IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テスポートの特許一覧

特開2022-179228材料試験システム、引張試験システム、および恒温槽
<>
  • 特開-材料試験システム、引張試験システム、および恒温槽 図1
  • 特開-材料試験システム、引張試験システム、および恒温槽 図2
  • 特開-材料試験システム、引張試験システム、および恒温槽 図3
  • 特開-材料試験システム、引張試験システム、および恒温槽 図4
  • 特開-材料試験システム、引張試験システム、および恒温槽 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179228
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】材料試験システム、引張試験システム、および恒温槽
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/18 20060101AFI20221125BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G01N3/18
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086557
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】521222383
【氏名又は名称】株式会社テスポート
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】袴田 貞幸
【テーマコード(参考)】
2G050
2G061
【Fターム(参考)】
2G050BA04
2G050BA10
2G050BA12
2G050CA02
2G050EA01
2G050EA05
2G050EB07
2G050EC01
2G050EC03
2G061AA01
2G061AA02
2G061AA07
2G061AB02
2G061AB05
2G061AC03
2G061AC04
2G061BA01
2G061BA17
2G061CA01
2G061CA09
2G061CA14
2G061CB01
2G061CB05
2G061DA06
2G061EB03
2G061EB05
2G061EB07
(57)【要約】
【課題】試験片に温度差が生じることを抑制可能な材料試験システムなどを提供する。
【解決手段】本発明の材料試験システムは、試験片における第1領域を支持する第1支持体と、試験片における第2領域を支持する第2支持体と、試験片を内部に収容する収容体とを備え、収容体は、試験片が収容される空間から取込口を介して気体を取り込み、試験片の第1領域に向けて温度が調整された気体を流す第1流路と、取込口を介して気体を取り込み、試験片の第2領域に向けて温度が調整された気体を流す第2流路とを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片における第1領域を支持する第1支持体と、
前記試験片における第2領域を支持する第2支持体と、
前記試験片を内部に収容する収容体と
を備え、
前記収容体は、
前記試験片が収容される空間から取込口を介して気体を取り込み、前記試験片の前記第1領域に向けて温度が調整された気体を流す第1流路と、
前記取込口を介して気体を取り込み、前記試験片の前記第2領域に向けて温度が調整された気体を流す第2流路と
を有する材料試験システム。
【請求項2】
前記第1流路に設けられ当該第1流路内の温度を調整する第1調整体と、
前記第2流路に設けられ当該第2流路内の温度を調整する第2調整体と、
前記第1調整体と前記第2調整体とを互いに異なる温度に設定可能な温度設定部と
を有する請求項1記載の材料試験システム。
【請求項3】
前記第1流路に設けられ当該第1流路内の気体を送る第1送風体と、
前記第2流路に設けられ当該第2流路内の気体を送る第2送風体と、
前記第1送風体と前記第2送風体とを互いに異なる風量に設定可能な風量設定部と
を有する請求項1または2記載の材料試験システム。
【請求項4】
前記取込口に設けられ当該取込口から取り込まれる気体を冷却する冷却体を有する請求項2または3記載の材料試験システム。
【請求項5】
前記第1流路において気体が前記試験片に向けて流出する第1流出領域に設けられ、当該第1流出領域における角度を変更することで流出する気体の向きを変化させる第1変更体と、
前記収容体の外部に設けられ前記第1変更体の角度を変化させるために操作される第1被操作部と、
前記第2流路において気体が前記試験片に向けて流出する第2流出領域に設けられ、当該第2流出領域における角度を変更することで流出する気体の向きを変化させる第2変更体と、
前記収容体の外部に設けられ前記第2変更体の角度を変化させるために操作される第2被操作部と
を有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の材料試験システム。
【請求項6】
前記取込口は、上下方向において前記第1流出領域および前記第2流出領域の間に挟まれて設けられる請求項5記載の材料試験システム。
【請求項7】
前記第1支持体が固定される第1固定部と、
前記第1固定部の上側に設けられ前記第2支持体が固定される第2固定部と、
前記第1固定部における互いに離間した位置から起立して設けられ、前記第2固定部を支持する複数の柱体と、
前記収容体における互いに異なる向きの側面に設けられ当該収容体の内部を視認可能とする複数の窓体と
を有し、
前記複数の窓体の各々は、前記複数の柱体同士の間に配置される
請求項1乃至6のいずれか1項記載の材料試験システム。
【請求項8】
試験片における下側端部をつかむ下側つかみ部と、
前記試験片における上側端部をつかむ上側つかみ部と、
前記下側つかみ部に対する前記上側つかみ部の相対位置を変化させ前記試験片を引っ張る引張部と、
前記試験片を内部に収容する収容体と
を備え、
前記収容体は、
前記試験片が収容される空間から、当該試験片と対向して設けられる開口を介して気体を取り込む取込流路と、
前記取込流路から流入する気体が分岐して流れる第1分岐流路および第2分岐流路と、
前記第1分岐流路から気体を流入させ、当該第1分岐流路の下側および前記取込流路の下側を通過させて、前記開口の下側に位置する第1流出口から前記試験片に向けて流出させる第1流出路と、
前記第2分岐流路から気体を流入させ、当該第2分岐流路の上側および前記取込流路の上側を通過させて、前記開口の上側に位置する第2流出口から前記試験片に向けて流出させる第2流出路と、
前記取込流路に設けられ気体を冷却する冷却体と、
前記第1分岐流路に設けられ当該第1分岐流路内の気体を加熱する第1加熱部と、
前記第1分岐流路に設けられ当該第1分岐流路内の気体を送る第1送風部と、
前記第1分岐流路の前記第1流出口に設けられ複数の羽根の向きを変化させて通過する気体の向きを調整する第1調整部と、
前記第2分岐流路に設けられ当該第2分岐流路内の気体を加熱する第2加熱部と、
前記第2分岐流路に設けられ当該第2分岐流路内の気体を送る第2送風部と、
前記第2分岐流路の前記第2流出口に設けられ複数の羽根の向きを変化させて通過する気体の向きを調整する第2調整部と
を有する引張試験システム。
【請求項9】
試験片、当該試験片における第1領域を支持する第1支持体、および当該試験片における第2領域を支持する第2支持体が配置される試験室と、
前記試験室に向けて開口する取込口を介して気体を取り込み、前記試験片の前記第1領域に向けて温度が調整された気体を流す第1流路と、
前記取込口を介して気体を取り込み、前記試験片の前記第2領域に向けて温度が調整された気体を流す第2流路と
を有する恒温槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験システム、引張試験システム、および恒温槽に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、恒温槽が開示されている。この恒温槽には、主室と副室が設けられている。主室には、試験治具または試験片を貫通させるための第1貫通孔が設けられるとともに、前面に第1扉が配設され、内部に試験空間が形成される。そして、第1扉の上側の領域には、副室が配設される。副室には、試験片を貫通させるための第2貫通孔が設けられるとともに、前面に第2扉が配設され、内部に試験空間が形成される。副室の第2扉とは逆側の背面は主室の試験空間に向けて開放されており、副室の試験空間と主室の試験空間とは連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-207473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、恒温槽内に試験片を配置して引張試験などを行う場合において、試験片に温度差が生じることがある。
そこで、本発明では、試験片に温度差が生じることを抑制可能な材料試験システムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、試験片における第1領域を支持する第1支持体と、前記試験片における第2領域を支持する第2支持体と、前記試験片を内部に収容する収容体とを備え、前記収容体は、前記試験片が収容される空間から取込口を介して気体を取り込み、前記試験片の前記第1領域に向けて温度が調整された気体を流す第1流路と、前記取込口を介して気体を取り込み、前記試験片の前記第2領域に向けて温度が調整された気体を流す第2流路とを有する材料試験システムである。
ここで、前記第1流路に設けられ当該第1流路内の温度を調整する第1調整体と、前記第2流路に設けられ当該第2流路内の温度を調整する第2調整体と、前記第1調整体と前記第2調整体とを互いに異なる温度に設定可能な温度設定部とを有するとよい。
また、前記第1流路に設けられ当該第1流路内の気体を送る第1送風体と、前記第2流路に設けられ当該第2流路内の気体を送る第2送風体と、前記第1送風体と前記第2送風体とを互いに異なる風量に設定可能な風量設定部とを有するとよい。
また、前記取込口に設けられ当該取込口から取り込まれる気体を冷却する冷却体を有するとよい。
また、前記第1流路において気体が前記試験片に向けて流出する第1流出領域に設けられ、当該第1流出領域における角度を変更することで流出する気体の向きを変化させる第1変更体と、前記収容体の外部に設けられ前記第1変更体の角度を変化させるために操作される第1被操作部と、前記第2流路において気体が前記試験片に向けて流出する第2流出領域に設けられ、当該第2流出領域における角度を変更することで流出する気体の向きを変化させる第2変更体と、前記収容体の外部に設けられ前記第2変更体の角度を変化させるために操作される第2被操作部とを有するとよい。
また、前記取込口は、上下方向において前記第1流出領域および前記第2流出領域の間に挟まれて設けられるとよい。
また、前記取込口は、前記第1支持体が固定される第1固定部と、前記第1固定部の上側に設けられ前記第2支持体が固定される第2固定部と、前記第1固定部における互いに離間した位置から起立して設けられ、前記第2固定部を支持する複数の柱体と、前記収容体における互いに異なる向きの側面に設けられ当該収容体の内部を視認可能とする複数の窓体とを有し、前記複数の窓体の各々は、前記複数の柱体同士の間に配置されるとよい。
【0006】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、試験片における下側端部をつかむ下側つかみ部と、前記試験片における上側端部をつかむ上側つかみ部と、前記下側つかみ部に対する前記上側つかみ部の相対位置を変化させ前記試験片を引っ張る引張部と、前記試験片を内部に収容する収容体とを備え、前記収容体は、前記試験片が収容される空間から、当該試験片と対向して設けられる開口を介して気体を取り込む取込流路と、前記取込流路から流入する気体が分岐して流れる第1分岐流路および第2分岐流路と、前記第1分岐流路から気体を流入させ、当該第1分岐流路の下側および前記取込流路の下側を通過させて、前記開口の下側に位置する第1流出口から前記試験片に向けて流出させる第1流出路と、前記第2分岐流路から気体を流入させ、当該第2分岐流路の上側および前記取込流路の上側を通過させて、前記開口の上側に位置する第2流出口から前記試験片に向けて流出させる第2流出路と、前記取込流路に設けられ気体を冷却する冷却体と、前記第1分岐流路に設けられ当該第1分岐流路内の気体を加熱する第1加熱部と、前記第1分岐流路に設けられ当該第1分岐流路内の気体を送る第1送風部と、前記第1分岐流路の前記第1流出口に設けられ複数の羽根の向きを変化させて通過する気体の向きを調整する第1調整部と、前記第2分岐流路に設けられ当該第2分岐流路内の気体を加熱する第2加熱部と、前記第2分岐流路に設けられ当該第2分岐流路内の気体を送る第2送風部と、前記第2分岐流路の前記第2流出口に設けられ複数の羽根の向きを変化させて通過する気体の向きを調整する第2調整部とを有する引張試験システムである。
さらに他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、試験片、当該試験片における第1領域を支持する第1支持体、および当該試験片における第2領域を支持する第2支持体が配置される試験室と、前記試験室に向けて開口する取込口を介して気体を取り込み、前記試験片の前記第1領域に向けて温度が調整された気体を流す第1流路と、前記取込口を介して気体を取り込み、前記試験片の前記第2領域に向けて温度が調整された気体を流す第2流路とを有する恒温槽である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、試験片に温度差が生じることを抑制可能な材料試験システムなどを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態が適用される引張試験システムの全体構成例を示した図である。
図2】引張試験装置の概略説明図である。
図3】恒温槽の正面図である。
図4図3のIV-IVにおける恒温槽の断面図である。
図5】恒温槽内における気体の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
<引張試験システム1>
図1は、本実施の形態が適用される引張試験システム1の全体構成例を示した図である。
引張試験システム1は、引張試験装置3と、恒温槽5と、冷凍装置9とを有する。
【0010】
引張試験装置3は、試験対象品である試験片10に対して引張力を付与する。図示の例の引張試験装置3は、試験片10の上下方向の上側および下側をつかみ、上下方向に沿う向きで試験片10に引張力を付与するよう構成されている。詳細は後述するが、引張試験装置3は概ね枠体として構成される。
【0011】
恒温槽5は、試験片10を内部に収容し、試験片10が配置される空間の温度を制御する。恒温槽5は、試験片10が配置される空間を、例えばマイナス180℃~600℃など予め定めた範囲内の温度に制御することができる。図示の例の恒温槽5は、略直方体状である。この恒温槽5は、概ね枠体である引張試験装置3内に挿入して配置される。
【0012】
冷凍装置9は、冷却機能を有する。冷凍装置9は、冷凍機筐体あるいは冷凍機式冷却装置の一例である。具体的には、冷凍装置9は、恒温槽5に冷却媒体を供給し、恒温槽5内における低温(例えば室温以下)試験を実現する。図示の例の冷凍装置9は、概ね直方体状であり、恒温槽5の下方で恒温槽5を支持する。冷凍装置9は、不図示のレールなどを介して恒温槽5と接続されている。このことにより、恒温槽5は、冷凍装置9上でスライド可能である(矢印D1参照)。
【0013】
なお、冷凍装置9の冷却機能を実現する手段としては、例えば一元冷凍機、二元冷凍機、液体二酸化炭素(LCO2)、液体窒素(LN2)、およびこれらの組合わせなどが用いられる。また、冷凍装置9により冷凍機冷却を行う場合、冷凍装置9は常時オンの状態である1系統で制御される。また、冷凍装置9によりガス冷却を行う場合、冷凍装置9に設けられガスを噴出する下側ノズル111および上側ノズル115(後述)は、オン/オフを切り替える2系統で制御される。
【0014】
ここで、試験片10の材質や形状などは、引張試験装置3によってつかむことが可能であれば特に限定されない。試験片10は、例えば金属、樹脂、繊維、炭素繊維強化炭素複合材料を含む複合材料など、特定することなく用いることができる。
【0015】
また、以下の説明においては、図1における上下方向を単に上下方向といい、図1における下側を単に下側といい、図1における上側を単に上側ということがある。また、上下方向と交差する方向であり、恒温槽5のスライド方向に沿う方向を単に奥行方向といい、スライド方向に沿う向きで図1における紙面手前側を単に手前側といい、スライド方向に沿う向きで図1における紙面奥側を単に奥側ということがある。また、上下方向および奥行方向と交差する方向を単に幅方向といい、幅方向に沿う向きで図1における紙面手前側を単に一方側といい、幅方向に沿う向きで図1における紙面奥側を単に他方側ということがある。
【0016】
<引張試験装置3>
図2は、引張試験装置3の概略説明図である。具体的には、図2(a)は引張試験装置3の斜視図であり、図2(b)は引張試験装置3の正面図である。
次に、図2を参照しながら、引張試験装置3について説明をする。
【0017】
図2(a)に示すように、引張試験装置3は、床面FLなどに配置される板状部材である下側ベース(試験機ベース)31と、下側ベース31の4隅に起立して設けられる第1支持体(支柱)35と、下側ベース31の外周で第1支持体35の各々に沿って設けられる第2支持体37と、下側ベース31の上側に配置され第1支持体35および第2支持体(支柱)37に支持される板状部材である上側ベース(試験機クロスヘッド)33とを有する。また、引張試験装置3は、上側ベース33に設けられた引張駆動装置(負荷機構)36と、引張駆動装置36に接続されるケーブル(不図示)などを支持するケーブル支持体37と、ケーブル(不図示)を介して引張駆動装置36などと接続され引張駆動装置36を制御する引張制御部(不図示)と、引張駆動装置36から駆動力を受けて試験片10(図2(b)参照)に引張力を付与する負荷機構40とを有する。
【0018】
ここで第1支持体35および第2支持体37は、略円柱状部材であり、各々4本ずつ設けられている。下側ベース31の4隅の各々には、1本の第1支持体35および1本の第2支持体37の組が設けられている。付言すると、この1本の第1支持体35および1本の第2支持体37の組は、奥行き方向および幅方向において互いに離間した位置に設けられている。
【0019】
さて、図2(b)に示すように、負荷機構40は、下側ベース31の上側に設けられる下側固定部41と、下側固定部41に接続され試験片10をつかむ下側つかみ部(下側つかみ具)43と、上側ベース33の下側に設けられる上側固定部45と、上側固定部45に接続され試験片10をつかむ上側つかみ部(上側つかみ具)47とを備える。なお、これら各部の中心軸は、互いに一致するように配置される。
【0020】
ここで、下側つかみ部43の下側端部431は、下側固定部41と接続される。下側つかみ部43の上側端部433は、恒温槽5の内部に配置され、試験片10の下側端部101をつかむ。また、上側つかみ部47の下側端部471は、恒温槽5の内部に配置され、試験片10の上側端部103をつかむ。上側つかみ部47の上側端部473は、上側固定部45と接続される。
【0021】
上側固定部45は、引張駆動装置36に接続され、引張駆動装置36の駆動力を受けて上下方向に移動する。この移動にともない、下側つかみ部43と上側つかみ部47とにつかまれた試験片10に対して引張荷重が与えられる。すなわち、下側つかみ部43と上側つかみ部47との相対位置が変化することで、試験片10に引張荷重が与えられる。
【0022】
なお、引張試験を行うときには、試験片10に作用する試験力は不図示のロードセルなどにより検出され、引張制御部(不図示)に入力される。また、そのときの上側固定部45の移動量(ストローク)は、引張制御部(不図示)に入力され、試験片10の伸びに換算される。
【0023】
<恒温槽5の構造>
図3は、恒温槽5の正面図である。図4は、図3のIV-IVにおける恒温槽5の断面図である。
次に、図3および図4を参照しながら、恒温槽5の概略構成について説明をする。
【0024】
図3および図4に示すように、恒温槽5は、奥行方向手前側が開放された筐体51と、筐体51の奥行方向手前側に開閉可能に設けられた扉部53とを有する。また、恒温槽5は、内部を視認可能とする第1窓55と、第2窓57と、第3窓59とを有する。また、恒温槽5は、恒温槽5の内部と外部を連続させる下側貫通穴65と上側貫通穴67とを有する。また、恒温槽5は、恒温槽5の内部空間を仕切る下側隔壁71と上側隔壁73と、中央隔壁75とを有する。この恒温槽5内部は、大きく言えば試験室R1と温度調整室R3とに隔離されている。また、恒温槽5内部は、暖気あるいは冷気の吸気口である冷却空間開口(暖房空間開口)84と温冷風吹出し口である冷却空間開口84および上側還流開口88との間を温冷風が循環している。
【0025】
また、恒温槽5は、筐体51の内部に設けられ、角度が調整可能な複数の羽状部材を有する下側ルーバ91および上側ルーバ93と、筐体51の外部に設けられ、下側ルーバ91および上側ルーバ93各々の角度を調整するための被操作部である下側ハンドル92および上側ハンドル94と、下側ルーバ91および下側ハンドル92を接続する下側操作シャフト102と、上側ルーバ93および上側ハンドル94を接続する上側操作シャフト104とを有する。また、恒温槽5は、恒温槽5内にガス(気体)を供給する機能を有する。具体的には、恒温槽5は、液化ガス(LN2、LCO2)導入用の下側ノズル111、下側電磁バルブ113、上側ノズル115および上側電磁バルブ117を有する。
【0026】
また、恒温槽5は、恒温槽5の内部空間を冷却するエバポレータ81と、恒温槽5の内部空間を加熱する下側ヒータ83および上側ヒータ85と、恒温槽5の内部において回転し送風を行う下側ファン87および上側ファン89とを有する。また、恒温槽5は、駆動源である下側モータ95および上側モータ97と、下側ファン87および上側ファン89に駆動力を伝達する下側シャフト96および上側シャフト98と、温度制御用のセンサーである下側熱電対121および上側熱電対123と、恒温槽5の各構成部材を制御する温度制御部90とを有する。
【0027】
ここで、第1窓55、第2窓57、および第3窓59の各々は、恒温槽5における互いに異なる複数の面に設けられている。具体的には、第1窓55は、扉部53の板面中央部に形成されている。また、第2窓57は、筐体51における幅方向一方側の面である一方面56に形成されている。また、第3窓59は、筐体51における幅方向他方側の面である他方面58に形成されている。これらの第1窓55、第2窓57、および第3窓59は、恒温槽5内部に配置される試験片10と対向する位置に設けられる。また、第2窓57および第3窓59は、試験片10を挟んで互いに対向する位置に設けられる。
【0028】
第1窓55、第2窓57、および第3窓59の材料は特に限定されないが、例えば石英ガラスなど透光性のある材料で構成される。ここで、本実施の形態においては、恒温槽5の外部から、第1窓55、第2窓57、および第3窓59を介して、試験片10の状態が目視可能である。また、恒温槽5外部から、第1窓55、第2窓57、および第3窓59を介して、例えば放射温度計などによる試験片10の温度測定や、非接触変位計などによる試験時の試験片10の変位測定などが可能になる。ここで、試験片10の変位測定としては、試験軸方向の変位、幅方向の変位、試験片19の厚さ方向の変位のうちの一部または全部を測定することができる。
【0029】
下側貫通穴65は、筐体51における上下方向下側の下面64を貫通して設けられられる。上側貫通穴67は、筐体51における上下方向上側の上面66を貫通して設けられる。また、下側貫通穴65および上側貫通穴67の仮想中心軸は、互いに一致するように配置される。そして、下側貫通穴65および上側貫通穴67の各々には、下側つかみ部43および上側つかみ部47が配置される(後述する図5参照)。
【0030】
さて、図4に示すように、恒温槽5の筐体51の内部は、奥行方向における手前側から奥側に向かう向きに並ぶ試験室R1、温度調整室R3、および補助室R5に区分けされる。なお、試験室R1は、試験片10が配置される空間である。温度調整室R3は、試験室R1と連続する空間であり、試験室R1との間で気体を循環させる。補助室R5は、主隔壁61によって温度調整室R3と区切られた空間である。補助室R5は、電装品を収納する電装室として捉えることができる。
【0031】
ここで、温度調整室R3の内部は、下側隔壁71、上側隔壁73、および中央隔壁75によって、冷却空間R31、下側加熱空間R33、下側還流空間R35、上側加熱空間R37、および上側還流空間R39に区分けされている。
【0032】
具体的に説明をすると、まず、下側隔壁71は、板状部材であり、温度調整室R3内における上下方向下側において、板面が上下方向と交差する向きに設けられる。この下側隔壁71は、温度調整室R3における上下方向下側の空間を区画する。上側隔壁73は、板状部材であり、温度調整室R3内における上下方向上側において、板面が上下方向と交差する向きに設けられる。この上側隔壁73は、温度調整室R3における上下方向上側の空間を区画する。中央隔壁75は、板状部材であり、温度調整室R3内における上下方向中央部かつ奥行方向奥側で、板面が上下方向と交差する向きに設けられる。この中央隔壁75は、温度調整室R3における奥行方向奥側で温度調整室R3における上下方向を区画する。
【0033】
そして、冷却空間R31は、上下方向において下側隔壁71および上側隔壁73で挟まれた空間であり、かつ中央隔壁75の手前側端部751よりも奥行方向手前側の空間である。下側加熱空間R33は、冷却空間R31よりも奥行方向奥側でかつ上下方向において下側隔壁71および中央隔壁75の間の空間である。下側還流空間R35は、下側隔壁71より上下方向下側の空間である。この下側還流空間R35は、奥行方向奥側で下側加熱空間R33と連続する。上側加熱空間R37は、冷却空間R31よりも奥行方向奥側でかつ上下方向において下側隔壁71および中央隔壁75の間の空間である。上側還流空間R39は、上側隔壁73より上下方向上側の空間である。この上側還流空間R39は、奥行方向奥側で上側加熱空間R37と連続する。
【0034】
ここで、冷却空間R31における奥行方向手前側、すなわち冷却空間R31における試験室R1に向けた開口を冷却空間開口84とする。また、下側還流空間R35における奥行方向手前側、すなわち下側還流空間R35における試験室R1に向けた開口を下側還流開口86とする。また、上側還流空間R39における奥行方向手前側、すなわち上側還流空間R39における試験室R1に向けた開口を上側還流開口88とする。
【0035】
また、冷却空間R31には、エバポレータ81が設けられる。下側加熱空間R33には、下側ヒータ83および下側ファン87が設けられる。上側加熱空間R37には、上側ヒータ85および上側ファン89が設けられる。なお、ここではエバポレータ81を例示するが、冷却空間R31内の冷却が可能であれば特に限定されない。さらに説明をすると、例えば二元冷凍機式、一元冷凍機式、LN2式、LCO2式、二元冷凍機およびLN2の併用式、二元冷凍機およびLCO2の併用式、一元冷凍機およびLN2の併用式、一元冷凍機およびLCO2の併用式などがある。また、冷却をしない(室温以上)の態様においては、エバポレータ81を設けなくともよい。付言すると、冷却をしない場合でも試験片10の試験部に温度差は生じ得るが、本発明により温度分布を均一に近づけることができる。
【0036】
また、下側還流開口86には、下側ルーバ91が設けられる。上側還流開口88には、上側ルーバ93が設けられる。なお、下側ハンドル92および上側ハンドル94をユーザが回転させることにより、下側ルーバ91および上側ルーバ93の角度が変化し、下側ルーバ91および上側ルーバ93を通過する気体の向きが切り替わる(図中矢印D5、D7参照)。
【0037】
さて、補助室R5には、下側モータ95および上側モータ97が設けられており、主隔壁61を貫通して下側シャフト96および上側シャフト98が設けられている。下側モータ95および上側モータ97の各々が駆動すると、下側シャフト96および上側シャフト98を介して駆動力が伝達され、下側ファン87および上側ファン89が回転する。このことにより、温度調整室R3内において気体が強制的に流れる。ここで、下側モータ95および上側モータ97を制御することにより風量調整も可能である。具体的には、下側モータ95および上側モータ97の回転数を制御することによって、風量が調整される。
【0038】
ここで、本実施の形態における温度調整室R3においては、気体の流路が複数形成される。すなわち、試験室R1から、冷却空間R31、下側加熱空間R33、および下側還流空間R35を経て、再び試験室R1に流入することが可能な下側流路と、試験室R1から、冷却空間R31、上側加熱空間R37、および上側還流空間R39を経て、再び試験室R1に流入することが可能な上側流路とが形成される。詳細は後述するが、この複数の流路を流れる気体により、試験片10の温度が制御される。
【0039】
<恒温槽5の動作>
図5は、恒温槽5内における気体の流れを説明する図である。
次に図5を参照しながら、恒温槽5の動作および恒温槽5内における気体の流れを説明する。
【0040】
図5に示すように、恒温槽5内に設けられた試験片10は、下側つかみ部43と上側つかみ部47によって上下方向の両側がつかまれている。そのため、例えば試験片10および下側つかみ部43の間、あるいは試験片10および上側つかみ部47の間で熱が伝達されることにともない、試験片10の温度が試験条件における設定温度からずれることがある。また、恒温槽5内の対流の影響などにより、恒温槽5の内部空間において温度分布が生じることにもない、試験片10にも温度分布(温度差)が生じることがある。
【0041】
そこで、本実施の形態においては、試験片10、下側つかみ部43、および上側つかみ部47に向けて温度が調整された気体を流す。このことにより、試験片10における温度分布を均一化(均等化)し得る。すなわち、本実施の形態においては、試験片10における温度勾配を、気体の流れにより低減する。さらに説明をすると、上下で二分割された風の吹出し温度、風量、風向きを組合わせ、夫々を独立して制御することで、試験片10における温度分布を均一に近づけ、あるいは、あえて温度勾配つけることが任意に実施できる。
【0042】
恒温槽5の動作を具体的に説明する。まず前提として、温度制御部90によって制御されてエバポレータ81が駆動することにより、冷却空間R31内の気体が冷却される。また、温度制御部90によって制御されて下側ヒータ83および上側ヒータ85が駆動することにより、下側加熱空間R33および上側加熱空間R37内の気体が加熱される。
【0043】
そして、温度制御部90によって制御されて下側モータ95および上側モータ97が駆動することにともない、下側ファン87および上側ファン89が回転する。このことにより、試験室R1から温度調整室R3に気体が流入する。その後、この温度調整室R3に流入した気体は、下側流路および上側流路に分岐しながら温度調整室R3内を流れた後、試験室R1へ再び流入する。このとき、試験室R1から温度調整室R3に空気を吸い込む部分は1か所(冷却空間開口84、図中矢印D11参照)であり、試験室R1から試験室R1に空気を送り込む部分は2か所(下側還流開口86および上側還流開口88、図中矢印D47および矢印D67参照)である。すなわち、本実施の形態においては、共通の吸い込み口から吸い込まれた気体を、温度調整しながら分岐させた上で、試験片10、下側ルーバ91および上側ルーバ93に向けて流出させる。なお、冷却空間開口84は、暖気あるいは冷気の吸気開口部として捉えることができる。下側還流開口86は、下側温風あるいは冷風の排出開口部として捉えることができる。上側還流開口88は、上側温風あるいは冷風の排出開口部として捉えることができる。
【0044】
ここで、下側流路について具体的に説明をする。まず、冷却空間R31で冷却された気体は、下側加熱空間R33へと流入し(矢印D41参照)、下側ヒータ83によって加熱される。そして、加熱された気体は、下側加熱空間R33から下側還流空間R35へと流入する(矢印D43参照)。なお、下側還流空間R35へと流入した気体は、下側湾曲面77によって向きを変更された後、下側還流空間R35内を奥行方向手前側へと流れ(矢印D45参照)、下側ルーバ91を経て試験室R1へ流入する(矢印D47参照)。このとき気体は、下側つかみ部43、試験片10の下側端部101およびこれらの周辺に向かう。言い替えると、気体は試験片10における下側つかみ部43によってつかまれる(把持される)領域に向かう。
【0045】
次に、上側流路について説明をする。まず、冷却空間R31で冷却された気体は、上側加熱空間R37へと流入し(矢印D61参照)、上側ヒータ85によって加熱される。そして、加熱された気体は、上側加熱空間R37から上側還流空間R39へと流入する(矢印D63参照)。なお、上側還流空間R39へと流入した気体は、上側湾曲面79によって向きを変更された後、上側還流空間R39内を奥行方向手前側へと流れ(矢印D65参照)、上側ルーバ93を経て試験室R1へ流入する(矢印D67参照)。このとき気体は、上側つかみ部47、試験片10の下側端部103およびこれらの周辺に向かう。言い替えると、気体は試験片10における上側つかみ部47によってつかまれる領域に向かう。
【0046】
ここで、下側流路および上側流路の各々において、下側ヒータ83および上側ヒータ85が設けられる。下側ヒータ83および上側ヒータ85の設定温度などを制御することで、試験片10に向けて送り込まれる気体の温度が調整可能となる。また、下側流路および上側流路において、各々独立した駆動源である下側モータ95および上側モータ97と接続された下側ファン87および上側ファン89が設けられる。下側ファン87および上側ファン89の回転数、すなわち下側モータ95および上側モータ97の回転数などを制御することで、試験片10に向けて送り込まれる気体の量および速度(風量および風速)を制御できる。また、下側流路および上側流路の各々において、下側ルーバ91および上側ルーバ93が設けられる。下側ルーバ91および上側ルーバ93の向きを変更することで、試験片10に向かう気体の量が切り替わる。
【0047】
例えば、引張試験を行っている際に、上記のように放射温度計などによって試験片10の温度を測定すると、試験室R1の内部において、試験片10の上下方向上側の温度が下側の温度と比べて高温となることがある。このような場合においては、下側ヒータ83、上側ヒータ85、下側モータ95、および上側モータ97の少なくとも一つにフィードバックをかける。具体的には、下側ヒータ83を上側ヒータ85よりも高温の設定とすることや、下側モータ95を上側モータ97よりも回転数を大きくする設定とする。このことにより、試験片10の下側および下側つかみ部43の温度を上昇させ、試験片10における温度分布を抑制できる。
【0048】
上記のように、本実施の形態においては、空気(温風/冷風)の流れを、恒温槽5内上下を二分割して循環させる。さらに、上下で二分割された風、すなわち上下2系統の風について、風温、風量、風向を各々コントロールすることで、試験片10(試験体)の温度分布が調節可能となる。さらに説明をすると、本実施の形態においては、2系統に噴出する温風および冷風の吹き出し角度を夫々独立して制御することで、試験片10(試験体)の温度分布が調節可能となる。
【0049】
また、図示の例においては、恒温槽5の外部に設けられた下側ハンドル92および上側ハンドル94によって、下側ルーバ91および上側ルーバ93の向きが変更可能である。このことにより、扉部53を解放せずに風向きが変更可能となる。
【0050】
また、図示の例においては、第1支持体35同士の間に第1窓55、第2窓57および第3窓59が配置される。同様に、第2支持体37同士の間に第1窓55、第2窓57および第3窓59が配置される。このことにより、第1支持体35および第2支持体37に視界が妨げられることが抑制され、第1窓55、第2窓57および第3窓59を介して恒温槽5内部を視認可能となる。
【0051】
<変形例>
上記の説明においては、2つの流路を上下に並べて設けることを説明したが、2つの流路を左右方向に並べて設けてもよい。また、上記の説明においては、2つの流路に分岐させることを説明したが、複数の流路に分岐させるものであれば、3つ以上でもよい。なお、例えば2、4、6のように、分岐する流路の数を偶数とすることで、下側つかみ部43および上側つかみ部47の各々に向かう流路の数を互いに一致させることができる。
【0052】
また、上記の説明においては、下側ヒータ83および下側ファン87を下側加熱空間R33に設けることを説明したが、下側還流空間R35に設けてもよい。また、上記の説明においては、上側ヒータ85および上側ファン89を上側加熱空間R37に設けることを説明したが、上側還流空間R39に設けてもよい。また、下側流路および上側流路で共通する部分である冷却空間R31に、ヒータおよびファンの一方または両方を設ける構成であってもよい。さらに説明をすると、冷却空間R31において気体の温度調節を行う構成や、冷却空間R31において送風を行う構成であってもよい。また、上記の説明においては、冷却空間R31に設けられるエバポレータ81に加えて、あるいは冷却空間R31に設けられるエバポレータ81に替えて、下側流路および上側流路で共通する部分に、エバポレータを設けてもよい。また、下側加熱空間R33は、下側加熱冷却空間として捉えることができる。また、上側加熱空間R37は、上側加熱冷却空間として捉えることができる。
【0053】
また、上記の説明においては、下側ルーバ91および上側ルーバ93の向きを変更するとで、気体の向きを切り替えることを説明したが、下側ルーバ91および上側ルーバ93によって、気体の流出を抑制してもよい。すなわち、下側ルーバ91および上側ルーバ93の向きを変更することで、下側還流開口86および上側還流開口88の少なくとも一方から気体が流出することを制限してもよい。また、図示の例とは異なり、下側ルーバ91および上側ルーバ93を設けない構成であってもよい。
【0054】
また、上記の説明においては、試験片10などの温度を不図示の放射温度計を用いることを説明したが、熱電対などを試験片10設けるなど、周知の技術により試験片10の温度を測定してもよい。
【0055】
また、上記の説明においては、下側ハンドル92および上側ハンドル94によって手動で下側ルーバ91および上側ルーバ93の向きを変更することを説明したがこれに限定されない。例えば、モータと、このモータのオン/オフを切り替えるスイッチを設けてもよい。そして、スイッチを操作することにともない駆動するモータから駆動力を受けて下側ルーバ91および上側ルーバ93の向きを制御してもよい。
【0056】
また、上記の説明においては、引張試験装置3によって試験片10の引張試験を行うことを説明したが、これに限定されない。引張試験装置3は、万能試験機、あるいは4本支柱型万能材料試験機の一例である。ここで、万能試験機としては、試験片10の片側をベース側に延長ロッドを介して固定し、もう一方の片側をクロスヘッド側に延長ロッドを介して移動させて負荷を与え、試験片を保持する治具によって万能試材料試験を行う。さらに説明をすると、引張試験装置3は、試験片10を複数箇所で支持しながら試験片10の試験を行うものであれば、曲げ試験、圧縮強度試験、疲労試験、固さ試験、クリープ試験など他の試験においても用いることができる。すなわち、恒温槽5は、各種材料試験を実施するための試験環境を作成するための装置として捉えることができる。また、恒温槽5は、材料試験機用試験片温度分布調整機能付恒温槽として捉えることができる。また、恒温槽5は、低温から高温の温度域での各種試験について、その試験片の温度分布を調整し、試験片温度を均一化、或いは、温度勾配をつけることを可能とする。
【0057】
また、上記の説明においては、第1支持体35および第2支持体37が、それぞれ4本設けられること、すなわち4本支柱型であることを説明したが、2本支柱型など、他の構成であってもよい。
また、上記の説明においては、説明の都合上、温度制御部90を恒温槽5内部に設けることを説明したが、温度制御部90は恒温槽5の外部に設けられてもよいし、恒温槽5とは別体として設けられてもよい。
【0058】
なお、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【0059】
引張試験システム1は、材料試験システムの一例である。恒温槽5は、収容体の一例である。下側端部101は、第1領域の一例である。上側端部103は、第2領域の一例である。下側つかみ部43は、第1支持体の一例である。上側つかみ部47は、第2支持体の一例である。冷却空間開口84は、取込口および開口の一例である。冷却空間R31、下側加熱空間R33、および下側還流空間R35は、第1流路の一例である。冷却空間R31、上側加熱空間R37、上側還流空間R39は、第2流路の一例である。下側ヒータ83は、第1調整体および第1加熱部の一例である。上側ヒータ85は、第2調整体および第2加熱部の一例である。温度制御部90は、温度設定部および風量設定部の一例である。下側ファン87は、第1送風体および第1送風部の一例である。上側ファン89は、第2送風体および第2送風部の一例である。エバポレータ81は、冷却体の一例である。下側還流開口86は、第1流出領域および第1流出口の一例である。上側還流開口88は、第2流出領域および第2流出口の一例である。下側ルーバ91は、第1変更体および第1調整部の一例である。上側ルーバ93は、第2変更体および第2調整部の一例である。下側ハンドル92は、第1被操作部の一例である。上側ハンドル94は、第2被操作部の一例である。下側ベース31は、第1固定部の一例である。上側ベース33は、第2固定部の一例である。第1支持体35は、柱体の一例である。第2窓57は、窓体の一例である。引張駆動装置36は、引張部の一例である。冷却空間R31は、取込流路の一例である。下側加熱空間R33は、第1分岐流路の一例である。上側加熱空間R37は、第2分岐流路の一例である。下側還流空間R35は、第1流出路の一例である。上側還流空間R39は、第2流出路の一例である。
【符号の説明】
【0060】
1…引張試験システム、5…恒温槽、10…試験片、43…下側つかみ部、47…上側つかみ部、84…冷却空間開口、R1…試験室、R3…温度調整室、R31…冷却空間、R33…下側加熱空間、R35…下側還流空間、R37…上側加熱空間、R39…上側還流空間

図1
図2
図3
図4
図5