(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179282
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】救難艇
(51)【国際特許分類】
B63B 27/14 20060101AFI20221125BHJP
B63C 9/02 20060101ALI20221125BHJP
B63C 13/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B63B27/14 101F
B63C9/02
B63C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164890
(22)【出願日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021085949
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】芝山 晋
(72)【発明者】
【氏名】太田 延治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スロープ部材の設計の自由度を高める救難艇を提供する。
【解決手段】船体本体10の前部10aに開閉可能に設けられ、開状態においては船体本体に救助用の開口部22を形成すると共に、閉状態においては開口部を塞いで浸水を抑制する扉20と、扉の閉状態において船体本体内に収容される第1の姿勢と、扉の開状態において開口部を介して船体本体内から船体本体外に亘って橋渡し状態となる第2の姿勢とに変位可能なスロープ部材30と、を有し、第2の姿勢のスロープ部材における橋渡し方向の長さL1は、閉状態の扉における、開口部の下端に対応する位置から扉の上端までの長さよりも長い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体本体と、
船首または前記船体本体の側部に開閉可能に設けられ、開状態においては前記船体本体に救助用の開口部を形成すると共に、閉状態においては前記開口部を塞いで浸水を抑制する扉と、
前記扉の閉状態において前記船体本体内に収容される第1の姿勢と、前記扉の開状態において前記開口部を介して前記船体本体内から前記船体本体外に亘って橋渡し状態となる第2の姿勢とに変位可能なスロープ部材と、を有し、
前記第2の姿勢の前記スロープ部材における橋渡し方向の長さは、閉状態の前記扉における、前記開口部の下端に対応する位置から前記扉の上端までの長さよりも長い、救難艇。
【請求項2】
前記開口部の下端の位置は、定員数の乗員が搭乗したときの喫水線よりも高い、請求項1に記載の救難艇。
【請求項3】
前記スロープ部材は、前記船体本体に対して、前記船体本体内のスロープ回動軸を中心として回動し、
前記第2の姿勢においては、前記スロープ部材の自由端部が前記船体本体外に位置する、請求項1または2に記載の救難艇。
【請求項4】
前記扉は、前記船体本体に対して扉回動軸を中心として回動し、
前記扉回動軸は前記船体本体外に配置される、請求項3に記載の救難艇。
【請求項5】
前記スロープ回動軸は、前記扉回動軸よりも高い位置に配置される、請求項4に記載の救難艇。
【請求項6】
前記スロープ部材は、前記スロープ回動軸の軸線方向において複数に分割して構成された、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の救難艇。
【請求項7】
前記スロープ部材の前記自由端部に、前記船体本体内ではしごを支持するための支持部を設けた、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の救難艇。
【請求項8】
前記船体本体には、前記船体本体内において互いに向き合う一対の軸部が設けられ、 前記スロープ部材の両側部には、前記一対の軸部のそれぞれと係合するスライド溝が形成され、
前記スライド溝は前記一対の軸部に対してスライド移動可能であると共に回動変位が可能である、請求項1または2に記載の救難艇。
【請求項9】
前記スロープ部材は、前記第1の姿勢において折りたたまれ、前記第2の姿勢において展開される、請求項1または2に記載の救難艇。
【請求項10】
前記船体本体の側部の内面に配置され、装備品を装着可能な第1の装備品装着部と、
前記船体本体の前記側部の外面に配置され、装備品を装着可能な第2の装備品装着部と、を有し、
前記側部の厚み方向からみて、前記第1の装備品装着部に対して前記第2の装備品装着部の少なくとも一部が重なる、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の救難艇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救難艇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、救難艇で被災者を救助する際、スロープ(踏み板)を船体から地面または水面に橋渡しすることで、スロープを通じて被災者を船体内に移動させることが行われている。また、特許文献1では、船首に設けた回動扉を前方に倒すことで、回動扉を救助用のスロープとして用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、回動扉がスロープを兼ねることから、スロープとしての形状等に関し設計の自由度が低い。例えば、回動扉は船舶の一部を成すため、回動扉の長さ(高さ)に制約があり、回動扉が短いと、スロープとなったときの傾斜角度を緩やかにすることが困難である。
【0005】
本発明は、スロープ部材の設計の自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一態様による救難艇は、船体本体と、船首または前記船体本体の側部に開閉可能に設けられ、開状態においては前記船体本体に救助用の開口部を形成すると共に、閉状態においては前記開口部を塞いで浸水を抑制する扉と、前記扉の閉状態において前記船体本体内に収容される第1の姿勢と、前記扉の開状態において前記開口部を介して前記船体本体内から前記船体本体外に亘って橋渡し状態となる第2の姿勢とに変位可能なスロープ部材と、を有し、前記第2の姿勢の前記スロープ部材における橋渡し方向の長さは、閉状態の前記扉における、前記開口部の下端に対応する位置から前記扉の上端までの長さよりも長い。
【0007】
この構成によれば、スロープ部材は、前記扉の閉状態において前記船体本体内に収容される第1の姿勢と、前記扉の開状態において前記開口部を介して前記船体本体内から前記船体本体外に亘って橋渡し状態となる第2の姿勢とに変位可能である。前記第2の姿勢の前記スロープ部材における橋渡し方向の長さは、閉状態の前記扉における、前記開口部の下端に対応する位置から前記扉の上端までの長さよりも長い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スロープ部材の設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】第1変形例の救難艇におけるスロープ部材の模式図である。
【
図6】第2変形例の救難艇の模式的な縦断面図である。
【
図7】第3変形例の救難艇の前部、右側部の模式的図である。
【
図8】第4変形例の救難艇におけるスロープ部材の模式的な側面図である。
【
図9】第5変形例の救難艇の前部の模式的な縦断面図である。
【
図11】船体本体の右側部を前方からみた模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る救難艇の斜視図である。この救難艇100は、海、川、湖等で遭難した人を救助するのに用いられる船舶である。救難艇100は船体本体10を有する。船体本体10は、前部10a、後部10b、左側部10c、右側部10dを有する。船体本体10の後部10bに、推進用の船外機11が取り付けられる。操船者は船外機11を操作して船体本体10を推進および操舵する。
【0012】
図2は、救難艇100の前部10aの斜視図である。
図3は、救難艇100の正面図である。
図4は、救難艇100の前部10aの縦断面図である。船体本体10には、回動可能な部材として扉20とスロープ部材30とが設けられる。扉20は、船首である前部10aに対して開閉可能に設けられる。スロープ部材30は、前部10aに対して回動可能に設けられる。扉20は、回動により、
図1、
図3に示す閉状態と
図2、
図4に示す開状態とに変位可能である。スロープ部材30は、回動により、
図1、
図3に示す第1の姿勢と
図2、
図4に示す第2の姿勢とに変位可能である。
【0013】
以下、扉20およびスロープ部材30の構成、取り付け構造、および動作について説明する。
図3、
図4に示すように、船体本体10外において船体本体10の前部10aに扉回動軸21が配置されている。扉回動軸21は一例として蝶番により構成される。扉20は、扉回動軸21を中心として回動する。扉回動軸21は、開状態においては船体本体10に救助用の開口部22を形成すると共に、閉状態においては開口部22を塞いで浸水を抑制する。すなわち、扉回動軸21は、閉状態においては船体の一部を構成する。開口部22には、閉状態の扉回動軸21と当接するパッキン等のシール部22が配置され(
図4)、浸水抑制機能が高められている。操船者は、扉回動軸21を、閉状態においてロック部材13(
図1)によって固定することが可能である。
【0014】
スロープ部材30は、主としてスロープ回動軸31と板状部32とを有する。船体本体10内における左右両端部に軸支部12が設けられている(
図1)。左右の軸支部12にスロープ回動軸31が軸支されている。スロープ回動軸31は船体本体10内で回動し、スロープ部材30は、スロープ回動軸31を中心として回動する。スロープ部材30は、第1の姿勢においては、船体本体10内に収容される。スロープ部材30は、扉回動軸21が開状態のときに第2の姿勢に変位可能である。第2の姿勢においては、スロープ部材30は、開口部22を介して船体本体10内から船体本体10外に亘って橋渡し状態となり、自由端部30aが船体本体10外に位置する。
【0015】
スロープ部材30は、平坦な板状部32の左右方向両端に、屈曲したリブ33(
図2、
図4)を備える。通常、航行時は扉回動軸21が閉状態にされると共に、スロープ部材30は第1の姿勢にされる。第1の姿勢においては、板状部32が、船体本体10のデッキ面14(
図4)と当接している。
【0016】
遭難者の救助はスロープ部材30を第2の姿勢にして行われる。例えば、救助者は、救難艇100の前部10aを岸に近づけ、扉回動軸21を回動させて開状態にしてからスロープ部材30を回動させて第2の姿勢にする。岸の地面に自由端部30aが接する。救助者は、ブリッジとなったスロープ部材30の板状部32を踏み板として利用し、板状部32を経由して遭難者を船内に誘導する。なお、第2の姿勢においては左右のリブ33は上方に突出しているので、車椅子等の車輪の脱落抑止効果がある。
【0017】
スロープ部材30は十分な剛性と軽量性とを要するので、一例としてFRP等で構成されるが、素材は限定されない。なお、自由端部30aが、岸ではなく水面または水中に没するように用いられる場合がある。そこで、スロープ部材30に浮力を保つための浮力体を取り付けてもよい。そうすれば、水面より上に存在する板状部32の領域を十分に確保することができる。
【0018】
ところで、第2の姿勢のスロープ部材30における橋渡し方向の長さをL1とする(
図2)。長さL1は、本実施の形態においては、スロープ回動軸31に直交する方向におけるスロープ回動軸31から自由端部30aまでの長さであり、スロープ部材30の長手方向の全長である。なお、長さL1を定義する際のスロープ回動軸31の起点は、スロープ回動軸31の回転中心位置としてもよいが、長さL1方向における自由端部30aとは反対側の端位置としてもよい。
【0019】
閉状態の扉20における、開口部22の下端22aに対応する位置から扉20の上端20aまでの長さをL2とする(
図3)。なお、長さL2は、扉回動軸21に直交する方向における扉回動軸21から扉20の自由端部(上端20a)までの長さとして定義されてもよい。ここで、長さL1は長さL2よりも長い(L1>L2)。
【0020】
仮に、従来のように、扉20がスロープを兼ねる構成とした場合、扉20の長さに制約があることから、扉20が短く、スロープとなったときの傾斜角度を緩やかにすることが困難である。これに対し、本実施の形態では、スロープ部材30が扉20とは別個に構成され、開口部22を介して船体本体10内から船体本体10外に亘って橋渡し状態となる。従って、スロープ部材30の設計において扉20に依存しないため、スロープ部材30の形状等に関し設計の自由度が高い。例えば、板状部32を十分に長く確保できるようにスロープ部材30を設計することができるので、救助作業が容易となる。
【0021】
また、上下方向において、スロープ回動軸31の回動中心の位置H3は、扉回動軸21の回動中心の位置H2よりも高い(
図3)。従って、スロープ部材30を第2の姿勢にする際、船内における扉回動軸21より高い位置から船外における扉回動軸21より低い位置に亘ってスロープ部材30を傾斜させて橋渡し状態にすることが容易である。
【0022】
また、
図3に示すように、上下方向における開口部22の下端22aの位置は、定員数の乗員が搭乗したときの喫水線H1よりも高い。従って、開口部22から水が船内に入りにくくなり、救助の際の浸水を抑制することができる。
【0023】
なお、
図3に示すように、側部10c、10dに、着脱可能なサイドフロート19を取り付けてもよい。サイドフロート19は、例えば、必要なときに空気などを注入することにより膨らませることが可能な浮力体である。これによれば、船舶が左右方向に傾き過ぎることが抑制される。このほか、浮かびやすい構造にするために、船体本体10内に、ダックビルバルブ等を備える排水機構を設けてもよい。
【0024】
本実施の形態によれば、第2の姿勢のスロープ部材30における橋渡し方向の長さL1は、閉状態の扉20における、開口部22の下端22aに対応する位置から扉20の上端20aまでの長さL2よりも長い。これにより、スロープ部材30の設計の自由度を高めることができる。
【0025】
また、開口部22の下端22aの位置は、定員数の乗員が搭乗したときの喫水線H1よりも高いので、救助の際の浸水を抑制することができる。
【0026】
また、スロープ部材30は、船体本体10内のスロープ回動軸31を中心として回動し、扉20は、船体本体10外の扉回動軸21を中心として回動するので、扉20とスロープ部材30のそれぞれの設計自由度を高めることができる。
【0027】
また、スロープ回動軸31は、扉回動軸21よりも高い位置に配置されるので、地面等の低い位置へのスロープ部材30の橋渡しが容易となる。
【0028】
また、扉20およびスロープ部材30が前部10aに設けられたので、後部10bに船外機11を取り付ける船舶への適用が容易である。なお、遭難者の救助を可能にする観点およびトランサムに船外機を取り付け可能とする観点からは、扉20およびスロープ部材30が取り付く位置は、前部10aに限定されず、側部10c、10dであってもよい。
【0029】
なお、扉20およびスロープ部材30を回動可能にするための軸支構成は例示したものに限定されない。例えば、スロープ回動軸に相当する軸部を船体本体10内に固定すると共に、この軸部に対して回動可能に係合する環状部をスロープ部材30に設けてもよい。扉回動軸21も、蝶番に限らず、扉20または船体本体10に軸部を設けると共に、この軸部に対して回動可能に係合する環状部を船体本体10または扉20に設けてもよい。
【0030】
次に、
図5~
図11で、変形例を説明する。以下の図では、構成要素を模式的に示すので、
図1~
図4に示したものとは形状が異なる場合があるが、変形例において機能に影響しない部分の形状は、
図1~
図4に示した形状と同じとしてもよい。
【0031】
図5は、第1変形例の救難艇におけるスロープ部材30の模式図である。この例では、スロープ部材30が、並列する第1のスロープ部材30Aと第2のスロープ部材30Bとに分割して構成される。船体本体10には、第1のスロープ部材30Aに対応して2つの軸支部12Aが設けられ、第2のスロープ部材30Bに対応して2つの軸支部12Bが設けられる。軸支部12Aにスロープ回動軸31Aが軸支され、軸支部12Bにスロープ回動軸31Bが軸支される。スロープ部材30A、30Bは、スロープ回動軸31A、31Bを中心として独立して回動可能である。従って、スロープ部材30A、30Bの扱いが容易となるので、例えば回動操作をする際に軽い力で操作することができる。
【0032】
なお、スロープ回動軸31の軸線方向において分割するスロープ部材30の分割数は3以上であってもよい。なお、扉20についても、回動軸線方向に複数に分割して構成されてもよい。
【0033】
図6は、第2変形例の救難艇の模式的な縦断面図である。第2変形例では、スロープ部材30を、はしご16を支える支持部材としても利用できるようにする。船体本体10のデッキ面には、トラックレール17が固定される。はしご16には、トラックレール18が固定される。トラックレール17、18は係止穴を複数備える部材である。スロープ部材30の自由端部には係止部30bが設けられている。係止部30bを設けた点以外は、第2変形例におけるスロープ部材30の構成は
図1~
図4で示したスロープ部材30と同様である。
【0034】
高い場所に居る遭難者を救出する際に、はしご16を立てる必要がある。救出者は、はしご16の下端部に設けられた係止部16aを、トラックレール17における任意の係止穴に係止し、はしご16を斜めの姿勢にする。さらに、救出者は、スロープ部材30の係止部30bをトラックレール18における任意の係止穴に係止する。これにより、スロープ部材30が、はしご16を支える支持棒として機能するので、はしご16が安定して斜めに起立する。よって、はしご16を用いる救助にもスロープ部材30を有効利用することができる。
【0035】
図7(a)は、第3変形例の救難艇の前部の模式的な縦断面図である。
図7(b)は、第3変形例における右側部10dおよびスロープ部材30の右端部30dの断面図である。なお、スロープ部材30は左右対称に構成されるので、左側部10cとスロープ部材30の左端部との関係については図示を省略する。
【0036】
船体本体10の右側部10d、左側部10cからは、左右方向内側に向かって軸部31Cが突設される。従って、一対の軸部31Cが、船体本体10内において互いに向き合っている。スロープ部材30の両側部(右端部30dと左端部)には、軸部31Cと係合するスライド溝34が形成されている。スライド溝34は、スロープ部材30の幅方向(左右方向)内側に窪んだ溝であり、スロープ部材30のほぼ全長に亘って形成されている。スライド溝34は一対の軸部31Cに対してスライド移動可能であると共に回動変位が可能である。
【0037】
スライド溝34が軸部31Cと係合する任意の位置にスロープ部材30を位置させることができる。これらの位置には第1の姿勢(
図7(a)の点線)、第2の姿勢(
図7(a)の実線)となる位置が含まれる。この構成によれば、スロープ部材30の基本動作がスライド動作となる。スロープ部材30の重量が大きい場合であっても、回動により反転させる必要がないので、扱いが容易となる。なお、スロープ部材30を右側部10dまたは左側部10cに設ける場合は、一対の軸部31Cの突出方向は前後方向となる。なお、軸部31Cは回転自在なローラであってもよい。
【0038】
図8(a)、(b)は、第4変形例の救難艇におけるスロープ部材30の模式的な側面図である。第4変形例では、スロープ部材30は折りたたみ型に構成される。例えば、
図8(a)に示す例では、スロープ部材30は2つ折りに構成され、第1部材35と第2部材36とが連結部41で回動自在に連結されている。連結部41は、例えば、スロープ部材30の幅方向の両端部に設けられる。スロープ部材30は、第1の姿勢において折りたたまれ、第2の姿勢において展開される。
【0039】
なお、スロープ部材30を折りたたみ型に構成する際の折り数は問わず、例えば、
図8(b)に示すように3つ折りにしてもよい。このスロープ部材30では、第1部材35と第2部材36とが連結部41で回動自在に連結され、さらに、第2部材36と第3部材37とが連結部42で回動自在に連結されている。これらのような折りたたみ型の構成とすれば、扱いが容易となる。また、第1の姿勢において、スロープ部材30が船内で邪魔になりにくい。なお、スロープ部材30を展開状態で安定維持するための補助部材を設けてもよい。
【0040】
図9は、第5変形例の救難艇の前部の模式的な縦断面図である。船体本体10には、左右方向に沿って軸部31Dが設けられている。スロープ部材30には、軸部31Dに対応する凹状の係合部38が形成されている。軸部31Dに係合部38を係止すると、スロープ部材30は軸部31Dに対して回動可能で且つ、長手方向の位置が規制された状態となり、第2の姿勢となる。一方、軸部31Dから係合部38を離脱させれば、スロープ部材30は自由となり、デッキ面にスロープ部材30を置くことで第1の姿勢となる。
【0041】
この構成によれば、スロープ部材30が船体本体10から着脱可能となり、第2の姿勢においては船体本体10に対する位置が安定するので、扱いが容易となる。特に、第1の姿勢におけるスロープ部材30の配置位置が任意となるので便利である。なお、スロープ部材30の自由端部にも係合部38を設け、この係合部38を軸部31Dに係止することで、スロープ部材30が第1の姿勢となるようにしてもよい。
【0042】
図10は、第6変形例の救難艇の斜視図である。
図10において、船外機11等の図示が省略されている。
図10に例示するように、船体本体10に、装備品を装着可能な装備品装着部としてのトラックレールを少なくとも1つ設けてもよい。
図10では、トラックレール52、53が示されている。
【0043】
図11は、第6変形例における船体本体10の右側部10dを前方からみた模式的断面図である。右側部10dの内面10d1にはトラックレール51が配置され、右側部10dの外面10d2にはトラックレール53が配置される。また、船体本体10の左側部10cの内面10c1にはトラックレール52が配置される(
図10)。左側部10cの外面にもトラックレールが配置される(図示せず)。これら複数のトラックレールの構成は互いに共通である。トラックレール51~53は係止穴57を複数備える部材である。
【0044】
図11に示すように、右側部10dに固定されるトラックレール51、53は、右側部10dを挟んで対向して配置される。トラックレール51とトラックレール52とは、締結具としての複数のボルト55およびナット56によって共締め状態で右側部10dに固定されている。これにより、トラックレール51、52を固定する部品の点数の増加を抑制することができる。
【0045】
また、右側部10dの厚み方向からみて、トラックレール51に対してトラックレール52が重なるように配置されている。つまり、トラックレール51、52の前端位置、後端位置、上端位置、下端位置が互いにほぼ一致している。これにより、右側部10dが補強されるので、船体本体10の変形を抑制することができる。なお、この補強効果を得る観点からは、右側部10dの厚み方向からみて、トラックレール51に対してトラックレール52の少なくとも一部が重なってもよい。なお、左側部10cにおいても、トラックレールの固定態様は同様である。
【0046】
なお、トラックレールを船体本体10の側部に固定する方法は例示したものに限定されず、例えば接着によって固定してもよい。また、特開平6-191468号公報や特開2008-238845号公報で示されるような、凹部ないし溝と係合部とを係合させる固定構造を採用してもよい。
【0047】
各トラックレールに装着される装備品の種類や装着の態様は問わない。例えば、右側部10dの外面10d2に固定されたトラックレール53や左側部10cの外面に固定されたトラックレールには、
図10に示すように、インフレータブルである浮力体58を取り付けてもよい。あるいは、船体本体10を持ち運ぶためのハンドル(図示せず)を装着してもよい。
【0048】
浮力体58をトラックレール53に装着する際には、
図10に例示するように、係合金具59や不図示のロープなどを用いて、1つ以上の係止穴57に対して浮力体58を装着してもよい。
図10には係合金具59の1つを拡大して示してある。例えば、隣接する2つの係止穴57に係合金具59を掛け渡し、浮力体58に設けた係止部(図示せず)に対して係合金具59の長穴を介してボルト等によって係合金具59を固定してもよい。
【0049】
また、右側部10dの内面10d1に固定されたトラックレール51および左側部10cの内面10c1に固定されたトラックレール52には、
図10に示すように椅子54を装着してもよい。椅子54は例えば、トラックレール51、52間に掛け渡すように装着される。なお、椅子54の装着の方法は問わない。また、トラックレール51、52には、はしごや上記ハンドルを装着してもよい。なお、はしごは立てて固定してもよいし、寝かせて固定してもよい。なお、上記ハンドルについては、船体本体10外のトラックレール53と船体本体10内のトラックレール51、52の双方に対して装着されてもよい。
【0050】
なお、船体本体10の内と外の双方にトラックレールを設けることは必須でない。また、右側部10dおよび左側部10cの双方にトラックレールを設けることは必須でない。すなわち、トラックレールは少なくとも1つ配置されてもよい。
【0051】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の各種変形例の一部を適宜組み合わせてもよい。
【0052】
本出願は、2021年5月21日に出願された日本出願第2021-085949号に基づく優先権を主張するものであり、当該日本出願に記載された全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0053】
10 船体本体、 10d 右側部、 10c 左側部、 20 扉、 20a 上端、 22 開口部、 22a 下端、 30 スロープ部材、 100 救難艇、 L1、L2 長さ