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  • 特開-建物外壁の照明構造 図1
  • 特開-建物外壁の照明構造 図2
  • 特開-建物外壁の照明構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179211
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】建物外壁の照明構造
(51)【国際特許分類】
   F21V 33/00 20060101AFI20221125BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20221125BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221125BHJP
【FI】
F21V33/00 200
F21Y103:10
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086532
(22)【出願日】2021-05-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】598089580
【氏名又は名称】株式会社アーバネットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】服部 信治
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014PB00
(57)【要約】
【課題】建物外壁に複数階に跨るような帯状のラインで適度な間接光で照明でき、建物の夜間の景観を向上した建物外壁の照明構造を提供する。
【解決手段】建物の正面側に設けた第1外壁部11と、側面に設けた第2外壁部12と、を備えた建物外壁の照明構造であり、第2外壁部12には上下に延びる筋状の凹部20を複数階に連続して設け、凹部20の内面20aの一部が正面側から視認可能であるとともに、凹部20内に内面20aを照射するLED24を上下方向に連続して配置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の第1面をなす第1外壁部と前記第1面と異なる向きで隣接した第2面をなす第2外壁部とを備えた建物外壁の照明構造であって、
前記第1外壁部と隣接する前記第2外壁部の辺縁に沿って、筋状の凹部が複数階に連続して上下方向に設けられ、
前記凹部の内面が前記第1面側から視認可能であるとともに、前記凹部内に前記内面を照射するライン状光源が上下に連続して配置されている、建物外壁の照明構造。
【請求項2】
前記筋状の凹部は、前記第2外壁部に複数階に連続して外向きに突設され、該第2外壁部と同じ向きの底面と該底面の辺縁から互いに対向して第2外壁部の前方へ突出する一対の突出縦壁により構成され、前記一対の突出縦壁の対向面により前記凹部の内面が画成され、さらに、一方の突出縦壁が他方の突出縦壁より前方へ長く突出して形成されている、請求項1に記載の建物外壁の照明構造。
【請求項3】
前記一方の突出縦壁が他方の突出縦壁よりも突出して建物側面側が遮光される、請求項2に記載の建物外壁の照明構造。
【請求項4】
前記一方の突出縦壁の背面側に、前記建物の手摺壁が連結される、請求項3に記載の建物外壁の照明構造。
【請求項5】
前記凹部の内面は前記第1外壁部及び第2外壁部よりも淡色または白色に配色される、請求項1乃至4の何れかに記載の建物外壁の照明構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外壁の一部をライトアップするための建物外壁の照明構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物外壁の一部をライトアップして夜間の建物の景観を様々に演出したり、建物外壁に設置した照明装置により外壁をライトアップする技術が知られている。例えば特許文献1では、外壁の外装材と壁取付部材との間に隙間を設け、その隙間から漏れる光源からの光により壁面を装飾する照明機能付き外壁構造が提案されている。特許文献2では、外壁の上端部に沿って設けられた照明収容部に照明装置を収容し、照明装置で外壁の上端部を照らして装飾的な照明を行うようにした外壁構造が提案され、何れも住宅の一部の外壁をライトアップしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5215577号公報
【特許文献2】特許第6738203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、大型の建物において複数階に跨るような範囲をライトアップするには、建物自体又は建物外部の周囲に強力な投光器を設置して強い光で照射するものが多い。しかし、これらの構造では投光器からの距離や角度等により照度が低下するため、全体を均一な明度でライトアップすることが容易でない。
一方、電飾により特定の領域を光らせて、広い範囲をライトアップするには、多数の光源が必要となり、建物やライトアップする範囲などに制約があった。さらにプロジェクションマッピングにより建物外壁に各種の形状を表示することも行われるが、建物に投影可能な位置に投影装置を設置して強い鮮明な光で画像を投影しなければならず、建物やライトアップする位置などに制約がある。
【0005】
本発明は、建物を直接照明することなく、そして周囲からも直接照明光が目に入ることなく、建物外壁に複数階に跨って上下方向に適度な明度の間接光を照射してライン状の間接照明とすることで、スッキリしたデザインでの景観を呈し得る建物外壁の照明構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建物外壁の照明構造は、建物の第1面をなす第1外壁部と第1面と異なる向きで隣接した第2面をなす第2外壁部とを備え、第1外壁部と隣接する第2外壁部の辺縁に沿って、筋状の凹部が複数階に連続して上下方向に設けられ、
凹部の内面は前記第1面側から視認可能であり、この凹部内に内面を照射するライン状光源が上下に連続して配置されていることを特徴としている。
【0007】
前記筋状の凹部は、前記第2外壁部に複数階に連続して外向きに突設され、第2外壁部と同じ向きの底面とこの底面の左右の辺縁から互いに対向して第2外壁部の前方へ突出する一対の突出縦壁により構成され、底面と一対の突出縦壁の対向面により前記内面が画成される。一対の突出縦壁のうち、一方の突出縦壁は他方の突出縦壁より前方へ長く突出して形成され、建物側面側が遮光されるよう構成される。
【0008】
前記一方の突出縦壁の外側面には居室側の手摺壁が連結される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建物外壁の照明構造によれば、第2面の第2外壁部に連続して上下方向に筋状の凹部が形成され、この凹部の内面が第1面側から視認可能であり、この筋状凹部内に内面を照射するライン状の光源が上下に連続して配置されている。従って、ライン状光源により照射された内面が、建物の第1面側から複数階にわたり上下に連続する一定幅の光の帯として視認できる。この光の帯は凹部の内面により反射されて形成されるため、幅方向両縁が均一な明度で間接光として明確に且つ柔らかい光量で区画される。これにより光の帯の幅に対して少ないLEDにより適度な光を照射することで、建物外壁に複数階に連続した明確な光の帯を表示することが可能で、建物の夜間景観を向上することができる。
【0010】
本発明において、筋状の凹部が第2外壁部に複数階に連続して外向きに突設され、互いに対向して一対の突出縦壁が配置されて、内面が底面と一対の突出縦壁の対向面とで取り囲まれていれば、建物の他の構造部分によって阻害されることなく、明確な光の帯を表示することができる。とくに、一対の突出縦壁のうち第1外壁部から離れた側の一方の突出縦壁を他方の突出縦壁より突出させ、その突出量を適宜設定することで光の帯の幅を適宜に設定することができ、第1外壁部側からの光の帯の視認性が向上する。
【0011】
一方の突出縦壁の背面側にバルコニーの手摺壁が連結されていれば、一方の突出縦壁の突出量を大きくしても十分な強度を確保できる。また、一方の突出縦壁で遮蔽することで第2外壁部側に配置されたバルコニーや通路に、LEDからの光が漏洩することもなく、建物側面側へ漏れ出ることを防止でき、例えば、建物側面側がリビングルームや寝室などの居室であっても、その照明光が居室側に入り込まず遮蔽されるので、夜間における建物使用者の使用環境を悪化させない。本発明において、凹部の内面が第1外壁部及び第2外壁部よりも淡色または白色であれば、LEDの色を反映させ易く、LEDの選択で様々な色の光の帯を表現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る建物外壁の照明構造を備えた建物の全体を示す概略斜視図である。
図2】上記実施形態に係る建物外壁の上端部付近を示す斜視図である。
図3】(a)(b)は突出縦壁の異なる高さ位置における水平方向断面図である。
図4】上記実施形態に係る凹部の水平方向断面図である。
図5】ライン状光源の配設構造を示し、(a)は正面図、(b)はLEDの保持部材を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
本実施形態の建物10は、図1に示すように、一例として複数階建の集合住宅として示し、鉄筋コンクリート造の建物からなる。この建物10は、第1面である正面に設けられた第1外壁部11と、第2面である側面に、第1面と異なる向きで隣接して設けられた第2外壁部12と、を備えている。本実施形態では、外壁部とは外部に露出して構築された構造部分をいう。図1では、集合住宅のエントランスを有するフロント側の第1面を正面と称し第1外壁部11を備える。また、第1面と直角に屈曲した第2面に並列する各居室側を側面と称し、第2外壁部12を備える。なお、建物は集合住宅に限らず、ホテル、デパート、特定施設、その他の各種のビルを含む。
【0014】
第1外壁部11には各階に窓部13が設けられ、1階にはエントランス部14が設けられている。第2外壁部12は建物10の両側面にそれぞれ設けられている。一方の第2外壁部12には、各戸のバルコニー15が設けられ、他方の第2外壁部12には図示しない通路が設けられている。各階のバルコニー15は、手摺り壁16とこの手摺り壁16の上方に形成した開放空間17とで構成されている。
【0015】
図2に示すように、第1外壁部11と第2外壁部12とは90度屈曲して隅角部18を構成し、この隅角部18の第2外壁部12側には辺縁に沿って上下に延びる筋状の凹部20が複数階、本実施形態では建物全高に連続して設けられている。凹部20は、躯体本体の隅角部18の柱部19と、柱部19から第2外壁部12側に上下に連続して外向きに突設された一対の突出縦壁21a,21bと、により形成されている。一対の突出縦壁21a,21bは、第2外壁部12と同じ向きの底面21cと該底面21cの両辺から互いに対向して第2外壁部の前方へ突出させて構成し、この底面21cと各突出縦壁21a,21bの対向面とにより、凹部20の内面20aが画成されている。
【0016】
図3(a)及び図3(b)に示すように、一対の突出縦壁21a,21bは互いに平行に側方に突設されていて、第1外壁部11から離間した側、すなわち、第2外壁部12の居室側に設けた一方の突出縦壁21aが第1外壁部11側に設けた他方の突出縦壁21bより長い寸法で突出している。両突出縦壁21a,21bは鉄筋コンクリート造で、柱部19と一体に構築されている。第1外壁部11は外表面から平滑に連続している。
【0017】
一方の突出縦壁21aは、第2外壁部12のバルコニー15又は通路以上に突出して設けられている。一方の突出縦壁21aの背面側には、図3(a)に示すように、各階のバルコニー15又は通路の手摺り壁16が連結して構築されている。各階の開放空間17に対応する位置では、図3(b)に示すように、他方の突出縦壁21bの背面側では手摺り壁16は連結されていない。
【0018】
凹部20は、建物10の側方向きに開口していて、凹部20の開口幅や突出量などにより、正面側からは底面21cは視認されず、一方の突出縦壁21aにより形成された内面20aの一部が視認できる。この凹部20は内面20aが第1外壁部11及び第2外壁部12よりも淡色または白色に配色されていて、日中、正面側からは凹部20内面20aが淡色または白色で視認される。
【0019】
凹部20内には、図4に示すように凹部20の内面20aを照射するためのライン状光源23が配設されている。図5に示すように、ライン状光源23は、上下に連続するようにライン状に配置されたLED24(以下、ライン状LEDという)と、凹部20の底面21cに固定して設けられ、ライン状LED24を正面側から着脱可能に、ライン状LED24の両側面を弾性により嵌合して保持する複数の断面略コ字状の保持部材25と、図示しない電源部及び配電部からライン状LED24に通電する配線26及びジョイントボックス(登録商標)27と、を備えている。保持部材25はライン状LED24の長手方向に間隔を空けて設けて配設してもよい。保持部材25は、好ましくは、ライン状LED24の揺れや撓みを防止するためにコーキング剤により底面21cに係止する。
【0020】
本発明の建物外壁の照明構造では、ライン状光源23を凹部20の底面21cに一連で一直線に配設したので、一方の突出縦壁21aの背面の居住室側には光が照射されない。また、他方の突出縦壁21bにより正面側も隠蔽されているため、ライン状光源23のLED24や配線26などは正面側からは全く視認されず直接光が視認されることもない。
夜間にライン状光源23のLED24を点灯すると、LED24が凹部20内で上下方向に連続して直線状に配置されているため、LED24からから発する光により凹部20の内面20aが連続した光で照射される。そのため建物10の正面側からは、ライン状LEDが視認されることがなく、一方の突出縦壁21aの内面に照射された直接光が反射して間接光により照明されることになる。これにより、建物の正面側において外壁部のエッジ部分に沿って上下方向で連続してLED24により照射された凹部20の内面20aが夜間の周囲の景観に対して柔らかい光の帯で間接的に照明される。
【0021】
日中ではライン状光源23のLED24は消灯していて、建物10の正面側から、複数階に連続した凹部20の内面20aが視認される。そのため昼間であっても夜間であっても、正面側からは複数階に連続した凹部20の内面20aの形状を明確に視認することができる。また昼間には、一方の突出縦壁21aによりバルコニー15や開放空間17を正面側からの視線を遮ることで目隠しとして機能させることができる。
【0022】
本実施形態の建物外壁の照明構造によれば、側面の第2外壁部12に設けられた筋状の凹部20の内面20aは一部が正面側から視認可能であるが、この筋状の凹部20内に収納したライン状LED24は隠蔽されていて視認できない。そのため夜間には、ライン状LED24により照射された内面20aが建物10の正面側から上下に連続する光の帯として視認される。この光の帯は凹部20の内面20aにより形成されるため幅方向両縁が間接照明により画成されて視認される。これにより光の帯の幅に対して少ないLEDにより適度な強さの光を照射することで、建物10の外壁に連続した明確な光の縦方向の帯を表示することができ、建物10の外壁に複数階に跨ってライトアップして、建物10の夜間の景観を向上することができる。
【0023】
本実施形態の建物外壁の照明構造では、筋状の凹部20が第2外壁部12に複数階に連続して外向きに突設され、この凹部20は互いに対向配置された一対の突出縦壁21a,21bを備え、内面20aが一対の突出縦壁21a,21bにより囲まれている。そのため建物10の他の構造部分によって阻害されることなく、間接光照明による光の帯を容易に表示することができる。本実施形態では、建物のほぼ全高に対して、筋状の凹部20を構成すると共に、その内部にライン状光源を配置しているので、建物の左右辺縁に全高にわたって間接照明が醸しだされる。
【0024】
しかも一対の突出縦壁21a,21bのうち第1外壁部11から離間する一方の突出縦壁21aが他方の突出縦壁21bより突出しているので、突出させる長さを調節することで光の帯の幅を適切に設定でき、正面側からの光の帯の視認性を向上できる。
【0025】
また上記の建物外壁の照明構造では、一方の突出縦壁21aにおける他方の突出縦壁21bと対向しない背面側に建物10の手摺り壁16が連結されているので、一方の突出縦壁21aの突出量を大きくしても十分な強度を確保することができる。一方の突出縦壁21aの背面側に建物10の手摺り壁16が連結されていれば、第2外壁部12側のバルコニー15にLED24光が届かず、バルコニー15側へ漏れることがない。そのため夜間における建物10使用者の使用環境を悪化することがない。
【0026】
凹部20の内面20aが第1外壁部11及び第2外壁部12よりも淡色または白色に塗装されていると、LED24の色を反映させ易く、LED24の色を選択することで、様々な色の光の帯を表示できる。ライン状光源23のLED24が、凹部20内で断面略コ字状の保持部材25により正面側から着脱可能に保持されていると、メンテナンス時に凹部20の開口から容易にLED24を交換等することができ、作業性が向上する。
【0027】
なお上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば上記では、凹部20を各第2外壁部12に1本ずつ設けた例について説明したが、凹部20の本数、形状、位置などは適宜変更可能である。さらに上記では、凹部を建物10の略全高に設けたが一部に複数階に連続するように設けていても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 建物
11 第1外壁部
12 第2外壁部
13 窓部
14 エントランス部
15 バルコニー
16 手摺り壁
17 開放空間
18 隅角部
19 柱部
20 凹部
20a 凹部の内面
21a,21b 突出縦壁
21c 底面
23 ライン状光源
24 LED
25 保持部材
26 配線
27 ジョイントボックス(登録商標)
図1
図2
図3
図4
図5