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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179272
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20221125BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221125BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221125BHJP
   H01R 13/6592 20110101ALI20221125BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H01B7/00 301
B60R16/02 620A
H01R13/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141491
(22)【出願日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021085917
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田丸 宏樹
【テーマコード(参考)】
5E021
5E321
5G309
【Fターム(参考)】
5E021FB07
5E021FC19
5E021LA10
5E021LA15
5E021LA21
5E321AA14
5E321AA23
5E321BB21
5E321BB44
5E321CC16
5E321GG09
5G309AA01
5G309AA09
(57)【要約】
【課題】電磁シールド機能の低下を抑制できるワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス10は、電線20と、電線20の外周を囲う電磁シールド部材30とを有する。電磁シールド部材30は、電線20の長さ方向に沿って延びる第1方向X1と第1方向X1と直交する第2方向Y1とに広がるシート状の金属層35を有する。金属層35は、第1方向X1に伸縮可能な折り曲げ部40を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の外周を囲う電磁シールド部材と、を有するワイヤハーネスであって、
前記電磁シールド部材は、前記電線の長さ方向に沿って延びる第1方向と前記第1方向と直交する第2方向とに広がるシート状の金属層を有し、
前記金属層は、前記第1方向に伸縮可能な折り曲げ部を有するワイヤハーネス。
【請求項2】
前記折り曲げ部は、前記第2方向に沿って延びる山部と前記第2方向に沿って延びる谷部とが前記第1方向に交互に連なって設けられる構造を有する請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電磁シールド部材は、前記金属層を厚み方向に貫通するスリット部を有し、
前記スリット部は、前記電磁シールド部材の前記第1方向において部分的に設けられる請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記電磁シールド部材は、前記第1方向と前記第2方向とに広がるシート状に形成されており、
前記電磁シールド部材は、前記第2方向における第1端部と、前記第1端部と前記第2方向において反対側に設けられる第2端部とを有しており、
前記電磁シールド部材は、前記第1端部に前記第2端部を重ね合わせることにより、前記電線の外周を包囲する筒状に形成されており、
前記電磁シールド部材のうち前記折り曲げ部が設けられる部分は、前記第2方向の全長にわたって前記スリット部が形成されていない第1部分を有する請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記谷部は、第1谷折り部と、前記第1谷折り部と前記第1方向において離れて設けられる第2谷折り部と、前記第1谷折り部と前記第2谷折り部との間に設けられる第1平面部とを有し、
前記スリット部は、前記山部と交差するように設けられており、
前記第1平面部は、前記第1部分を有する請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記山部は、第1山折り部と、前記第1山折り部と前記第1方向において離れて設けられる第2山折り部と、前記第1山折り部と前記第2山折り部との間に設けられる第2平面部と、前記谷部から前記第1山折り部に向かって前記電磁シールド部材の径方向外側に突出する第1突出部と、前記谷部から前記第2山折り部に向かって前記径方向外側に突出する第2突出部と、を有し、
前記第2平面部は、前記第1突出部と交差する平面上に広がるように形成される請求項5に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記電磁シールド部材は、前記第1方向と前記第2方向とに広がるシート状に形成されており、
前記電磁シールド部材は、前記第2方向における第1端部と、前記第1端部と前記第2方向において反対側に設けられる第2端部とを有しており、
前記電磁シールド部材は、前記第1端部に前記第2端部を重ね合わせることにより、前記電線の外周を包囲する筒状に形成されており、
前記電磁シールド部材のうち前記折り曲げ部が設けられる部分は、前記電磁シールド部材の前記第2方向において1つ以上の前記スリット部を有する請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記スリット部は、前記第1方向に沿って延びる請求項3から請求項7のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記スリット部の前記第1方向の端部は、円弧状に湾曲した形状に形成される請求項8に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記電線が内部に収容されるとともに、前記電磁シールド部材と電気的に接続される金属製の筒状部材を更に有し、
前記電磁シールド部材は、前記筒状部材から引き出された前記電線の外周を包囲しており、
前記電磁シールド部材は、前記第1方向における第3端部と、前記第3端部と前記第1方向において反対側に設けられた第4端部とを有しており、
前記第3端部は、前記筒状部材の外周面に接続される接続部分である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項11】
前記第3端部には、前記折り曲げ部が形成されてない請求項10に記載のワイヤハーネス。
【請求項12】
前記金属層は、前記電線に向く内周面と、前記内周面と反対側の外周面とを有し、
前記電磁シールド部材は、前記金属層の前記外周面に形成される第1樹脂層を有し、
前記第1樹脂層は、前記金属層よりも高い輻射率を有する請求項10又は請求項11に記載のワイヤハーネス。
【請求項13】
前記電磁シールド部材は、前記金属層の前記内周面に形成される第2樹脂層を有し、
前記第2樹脂層は、前記金属層よりも高い輻射率を有する請求項12に記載のワイヤハーネス。
【請求項14】
前記第1樹脂層は、前記金属層よりも低いヤング率を有し、
前記第2樹脂層は、前記金属層よりも低いヤング率を有する請求項13に記載のワイヤハーネス。
【請求項15】
前記第3端部における前記金属層の前記内周面は、前記第2樹脂層から露出されており、前記筒状部材の前記外周面に直接接触される請求項13又は請求項14に記載のワイヤハーネス。
【請求項16】
前記金属層が前記筒状部材に接触された状態で、前記電磁シールド部材を前記筒状部材に固定する固定部材を更に有する請求項10から請求項15のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項17】
前記金属層は、前記筒状部材と同種の金属により形成されており、
前記固定部材は、前記金属層及び前記筒状部材と同種の金属により形成される請求項16に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車等の車両に用いられるワイヤハーネスは、高電圧のバッテリとインバータなどの電気機器間を電気的に接続する電線を備えている。この種のワイヤハーネスにおいては、ノイズ対策を目的として、電線の外周が電磁シールド部材によって覆われている(例えば、特許文献1参照)。電磁シールド部材としては、編組線や金属箔などが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-076899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電磁シールド部材として金属箔を用いた場合には、電磁シールド部材として編組線を用いる場合に比べて、電磁シールド部材の軽量化を図ることができる。しかし、金属箔は、編組線に比べて柔軟性及び伸張性が低い。このため、電線を大きく曲げて配索する場合には、その電線の曲げに追従できずに金属箔が破れるおそれがある。金属箔が破れると、電磁シールド機能が低下するという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、電磁シールド機能の低下を抑制できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線の外周を囲う電磁シールド部材と、を有するワイヤハーネスであって、前記電磁シールド部材は、前記電線の長さ方向に沿って延びる第1方向と前記第1方向と直交する第2方向とに広がるシート状の金属層を有し、前記金属層は、前記第1方向に伸縮可能な折り曲げ部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワイヤハーネスによれば、電磁シールド機能の低下を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図3図3は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略横断面図である。
図4図4は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略平面図である。
図5図5は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
図6図6は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
図7図7は、第2実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図8図8は、第2実施形態のワイヤハーネスを示す概略平面図である。
図9図9は、第2実施形態のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
図10図10は、変更例の電磁シールド部材を示す概略平面図である。
図11図11は、変更例の電磁シールド部材を示す概略平面図である。
図12図12は、変更例の電磁シールド部材を示す概略平面図である。
図13図13は、変更例の電磁シールド部材を示す概略平面図である。
図14図14は、変更例のワイヤハーネスを示す概略横断面図である。
図15図15は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線の外周を囲う電磁シールド部材と、を有するワイヤハーネスであって、前記電磁シールド部材は、前記電線の長さ方向に沿って延びる第1方向と前記第1方向と直交する第2方向とに広がるシート状の金属層を有し、前記金属層は、前記第1方向に伸縮可能な折り曲げ部を有する。
【0010】
この構成によれば、シート状の金属層に、電線の長さ方向に沿う第1方向に伸縮可能な折り曲げ部が設けられる。この折り曲げ部が第1方向に伸縮することにより、電線の曲げに金属層を好適に追従させることができ、金属層が破れることを好適に抑制できる。例えば、電線を大きく曲げて配索する場合には、電線の曲げに追従して金属層が曲がる。このとき、曲げ外側における折り曲げ部が第1方向に伸びるとともに、曲げ内側における折り曲げ部が第1方向に縮むことにより、曲げ部分における金属層の内外周差を好適に吸収できる。これにより、金属層が破れることを好適に抑制できる。このため、電磁シールド部材における電磁シールド機能が低下することを好適に抑制できる。
【0011】
[2]前記折り曲げ部は、前記第2方向に沿って延びる山部と前記第2方向に沿って延びる谷部とが前記第1方向に交互に連なって設けられる構造を有することが好ましい。この構成によれば、第2方向に沿って延びる山部及び谷部が第1方向に伸縮することにより、曲げ部分における金属層の内外周差を好適に吸収できる。これにより、金属層が破れることを好適に抑制できるため、電磁シールド部材における電磁シールド機能が低下することを好適に抑制できる。
【0012】
[3]前記電磁シールド部材は、前記金属層を厚み方向に貫通するスリット部を有し、前記スリット部は、前記電磁シールド部材の前記第1方向において部分的に設けられることが好ましい。この構成によれば、金属層を厚み方向に貫通するスリット部が、電磁シールド部材の第1方向に部分的に設けられる。このため、第2方向に延びる山部及び谷部と交差する位置にスリット部が設けられる。これにより、例えば電線の外周を包囲するように電磁シールド部材を第2方向に巻く際に、第2方向に延びる山部及び谷部をスリット部により分断することができる。この結果、電磁シールド部材を第2方向に巻く際における電磁シールド部材の巻き付け性を好適に向上できる。
【0013】
[4]前記電磁シールド部材は、前記第1方向と前記第2方向とに広がるシート状に形成されており、前記電磁シールド部材は、前記第2方向における第1端部と、前記第1端部と前記第2方向において反対側に設けられる第2端部とを有しており、前記電磁シールド部材は、前記第1端部に前記第2端部を重ね合わせることにより、前記電線の外周を包囲する筒状に形成されており、前記電磁シールド部材のうち前記折り曲げ部が設けられる部分は、前記第2方向の全長にわたって前記スリット部が形成されていない第1部分を有することが好ましい。この構成によれば、シート状の電磁シールド部材の第1端部に第2端部を重ね合わせることにより、電磁シールド部材が、電線の外周を包囲する筒状をなすように形成される。すなわち、シート状の電磁シールド部材を第2方向に巻くことにより、電磁シールド部材が筒状に形成される。このとき、電磁シールド部材のうち折り曲げ部が設けられる部分には、第2方向の全長にわたってスリット部が形成されていない第1部分が設けられる。この第1部分では、第2方向の全長にわたってスリット部が形成されていないため、第2方向における剛性を高めることができる。したがって、第2方向からの外力が第1部分に加わった場合であっても、その外力によって第1部分が変形することを抑制できる。これにより、例えば電磁シールド部材の筒状態を好適に維持することができる。
【0014】
[5]前記谷部は、第1谷折り部と、前記第1谷折り部と前記第1方向において離れて設けられる第2谷折り部と、前記第1谷折り部と前記第2谷折り部との間に設けられる第1平面部とを有し、前記スリット部は、前記山部と交差するように設けられており、前記第1平面部は、前記第1部分を有することが好ましい。この構成によれば、スリット部が山部と交差するように設けられる。このため、シート状の電磁シールド部材を第2方向に巻く際に、山部をスリット部により好適に分断することができ、電磁シールド部材の巻き付け性を向上できる。また、谷部は、第1谷折り部及び第2谷折り部と、それら第1谷折り部と第2谷折り部との間に設けられる第1平面部とを有する。このため、谷部とその谷部と隣接する一方の山部とが第1谷折り部により区切られ、谷部とその谷部と隣接する他方の山部とが第2谷折り部により区切られる。このように、第1谷折り部及び第2谷折り部によって谷部と山部とを区切ることができる。このとき、山部は、第1谷折り部及び第2谷折り部から筒状の電磁シールド部材の径方向外側に突出するように形成される。このため、例えば山部の第1方向に沿う寸法を調整することによって、第1谷折り部及び第2谷折り部からの山部の突出量を調整することができ、折り曲げ部における第1方向の伸縮量を調整することができる。ここで、第1谷折り部及び第2谷折り部によって谷部と山部とが区切られるため、谷部及び山部の寸法を個別に設定することができる。したがって、山部の第1方向に沿う寸法を容易に調整することができるため、折り曲げ部における第1方向の伸縮量を容易に大きくすることができる。これにより、電線の曲げに金属層を好適に追従させることができ、金属層が破れることを好適に抑制できる。さらに、谷部の第1平面部が、第2方向の全長にわたってスリット部が形成されていない第1部分を有する。このため、例えば電線の外周面に第1平面部が接触される場合に、その第1平面部と電線の外周面との接触面積が小さくなることを抑制できる。
【0015】
[6]前記山部は、第1山折り部と、前記第1山折り部と前記第1方向において離れて設けられる第2山折り部と、前記第1山折り部と前記第2山折り部との間に設けられる第2平面部と、前記谷部から前記第1山折り部に向かって前記電磁シールド部材の径方向外側に突出する第1突出部と、前記谷部から前記第2山折り部に向かって前記径方向外側に突出する第2突出部と、を有し、前記第2平面部は、前記第1突出部と交差する平面上に広がるように形成されることが好ましい。この構成によれば、山部が、電磁シールド部材の径方向外側に突出する第1突出部と交差する平面上に広がる第2平面部を有する。この第2平面部が設けられるため、山部の第1方向に沿う寸法を長く設定した場合であっても、谷部から電磁シールド部材の径方向外側に突出する山部の突出量が大きくなることを抑制できる。このため、折り曲げ部における第1方向の伸縮量を大きく設定した場合であっても、筒状の電磁シールド部材の外形が大きくなることを抑制できる。
【0016】
[7]前記電磁シールド部材は、前記第1方向と前記第2方向とに広がるシート状に形成されており、前記電磁シールド部材は、前記第2方向における第1端部と、前記第1端部と前記第2方向において反対側に設けられる第2端部とを有しており、前記電磁シールド部材は、前記第1端部に前記第2端部を重ね合わせることにより、前記電線の外周を包囲する筒状に形成されており、前記電磁シールド部材のうち前記折り曲げ部が設けられる部分は、前記電磁シールド部材の前記第2方向において1つ以上の前記スリット部を有することが好ましい。この構成によれば、シート状の電磁シールド部材の第1端部に第2端部を重ね合わせることにより、電磁シールド部材が、電線の外周を包囲する筒状をなすように形成される。すなわち、シート状の電磁シールド部材を第2方向に巻くことにより、電磁シールド部材が筒状に形成される。このとき、電磁シールド部材のうち折り曲げ部が設けられる部分では、電磁シールド部材の巻き方向である第2方向において1つ以上のスリット部が設けられる。すなわち、電磁シールド部材のうち折り曲げ部が設けられる部分では、電磁シールド部材の巻き方向に必ず1つ以上のスリット部が存在する。このため、シート状の電磁シールド部材を第2方向に巻く際に、山部及び谷部をスリット部により好適に分断することができ、電磁シールド部材の巻き付け性を好適に向上できる。
【0017】
また、シート状の電磁シールド部材を第2方向に巻くことにより、電磁シールド部材を電線の外周を包囲する筒状に形成できるため、電線に対して電磁シールド部材を後から容易に取り付けることができる。これにより、ワイヤハーネスの組立作業性を向上できる。
【0018】
[8]前記スリット部は、前記第1方向に沿って延びることが好ましい。この構成によれば、第2方向に延びる山部及び谷部と交差して延びるようにスリット部が形成される。このため、例えば電線の外周を包囲するように電磁シールド部材を第2方向に巻く際に、スリット部により山部及び谷部を好適に分断することができる。この結果、電磁シールド部材を第2方向に巻く際における電磁シールド部材の巻き付け性を好適に向上できる。
【0019】
[9]前記スリット部の前記第1方向の端部は、円弧状に湾曲した形状に形成されることが好ましい。この構成によれば、スリット部の第1方向の端部が円弧状に湾曲した形状に形成される。このため、例えば電磁シールド部材を第2方向に巻くことに伴ってスリット部の開口幅が第2方向に広がる場合に、スリット部の第1方向の端部において1か所に応力が集中することを抑制できる。これにより、スリット部が第1方向に沿って延びるように裂けることを好適に抑制できる。
【0020】
[10]前記電線が内部に収容されるとともに、前記電磁シールド部材と電気的に接続される金属製の筒状部材を更に有し、前記電磁シールド部材は、前記筒状部材から引き出された前記電線の外周を包囲しており、前記電磁シールド部材は、前記第1方向における第3端部と、前記第3端部と前記第1方向において反対側に設けられた第4端部とを有しており、前記第3端部は、前記筒状部材の外周面に接続される接続部分であることが好ましい。この構成によれば、電線の外周が筒状部材に包囲されるとともに、筒状部材から引き出された電線の外周が電磁シールド部材に包囲される。また、電磁シールド部材の第3端部が筒状部材と電気的に接続される。これら筒状部材及び電磁シールド部材により、例えば電線から発生する電磁波(電磁ノイズ)の外部への放射を好適に抑制できる。
【0021】
[11]前記第3端部には、前記折り曲げ部が形成されてないことが好ましい。この構成によれば、筒状部材と電磁シールド部材との接続部分である第3端部に、折り曲げ部が設けられていない。このため、第3端部に折り曲げ部を設ける場合に比べて、第3端部における電磁シールド部材の巻き付け性を向上でき、筒状部材と電磁シールド部材との接続信頼性を向上できる。
【0022】
[12]前記金属層は、前記電線に向く内周面と、前記内周面と反対側の外周面とを有し、前記電磁シールド部材は、前記金属層の前記外周面に形成される第1樹脂層を有し、前記第1樹脂層は、前記金属層よりも高い輻射率を有することが好ましい。この構成によれば、金属層の輻射率が低い場合であっても、その金属層の外周面が高い輻射率を有する第1樹脂層によって被覆される。このため、第1樹脂層を有さない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。これにより、電磁シールド部材における放熱性を向上させることができる。ひいては、ワイヤハーネスの放熱性を向上させることができる。
【0023】
[13]前記電磁シールド部材は、前記金属層の前記内周面に形成される第2樹脂層を有し、前記第2樹脂層は、前記金属層よりも高い輻射率を有することが好ましい。この構成によれば、金属層の輻射率が低い場合であっても、その金属層の内周面が高い輻射率を有する第2樹脂層によって被覆される。このため、第2樹脂層を有さない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。これにより、電磁シールド部材における放熱性を向上させることができ、ワイヤハーネスにおける放熱性を向上させることができる。
【0024】
[14]前記第1樹脂層は、前記金属層よりも低いヤング率を有し、前記第2樹脂層は、前記金属層よりも低いヤング率を有することが好ましい。この構成によれば、金属層の内周面及び外周面に、その金属層よりもヤング率の低い第1樹脂層及び第2樹脂層がそれぞれ形成される。このため、金属層のみの単層構造に比べて、電磁シールド部材の柔軟性及び伸張性を高めることができる。これにより、例えば電線の曲げ部において、その曲げ形状に電磁シールド部材が追従しやすくなり、金属層が破れることを好適に抑制できる。
【0025】
[15]前記第3端部における前記金属層の前記内周面は、前記第2樹脂層から露出されており、前記筒状部材の前記外周面に直接接触されることが好ましい。この構成によれば、電磁シールド部材のうち筒状部材の外周面に接続される第3端部では、第2樹脂層から露出された金属層の内周面が筒状部材の外周面に直接接触されている。このため、金属層の内周面に第2樹脂層を形成した場合であっても、金属層と筒状部材とを好適に電気的に接続することができる。
【0026】
[16]前記金属層が前記筒状部材に接触された状態で、前記電磁シールド部材を前記筒状部材に固定する固定部材を更に有することが好ましい。この構成によれば、金属層が筒状部材に接触された状態で、電磁シールド部材が固定部材によって筒状部材に固定される。これにより、電磁シールド部材と筒状部材との電気的導通を安定的に維持することができる。
【0027】
[17]前記金属層は、前記筒状部材と同種の金属により形成されており、前記固定部材は、前記金属層及び前記筒状部材と同種の金属により形成されることが好ましい。この構成によれば、電磁シールド部材の金属層と筒状部材と固定部材とが全て同種の金属によって形成される。このため、金属層と筒状部材との接続部分、及び電磁シールド部材と固定部材との接続部分に水が付着した場合であっても、各部材間での電食の発生を抑制できる。これにより、金属層と筒状部材との間における電気的接続信頼性が低下することを抑制できる。また、金属層と筒状部材との接続部分の構造を、その接続部分を覆うゴム製の防水カバー等を設けない非防水構造とすることもできる。ここで、本明細書において、同種の金属とは、イオン化傾向が実質的に同じ金属をいう。イオン化傾向が実質的に同じとは、イオン化傾向が同一である場合は勿論、異なる場合であってもイオン化傾向が近接しているために略同じとみなせる場合も含む。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本明細書における「直交」や「平行」は、厳密に直交や平行の場合のみでなく、各実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね直交や平行の場合も含まれる。また、本明細書において、「沿って」と記載する場合には、基準となる方向と、対象の延びる方向とのなす角度が10度以下であることが好ましい。この場合に、基準となる方向と対象の延びる方向とのなす角度は、5度以下であることがより好ましく、1度以下であることがさらに好ましく、0度つまり平行であることが最も好ましい。
【0029】
(第1実施形態)
以下、ワイヤハーネスの第1実施形態について、図面に従って説明する。
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器11,12を電気的に接続する。電気機器11,12は、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vに設置されている。電気機器11,12としては、例えば、バッテリ、インバータ、モータ、エアーコンディショナー装置、ウィンカー装置、エアバッグ装置等を挙げることができる。
【0030】
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、1本又は複数本(本実施形態では2本)の電線20と、複数の電線20を電磁シールドする電磁シールド部材30と、各電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタ50,60とを有している。コネクタ50は、金属製の筒状部材51を有している。コネクタ60は、金属製の筒状部材61を有している。図1に示すように、ワイヤハーネス10は、複数の電線20の外周を包囲する外装部材80を有している。
【0031】
各電線20の長さ方向の一端部(ここでは、前端部)はコネクタ50を介して電気機器11と接続され、各電線20の長さ方向の他端部(ここでは、後端部)はコネクタ60を介して電気機器12と接続されている。各電線20は、例えば、2次元状又は3次元状に曲げられて形成されている。
【0032】
(電線20の構成)
図2及び図3に示すように、各電線20は、導電性を有する芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有している。各電線20は、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線である。各電線20は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。
【0033】
芯線21は、長尺状に形成されている。芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。また、芯線21としては、撚り線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線21の材料としては、例えば、純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料を用いることができる。
【0034】
芯線21の横断面形状、つまり芯線21の長さ方向と直交する平面によって芯線21を切断した断面形状は、任意の形状とすることができる。図3に示すように、本実施形態の芯線21の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0035】
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。絶縁被覆22は、例えば、芯線21に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0036】
図2に示すように、各電線20の前端部は、コネクタ50の筒状部材51に挿入されている。すなわち、筒状部材51の内部には、各電線20の前端部が収容されている。筒状部材51の内部には、電線20及び電磁シールド部材30のうち電線20のみが挿入されている。各電線20は、筒状部材51から引き出されている。電磁シールド部材30の前端部は、筒状部材51の外周を包囲するように形成されている。
【0037】
各電線20の後端部は、コネクタ60の筒状部材61に挿入されている。すなわち、筒状部材61の内部には、各電線20の後端部が収容されている。筒状部材61の内部には、電線20及び電磁シールド部材30のうち電線20のみが挿入されている。各電線20は、筒状部材61から引き出されている。電磁シールド部材30の後端部は、筒状部材61の外周を包囲するように形成されている。
【0038】
(電磁シールド部材30の構成)
電磁シールド部材30は、全体として長尺の筒状に形成されている。電磁シールド部材30は、筒状部材51,61から引き出された電線20の外周を包囲するように形成されている。すなわち、電磁シールド部材30は、筒状部材51,61から露出する電線20の外周を包囲するように形成されている。電磁シールド部材30は、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。
【0039】
図4及び図5に示すように、電磁シールド部材30は、可撓性を有するシート状に形成されている。電磁シールド部材30は、第1方向X1及び第1方向X1と直交する第2方向Y1に広がるとともに、第1方向X1及び第2方向Y1の双方と直交する第3方向Z1に所定の厚みを有するシート状に形成されている。電磁シールド部材30は、例えば、第2方向Y1よりも第1方向X1に長い長尺状に形成されている。ここで、第1方向X1は、例えば、電線20の長さ方向に沿って延びている。第1方向X1は、例えば、電磁シールド部材30の軸方向(長さ方向)である。第2方向Y1は、例えば、第1方向X1と直交する方向のうち、複数の電線20が並ぶ方向に沿って延びている。第2方向Y1は、例えば、電磁シールド部材30の幅方向である。第3方向Z1は、例えば、電磁シールド部材30の厚み方向である。本実施形態の電磁シールド部材30は、電線20の長さ方向に沿って延びる長尺のシート状に形成されている。
【0040】
図5に示すように、電磁シールド部材30は、例えば、第2方向Y1における端部31と、端部31と第2方向Y1において反対側の端部32とを有している。換言すると、電磁シールド部材30は、例えば、第1方向X1の全長にわたって延びるスリットを有している。電磁シールド部材30は、例えば、可撓性を有するシート材を電線20の周方向に巻くことによって筒状をなすように形成されている。電磁シールド部材30は、例えば、可撓性を有するシート材を第2方向Y1に巻くことによって筒状をなすように形成されている(図中太線矢印参照)。図3に示すように、電磁シールド部材30は、例えば、端部31と端部32とを電線20の径方向に重ね合わせることによって筒状をなすように形成されている。例えば、電磁シールド部材30は、端部31の外周面に端部32を重ね合わせることによって筒状に形成されている。電磁シールド部材30の内周寸法は、例えば、端部31と端部32との重なり幅を調整することにより、複数の電線20の外周寸法に合わせた寸法に調整することができる。電磁シールド部材30は、例えば、複数の電線20の外周を包囲可能な筒状態から、複数の電線20の外周を包囲しないシート状態に戻ることが可能な弾性を有している。
【0041】
図4に示すように、電磁シールド部材30は、例えば、第1方向X1における端部33と、端部33と第1方向X1において反対側の端部34とを有している。図2に示すように、端部33は、コネクタ50の筒状部材51の外周面に接続される前端部である。端部34は、コネクタ60の筒状部材61の外周面に接続される後端部である。
【0042】
図2及び図3に示すように、電磁シールド部材30は、例えば、金属層35と、樹脂層36と、それら金属層35と樹脂層36とを接着する接着層37とを有している。すなわち、電磁シールド部材30は、金属層35と接着層37と樹脂層36とが順に積層された積層構造を有している。電磁シールド部材30は、例えば、金属層35が電線20に向くように配置されている。すなわち、電磁シールド部材30は、筒状をなす電磁シールド部材30の径方向内側に金属層35が配置されるように形成されている。換言すると、電磁シールド部材30は、筒状をなす電磁シールド部材30の径方向外側に樹脂層36が配置されるように形成されている。以下の説明では、便宜上、電磁シールド部材30を構成する各部材の端面のうち電線20側に向く端面を「内周面」と称し、内周面と反対側の端面を「外周面」と称する。
【0043】
(金属層35の構成)
図4及び図5に示すように、金属層35は、第1方向X1及び第2方向Y1に広がるシート状に形成されている。金属層35は、電磁シールド機能を有している。金属層35としては、例えば、金属箔や金属材料からなるシート材を用いることができる。金属層35の材料としては、例えば、純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料を用いることができる。本実施形態の金属層35は、純アルミニウムからなる金属箔である。
【0044】
(接着層37の構成)
図2及び図3に示すように、接着層37は、金属層35と接着されるとともに、樹脂層36と接着されている。接着層37は、金属層35の外周面と接着されるとともに、樹脂層36の内周面と接着されている。接着層37は、金属層35の外周面を覆うように形成されている。接着層37は、例えば、金属層35の外周面全面を覆うように形成されている。接着層37としては、例えば、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系の接着剤を用いることができる。接着層37としては、例えば、導電性を有する導電性接着剤を用いることもできる。
【0045】
(樹脂層36の構成)
図5に示すように、樹脂層36は、第1方向X1及び第2方向Y1に広がるシート状に形成されている。樹脂層36は、接着層37の外周面を覆うように形成されている。樹脂層36は、例えば、接着層37の外周面全面を覆うように形成されている。樹脂層36の大きさは、例えば、金属層35の大きさに合わせて形成されている。樹脂層36の材料としては、例えば、金属層35よりも輻射率の高い樹脂材料を用いることができる。樹脂層36の輻射率は、例えば、0.7以上に設定することができる。また、樹脂層36の材料としては、例えば、金属層35よりもヤング率の低い樹脂材料を用いることができる。樹脂層36の材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂層36の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)などの合成樹脂を用いることができる。
【0046】
ここで、金属層35を構成する金属(例えば、アルミニウム)は、一般に熱伝導率の点では優れるものの、輻射率(放射率)の点では優れない場合が多い。例えば、アルミニウムの輻射率は0.1以下である。そこで、金属層35の外周面に、その外周面よりも高い輻射率を有する樹脂層36を接着するようにした。これにより、樹脂層36を形成しない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。
【0047】
このとき、ウィーンの変位則によると、物体から熱放射によって放出される光の波長のピークは、物体の温度に反比例するとされている。また、輻射率は、材料が同じでも物体の温度(光の波長)に応じて異なる値を取る材料があることが知られている。本実施形態では、ワイヤハーネス10が車両V(図1参照)に搭載されることから、樹脂層36としては、車両Vの使用環境で生じる高温度帯におけるピーク波長に対して高い輻射率を有することが好ましい。
【0048】
図3に示すように、電磁シールド部材30の端部31,32の重なり部分では、例えば、端部31における樹脂層36の外周面に対して端部32における金属層35の内周面が接触している。これら端部31,32の重なり部分では、端部31における金属層35と端部32における金属層35とが電線20の径方向に重なって配置されるため、金属層35が二重に重なって巻かれている。
【0049】
本実施形態の電磁シールド部材30は、接着面又は粘着面を有していない。具体的には、本実施形態の電磁シールド部材30は、金属層35の内周面及び樹脂層36の外周面に接着面又は粘着面が形成されていない。電磁シールド部材30は、例えば、電磁シールド部材30の長さ方向の中間部において結束部材(図示略)が巻き付けられることにより、筒状態が維持される。結束部材としては、例えば、テープ部材や結束バンドを用いることができる。結束部材は、例えば、電磁シールド部材30の長さ方向において所定の間隔を空けて設けられている。
【0050】
図5に示すように、電磁シールド部材30は、例えば、電線20の長さ方向に伸縮可能な折り曲げ部40と、スリット部45とを有している。
(折り曲げ部40の構成)
折り曲げ部40は、例えば、複数の山部41と複数の谷部42とを有している。折り曲げ部40は、例えば、電線20の長さ方向に沿って山部41と谷部42とが交互に連なって設けられた蛇腹構造を有している。折り曲げ部40は、例えば、電磁シールド部材30の第1方向X1に沿って山部41と谷部42とが交互に連なって設けられた蛇腹構造を有している。各山部41及び各谷部42は、電線20の長さ方向と交差する方向に沿って延びている。本実施形態の各山部41及び各谷部42は、電磁シールド部材30の第2方向Y1に沿って延びている。各山部41及び各谷部42は、例えば、第2方向Y1の全長にわたって延びている。各山部41と各谷部42とは、互いに平行に延びている。各山部41は、例えば、谷部42の底部から、電線20から離れる方向、つまり筒状をなす電磁シールド部材30の径方向外側に向かって突出している。各山部41は、例えば、1つの山折り部を有している。各谷部42は、山部41の頂部から、電線20に近づく方向、つまり筒状をなす電磁シールド部材30の径方向内側に向かって凹んでいる。各谷部42は、例えば、1つの谷折り部を有している。山部41の頂部及び谷部42の底部の形状は、任意の形状とすることができる。例えば、山部41の頂部及び谷部42の底部の断面形状は、針状に尖った形状であってもよいし、円弧状に湾曲する曲面であってもよい。
【0051】
(スリット部45の構成)
図4に示すように、スリット部45は、電磁シールド部材30の第1方向X1において部分的に設けられている。電磁シールド部材30は、多数のスリット部45を有している。図3に示すように、各スリット部45は、金属層35を厚み方向に貫通するように形成されている。各スリット部45は、例えば、電磁シールド部材30を厚み方向に貫通している。すなわち、各スリット部45は、例えば、金属層35と接着層37と樹脂層36とを厚み方向に貫通している。
【0052】
図4及び図5に示すように、多数のスリット部45は、例えば、複数のスリット群46Aと、複数のスリット群47Aとを有している。複数のスリット群46Aは、電線20の長さ方向と交差する方向、ここでは第2方向Y1において間隔を空けて設けられている。複数のスリット群47Aは、電線20の長さ方向と交差する方向、ここでは第2方向Y1において間隔を空けて設けられている。本実施形態の電磁シールド部材30では、第2方向Y1において、スリット群46Aとスリット群47Aとが交互に並んで設けられている。
【0053】
(スリット群46Aの構成)
各スリット群46Aは、複数のスリット部46を有している。複数のスリット部46は、電線20の長さ方向に沿って延びる方向、ここでは第1方向X1において間隔を空けて設けられている。各スリット部46は、例えば、山部41(図中実線参照)に対応して設けられている。各スリット部46は、例えば、山部41が延びる方向と交差する方向、ここでは第1方向X1に沿って延びている。各スリット部46は、例えば、少なくとも1つの山部41と交差するように設けられている。本実施形態の各スリット部46は、1つの山部41のみと交差するように設けられている。本実施形態の電磁シールド部材30では、各山部41に対して1つ以上のスリット部46が交差するように、複数のスリット部46が設けられている。各スリット部46は、例えば、電磁シールド部材30を厚み方向に貫通している。
【0054】
(スリット群47Aの構成)
各スリット群47Aは、複数のスリット部47を有している。複数のスリット部47は、電線20の長さ方向に沿って延びる方向、ここでは第1方向X1において間隔を空けて設けられている。各スリット部47は、例えば、谷部42(図中破線参照)に対応して設けられている。各スリット部47は、例えば、谷部42が延びる方向と交差する方向、ここでは第1方向X1に沿って延びている。各スリット部47は、例えば、少なくとも1つの谷部42と交差するように設けられている。本実施形態の各スリット部47は、1つの谷部42のみと交差するように設けられている。本実施形態の電磁シールド部材30では、各谷部42に対して1つ以上のスリット部47が交差するように、複数のスリット部47が設けられている。各スリット部47は、例えば、電磁シールド部材30を厚み方向に貫通している。
【0055】
図4に示すように、電磁シールド部材30には、例えば、電線20に対する電磁シールド部材30の巻き方向である第2方向Y1において、1つ以上のスリット部45が設けられている。例えば、電磁シールド部材30には、1つの山部41に対して1つ以上のスリット部45、具体的にはスリット部46が交差するように設けられている。例えば、電磁シールド部材30には、1つの谷部42に対して1つ以上のスリット部45、具体的にはスリット部47が交差するように設けられている。ここで、スリット群46Aとスリット群47Aとは、例えば、電磁シールド部材30の第2方向Y1において互いに異なる位置に設けられている。また、第2方向Y1に隣り合うスリット部46とスリット部47とは、例えば、金属層35の厚み方向から見た平面視において千鳥状に配列されている。第2方向Y1に隣り合うスリット部46とスリット部47とは、例えば、第1方向X1において互いにずれた位置に設けられている。本実施形態の電磁シールド部材30では、第2方向Y1に隣り合うスリット部46とスリット部47とが第2方向Y1から見た平面視において部分的に重なるように設けられている。
【0056】
図6に示すように、電磁シールド部材30は、シート状の電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻くことによって筒状をなすように形成されている(図中太線矢印参照)。このとき、第2方向Y1に延びる各山部41は、スリット部46と交差する部分において分断されている。本実施形態の各山部41は、第2方向Y1において複数のスリット部46と交差する。このため、各山部41は、その山部41と交差するスリット部46の数の分だけ、第2方向Y1において分割されている。これにより、電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻く際に、第2方向Y1に延びる山部41を複数のスリット部46により分断できるため、電磁シールド部材30の巻き付け性を向上できる。同様に、第2方向Y1に延びる各谷部42は、スリット部47と交差する部分において分断されている。本実施形態の各谷部42は、第2方向Y1において複数のスリット部47と交差する。このため、各谷部42は、その谷部42と交差するスリット部47の数の分だけ、第2方向Y1において分割されている。これにより、電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻く際に、第2方向Y1に延びる谷部42を複数のスリット部47により分断できるため、電磁シールド部材30の巻き付け性を向上できる。
【0057】
図3及び図6に示すように、筒状をなす電磁シールド部材30では、スリット部45の開口幅が第2方向Y1に広がっている。これにより、電線20の外周面に対応するように電線20の周方向に沿って電磁シールド部材30を曲げることができるため、電磁シールド部材30の巻き付け性を向上できる。
【0058】
図4に示すように、電磁シールド部材30の第1方向X1における端部33,34には、例えば、折り曲げ部40(山部41及び谷部42)が形成されていない。また、端部33,34には、例えば、スリット部45が形成されていない。
【0059】
(ワイヤハーネス10の端部構造)
図2に示すように、電磁シールド部材30の長さ方向(ここでは、第1方向X1)における端部33は、コネクタ50の筒状部材51の外周面に接続されている。すなわち、電磁シールド部材30の端部33は、筒状部材51と接続される接続部分である。電磁シールド部材30の端部33は、金属層35の内周面が筒状部材51の外周面に接触している。これにより、電磁シールド部材30は、筒状部材51と電気的に接続されている。なお、図示は省略するが、電磁シールド部材30は、筒状部材51を通じて車体パネル等にアース接続(アース接地)されている。
【0060】
ワイヤハーネス10は、例えば、金属層35が筒状部材51に接触された状態で、電磁シールド部材30を筒状部材51に固定するカシメリング71を有している。カシメリング71は、筒状部材51の外周面に取り付けられている。カシメリング71は、筒状部材51の外周面に沿った筒状をなしている。例えば、筒状部材51が円筒状に形成されており、カシメリング71が筒状部材51の外周面に沿った円筒状に形成されている。カシメリング71は、例えば、筒状部材51の外周面との間に電磁シールド部材30の端部33を挟む態様で筒状部材51の外側に嵌合されている。そして、カシメリング71が筒状部材51の径方向内側に締め付けられることで、電磁シールド部材30の端部33が筒状部材51の外周面に対して直接接触した状態で固定されている。すなわち、電磁シールド部材30の端部33は、金属層35の内周面が筒状部材51の外周面に直接接触された状態で、カシメリング71によって外側から筒状部材51に向かって締め付けられて筒状部材51の外周面に固定されている。これにより、電磁シールド部材30と筒状部材51との電気的導通が安定的に維持される。また、カシメリング71によって、電磁シールド部材30の筒状態が維持される。なお、カシメリング71の内周面は、樹脂層36の外周面に接触している。
【0061】
電磁シールド部材30の第1方向X1における端部34は、コネクタ60の筒状部材61の外周面に接続されている。すなわち、電磁シールド部材30の端部34は、筒状部材61と接続される接続部分である。電磁シールド部材30の端部34は、金属層35の内周面が筒状部材61の外周面に接触している。これにより、電磁シールド部材30は、筒状部材61と電気的に接続されている。なお、図示は省略するが、電磁シールド部材30は、筒状部材61を通じて車体パネル等にアース接続(アース接地)されている。
【0062】
ワイヤハーネス10は、例えば、金属層35が筒状部材61に接触された状態で、電磁シールド部材30を筒状部材61に固定するカシメリング72を有している。カシメリング72は、筒状部材61の外周面に取り付けられている。カシメリング72は、筒状部材61の外周面に沿った筒状をなしている。例えば、筒状部材61が円筒状に形成されており、カシメリング72が筒状部材61の外周面に沿った円筒状に形成されている。カシメリング72は、例えば、筒状部材61の外周面との間に電磁シールド部材30の端部34を挟む態様で筒状部材61の外側に嵌合されている。そして、カシメリング72が筒状部材61の径方向内側に締め付けられることで、電磁シールド部材30の端部34が筒状部材61の外周面に対して直接接触した状態で固定されている。すなわち、電磁シールド部材30の端部34は、金属層35の内周面が筒状部材51の外周面に直接接触された状態で、カシメリング72によって外側から筒状部材61に向かって締め付けられて筒状部材61の外周面に固定されている。これにより、電磁シールド部材30と筒状部材61との電気的導通が安定的に維持される。また、カシメリング72によって、電磁シールド部材30の筒状態が維持される。なお、カシメリング72の内周面は、樹脂層36の外周面に接触している。
【0063】
筒状部材51,61の材料としては、例えば、鉄系、アルミニウム系や銅系の金属材料を用いることができる。筒状部材51,61は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施していてもよい。すなわち、筒状部材51,61は、母材の表面にメッキ被膜を形成した構造としてもよい。
【0064】
カシメリング71,72の材料としては、例えば、鉄系、アルミニウム系や銅系の金属材料を用いることができる。カシメリング71,72は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施してもよい。すなわち、カシメリング71,72は、母材の表面にメッキ被膜を形成した構造としてもよい。
【0065】
(金属層35、筒状部材51,61及びカシメリング71,72の材料の組み合わせ)
ここで、電磁シールド部材30の金属層35は、筒状部材51,61と同種の金属によって形成されている。本明細書において、同種の金属とは、イオン化傾向が実質的に同じ金属をいう。イオン化傾向が実質的に同じとは、イオン化傾向が同一である場合は勿論、異なる場合であってもイオン化傾向が近接しているために略同じとみなせる場合も含む。第1金属と第2金属とのイオン化傾向が略同じとみなせる範囲としては、第1金属と第2金属とが電解質を含む水溶液によって電気的に接続された場合において電食が生じない金属の組み合わせを含むとともに、電食が生じるとしても車両V等に使用して実用上問題がない程度である金属の組み合わせも含む。金属層35は、筒状部材51,61の最表面と同種の金属によって形成されている。例えば、筒状部材51,61が母材の表面にメッキ被膜を形成した構造である場合には、そのメッキ被膜と金属層35とが同種の金属によって形成されている。
【0066】
本実施形態のカシメリング71,72は、金属層35及び筒状部材51,61と同種の金属によって形成されている。例えば、カシメリング71,72が母材の表面にメッキ被膜を形成した構造である場合には、そのメッキ被膜が金属層35と同種の金属によって形成されている。
【0067】
本実施形態では、金属層35が純アルミニウム又はアルミニウム合金により構成されており、筒状部材51,61がアルミニウム合金により構成されており、カシメリング71,72がアルミニウム合金により構成されている。具体的には、金属層35の材料としては、純アルミニウムを含む1000系、又は8000系のアルミニウム合金を好適に用いることができる。筒状部材51,61の材料としては、3000系のアルミニウム合金やダイカスト用アルミニウム合金(ADC材)を用いることができる。ADC材としては、アルミニウム合金ADC3やアルミニウム合金ADC12などを挙げることができる。筒状部材51,61の材料としては、金属層35が純アルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合には、電食防止の観点から、銅の添加量の少ない3000系のアルミニウム合金を用いることが好適である。また、筒状部材51,61としては、鉄合金からなる母材に対して溶融アルミニウムメッキを施すことにより、母材の表面にアルミニウムメッキ被膜を形成した構造体を用いることもできる。なお、鉄合金としては、例えば、炭素鋼、特殊鋼やステンレス鋼を用いることができる。本実施形態のカシメリング71,72としては、鉄合金からなる母材に対して溶融アルミニウムメッキを施すことにより、母材の表面にアルミニウムメッキ被膜を形成した構造体を有している。
【0068】
(外装部材80の構成)
図3に示すように、外装部材80は、例えば、電磁シールド部材30の外周を包囲するように設けられている。外装部材80は、例えば、電磁シールド部材30の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。外装部材80は、例えば、全体として長尺の筒状をなしている。外装部材80の内部には、電磁シールド部材30及び電磁シールド部材30により被覆された複数の電線20が収容されている。外装部材80は、内部に収容した電線20及び電磁シールド部材30を飛翔物や水滴から保護する。なお、図2では、外装部材80の図示を省略している。
【0069】
外装部材80としては、例えば、金属製や樹脂製のパイプ、コルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。金属製のパイプやコルゲートチューブの材料としては、例えば、アルミニウム系や銅系などの金属材料を用いることができる。樹脂製のパイプやコルゲートチューブの材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0070】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1-1)電磁シールド部材30の有するシート状の金属層35に、電線20の長さ方向に沿って延びる第1方向X1に伸縮可能な折り曲げ部40を設けるようにした。この折り曲げ部40が第1方向X1に伸縮することにより、電線20の曲げに金属層35を好適に追従させることができ、金属層35が破れることを好適に抑制できる。例えば、電線20を大きく曲げて配索する場合には、電線20の曲げに追従して金属層35が曲がる。このとき、曲げ外側における折り曲げ部40が第1方向X1に伸びるとともに、曲げ内側における折り曲げ部40が第1方向X1に縮むように変形する。本実施形態では、曲げ外側における山部41及び谷部42が第1方向X1に延びるとともに、曲げ内側における山部41及び谷部42が第1方向X1に縮むように変形する。これにより、曲げ部分における金属層35の内外周差を好適に吸収できるため、電線20の曲げに起因して金属層35が破れることを好適に抑制できる。このため、電磁シールド部材30における電磁シールド機能が低下することを好適に抑制できる。
【0071】
(1-2)金属層35を貫通するスリット部45を、電磁シールド部材30の第1方向X1に部分的に設けるようにした。また、スリット部45を、第1方向X1に沿って延びるように形成した。このため、山部41及び谷部42と交差して延びるようにスリット部45が形成される。これにより、電線20の外周を包囲するように電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻く際に、第2方向Y1に延びる山部41及び谷部42をスリット部45により分断することができる。この結果、電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻く際における電磁シールド部材30の巻き付け性を好適に向上できる。
【0072】
(1-3)シート状の電磁シールド部材30の端部31に端部32を重ね合わせることにより、電磁シールド部材30を、電線20の外周を包囲する筒状に形成するようにした。すなわち、シート状の電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻くことにより、電磁シールド部材30を筒状に形成するようにした。さらに、電磁シールド部材30のうち折り曲げ部40が設けられる部分では、電磁シールド部材30の巻き方向である第2方向Y1において1つ以上のスリット部45を設けるようにした。すなわち、電磁シールド部材30のうち折り曲げ部40が設けられる部分では、電磁シールド部材30の巻き方向に必ず1つ以上のスリット部45が存在する。このため、シート状の電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻く際に、山部41及び谷部42をスリット部45により好適に分断することができ、電磁シールド部材30の巻き付け性を好適に向上できる。
【0073】
(1-4)シート状の電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻くことにより、電磁シールド部材30を電線20の外周を包囲する筒状に形成できるため、電線20に対して電磁シールド部材30を後から容易に取り付けることができる。これにより、ワイヤハーネス10の組立作業性を向上できる。
【0074】
(1-5)さらに、端部31と端部32との重なり幅を調整することにより、電線20の外周寸法に合わせて電磁シールド部材30の内周寸法及び外周寸法を容易に調整することができる。これにより、電磁シールド部材30の外周寸法が大型化することを好適に抑制できる。
【0075】
(1-6)筒状部材51と電磁シールド部材30との接続部分である端部33に、折り曲げ部40を設けないようにした。また、筒状部材61と電磁シールド部材30との接続部分である端部34に、折り曲げ部40を設けないようにした。このため、端部33,34に折り曲げ部40を設ける場合に比べて、端部33,34における電磁シールド部材30の巻き付け性を向上でき、筒状部材51,61と電磁シールド部材30との接続信頼性を向上できる。
【0076】
(1-7)金属層35の外周面に、金属層35よりも高い輻射率を有する樹脂層36を形成するようにした。この構成によれば、金属層35の輻射率が低い場合であっても、その金属層35の外周面が高い輻射率を有する樹脂層36によって被覆される。このため、樹脂層36を有さない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。したがって、例えば電磁シールド部材30の外周面と外装部材80の内周面とが物理的に離れていても、電磁シールド部材30の外周面から輻射によって外装部材80に効率的に熱伝導させることができる。これにより、電磁シールド部材30における放熱性を向上させることができ、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。
【0077】
(1-8)金属層35の外周面に、金属層35よりもヤング率の低い樹脂層36を形成するようにした。この構成によれば、金属層35のみの単層構造に比べて、電磁シールド部材30の柔軟性及び伸張性を高めることができる。これにより、例えば電線20の曲げ部において、その曲げ形状に電磁シールド部材30が追従しやすくなり、金属層35が破れることを抑制できる。
【0078】
(1-9)金属層35の内周面及び外周面のうち外周面のみに樹脂層36を形成するようにした。すなわち、金属層35の内周面に樹脂層を形成しないようにした。このため、電磁シールド部材30の第1方向X1の端部33,34を筒状部材51,61に固定する際に、金属層35の内周面を筒状部材51,61の外周面に直接接触させることができる。これにより、電磁シールド部材30の端部33,34、つまり筒状部材51,61との接続部分において、樹脂層を剥ぐ等の工程を行わずに、電磁シールド部材30と筒状部材51,61とを好適に電気的に接続することができる。
【0079】
(1-10)樹脂層36の材料として導電性を有する樹脂材料を用いた場合には、仮に電線20の曲げ部において金属層35が破れてしまった場合であっても、樹脂層36によって電磁シールド機能を維持することができる。
【0080】
(1-11)金属層35が筒状部材51,61に接触した状態で、電磁シールド部材30を筒状部材51,61にそれぞれ固定するカシメリング71,72を設けた。この構成によれば、電磁シールド部材30がカシメリング71,72によって外側から筒状部材51,61に向かって締め付けられる。これにより、金属層35の内周面が筒状部材51,61の外周面に接触した状態で電磁シールド部材30が筒状部材51,61に固定される。したがって、電磁シールド部材30と筒状部材51,61との電気的導通を安定的に維持することができる。
【0081】
(1-12)電磁シールド部材30の金属層35と筒状部材51,61とカシメリング71,72とを全て同種の金属により形成するようにした。このため、金属層35と筒状部材51,61との接続部分、及び電磁シールド部材30とカシメリング71,72との接続部分に水が付着した場合であっても、各部材間での電食の発生を抑制できる。これにより、電食に起因して電磁シールド部材30の電磁シールド性能が低下することを抑制できる。また、金属層35と筒状部材51,61との接続部分の構造を、その接続部分を覆うゴム製の防水カバー等を設けない非防水構造とすることもできる。換言すると、非防水構造とした場合であっても、金属層35及び筒状部材51,61に電食が発生することを抑制できる。この結果、ワイヤハーネス10の大型化を抑制でき、部品点数の増加を抑制できる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、図7図9に従って、ワイヤハーネスの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態との相違点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して、説明の一部又は全部を割愛する場合がある。
【0083】
(ワイヤハーネス10Aの構成)
図7に示すように、ワイヤハーネス10Aは、1本又は複数本(本実施形態では2本)の電線20と、複数の電線20を電磁シールドする電磁シールド部材30Aと、各電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタ50,60とを有している。
【0084】
(電磁シールド部材30Aの構成)
電磁シールド部材30Aは、全体として長尺の筒状に形成されている。電磁シールド部材30Aは、コネクタ50,60の筒状部材51,61から露出する電線20の外周を包囲するように形成されている。電磁シールド部材30Aは、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。
【0085】
図8に示すように、電磁シールド部材30Aは、可撓性を有するシート状に形成されている。電磁シールド部材30Aは、第1方向X1及び第1方向X1と直交する第2方向Y1に広がるとともに、第1方向X1及び第2方向Y1の双方と直交する第3方向Z1に所定の厚みを有するシート状に形成されている。電磁シールド部材30Aは、例えば、第2方向Y1における端部31,32と、第1方向X1における端部33,34とを有している。
【0086】
図9に示すように、電磁シールド部材30Aは、シート状の電磁シールド部材30Aを第2方向Y1に巻くことによって筒状をなすように形成されている。図示は省略するが、電磁シールド部材30Aは、図8に示した端部31と端部32とを電線20の径方向に重ね合わせることによって筒状をなすように形成されている。
【0087】
図7に示すように、電磁シールド部材30Aは、例えば、金属層35と、樹脂層36と、それら金属層35と樹脂層36とを接着する接着層37とを有している。金属層35は、第1方向X1及び第2方向Y1に広がるシート状に形成されている。
【0088】
図8に示すように、電磁シールド部材30Aは、例えば、電線20の長さ方向に伸縮可能な折り曲げ部90と、スリット部95とを有している。電磁シールド部材30Aは、第1実施形態の電磁シールド部材30と折り曲げ部90及びスリット部95の構造が異なっている。例えば、折り曲げ部90は図4等に示した折り曲げ部40と構造が異なっており、スリット部95は図4等に示したスリット部45と形成位置が異なっている。なお、電磁シールド部材30Aは、例えば、折り曲げ部90及びスリット部95以外の構造は電磁シールド部材30と同様の構造を有している。
【0089】
(折り曲げ部90の構成)
図9に示すように、折り曲げ部90は、例えば、複数の山部91と複数の谷部92とを有している。折り曲げ部90は、例えば、電磁シールド部材30Aの第1方向X1に沿って山部91と谷部92とが交互に連なって設けられた蛇腹構造を有している。各山部91及び各谷部92は、電線20の長さ方向と交差する方向、ここでは第2方向Y1に沿って延びている。各山部91及び各谷部92は、例えば、第2方向Y1の全長にわたって延びている。各山部91と各谷部92とは、互いに平行に延びている。
【0090】
各山部91は、例えば、谷部92の底部から、電線20から離れる方向、つまり筒状をなす電磁シールド部材30Aの径方向外側に向かって突出している。各谷部92は、山部91の頂部から、電線20に近づく方向、つまり筒状をなす電磁シールド部材30Aの径方向内側に向かって凹んでいる。
【0091】
(谷部92の構成)
各谷部92は、例えば、谷折り部92Aと、谷折り部92Aと第1方向X1において離れて設けられた谷折り部92Bと、谷折り部92Aと谷折り部92Bとの間に設けられた平面部92Cとを有している。各谷折り部92A,92Bは、例えば、電磁シールド部材30Aの外周面をおもて面とした場合に、電磁シールド部材30Aが谷折りされる部分である。2つの谷折り部92A,92Bは、例えば、第1方向X1において並んで設けられている。1つの谷部92における2つの谷折り部92A,92Bの間には、山部91が設けられていない。例えば、1つの谷部92における2つの谷折り部92A,92Bの間には、平面部92Cのみが設けられている。平面部92Cは、例えば、平面状に形成されている。平面部92Cは、例えば、電磁シールド部材30Aの第1方向X1及び第2方向Y1に広がるように形成されている。平面部92Cは、例えば、電磁シールド部材30Aの周方向に平行に広がるように形成されている。平面部92Cは、谷部92の底部に設けられている。図7に示すように、平面部92Cは、例えば、筒状をなす電磁シールド部材30Aの径方向のうち最も電線20に近い位置に設けられている。平面部92Cの内周面は、例えば、電線20の外周面に接触している。
【0092】
(山部91の構成)
図9に示すように、各山部91は、例えば、山折り部91Aと、山折り部91Aと第1方向X1において離れて設けられた山折り部91Bと、山折り部91Aと山折り部91Bとの間に設けられた平面部91Cとを有している。各山折り部91A,91Bは、例えば、電磁シールド部材30Aの外周面をおもて面とした場合に、電磁シールド部材30Aが山折りされる部分である。2つの山折り部91A,91Bは、例えば、第1方向X1において並んで設けられている。2つの山折り部91A,91Bは、第1方向X1において隣接する2つの谷部92のうち一方(図中右隣)の谷部92の谷折り部92Aと、他方(図中左隣)の谷部92の谷折り部92Bとの間に設けられている。山折り部91Aは、例えば、谷折り部92A,92Bの両方と第1方向X1において離れて設けられている。山折り部91Bは、例えば、谷折り部92A,92Bの両方と第1方向X1において離れて設けられている。
【0093】
1つの山部91における2つの山折り部91A,91Bの間には、谷部92が設けられていない。例えば、1つの山部91における2つの山折り部91A,91Bの間には、平面部91Cのみが設けられている。平面部91Cは、例えば、平面状に形成されている。平面部91Cは、例えば、電磁シールド部材30Aの第1方向X1及び第2方向Y1に広がるように形成されている。平面部91Cは、例えば、電磁シールド部材30Aの周方向に平行に広がるように形成されている。図7に示すように、平面部91Cは、例えば、平面部92Cと平行に広がるように形成されている。平面部91Cは、山部91の頂部に設けられている。平面部91Cは、例えば、筒状をなす電磁シールド部材30Aの径方向のうち最も電線20から離れた位置に設けられている。
【0094】
図9に示すように、各山部91は、例えば、谷折り部92Bと山折り部91Aとの間に設けられた突出部91Dと、谷折り部92Aと山折り部91Bとの間に設けられた突出部91Eとを有している。突出部91Dは、例えば、谷折り部92Bから山折り部91Aに向かって電磁シールド部材30Aの径方向外側に突出するように形成されている。突出部91Dは、例えば、谷折り部92Bから山折り部91Aに向かうに連れて、第1方向X1において突出部91Eに近づくように傾斜している。突出部91Dは、平面部92Cと交差する平面上に広がるように形成されている。突出部91Eは、例えば、谷折り部92Aから山折り部91Bに向かって電磁シールド部材30Aの径方向外側に突出するように形成されている。突出部91Eは、例えば、谷折り部92Aから山折り部91Bに向かうに連れて、第1方向X1において突出部91Dに近づくように傾斜している。突出部91Eは、平面部92Cと交差する平面上に広がるように形成されている。例えば、第1方向X1において、突出部91Dと突出部91Eとの間に平面部91Cが設けられている。ここで、平面部91Cは、例えば、突出部91D,91Eと交差する平面上に広がるように形成されている。
【0095】
本実施形態の折り曲げ部90では、山部91と谷部92とが谷折り部92A,92Bによって区切られている。例えば、谷部92とその谷部92と隣接する一方(図中左隣)の山部91とが谷折り部92Aにより区切られ、谷部92とその谷部92と隣接する他方(図中右隣)の山部91とが谷折り部92Bにより区切られている。そして、山部91は、谷折り部92A,92Bから電磁シールド部材30Aの径方向外側に突出するように形成されている。このため、例えば山部91の第1方向X1に沿う寸法を調整することによって、谷折り部92A,92Bからの山部91の突出量を調整することができ、折り曲げ部90における第1方向X1の伸縮量を調整することができる。
【0096】
(スリット群95Aの構成)
図8に示すように、電磁シールド部材30Aは、複数のスリット群95Aを有している。複数のスリット群95Aは、電線20の長さ方向と交差する方向、ここでは第2方向Y1において間隔を空けて設けられている。各スリット群95Aは、複数のスリット部95を有している。複数のスリット部95は、電線20の長さ方向に沿って延びる方向、ここでは第1方向X1において間隔を空けて設けられている。
【0097】
(スリット部95の構成)
各スリット部95は、電磁シールド部材30Aの第1方向X1において部分的に設けられている。各スリット部95は、金属層35を厚み方向に貫通するように形成されている。各スリット部95は、例えば、電磁シールド部材30Aを厚み方向に貫通している。各スリット部95は、例えば、山部91に対応して設けられている。各スリット部95は、例えば、山部91と交差するように設けられている。各スリット部95は、例えば、山部91が延びる方向と交差する方向、ここでは第1方向X1に沿って延びている。各スリット部95は、例えば、2つの山折り部91A,91Bと交差するように設けられている。各スリット部95は、例えば、各山部91の第1方向X1の全長にわたって延びるように設けられている。各スリット部95は、第1方向X1において、隣接する2つの谷部92のうち一方(図中右側)の谷部92の谷折り部92Aから他方(図中左側)の谷部92の谷折り部92Bまで延びるように設けられている。
【0098】
各スリット部95は、例えば、谷部92に設けられていない。各スリット部95は、例えば、谷部92の平面部92Cに設けられていない。換言すると、平面部92Cには、谷部92が延びる第2方向Y1の全長にわたってスリット部95が形成されていない。すなわち、平面部92Cは、第2方向Y1の全長にわたってスリット部95が形成されていない第1部分を有している。この第1部分は、例えば、平面部92Cの第1方向X1の中間部に設けられている。第1部分は、例えば、平面部92Cの第1方向X1の全長にわたって設けられている。ここで、本明細書において「A部はB部に設けられていない」とは、A部が完全にB部に設けられていない場合の他、製造公差や組み付け公差等の範囲内においてA部がB部に多少設けられる場合も含む。例えば、各スリット部95は、谷部92の一部まで延びるように設けられていてもよい。例えば、各スリット部95は、谷折り部92A,92Bと交差するように設けられていてもよい。但し、各スリット部95は、各谷部92の平面部92Cの大部分とは交差しないように設けられている。
【0099】
電磁シールド部材30Aには、例えば、1つの山部91に対して1つ以上のスリット部95が設けられている。電磁シールド部材30Aには、1つの山部91に対して複数(図8では、11個)のスリット群95Aのスリット部95が設けられている。1つの山部91に対して設けられた複数(図8では、11個)のスリット部95は、例えば、第2方向Y1において並んで設けられている。1つの山部91に対して設けられた複数のスリット部95は、第2方向Y1において同じ位置に設けられている。
【0100】
図9に示すように、電磁シールド部材30Aは、シート状の電磁シールド部材30Aを第2方向Y1に巻くことによって筒状をなすように形成されている。このとき、第2方向Y1に延びる各山部91は、スリット部95と交差する部分において分断されている。本実施形態の各山部91は、第2方向Y1において複数のスリット部95と交差する。このため、各山部91は、その山部91と交差するスリット部95の数の分だけ、第2方向Y1において分割されている。これにより、電磁シールド部材30Aを第2方向Y1に巻く際に、第2方向Y1に延びる山部91を複数のスリット部95により分断できるため、電磁シールド部材30Aの巻き付け性を向上できる。
【0101】
筒状をなす電磁シールド部材30Aでは、スリット部95の開口幅が第2方向Y1に広がっている。これにより、電線20の外周面に対応するように電線20の周方向に沿って電磁シールド部材30Aを曲げることができるため、電磁シールド部材30Aの巻き付け性を向上できる。
【0102】
図8に示すように、電磁シールド部材30Aの第1方向X1における端部33,34には、例えば、折り曲げ部90(山部91及び谷部92)が形成されていない。また、端部33,34には、例えば、スリット部95が形成されていない。
【0103】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1-4)~(1-12)の作用効果に加えて以下の作用効果を奏することができる。
(2-1)電磁シールド部材30Aの有するシート状の金属層35に、電線20の長さ方向に沿って延びる第1方向X1に伸縮可能な折り曲げ部90を設けるようにした。この折り曲げ部90が第1方向X1に伸縮することにより、電線20の曲げに金属層35を好適に追従させることができ、金属層35が破れることを好適に抑制できる。このため、電磁シールド部材30Aにおける電磁シールド機能が低下することを好適に抑制できる。
【0104】
(2-2)シート状の電磁シールド部材30Aの端部31に端部32を重ね合わせることにより、電磁シールド部材30Aを、電線20の外周を包囲する筒状に形成するようにした。すなわち、シート状の電磁シールド部材30Aを第2方向Y1に巻くことにより、電磁シールド部材30Aを筒状に形成するようにした。さらに、電磁シールド部材30Aのうち折り曲げ部90が設けられる部分に、電磁シールド部材30Aの巻き方向である第2方向Y1の全長にわたってスリット部95が形成されていない第1部分(ここでは、谷部92の平面部92C)を設けるようにした。この第1部分では、第2方向Y1の全長にわたってスリット部95が形成されていないため、第2方向Y1における剛性を高めることができる。したがって、第2方向Y1からの外力が第1部分に加わった場合であっても、その外力によって第1部分が変形することを抑制できる。これにより、例えば電磁シールド部材30Aの筒状態を好適に維持することができる。
【0105】
(2-3)金属層35を貫通するスリット部95を、電磁シールド部材30Aの第1方向X1に部分的に設けるようにした。また、スリット部95を、山部91と交差するように形成した。このため、電線20の外周を包囲するように電磁シールド部材30Aを第2方向Y1に巻く際に、第2方向Y1に延びる山部91をスリット部95により分断することができる。この結果、電磁シールド部材30Aを第2方向Y1に巻く際における電磁シールド部材30Aの巻き付け性を好適に向上できる。
【0106】
(2-4)谷部92を、谷折り部92A及び谷折り部92Bと、それら谷折り部92Aと谷折り部92Bとの間に設けられる平面部92Cとを有する構造に形成した。このため、谷部92とその谷部92と隣接する一方の山部91とが谷折り部92Aにより区切られ、谷部92とその谷部92と隣接する他方の山部91とが谷折り部92Bにより区切られる。このように、谷折り部92A,92Bによって谷部92と山部91とを区切ることができる。このとき、山部91は、谷折り部92A,92Bから筒状の電磁シールド部材30Aの径方向外側に突出するように形成される。このため、例えば山部91の第1方向X1に沿う寸法を調整することによって、谷折り部92A,92Bからの山部91の突出量を調整することができ、折り曲げ部90における第1方向X1の伸縮量を調整することができる。ここで、谷折り部92A,92Bによって谷部92と山部91とが区切られるため、谷部92及び山部91の寸法を個別に設定することができる。したがって、山部91の第1方向X1に沿う寸法を容易に調整することができるため、折り曲げ部90における第1方向X1の伸縮量を容易に大きくすることができる。これにより、電線20の曲げに金属層35を好適に追従させることができ、金属層35が破れることを好適に抑制できる。
【0107】
(2-5)谷部92の底部である平面部92Cに、第2方向Y1の全長にわたってスリット部95が形成されていない第1部分を設けるようにした。このため、例えば電線20の外周面に平面部92Cの内周面が接触される場合に、その平面部92Cの内周面と電線20の外周面との接触面積が小さくなることを抑制できる。
【0108】
(2-6)山部91を、電磁シールド部材30Aの径方向外側に突出する突出部91Dと交差する平面上に広がる平面部91Cを有する構造に形成した。この平面部91Cが設けられるため、山部91の第1方向X1に沿う寸法を長く設定した場合であっても、谷部92から電磁シールド部材30Aの径方向外側に突出する山部91の突出量が大きくなることを抑制できる。このため、折り曲げ部90における第1方向X1の伸縮量を大きく設定した場合であっても、筒状の電磁シールド部材30Aの外形が大きくなることを抑制できる。
【0109】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0110】
図10に示すように、電磁シールド部材30の端部33,34に、折り曲げ部40を設けるようにしてもよい。同様に、電磁シールド部材30Aの端部33,34に、折り曲げ部90を設けるようにしてもよい。
【0111】
図10に示すように、電磁シールド部材30の端部33,34に、スリット部45を設けるようにしてもよい。同様に、電磁シールド部材30Aの端部33,34に、スリット部95を設けるようにしてもよい。
【0112】
・上記各実施形態では、電磁シールド部材30,30Aの端部31,32に折り曲げ部40,90を設けるようにした。これに限らず、例えば、端部31,32に折り曲げ部40,90を設けないようにしてもよい。
【0113】
・上記各実施形態では、電磁シールド部材30,30Aの端部31,32にスリット部45,95を設けるようにした。これに限らず、例えば、端部31,32にスリット部45,95を設けないようにしてもよい。
【0114】
・上記各実施形態におけるスリット部45,95の形状は特に限定されない。例えば、スリット部45,95の第1方向X1の端部を、円弧状に湾曲した形状に形成してもよい。例えば、電磁シールド部材30,30Aの第3方向Z1、つまり金属層35の厚み方向から見た平面視において、スリット部45,95の第1方向X1の端部を、円弧状に湾曲した形状に形成してもよい。
【0115】
・例えば図11に示すように、スリット部46,47(スリット部45)の第1方向X1の端部に終端部48を設けるようにしてもよい。本変更例のスリット部46,47は、第1方向X1に沿って延びるスリット49と、スリット49の第1方向X1の両端部に設けられた終端部48とを有している。終端部48は、例えば、スリット49から第2方向Y1に広がるように形成されている。すなわち、終端部48の第2方向Y1に沿う寸法は、スリット49の第2方向Y1に沿う寸法よりも大きく形成されている。金属層35の厚み方向(ここでは、第3方向Z1)から見た終端部48の平面形状は、円形状に形成されている。この場合の終端部48の内側面は、曲面に形成されている。
【0116】
この構成によれば、スリット部46,47の第1方向X1の端部、つまり終端部48が円弧状に湾曲した形状に形成される。このため、例えば電磁シールド部材30を第2方向Y1に巻くことに伴ってスリット部46,47の開口幅が第2方向Y1に広がる場合に、スリット部46,47の第1方向X1の端部において1か所に応力が集中することを抑制できる。換言すると、スリット部46,47の終端部48において応力を分散させることができる。これにより、スリット部46,47が第1方向X1に沿って延びるように裂けることを好適に抑制できる。
【0117】
なお、スリット部45と同様に、スリット部95の第1方向X1の端部に終端部48を設けるようにしてもよい。
・例えば図12に示すように、スリット部46,47(スリット部45)を、長孔に形成してもよい。本変更例のスリット部46,47は、電磁シールド部材30の第2方向Y1よりも第1方向X1に長い長孔に形成されている。すなわち、本変更例のスリット部46,47は、第1方向X1に沿って延びている。本変更例のスリット部46,47は、金属層35の厚み方向(ここでは、第3方向Z1)から見た平面形状が長円形に形成されている。ここで、本明細書における「長円形」は、2つの略等しい長さの平行線と2つの半円形からなる形状である。この構成によれば、スリット部46,47の第1方向X1の端部が円弧状に湾曲した形状に形成される。このため、スリット部46,47が第1方向X1に沿って延びるように裂けることを好適に抑制できる。
【0118】
なお、スリット部45と同様に、スリット部95を長孔に形成してもよい。
図12に示したスリット部46,47(スリット部45)を、金属層35の厚み方向から見た平面形状が楕円形になるように形成してもよい。なお、スリット部45と同様に、スリット部95を、金属層35の厚み方向から見た平面形状が楕円形になるように形成してもよい。
【0119】
・例えば図13に示すように、スリット部46,47(スリット部45)を、丸孔に形成してもよい。本変更例のスリット部46,47は、金属層35の厚み方向(ここでは、第3方向Z1)から見た平面形状が円形に形成されている。この構成によれば、スリット部46,47の第1方向X1の端部が円弧状に湾曲した形状に形成される。このため、スリット部46,47が第1方向X1に沿って延びるように裂けることを好適に抑制できる。
【0120】
なお、スリット部45と同様に、スリット部95を丸孔に形成してもよい。
・上記各実施形態では、電磁シールド部材30,30Aに設けた複数のスリット部45,95を全て同一の形状に形成したが、これに限定されない。例えば、図11に示したスリット49及び終端部48を有するスリット部45と、図12に示した長孔に形成されたスリット部45と、図13に示した丸孔に形成されたスリット部45とが1つの電磁シールド部材30に混在していてもよい。なお、スリット部95もスリット部45と同様に変更することができる。
【0121】
・上記各実施形態では、スリット部45(スリット部46,47)及びスリット部95を、金属層35と接着層37と樹脂層36とを厚み方向に貫通するように形成したが、これに限定されない。例えば、樹脂層36が伸縮性に優れている場合には、スリット部45,95を、金属層35と接着層37とを厚み方向に貫通するように形成してもよい。また、例えば、樹脂層36及び接着層37が伸縮性に優れている場合には、スリット部45,95を、金属層35のみを厚み方向に貫通するように形成してもよい。
【0122】
・上記第1実施形態のスリット部46を、複数の山部41と交差するように形成してもよい。
・上記第1実施形態のスリット部47を、複数の谷部42と交差するように形成してもよい。
【0123】
・上記第2実施形態のスリット部95を、山部91に代えて、谷部92と交差するように形成してもよい。
・上記第2実施形態における山部91の構造は特に限定されない。例えば、山部91を、山折り部91Bを省略し、1つの山折り部91Aを有する構造に変更してもよい。この場合には、平面部91Cが省略される。また、山部91を、山折り部91A,91Bの両方を有さない構造に変更してもよい。この場合の山部91は、例えば、谷部92から電磁シールド部材30Aの径方向外側に突出するとともに、円弧状に湾曲するように形成される。
【0124】
・上記各実施形態では、複数の電線20の外周を一括して包囲するように電磁シールド部材30,30Aを筒状に形成したが、これに限定されない。
例えば図14に示すように、1本の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように電磁シールド部材30を筒状に形成してもよい。なお、電磁シールド部材30Aも電磁シールド部材30と同様に変更することができる。
【0125】
・上記各実施形態の電磁シールド部材30,30Aでは、金属層35の内周面及び外周面のうち外周面のみに樹脂層36を形成するようにしたが、これに限定されない。
例えば図15に示すように、金属層35の外周面に樹脂層36を形成し、金属層35の内周面に樹脂層38を形成するようにしてもよい。本変更例の電磁シールド部材30Bでは、金属層35の内周面に接着層39を介して樹脂層38が接着されている。すなわち、電磁シールド部材30Bは、電磁シールド部材30Bの内周面側から樹脂層38と接着層39と金属層35と接着層37と樹脂層36とが順に積層された積層構造を有している。電磁シールド部材30Bは、例えば、樹脂層38が電線20に向くように配置されている。
【0126】
接着層39は、金属層35の内周面と接着されるとともに、樹脂層38の外周面と接着されている。接着層39は、金属層35の内周面を覆うように形成されている。接着層39としては、例えば、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系の接着剤を用いることができる。
【0127】
樹脂層38は、樹脂層36と同様に、シート状に形成されている。樹脂層38は、接着層39の外周面を覆うように形成されている。樹脂層38は、例えば、接着層39の外周面全面を覆うように形成されている。樹脂層38の材料としては、例えば、金属層35よりも輻射率の高い樹脂材料を用いることができる。樹脂層38の輻射率は、例えば、0.7以上に設定することができる。また、樹脂層38の材料としては、例えば、金属層35よりもヤング率の低い樹脂材料を用いることができる。樹脂層38の材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂層38の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどの合成樹脂を用いることができる。
【0128】
電磁シールド部材30Bの第1方向X1の端部33は、筒状部材51の外周面に接続されている。すなわち、電磁シールド部材30Bの端部33は、筒状部材51と接続される接続部分である。電磁シールド部材30Bの端部33では、金属層35の内周面が樹脂層38から露出されており、金属層35の内周面が筒状部材51の外周面に直接接触している。換言すると、電磁シールド部材30Bの端部33では、金属層35の内周面に接着層39及び樹脂層38が形成されていない。このため、電磁シールド部材30Bの端部33では、金属層35の内周面を筒状部材51の外周面に直接接触させることができる。これにより、金属層35の内周面に樹脂層38を形成した場合であっても、金属層35と筒状部材51とを好適に電気的に接続することができる。
【0129】
上記構成によれば、金属層35の輻射率が低い場合であっても、その金属層35の内周面が高い輻射率を有する樹脂層38によって被覆される。このため、樹脂層38を有さない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。したがって、例えば電磁シールド部材30Bの内周面、ここでは樹脂層38の内周面と電線20の外周面とが物理的に離れていても、電線20の外周面から輻射によって電磁シールド部材30Bに効率的に熱伝導させることができる。さらに、金属層35の外周面が高い輻射率を有する樹脂層36によって被覆されるため、電磁シールド部材30Bの外周面から輻射によって外装部材80(図3参照)に効率的に熱伝導させることができる。これにより、ワイヤハーネス10における放熱性を向上させることができる。この結果、電線20の温度上昇を低く抑えることができるため、電線20の芯線21のサイズを小さくしたり、絶縁被覆22の厚みを薄くしたりすることができる。
【0130】
また、金属層35の内周面に、金属層35よりもヤング率の低い樹脂層38を形成したため、樹脂層38を有さない場合に比べて、電磁シールド部材30Bの柔軟性及び伸張性を高めることができる。これにより、例えば電線20の曲げ部において、その曲げ形状に電磁シールド部材30Bが追従しやすくなり、金属層35が破れることをより抑制できる。
【0131】
図15に示した電磁シールド部材30Bから接着層37及び樹脂層36を省略してもよい。この場合の電磁シールド部材30Bは、金属層35と、金属層35の内周面に接着層39により接着された樹脂層38とによって構成される。
【0132】
・上記各実施形態の電磁シールド部材30,30Aから接着層37及び樹脂層36を省略してもよい。この場合の電磁シールド部材30,30Aは、金属層35のみによって構成される。
【0133】
・上記各実施形態では、金属層35の外周面に、接着層37により樹脂層36を接着するようにしたが、これに限定されない。例えば、金属層35の外周面に、その金属層35よりも高い輻射率を有する塗料を塗布する塗装処理によって樹脂層36を形成するようにしてもよい。この場合には、接着層37が省略される。
【0134】
図15に示した電磁シールド部材30Bでは、金属層35の内周面に、接着層39により樹脂層38を接着するようにしたが、これに限定されない。例えば、金属層35の内周面に、その金属層35よりも高い輻射率を有する塗料を塗布する塗装処理によって樹脂層38を形成するようにしてもよい。この場合には、接着層39が省略される。
【0135】
・上記各実施形態の電磁シールド部材30,30Aの一面に接着層又は粘着層を設けるようにしてもよい。例えば、電磁シールド部材30,30Aの端部31の外周面に接着層又は粘着層を設けるようにしてもよい。この構成によれば、電磁シールド部材30,30Aの端部31に端部32を重ね合わせた場合に、端部32を端部31に接着させることができる。これにより、カシメリング71,72等によって固定される前の段階において、電磁シールド部材30,30Aがシート状態に戻ることを好適に抑制できる。
【0136】
・上記各実施形態の電磁シールド部材30,30Aの巻き方は特に限定されない。上記各実施形態では、電磁シールド部材30,30Aの第2方向Y1の端部31,32同士を重ね合わせることによって、電磁シールド部材30,30Aを筒状に形成するようにした。これに限らず、例えば、電磁シールド部材30,30Aの第2方向Y1の中間部同士を重ね合わせることによって、電磁シールド部材30,30Aを筒状に形成するようにしてもよい。この場合には、電磁シールド部材30,30Aの第2方向Y1の端部31,32同士が重なっていなくてもよい。すなわち、端部32の内周面が端部31の外周面に接触していなくてもよい。また、電磁シールド部材30,30Aの周方向の全周にわたって2重に重ね合わさるように、電磁シールド部材30,30Aを電線20に対して巻くようにしてもよい。
【0137】
・上記各実施形態では、カシメリング71,72を、鉄合金からなる母材の表面にアルミニウムメッキ被膜を形成した構造体に具体化したが、これに限定されない。例えば、カシメリング71,72の母材をアルミニウム合金により構成するようにしてもよい。この場合のカシメリング71,72は、例えば以下のように形成することができる。まず、筒状部材51,61の外径よりも内径が大きく形成された円筒状のアルミニウム合金製パイプを、筒状部材51,61の外周を包囲するように設けられた電磁シールド部材30の外側に配置する。すなわち、アルミニウム合金製パイプを、筒状部材51,61及び電磁シールド部材30,30Aと径方向に重なるように、電磁シールド部材30,30Aの外側に配置する。続いて、金型等を用いて、アルミニウム合金製パイプを周方向の略全周にわたって径方向内側に押圧する。これにより、アルミニウム合金製パイプが縮径されるように塑性変形されてカシメリング71,72が形成される。
【0138】
・上記各実施形態の金属層35と筒状部材51,61とカシメリング71,72とを全て銅系の金属材料によって構成してもよい。また、金属層35と筒状部材51,61とカシメリング71,72とを全て錫系の金属材料によって構成してもよい。
【0139】
・上記各実施形態では、カシメリング71,72を、金属層35及び筒状部材51,61と同種の金属によって構成するようにした。これに限らず、例えば、カシメリング71,72を、金属層35及び筒状部材51,61と異種の金属によって構成するようにしてもよい。
【0140】
・上記各実施形態では、金属層35を、筒状部材51,61と同種の金属によって構成するようにした。これに限らず、例えば、金属層35を、筒状部材51,61と異種の金属によって構成するようにしてもよい。
【0141】
・上記各実施形態では、筒状部材51,61の外周面に電磁シールド部材30,30Aの端部33,34を電気的に接続した状態で固定する固定部材としてカシメリング71,72を用いたが、これに限定されない。例えば、カシメリング71,72の代わりに、金属バンド、樹脂製の結束バンドや粘着テープ等を固定部材として用いてもよい。
【0142】
・上記各実施形態では、電磁シールド部材30,30Aが接続される筒状部材を、コネクタ50,60が有する筒状部材51,61に具体化したが、これに限定されない。例えば、電磁シールド部材30,30Aが接続される筒状部材を、外装部材80を構成する金属製パイプに具体化してもよい。この場合には、電磁シールド部材30,30Aと筒状部材との接続部分がワイヤハーネス10の長さ方向の中間部に配置される。
【0143】
・上記各実施形態では、外装部材80の内部に電磁シールド部材30,30Aを設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、外装部材80の外側に電磁シールド部材30,30Aを設けるようにしてもよい。この場合の電磁シールド部材30,30Aは、外装部材80の外周を包囲するように設けられる。
【0144】
・上記各実施形態のワイヤハーネス10から外装部材80を省略してもよい。
・上記各実施形態では、ワイヤハーネス10を構成する電線20を2本としたが、これに限定されない。車両Vの仕様に応じて電線20の本数は変更することができる。例えば、電線20の本数は1本であってもよいし、3本以上であってもよい。例えば、ワイヤハーネス10を構成する電線として、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えば、ランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を追加した構成としてもよい。
【0145】
・車両Vにおける電気機器11と電気機器12の配置関係は、上記各実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
V 車両
10,10A ワイヤハーネス
11,12 電気機器
20 電線
21 芯線
22 絶縁被覆
30,30A,30B 電磁シールド部材
31 端部(第1端部)
32 端部(第2端部)
33 端部(第3端部)
34 端部(第4端部)
35 金属層
36 樹脂層(第1樹脂層)
37 接着層
38 樹脂層(第2樹脂層)
39 接着層
40 折り曲げ部
41 山部
42 谷部
45,46,47 スリット部
46A,47A スリット群
48 終端部
49 スリット
50,60 コネクタ
51,61 筒状部材
71,72 カシメリング(固定部材)
80 外装部材
90 折り曲げ部
91 山部
91A 山折り部(第1山折り部)
91B 山折り部(第2山折り部)
91C 平面部(第2平面部)
91D 突出部(第1突出部)
91E 突出部(第2突出部)
92 谷部(第1部分)
92A 谷折り部(第1谷折り部)
92B 谷折り部(第2谷折り部)
92C 平面部(第1平面部、第1部分)
95 スリット部
95A スリット群
X1 第1方向
Y1 第2方向
Z1 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15