行機械のフレームよりも下方に位置する部分の間に設置されている
ことを特徴とする軌条走行機械の転倒防止装置。
【請求項2】
前記一対の取付部材において前記軌条走行機械のフレームよりも下方に位置する部分には、前記支持部が通過できる、下端に開口を有する切欠きが形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の軌条走行機械の転倒防止装置。
【請求項3】
前記支持部連結部は、
前記支持部を軌条走行機械の走行方向と交差する方向に沿って移動可能に保持する一対の案内軸を備えており、
該一対の案内軸は、
前記切欠きと同じ高さに該切欠きを挟むように設けられている
ことを特徴とする請求項2記載の軌条走行機械の転倒防止装置。
【請求項4】
前記案内軸が、
前記支持部連結部の一対の取付部材の下端部を連結する連結軸である
ことを特徴とする請求項3記載の軌条走行機械の転倒防止装置。
【請求項5】
前記支持部連結部の一対の取付部材は、
前記軌条走行機械のフレームを挟むように取り付けられるものであり、
該支持部連結部の一対の取付部材には、
前記軌条走行機械のフレームに取り付けた状態において、前記軌条走行機械のフレームの上面より上方に配置され該フレームの上面と対向する面を有する部分が設けられている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の軌条走行機械の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌条走行機械の転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天井クレーンや門型クレーン等の軌条走行機械は、機械の下端に設けられた車輪によって倉庫等の天井や地面に設置されたレール上を走行して移動する。しかし、車輪はレールに載せられているだけであり、地震等によって車輪をレールから離間させるような力が機械に対して作用すると、脱輪したり転倒したりする危険がある。
【0003】
特許文献1には、地震荷重による軌条走行機械の転倒を防止する転倒防止装置が開示されている。具体的には、特許文献1の転倒防止装置では、レールの頭部に嵌合されかつレールの長手方向に沿って移動可能な支持部と、この支持部を軌条走行機械の走行部に取り付ける支持部連結部とを有している。かかる構成であるので、地震荷重が加わっても軌条走行機械の転倒を防止できる。しかも、特許文献1の転倒防止装置では、支持部は支持部連結部よってレールの幅方向に移動可能に設けられているので、隣接するレール間隔が変化してもその変化を支持部連結部が吸収できる。つまり、レールに歪みがあっても、軌条走行機械を安定して走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の転倒防止装置を設ければ脱輪や転倒を防止する効果は高いものの、支持部は天井クレーンの走行部の一対のフレーム間を移動するため、一対のフレーム間の距離によって支持部の移動量が制限される。したがって、走行部の一対のフレーム間の距離以上の歪みがレールにあった場合には、支持部の移動ではその歪を吸収することができない。
しかも、特許文献1の転倒防止装置は、走行部の一対のフレーム間に転倒防止装置を収容できる広さを有する隙間が無ければ設置できないので、大型の天井クレーンには設置できても小型のクレーンに設置することは難しい。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑み、レールの歪などを吸収する機能を高くでき、小型のクレーンであっても設置することができる軌条走行機械の転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の軌条走行機械の転倒防止装置は、レール上を走行する軌条走行機械の転倒防止装置であって、該転倒防止装置が、前記レールの頭部に引っ掛ける爪が第一端部に設けられた、該レールの頭部を挟むように配設される一対の係合部材を有する支持部と、該支持部を軌条走行機械の走行方向と交差する方向に沿って移動可能となるように前記軌条走行機械のフレームに取り付ける支持部連結部とからなり、該支持部連結部は、前記軌条走行機械のフレームに取り付けられる一対の取付部材を有しており、前記支持部は、前記一対の取付部材を前記軌条走行機械のフレームに取り付けた状態において、該一対の取付部材における前記軌条走行機械のフレームよりも下方に位置する部分の間に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、支持部を軌条走行機械のフレームよりも下方に配置するので、支持部の移動量の制限を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)は本実施形態の転倒防止装置10の概略斜視図であり、(B)は天井クレーン1の走行部2のフレーム4と支持部連結部30の一方の取付部材31を除いた状態の概略説明図である。
【
図2】(A)本実施形態の転倒防止装置10の概略正面図であり、(B)本実施形態の転倒防止装置10の概略平面図である。
【
図3】(A)は
図2(A)のX矢視図であり、(B)は
図2(A)のY矢視図である。
【
図4】本実施形態の転倒防止装置10の一対の係合部材21,21の動きを説明する概略斜視図であって、(A)はレールRと一対の係合部材21,21とが接触していない状態であり、(B)はレールRと転倒防止装置10のレールRの幅方向における相対的な位置がズレた状態である。
【
図5】本実施形態の転倒防止装置10の一対の係合部材21,21の動きを説明する概略正面図であって、(A)はレールRと一対の係合部材21,21が接触していない状態であり、(B)はレールRと転倒防止装置10のレールRの幅方向における相対的な位置がズレた状態である。
【
図6】一対の係合部材21,21の動きを説明する概略斜視図であって、一対の係合部材21,21が設けられている部分の要部拡大説明図である。
【
図7】支持部20の単体説明図であり、(A)は一対の係合部材21,21と連結部材22とを連結した状態の概略断面図であり、(B)は一対の係合部材21,21と連結部材22とを分離した状態の概略斜視図である。
【
図8】(A)は他の形状のスペーサ37を有する本実施形態の転倒防止装置10の概略説明図であり、(B)は他の形状のスペーサ37を有する本実施形態の転倒防止装置10の概略平面図であり、(C)は上固定部33を除いた状態の本実施形態の転倒防止装置10の概略平面図である。
【
図9】(A)は本実施形態の転倒防止装置10を取り付けた天井クレーン1の概略説明図であり、(B)は(A)のB-B線概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の軌条走行機械の転倒防止装置は、レール上を走行する軌条走行機械に取り付けられ、車輪の脱輪や、機械本体の転倒を防止するためのものである。
【0011】
本実施形態の軌条走行機械の転倒防止装置が設けられる軌条走行機械は、レール上を走行する機械であればとくに限定されない。例えば、天井クレーンや門型クレーン、片門型クレーン等であって車輪によってレール上を走行する機械を挙げることができるが、レール上を車輪以外によって走行するものでもよい。
【0012】
以下では、代表として、本実施形態の転倒防止装置を天井クレーンに採用した場合を説明する。また、以下で説明する天井クレーンの各部構造は一般的な構造を示しており、本実施形態の転倒防止装置を採用する天井クレーンの構成は、以下の構成に限定されない。
【0013】
<天井クレーン1>
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図9において符号Rは、工場や倉庫等の建物の天井に設けられた一対のレールを示している。また、符号1は、一対のレールR,R間に設けられた天井クレーンを示している。この天井クレーンは、走行部2を介して、一対のレールR,R上に載せられている。
【0014】
図7に示すように、天井クレーン1の走行部2は、角パイプ等の軸状部材によって形成されたフレーム4を有している。このフレーム4は、その軸方向が天井クレーン1の走行方向と平行に設けられている。つまり、フレーム4は、天井クレーン1をレールR上に配置した状態において、その軸方向がレールRの軸方向と平行になるように設けられている(
図9(B)参照)。このフレーム4には、レールR上に載せられるつば付車輪やつばの無い車輪等の公知の車輪(図示せず)が設けられている。車輪は、その回転軸がフレーム4の軸方向(言い換えればレールRの軸方向、
図9(A)では左右方向)と直交するように設けられている。
【0015】
天井クレーン1は上記のような走行部2を有しているので、天井クレーン1をレールR上に配置すれば、走行部2の車輪を転動させることによって、天井クレーン1をレールRの軸方向(
図9(B)の左右方向)に沿って移動させることができる。
【0016】
なお、以下では、フレーム4の側面は、フレーム4の軸方向と平行かつ天井クレーン1をレールR上に配置した状態においてほぼ鉛直となることを前提として、本実施形態の転倒防止装置10の構造を説明する。
【0017】
<本実施形態の転倒防止装置10>
本実施形態の転倒防止装置10を説明する。
図1~
図3に示すように、天井クレーン1の走行部2のフレーム4には、本実施形態の転倒防止装置10が設けられている。本実施形態の転倒防止装置10は、前記レールRの頭部RWに係合可能な爪21cを有する一対の係合部材21,21を備えた支持部20と、この支持部20を前記走行部2のフレーム4に取り付ける支持部連結部30とから構成されている。
【0018】
<支持部連結部30>
まず、支持部連結部30を説明する。
図1~
図3に示すように、支持部連結部30は一対の取付部材31,31を有している。この一対の取付部材31,31は走行部2のフレーム4を両側方から挟むように設置されている。つまり、一対の取付部材31,31は、フレーム4の軸方向と交差する方向(
図2では左右方向、以下フレーム4の幅方向という場合がある)からフレーム4を挟むように設置されている。
【0019】
この一対の取付部材31,31は、内面がフレーム4の側面に面接触するように配置される本体部32と、本体部32の上端部に設けられた上固定部33と、本体部32の下端部に設けられた下固定部34と、を有している。
【0020】
図2(A)に示すように、本体部32は、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した際に、内面がフレーム4の側面に面接触するように配置される部材である。この本体部32は、板状の部材によって形成されており、その内面が平面に形成されている。
なお、本体部32は、内面がフレーム4の側面に面接触できるようになっていればよく、必ずしも板状の部材で形成しなくてもよい。
【0021】
図2(A)に示すように、上固定部33は、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した際に、スペーサ37を介して、フレーム4の上方に配置される部材である。この上固定部33は、断面略L字状に形成されており、ベース部33aと連結部33bとから形成されている。ベース部33aは、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した際に、その下面がフレーム4の上面と対向するように配設される部分である。このベース部33aは、板状の部材によって形成されており、その下面が本体部32の内面と直交するように本体部32の上端に連結されている。このベース部33aの上面には連結部33bが設けられている。連結部33bは、板状の部材によって形成されており、その表面が本体部32の内面と平行になるように設けられている。この連結部33bには、一対の取付部材31,31を連結するボルト35を挿通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、連結部33bの表面を法線方向から貫通するように形成されている。つまり、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した状態で貫通孔にボルト35を挿通すると、ボルト35の軸方向がフレーム4の幅方向と平行となるように、連結部33bに貫通孔が形成されている。
【0022】
なお、上固定部33の構造は上記構造に限定されない。上固定部33は、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置したときに、下面がフレーム4の上面と対向するように配設される部分を有し、かつ、ボルト35をその軸方向がフレーム4の幅方向と一致するように挿通できる貫通孔を有していればよい。
【0023】
図2(A)に示すように、下固定部34は、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した際に、フレーム4より下方に位置する部分である。この下固定部34は、本体部32の下端部によって形成されており、一対の取付部材31,31を連結する2本のボルト36を挿通する2つの貫通孔が形成されている。この2つの貫通孔は、下固定部34の表面を法線方向から貫通するように形成されている。つまり、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した状態で2つの貫通孔に2本のボルト36を挿通すると、2本のボルト36の軸方向が互いに平行かつフレーム4の幅方向と平行となるように、下固定部34に2つの貫通孔が形成されている。また、2つの貫通孔は、下固定部34の幅方向(図
図3(A)では左右方向、フレーム4の軸方向と平行な方向)において間隔を空けて形成されている。この2つの貫通孔の間(例えば、下固定部34の幅方向のほぼ中央部)には切り欠き34hが形成されている。言い換えれば、2つの貫通孔に2本のボルト36を挿通すると、下固定部34の幅方向において、2本のボルト36が切り欠き34hの外方に位置するように切り欠き34hが形成されている(
図1、
図3参照)。この切欠き34hは、下固定部34の下端に開口を有し、その底(上端)が一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した際においてフレーム4の下端よりも下方に位置するように形成されている(
図3参照)。
【0024】
なお、下固定部34の構造は上記構造に限定されない。下固定部34は、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置したときに、フレーム4の下方に位置し、かつ、2本のボルト36をその軸方向がフレーム4の幅方向と一致するように挿通できる構造を有していればよい。
【0025】
<支持部20>
図1および
図3に示すように、支持部連結部30には、支持部20が取り付けられている。この支持部20は、2本のボルト36に取り付けられた連結部材22を有している。具体的には、連結部材22は、その両端部(フレーム4の軸方向における両端部)が2本のボルト36の軸方向に沿って移動可能となるように、2本のボルト36に取り付けられている。例えば、連結部材22の両端部には貫通孔22hが形成されており(
図7参照)、この貫通孔22hドライベアリングやリニアベアリング等が設けられている。そして、貫通孔22hに設けられているドライベアリング等によって2本のボルト36の軸方向に沿ってスムースに連結部材22が移動するようになっている。
【0026】
この連結部材22には、一対の係合部材21,21が固定されている(
図7参照)。この一対の係合部材21,21は、その第二端部21b(上端部)が連結部材22を挟むように連結部材22に連結されている。より詳しくは、一対の係合部材21,21は、連結部材22の両端部の間であって、連結部材22を2本のボルト36に取り付けると上述した下固定部34の切り欠き34hと対応する位置に配設されるように、連結部材22に連結されている(
図1、
図3参照)。
【0027】
この一対の係合部材21,21の第一端部21a(下端部)には、爪部21cが設けられている。この爪部21cは、内方、つまり、レールRの胴部に向かって(言い換えれば他方の係合部材21に向かって)伸びており、その上面がレールRの頭部RWの下面と間隔をあけて向かい合うように形成されている(
図2(A)参照)。そして、一対の係合部材21,21の爪部21cは、フレーム4の幅方向におけるその先端間の距離が、レールRの頭部RWの幅より短く、かつ、レールRの胴部の幅より長くなるように形成されている。
【0028】
そして、一対の係合部材21,21は、2本のボルト36の軸方向に沿って連結部材22が移動した際に、下固定部34の切り欠き34hを通過できる大きさに形成されている。つまり、
図3に示すように、一対の係合部材21,21は、そのフレーム4の軸方向における幅が切り欠き34hの幅よりも狭く、一対の係合部材21,21の上端部が下固定部34の切り欠き34hの上端よりも下方に位置する大きさに形成されている。
【0029】
<本実施形態の転倒防止装置10の動作>
本実施形態の転倒防止装置10が以上のごとき構造を有しているので、天井クレーン1に対して車輪3をレールRから離間させる力(引き抜き力)が加わっても、車輪3の浮き上がりを防止できる。つまり、車輪3が浮き上がろうとすると、レールRの頭部RWに一対の係合部材21,21の爪部21cがひっかかるので、車輪3の浮き上がりを阻止することができる。
【0030】
また、天井クレーン1がレールRの長手方向に沿って移動すると、支持部20もレールRに沿って移動するが、もし、レールR自体の歪み等があれば一対のレールR,R同士の間隔W(
図8参照)が変化する場合がある。すると、支持部20の一対の係合部材21,21の爪部21cがレールRと接触して、天井クレーン1の移動の抵抗となる可能性がある。また、支持部20を介して走行部2にレールRの幅方向に沿った力が加わる可能性がある。
【0031】
しかし、本実施形態の転倒防止装置10の場合、一対の係合部材21,21は、連結部材22によって2本のボルト36の軸方向、つまり、フレーム4の幅方向(言い換えればレールRの幅方向)に沿ってスムースに移動できる状態となっている。このため、一対のレールR,R同士の間隔の変化やレールRの歪み(以下、レールRの歪み等という場合がある)があっても、レールRの歪み等の分だけ、一対の係合部材21,21を2本のボルト36の軸方向に沿ってフレーム4の幅方向に移動させることができる(
図4(B)、
図5(B)参照)。すると、レールRの歪み等によって支持部20の一対の係合部材21,21の爪部21cとレールRとが接触しても、その接触抵抗を小さくできるので、レールRの歪みに起因して、天井クレーン1の移動抵抗が大きくなることを防止できる。そして、支持部20を介して、走行部2にレールRの幅方向に沿った力が加わることを防ぐことができる。
【0032】
また、レールRの歪みが大きい場合には、一対の係合部材21,21の移動量が大きくなる可能性がある。すると、一対の係合部材21,21が支持部連結部30の一対の取付部材31,31の下固定部34に接触する恐れがある。しかし、本実施形態の転倒防止装置10では、下固定部34に切り欠き34hを設けており、一対の係合部材21,21が下固定部34の切り欠き34hを通過できる大きさに形成されている。このため、一対の係合部材21,21を、切り欠き34hを通過して一対の取付部材31,31の外方に突出するまで移動させることができるから((
図4(B)、
図5(B)、
図6(B)、(C)参照)、一対の係合部材21,21の一対の取付部材31,31に対する移動量、つまり、レールRの歪み等を吸収する量を大きくできる。したがって、レールRの歪み等が大きい場合であっても、一対の係合部材21,21とレールRとの干渉による天井クレーン1の移動抵抗が大きくなることおよび支持部20を介して走行部2にレールRの幅方向に沿った力が加わることを防ぐことができる。
【0033】
<支持部20について>
上記例では、支持部20の連結部材22が、一対の係合部材21,21の下固定部34間を連結する2本のボルト36に沿って移動する場合を説明した。しかし、一対の係合部材21,21の下固定部34間に、2本のボルト36とは別に、連結部材22の移動を案内する案内軸を設けてもよい。つまり、一対の係合部材21,21の下固定部34間に、フレーム4の幅方向と平行な軸を有する案内軸を設けて、2本のボルト36に代えて、この案内軸に連結部材22を連結してもよい。2本のボルト36とは別に、案内軸を設けこの案内軸に連結部材22を連結ずれば、案内軸と連結部材22の両端部の貫通孔22hとのはめ合い隙間を大きくとれるので、連結部材22の案内軸に沿ったスライドが円滑になるという利点が得られる。一方、2本のボルト36を案内軸とした場合には、装置の部品点数が減り、取付部材31の幅方向(フレーム4の軸方向)の寸法を小さくすることができるので、転倒防止装置10をコンパクトにでき重量も軽減できるという利点が得られる。
【0034】
また、ボルト36とは別に案内軸を設ける場合には、ボルト36と案内軸に連結部材22を連結して、ボルト36と案内軸によって連結部材22の移動を案内するようにしてもよい。
また、連結部材22の移動を案内する案内軸(ボルト36も含む)は、2本に限られず、1本でもよいし3本以上でもよく、案内軸の本数はとくに限定されない。
【0035】
<係合部材21について>
係合部材21の爪部21cの形状や大きさはとくに限定されず、レールRの大きさや頭部RWの形状等に合わせて適宜適切な形状にすればよい。つまり、爪部21cは、天井クレーン1の車輪3を浮き上がらせる力が加わった際に、レールRの頭部RWに引っ掛かるように形成されていればよい。
【0036】
係合部材21の第一端部21aに爪部21cを形成する方法はとくに限定されない。係合部材21の第一端部21aを屈曲させて爪部21cを形成してもよいし、係合部材21の第一端部21aに板状部材等を溶接やボルト止め等の方法で連結して爪部21cを形成してもよい。
【0037】
<支持部連結部30について>
上述した例では、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した状態において、下固定部3の切欠き43hを、上端がフレーム4の下端よりも下方に位置するように形成する場合を説明した。しかし、下固定部3の切欠き43hは、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した状態において、その上端がフレーム4の下端よりも上方に位置するように形成してもよい。この場合でも、切欠き43hの開口とフレーム4の下端との間に形成される空間が係合部材21が通過できる大きさになっていれよい。
【0038】
また、上述した例では、一対の取付部材31,31の下固定部34に切欠き43hが形成されている場合を説明した。しかし、本実施形態の軌条走行機械1の転倒防止装置10では、支持部20が軌条走行機械1の走行部2のフレーム4よりも下方に配置されるので、支持部20の移動量の制限を少なくできるという利点がある。したがって、一対の取付部材31,31をフレーム4に設置した状態において、一対の取付部材31,31の下固定部34間の距離が十分に長くできる場合には、必ずしも下固定部34に切欠き43hは設けなくてもよい。例えば、天井クレーン1の走行部2のフレーム4の幅が十分に長い場合には、係合部材21の移動量を十分に取れるので、必ずしも下固定部34に切欠き43hを設けなくてもよい。また、走行部2のフレーム4の幅が十分に長くない場合でも、一対の取付部材31,31の下固定部34間の間隔を十分に取れる場合には、必ずしも下固定部34に切欠き43hを設けなくてもよい。例えは、下固定部34が本体部32よりもフレーム4の幅方向において外方(つまりフレーム4から離れる方向)に設けられていれば、切欠き43hを設けなくても、係合部材21の移動量を十分に取ることができる。
【0039】
支持部連結部30において、一対の取付部材31,31の上固定部33同士、および、一対の取付部材31,31の下固定部34同士、を連結する方法はとくに限定されない。一対の取付部材31,31がフレーム4の軸方向に移動したり傾いたりしないように一対の取付部材31,31をフレーム4に固定できればよい。
【0040】
一対の取付部材31,31がフレーム4の軸方向に移動したり傾いたいるすることを防止するのであれば、
図8に示すような構造としてもよい。
図8に示すように、一対の取付部材31,31の下固定部34とフレーム4の上面との間に配置するスペーサ37として、両側端部(
図8(B)では左右方向の端部)に、一対の取付部材31,31の本体部32の幅(本体部32のフレーム4の軸方向の長さ)と同等程度の幅を有する凹み部37hが形成されたものを使用する。そして、一対の取付部材31,31の本体部32をスペーサ37の凹み部37hに配置した状態で、一対の取付部材31,31をフレーム4に取り付ける。すると、一対の取付部材31,31がフレーム4の軸方向に移動したり傾いたいるすることを防止しやすくなる。
【0041】
また、上固定部33の形状や下固定部34の形状は上記の構造にかぎられない。例えば、上固定部33を本体部32の上端部で形成してもよいし、下固定部34を上述した断面略L字状の上固定部33を上下反転した形状としてもよい。しかし、上固定部33を上述したような断面略L字状とした場合には、天井クレーン1を上方に移動させるような力が発生した際に、フレーム4の上面が上固定部33のベース部33aに引っ掛かるので、支持部連結部30がフレーム4に連結された状態を維持できる。すると、天井クレーン1を上方に移動させるような力を、支持部連結部30と支持部20とを介して、レールRに確実に支持させることができる。また、上固定部33を本体部32の上端部で形成した場合には、上固定部33同士を連結するボルト35がスペーサ37を介してフレーム4の上面と接触するように配置することが望ましい。この場合も、天井クレーン1を上方に移動させるような力が発生した際には、フレーム4の上面にボルト35が引っ掛かるので、支持部連結部30と支持部20とを介して、レールRに確実に支持させることができる。
【0042】
また、上記例では、フレーム4の上面と上固定部33のベース部33aとの間にスペーサ37を設けているが、スペーサ37は必ずしも設けなくてもよい。しかし、スペーサ37を設ければ、スペーサ37の厚さを調整することによってフレーム4の下面から下固定部34が突出する量を調整できるので、支持部20の一対の係合部材21,21の爪21cの上面とレールRの頭部RWの上下方向の相対的な位置を調整できる。すると、フレーム4の大きさが変化したり、取付部材31の高さ方向の製作誤差により係合部材21の高さ方向の位置が変化したりしても、一対の係合部材21,21の爪21aの先端とレールRの頭部RWとの上下方向における相対的な位置を適切な状態に調整できる。
【0043】
<天井クレーン1の走行部2のフレーム4について>
上記例では、本実施形態の軌条走行機械1の転倒防止装置10を、走行部2のフレーム4が角パイプ等の軸状部材によって形成されている天井クレーン1に取り付ける場合を説明した。しかし、本実施形態の軌条走行機械1の転倒防止装置10は、支持部連結部30の一対の取付部材31,31を、両者間に隙間ができかつ一対の取付部材31,31の下端部(下固定部34)をフレーム4よりも下方に配置できるのであれば、種々の構造を有するフレーム4に取り付けることができる。例えば、一対のフレームを有し、一対のフレーム間に車輪が設けられる構造を有する走行部であれば、一対のフレーム間に本実施形態の軌条走行機械1の転倒防止装置10を取り付けることができる。もちろん、フレームが軸状部材である場合と同様に、走行部2の一対のフレームを外方から挟むように一対の取付部材31,31を配置して本実施形態の軌条走行機械1の転倒防止装置10を走行部2に取り付けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の軌条走行機械の転倒防止装置は、車輪によってレール上を走行する、例えば、天井クレーンや門型クレーン、片門型クレーン等の転倒防止装置として適している。
【符号の説明】
【0045】
1 天井クレーン
2 走行部
4 フレーム
10 転倒防止装置
20 支持部
21 係合部材
21a 第一端部
21b 第二端部
21c 爪部
22 連結部材
30 支持部連結部
31 取付部材
32 本体部
33 上固定部
34 下固定部
34h 切り欠き
36 ボルト
R レール
RW 頭部