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特開2022-179236連鎖球菌ワクチン製剤およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179236
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】連鎖球菌ワクチン製剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/09 20060101AFI20221125BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221125BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
A61K39/09 ZNA
A61P31/04
C12N1/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】95
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021102713
(22)【出願日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】17/327,513
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521272263
【氏名又は名称】ジーピーエヌ ヴァクシンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリン ブリジット ブラゼル
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド アルシャリフィ
(72)【発明者】
【氏名】シャノン クリスタ タビッド
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー レイモンド ハースト
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス クレランド パトン
(72)【発明者】
【氏名】エバ シングルトン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA49X
4B065AA49Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB02
4B065BD13
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA14
4C085CC07
4C085DD01
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存の連鎖球菌ワクチンの少なくとも1つの欠点を軽減または緩和する改善された連鎖球菌ワクチンを提供する。
【解決手段】(i)マンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する改変を含む弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、(ii)細胞内マンガンイオン(Mn2+)のレベルを制限する様式で培養された弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、(iii)(i)および(ii)のうちの少なくとも1つの免疫原性成分、のうちの少なくとも1つを含み、(i)および(ii)の前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、-肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、-肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)の相同体のうちの1つから選択される野生型タンパク質を発現することができる、ワクチン組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチン組成物であって、
(i)マンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する改変を含む弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、
(ii)細胞内マンガンイオン(Mn2+)のレベルを制限する様式で培養された弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、
(iii)(i)および(ii)のうちの少なくとも1つの免疫原性成分、のうちの少なくとも1つを含み、
(i)および(ii)の前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、
-肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、
-肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)の相同体のうちの1つから選択される野生型タンパク質を発現することができる、ワクチン組成物。
【請求項2】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、前記連鎖球菌細菌の野生型の形態と比較して、同等または増加したレベルで前記野生型タンパク質を発現することができる、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
前記改変が、マンガンイオン(Mn2+)輸送における欠陥である、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
前記改変が、
連鎖球菌ATP結合カセットタンパク質、および連鎖球菌ABCトランスポーター膜貫通型パーミアーゼ-マンガン輸送タンパク質のうちの少なくとも1つから選択されるタンパク質の、欠失、減弱化、および発現低下のうちの少なくとも1つから選択される、請求項3に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記改変が、
psaB、psaC、およびそれらの相同体のうちの少なくとも1つから選択される連鎖球菌遺伝子の、欠失、減弱化、および発現低下のうちの1つから選択される、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記改変が、psaR、mntE、mgtA、およびそれらの相同体のうちの少なくとも1つから選択される連鎖球菌遺伝子の発現を増強する、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記改変が、
psaB、psaC、mntE、mgtA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の発現を変更することができる調節配列の、欠失、抑制および増強のうちの1つから選択される、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記改変が、
sczA、czcD、copA、cupA、copYおよびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の、欠失および抑制のうちの1つから選択され、
それにより、前記細菌中のマンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
前記改変が、adcA、adcAII、adcC、adcB、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の過剰発現であり、
それにより、前記細菌中のマンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する、請求
項1に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌がイオノフォアと共に培養され、それにより、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちの少なくとも1つから選択されるカチオンの細胞取り込みが増加している、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
前記イオノフォアが、ピリチオン、8-ヒドロキシキノリン、およびそれらの類似体のうちの少なくとも1つから選択される、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、前記細菌上のマンガンイオン結合部位と競合するカチオンを含む培地で培養された、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
前記カチオンが、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記カチオンが、MgtAリボスイッチおよびその相同体から選択される連鎖球菌タンパク質と相互作用し、
それにより、前記細菌中のマンガン輸送遺伝子の調節を変更する、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記カチオンが、MgtAリボスイッチおよびその相同体から選択される連鎖球菌タンパク質と相互作用し、
それにより、前記細菌中の前記カチオンの細胞取り込みが増加する、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaAタンパク質機能を阻害するのに十分なモル過剰の前記カチオンを含む培地で培養された、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、キレート剤および吸着剤のうちの少なくとも1つと共に培養され、
それにより、前記細菌へのマンガンイオンの利用可能性が低下している、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記薬剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジニルメチル)-1,2-エタンジアミン(TPEN)、およびカルプロテクチンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、Chelex 100カチオンキレート樹脂で前処理した培地で培養された、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、
-マンガンイオンを含まない培地、
-マンガンイオンが枯渇した培地、
-前記細菌の増殖を支援するのに十分な最小限のマンガンイオンを含む培地、のうちのいずれかで培養された、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaA、PsaB、PsaC、Psa
R、MntE、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌タンパク質のアンタゴニストを含む培地で培養された、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、psaB、psaC、psaR、mntE、mgtA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の発現を変更することができる調節配列のアンタゴニストを含む培地中で培養された、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記改変が、前記細菌の染色体DNAの変更、プラスミドによる前記細菌の形質転換、選択的圧力下での前記細菌の培養、前記細菌の遺伝子のノックダウン、および前記細菌のDNAへのトランスポゾンの導入のうちの少なくとも1つから生じる、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記死滅させた連鎖球菌細菌が、化学処理、熱処理、放射線、高静水圧、パルス電場、超短パルスレーザー、圧力下の超音波、および微生物不活化のうちの少なくとも1つによって死滅された、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
化学的不活化が、架橋剤、およびアルキル化剤のうちの少なくとも1つを使用する不活化を含む、請求項24に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
前記架橋剤が、ホルマリンである、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記アルキル化剤が、ベータプロピオラクトンである、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記放射線が、紫外線、光子、陽子、重イオン、および低エネルギー電子照射のうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
前記光子放射が、ガンマ線照射を含む、請求項28に記載のワクチン組成物。
【請求項30】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、DNAアルキル化修復タンパク質をコードする遺伝子、ヘモリシンをコードする遺伝子、ニューモリシンをコードする遺伝子、オートリシンをコードする遺伝子、およびDNAポリメラーゼIVをコードする遺伝子から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子中の欠陥をさらに含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項31】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、adcR、cibAB、hexA、hexB、ply、luxS、lytA、mutS、prtA、radC、recA、recF、recN、recO、ritR、uvrA、uvrB、uvrC、uvrD、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子中の欠陥をさらに含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項32】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PspA、PitA、PiuA、PiaA、AdcA、AdcAII、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE、PcpA、CbpA、RrgA、RrgB、RrgC、StkP、PrtAおよびそれらの相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項33】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、多糖類莢膜を産生することができない、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項34】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、単一の連鎖球菌種または血清型のものである、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項35】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、psaA欠失変異体ではないStreptococcus pneumoniaeを含むか、またはそれからなる、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項36】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、Streptococcus agalactiae、Streptococcus bovis、Streptococcus
canis、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus equi、Streptococcus equinus、Streptococcus equisimilis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus iniae、S.milleri、Streptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus salivarius、Streptococcus sanguinis、Streptococcus suis、およびStreptococcus uberisのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項37】
アジュバント、薬学的に許容される賦形剤、および薬学的に許容される担体のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項38】
所与の連鎖球菌種からの複数の血清型に対する対象における交差防御免疫応答を誘導するための方法であって、請求項1に記載のワクチン組成物を前記対象に投与することを含み、それにより前記交差防御免疫応答を誘導する、方法。
【請求項39】
前記交差防御免疫応答が、Toll様受容体(TLR)媒介性自然免疫応答、Toll様受容体2(TLR2)媒介性自然免疫応答、Toll様受容体9(TLR9)媒介性自然免疫応答のうちの少なくとも1つを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ワクチンが、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経口、経粘膜、および経皮投与のうちの少なくとも1つによって前記対象に投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ワクチン組成物が、連鎖球菌細菌の単一種または血清型を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記連鎖球菌細菌の単一種が、Streptococcus pneumoniaeである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ワクチン組成物の前記細菌が、化学処理、熱処理、放射線、高静水圧、パルス電場、超短パルスレーザー、圧力下の超音波、および微生物不活化のうちの少なくとも1つによって死滅される、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
対象における連鎖球菌細菌による感染症を予防するための方法であって、
(i)マンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する改変を含む弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、
(ii)細胞内マンガンイオン(Mn2+)のレベルを制限する様式で培養された弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、
(iii)(i)および(ii)のうちの少なくとも1つの免疫原性成分、のうちの少なくとも1つを含むワクチン組成物を、前記対象に投与することを含み、
(i)および(ii)の前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、
-肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、
-肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)の相同体のうちの1つから選択される野生型タンパク質を発現することができ、
それにより、前記対象における前記感染症を予防する、方法。
【請求項45】
前記方法が、複数の異なる連鎖球菌血清型による感染症を予防する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記方法が、前記対象においてToll様受容体(TLR)媒介性自然免疫応答を誘導する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記方法が、前記対象においてToll様受容体2(TLR2)媒介性自然免疫応答を誘導する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記方法が、前記対象においてToll様受容体9(TLR9)媒介性自然免疫応答を誘導する、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記ワクチンが、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経口、経粘膜、および経皮投与のうちの少なくとも1つによって前記対象に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記ワクチン組成物が、連鎖球菌細菌の単一種または血清型を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、前記連鎖球菌細菌の野生型の形態と比較して、同等または増加したレベルで前記野生型タンパク質を発現することができる、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記改変が、マンガンイオン(Mn2+)輸送における欠陥である、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記改変が、
連鎖球菌ATP結合カセットタンパク質、および連鎖球菌ABCトランスポーター膜貫通型パーミアーゼ-マンガン輸送タンパク質のうちの少なくとも1つから選択されるタンパク質の、欠失、減弱化、および発現低下のうちの少なくとも1つから選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記改変が、
psaB、psaC、およびそれらの相同体のうちの少なくとも1つから選択される連鎖球菌遺伝子の、欠失、減弱化、および発現低下のうちの1つから選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記改変が、psaR、mntE、mgtA、およびそれらの相同体のうちの少なくとも1つから選択される連鎖球菌遺伝子の発現を増強する、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
前記改変が、
psaB、psaC、mntE、mgtA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の発現を変更することができる調節配列の欠失、抑制および
増強のうちの1つから選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項57】
前記改変が、
sczA、czcD、copA、cupA、copYおよびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の、欠失および抑制のうちの1つから選択され、
それにより、前記細菌中のマンガン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する、請求項44に記載の方法。
【請求項58】
前記改変が、adcA、adcAII、adcC、adcB、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の過剰発現であり、
それにより、前記細菌中のマンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する、請求項44に記載の方法。
【請求項59】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌がイオノフォアと共に培養され、それにより、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちの少なくとも1つから選択されるカチオンの細胞取り込みが増加する、請求項44に記載の方法。
【請求項60】
前記イオノフォアが、ピリチオン、8-ヒドロキシキノリン、およびそれらの類似体のうちの少なくとも1つから選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、前記細菌上のマンガンイオン結合部位と競合するカチオンを含む培地で培養された、請求項44に記載の方法。
【請求項62】
前記カチオンが、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちの少なくとも1つを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記カチオンが、MgtAリボスイッチおよびその相同体から選択される連鎖球菌タンパク質と相互作用し、
それにより、前記細菌中のマンガン輸送遺伝子の調節を変更する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記カチオンが、MgtAリボスイッチおよびその相同体から選択される連鎖球菌タンパク質と相互作用し、
それにより、前記細菌中の前記カチオンの細胞取り込みが増加する、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaAタンパク質機能を阻害するのに十分なモル過剰の前記カチオンを含む培地で培養された、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、キレート剤、および吸着剤のうちの少なくとも1つと共に培養され、
それにより、前記細菌へのマンガンイオンの利用可能性が低下している、請求項44に記載の方法。
【請求項67】
前記薬剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジニルメチル)-1,2-エタンジアミン(TPEN)、およびカルプロテクチンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、Chelex 100カチオンキレート
樹脂で前処理した培地で培養された、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、
-マンガンイオンを含まない培地、
-マンガンイオンが枯渇した培地、
-前記細菌の増殖を支援するのに十分な最小限のマンガンイオンを含む培地、のうちのいずれかで培養された、請求項44に記載の方法。
【請求項70】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaA、PsaB、PsaC、PsaR、MntE、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌タンパク質のアンタゴニストを含む培地で培養された、請求項44に記載の方法。
【請求項71】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、psaB、psaC、mntE、mgtA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の発現を変更することができる調節配列のアンタゴニストを含む培地中で培養された、請求項44に記載の方法。
【請求項72】
前記改変が、前記細菌の染色体DNAの変更、プラスミドによる前記細菌の形質転換、選択的圧力下での前記細菌の培養、前記細菌の遺伝子のノックダウン、および前記細菌のDNAへのトランスポゾンの導入のうちの少なくとも1つから生じる、請求項44に記載の方法。
【請求項73】
前記死滅させた連鎖球菌細菌が、化学処理、熱処理、放射線、高静水圧、パルス電場、超短パルスレーザー、圧力下の超音波、および微生物不活化のうちの少なくとも1つによって死滅された、請求項44に記載の方法。
【請求項74】
前記化学的不活化が、架橋剤、およびアルキル化剤のうちの少なくとも1つを使用する不活化を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記架橋剤が、ホルマリンである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記アルキル化剤が、ベータプロピオラクトンである、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記放射線が、紫外線、光子、陽子、重イオン、および低エネルギー電子照射のうちの少なくとも1つを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記光子放射が、ガンマ線照射を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、DNAアルキル化修復タンパク質をコードする遺伝子、ヘモリシンをコードする遺伝子、ニューモリシンをコードする遺伝子、オートリシンをコードする遺伝子、およびDNAポリメラーゼIVをコードする遺伝子から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子中の欠陥をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項80】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、adcR、cibAB、hexA、hexB、ply、luxS、lytA、mutS、prtA、radC、recA、recF、recN、recO、ritR、uvrA、uvrB、uvrC、uvrD、rrgA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子中の欠陥をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項81】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PspA、PitA、PiuA、PiaA、AdcA、AdcAII、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE、PcpA、CbpA、RrgA、RrgB、RrgC、StkP、PrtAおよびそれらの相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、請求項44に記載の方法。
【請求項82】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、多糖類莢膜を産生することができない、請求項44に記載の方法。
【請求項83】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、単一の連鎖球菌種または血清型のものである、請求項44に記載の方法。
【請求項84】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、psaA欠失変異体ではないStreptococcus pneumoniaeを含むか、またはそれからなる、請求項44に記載の方法。
【請求項85】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、Streptococcus agalactiae、Streptococcus bovis、Streptococcus
canis、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus equi、Streptococcus equinus、Streptococcus equisimilis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus iniae、S.milleri、Streptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus salivarius、Streptococcus sanguinis、Streptococcus suis、およびStreptococcus uberisのうちの少なくとも1つを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項86】
アジュバント、薬学的に許容される賦形剤、および薬学的に許容される担体のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項87】
前記連鎖球菌細菌の単一種が、Streptococcus pneumoniaeである、請求項50に記載の方法。
【請求項88】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaR、およびその相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項89】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PcpA、PrtA、RrgA、RrgB、RrgCおよびそれらの相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、請求項88に記載のワクチン組成物。
【請求項90】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaR、およびその相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、請求項44に記載の方法。
【請求項91】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PcpA、PrtA、RrgA、RrgB、RrgCおよびそれらの相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記ワクチン組成物がアジュバントを含まない、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項93】
前記ワクチン組成物がアジュバントを含まない、請求項44に記載の方法。
【請求項94】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌が、全細菌である、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項95】
前記弱毒化または死滅させた連鎖球菌が、全細菌である、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2020年5月22日に出願された米国仮特許出願第US63/028,971号からの優先権を主張し、この内容は、その全体が相互参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、全般的には、ワクチンの分野に関する。より具体的には、本発明は、連鎖球菌ワクチン製剤、および連鎖球菌感染症に対する免疫の生成におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
連鎖球菌は、連鎖球菌科に属する球菌の一属である。連鎖球菌には多数の様々な種が存在し、その一部のものはヒトおよび動物に疾患を引き起こす。その他は、様々な発酵製品の製造において重要である。
【0004】
個々の連鎖球菌種は、その溶血特性(α溶血性およびβ溶血性)に基づいて2つの主要なグループに分けられる。α溶血性連鎖球菌には、Streptococcus pneumoniaeおよびViridans streptococciが含まれる。β溶血性のグループは、A群連鎖球菌およびB群連鎖球菌からなる。B群連鎖球菌は通常、消化器系および女性の膣に生息し、有害作用はみられない。新生児には重篤な感染症を引き起こすことがあるが、ほとんどの人はB群連鎖球菌に対する自然免疫を急速に発達させる。A群連鎖球菌は通常、咽喉部および皮膚表面に生息し、成人および小児の感染症の一般的な原因の1つである。A群感染症は通常、健康に重大な脅威をもたらさないもの(例えば、咽喉感染症、蜂巣炎、膿痂疹、副鼻腔炎、中耳感染症)であるが、A群連鎖球菌が身体の組織および器官のさらに深部まで侵入することによって、より重篤な侵襲性感染(例えば、肺炎、敗血症、髄膜炎、壊死性筋膜炎)を確立し得ることがあるほか、急性連鎖球菌感染後糸球体腎炎および急性リウマチ熱を含めた重篤な続発症を誘導し得る。さらに、腸には連鎖球菌性(糞便性)連鎖球菌種が多数みられ、心内膜炎および尿路感染症を引き起こし得る。
【0005】
A群連鎖球菌(GAS、Streptococcus pyogenes)は、ヒトに様々な急性および慢性の臨床的問題を引き起こす。GAS感染症およびその悪影響は、世界中の感染性疾患による死因のトップ10のうちの1つであり、すべての年齢層で、一般的には若年成人で、年間50万人が死亡していると推定されている。しかしながら、GASはグローバルヘルスプログラムでほとんど注目されておらず、予防のための既存のツールは不十分である。抗原標的の高い遺伝的多様性、安全性の懸念、および概念実証を確立するための臨床エンドポイントに関する合意の欠如は、これまでのGASワクチン開発の進展に重大な障害をもたらしてきた。
【0006】
Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌(pneumococcus))は、ヒトおよび動物の集団の罹病率および死亡率の相当数を占める重要なヒト病原菌である。これは、肺炎、髄膜炎、副鼻腔炎および中耳炎を含めた重篤な病態を引き起こす。世界で毎年160万人が侵襲性肺炎球菌性疾患で死亡すると推定されており、そのうち約100万人が小児である。S.pneumoniaeには、莢膜の化学構造および免疫原性に基づいて区別される血清型が多数(90超)存在する。S.pneumoniaeには非侵襲性肺炎球菌性疾患の原因となる無莢膜型の菌株がほとんど事実上存在しないことから、莢膜多糖体がS.pneumoniaeの根本的な病原性因子であると考
えられている。したがって、現在使用されている肺炎球菌ワクチンには、ワクチン抗原として莢膜多糖体が使用されている。
【0007】
現在の肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、選択された血清型のセット(例えば、PCV7(血清型7)、PCV10(血清型10)およびPCV13(血清型13))のみをカバーするが、防御は、含まれる血清型に大きく限定される。多くの集団では、血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23Fを標的とするPCV7ワクチンの導入により、肺炎球菌性疾患の病苦が大幅に軽減されている。しかしながら、標的とするワクチン血清型が引き起こす疾患に対しては効果がみられるものの、血清型置換によってワクチンの正味の効果が低下することが多い。したがって、肺炎球菌コンジュゲートワクチンの実施による非ワクチン血清型の出現が問題となっている。
【0008】
Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌、GBS)は、世界中の免疫不全状態の新生児および高齢者における重度の侵襲性疾患の主要な原因である。GBS感染症の診断および分娩時抗生物質予防投与(IAP)の最近の進歩にもかかわらず、それは重篤な感染症を引き起こし、依然として、新生児の罹患率および死亡率の最も一般的な原因のうちの1つである。最近の研究では、妊婦および高齢者におけるGBS感染の増加も報告されている。IAPは有効であるが、抗菌薬耐性の増加および出生前スクリーニング陰性後の遅発性GBS感染症など、いくつかの制限を有する。現在のところ、この病原体に利用できるワクチンはない。
【0009】
C群およびG群連鎖球菌は、Streptococcus pyogenesと同様の範囲の病気に関連している。小児では、それらは咽頭炎などの気道感染症に最も一般的に関与している。C群およびG群連鎖球菌によって引き起こされる咽頭炎の実際の発生率は、無症候性のコロニー形成が発生するため、決定するのが困難である。それにもかかわらず、咽頭炎の真の原因としてC群およびG群連鎖球菌を示唆する説得力のある証拠がある。C群およびG群連鎖球菌も、皮膚および軟部組織の感染症を引き起こす。それらは、皮膚にコロニーを形成し、皮膚損傷後に皮下組織へのアクセスを獲得することが示されている。C群およびG群連鎖球菌に関連する他の疾患には、リウマチ性心疾患、および新生児敗血症が含まれる。
【0010】
例えば、咽頭炎、肺炎、創傷ならびに皮膚感染症、敗血症、リウマチ熱、糸球体腎炎および心内膜炎を含む様々な病態の原因となる病原性連鎖球菌感染症の継続的な流行が存在する。ほとんどの菌株はペニシリンに感受性があるが、マクロライド耐性菌株が最近出現している。
【0011】
したがって、連鎖球菌感染症を予防することができる改良された連鎖球菌ワクチンの必要性が存在する。より広範囲の血清型に対して免疫を誘導することができる連鎖球菌ワクチンもまた望ましい。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、既存の連鎖球菌ワクチンの少なくとも1つの欠点を軽減または緩和する改善された連鎖球菌ワクチンに関する。
【0013】
本発明者らは、細菌の細胞内マンガンレベルが制限されると、不活化連鎖球菌によって誘導される免疫が予想外に増強されることを予想外に特定した。したがって、本発明によれば、連鎖球菌ワクチン調製物の有効性は、この一般原理の適用によって改善することができる。連鎖球菌株における細胞内マンガンの制限は、任意の数の好適な手段によって達成することができ、その非限定的な例が本明細書に記載されている。免疫原性ワクチン組成物および組成物を利用して連鎖球菌感染症に対してワクチン接種するための方法が提供
される。
【0014】
本発明は、少なくとも以下の実施形態に関する。
実施形態1.ワクチン組成物であって、(i)マンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する改変を含む弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、(ii)細胞内マンガンイオン(Mn2+)のレベルを制限する様式で培養された弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、(iii)(i)および(ii)のうちの少なくとも1つの免疫原性成分、のうちの少なくとも1つを含み、(i)および(ii)の弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)の相同体のうちの1つから選択される野生型タンパク質を発現することができる、ワクチン組成物。
【0015】
実施形態2.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、連鎖球菌細菌の野生型の形態と比較して、同等または増加したレベルで野生型タンパク質を発現することができる、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0016】
実施形態3.改変が、マンガンイオン(Mn2+)輸送における欠陥である、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0017】
実施形態4.改変が、連鎖球菌ATP結合カセットタンパク質、および連鎖球菌ABCトランスポーター膜貫通型パーミアーゼ-マンガン輸送タンパク質のうちの少なくとも1つから選択されるタンパク質の、欠失、減弱化、および発現低下のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態3に記載のワクチン組成物。
【0018】
実施形態5.改変が、psaB、psaC、およびそれらの相同体のうちの少なくとも1つから選択される連鎖球菌遺伝子の、欠失、減弱化および発現低下のうちの1つから選択される、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0019】
実施形態6.改変が、欠失、psaR、mntE、mgtA、およびそれらの相同体のうちの少なくとも1つから選択される連鎖球菌遺伝子の発現を増強する、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0020】
実施形態7.改変が、psaB、psaC、mntE、mgtA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の発現を変更することができる調節配列の、欠失、抑制および増強のうちの1つから選択される、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0021】
実施形態8.改変が、sczA、czcD、copA、cupA、copYおよびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の欠失、減弱化および抑制のうちの1つから選択され、それにより、細菌中のマンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0022】
実施形態9.改変が、adcA、adcAII、adcC、adcB、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の過剰発現であり、それにより、細菌中のマンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0023】
実施形態10.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌がイオノフォアと共に培養され、それにより、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちの少なくとも1つから選択されるカチオンの細胞取り込みが増加している、実施形態1
に記載のワクチン組成物。
【0024】
実施形態11.イオノフォアが、ピリチオン、8-ヒドロキシキノリン、およびそれらの類似体のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態10に記載のワクチン組成物。
【0025】
実施形態12.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、細菌上のマンガンイオン結合部位と競合するカチオンを含む培地で培養された、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0026】
実施形態13.カチオンが、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちの少なくとも1つを含む、実施形態12に記載のワクチン組成物。
【0027】
実施形態14.カチオンが、MgtAリボスイッチおよびその相同体から選択される連鎖球菌タンパク質と相互作用し、それにより、細菌中のマンガン輸送遺伝子の調節を変更する、実施形態12に記載のワクチン組成物。
【0028】
実施形態15.カチオンが、MgtAリボスイッチおよびその相同体から選択される連鎖球菌タンパク質と相互作用し、それにより、細菌中のカチオンの細胞取り込みが増加する、実施形態12に記載のワクチン組成物。
【0029】
実施形態16.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaAタンパク質機能を阻害するのに十分なモル過剰のカチオンを含む培地で培養された、実施形態12に記載のワクチン組成物。
【0030】
実施形態17.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、キレート剤、および吸着剤のうちの少なくとも1つと共に培養され、それにより、細菌へのマンガンイオンの利用可能性が低下している、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0031】
実施形態18.薬剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジニルメチル)-1,2-エタンジアミン(TPEN)、およびカルプロテクチンのうちの少なくとも1つから選択される、実施形態17に記載のワクチン組成物。
【0032】
実施形態19.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、Chelex 100カチオンキレート樹脂で前処理した培地で培養された、実施形態17に記載のワクチン組成物。
【0033】
実施形態20.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、マンガンイオンを含まない培地、マンガンイオンが枯渇した培地、細菌の増殖を支援するのに十分な最小限のマンガンイオンを含む培地、のうちのいずれかで培養された、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0034】
実施形態21.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaA、PsaB、PsaC、PsaR、MntE、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌タンパク質のアンタゴニストを含む培地で培養された、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0035】
実施形態22.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、psaB、psaC、psaR、mntE、mgtA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の発現を変更することができる調節配列のアンタゴニストを含む培地中で培養さ
れた、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0036】
実施形態23.改変が、細菌の染色体DNAの変更、プラスミドによる細菌の形質転換、選択的圧力下での細菌の培養、細菌の遺伝子のノックダウン、および細菌のDNAへのトランスポゾンの導入のうちの少なくとも1つから生じる、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0037】
実施形態24.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、化学処理、熱処理、放射線、高静水圧、パルス電場、超短パルスレーザー、圧力下の超音波、および微生物不活化のうちの少なくとも1つによって死滅された、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0038】
実施形態25.化学的不活化が、架橋剤、およびアルキル化剤のうちの少なくとも1つを使用する不活化を含む、実施形態24に記載のワクチン組成物。
【0039】
実施形態26.架橋剤が、ホルマリンである、実施形態25に記載のワクチン組成物。
【0040】
実施形態27.アルキル化剤が、ベータプロピオラクトンである、実施形態25に記載のワクチン組成物。
【0041】
実施形態28.放射線が、紫外線、光子、陽子、重イオン、および低エネルギー電子照射のうちの少なくとも1つを含む、実施形態24に記載のワクチン組成物。
【0042】
実施形態29.光子放射が、ガンマ線照射を含む、実施形態28に記載のワクチン組成物。
【0043】
実施形態30.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、DNAアルキル化修復タンパク質をコードする遺伝子、ヘモリシンをコードする遺伝子、ニューモリシンをコードする遺伝子、オートリシンをコードする遺伝子、およびDNAポリメラーゼIVをコードする遺伝子から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子中の欠陥をさらに含む、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0044】
実施形態31.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、adcR、cibAB、hexA、hexB、ply、luxS、lytA、mutS、prtA、radC、recA、recF、recN、recO、ritR、uvrA、uvrB、uvrC、uvrD、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子中の欠陥をさらに含む、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0045】
実施形態32.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PspA、PitA、PiuA、PiaA、AdcA、AdcAII、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE、PcpA、CbpA、RrgA、RrgB、RrgC、StkP、PrtAおよびそれらの相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0046】
実施形態33.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、多糖類莢膜を産生することができない、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0047】
実施形態34.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、単一の連鎖球菌種または血清型のものである、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0048】
実施形態35.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、psaA欠失変異体ではない
Streptococcus pneumoniaeを含むか、またはそれからなる、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0049】
実施形態36.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、Streptococcus
agalactiae、Streptococcus bovis、Streptococcus canis、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus equi、Streptococcus equinus、Streptococcus equisimilis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus iniae、S.milleri、Streptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus salivarius、Streptococcus sanguinis、Streptococcus suis、およびStreptococcus uberisのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0050】
実施形態37.アジュバント、薬学的に許容される賦形剤、および薬学的に許容される担体のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0051】
実施形態38.所与の連鎖球菌種からの複数の血清型に対する対象における交差防御免疫応答を誘導するための方法であって、実施形態1に記載のワクチン組成物を対象に投与することを含み、それにより交差防御免疫応答を誘導する、方法。
【0052】
実施形態39.交差防御免疫応答が、Toll様受容体(TLR)媒介性自然免疫応答、Toll様受容体2(TLR2)媒介性自然免疫応答、Toll様受容体9(TLR9)媒介性自然免疫応答のうちの少なくとも1つを含む、実施形態38に記載の方法。
【0053】
実施形態40.ワクチンが、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経口、経粘膜、および経皮投与のうちの少なくとも1つによって対象に投与される、実施形態38に記載の方法。
【0054】
実施形態41.ワクチン組成物が、連鎖球菌細菌の単一種または血清型を含む、実施形態38に記載の方法。
【0055】
実施形態42.連鎖球菌細菌の単一種が、Streptococcus pneumoniaeである、実施形態41に記載の方法。
【0056】
実施形態43.ワクチン組成物の細菌が、化学処理、熱処理、放射線、高静水圧、パルス電場、超短パルスレーザー、圧力下の超音波、および微生物不活化のうちの少なくとも1つによって死滅される、実施形態38に記載の方法。
【0057】
実施形態44.対象における連鎖球菌細菌による感染症を予防するための方法であって、(i)マンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する改変を含む弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、(ii)細胞内マンガンイオン(Mn2+)のレベルを制限する様式で培養された弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌、(iii)(i)および(ii)のうちの少なくとも1つの免疫原性成分、のうちの少なくとも1つを含むワクチン組成物を、対象に投与することを含み、(i)および(ii)の弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)の相同体のうちの1つから選択される野生型タンパク質を発現することができ、それにより、対象における感染症を予防する、方法。
【0058】
実施形態45.この方法が、複数の異なる連鎖球菌血清型による感染症を予防する、実施形態44に記載の方法。
【0059】
実施形態46.この方法が、対象においてToll様受容体(TLR)媒介性自然免疫応答を誘導する、実施形態44に記載の方法。
【0060】
実施形態47.この方法が、対象においてToll様受容体2(TLR2)媒介性自然免疫応答を誘導する、実施形態44に記載の方法。
【0061】
実施形態48.この方法が、対象においてToll様受容体9(TLR9)媒介性自然免疫応答を誘導する、実施形態44に記載の方法。
【0062】
実施形態49.ワクチンが、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経口、経粘膜、および経皮投与のうちの少なくとも1つによって対象に投与される、実施形態44に記載の方法。
【0063】
実施形態50.ワクチン組成物が、連鎖球菌細菌の単一種または血清型を含む、実施形態44に記載の方法。
【0064】
実施形態51.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、連鎖球菌細菌の野生型の形態と比較して、同等または増加したレベルで野生型タンパク質を発現することができる、実施形態44に記載の方法。
【0065】
実施形態52.改変が、マンガンイオン(Mn2+)輸送における欠陥である、実施形態44に記載の方法。
【0066】
実施形態53.改変が、連鎖球菌ATP結合カセットタンパク質、および連鎖球菌ABCトランスポーター膜貫通型パーミアーゼ-マンガン輸送タンパク質のうちの少なくとも1つから選択されるタンパク質の、欠失、減弱化、および発現低下のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態52に記載の方法。
【0067】
実施形態54.改変が、psaB、psaC、およびそれらの相同体のうちの少なくとも1つから選択される連鎖球菌遺伝子の、欠失、減弱化および発現低下のうちの1つから選択される、実施形態44に記載の方法。
【0068】
実施形態55.改変が、psaR、mntE、mgtA、およびそれらの相同体のうちの少なくとも1つから選択される連鎖球菌遺伝子の発現を増強する、実施形態44に記載の方法。
【0069】
実施形態56.改変が、psaB、psaC、mntE、mgtA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の発現を変更することができる調節配列の欠失、抑制および増強のうちの1つから選択される、実施形態44に記載の方法。
【0070】
実施形態57.改変が、sczA、czcD、copA、cupA、copYおよびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の欠失、減弱化および抑制のうちの1つから選択され、それにより、細菌中のマンガン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する、実施形態44に記載の方法。
【0071】
実施形態58.改変が、adcA、adcAII、adcC、adcB、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の過剰発現であり、それにより、細菌中のマンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する、実施形態44に記載
の方法。
【0072】
実施形態59.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌がイオノフォアと共に培養され、それにより、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちの少なくとも1つから選択されるカチオンの細胞取り込みが増加している、実施形態44に記載の方法。
【0073】
実施形態60.イオノフォアが、ピリチオン、8-ヒドロキシキノリン、およびそれらの類似体のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態59に記載の方法。
【0074】
実施形態61.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、細菌上のマンガンイオン結合部位と競合するカチオンを含む培地で培養された、実施形態44に記載の方法。
【0075】
実施形態62.カチオンが、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちの少なくとも1つを含む、実施形態61に記載の方法。
【0076】
実施形態63.カチオンが、MgtAリボスイッチおよびその相同体から選択される連鎖球菌タンパク質と相互作用し、それにより、細菌中のマンガン輸送遺伝子の調節を変更する、実施形態61に記載の方法。
【0077】
実施形態64.カチオンが、MgtAリボスイッチ、およびその相同体から選択される連鎖球菌タンパク質と相互作用し、それにより、細菌中のカチオンの細胞取り込みが増加する、実施形態61に記載の方法。
【0078】
実施形態65.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaAタンパク質機能を阻害するのに十分なモル過剰のカチオンを含む培地で培養された、実施形態61に記載の方法。
【0079】
実施形態66.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、キレート剤、および吸着剤のうちの少なくとも1つと共に培養され、それにより、細菌へのマンガンイオンの利用可能性が低下している、実施形態44に記載の方法。
【0080】
実施形態67.薬剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジニルメチル)-1,2-エタンジアミン(TPEN)、およびカルプロテクチンのうちの少なくとも1つから選択される、実施形態66に記載の方法。
【0081】
実施形態68.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、Chelex 100カチオンキレート樹脂で前処理した培地で培養された、実施形態66に記載の方法。
【0082】
実施形態69.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、マンガンイオンを含まない培地、マンガンイオンが枯渇した培地、細菌の増殖を支援するのに十分な最小限のマンガンイオンを含む培地、のうちのいずれかで培養された、実施形態44に記載の方法。
【0083】
実施形態70.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaA、PsaB、PsaC、PsaR、MntE、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌タンパク質のアンタゴニストを含む培地で培養された、実施形態44に記載の方法。
【0084】
実施形態71.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、psaB、psaC、mnt
E、mgtA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子の発現を変更することができる調節配列のアンタゴニストを含む培地中で培養された、実施形態44に記載の方法。
【0085】
実施形態72.改変が、細菌の染色体DNAの変更、プラスミドによる細菌の形質転換、選択的圧力下での細菌の培養、細菌の遺伝子のノックダウン、および細菌のDNAへのトランスポゾンの導入のうちの少なくとも1つから生じる、実施形態44に記載の方法。
【0086】
実施形態73.死滅させた連鎖球菌細菌が、化学処理、熱処理、放射線、高静水圧、パルス電場、超短パルスレーザー、圧力下の超音波、および微生物不活化のうちの少なくとも1つによって死滅された、実施形態44に記載の方法。
【0087】
実施形態74.化学的不活化が、架橋剤、およびアルキル化剤のうちの少なくとも1つを使用する不活化を含む、実施形態73に記載の方法。
【0088】
実施形態75.架橋剤が、ホルマリンである、実施形態74に記載の方法。
【0089】
実施形態76.アルキル化剤が、ベータプロピオラクトンである、実施形態74に記載の方法。
【0090】
実施形態77.放射線が、紫外線、光子、陽子、重イオン、および低エネルギー電子照射のうちの少なくとも1つを含む、実施形態73に記載の方法。
【0091】
実施形態78.光子放射が、ガンマ線照射を含む、実施形態77に記載の方法。
【0092】
実施形態79.細菌が、DNAアルキル化修復タンパク質をコードする遺伝子、ヘモリシンをコードする遺伝子、ニューモリシンをコードする遺伝子、ニューモリシンをコードする遺伝子、オートリシンをコードする遺伝子、およびDNAポリメラーゼIVをコードする遺伝子から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子中の欠陥をさらに含む、実施形態44に記載の方法。
【0093】
実施形態80.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、adcR、cibAB、hexA、hexB、ply、luxS、lytA、mutS、prtA、radC、recA、recF、recN、recO、ritR、uvrA、uvrB、uvrC、uvrD、rrgA、およびそれらの相同体から選択される少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子中の欠陥をさらに含む、実施形態44に記載の方法。
【0094】
実施形態81.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PspA、PitA、PiuA、PiaA、AdcA、AdcAII、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE、PcpA、CbpA、RrgA、RrgB、RrgC、StkP、PrtAおよびそれらの相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、実施形態44に記載の方法。
【0095】
実施形態82.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、多糖類莢膜を産生することができない、実施形態44に記載の方法。
【0096】
実施形態83.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、単一の連鎖球菌種または血清型のものである、実施形態44に記載の方法。
【0097】
実施形態84.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、psaA欠失変異体ではない
Streptococcus pneumoniaeを含むか、またはそれからなる、実施形態44に記載の方法。
【0098】
実施形態85.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、Streptococcus
agalactiae、Streptococcus bovis、Streptococcus canis、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus equi、Streptococcus equinus、Streptococcus equisimilis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus iniae、S.milleri、Streptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus salivarius、Streptococcus sanguinis、Streptococcus suis、およびStreptococcus uberisのうちの少なくとも1つを含む、実施形態44に記載の方法。
【0099】
実施形態86.アジュバント、薬学的に許容される賦形剤、および薬学的に許容される担体のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態44に記載の方法。
【0100】
実施形態87.連鎖球菌細菌の単一種が、Streptococcus pneumoniaeである、実施形態50に記載の方法。
【0101】
実施形態88.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaR、およびその相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0102】
実施形態89.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PcpA、PrtA、RrgA、RrgB、RrgCおよびそれらの相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、実施形態88に記載のワクチン組成物。
【0103】
実施形態90.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PsaR、およびその相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、実施形態44に記載の方法。
【0104】
実施形態91.弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌が、PcpA、PrtA、RrgA、RrgB、RrgCおよびそれらの相同体のうちの少なくとも1つを過剰発現するようにさらに改変される、実施形態90に記載の方法。
【0105】
実施形態92.ワクチン組成物がアジュバントを含まない、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0106】
実施形態93.ワクチン組成物がアジュバントを含まない、実施形態44に記載の方法。
【0107】
実施形態94.弱毒化または死滅させた連鎖球菌が、全細菌である、実施形態1に記載のワクチン組成物。
【0108】
実施形態95.弱毒化または死滅させた連鎖球菌が、全細菌である、実施形態44に記載の方法。
【0109】
これより、添付の図面を参照しながら、単なる非限定的な例として本発明の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1】S.pneumoniae GPN-001菌株においてpsaC遺伝子の欠失を有する菌株を生成するために採用された手順を示すフローチャートである。
図2】示された処置で、またはマンガン取り込み経路の構成成分をコードする遺伝子に変異を有する菌株で増殖した連鎖球菌細菌のマンガン含有量を示している。これらのデータは、溶質結合タンパク質(psaA;GPN-002菌株)またはパーミアーゼタンパク質(psaC;GPN-001菌株ΔpsaC)の欠失変異、または亜鉛、EDTAの存在下または培地からマンガンを省かれたGPN-001菌株の増殖が、標準条件下で増殖したGPN-001菌株と比較して、細胞マンガンレベルの低下をもたらすことを示している。データは、n=3回の独立した増殖実験からの平均マンガン濃度(細胞物質1グラムあたりのマイクログラム;μg/g)±SEMとして表される。
図3】定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応による内部対照gyrA遺伝子と比較したprtA遺伝子の発現を示している。このデータは、溶質結合タンパク質(psaA;GPN-002菌株)またはパーミアーゼタンパク質(psaC;GPN-001菌株ΔpsaC)の欠失変異、または亜鉛、EDTAの存在下または増殖培地からマンガンを省かれたGPN-001菌株の増殖が、標準条件下で増殖したGPN-001菌株と比べて、prtA転写の増加をもたらすことを示している。データは、相対的なgyrAの平均発現である。
図4】示された処置で、またはマンガン取り込み経路の構成成分をコードする遺伝子に変異を有する菌株で増殖した連鎖球菌細菌によるToll様受容体2(TLR2)の刺激を示している。これらのデータは、溶質結合タンパク質(psaA;GPN-002菌株)またはパーミアーゼタンパク質(psaC;GPN-001菌株ΔpsaC)の欠失変異、または亜鉛、EDTAの存在下または培地からマンガンを省かれたGPN-001菌株の増殖が、標準条件下で増殖したGPN-001菌株と比較して、より高いTLR2刺激を付与することを明らかにしている。データは、2回行われた同じ実験からのGPN-001と比較したTLR2刺激の平均パーセント差である。
図5】本発明の実施形態による連鎖球菌細菌によるToll様受容体の刺激を示すグラフを提供している。これらのデータは、溶質結合タンパク質(psaA;GPN-002菌株)に欠失変異を有する連鎖球菌細菌が、生弱毒化または死滅であるかに関わらず、無傷のpsaA遺伝子を含むGPN-001菌株と比較してより高いTLR2活性化を刺激することを明らかにしている。
図6】本発明の実施形態による、連鎖球菌細菌でワクチン接種されたマウスからの血清を使用する、異なる肺炎球菌の溶解物に対する抗体反応性を示すウエスタンブロットを示す。
図7】本発明の実施形態による連鎖球菌細菌でワクチン接種されたマウスにおける防御免疫を示すグラフを提供する。データポイントは、各マウスの生存期間を示し(群あたりn=10~11)、横棒は各群の生存期間の中央値を示す。生存期間の差異は、マン・ホイットニーのU検定によって分析された(*=P<0.05)。
図8】本発明の実施形態による連鎖球菌細菌でワクチン接種されたウサギにおけるIgG抗体力価を測定するELISAアッセイの結果を示すグラフを提供する。データは、個々のウサギについての予備免疫および3回目の免疫後のIgG力価として、ならびに各ワクチン群内の平均IgG力価(±SD)として表される。データは、2つの独立した免疫化実験から集められる。
図9】本発明の実施形態による連鎖球菌細菌が、複数の莢膜型肺炎球菌血清型に対して高い結合親和性を有する抗体を誘導することを実証するフローサイトメトリーヒストグラムプロットを提供する。
図10】生きた連鎖球菌細菌(GPN-002)、またはガンマ線照射、ホルマリン、または熱処理によって不活化された細菌(GPN-002)によるToll様受容体2(TLR2)の刺激を示している。
【発明を実施するための形態】
【0111】
定義
本願で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の意味を表す場合を除き、複数の指示対象を含む。例えば、「タンパク質」という語句は複数のタンパク質も含む。
【0112】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は「含む(including)」を意味する。「comprising」という語の変化形、例えば「comprise」および「comprises」などは、それに対応する変化した意味を有する。したがって、例えば、連鎖球菌株を「含む(comprising)」組成物は、ガンマ線照射連鎖球菌株Aのみからなるものであっても、または追加の成分(例えば、連鎖球菌株B)を含むものであってもよい。
【0113】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2以上を意味する。ある特定の具体的態様または実施形態では、複数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51またはそれ以上、およびそこに導かれる任意の整数ならびにそこに導かれる任意の範囲を意味し得る。
【0114】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語の意味には、無毒性であるが、本発明における使用において所望の治療効果を得るのに十分な量の薬剤または組成物が含まれる。必要とされる正確な量は、治療する種、対象の年齢および全般的健康状態、治療する病態の重症度、投与する具体的な薬剤、投与様式などの諸因子に応じて対象毎に異なるものとなる。したがって、全実施形態に適用される正確な「有効量」を明記することは不可能である。しかしながら、所与の場合に対して、当業者が慣例的な実験のみを使用してしかるべき「有効量」を決定し得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「光子放射」という用語は、ガンマ線放射およびX線放射の両方を包含することが理解されよう。したがって、「光子線照射(された)」材料は、ガンマ線放射に曝露され、それにより「ガンマ線照射(された)」状態になった材料、X線放射に曝露され、それにより「X線照射(された)」状態になった材料またはその両方であり得る。単なる非限定的な例として、ある材料を光子線照射された状態にするため、材料を少なくとも0.01MeV、少なくとも0.1MeV、少なくとも0.5MeV、0.01MeV~0.5MeVの間、0.01MeV~1MeVの間、0.01MeV~10MeVの間、0.5MeV~20MeVの間、0.5MeV~15MeVの間、0.5MeV~10MeVの間、0.5MeV~5MeVの間、0.5MeV~2MeVの間または1MeV~2MeVの間(例えば1.25MeV)のエネルギーの光子放射に供し得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、細菌に関連する「弱毒化」という用語は、その細菌が、投与対象の宿主に免疫応答を誘導するのに十分な期間の間、その宿主で非病原性感染のみを確立することが可能であることを意味することが理解されよう。しかしながら、その細菌は、長期感染を確立することも、またはその弱毒化された細菌を投与する非易感染性宿主に有害な病原性感染を確立することもできない。
【0117】
本明細書で使用される場合、免疫または免疫応答に関連する「誘導する」、「誘導」、「増強する」および「増強」という用語は、存在しないか測定可能であるかを問わない既存のレベルを上回る免疫または免疫応答の増加を指す。
【0118】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ウシ、ウマ、ヒツジ、霊長類、鳥類およびげっ歯類の種を含めた、経済的、社会的または研究的に重要な任意の動物を含む。したがって、「対象」は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、またはヒツジ)などであり得る。この用語の範囲にはほかにも、実験動物(例えば、げっ歯類、ウサギなど)、鳥類(例えば、家禽)、魚類および甲殻類も含まれる。
【0119】
本明細書で使用される場合、所与の感染症および/または感染症から生じる疾患もしくは病態に関連する「予防する」、「予防」および「予防すること」という用語は、対象が、感染症、疾患または病態の原因となる病原性生物に曝露されても、その感染症および/または疾患もしくは病態を発現する傾向が小さいことを意味することが理解されよう。感染症および/または疾患もしくは病態を発現する傾向が小さいことは、傾向の減少および傾向の欠如の両方を包含することが理解されよう。
【0120】
本明細書で使用される場合、所与の感染症および/または感染症から生じる疾患もしくは病態に関連する「治療する」および「治療すること」という用語は、対象に感染している病原性生物の数を減少させることならびに/あるいは感染症の任意の症状および/または感染症から生じる疾患もしくは病態の症状を軽減することを包含することが理解されよう。
【0121】
本明細書で使用される場合、参照タンパク質に関連して使用される場合の「相同体」、「相同」および「その相同体」という用語は、参照タンパク質と同じ生物学的機能を実行する他のタンパク質を含むと理解されよう。参照タンパク質が所与の細菌によって作製される場合、他のタンパク質は、例えば、別の関連する細菌の血清型、種、属または科の一員によって作製され得る。他のタンパク質は、例えば、タンパク質の全長にわたって少なくとも約60%の同一性、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の同一性など最適に整列される場合、参照タンパク質との配列同一性の特定のレベルを共有することができる。
【0122】
本明細書で使用される場合、参照核酸配列に関連して使用される場合の「相同体」、「相同」および「その相同体」という用語は、参照核酸配列によってコードされるタンパク質と同じ生物学的機能を実行するタンパク質をコードする他の核酸配列を含むと理解されよう。遺伝子の相同体には、オルソログ(すなわち、種分化によって共通の祖先遺伝子から進化し、タンパク質をコードする異なる種で発現される遺伝子は同じ機能を保持する)は含まれるが、パラログ(すなわち、重複によって関連するが、異なる機能を有するタンパク質をコードするように進化した遺伝子)は含まれない。遺伝子の相同体には、天然に存在する対立遺伝子および人工的に作り出されたバリアントが含まれる。相同体は、例えば、細菌相同体、フィルミクテス(firmicute)相同体、バチルス(bacilli)相同体、ラクトバチルス(lactobacillales)相同体、連鎖球菌科(Streptococcaceae)相同体、および連鎖球菌相同体のうちのいずれか1つ以上であり得る。
【0123】
本明細書で使用される場合、所与の核酸、タンパク質または微生物(例えば、細菌)の「野生型」形態は、核酸、タンパク質または微生物の天然に存在する形態、およびそれらが可能である生物学的機能を包含すると理解されよう。
【0124】
本明細書で記載される数値に関して「約」という用語を使用する場合、その記載される数値およびその記載される値の±10%以内の数値がこれに含まれることが理解されよう。
【0125】
ある範囲の数値に言及する際に「~の間」という用語を使用する場合、範囲の各終点の数値がこれに包含されることが理解されよう。例えば、長さ10残基~20残基の間のポリペプチドには、長さ10残基のポリペプチドおよび長さ20残基のポリペプチドが含まれる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「肺炎球菌表面アドヘシン」、「肺炎球菌表面抗原」、および「Psa」という用語は互換的に使用され、同じ実体への言及であると理解されよう。したがって、1つの実体の相同体は、他の実体の相同体にもなる。同様に、「肺炎球菌表面アドヘシンA」、「肺炎球菌表面抗原A」、および「PsaA」という用語も互換的に使用され、同じ実体への言及であると理解されよう。したがって、1つの実体の相同体は、他の実体の相同体にもなる。
【0127】
本明細書の先行技術に関する資料の任意の記載または本明細書でその資料から導かれるかその資料に基づく意見は、その資料またはそこから導かれる意見が関連技術分野の一般的な知識の一部であることを認めるものではない。説明を目的として本明細書で言及される資料はいずれも、特に明記されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
以下の詳細な説明は、当業者が本発明を実施することが可能な程度に詳細に本発明の例示的実施形態を伝えるものである。記載される様々な実施形態の特徴も制約も、必ずしも本発明の他の実施形態または本発明全体を限定するものではない。したがって、以下の詳細な説明は、請求項によって定められる本発明の範囲を限定するものではない。
【0129】
連鎖球菌感染症は世界中で流行しており、一般的な連鎖球菌性咽頭炎のような軽度の感染症から、毒素性ショック症候群(TSS)または髄膜炎などの生命を脅かす状態まで幅広い疾患を引き起こす可能性がある。連鎖球菌を治療せずに放置すると、リウマチ性心疾患などの慢性自己免疫疾患を引き起こし、心筋に永続的な損傷を与える場合がある。抗生物質だけではこれらの感染症を制御することができなかったため、効果的なワクチンの開発が最重要である。
【0130】
それでも、連鎖球菌感染症を予防するためのワクチンの開発は、自己免疫反応に関する懸念のために問題となる場合があった。型特異的抗体反応を誘導するのに十分な用量のMタンパク質が投与された場合、局所的および全身的反応が頻繁に起こった。免疫化への別のアプローチ、すなわちリポタイコ酸(連鎖球菌の付着部分)に向けられた抗体の刺激は、タンパク質分子と複合体を形成しない限り、この成分の免疫原性が低いことによって制限される。莢膜多糖類によるワクチン接種は、他の点では健康な成人のS.pneumoniae感染症を予防するのにある程度の有効性を示しているが、年齢または他の慢性疾患のために感受性が高い個人におけるワクチン接種の利点は限られており、これらの対象は、抗体が適切に産生することにより応答する可能性が最も低い。さらに、標的ワクチンの血清型によって引き起こされる疾患に対するそれらの有効性にもかかわらず、血清型の置換はしばしばワクチン接種の正味の効果を低下させる。したがって、肺炎球菌コンジュゲートワクチンの実施による非ワクチン血清型の出現が問題となっている。
【0131】
本発明は、少なくともいくつかの既存の連鎖球菌ワクチンと比較して、増強されたレベルの免疫を誘導することができる連鎖球菌ワクチンを提供する。追加的または代替的に、本明細書に記載の連鎖球菌ワクチンは、当技術分野に存在する少なくともいくつかの連鎖
球菌ワクチンと比較して、より広いスペクトルの連鎖球菌株に対する免疫を誘導し得る。本発明はまた、記載された連鎖球菌ワクチンを製造するための方法、ならびにワクチンが投与される対象における連鎖球菌細菌による感染症の阻害および/または予防においてそれらを使用するための方法を企図する。
【0132】
連鎖球菌ワクチン調製物
-連鎖球菌株
本発明のワクチンは、弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌(例えば、完全に死滅させた連鎖球菌細菌)、および/またはその成分に基づく。その成分は、典型的には、例えば、通常は外部宿主環境に曝露される抗原性タンパク質または抗原性タンパク質の一部、細胞壁細菌抗原(多糖)などの免疫原性成分である。
【0133】
連鎖球菌細菌は、宿主生物に有害な感染を確立することができる病原性細菌であり得る。本発明のワクチンは、例えば、異なる連鎖球菌細菌種の組み合わせ、および/または同じ連鎖球菌種内の異なる連鎖球菌血清型の組み合わせを含む、異なる弱毒化および/または異なる死滅させた連鎖球菌細菌および/またはその成分の組み合わせを含み得る。
【0134】
連鎖球菌細菌は、例えば、十分に特徴が明らかにされている溶血特性またはガンマ溶血性連鎖球菌細菌の場合はその欠如に従って分類されるα溶血性、β溶血性またはガンマ溶血性の連鎖球菌であり得る。
【0135】
好適なα溶血性連鎖球菌細菌の非限定的な例としては、Streptococcus pneumoniaeおよびviridans streptococci(例えば、S.mutans、S.sanguinis、S.mitis、S.oralis、S.sobrinus、S.milleri)が挙げられる。本発明の範囲内に含まれるものとしてほかにも、上記の連鎖球菌種の個々の血清型がある。
【0136】
好適なβ溶血性連鎖球菌細菌の非限定的な例としては、細胞壁の細菌抗原(多糖)の炭水化物組成に基づくランスフィールド分類法で分類されるもの(A~H群、L群、N群およびR/S群)が挙げられる。例えば、β溶血性細菌としては、S.pyogenes(A群)、S.agalactiae(B群)、S.equisimilis(C群)、S.equi(C群)、S.zooepidemicus(C群)、S.dysgalactiae(C群)、Enterococcus faecalis(D群)、S.bovis(D群)、S.milleri(E群)、S.mutans(E群)、S.anginosus(F群)、S.canis(G群)、S.dysgalactiae(G群)、S.sanguis(H群)、S.dysgalactiae(L群)、Lactococcus lactis(N群)およびS.suis(R/S群)のうちのいずれか1つ以上のものが挙げられる。本発明の範囲内に含まれるものとしてほかにも、上記の連鎖球菌種の個々の血清型がある。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンは、Streptococcus pneumoniaeの1つ以上の血清型を含む。したがって、ワクチンは、S.pneumoniae血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7A、7B、7C、7F、8、9A、9L、9N、9V、10A、10B、10C、10F、11A、11B、11C、11D、11F、12A、12B、12F、13、14、15A、15B、15C、15F、16A、16F、17A、17F、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33F、34、35A、35B、35C、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46
、47A、47Fおよび/または48のうちのいずれか1つ以上のものを含み得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、ワクチンは、S.pneumoniae血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33Fのうちのいずれか1つ以上のものを含み得る。
【0139】
-連鎖球菌変異体:細胞内マンガンの減少
上述したように、本発明のワクチンは、弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌(例えば、完全に死滅させた連鎖球菌細菌)、および/またはその成分に基づくことができる。その成分は、典型的には、例えば、通常は外部宿主環境に曝露される抗原性タンパク質または抗原性タンパク質の一部、細胞壁細菌抗原(多糖)などの免疫原性成分である。
【0140】
連鎖球菌細菌は、マンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを直接的または間接的に低下させる1つ以上の特性を変更するように改変された変異型連鎖球菌細菌であり得る。変異型連鎖球菌細菌は、連鎖球菌細菌の野生型組換え型から、例えば、遺伝子操作、人為淘汰圧の適用などの任意の好適な手段によって生成することができる。
【0141】
細菌の遺伝子操作の技術は、当業者に周知である(例えば、Vennison「Laboratory Manual for Genetic Engineering」,PHI Learning Pvt.Ltd.,2010;Zyskind and Bernstein,“Recombinant DNA Laboratory Manual”,Elsevier,2014;Bose,“Genetic Manipulation of Staphylococci”in“Methods in Molecular Biology”,Springer Protocols,volume 1106,pages 101-111,2014;Hakenbeck and Chhatwal,“Molecular Biology of Streptococci”,Horizon Scientific Press,2007;Morona et al..,“The effect that mutations in the conserved capsular polysaccharide biosynthesis genes cpsA,cpsB and cpsD have
on virulence of Streptococcus pneumoniae”,J.Infect.Dis.189:1905-1913,2004;Morona et al..,“Mutational analysis of the carboxy-terminal[YGX] repeat domain of CpsD,an autophosphorylating tyrosine kinase required for capsule biosynthesis in Streptococcus pneumonia”,J.Bacteriol.185:3009-3019,2003;McAllister et al..,“Molecular analysis of the psa permease complex of Streptococcus pneumoniae”,Mol.Microbiol.53:889-901,2004;Mahdi et al..,“Identification of a novel pneumococcal vaccine antigen preferentially expressed during meningitis in mice”,J.Clin.Invest.122:2208-2220,2012)を参照されたい。
【0142】
企図される変異型連鎖球菌細菌の非限定的な例としては、例えば、マンガンイオンの流出を増強させることによって、および/またはマンガンイオンの流入を阻害することによって、マンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを制限する1つ以上の変異を有するも
のが挙げられる。細胞内マンガンを低下させるために連鎖球菌細菌に行うことができる任意の好適な改変または改変の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【0143】
非限定的な例として、連鎖球菌細菌は、連鎖球菌マンガントランスポータータンパク質もしくはその成分、細菌マンガントランスポーターもしくはその成分をコードする遺伝子、および/または細菌マンガントランスポーターもしくはその成分をコードする遺伝子の発現を正に調節する調節配列を欠失または欠陥を導入するように改変され得る。好適な改変の非限定的な例には、タンパク質、遺伝子、調節配列、および/またはその成分への変異の導入、例えば、置換、欠失、挿入、終止コドン、フレームシフト変異などのうちのいずれか1つ以上のものが挙げられる。
【0144】
いくつかの実施形態では、連鎖球菌マンガントランスポータータンパク質は、肺炎球菌表面抗原タンパク質(当技術分野では肺炎球菌表面アドヘシンタンパク質としても知られている)、またはその成分(例えば、Streptococcus pneumoniae PsaA、PsaB、PsaCのうちのいずれか1つ以上)である。他の実施形態では、連鎖球菌マンガントランスポータータンパク質は、肺炎球菌表面抗原タンパク質もしくはその成分の相同体、またはPsaA、PsaB、PsaCのうちのいずれか1つ以上の相同体である。
【0145】
当業者に知られているように、PsaAは、マンガン特異的ATP結合カセット(ABC)トランスポーターの溶質結合タンパク質であり、他のトランスポーター成分(PsaC)へのマンガンの送達に関与している。PsaBタンパク質はこのトランスポーターのATP結合タンパク質であり、マンガンの輸送を促進するATP加水分解に関与し、PsaCはマンガンの連鎖球菌細胞への移行に関与するトランスポーターパーミアーゼ(膜成分)である。したがって、PsaA、PsaBおよび/またはPsaCもしくはそれらの相同体のいずれか1つ以上の改変および/または欠失を使用して、マンガン流入を阻害し、それによりイオンの細胞内レベルを低下させることができる。
【0146】
他の実施形態では、連鎖球菌マンガントランスポータータンパク質は、肺炎球菌表面抗原タンパク質またはその成分ではない(例えば、Streptococcus pneumoniae PsaA、PsaB、PsaCのうちのいずれか1つ以上ではない)。他の実施形態では、連鎖球菌マンガントランスポータータンパク質は、肺炎球菌表面抗原タンパク質またはその成分の相同体ではなく、またはPsaA、PsaB、PsaCのうちのいずれか1つ以上の相同体ではない。
【0147】
非限定的な例として:Streptococcus pneumoniae PsaAの相同体には、Streptococcus sanguinis SsaB、Streptococcus gordonii Sgo、Streptococcus parasanguinis FimA、Streptococcus agalactiae
MtsA、Streptococcus iniae MtsA、Streptococcus pyogenes MtsA、Streptococcus uberis MtuA、およびStreptococcus mutans SloCが挙げられるが、これらに限定されず、Streptococcus pneumoniae PsaBの相同体には、Streptococcus sanguinis SsaA、Streptococcus gordonii ScaC、Streptococcus parasanguinis FimC、Streptococcus iniae MtsB、Streptococcus mutans SloA、Streptococcus pyogenes MtsB、Streptococcus uberis MtuB、Streptococcus agalactiae MtsBが挙げられるが、これらに限定されず、ならびにStreptococcus pneumoniae Ps
aCの相同体には、Streptococcus sanguinis SsaC、Streptococcus gordonii ScaB、Streptococcus parasanguinis FimB、Streptococcus iniae MtsC、Streptococcus mutans SloB、Streptococcus pyogenes MtsC、Streptococcus uberis MtuC、Streptococcus agalactiae MtsCが挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
本明細書で使用される場合、タンパク質の相同体は、同じ生物学的機能を実行し、相同遺伝子によって発現されるタンパク質の群内のタンパク質を指す。相同遺伝子は、第2の遺伝子によってコードされるタンパク質と同じまたは類似の生物学的機能を有するタンパク質をコードする遺伝子である。相同遺伝子および核酸配列は、同じ生物または異なる生物に存在し得る。相同遺伝子には、オルソログ(すなわち、種分化によって共通の祖先遺伝子から進化し、タンパク質をコードする異なる種で発現される遺伝子は同じ機能を保持する)は含まれるが、パラログ(すなわち、重複によって関連するが、異なる機能を有するタンパク質をコードするように進化した遺伝子)は含まれない。相同遺伝子には、天然に存在する対立遺伝子および人工的に作り出されたバリアントが含まれる。遺伝暗号の縮重は、遺伝子から生成されたポリペプチドのアミノ酸配列を変更することなく、遺伝子のタンパク質をコードする配列またはコード配列の少なくとも1つのヌクレオチドを異なる塩基で置換する可能性を提供する。最適に整列された場合、本発明の相同タンパク質およびヌクレオチド配列(例えば、遺伝子)は、参照遺伝子またはタンパク質の全長にわたって、例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、本発明の相同ヌクレオチド配列(例えば、遺伝子)または相同タンパク質配列は、参照配列の全長にわたって参照コンセンサスヌクレオチドまたはタンパク質配列と、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。本明細書に記載の相同な核酸配列、遺伝子、またはタンパク質は、例えば、他の細菌からの、他のフィルミクテス(firmicute)からの、他のバチルス(bacilli)からの、他のラクトバチルス(lactobacillales)からの、他の連鎖球菌科(Streptococcaceae)からの、および/もしくは他の連鎖球菌からの相同な核酸配列、遺伝子、またはタンパク質であり得る。
【0149】
参照配列の相同体である遺伝子/核酸配列およびタンパク質は、相同アミノ酸またはヌクレオチド配列の比較によって(例えば、手動で、またはFASTA、BLAST、およびSmith-Watermanなどの既知の相同性ベースの検索アルゴリズムを使用するコンピューターベースのツールを使用して)同定することができる。ローカル配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)を使用して、配列のデータベースを検索することにより類似配列を見つけることができ、要約期待値(E値)を使用して配列塩基の類似性を測定することができる。特定の生物に最適なE値でヒットした所与の配列は、必ずしもオルソログであるとは限らない(すなわち、同じ機能を有している/同じ機能を有するタンパク質をコードしている)場合や、唯一のオルソログである場合は、相互クエリを使用してオルソログ同定のために有意なE値を持つヒット配列をフィルタリングする。相互クエリは、クエリ配列の配列に類似している基本生物からの配列のデータベースに対する重要なヒットの検索を伴い得る。相互クエリの最良のヒットがクエリ配列自体、または種分化後に重複遺伝子によってコードされるタンパク質である場合、ヒットはオルソログとして同定できる。
【0150】
本明細書で使用される場合、「配列同一性%」は、2つの最適に整列されたDNAまたはタンパク質セグメントが、成分、例えば、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の整列
のウィンドウ全体にわたって不変である程度を意味する。試験配列および参照配列の整列されたセグメントの「同一性の割合」は、2つの整列されたセグメントの配列によって共有される同一の構成要素の数を、完全な試験配列または完全な参照配列のうちの小さい方であるアラインメントのウィンドウ上で参照セグメント内の配列構成要素の総数で割ったものである。「配列同一性%」は、同一性の割合に100を掛けたものである。このような最適なアラインメントは、DNA配列の局所的なアラインメントとみなされると理解されている。タンパク質アラインメントの場合、タンパク質配列の局所アラインメントにより、ギャップを導入して最適なアラインメントを実現する必要がある。配列同一性パーセントは、アラインメント自体によって導入されたギャップを含まない、整列された長さにわたって計算される。
【0151】
他の実施形態では、連鎖球菌細菌は、連鎖球菌マンガントランスポータータンパク質もしくはその成分、細菌マンガントランスポーターもしくはその成分をコードする遺伝子、および/または細菌マンガントランスポーターもしくはその成分をコードする遺伝子の発現を負に調節する調節配列を過剰発現するように改変され得る。この文脈において、「過剰発現」は、同じ生物学的条件下で、同じ連鎖球菌の野生型の形態における同じ遺伝子またはタンパク質の発現と比較して増加されている発現レベルを意味すると理解されるであろう。このカテゴリーにおける好適な連鎖球菌マンガントランスポーターの非限定的な例には、Streptococcus pneumoniaeのMntEマンガン流出トランスポーター、MgtAおよびそれらの相同体が挙げられる。当業者に既知であるように、MntEは主要なマンガンの搬出タンパク質(カチオン拡散促進因子ファミリータンパク質)であり、MgtAはマンガン流出において機能するP型ATPアーゼタンパク質である。両方とも細胞質からマンガンを搬出し、したがってこれらのタンパク質およびそれらの相同体は、本発明の連鎖球菌変異体において過剰発現されて、細胞内マンガンイオンのレベルを低下させることができる。
【0152】
上記のいずれかに対する追加または代替のアプローチとして、連鎖球菌細菌は、Streptococcus pneumoniaeのマンガンABCトランスポーター(psaA、psaB、psaC)をコードする1つ以上の遺伝子、またはそのような遺伝子の相同体の調節因子(リプレッサー)を過剰発現するように改変され得る。非限定的な例として、psaR調節因子/リプレッサーまたはその相同体の過剰発現を使用して、PsaR-DNA結合を増加させ、かつpsaA、psaBおよび/またはpsaC遺伝子(またはそれらの相同体)を抑制することができる。これらの遺伝子の転写が低下すると、外部環境からのマンガンイオンの取り込みが低下し、細胞内マンガンイオンのレベルが低下し得る。しかしながら、PsaRの過剰発現はまた、例えば、免疫原性タンパク質をコードし得るpcpA、prtAおよび/またはrrgAを含む他の遺伝子の発現を下方調節し得る。いくつかの実施形態では、PsaRまたはその相同体を過剰発現する場合、結果として下方調節される任意の遺伝子は、例えば、構成的プロモーターの使用によってそれらの発現レベルを再確立または上昇させ得る。
【0153】
上記のいずれかに対する追加または代替のアプローチとして、マンガントランスポーターをコードする遺伝子の転写活性化因子の活性を変更させるように、連鎖球菌細菌が改変され得る。当業者に既知であるように、mgtAリボスイッチは、マンガン流出タンパク質mgtAの発現を制御するための調節エレメントとして作用するシス作用性低分子RNA(リボスイッチ)である。これは、mgtAの転写を活性化するマンガン特異的センサーとして作用し、それによってマンガンがRNAアプタマーに結合すると、ターミネーターヘアピンが不安定になり、全長のmgtAのmRNA転写物の転写が可能になる。非限定的な例として、RNA配列がヘアピンを形成する構造的特徴をもはや有しないようにmgtAリボスイッチまたはその相同体の配列を変更することを使用して、mgtAまたはその相同体の転写を増加させることができる。この過剰発現は、細菌細胞からの流出を増
加させることによってマンガンの枯渇を誘導し得る。
【0154】
上記のいずれかに対する追加または代替のアプローチとして、連鎖球菌の亜鉛トランスポータータンパク質を改変(過剰発現)して亜鉛イオン(Zn2+)の細胞内レベルに影響を与えることができ、これが次にPsaRに結合し、それによってマンガントランスポーターをコードする遺伝子(例えば、psaA、psaBおよびpsaC)の発現を低下させることができるこの目的に適した連鎖球菌亜鉛トランスポーターの非限定的な例には、Streptococcus pneumoniae AdcAII、Streptococcus pneumoniae AdcA、Streptococcus pneumoniae AdcB、Streptococcus pneumoniae AdcCおよびStreptococcus pneumoniae CzcD、Streptococcus agalactiae Lmb、Streptococcus pyogenes AdcA、Streptococcus pyogenes Lmb、ならびにこれらの相同体が挙げられる。
【0155】
上記のいずれかに対する追加または代替のアプローチとして、連鎖球菌細菌は、細胞内マンガンイオンレベルの低下の結果として上方調節される1つ以上のタンパク質を発現するように改変され得る。このようなタンパク質の非限定的な例には、PcpA、PrtA、RrgA、RrgBおよびRrgCが挙げられる。当業者は、これらのタンパク質が細胞内マンガンイオンレベルの低下の結果として上方調節され得る一方で、同じ結果を達成するために代替のアプローチが採用され得ることを認識するであろう。例えば、連鎖球菌細菌は、発現ベクターなど、および/または他の当技術分野において既知のアプローチを使用して、タンパク質のうちの1つ以上を過剰発現するように遺伝子操作され得る。
【0156】
-マンガンイオンの細胞内レベルを低下させるための細胞培養方法
本明細書に記載されるように、本発明のワクチンは、弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌(例えば、完全に死滅させた連鎖球菌細菌)、および/またはその成分に基づくことができる。その成分は、典型的には、例えば、通常は外部宿主環境に曝露される抗原性タンパク質または抗原性タンパク質の一部、細胞壁細菌抗原(多糖)などの免疫原性成分である。
【0157】
野生型および変異型の両方を含む、本明細書に記載の連鎖球菌細菌は、細胞内マンガン(Mn2+)のレベルを制限する様式で培養することができる。これは、マンガンイオン(Mn2+)の細胞内レベルを低下させるために細菌に変異を導入することに加えて、またはそれとは独立してもよい。
【0158】
当業者に周知であるように、マンガンイオンは連鎖球菌の増殖および機能に必要である。標準的な培養培地およびプロトコルが広く利用可能であることは、培養中の野生型連鎖球菌細菌の増殖を促進するためのそのようなイオンの最適レベルが十分に確立されており、簡単な試行錯誤によって当業者に容易に決定され得ることを意味する。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の連鎖球菌細菌は、培養中の細菌へのマンガンイオンの利用可能性を低下させ、その結果、細菌内の細胞内マンガンレベルの低下を促進する条件下で培養され得る。
【0160】
非限定的な例として、連鎖球菌細菌は、それらの増殖に最適であることが知られている、または確立されているレベルよりも低いレベルまでマンガンイオンを枯渇させた培地(例えば、標準培地)で培養することができる。いくつかの実施形態では、培地は、マンガンイオンを封鎖することができ、したがって、細菌へのマンガンイオンの利用可能性を低下させる薬剤(例えば、吸収剤および/またはキレート剤)で細菌を培養する間に前処理
および/または処理され得る。例えば、キレート樹脂(例えば、Chelex 100カチオンキレート樹脂)を使用して、細菌を培養する前および/または細菌の培養中(例えば、間隔を置いて)に、培地からマンガンイオンを封鎖および除去することができる。追加的または代替的に、培地は、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジニルメチル)-1,2-エタンジアミン(TPEN)、およびカルプロテクチンのうちのいずれか1つ以上などのマンガンイオンをキレート化することができる1つ以上の薬剤で補充されてもよい。Mn2+に加えて金属イオンをキレート化する薬剤の場合、培地にこれらの他のイオンを適切に再補充して、細胞増殖を可能にすることができる。当業者は、利用するのに適切な濃度を知っているであろう。
【0161】
追加的または代替的に、連鎖球菌細菌は、細菌内および/または細菌上(例えば、連鎖球菌PsaAおよび/またはその相同体)のマンガンイオン結合部位と競合する過剰(例えば、モル過剰)のカチオンを含む培地で培養され得る。競合するイオンは、例えば、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、およびCd2+のうちのいずれか1つ以上などの他のカチオンを含んでもよい。非限定的な例として、カチオンのPsaAまたはその相同体への結合は、タンパク質をその閉じたコンフォメーションに固定し、マンガンの取り込みを防ぎ、イオンの細胞内レベルを低下させ得る。
【0162】
当業者は、本明細書に記載の連鎖球菌細菌を培養するために使用される培地からマンガンイオンを低下または除去するために、他の任意の数の代替手段を使用できることを認め、それらのすべてが企図される。
【0163】
-連鎖球菌変異体:さらなる例示的な変更
単なる非限定的な例として、本発明の変異体連鎖球菌株は、株中のマンガンイオンの細胞内レベルを制限する手段に加えて、またはそれとは独立して、様々な他の変更を含み得る(例えば、変異による、および/または細胞内マンガンレベルを低下させる条件下での培養による)。これらの変更の非限定的な例を以下に示す。
【0164】
いくつかの実施形態では、変更は、連鎖球菌莢膜遺伝子座(cps)を破壊または除去するいずれかを含む。例えば、莢膜産生を阻害、破壊または改変するために(例えば、部位特異的変異導入などによって)、S.pneumoniaeのcpsA、cpsB、cpsC、cpsDおよび/またはcpsE遺伝子、あるいは他の連鎖球菌種の相同遺伝子のうちのいずれか1つ以上を改変し得る。あるいは、連鎖球菌変異体は、これらの遺伝子または他の遺伝子において、天然に存在する無莢膜型連鎖球菌細菌をもたらす自然発生的変異を有してもよい。連鎖球菌変異体は、莢膜遺伝子座の全部または少なくとも一部を欠くものであり得る。いくつかの実施形態では、莢膜を欠く連鎖球菌変異体は、Streptococcus pneumoniae Rx1株、またはRx1誘導体である。
【0165】
追加的または代替的に、変更は、他の標的タンパク質の産生または活性を増加または低下または防止するいずれかを含み得る。単なる非限定的な例として、コリン結合タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子;自己溶菌酵素をコードする1つ以上の遺伝子(例えば、S.pneumoniaeのlytA、lytB、lytCもしくは他の連鎖球菌細菌の相同遺伝子);増殖のための栄養素/補因子要求性を付与する1つ以上の遺伝子;防御抗原をコードする1つ以上の遺伝子(例えば、S.pneumoniaeのpspAもしくは他の連鎖球菌細菌の相同遺伝子);および/または毒性決定因子もしくは毒性調節因子をコードする1つ以上の遺伝子(例えば、S.pneumoniaeのcodY、comC、comD、cps2A、csp4A、glpO、mgrA、nanA、nanB、pavA、pcpA、phtA、phtB、phtD、phtE、piuA、piaA、
ply、prtA、psrP、rrgA、rrgB、spxBおよび他の連鎖球菌細菌のこれらの遺伝子の相同体)に遺伝子変更が存在し得る。
【0166】
追加的または代替的に、変更は、インビボでの病原性および/または増殖が低下した栄養要求性をもたらすものを含み得る。単なる非限定的な例として、チミジル酸合成酵素をコードする1つ以上の遺伝子に遺伝子変更が存在し得る。
【0167】
追加的または代替的に、変更は、同じ種であるが血清型が異なる連鎖球菌細菌;異なる種の連鎖球菌細菌;非連鎖球菌細菌;あるいはヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマまたはヒツジ);実験動物(例えば、げっ歯類またはウサギ);鳥類;および/または組換え連鎖球菌細菌を投与する対象からの1つ以上の(外部)遺伝子の封入を含み得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の外部遺伝子は、1つ以上の内因性遺伝子を破壊するか、さもなければ不活性化する。他の実施形態では、1つまたは複数の外部遺伝子は、内因性遺伝子を破壊も不活性化もしない。単なる非限定的な例として、1つまたは複数の外部遺伝子は、連鎖球菌変異体を投与する対象の免疫応答を誘導または増強するタンパク質をコードし得る。免疫応答は、自然免疫応答、適応免疫応答またはその両方であり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の外部遺伝子は、免疫調節因子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗体、融合タンパク質、ペプチド、タンパク質、および/またはホルモン)をコードする。他の実施形態では、1つまたは複数の外部遺伝子は、別の異なる科の細菌の抗原(例えば、Mycoplasma pneumoniae抗原、Haemophilus influenzae抗原、Chlamydophila pneumoniae抗原、Moraxella catarrhalis抗原、Staphylococcus aureus抗原)、ウイルス抗原(例えば、アデノウイルス抗原、コロナウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原、パラインフルエンザウイルス抗原、メタニューモウイルス抗原、ライノウイルス抗原、呼吸合包体ウイルス抗原、HIV抗原、肝炎ウイルス抗原またはヘルペスウイルス抗原、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、パピローマウイルスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、水痘帯状疱疹ウイルス抗原)、真菌/酵母抗原、蠕虫抗原および/または原生動物抗原を含み得る。
【0168】
追加的または代替的に、変更は、細菌に1つ以上の標的遺伝子を過剰発現させ、例えば、投与された連鎖球菌変異体の親株である連鎖球菌株に対して、および/またはその連鎖球菌変異体そのものに対して対象の免疫応答を誘導または増強させ得る。単なる非限定的な例として、遺伝子変更は、補体系を活性化することが可能なタンパク質をコードする連鎖球菌変異体において1つ以上の遺伝子(例えば、S.pneumoniaeのcbpA、pspA、ply、または他の連鎖球菌細菌のこれらの遺伝子の相同体)の産生を増大させ得る。
【0169】
追加的または代替的に、変更は、DNA修復能力の欠陥を引き起こすものを含み得る。いくつかの実施形態では、連鎖球菌変異体は、ミスマッチ修復系におけるタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子(例えば、S.pneumoniaeのhex遺伝子座または他の連鎖球菌細菌のこの遺伝子座の相同体)の発現を妨害または不活性化する遺伝子変更を含む。
【0170】
追加的または代替的に、変更は、DNAアルキル化修復タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子(例えば、S.pneumoniaeのDNAポリメラーゼ4、hexA、hexB、mutS、radC、recA、recF、recN、recO、uvrA、uvrB、uvrC、uvrDまたは他の連鎖球菌細菌のこれらの遺伝子の相同体)の発現を妨害または不活性化するものを含み得る。
【0171】
追加的または代替的に、変更は、二本鎖RNA(dsRNA)の産生を促進するものを含み得る。dsRNAは、mRNAまたはtRNAであり得る。限定されるわけではないが、dsRNAの長さは、10塩基対超、15塩基対超、20塩基対超、25塩基対超、30塩基対超、35塩基対超、40塩基対超、45塩基対超、50塩基対超、55塩基対超、65塩基対超または70塩基対超であり得る。追加的または代替的に、dsRNAの長さは、約10~約70塩基対(bp)の間、約10~約50塩基対(bp)の間、約10~約30塩基対(bp)の間、約20~約70塩基対(bp)の間、約20~約60塩基対(bp)の間、約20~約50塩基対(bp)の間、約20~約40塩基対(bp)の間、約20~約30塩基対(bp)の間、約30~約70塩基対(bp)の間、約40~約70塩基対(bp)の間、約50~約70塩基対(bp)の間、約60~約70塩基対(bp)の間、約30~約60塩基対(bp)の間、約30~約50塩基対(bp)の間、または約30~約40塩基対(bp)の間であり得る。いくつかの実施形態では、dsRNAは、別の状態では一本鎖であるさらに大きいRNA分子の構成要素である。さらに大きいRNA分子は、複数のdsRNAを構成要素として含み得る。dsRNAは、さらに大きいRNA分子の内部構成要素または末端構成要素であり得る。いくつかの実施形態では、dsRNAは、終止ステムループ配列を含み得る。dsRNAは、さらに大きいRNA分子内の自己相補性領域から生じるものであり得る。1つ以上の自己相補性領域を含み、それにより転写時にdsRNA部分が生じるように、連鎖球菌派生株の所与の遺伝子内のコード領域(複数可)/エキソン(複数可)を操作することができる。dsRNAは、連鎖球菌変異体が投与された対象の細胞によって発現されるToll様受容体(TLR)タンパク質によって認識することが可能なものであり得る。TLRタンパク質は、細胞の小胞体および/またはエンドソーム区画内に位置し得る。TLRタンパク質はToll様受容体3(TLR3)タンパク質であり得る。特に限定されるわけではないが、細胞は、Bリンパ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞および/または樹状細胞のうちのいずれか1つ以上であり得る。dsRNAがTLR3タンパク質に認識されることによって、対象に免疫応答が誘導され得る。免疫応答は、自然免疫応答であり得る。免疫応答は、1型インターフェロン応答であり、かつ/または炎症性サイトカインの放出を含むものであり得る。
【0172】
追加的または代替的に、変更は、Rx1株を生成することを含み得る。Rx1派生株では、オートリシン遺伝子(lytA)遺伝子を、欠失させるか、非機能性にし得る。追加的または代替的に、Rx1派生株では、ニューモリシン遺伝子(ply)を、欠失させるか、非機能性にし得る。例えば、ply遺伝子は、トキソイド型のplyをコードするものなどの別の遺伝子に置換し得る。
【0173】
-連鎖球菌細菌の不活化および/または弱毒化
本発明のワクチンは、弱毒化または死滅させた連鎖球菌細菌(例えば、完全に死滅させた連鎖球菌細菌)、および/またはその成分に基づく。
【0174】
本明細書に記載の連鎖球菌細菌の不活化は、例えば、以下の方法:ホルマリンなどの架橋剤またはベータプロピオラクトンなどのアルキル化剤の使用によって例示される化学的不活化、熱的(熱)処理、紫外線、光子、陽子、重イオンまたは低エネルギー電子照射、高静水圧、パルス電場、超短パルスレーザーおよび圧力下の超音波のいずれか1つ以上を使用することによって達成することができる。連鎖球菌細菌の不活化の好ましい方法には、細胞壁関連表面タンパク質抗原の除去および/または変性を最小限に抑える方法が含まれる。
【0175】
細菌の不活性化および/または弱毒化のための好適な技術の非限定的な例は、以下に開示されている:Levinson et al.(1944)Production of potent inactivated vaccines with ultra
violet irradiation.JAMA 125,532;Hartman FW and Lo Grippo GA (1957) Beta-propiolactone in sterilization of vaccines,tissue grafts and plasma.JAMA.164,258-260;Manas P and Pagan R(2005)Microbial inactivation by new methods of food preservation.Delrue I et al.(2012)Inactivated virus vaccines from chemistry to prophylaxis:merits,risks and challenges.Expert Rev.Vaccines 11,695-719;Park JC and Jung MH (2015) Study of the effects of high-energy
proton beams on Escherichia coli.J.Korean Physical Soc.67,1454-1458;J.Appl.Microbiology.98,1387-1399;Babb R et al.(2016) Intranasal vaccination with gamma-irradiated Streptococcus pneumoniae whole-cell vaccine provides serotype independent
protection mediated by B-cells and innate IL-17 responses.Clin.Sci.130,697-710;Fertey J et al.(2016)Pathogens inactivated by low-energy-electron irradiation maintain antigenic properties and induce protective immune responses.Viruses 8,319
doi:10.3390/v8110319;Sabbaghi A et al.(2019)Inactivation methods for whole influenza vaccine production.Rev.Medical Virology.29 (6)e2074))。
【0176】
いくつかの実施形態では、連鎖球菌細菌は、光子放射への曝露によって不活化される。上記のように、「光子放射」という用語は、ガンマ線放射(すなわち、ガンマ線)およびX線放射(すなわち、X線)の両方を包含すると理解されよう。したがって、「光子線照射された」連鎖球菌細菌は、ガンマ線放射(すなわちガンマ線)への曝露によって「ガンマ線照射された」もの、X線放射(すなわちX線)への曝露によって「X線照射された」もの、またはその両方であり得る。単なる非限定的な例として、ある材料を光子線照射された状態にするため、材料を少なくとも0.01MeV、少なくとも0.1MeV、少なくとも0.5MeV、0.01MeV~0.5MeVの間、0.01MeV~1MeVの間、0.01MeV~10MeVの間、0.5MeV~20MeVの間、0.5MeV~15MeVの間、0.5MeV~10MeVの間、0.5MeV~5MeVの間、0.5MeV~2MeVの間または1MeV~2MeVの間(例えば1.25MeV)のエネルギーの光子放射に供し得る。
【0177】
非限定的な例として、連鎖球菌細菌のガンマ線照射は、市販の装置、例えば、Atomic Energy of Canada Ltd.,Canada製のGammacell照射装置(例えば、Gammacell 40照射装置、Gammacell 220照射装置、Gammacell 1000照射装置、Gammacell 3000照射装置)、J.L.Shepherd and Associates(San Fernando,California,USA)製のガンマ線照射装置、またはNordion Inc.(Kanata,Ontario,Canada)製のNordion Gamma Cell-1000照射装置を使用して実行し得る。他の好適な装置は、例えば、米国特許第3,557,370号および米国特許第3,567,938号に記載さ
れている。追加的または代替的に、本発明のワクチン中の連鎖球菌細菌は、X線照射されたものであり得る。任意の好適なX線放射源を使用することができる。好適なX線放射源としては、特に限定されないが、IBA Industrial(Louvain-la-Neuve,Belgium)製のeXelis(登録商標)殺菌X線機器が挙げられる。その他の好適な装置としては、例えば、Rad Source Technologies Inc.(Suwanee,Georgia,USA)製のRS2400(登録商標)およびRS3400(登録商標)が挙げられる。一実施形態では、連鎖球菌細菌の調製物を光子放射(例えば、ガンマ線放射および/またはX線放射)に曝露する間、これを凍結状態および/または凍結乾燥状態で維持する。これにより、抗原の生物学的完全性の保存が促進され、抗原の不必要な損傷が回避され、それにより、光子線照射された細菌調製物の免疫原性、特に、例えば異種株に対する交差反応性/交差防御免疫性を誘導する能力が増大し得る。
【0178】
-製剤
本明細書に記載の連鎖球菌細菌およびその成分は、医薬組成物に組み込まれ得る。この組成物は、宿主に疾患または病態に至り得る感染を確立することが可能な病原性生物に対する免疫応答を刺激することができる。したがって、この組成物は、予防ワクチン(すなわち、感染症および/または疾患/病態の予防を目的に投与するワクチン)および治療ワクチン(すなわち、感染症および/または疾患/病態の治療を目的に投与するワクチン)を含めたワクチンとなり得る。したがって、本発明のワクチンは、予防、改善、緩和、または治療を目的にレシピエントに投与され得る。医薬組成物はワクチンであり得る。
【0179】
ワクチンは、当業者に既知である方法を使用して調製することができる。好適な方法の非限定的な例は、Gennaro et al.(Eds),(1990),「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Co.Easton,Pennsylvania,USAに記載されており、ワクチンの調製方法はVoller et al.(1978),「New Trends and Developments in Vaccines」,University Park Press,Baltimore,Maryland,USAに記載されている。
【0180】
ワクチンは、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤および/またはアジュバントを含み得る。本明細書で企図される「薬学的に許容される」担体、賦形剤、希釈剤および/またはアジュバントは、ヒトまたは非ヒト動物などの特定のレシピエントに投与されたときに有害反応(複数可)を生じない物質である。薬学的に許容される担体、添加剤、賦形剤およびアジュバントは一般に、ワクチンの他の成分との適合性もある。好適な賦形剤、希釈剤、および担体の非限定的な例は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」4th Edition,(2003)Rowe et al.(Eds),The Pharmaceutical Press,London,American Pharmaceutical Association,Washingtonに記載されている。
【0181】
薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤の非限定的な例としては、脱塩水または蒸留水;生理食塩水;植物ベースの油、例えばピーナツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油またはヤシ油など;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリソルポキサン(methylphenyl polysolpoxane)などのポリシロキサンを含めたシリコーン油;揮発性シリコーン;流動パラフィン、軟パラフィンまたはスクアランなどの鉱油;セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど
;低級アルカノール、例えばエタノールまたはイソプロパノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールまたはグリセリン;脂肪酸エステル、例えばパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルまたはオレイン酸エチルなど;ポリビニルピリドン;寒天;カラゲナン;トラガカントゴムまたはアラビアゴムおよび石油ゼリーが挙げられる。典型的には、1つまたは複数の担体は、組成物の10重量%~99.9重量%を占めるであろう。
【0182】
本発明のワクチンは、注射による投与に適した形態、経口摂取に適した製剤の形態(例えばカプセル剤、錠剤、カプレット剤、エリキシル剤など)、局所投与に適した軟膏、クリームもしくはローションの形態、点眼剤として送達するのに適した形態、鼻腔内吸入もしくは経口吸入などの吸入による投与に適したエアロゾルの形態または非経口投与、すなわち真皮内、皮下、筋肉内もしくは静脈内への注射に適した形態であり得る。
【0183】
ワクチンを注射用液剤または懸濁剤として調製するには、無毒性の非経口的に許容される賦形剤または担体、例えばリンガー溶液、等張食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノールおよび1,2プロピレングリコールなどを使用し得る。局所投与に適した製剤としては、皮膚から治療が必要な部位への浸透に適した液体または半液体の製剤、例えばリニメント剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤またはペースト剤のほか、眼球、耳または鼻への投与に適した滴剤が挙げられる。滴剤として製剤化する場合、ワクチンは、無菌で水性または油性の液剤または懸濁剤を含み得る。これらは、任意選択で界面活性剤を含む殺菌剤、殺真菌剤および/または他の任意の好適な保存剤の水溶液に有効成分を溶かすことによって調製し得る。次いで、得られた溶液をろ過によって清澄化し、好適な容器に移して滅菌する。例えば、ろ過によって滅菌を実施した後、吸引技術によって容器に移し得る。滴剤に含ませるのに適した殺菌剤および殺真菌剤の例には、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)がある。油性溶液の調製に適した溶媒としては、グリセロール、希釈アルコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。ローション剤として製剤化する場合、ワクチンは、皮膚または眼球への適用に適したものを含む。眼球用ローション剤は、任意選択で殺菌剤を含有する無菌水溶液を含んでよく、滴剤の調製に関して上に記載したものと同じ方法によって調製され得る。皮膚に適用するローション剤またはリニメント剤はほかにも、乾燥を促進し皮膚に冷却感を与える物質、例えばアルコールまたはアセトンなどならびに/あるいは保湿剤、例えばグリセロールまたはヒマシ油もしくはラッカセイ油などの油などを含み得る。クリーム剤、軟膏剤またはペースト剤として製剤化する場合、ワクチンは、外用の有効成分の半固形製剤であり得る。これらは、微粉化形態または粉末化形態の有効成分を単独で、または水性液もしくは非水性液の溶液もしくは懸濁液の形で、油脂性基材または非油脂性基材と混合することによって作製し得る。基材は、炭化水素、例えば硬パラフィン、軟パラフィン、流動パラフィン、グリセロール、ミツロウ、金属石鹸など;粘質物;天然由来の油、例えばアーモンド油、コーン油、ラッカセイ油、ヒマシ油もしくはオリーブ油など;羊毛脂もしくはその誘導体またはステアリン酸もしくはオレイン酸などの脂肪酸とプロピレングリコールもしくはマクロゴールなどのアルコールを含み得る。
【0184】
ワクチンは、任意の好適な界面活性剤、例えばアニオン性、カチオン性または非イオン性の界面活性剤、例えばソルビタンエステルもしくはそのポリオキシエチレン誘導体などを含み得る。懸濁化剤、例えば天然ゴム、セルロース誘導体または無機物質、例えばケイ素質シリカなどおよび他の成分、例えばラノリンなどを含み得る。
【0185】
ワクチンはリポソームの形態で投与することができる。リポソームは、一般に、リン脂
質または他の脂質物質に由来し、水性媒体に分散した単層または他重層の水和液晶によって形成される。リポソームを形成することが可能であり、毒性がなく、生理的に許容される代謝可能な任意の脂質を使用することができる。リポソーム形態のワクチンは、安定剤、保存剤、賦形剤などを含有し得る。好ましい脂質としてリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)があり、両方とも天然および合成のものである。リポソームを形成する方法は当技術分野で知られており、この特定の参照に関連して、Prescott,Ed.,Methods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.Y.(1976),p.33以降が参照される。
【0186】
-アジュバント
アジュバント(複数可)は、本発明のワクチンに含まれてもよい。一般に、ワクチンに関連するアジュバント活性には、特に限定されないが、ワクチン中の免疫原成分によって誘導される免疫応答を(定量的または定性的に)増強する能力が含まれる。これにより、免疫応答を引き起こすのに必要な免疫原成分の量もしくはレベルが抑えられ、かつ/または所望の免疫応答を引き起こすのに必要な免疫化の回数もしくは頻度が抑えられ得る。
【0187】
好ましくは、アジュバントは、ワクチンの成分(複数可)によって誘導および/または増強される免疫応答が増強され、それにより防御効果を改善する。好ましくは、アジュバントは、より低用量の他の活性成分(複数可)を利用して防御免疫の誘導を可能にするであろう。
【0188】
本発明のワクチンに含めるのに適したアジュバントの非限定的な例およびそれらの調製方法は、「Vaccine Adjuvants:Preparation Methods and Research Protocols(Methods in Molecular Medicine)」,(2000),O’Hagan(Ed),Humana Press Inc.に記載されている。本発明のワクチンには、任意の好適なアジュバントを含めることができる。
【0189】
このようなアジュバントの具体例としては、水酸化アルミニウム;インターフェロン、インターロイキン、および他のサイトカインを含めるポリペプチドアジュバント、AMPHIGEN、水中油型エマルションおよび油中水型エマルション、ならびにQuilAなどのサポニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
例えば、アルミニウム系アジュバントを利用することができる。好適なアルミニウム系アジュバントとしては、硫酸アルミニウムカリウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびその組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。利用できるアルミニウム系アジュバントの他の具体例は、欧州特許第1216053号および米国特許第6,372,223号に記載されている。
【0191】
水中油型エマルションを、本発明のワクチンのアジュバントとして利用することができる。水中油型エマルションは当技術分野において周知である。一般に、水中油型エマルションは、代謝可能な油、例えば、魚油、植物油、または合成油を含むであろう。好適な水中油型エマルションの例としては、欧州特許第0399843号、米国特許第7,029,678号および国際公開第WO2007/006939号に記載されているものが挙げられる。水中油型エマルションは、他のアジュバントおよび/または免疫刺激剤と組み合わせて利用することができる。
【0192】
その他の好適なアジュバントの非限定的な例としては、免疫刺激物質、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、モノホスホリルリピドA(MPL)、
コレラ毒素(CT)またはその構成サブユニット、易熱性エンテロトキシン(LT)またはその構成サブユニット、Toll様受容体リガンドアジュバント(リポ多糖(LPS)およびその誘導体(例えば、モノホスホリルリピドAおよび3-脱アシル化モノホスホリルリピドA)、ムラミルジペプチド(MDP)など)、Toll様受容体(TLR)アゴニスト(例えば、TLR-2アゴニスト、TLR-3アゴニスト)ならびに呼吸合包体ウイルス(RSV)のFタンパク質などが挙げられる。
【0193】
本発明のワクチン中のアジュバントは通常、皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤および緩衝剤を含み得る。免疫原性ペプチドと脂質とのコンジュゲーションによって、水溶性リポペプチドPam3Cysまたはそのジパルミトイル誘導体Pam2Cysなどの別の種類の「自己アジュバント」が得られる。このようなアジュバントは、免疫原性成分を伴って抗原提示細胞(樹状細胞など)の中に入り、それにより抗原提示の増強および細胞の活性化を同時に生じさせるという利点を有する(例えば、Brown and Jackson,(2005),「Lipid based self adjuvanting vaccines」,Current Drug Delivery,23:83を参照されたい)。
【0194】
好適なアジュバントには、例えばフロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories,Detroit,Mich.);Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc,Rahway,N.J.);AS-2(SmithKline Beecham,Philadelphia,Pa.);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄または亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;カチオン性誘導体化多糖またはアニオン性誘導体化多糖;ポリホスファゼン;生分解性マイクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびQuil
Aなど市販されているものがある。GM-CSF、インターロイキン2、インターロイキン7またはインターロイキン12などのサイトカインをアジュバントとして使用してもよい。
【0195】
ある特定の実施形態では、本発明のワクチンに含まれるアジュバントは、Th1型が優勢の免疫応答を誘導し得る。Th1型優勢の応答の誘起に使用するのに適したアジュバントとしては、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)とアルミニウム塩との組み合わせが挙げられる。例えば、組成物またはワクチンを、Thoelenら(2001),「A prophylactic hepatitis B vaccine with a novel adjuvant system」,Vaccine,19:2400-2403に記載されているような水酸化アルミニウム(ミョウバン)と3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)とを含有するアジュバントAS04と共に製剤化し得る。Th1型免疫応答を優先的に誘導する他の既知のアジュバントには、CpG含有オリゴヌクレオチドが挙げられる。このオリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドがメチル化されていないことを特徴としている。このようなオリゴヌクレオチドは当業者に公知であり、例えば、国際公開第WO1996/02555号に記載されている。例えば、Sato et al.,(1996),「Immunostimulatory DNA sequences necessary for effective intradermal gene immunization」,Science,273:352-354には免疫刺激DNA配列も記載されている。
【0196】
アジュバントのまた別の例としてサポニン、好ましくはQS21(Aquila Biopharmaceuticals Inc.,Framingham,Mass.)があり、これを単独で、または他のアジュバントと組み合わせて使用し得る。モノホスホリ
ルリピドAとサポニン誘導体との組み合わせ、例えば国際公開第WO1994/00153号に記載されているQS21と3D-MPLとの組み合わせなど、または国際公開第WO1996/33739号に記載されているように、コレステロールでQS21の反応性を抑制した反応原性の低い組成物を含めた増強アジュバント系を用い得る。他の代替製剤は、水中油型エマルションおよびトコフェロールを含む。水中油型エマルション中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む製剤を含むアジュバント製剤は、国際公開第WO1995/17210号に記載されている。本発明の組成物に含まれるアジュバントは、国際公開第WO1995/17210号に記載されているような水中油型エマルション中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む製剤を含み得る。一実施形態では、本発明の組成物は、天然の代謝性油に基づくアジュバントであるアジュバントモンタニドISA720(M-ISA-720;Seppic、Fairfield.N.J.)を含む。
【0197】
アジュバントは、粘膜経路を介して投与される免疫原性成分に対する粘膜免疫および/または全身性免疫を増強するのに有効な粘膜アジュバントであり得る。粘膜アジュバントは、ワクチン送達を促進し、ワクチンの他の免疫原性成分によって誘導される防御免疫の誘導を増強するもの(例えば、リポソーム、渦巻形構造物(cochleates)、弱毒化生ベクター、ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリドまたはPLGA、キタン(chitan)、DNAワクチン、粘膜付着性物質)と、免疫を刺激する役割を果たすもの(例えば、自然免疫関連毒素系、サイトカイン系など)とに大別される。特定の機序に限定されるわけではないが、粘膜アジュバントの有利な効果の一部は、ワクチンの免疫原性成分が粘膜バリアを通過するのを助ける能力に由来すると考えられる。粘膜バリアを横断する際、粘膜アジュバントが、例えば補体活性化、サイトカインの誘導、抗体産生または抗体タイプの切替えの刺激、抗原提示細胞の刺激ならびに/あるいはMHCクラスIおよび/またはクラスIIの発現への影響によって免疫を増強する可能性が考えられる。
【0198】
予防的および治療的方法
本発明は、対象における連鎖球菌感染症の阻害または予防のための予防的方法を提供する。対象における連鎖球菌感染症を治療するための治療法も提供される。この方法は、本明細書に記載の連鎖球菌細菌および/またはその成分を(例えば、ワクチンなどの医薬組成物の形態で)投与することを含む。
【0199】
これらの方法は、対象の連鎖球菌細菌に対する免疫応答を誘導または増強する。免疫応答は、連鎖球菌細菌の複数の血清型に対する免疫応答を誘導または増強することができる限り、交差防御的/異種的であり得る。この方法はまた、本明細書に記載の複数の異なる血清型および/または連鎖球菌細菌の種を投与して、連鎖球菌細菌の複数の種およびその様々な血清型に対する免疫を生成することを含み得る。
【0200】
これらの方法は、病原性および/または非病原性連鎖球菌細菌に対する免疫応答を誘導または増強し得る。例えば、これらの方法は、以下の連鎖球菌細菌種および/またはその血清型のうちのいずれか1つ以上に対する免疫応答を誘導または増強し得る:Streptococcus acidominimus、Streptococcus agalactiae、Streptococcus alactolyticus、Streptococcus anginosus、Streptococcus australis、Streptococcus bovis、Streptococcus caballi、Streptococcus cameli、Streptococcus canis、Streptococcus caprae、Streptococcus
castoreus、Streptococcus criceti、Streptococcus constellatus、Streptococcus cristatus、Streptococcus cuniculi、Streptococcus
danieliae、Streptococcus dentasini、Streptococcus dentiloxodontae、Streptococcus dentirousetti、Streptococcus devriesei、Streptococcus didelphis、Streptococcus downei、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus entericus、Streptococcus equi、Streptococcus equinus、Streptococcus ferus、Streptococcus gallinaceus、Streptococcus gallolyticus、Streptococcus gordonii、Streptococcus halichoeri、Streptococcus halotolerans、Streptococcus henryi、Streptococcus himalayensis、Streptococcus hongkongensis、Streptococcus hyointestinalis、Streptococcus hyovaginalis、Streptococcus ictaluri、Streptococcus infantarius、Streptococcus infantis、Streptococcus iniae、Streptococcus
intermedius、Streptococcus lactarius、Streptococcus loxodontisalivarius、Streptococcus lutetiensis、Streptococcus macacae、Streptococcus marimammalium、Streptococcus
marmotae、Streptococcus massiliensis、Streptococcus merionis、Streptococcus minor、Streptococcus mitis、Streptococcus moroccensis、Streptococcus mutans、Streptococcus
oralis、Streptococcus oricebi、Streptococcus oriloxodontae、Streptococcus orisasini、Streptococcus orisratti、Streptococcus orisuis、Streptococcus ovis、Streptococcus
panodentis、Streptococcus pantholopis、Streptococcus parasanguinis、Streptococcus parasuis、Streptococcus parauberis、Streptococcus peroris、Streptococcus pharyngis、Streptococcus phocae、Streptococcus pluranimalium、Streptococcus plurextorum、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus porci、Streptococcus porcinus、Streptococcus porcorum、Streptococcus pseudopneumoniae、Streptococcus pseudoporcinus、Streptococcus pyogenes、Streptococcus ratti、Streptococcus rifensis、Streptococcus rubneri、Streptococcus rupicaprae、Streptococcus salivarius、Streptococcus saliviloxodontae、Streptococcus sanguinis、Streptococcus sinensis、Streptococcus sobrinus、Streptococcus suis、Streptococcus tangierensis、Streptococcus thoraltensis、Streptococcus troglodytae、Streptococcus troglodytidis、Streptococcus tigurinus、Streptococcus thermophilus、Streptococcus uberis、Streptococcus urinalis、Streptococcus ursoris、Streptococc
us vestibularis、およびStreptococcus zooepidemicus。
【0201】
いくつかの実施形態では、この方法は、以下の病原性連鎖球菌細菌種および/またはその血清型のうちの任意の1つ以上に対する免疫応答を誘導または増強し得る:Streptococcus agalactiae、Streptococcus bovis、Streptococcus canis、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus equi、Streptococcus equinus、Streptococcus equisimilis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus iniae、S.milleri、Streptococcus
mutans、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus salivarius、Streptococcus sanguinis、Streptococcus suisおよびStreptococcus uberis。
【0202】
いくつかの実施形態では、この方法は、Streptococcus pneumoniaeの1つ以上の血清型によって引き起こされる感染症、疾患、または病態を阻害、予防、または治療するために利用される。この方法は、連鎖球菌細菌または本発明を、Streptococcus pneumoniaeの1つ以上の血清型の形態で対象に投与することにより、複数の異なるStreptococcus pneumoniae血清型に対して対象に免疫応答を誘導することを含み得、Streptococcus pneumoniae血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7A、7B、7C、7F、8、9A、9L、9N、9V、10A、10B、10C、10F、11A、11B、11C、11D、11F、12A、12B、12F、13、14、15A、15B、15C、15F、16A、16F、17A、17F、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33F、34、35A、35B、35C、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47Fおよび/または48のうちのいずれか1つ以上に対する免疫を誘導し得る。例えば、免疫は、Streptococcus pneumoniae血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33Fのうちのいずれか1つ以上に対して誘導され得る。投与されるStreptococcus
pneumoniae血清型(複数可)は、感染症、疾患、または病態の原因となる血清型とは異なる場合がある。
【0203】
疾患または病態は、連鎖球菌細菌の特定の種または血清型の感染を原因とする任意の疾患または病態であり得る。単なる非限定的な例を挙げれば、疾患または病態は、肺炎、耳感染症、耳痛、中耳感染症、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、結膜炎、菌血症、敗血症、関節感染症、骨感染症、化膿性関節炎、骨髄炎、軟部組織感染症、蜂巣炎、眼窩周囲蜂巣炎、膿瘍、腹膜炎、心感染症、心内膜炎および心外膜炎のうちのいずれか1つ以上であり得る。
【0204】
対象は、ウシ、ウマ、ヒツジ、霊長類、鳥類およびげっ歯類の種を含めた経済、社会または研究に重要な任意の動物であり得る。したがって、対象は、例えばヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマまたはヒツジ)などの哺乳動物であり得る。対象は、実験動物(例えば、マウス、ラットまたはモルモットなどのげっ歯類;ウサギなど)、鳥類(例えば、家禽)、魚類または甲殻類であり得る。
【0205】
本明細書に記載の連鎖球菌細菌および/またはその成分(例えば、ワクチンなどの医薬組成物の形態)は、例えば非経口経路(例えば、真皮内、静脈内、脊髄内、腹腔内、皮下または筋肉内)、経口経路、局所経路、または粘膜経路(例えば、鼻腔内)を含めた任意の好適な経路によって対象に投与し得る。いくつかの実施形態では、投与は、粘膜経路によるものである。例えば、投与は鼻腔内であり得る。
【0206】
特定の作用機序(複数可)に限定されるわけではないが、本発明のワクチンおよび方法は、以下:
【0207】
(i)サイトカイン(例えばIFN-γ)の産生および/またはToll様受容体(例えばToll様受容体2-TLR2)の活性化を含む自然免疫系の活性化;
【0208】
(ii)感染症、疾患または病態の原因となる連鎖球菌細菌の抗原(複数可)と特異的に結合する抗体の産生;
【0209】
(iii)オプソニン依存性食作用(例えば、連鎖球菌特異的抗体のオプソニン食作用活性(OPA)を介して);
【0210】
(iv)感染症、疾患または病態の原因となる連鎖球菌細菌の抗原(複数可)に特異的なCD4Tリンパ球応答;
【0211】
(v)感染症、疾患または病態の原因となる連鎖球菌細菌の抗原(複数可)に特異的なCD8Tリンパ球応答、のうちの1つ以上を含む対象における免疫応答を誘導し得る。
【0212】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンおよび方法によって誘導される免疫応答は、Toll様受容体2(本明細書ではTLR2としても知られ、参照される)の活性化を含み得る。当業者に知られているように、TLR2は、リポタイコ酸またはペプチドグリカンなどの細菌の細胞壁成分を介して細菌性病原体を認識する。限定されるわけではないが、本発明のワクチンが投与される対象におけるTLR2の活性化は、肺への好中球の流入、炎症誘導性サイトカインの産生、肺胞マクロファージの活性化、および/または連鎖球菌細菌によって引き起こされる髄膜炎および中耳炎に対する防御のうちのいずれか1つ以上を誘導し得る。追加的または代替的に、本発明のワクチンが投与される対象におけるTLR2の活性化は、連鎖球菌感染に対する適応免疫を形成し得る。例えば、それは、IgG抗体応答の有病率を促進し、特に、IgG3、IgG2a、IgG2bなどのTH1型免疫応答に関連するIgGのサブクラスを促進し得る。再び限定されるわけではないが、例えば、IgG3などのIgGサブクラスの有病率は、オプソニン食作用活性を促進し、かつ/または連鎖球菌感染に対する免疫原性を増強し得る。CD4+Tヘルパー細胞におけるTLR2の刺激は、T17への分化を助け、連鎖球菌のコロニー形成および/または感染を制御するためにIL-17産生CD4+T細胞の発達を促進することが知られている。
【0213】
本明細書に記載の連鎖球菌細菌および/またはその成分によって誘導されるこれらおよび他の免疫応答は、当技術分野において既知の標準的なアッセイを使用して特性評価および/または定量化することができ、例えば、固相不均一アッセイ(例えば、酵素結合免疫測定法)、液相アッセイ(例えば、電気化学発光アッセイ)、増幅発光近接均一アッセイ、フローサイトメトリー、細胞内サイトカイン染色、機能的T細胞アッセイ、機能的B細胞アッセイ、機能的単球-マクロファージアッセイ、樹状突起および網状内皮細胞アッセイ、NK細胞応答の測定、オプソニン食作用アッセイ(OPA)、酸化バーストアッセイ、細胞傷害性特異的細胞溶解アッセイ、五量体結合アッセイ、ならびに食作用およびアポ
トーシスの評価が挙げられる。好適な技術は、本出願の実施例にも記載されている。
【0214】
単なる非限定的な例として、この方法によって対象において誘導または増強される免疫応答は、好適な対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、または少なくとも約100倍増加され得る。好適な対照は、例えば、他の点では同一の条件下、実質的に同一の条件下、または同一の条件下で、この方法を実施する前に得た同じ免疫応答の測定結果であり得る。
【0215】
投与経路
本明細書に記載の連鎖球菌細菌および/またはその成分(例えば、ワクチンなどの医薬組成物の形態)は、非経口(例えば、真皮内、静脈内、脊髄内、腹腔内、皮下または筋肉内)経路、経口経路、局所経路または粘膜経路(例えば、鼻腔内)を含めた標準的な経路によって対象に投与し得る。
【0216】
例えば、それらは粘膜経路によって投与され得る。粘膜ワクチン投与の許容される経路の非限定的な例としては、鼻腔内、眼内、バッカル、生殖器内(膣内)、直腸内、気管内、皮膚および消化管が挙げられる。
【0217】
いくつかの実施形態では、それらは、鼻腔内経路によって投与される。理論または特定の作用モード(複数可)に限定されるわけではないが、ワクチンの鼻腔内投与は、細菌が上気道および/または下気道の粘膜表面から宿主に感染する特定の連鎖球菌感染症に対して免疫を増強するのに有利であり得る。さらに、粘膜ワクチン接種(例えば鼻腔内ワクチン接種)は、気道だけでなく、生殖器粘膜を含む離れた粘膜部位にも粘膜免疫を誘導し得る。
【0218】
本発明の鼻腔内ワクチンは、例えば、点鼻剤、スプレーもしくは吸入に適したものとして液体形態で、粉末として、クリームとして、またはエマルションとして製剤化することができる。噴霧化またはエアロゾル化鼻腔内ワクチンを利用することもできる。ミスト剤、粉末剤もしくはスプレー剤の吸入または点鼻剤、塗布剤、粉末剤、スプレー剤、ミスト剤、エアロゾルの鼻腔内投与などによる上気道および/または下気道の粘膜へのワクチン投与が企図される。
【0219】
一実施形態では、鼻腔内投与用のワクチンは、使用直前に再構成することができる凍結乾燥粉末の形態で提供される。本発明のワクチンの粉末ワクチン製剤は、液体ベースのワクチンの安定性および送達に関連する冷蔵保存および分配の必要性を克服する1つの手段を提供する。乾燥粉末製剤は、より安定していること、および微生物の増殖を抑えることの利点を提供する。
【0220】
凍結乾燥ワクチンは、非凍結乾燥ワクチンと同様のレベルのヘテロサブタイプ免疫を誘導し得る。ワクチンは、当技術分野において既知の任意の好適な技術を使用して凍結乾燥することができる。例えば、光子線照射された連鎖球菌細菌および/またはその誘導体の液体調製物をドライアイス-イソプロパノールスラリー中で凍結させ、凍結乾燥機(例えば、Virti Model 10-324 Bench,Gardiner,NY)で好適な時間(例えば、24時間)の間、凍結乾燥させ得る。
【0221】
一実施形態では、本発明の乾燥粉末経鼻ワクチンは、噴霧凍結乾燥(SFD)粒子を生成することによって生成される(例えば、Costantino et al.(2002)、「Protein spray freeze drying.2.Effect
of formulation variables on particle size and stability」,J Pharm Sci.,91:388-395;Costantino,et al.,(2000),「Protein spray-freeze drying.Effect of atomization conditions on particle size and stability」,Pharm Res.,17:1374-1383;Maa et al.,(1999),「Protein inhalation powders:spray drying vs spray freeze drying」,Pharm Res,16:249-254;Carrasquillo et al.,(2001);「Non-aqueous encapsulation of excipient-stabilized spray-freeze dried BSA into poly(lactide-co-glycolide) microspheres results in release of native protein」,J Control Release,76:199-208;Carrasquillo et al.,(2001),「Reduction of structural perturbations in bovine serum albumin by non-aqueous microencapsulation」,J Pharm Pharmacol.,53:115-120;および米国特許第6,569,458号を参照されたい)。
【0222】
ワクチンの鼻腔内投与に好ましい装置は、経鼻スプレー装置(例えば、Pfeiffer GmBH,Valois and Becton Dickinsonから市販されている装置)である。好適な装置の非限定的な例は、例えば、Bommer,(1999),「Advances in Nasal drug delivery Technology」,Pharmaceutical Technology Europe,p26-33に記載されている。鼻腔内装置は、1~500μmの範囲の小滴を生成することができる。10μm未満の小滴の割合をごくわずか(例えば、<5%)に抑えて吸入の可能性を最小限にするのが好ましい。鼻腔内装置は、2用量の送達、すなわち、単一のワクチン接種用量を2つのサブ用量で各鼻孔に1サブ用量ずつ送達することが可能なものであり得る。
【0223】
本発明のワクチンは、単独で投与しても、または他の追加の治療薬(複数可)と組み合わせて、レシピエントに投与してもよい。ワクチンが治療薬(複数可)と共に投与される実施形態では、投与は同時であっても逐次的(すなわち、ワクチン投与後に薬剤(複数可)を投与されるか、またはその逆)であってもよい。したがって、本発明のワクチンが別の薬剤と組み合わせて対象に投与される場合、両方は、単一の組成物で同時に投与されても、別個の組成物で同時に投与しても、または異なる時間に別個に投与されてもよい。
【0224】
投与量
一般に、本発明のワクチンは、投与経路およびレシピエントの身体的特徴(健康状態を含む)と適合性のある方法で、所望の効果(複数可)(すなわち、治療効果、免疫原性効果および/または防御効果)を誘発させるように投与される。
【0225】
例えば、所与のワクチンの適切な投与量は、限定されないが、対象の身体的特徴(例えば、年齢、体重、性別)、化合物を単一の薬剤として使用するのか補助治療剤として使用するのか、所与の連鎖球菌感染症の進行度(すなわち、病理学的状態)、および当業者に認識され得るものが挙げられる様々な因子に依存し得る。本発明の所与のワクチンの適切な投与量を決定する際に考慮され得る様々な一般的考慮事項は、例えば、Gennaro
et al.(Eds),(1990),「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Co.,Ea
ston,Pennsylvania,USA;およびGilman et al.,(Eds),(1990),「Goodman And Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics」,Pergamon Pressに記載されている。
【0226】
一般に、本発明のワクチンは、約5マイクログラム~約5mgの有効成分(すなわち、本明細書に記載の連鎖球菌細菌および/またはその成分)の量で患者に投与され得る。約50マイクログラム~約1000マイクログラムの量の投与量が特に好ましい。
【0227】
当業者は、日常的な実験によって、所望の治療転帰のために本発明のワクチンに含まれる連鎖球菌細菌および/またはその成分の有効で非毒性の量を決定することができるであろう。
【0228】
通常、治療用途では、治療は感染症、病的状態または病態の持続期間にわたるものとなる。さらに当業者には、治療する感染症、病的状態または病態の性状および程度、投与する形態、経路および部位ならびに治療を受ける具体的な個体の性質によって、個々の投与の最適な量および間隔が決まることは明らかであろう。また、そのような最適条件は、従来の技術によって決定することができる。
【0229】
多くの場合、本発明のワクチンを数回または多数回投与することが望ましいであろう。例えば、本発明のワクチンは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上の回数投与されてもよい。投与は、約1週間~約12週間間隔、ある特定の実施形態では約1週間~約4週間間隔であり得る。本発明のワクチンの標的となる特定の病原体への反復曝露の場合、定期的な再投与が望ましい場合がある。
【0230】
また、当業者には、治療過程を決定する従来の検査法を用いて至適な治療過程を確認することが可能であることが明らかであろう。
【0231】
本明細書に記載される方法は、予備刺激量の本発明のワクチンを投与することを含み得る。予備刺激量の後に追加免疫量を投与し得る。追加免疫は再接種を目的とするものであり得る。様々な実施形態では、ワクチンは、少なくとも1回、2回、3回またはそれ以上投与される。本発明のワクチンは、連鎖球菌細菌の特定の標的株(複数可)に対して血清陰性者である無感作レシピエントに投与される。あるいは、ワクチンは、連鎖球菌細菌の特定の標的株(複数可)に対して血清陽性者である、初回刺激済みのレシピエントに投与され得る。
【実施例0232】
本発明は、特定の実施例(複数可)を参照しながら説明されるが、これらの実施例は決して限定的なものではないと解釈されるべきである。
【0233】
実施例1:psaC遺伝子の欠失を有するStreptococcus pneumoniae GPN-001菌株の生成
【0234】
Streptococcus pneumoniae GPN-001株は、Rx1株の派生株であり、細菌の外側莢膜を欠き、オートリシンA遺伝子lytAの欠失を有し、天然ニューモリシン遺伝子plyをトキソイド型(PdT)をコードする遺伝子で置き換える(GPN-001と名付けた)。マンガン取り込みATP結合カセットトランスポーターの溶質結合成分をコードする遺伝子の欠失を有するGPN-001の派生株であるpsaAをGPN-002と名付けた。
【0235】
マンガン取り込みATP結合カセットトランスポーターのパーミアーゼタンパク質をコードする遺伝子の欠失を有する菌株、psaCが生成された。欠失前のpsaC遺伝子のDNA配列(隣接領域を含む)は、配列番号1に示されている。エリスロマイシン耐性カセットは、図1のフローチャートに示すように、オーバーラップエクステンションPCRおよび形質転換の従来の方法によってこの領域に組み込まれた。菌株の選択は、エリスロマイシン耐性表現型の獲得に基づいていた。この菌株は、S.pneumoniae GPN-001 Δpsa::eryと名付けた。psaC遺伝子の欠失は、上流および下流の隣接領域のオーバーラップエクステンションPCRによって生成されたDNA融合構築物(配列番号2)でこの菌株を形質転換することによって生成された。エリスロマイシンの存在下で培養し、続いてアンピシリン処理することにより、欠失株の濃縮を達成した。取り込みの成功は、抗生物質および非補充血液寒天プレートでのパッチテストによる抗生物質耐性プロファイルの評価、PCR、およびアガロースゲル電気泳動によるサイズ分析によって決定された。得られた菌株、S.pneumoniae GPN-001 ΔpsaCは、その中で取り込み系のトランスポーターパーミアーゼタンパク質成分の変異によってマンガンの獲得が損なわれており、GPN-001 ΔpsaCと名付けた。
【0236】
実施例2:細胞のマンガン存在量に対する増殖中の様々なマンガン調節変異および処置の影響の評価。
【0237】
マンガン取り込み系の構成成分の変異、亜鉛またはEDTAによる処理、または増殖培地からのマンガンの脱落が細胞のマンガン存在量に影響を与えるかどうかを評価するために実験を実行した。GPN-001、GPN-002およびGPN-001 ΔpsaC菌株を、(2.14μM硫酸マンガンを含むsoytone培地から構成される)標準培地で同等の光学密度(約1.7のOD600)まで増殖させた。GPN-001菌株は、600μMの硫酸マンガン(+Zn)もしくは500μMのEDTA(+EDTA)のいずれかを補充された標準培地で、または2.14μMの硫酸マンガンが省かれた(Mnなし)標準培地で同等の光学密度(約1.7のOD600)まで増殖させた。細胞を、5mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を補充した20mlの氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、20mlの氷冷PBSで2回洗浄した。細胞材料を96℃で乾燥させ、材料の乾燥重量を測定した。乾燥した細胞材料を1mlの35%HNOで処理し、96℃で1時間加熱し、milliQ水で1:10に希釈し、Agilent 8900 ICP-QQQ(Adelaide Microscopy)での誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によってマンガンの存在量を分析した。
【0238】
マンガンの濃度を、既知の濃度(High-Purity Standards,US)の検量線と内部インジウム対照を使用したカウント毎秒(CPS)測定に基づいてICP-MSによって決定した。10億分率(ppb)での濃度は、CPSデータから導き出され、細胞材料に対するマンガンの濃度を計算した(図2)。データは、3回の独立した増殖実験からの細胞材料のグラム(g)あたりのマイクログラム(μg)で表される平均(±SEM)マンガン濃度である。
【0239】
マンガンの存在量の比較は、GPN-002、GPN-001 ΔpsaC、GPN-001+ZnおよびGPN-001+EDTAは、GPN-001と比較して細胞内マンガンの蓄積が約75%少ないことを示した。増殖培地からマンガンを省いたGPN-001の増殖は、標準培地で増殖したGPN-001と比較して総細胞マンガンの約25%の減少を示した。
【0240】
実施例3:マンガン応答性遺伝子prtAの転写に対する増殖中の様々なマンガン調節変異および処置の影響の評価。
【0241】
定量的逆転写PCR(qRT-PCR)を実行して、psaAもしくはpsaCの変異、または亜鉛、EDTAを含むsoytone培地、またはマンガンを省いたsoytone培地での増殖がマンガン応答性遺伝子prtAの発現の変化を誘導したかどうかを評価した。
【0242】
GPN-001、GPN-002およびGPN-001 ΔpsaC菌株を、(2.14μM硫酸マンガンを含むsoytone培地から構成される)標準培地で同等の光学密度(約0.6のOD600)まで増殖させた。GPN-001菌株は、600μMの硫酸マンガン(+Zn)もしくは500μMのEDTA(+EDTA)のいずれかを補充された標準培地で、または2.14μMの硫酸マンガンが省かれた(Mnなし)標準培地で同等の光学密度(約0.6のOD600)まで増殖させた。培養試料を直ちにRNAProtect Bacteria Reagent(Qiagen)に移し、室温で5分間インキュベートした。細胞材料を遠心分離し、上清を除去し、ペレットを-80℃で保存した。細胞をリゾチームおよびムタノリシンで酵素的に溶解し、RNeasy Mini Kit(Qiagen)と共にオンカラムDNase I処理(Qiagen)を製造元の指示に従って使用して、RNAを抽出した。PHERAStar Omega(BMG
Labtech)上のLVisプレートを使用して総RNAを定量し、20ng/μlに希釈した。qRT-PCRは、SuperScript III One-Step RT-PCR kit(Invitrogen)キットおよびQuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Thermofisher
Scientific)を使用して実行した。prtAの約150bpの配列を増幅するためのプライマーは、UGENEエクステンションPrimer3(prtA_F 5’-AAGAAAAGCAGGCATTCCAA-3’-配列番号:3、およびprtA_R 5’-GCAGAAGCGACCGCTATCGC-3’-配列番号4)を使用して設計した。遺伝子転写のレベルは、プライマーgyrA_F 5’-ACTGGTATCGCGGTTGGGAT-3’-配列番号5)およびgyrA_R 5’-ACCTGATTTCCCCATGACAA-3’-配列番号6)を使用してジャイレースA遺伝子(gyrA)に対して正規化した。データは、gyrAと比較した平均転写として表される(図3)。
【0243】
マンガン応答性遺伝子prtAの発現の比較は、標準培地で増殖させたGPN-001と比較して、GPN-002、GPN-001 ΔpsaC、GPN-001+Zn、GPN-001+EDTAおよびMnを含まないGPN-001でより高い発現を示した。
【0244】
実施例4:Toll様受容体2(TLR2)の活性化に対する増殖中の様々なマンガン調節変異および処置の影響の評価。
【0245】
連鎖球菌細菌が先天性受容体TLR2を活性化する能力に対する細胞内マンガン制限の影響を、インビトロ刺激アッセイを使用して試験した。
【0246】
GPN-001、GPN-002およびGPN-001 ΔpsaC菌株を、(2.14μM硫酸マンガンを含むsoytone培地から構成される)標準培地で同等の光学密度(約1.7のOD600)まで増殖させた。GPN-001菌株は、600μMの硫酸マンガン(+Zn)もしくは500μMのEDTA(+EDTA)のいずれかを補充された標準培地で、または2.14μMの硫酸マンガンが省かれた(Mnなし)標準培地で同等の光学密度(約1.7のOD600)まで増殖させた。細胞を洗浄し、氷冷したPBS-13%グリセロールに再懸濁し、すぐに-80℃で凍結した。
【0247】
総タンパク質濃度はBio-Rad DC Protein Assayで測定し、10μg/mlを使用してヒトTLR2を安定して発現するHEK-blueレポーターH
EK-293細胞を刺激した(図4)。0.0625μg/mlの細菌リポタンパク質Pam3CSK4の濃度を、TLR2刺激の陽性対照として使用した(データは図示せず)。655nmでのブランク補正吸光度(OD655)を、n=2の技術的反復実験から16時間で測定した。データは、GPN-001菌株に対するTLR2刺激の平均パーセンテージ(±SEM)として表される。点線は、陰性対照(PBS+13%グリセロール)で観察された平均応答を示している。
【0248】
GPN-002、GPN-001 ΔpsaC、GPN-001+Zn、GPN-001+EDTAおよびMnを含まないGPN-001で刺激されたHEK-blue TLR2細胞は、標準培地条件下で増殖したGPN-001と比較して高いTLR2刺激を示した。これらのデータは、マンガン取り込みにおける混乱が、インビトロでのTLR2シグナル伝達の増強をもたらしたことを示唆している。
【0249】
実施例5:Toll様受容体(TLR)シグナル伝達に対するマンガン制限の影響。
[9先天性受容体TLR2を活性化するための生きているならびに照射されたGPN-001およびGPN-002の効果を、インビトロ刺激アッセイを使用して試験した。GPN-001およびGPN-002をTHYブロス中で同等の光学密度まで増殖させた後、洗浄してPBS+13%グリセロール中に再懸濁し、すぐに-80℃で凍結し、次いで、16kGyのガンマ線照射で不活化した。不活化プロセスの間、試料はドライアイス上で凍結されたままであった。次に、GPN-001およびGPN-002の処理済み試料(「ガンマ」と表示)、および未処理の対照(「live」と表示)を使用して、ヒトTLR2またはヒトTLR4を安定して発現するHEK-293細胞を刺激した。熱死滅させたEscherichia coli、熱死滅させたS.pneumoniae菌株D39(血清型2)、およびRx1(無莢膜型D39派生株)を陽性対照として含めた。すべての細菌調製物を、10μg総タンパク質/mL(BCAタンパク質アッセイにより決定された)で全細胞肺炎球菌としてHEK-293細胞に添加した。次いで、抗原との24時間のインキュベーション後の培養上清中のヒトIL-8(pg/mL)の産生を、ELISAによって決定した(図5)。
【0250】
データは、平均IL-8pg/mL±S.D.(n=抗原あたり6つの個別の上清試料)として表し、二元配置分散分析(*P<0.05、**P<0.01)<0.01)によって分析した。点線は、抗原の非存在下でのIL-8産生を示し、データは2つの独立した実験から収集した。
【0251】
マンガンの制限はTLR4シグナル伝達に影響を与えなかったが(下の図5(B))、TLR2シグナル伝達の明確な増強と関連していた(上の図5(A))。生きているおよび照射されたGPN-002が同等のTLR活性化を誘導したため、自然のシグナル伝達は照射処理後に低下しなかった。したがって、GPN-002はインビトロでTLR2シグナル伝達の増強を誘導することが示された。
【0252】
実施例6:GPN-001およびGPN-002でワクチン接種されたマウスからの血清を使用した肺炎球菌の溶解物に対する抗体反応性の分析。
【0253】
GPN-001(マンガンが豊富)およびGPN-002(マンガンが枯渇)からマウスで生じた血清の抗体プロファイルを評価した。抗体反応性プロファイルに対するマンガン制限の影響を評価するために、マウスにワクチンを接種し、得られた免疫血清を使用して、様々な連鎖球菌細菌溶解物のウエスタンブロットを調べた。GPN-001およびGPN-002ワクチンの試料ならびに莢膜型肺炎球菌分離株(血清型2菌株D39および血清型6A菌株P9)の試料を超音波処理により溶解し、SDS-PAGEを行うために、溶解物の総タンパク質20μg(BCAタンパク質アッセイにより測定)をウェル毎に
二通りで充填した。分離されたタンパク質をニトロセルロース膜に移し、GPN-001またはGPN-002を鼻腔内にワクチン接種した非近交系スイスマウスからのプールされた免疫血清でプローブした(n=ワクチン群あたり10匹の個々のマウス)。免疫化のために、マウスに、2週間間隔で投与された2用量のGPN-001またはGPN-002(21.25μgの総タンパク質/用量)をワクチン接種した。2回目の免疫化の2週間後、すべての動物から血清を採取した。
【0254】
GPN-001またはGPN-002に対するプールされた免疫血清で膜をプローブした後、IRDye 800CWヤギ抗マウスIgGコンジュゲートを使用して結合した一次IgGを検出し、LI-COR Odysseyイメージングシステムを使用して蛍光を可視化した(図6)。Novex Sharp Pre-Stained Protein Standardを、サイズ比較のためにすべてのゲル上で移動させた。データは2つの独立した実験を代表するものである。
【0255】
抗体反応性の直接比較は、GPN-002誘導抗体(下の画像(B))がGPN-001誘導抗体(上の画像(A))よりも細胞溶解物に存在する多数の肺炎球菌タンパク質に結合できることを示した。
【0256】
実施例7:Streptococcus pneumoniae血清型2(D39菌株)による同種チャレンジおよびStreptococcus pneumoniae血清型6A(P9菌株)による異種チャレンジ後のGPN-002でワクチン接種されたマウスにおける免疫。
【0257】
マンガン制限GPN-002が同型血清型2(D39菌株)および異種血清型6A(P9菌株)に対する防御を付与することができるかどうかを決定するために、マウスに、2週間間隔で投与された2用量のGPN-001またはGPN-002(21.25μgの総タンパク質/用量)を鼻腔内ワクチン接種した。対照マウスは、鼻腔内PBSモックワクチン接種を受けた。2回目のワクチン接種から2週間後、マウスに10CFU/マウスの血清型2(同種、D39菌株)または10CFU/マウスの血清型6A(異種、P9菌株)を鼻腔内投与した。臨床症状の発症および全生存について、すべてのマウスを3週間監視した。図7のデータポイントは、各マウスの生存期間を示し(n=群あたり10~11)、横棒は各群の生存期間の中央値を示す。生存時間の差異は、マン・ホイットニーのU検定によって分析された(*P<0.05)。
【0258】
GPN-002は、Streptococcus pneumoniae D39(パネルA)およびStreptococcus pneumoniae 6A(パネルB)による致死的チャレンジに対して有意な防御を提供することができ、PBSモック対照動物と比較して生存期間中央値に有意差が示された。さらに、GPN-002は、GPN-001よりも肺炎球菌チャレンジに対してより良好な防御を提供した。
【0259】
実施例8:GPN-002で筋肉内ワクチン接種されたウサギにおけるS.pneumoniae特異的血清抗体応答の誘導。
【0260】
GPN-002がウサギの血清抗体反応を誘導できるかどうかを判断するために、免疫実験を実施した。
【0261】
非近交系ウサギに、GPN-002(ウサギあたり0.5mLのPBS中の総タンパク質250μg)で、または市販のPrevnar13(PCV13)またはPneumovax23(PPSV23)(1人のヒト用量に相当する、ウサギあたり0.5mL)で、筋肉内(I.M.)ワクチン接種した。ウサギは、GPN-002またはPCV13の
いずれかを3週間間隔で3回予防接種するか、ヒトのワクチン接種スケジュールを模倣するためにPPSV23のみを単回投与した。免疫化の前にすべてのウサギから血清を採取し(「予出血」と表示)、および最終免疫化の3週間後に、すべてのウサギから血清を採取した。個々の血清試料は、捕捉抗原として未照射のGPN-002を使用して、直接ELISAによって総IgGについて試験した。図8は、個々のウサギの免疫前および3回目の免疫後のIgG力価(上のパネル(A))と、各ワクチン群内の平均IgG力価(±S.D.)(下のパネル(B))を示している。データは2つの独立した免疫化実験から集められる。
【0262】
ウサギのI.M.免疫化後にGPN-002に対して高力価の抗体反応が検出された。比較すると、PCV13およびPPSV23は、無莢膜型GPN-002抗原の表面に存在する肺炎球菌タンパク質に対して検出可能な抗体価を誘導しなかった。
【0263】
実施例9:莢膜型S.pneumoniae分離株に対するGPN-002誘導抗体の結合親和性。
【0264】
GPN-002特異的抗体(莢膜下肺炎球菌タンパク質を標的とする)が完全莢膜型肺炎球菌分離株にも結合できるかどうかを評価するために、フローサイトメトリー分析を実行した。
【0265】
この分析用の抗体を生成するために、非近交系ウサギに、GPN-002(ウサギあたり0.5mLのPBS中の総タンパク質250μg)で、または市販のPrevnar13(PCV13)またはPneumovax23(PPSV23)(1人のヒト用量に相当する、ウサギあたり0.5mL)で、I.M.免疫化した。ウサギは、GPN-002またはPCV13のいずれかを3週間間隔で3回予防接種するか、ヒトのワクチン接種スケジュールを模倣するためにPPSV23のみを単回投与した。免疫化の前にすべてのウサギから血清を採取し(予出血)、および最終免疫化の3週間後にも、すべてのウサギから血清を採取した。各ワクチン群内の免疫後の血清(n=群あたり2~4匹のウサギ)と同様に、予出血の血清をプールした(n=合計8匹のウサギ)。プールされた血清を、フローサイトメトリーを使用して、複数の莢膜型肺炎球菌株へのIgG結合について試験した。PCV13に含まれる血清型とPPSV23に含まれる血清型(血清型14)を、これらがPPSV23特異的血清型(血清型2および血清型22F)であるため試験し、PCV13またはPPSV23のどちらにも含まれない固有の血清型(血清型35B)を試験した。
【0266】
簡単に説明すると、各肺炎球菌血清型の1×10CFUを、PBS-BSAで1:200に希釈したプールされたウサギ血清とインキュベートした。細菌細胞をペレット化し、2回洗浄した後、肺炎球菌表面に結合した一次IgGを抗ウサギIgG二次抗体(FITC結合)で検出した。図9のヒストグラムは、各ワクチン群のプールされたウサギ血清と各血清型をインキュベートした後、フローサイトメトリーによって検出された相対蛍光を示している。ここで、より高い蛍光は、S.pneumoniae表面へのより多くのIgG結合を示している。
【0267】
結果は、莢膜の存在下でさえ、GPN-002誘導抗体が高い親和性で複数の肺炎球菌血清型に結合できることを示している、さらに、GPN-002特異的抗体で検出された結合のレベルは、試験したすべての血清型について、PCV13およびPPSV23で誘導された抗体で検出されたものよりも高かった。
【0268】
実施例10:莢膜型S.pneumoniae分離株のオプソニン食作用による死滅を媒介する際のGPN-002誘導抗体機能性の分析。
【0269】
肺炎球菌感染症に対する宿主の防御は、主にオプソニン依存性の食作用によって媒介される。したがって、肺炎球菌特異的抗体のオプソニン食作用性殺傷活性(OPKA)は、機能的抗体活性の重要なインビトロ測定値とみなされる。ウサギにGPN-002をワクチン接種した後、OPKA力価を測定し、市販のPCV13およびPPSV23で達成された力価と比較した。
【0270】
ウサギに、GPN-002(ウサギあたり0.5mL中の総タンパク質250μg)で、または市販のPrevnar13(PCV13)またはPneumovax23(PPSV23)(1人のヒト用量に相当する、ウサギあたり0.5mL)で、I.M.ワクチン接種した。ウサギは、GPN-002またはPCV13のいずれかを3週間間隔で3回予防接種するか、ヒトのワクチン接種スケジュールを模倣するためにPPSV23のみを単回投与した。免疫化の前にすべてのウサギから血清を採取し(予出血)、および最終免疫化の3週間後に、すべてのウサギから血清を採取した。Nahmらによって確立されたオプソニン食作用性殺傷アッセイプロトコル(https://www.vaccine.uab.edu/UAB-MOPA.pdf)を使用して、肺炎球菌血清型のパネルに対して個々の血清試料のOPKAを試験した。
【0271】
表1および2は、莢膜型S.pneumoniae血清型のパネルの平均OPKA力価を示している。投入CFUの力価は、50%以上の死滅をもたらすウサギ血清の最高3倍段階希釈として決定された。ニート血清で死滅が検出されなかった場合(他のアッセイ成分と混合した場合は1:4希釈)、これは、≦4の力価として表示される。データは、2つの独立した免疫化およびOPKAスクリーニング実験から提示される。
【0272】
結果は、GPN-002が、肺炎球菌血清型が含まれる多くのワクチンに対してPCV13およびPPSV23への同等のOPKA応答を誘導し、複数の肺炎球菌血清型が含まれていないワクチンに対して優れた応答を誘導することを示している。
【0273】
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】
【0274】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】
【0275】
実施例11:GPN-002によるTLR2の活性化に関する様々な不活性化方法の分析
TLR2刺激に対する細菌不活化の様々な方法の影響を評価した。GPN-002を、2.14μMのマンガンを補充したsoytone培地中で、約1.7のOD600まで増殖させて、洗浄し、氷冷したPBS-13%グリセロール中に再懸濁し、直ちに-80℃で凍結した。材料は、ガンマ線照射(16kGy、ドライアイス)、ホルマリン(2%、5分)、または熱(70℃、10分)によって不活化された。すべての試料を洗浄し、氷冷PBS中に再懸濁した。
【0276】
次に、先天性受容体TLR2を活性化する能力を、インビトロ刺激アッセイを使用して試験した。総タンパク質濃度はBio-Rad DC Protein Assayで測定し、10μg/mlを使用してヒトTLR2を安定して発現するHEK-blueレポーターHEK-293細胞を刺激した(図10)。655nmでのブランク補正吸光度(OD655)を、n=3の技術的反復実験から16時間で測定した。データは、生GPN-002菌株に対するTLR2刺激の平均パーセンテージ(±SEM)として表される。
【0277】
これらのデータは、ガンマ線、ホルマリン、または熱による不活化によって死滅させた連鎖球菌がそれぞれTLR2を活性化する能力を呈したことを示している。
【0278】
実施例12:増殖中の様々なマンガン調節変異および処置が免疫応答および防御効力に及ぼす影響の評価
実施例12は仮想例である。
【0279】
増殖中の追加のマンガン調節変異および処置が免疫応答および防御効力に及ぼす影響を試験するために、GPN-001、GPN-002およびGPN-001 ΔpsaC菌株を、標準培地(例えば、2.14μMの硫酸マンガンを含むsoytone培地)中で、同等の光学密度(例えば、約1.7のOD600)まで増殖させることができる。さらに、GPN-001菌株は、600μMの硫酸マンガン(+Zn)もしくは500μMのEDTA(+EDTA)のいずれかを補充された標準培地で、または硫酸マンガンが省かれた(すなわち、Mnなし)標準培地で同等の光学密度(約1.7のOD600)まで増殖させることができる。細胞を洗浄し、氷冷したPBS-13%グリセロールに再懸濁し、すぐに凍結することができる(例えば、-80℃で)。弱毒化または不活化生ワクチンを対象(例えば、マウスまたはウサギ)に投与し、免疫応答および防御効力を評価することができる。
【0280】
例えば:
抗体応答は、上記の実施例6に記載された方法論に従って評価することができる。GPN-002およびGPN-001 ΔpsaC菌株によるワクチン接種は、GPN-001と比較してより広範囲の肺炎球菌タンパク質に対する抗体の産生をもたらすことが想定されている。
【0281】
防御免疫は、上記の実施例7の方法を使用して評価され得る。GPN-002およびGPN-001 ΔpsaC菌株によるワクチン接種は、GPN-001よりも生きている肺炎球菌細菌によるチャレンジに対して優れた防御を提供することが期待される。
【0282】
S.pneumoniae特異的血清抗体応答の誘導は、上記の実施例8に記載された方法を使用して評価することができる。GPN-002およびGPN-001 ΔpsaC菌株によって誘導される抗体は、複数の肺炎球菌血清型に結合できると予想される。
【0283】
GPN-002またはGPN-001 ΔpsaC菌株による免疫化から生じる肺炎球菌タンパク質に対する抗体力価は、上記の実施例9に記載された方法論に従って評価することができる。GPN-002またはGPN-001 ΔpsaC菌株によるワクチン接種は、現在使用されている肺炎球菌ワクチンと比較して、より高い肺炎球菌特異的IgG応答を提供すると予想される。
【0284】
莢膜型S.pneumoniae分離株のオプソニン食作用による死滅を媒介する際の抗体機能性は、上記の実施例10に記載された方法を使用して評価することができる。GPN-002またはGPN-001 ΔpsaC菌株が、肺炎球菌血清型が含まれる多くのワクチンに対してPCV13およびPPSV23への同等のOPKA応答を誘導し、複数の肺炎球菌血清型が含まれていないワクチンに対して優れた応答を誘導することが期待される。
【0285】
実施例13:マンガン含有量、遺伝子発現、TLR2刺激、免疫応答および防御効力に対する、mntE、mgtAまたはpsaR遺伝子を過剰発現する、または金属イオノフォアの存在下で増殖させたワクチン株の影響の評価
実施例13は、仮想例である。
【0286】
mntE、mgtAまたはpsaR遺伝子を過剰発現する菌株は、S.pneumoniae GPN-001菌株で構築することができる。過剰発現菌株は、構成的プロモー
ターの制御下で、mntE、mgtAまたはpsaR遺伝子のタグ付きコピーを導入するプラスミドによる形質転換によって構築することができる。次いで、得られた菌株、GPN-001 mntE+、GPN-001 mgtA、およびGPN-001 psaRを、マンガン含有量、遺伝子発現、TLR2刺激、免疫応答、および防御効力について評価することができる。
【0287】
例えば:
GPN-001 mntE+、GPN-001 mgtA、およびGPN-001 psaRは、上記の実施例2に示した方法を使用して、マンガン応答性遺伝子prtAの発現について評価することができる。これらの菌株は、標準培地で増殖させたGPN-001と比較してより高い発現を呈することが期待される。
【0288】
GPN-001 mntE+、GPN-001 mgtA、およびGPN-001 psaRは、上記の実施例3に記載されている指示を使用してマンガン含有量について評価することができる。これらの菌株は、GPN-001と比較してマンガンの蓄積が大幅に少ないことが想定される。
【0289】
連鎖球菌細菌が先天性受容体TLR2を活性化する能力に対するGPN-001 mntE+、GPN-001 mgtA、またはGPN-001 psaRの影響は、例えば、上記の実施例4に記載のインビトロ刺激アッセイを使用して試験することができる。これらの菌株で刺激されたTLR2細胞は、標準的培地条件下で増殖させたGPN-001と比較してより高いTLR2刺激を示すと予想される。
【0290】
GPN-001 mntE+、GPN-001 mgtA、およびGPN-001 psaRから生じる免疫応答は、例えば、上記の実施例6~11のいずれか1つ以上に記載されている方法を含む、任意の好適な手段によって評価することができる。GPN-001 mntE+、GPN-001 mgtA、およびGPN-001 psaRは、以下のいずれか1つ以上を示すことが想定されている:GPN-001と比較してより広範囲の肺炎球菌タンパク質に対する抗体産生;GPN-001よりも生きている肺炎球菌細菌によるチャレンジに対する優れた防御;複数の肺炎球菌血清型に結合できる抗体の産生;現在使用されている肺炎球菌ワクチンと比較して、より高い肺炎球菌特異的IgG応答;多くの肺炎球菌血清型が含まれるワクチンに対するPCV13およびPPSV23への同等のOPKA応答、ならびに複数の肺炎球菌血清型が含まれないワクチンに対する優れた応答:および/またはTLR2の活性化。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【外国語明細書】