(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179197
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ベルト材、及び、ベルト材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65G 15/34 20060101AFI20221125BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20221125BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221125BHJP
B29D 29/06 20060101ALI20221125BHJP
B65G 15/30 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B65G15/34
B32B1/08 Z
B32B27/00 Z
B29D29/06
B65G15/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086497
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】391061613
【氏名又は名称】ポバール興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 元貴
【テーマコード(参考)】
3F024
4F100
4F213
【Fターム(参考)】
3F024AA06
3F024BA01
3F024BA04
3F024CA04
3F024CB02
3F024CB07
3F024CB12
3F024CB14
4F100AK01B
4F100AK41A
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB03B
4F100DA20
4F100DG12A
4F100EH46B
4F100GB51
4F100HB31C
4F100JK02
4F100JK09
4F100JK16
4F213AA03
4F213AA15
4F213AA16
4F213AA31
4F213AG03
4F213WA05
4F213WA53
4F213WA58
4F213WA67
4F213WA92
4F213WB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】印刷されたマークが滲むことなく形成可能な表面層を有するベルト材を提供する。
【解決手段】少なくとも、基材層2と、ホットメルト樹脂層7とを積層させたベルト材であって、少なくとも印刷の施された層を有し、ホットメルト樹脂層が印刷の施された層の印刷面と接した状態で形成されるベルト材。基材層の表面に印刷する工程と、基材層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程とを含むベルト材の製造方法。基材層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程は、離型フィルム6の片面にホットメルト樹脂を塗布する工程と、離型フィルムのホットメルト樹脂を塗布した面と、基材層の印刷面とを積層する工程と、離型フィルムをホットメルト樹脂から剥離する工程とを含むベルト材の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、ホットメルト樹脂層とを積層させたベルト材であって、
少なくとも印刷の施された層を有し、
ホットメルト樹脂層が印刷の施された層の印刷面と接した状態で形成される、ベルト材。
【請求項2】
ホットメルト樹脂層が、反応性ホットメルトからなる樹脂層である、
請求項1に記載のベルト材。
【請求項3】
前記印刷の施された層が、基材層である、
請求項1又は2に記載のベルト材。
【請求項4】
基材層の片面に積層された樹脂層を有し、
前記印刷の施された層が、樹脂層である、
請求項1~3のいずれかに記載のベルト材。
【請求項5】
基材層が、複数の層からなる、
請求項1~4のいずれかに記載のベルト材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のベルト材を用いたベルトコンベヤ。
【請求項7】
基材層の表面に印刷する工程と、
基材層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程と
を含む、ベルト材の製造方法。
【請求項8】
前記基材層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程は、
離型フィルムの片面にホットメルト樹脂を塗布する工程と、
離型フィルムのホットメルト樹脂を塗布した面と、基材層の印刷面とを積層する工程と、
離型フィルムをホットメルト樹脂から剥離する工程と
を含む、請求項7に記載のベルト材の製造方法。
【請求項9】
基材層の片面に樹脂層を形成する工程と、
樹脂層の表面に印刷する工程と、
樹脂層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程と
を含む、ベルト材の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程は、
離型フィルムの片面にホットメルト樹脂を塗布する工程と、
離型フィルムのホットメルト樹脂を塗布した面と、樹脂層の印刷面とを積層する工程と、
離型フィルムをホットメルト樹脂から剥離する工程と
を含む、請求項9に記載のベルト材の製造方法。
【請求項11】
ホットメルト樹脂層が、反応性ホットメルトからなる樹脂層である、
請求項7~10のいずれかに記載のベルト材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト材、及び、ベルト材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベヤなどの工業用ベルトに用いられるベルト材として、コンベヤの稼働による静電気の発生を低減するために、導電糸を織り込んだ織布を用いることが知られている(例えば、特許文献1)。このような工業用ベルトは食品の搬送にも利用されている(例えば、特許文献2)。食品の搬送に利用される場合、加工などの作業を補助する目的でベルト上に印刷によりマークが設けられることがある。このようなマークを保護したり、ベルトを食品等の汚染から保護するために、ベルトを構成する織布上には通常、表面層(コーティング)が設けられる。特許文献2においては、ベルトの表面層は、織布に溶剤系接着剤を使用して積層接着させている。
【0003】
しかし、溶剤系接着剤を使用して表面層を形成すると、織布上に設けたマークの滲みや気泡の混入などが発生するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-48611号公報
【特許文献2】特開2015-223727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、印刷されたマークが滲むことなく形成可能な表面層を有するベルト材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下の[1]~[11]により、達成される。
[1]少なくとも、基材層と、ホットメルト樹脂層とを積層させたベルト材であって、少なくとも印刷の施された層を有し、ホットメルト樹脂層が印刷の施された層の印刷面と接した状態で形成される、ベルト材;
[2]ホットメルト樹脂層が、反応性ホットメルトからなる樹脂層である、前記[1]に記載のベルト材;
[3]前記印刷の施された層が、基材層である、前記[1]又は[2]に記載のベルト材;
[4]基材層の片面に積層された樹脂層を有し、前記印刷の施された層が、樹脂層である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のベルト材;
[5]基材層が、複数の層からなる、前記[1]~[4]のいずれかに記載のベルト材;
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載のベルト材を用いたベルトコンベヤ;
[7]基材層の表面に印刷する工程と、基材層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程とを含む、ベルト材の製造方法;
[8]前記基材層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程は、離型フィルムの片面にホットメルト樹脂を塗布する工程と、離型フィルムのホットメルト樹脂を塗布した面と、基材層の印刷面とを積層する工程と、離型フィルムをホットメルト樹脂から剥離する工程とを含む、前記[7]に記載のベルト材の製造方法;
[9]基材層の片面に樹脂層を形成する工程と、樹脂層の表面に印刷する工程と、樹脂層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程とを含む、ベルト材の製造方法;
[10]前記樹脂層の印刷面にホットメルト樹脂層を形成する工程は、離型フィルムの片面にホットメルト樹脂を塗布する工程と、離型フィルムのホットメルト樹脂を塗布した面と、樹脂層の印刷面とを積層する工程と、離型フィルムをホットメルト樹脂から剥離する工程とを含む、前記[9]に記載のベルト材の製造方法;
[11]ホットメルト樹脂層が、反応性ホットメルトからなる樹脂層である、前記[7]~[10]のいずれかに記載のベルト材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷されたマークが滲むことなく形成可能な表面層を有するベルト材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、ベルト材の構造を示す模式である。
【
図2】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、
図1(b)に示ベルト材1の製造方法を説明するための模式図である。
【
図3】
図3(a)は、実施例1の基材層2の搬送側からみた写真であり、
図3(b)は、実施例1のベルト材1の搬送側からみた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について以下詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
以下の実施の形態においては、ベルト材として、食品の搬送や案内などのためのベルトコンベヤに用いられるベルトを例に説明するが、本発明のベルト材は該用途に限られるものではない。
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、ベルト材の構造を示す側面図である。
図1(a)に示すように、本実施の形態のベルト材は、基材層2と、表面層4とを備える。また、
図1(b)に示すように、本実施の形態のベルト材1は、基材層2と、基材層2の片面に積層された樹脂層3と、表面層4とを備える形態としてもよい。以下において、ベルト材1のベルトコンベヤに備えられた駆動プーリなどの各種プーリに接する側を内周側とし、内周側の反対、すなわち、搬送物を配置する側を搬送側又は表面側という。
【0011】
下記に詳述するが、本実施の形態において、表面層4は、溶剤系接着剤を用いず、ホットメルト樹脂により形成される。従来のベルト材は、例えば、基材層の表面や、基材層に積層した樹脂層の表面にマークなどの印刷を施し、その上面に、溶剤系接着剤を用いて表面層を形成している。このように印刷を施した面に対して溶剤系接着剤を適用すると、印刷されたマークなどが滲んでしまうという問題があった。この溶剤系接着剤の使用による問題を解決し、印刷されたマークなどが滲むことなく表面層を形成させる手段として、本実施の形態はホットメルト樹脂を使用する。
【0012】
(基材層)
基材層2は、ベルト材1の内周側に設けられる部材であり、片面が各種プーリと接する。基材層2は、例えば、織布や、ポリアミドやポリエステル樹脂からなるシートなど、ベルト材の基材として公知の材料を用いることができる。織布は、例えば、樹脂からなる織布を用いることができる。樹脂としては、搬送する対象により選択すればよく、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂、アラミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂などを例示することができる。
【0013】
基材層2は、導電糸を含むことが好ましい。基材層2が導電糸を含むことによって、コンベヤ稼働中に発生する静電気が、基材層2の内周側に帯電することを防ぐことができる。導電糸を織布の縦糸に織り込む場合、導電糸は、ベルト材1の搬送方向に平行になるように設けられる。
【0014】
導電糸は、従来公知のものであって、合成繊維や綿などの糸を、導電性を有する物質に浸漬して、導電性のコーティングを施したものなどを用いることができる。静電気の帯電の防止を効果的に行うことができる点から、導電糸としては、KBセーレン株式会社製「ベルトロン」(登録商標)や、ユニチカ株式会社製「メガーナ」(登録商標)などを用いることが好ましい。導電糸は、後述する基材層2の厚さにより、糸の太さを選択して用いればよい。
【0015】
基材層2は搬送側の表面に印刷が施された印刷面を含むものであってもよい。本実施の形態のベルト材を、食品加工などの食品搬送用のベルトコンベヤに使用する場合、作業者がベルトから食品を持ち上げて、作業をし、或いは、目視による点検をし、その後再び、食品をベルト上に戻すという場合が想定される。このような場合、ベルト材1上に食品を戻す位置を示すマークが、ベルト材1の表面から認識できるように表示されていると、作業者の作業効率を向上させることができ、また、搬送される食品がベルト材1上の所定の位置に戻されることで、ベルトコンベヤの稼働を安定して行うことが可能となる。
【0016】
基材層2は、単層からなるものでもよく、複数の層からなるものでもよい。基材層2が複数の層からなることは、ベルト材全体の強度を高めることができる点で好ましい。複数の層からなる場合、上記の基材層2を構成する材料を任意で組み合わせて用いればよい。複数の層からなる場合、各層は、例えば、後述する非反応性のホットメルト樹脂や反応性ホットメルト樹脂などのホットメルト樹脂により接着することができる。各層を接着させるためのホットメルト樹脂の使用量は、200g/m2以上であることが好ましく、300g/m2以上であることがより好ましい。この場合のホットメルト樹脂の使用量の上限は、特に限定されず、所望の接着強度により適宜調整すればよい。基材層2が複数の層からなる場合、基材層2の表面の少なくとも内周側が導電糸を含むように構成すればよく、各層に導電糸を含む構成としてもよい。
【0017】
基材層2の全体の厚さは、3.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることがさらに好ましい。基材層2の全体の厚さが3.0mm以下であると、プーリへの追従性が良好であり、特に、1.5mm以下であると、小プーリへの追従性が良くなり好ましい。基材層2の全体の厚さの下限は特に限定されないが、ベルト材1の強度の点からは、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。
【0018】
(樹脂層)
樹脂層3は、基材層2少なくとも片面に任意で設けられる層である。例えば、ベルト材の用途によって、基材層に強度を付与するために設けたり、基材層を食品や薬品などの汚染から保護するために設けたりすることができる。
【0019】
樹脂層3は、隠蔽性を有しない層であってもよく、隠蔽性を有する層としてもよい。基材層2の片面に樹脂層3として隠蔽性を有する樹脂層を設ける場合は、基材層2に導電糸が含まれる場合に、導電糸をベルト材1の搬送物を配置する搬送側から隠蔽することができるので好ましい。また、後述のように樹脂層3に印刷を施した印刷面を有する場合、樹脂層3として隠蔽性を有する樹脂層を設ける場合は、基材層2に含まれる導電糸が隠蔽され、視認できない状態の印刷面を得ることができるので好ましい。
【0020】
樹脂層3は、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデンなどの樹脂から形成することができる。なかでも、表層面4との相溶性の点から、ポリウレタンを用いることが好ましい。樹脂層3を隠蔽性を有する樹脂層とする場合は、これらの樹脂に、所望の顔料を混合して形成することができる。顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、含水酸化クロム、アルミン酸コバルトなどの無機顔料や、有機顔料などを用いることができる。樹脂層3に顔料を含む場合、顔料の含有量は、樹脂層3を形成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。樹脂層3に顔料を含む場合、顔料の含有量は、樹脂層3を形成する樹脂100質量部に対し、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0021】
樹脂層3は搬送側の表面に印刷が施された印刷面を有するものであってもよい。樹脂層3の表面に印刷を設ける場合は、基材層2の表面に印刷を設ける場合と同様、作業者の作業効率を向上させることができ、また、搬送される食品がベルト材1上の所定の位置に戻されることで、ベルトコンベヤの稼働を安定して行うことが可能となる。
【0022】
樹脂層3の厚さは、1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。樹脂層3の厚さが1.0mm以下であると、プーリへの追従性が良く、特に、0.5mm以下であると、小プーリへの追従性が良く、好ましい。樹脂層3の厚さの下限は特に限定されないが、ベルト材1の強度の点からは、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。
【0023】
(表面層)
表面層4は、基材層2又は樹脂層3の搬送側に設けられ、搬送物を配置する面である。表面層4は、ホットメルト樹脂を、一度溶融させ、その後固化させることで設けることができる。表面層4をホットメルト樹脂により形成した場合は、基材層2又は樹脂層3表面との積層に溶剤系接着剤を使用しないことから、従来の溶剤系接着剤における印刷されたマークの滲みの問題や、作業環境や大気への溶剤の揮発の問題を避けることができる。また、水系接着剤における乾燥に多量のエネルギーを要するなどの問題を避けることができるので、好ましい。また、ホットメルト樹脂を用いた場合であっても、溶剤系接着剤を用いた場合と同程度の、諸物性に優れたベルト材を提供することができる。
【0024】
表面層を形成するホットメルト樹脂としては、非反応性ホットメルト樹脂と反応性ホットメルト樹脂のいずれも使用することができる。非反応性ホットメルト樹脂は、樹脂の分子構造に反応性基を有しないホットメルト樹脂であって、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの公知のホットメルト樹脂を用いることができる。また非反応性ホットメルト樹脂としては、加工性の点からは、120℃における溶融粘度が、6mPa・s以上のものが好ましく、10mPa・s以上のものがより好ましい。また、120℃における溶融粘度が、100mPa・s以下のものが好ましく、50mPa・s以下のものがより好ましい。
【0025】
反応性ホットメルト樹脂は、樹脂の分子構造に反応性基を有するホットメルト樹脂であって、例えば、ウレタン樹脂に反応性基として、イソシアネート基、ヒドロキシル基などを有するものを用いることができる。ウレタン樹脂としては、120℃における溶融粘度が、6mPa・s以上のものが好ましく、10mPa・s以上のものがより好ましい。また、ウレタン樹脂としては、120℃における溶融粘度が、100mPa・s以下のものが好ましく、50mPa・s以下のものがより好ましい。このような反応性ホットメルト樹脂の具体例としては、DIC株式会社製「タイフォースHシリーズ」、日立化成ポリマー株式会社製「ハイボンシリーズ」などが挙げられる。
【0026】
ホットメルト樹脂の使用量は、200g/m2以上であることが好ましく、300g/m2以上であることがより好ましい。ホットメルト樹脂の使用量の上限は、特に限定されず、所望の接着強度により適宜調整すればよい。
【0027】
表面層4の厚さは、0.05mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。表面層4の厚さが0.05mm以上であると、ベルト材の表面の保護が十分であり、経年の使用への耐性を付与することができる。表面層4の厚さの上限は特に限定されないが、ベルト材1の強度とプーリ径の点からは、1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
【0028】
表面層4の物性は特に限定されないが、ベルト材としての機能を十分に付与するためには、すなわち、ベルトの屈曲や張力による伸縮に影響せず、かつ、破損しない抗張力や弾性力を有するという点からは、表面層4の60℃における抗張力5MPa以上であることが好ましく、8MPa以上であることがより好ましい。また、弾性率が80Mpa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましい。ホットメルト樹脂により形成する表面層4の物性を上記のような範囲とすることで、従来のコーティングによる表面を有するベルト材における表面物性と同等又は従来以上の物性を有するものとすることができる。
【0029】
表面層4の抗張力及び弾性率は、JIS K 6251に準拠した試験により求めることができる。
【0030】
(ベルト材の製造方法)
以下に、本実施の形態のベルト材1の製造方法について説明する。
図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、
図1(b)に示すベルト材1の製造方法を説明するための模式図である。以下の説明において、本発明の効果に矛盾しない範囲で、各工程は入れ替えて実施することができる。
【0031】
まず、所望のサイズとした基材層2を準備する。次いで、
図2(a)に示すように、基材層2の片面に、樹脂層3を形成する。樹脂層3を形成する工程は、従来公知の方法により実施することができる。具体的には、Tダイ法などの押出成形により樹脂層3を形成したり、基材層2の片面、及び、樹脂層3の片面の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布し、基材層2と樹脂層3とを接着し積層させる方法などが例示できる。押出成形により樹脂層3を形成する場合は、基材層2と樹脂層3との接着強度が接着剤による接着に比べて強固となるので好ましい。
【0032】
接着剤を用いて基材層2と樹脂層3とを接着し積層させる場合、接着剤としては、樹脂層3の樹脂にもよるが、ウレタン系接着剤などを用いることができる。
【0033】
樹脂層3を形成した基材層2は、室温にて放置、又は、冷却により室温と同等としたのち、次の工程に供される。次の工程は、樹脂層3の表面に印刷をする工程である。
【0034】
樹脂層3の表面へのマークなど印刷は、従来公知の方法により実施することができる。樹脂層3の表面への印刷は、例えば、インクジェットプリンタなどにより実施することができる。
【0035】
次に、樹脂層3を形成した基材層2に表面層4を形成する工程について説明する。本実施の形態において表面層4を形成する工程は、樹脂層3の表面にホットメルト樹脂7を溶融して塗布する工程としてもよいし、離型フィルム6の片面にホットメルト樹脂7を塗布する工程と、離型フィルム6のホットメルト樹脂7を塗布した面と、樹脂層3の印刷面とを積層する工程と、離型フィルム6を剥離する工程とを含むものとしてもよい。
【0036】
樹脂層3の表面にホットメルト樹脂7を溶融して塗布する工程では、溶融装置を用いて120~130℃においてホットメルト樹脂を溶融して、ロールコーターなどの塗布装置を用いて、樹脂層3の片面にホットメルト樹脂7を塗布する。その後、ホットメルト樹脂7が固化するまで、積層物を放置する。このような工程により、樹脂層3の印刷面の表面にホットメルト樹脂7からなる表面層4が形成されたベルト材1が得られる。
【0037】
また、離型フィルム6を用いる場合、離型フィルム6の片面にホットメルト樹脂7を塗布する工程では、溶融装置を用いて120~130℃においてホットメルト樹脂を溶融して、ロールコーターなどの塗布装置を用いて、
図2(b)に示すように、離型フィルム6の片面にホットメルト樹脂7を塗布する。離型フィルム6としては、従来公知の離型性のフィルムを用いることができ、具体的には、PETフィルム、PTFEフィルム、離型紙などを用いることができる。
【0038】
次いで、
図2(c)に示すように、離型フィルム6のホットメルト樹脂7を塗布した面と、樹脂層3の印刷面とを、ロールプレスなどにより張り合わせて積層する(
図2(d))。この時、積層前のホットメルト樹脂7の表面温度は、常温まで下がっていても、下がっていなくてもよい。ロールプレスの温度は、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。また、ロールプレスの温度は、130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。ロールプレスの温度をこのような温度範囲とすることで、ホットメルト樹脂7の表面温度を例えば、60~80℃の流動性のある状態とすることができる。積層時にホットメルト樹脂7を流動性のある状態にできれば、ロールプレスの温度、積層方法は上記に限られない。積層後、ホットメルト樹脂7が固化するまで、積層物を放置する。その後、
図2(e)に示すように、離型フィルム6を剥離して、樹脂層3の印刷面の表面にホットメルト樹脂7からなる表面層4が形成されたベルト材1が得られる。
【0039】
上記においては、
図1(b)に示す基材層2の片面に樹脂層3を備えたベルト材1の製造法について説明したが、本実施の形態のベルト材の製造方法は、樹脂層3を有しない
図1(a)に示す形態のベルト材1についても同様に適用することができる。すなわち、所望のサイズとした基材層2を準備する。次いで、基材層2の表面に印刷をする。基材層2の表面への印刷は、樹脂層3の表面への印刷と同様、インクジェットプリンタなどにより実施することができる。次に、基材層2に表面層4を形成する。表面層4は、上記の樹脂層3の表面への表面層4の形成と同様の方法により形成することができる。このようにして、基材層2の印刷面の表面にホットメルト樹脂7からなる表面層4が形成されたベルト材1が得られる。
【実施例0040】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1:基材層+表面層(反応性ホットメルト樹脂層))
ポバール興業社製「SBT-2」(導電糸を含み、2層積層したポリエステル織布からなる基材層、総厚さ1.2mm)を、幅240mm、長さ5mの大きさで用意した。樹脂層3の表面に、インクジェットプリンタにより所望のマークを印刷した。
【0042】
次に、ホットメルト樹脂として、イソシアネート系反応性ホットメルト樹脂(DIC株式会社製、タイフォースHシリーズ、反応性基としてイソシアネート基を含む、120℃における溶融粘度13.9mPa・s)を、120℃~130℃の条件で、PETフィルム(離型フィルム6)の片面にロールコーターにより塗布した。離型フィルム6のホットメルト樹脂7を塗布した面と、上記マークを印刷した樹脂層3の印刷面とを、ハンドロールプレスにより張り合わせて積層した。積層後、ホットメルト樹脂7が固化するまで、積層物を室温に、10分間放置した。その後、離型フィルム6を剥離し、樹脂層3の印刷面の表面にホットメルト樹脂7からなる表面層4を形成させて、ベルト材1を得た。
【0043】
得られたベルト材の総厚は1.3mmであり、表面層4の厚さは0.1mmであった。またベルト材の重量は1.3Kg/m2であった。また、得られたベルト材について、下記測定方法に従い測定した物性を表1に示す。
【0044】
<摩擦係数>
得られたベルト材について、テーバー摩耗試験を行った。試験条件は、JIS P8147 傾斜法に従った。結果を表1に示す。
【0045】
<摩耗指数>
得られたベルト材について、摩耗試験機(株式会社東洋精機製作所製)により摩耗試験を行った。試験条件は、JIS K 7204に従った。結果を表1に示す。
【0046】
<抗張力・1%伸長時荷重>
得られたベルト材について、引張強さ試験を行ない、抗張力及び1%伸長時荷重を求めた。試験条件は、JIS L 1096に従った。結果を表1に示す。
【0047】
(参考例1)
反応性ホットメルト樹脂に代わり、基材層2に、ポリウレタンシート(ポバール興業株式会社製、商品名:U90-0.3HM)による表面層4を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、ベルト材を得た。ポリウレタンシートによる表面層4を形成する際の接着剤としては、溶液系接着剤(ポバール興業株式会社製、商品名:B-1/B-L)を用い、200g/m2を基材層2の表面に塗布した。得られたベルト材の総厚は1.5mmであり、重量は1.6Kg/m2であった。参考例1で得られたベルト材について、実施例1と同様に、各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例2:基材層+樹脂層+表面層(反応性ホットメルト樹脂層))
ウレタン樹脂に白色顔料を混合した樹脂組成物を用意し、実施例1と同様の基材層2の片面に、Tダイ法により、白色の樹脂層3を形成した。得られた樹脂層3の表面に、インクジェットプリンタにより所望のマークを印刷した。
【0049】
次いで、ホットメルト樹脂として、イソシアネート系反応性ホットメルト樹脂(DIC株式会社製、タイフォースHシリーズ、反応性基としてイソシアネート基を含む、120℃における溶融粘度13.9mPa・s)を、PETフィルム(離型フィルム6)の片面にロールコーターにより塗布した。離型フィルム6のホットメルト樹脂7を塗布した面と、樹脂層3の印刷面とを、ハンドロールプレスにより張り合わせて積層した。積層後、ホットメルト樹脂7が固化するまで、積層物を室温に、10分間放置した。その後、離型フィルム6を剥離し、樹脂層3の印刷面の表面にホットメルト樹脂7からなる表面層4を形成させて、ベルト材1を得た。
【0050】
得られたベルト材の総厚は1.6mmであり、表面層4の厚さは0.1mmであった。またベルト材の重量は1.6Kg/m2であった。また、得られたベルト材について、実施例1と同様に、各種物性を測定した。物性を表1に示す。
【0051】
(実施例3:基材層+表面層(非反応性ホットメルト樹脂層))
ポバール興業社製「SBT-2」(導電糸を含み、2層積層したポリエステル織布からなる基材層、総厚さ1.2mm、幅240mm、長さ5m)の表面に、インクジェットプリンタにより所望のマークを印刷した。
【0052】
次に、ホットメルト樹脂層として、非反応性ホットメルト樹脂シート(ポバール興業社製、ウレタン樹脂からなるホットメルト樹脂シート「U85-0.2」、厚さ0.2mm)を2枚重ね合わせ、熱プレスにより積層した。熱プレスは、温度110℃、圧力10kgf/cmの条件下で、2分間プレスした。積層後、ホットメルト樹脂7が固化するまで、積層物を室温に、10分間放置し、樹脂層3の印刷面の表面にホットメルト樹脂7からなる表面層4を形成した、ベルト材1を得た。
【0053】
得られたベルト材の総厚は1.4mmであり、表面層4の厚さは0.2mmであった。またベルト材の重量は1.4Kg/m2であった。また、得られたベルト材について、実施例1と同様に、各種物性を測定した。物性を表1に示す。
【0054】
(実施例4:基材層+樹脂層+表面層(非反応性ホットメルト樹脂層))
ポバール興業社製「SBTU2020-H」(導電糸を含み、2層積層したポリエステル織布からなる基材層に、ウレタン樹脂からなる1層の樹脂層3を積層したもの、総厚さ1.5mm)を、幅240mm、長さ5mの大きさで用意した。樹脂層3の表面に、インクジェットプリンタにより所望のマークを印刷した。
【0055】
次に、実施例3と同様の方法で、樹脂層3表面に非反応性ホットメルト樹脂からなるホットメルト樹脂層を形成し、ベルト材1を得た。
【0056】
得られたベルト材の総厚は1.8mmであり、表面層4の厚さは0.3mmであった。またベルト材の重量は1.8Kg/m2であった。また、得られたベルト材について、実施例1と同様に、各種物性を測定した。物性を表1に示す。
【0057】
【0058】
図3(a)は、基材層2を表側からみた写真であり、
図3(b)は、実施例2のベルト材1を表側(つまり、搬送物を置く方の表面側)からみた写真である。
図3に示すように、ホットメルト樹脂により表面層4を形成した本発明のベルト材1は、マークが滲むことなく鮮明に表示されていることがわかる。また、隠蔽性を有する樹脂層3を有するベルト材1は、基材層2の表側から視たときに、導電糸5が隠蔽された状態となることがわかる。
【0059】
また、ホットメルト樹脂により形成された表面層4を有する本発明のベルト材1は、従来のベルト材と同等の物性を示し、コンベヤベルトとして有用であることがわかる。