(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179286
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】水噴射式織機
(51)【国際特許分類】
D03D 47/32 20060101AFI20221125BHJP
D03D 45/32 20060101ALI20221125BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
D03D47/32
D03D45/32
F16N31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167092
(22)【出願日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2021085092
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋田 悠吾
(72)【発明者】
【氏名】大山 勝也
(72)【発明者】
【氏名】米島 芳之
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA16
(57)【要約】
【課題】ロッキングシャフトを支持する中間支持部のハウジング部から排出される古い潤滑剤が水受けパン内に落ちるのを防ぐことにより、排出される水に含まれる油分を可及的に少なくすることができる水噴射式織機を提供すること。
【解決手段】
ロッキングシャフト及びロッキングシャフトを支持する中間支持部を含む筬打ち装置と、水受けパンとを備え、中間支持部は、軸受を内装するハウジング部であって、軸受を潤滑するための潤滑剤が供給されることによって古い潤滑剤が外部に排出されるように構成されたハウジング部を有する、水噴射式織機において、筬打ち装置が、ハウジング部から排出された排出潤滑剤を回収する潤滑剤回収機構を備え、潤滑剤回収機構が、水受けパンとは別に設けられた貯留部であって潤滑剤を貯留可能に構成された貯留部と、ハウジング部から排出された排出潤滑剤を貯留部へ導く導出管とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機フレームにおける一対のサイドフレームに架設されたロッキングシャフト及び前記ロッキングシャフトを前記サイドフレーム間において支持する中間支持部を含むと共に緯入れされた緯糸を筬打ちする筬打ち装置と、前記ロッキングシャフトの下方に設けられると共に緯入れノズルから噴射された噴射水を受ける水受けパンとを備え、前記中間支持部は、軸受を内装するハウジング部であって、前記軸受を潤滑するための潤滑剤を内部に供給可能に構成されると共に潤滑剤が供給されることによって古い潤滑剤が外部に排出されるように構成されたハウジング部を有する、水噴射式織機において、
前記筬打ち装置が、前記ハウジング部から排出された古い潤滑剤である排出潤滑剤を回収する潤滑剤回収機構を備え、
前記潤滑剤回収機構が、前記水受けパンとは別に設けられた貯留部であって潤滑剤を貯留可能に構成された貯留部と、前記ハウジング部から排出された前記排出潤滑剤を前記貯留部へ導く導出管とを含む
ことを特徴とする水噴射式織機。
【請求項2】
前記潤滑剤回収機構は、前記ハウジング部の下方に設けられて前記排出潤滑剤を受ける受け部であって前記導出管が連通される受け部を有し、前記貯留部が前記受け部の下方に設けられるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水噴射式織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機フレームにおける一対のサイドフレームに架設されたロッキングシャフト及び前記ロッキングシャフトを前記サイドフレーム間において支持する中間支持部を含むと共に緯入れされた緯糸を筬打ちする筬打ち装置と、前記ロッキングシャフトの下方に設けられると共に緯入れノズルから噴射された噴射水を受ける水受けパンとを備え、前記中間支持部は、軸受を内装するハウジング部であって、前記軸受を潤滑するための潤滑剤を内部に供給可能に構成されると共に潤滑剤が供給されることによって古い潤滑剤が外部に排出されるように構成されたハウジング部を有する、水噴射式織機に関する。
【背景技術】
【0002】
織機において、緯入れされた緯糸を筬打ちする筬打ち装置は、織機フレームにおけるサイドフレームに架設されたロッキングシャフトと、ロッキングシャフトに取り付けられる複数のスレーソードと、複数のスレーソードによって支持されるリードホルダと、リードホルダに固定される筬を備えている。そして、その筬打ち装置においては、ロッキングシャフトが織機の主軸の回転に連動して回動駆動されることにより、筬が揺動して筬打ちが行われるようになっている。
【0003】
また、そのような筬打ち装置において、ロッキングシャフトは、その端部において、両サイドフレームに設けられた支持軸のそれぞれに連結されることで、前記のようにサイドフレームに架設された状態とされている。また、筬打ち装置では、前記のように支持軸に連結されるかたちでロッキングシャフトが織機フレームに対しその両端部において支持されているが、それに加え、サイドフレームに架設された梁材に支持された中間支持部により、ロッキングシャフトをその中間部においても支持するように構成されたものも知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
その中間支持部は、軸受が内装されるハウジング部を有するように構成されており、そのハウジング部に内装された軸受により、ロッキングシャフトの中間部を回転可能に支持するようになっている。また、その軸受が内装されるハウジング部の内部には、軸受によるロッキングシャフトの回転支持が円滑に行われるようにするために、グリース等の潤滑剤が充填されている。
【0005】
さらに、そのハウジング部は、給油配管等により、その内部に潤滑剤を供給できるように構成されており(例えば、特許文献2)、織機の稼働中あるいは機上がり時等に新たな潤滑剤が供給されることで、前記した円滑な回転支持が長期間に亘って維持できるものとなっている。なお、特許文献2にも開示されているように、そのハウジング部は、廃油溝等を備えており、新たな潤滑剤が供給されるのに伴い、それまで充填されていた(古くなった)潤滑剤が、排出潤滑剤として排出されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-336669号公報
【特許文献2】特開2004-205013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の織機においては、前記のように新たな潤滑剤が供給されることによって中間支持部(ハウジング部)から排出される排出潤滑剤は、そのまま中間支持部の下方に落ちるようになっている。そして、織機が水噴射式織機である場合には、織機フレームの内側における下部に、緯入れノズルから噴射された噴射水による緯入れに伴って下方へ落ちる水を受ける水受けパン(アンダーパン)が設けられているが、前記のように下方に落ちる排出潤滑剤が、その水受けパン内に落ちるようになっている。その結果、水噴射式織機から排出される水は、潤滑剤(油分)を多く含んだものとなっている。そのため、織布工場内においては、その排出された水の処理(排水処理)が行われているが、そのように油分が多く含まれる場合、その排水処理に多くの労力と費用とが必要となっている。
【0008】
そこで、本発明は、前記排出潤滑剤が水受けパン内に落ちるのを防ぐことにより、排出される水に含まれる油分を可及的に少なくすることができる水噴射式織機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、織機フレームにおける一対のサイドフレームに架設されたロッキングシャフト及び前記ロッキングシャフトを前記サイドフレーム間において支持する中間支持部を含むと共に緯入れされた緯糸を筬打ちする筬打ち装置と、前記ロッキングシャフトの下方に設けられると共に緯入れノズルから噴射された噴射水を受ける水受けパンとを備え、前記中間支持部は、軸受を内装するハウジング部であって、前記軸受を潤滑するための潤滑剤を内部に供給可能に構成されると共に潤滑剤が供給されることによって古い潤滑剤が外部に排出されるように構成されたハウジング部を有する、水噴射式織機を前提とする。
【0010】
その上で、前記の目的を達成すべく、本発明は、その前提とする水噴射式織機において前記筬打ち装置が、前記ハウジング部から排出された古い潤滑剤である排出潤滑剤を回収する潤滑剤回収機構を備えており、その前記潤滑剤回収機構が、前記水受けパンとは別に設けられた貯留部であって潤滑剤を貯留可能に構成された貯留部と、前記ハウジング部から排出された前記排出潤滑剤を前記貯留部へ導く導出管とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、そのような本発明による水噴射式織機において、前記潤滑剤回収機構が、前記ハウジング部の下方に設けられて前記排出潤滑剤を受ける受け部であって前記導出管が連通される受け部を有しており、その前記受け部の下方に前記貯留部が設けられるように構成されていても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、筬打ち装置における中間支持部(ハウジング部)から排出された排出潤滑剤が、水受けパン側へ落ちること無く、潤滑剤回収機構によって回収されるため、水受けパン内の水に排出潤滑剤が混入するのを防ぐことができる。それにより、水噴射式織機において、排出される水に含まれる油分を可及的に少なくすることができ、その結果として、排水処理に要する費用等を抑えることができる。
【0013】
また、潤滑剤回収機構を、受け部で排出潤滑剤を受けるような構成とすることにより、潤滑剤回収機構を備えた水噴射式織機の製造に関わるコスト(製造コスト)を抑えることができる。より詳しくは、ハウジング部は、前記のように新たな潤滑剤が供給されることにより、軸受を収容する部分の両側から排出潤滑剤が排出されるものとなっている。そのため、その排出潤滑剤を直接的に貯留部に導くには、ハウジング部(中間支持部)毎に2本の導出管が必要となる。
【0014】
それに対し、潤滑剤回収機構を、ハウジング部の下方で排出潤滑剤を受けるように設けられた受け部を有する構成とすることにより、ハウジング部における軸受を収容する部分から排出された排出潤滑剤は、受け部において一旦受けられ、その上でその受け部に連通された導出管により貯留部に導かれることとなる。したがって、その構成では、ハウジング部(中間支持部)毎の導出管の数を1本とすることができる。そして、その構成によれば、導出管の数だけでなく、その導出管を支持するための構成や導出管を貯留部に導くための構成がその1本の導出管に応じたもので済むため、構成がより単純化され、それに伴って前記製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明が適用される水噴射式織機の平面図である。
【
図2】本発明が適用される水噴射式織機の側面断面図である。
【
図3】本発明による潤滑剤回収機構の説明図である。
【
図4】本発明による潤滑剤回収機構の構成の他の例を示す説明図(
図5におけるA-A線断面図)である。
【
図5】本発明による潤滑剤回収機構の構成の他の例を示す説明図(
図4におけるB-B線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、
図1~3に基づき、本発明による水噴射式織機の一実施例を説明する。
【0017】
水噴射式織機Lは、
図1に示すように、フレーム1における一対のサイドフレーム2、2の一方において、そのサイドフレーム2に対し固定的に設けられた緯入れノズルNZを備えている。そして、水噴射式織機Lは、その緯入れされた緯糸Yが後述する筬打ち装置における筬11によって織布Wの織前CFに筬打ちされるものとなっている。
【0018】
また、その水噴射式織機Lにおいて、フレーム1は、一対のサイドフレーム2、2を主体とし、その両サイドフレーム2、2が4本の梁材3a、3b、3c、3dで連結された構成となっている(
図2)。すなわち、フレーム1においては、4本の梁材3a、3b、3c、3dが、一対のサイドフレーム2、2に架設されている。なお、水噴射式織機Lにおいては、その前後方向における一方の側(後側)において、両サイドフレーム2、2に支持されるかたちで、経糸Tを送り出すための経糸ビーム6が備えられている。さらに、前記前後方向における他方の側(前側)には、製織された織布Wを巻き取るための巻取ビーム8が、両サイドフレーム2、2に支持されるかたちで備えられている。
【0019】
前記した4本の梁材について、前記前後方向における巻取ビーム側8に配置される梁材3a、3bは、上下方向に互いに位置を異ならせて配置されており、上側の梁材3aが所謂フロントトップステーであり、下側の梁材3bが所謂フロントボトムステーである。また、前記前後方向における経糸ビーム6側に配置される梁材3c、3dも、上下方向に互いに位置を異ならせて配置されており、上側の梁材3cが所謂リアトップステーであり、下側の梁材3dが所謂リアボトムステーである。
【0020】
また、水噴射式織機Lは、筬11を揺動駆動する筬打ち装置10を備えている。その筬打ち装置10においては、筬11がリードホルダ12及びスレーソード13を介してロッキングシャフト14に支持されている(
図3)。そして、そのロッキングシャフト14は、その両端部で、各サイドフレーム2においてその内側に突出するように設けられた支持軸(図示略)に対しカップリング部材を介して連結されている。それにより、ロッキングシャフト14は、サイドフレーム2、2間において、両支持軸に架設されるかたちで、織幅方向に延在するように設けられている。
【0021】
また、筬打ち装置10においては、ロッキングシャフト14は、前記のように両支持軸に支持されるのに加え、その支持軸間においても、フロントトップステー3aに支持された中間支持部30によって支持されている。但し、本実施例では、その中間支持部30は、フロントトップステー3aに固定された支持プレート4に取り付けられている。また、中間支持部30は、支持軸(サイドフレーム2、2)間において、間隔をおいて2箇所に設けられている。
【0022】
詳しくは、フロントトップステー3aには、板状の支持プレート4が固定されている。その支持プレート4は、板厚方向に見て矩形状を成す板材であって、その板厚方向における両端面の長辺方向(長手方向)における寸法がフレーム1におけるフロントトップステー3aの長手方向の寸法よりも若干小さく、且つ、その短辺方向における寸法が前記前後方向におけるフロントトップステー3aの寸法よりも大きい部材として形成されている。そして、支持プレート4は、前記長辺方向をフロントトップステー3aの長手方向(=織幅方向)と一致させた向きで、前記両端面の一方をフロントトップステー3aの下面に当接させるかたちで、フロントトップステー3aに対し固定されている。したがって、その支持プレート4における前記一方の端面は、織機上において上方を向く面(上面)となる。
【0023】
但し、その支持プレート4の固定は、前記前後方向に関し、その前記短辺方向における一端側の側縁を、フロントトップステー3aの前側の端に一致させた状態で行われている。したがって、支持プレート4は、そのようにフロントトップステー3aに固定された状態で、フロントトップステー3aの後側に突出している。因みに、フロントトップステー3aに対する支持プレート4の固定は、例えば、ネジ部材(ボルト等)を用いた取り付け、あるいは溶接による固着等のかたちで行われている。
【0024】
また、中間支持部30は、ロッキングシャフト14を回転可能に支持するための軸受34aを有しており、その軸受34aを内装するハウジング部34を主体として構成されている。さらに、中間支持部30は、ハウジング部34を支持プレート4に対し立設するかたちで取り付けるための基部32(一部のみ図示)を有している。そして、中間支持部30は、その基部32において、例えばネジ部材等により、支持プレート4に対し取り付けられている。
【0025】
また、その中間支持部30において、ハウジング部34は、前記のように軸受34aを内装しており、その軸受34aによるロッキングシャフト14の回転支持を円滑にするために、その内部に潤滑剤(グリース)が充填されている。その上で、ハウジング部34は、従来の構成と同様に、その内部に潤滑剤を供給できるように構成されている。具体的には、ハウジング部34には、その外周面から内部に向けて貫通する貫通孔(図示略)が形成されており、その貫通孔に嵌め込まれるかたちでグリースニップル等の供給口部材36が取り付けられている。
【0026】
それにより、ハウジング部34は、潤滑剤の供給部が設けられた構成となっている。その上で、その供給口部材36に、ホース等を介してグリースガン等の潤滑剤供給装置が接続され、潤滑剤がハウジング部34の内部に供給されるようになっている。
【0027】
さらに、ハウジング部34は、詳細は省略するが、従来の構成と同様に、前記のようにその内部に新たな潤滑剤が供給されることで、それまで充填されていた潤滑剤が排出潤滑剤としてその両端から排出されるように構成されている。
【0028】
また、水噴射式織機Lは、緯入れノズルNZから噴射された噴射水を受ける水受けパン5を備えている(
図2)。その水受けパン5は、略矩形状の底部を有するバスタブ状の部材として形成されている。そして、その水受けパン5は、ロッキングシャフト14の下方において、フロントボトムステー3bとリアボトムステー3dとの間に位置するように設けられている。さらに、その水受けパン5は、平面視において、織幅方向に関しサイドフレーム2、2間に亘る範囲であって、前記前後方向に関してはフロントボトムステー3bとリアボトムステー3dとの間に亘る範囲に存在するように設けられている。
【0029】
以上のような水噴射式織機において、本発明は、筬打ち装置がハウジング部から排出された排出潤滑剤を回収する潤滑剤回収機構を備えるものである。また、その潤滑剤回収機構は、水受けパンとは別に設けられた貯留部であって潤滑剤を貯留可能に構成された貯留部と、ハウジング部から排出された排出潤滑剤を貯留部へ導く導出管とを含むように構成されている。その上で、本実施例では、潤滑剤回収機構は、ハウジング部の下方に設けられて排出潤滑剤を受ける受け部であって導出管が連通される受け部を有し、貯留部が受け部の下方に設けられるように構成されている。そのような潤滑剤回収機構について、詳しくは、以下の通りである。
【0030】
前記のように潤滑剤回収機構40は、受け部42、貯留部44、及び導出管46を含むように構成されている。それらのうち、先ず受け部42について、本実施例では、受け部42は、前記した支持プレート4の一部として形成されている。
【0031】
より詳しくは、前記のように中間支持部30が取り付けられる支持プレート4において、ハウジング部34の下方に位置する部分には、その周囲の部分よりも窪むようなかたちで凹部が形成されている。そして、本実施例では、その凹部を含む支持プレート4の部分が、受け部42として機能している。その受け部42は、各中間支持部30の下方において、平面視において、矩形状を成すと共に、ハウジング部34の存在範囲を包含するような大きさに形成されている。
【0032】
その上で、その受け部42には、その前記凹部の底面に開口すると共に、支持プレート4を貫通するようにして貫通孔(排出孔)42aが形成されている。また、その排出孔42aは、図示の例では、前記凹部内において、支持プレート4の前記長辺方向に関し略中央であって、支持プレート4の前記短辺方向における前側寄りに形成されている。なお、その受け部42において、前記凹部の底面は、その排出孔42aに向けて傾斜するように形成されているのが好ましい。
【0033】
また、貯留部44は、トレー形状の部材であって、水受けパン5とは別に設けられている。その貯留部44は、底板が矩形状を成すと共に、その底板の長辺方向の寸法が支持プレート4の前記長辺方向における受け部42(前記凹部)の寸法よりも大きい大きさを有するように形成されている。その上で、上下方向に関し各受け部42の下方に配置されるかたちで、2つ設けられている。また、図示の例では、各貯留部44は、対応する受け部42の直下に位置するように設けられている。
【0034】
そして、各貯留部44は、その配置において、前記底板の長辺方向を支持プレート4の前記長辺方向に一致させた状態で、支持プレート4の下方に位置するフロントボトムステー3bに対し取り付けられるかたちで設けられている。なお、各貯留部44のフロントボトムステー3bに対する取り付けは、ネジ部材等によって行われており、各貯留部44は、フロントボトムステー3bに対し着脱可能となっている。因みに、図示の例では、貯留部44とフロントボトムステー3bとの間に水受けパン5の一部が介在するかたちとなっている。
【0035】
その上で、各受け部42とそれに対応する貯留部44との間には、受け部42で受けた排出潤滑剤を貯留部44内に導く導出管46が設けられている。その各導出管46は、潤滑剤を導く(流れを案内する)ことが可能な導管(管体)であって、その一端側の端部において、受け部42における排出孔42aに連通するようなかたちで、受け部42(支持プレート4)に対し取り付けられている。
【0036】
その上で、各導出管46は、貯留部44に向けて直線状に延びると共に、他端部が貯留部44に達するような長さ寸法を有するものとなっている。但し、図示の例では、各導出管46は、その他端部が略直角に屈曲されるように形成されており、その屈曲部において貯留部44の底面に載った状態とされている。したがって、各導出管46は、その他端部においては、貯留部44の前記底面に支えられた(支持された)状態となっている。
【0037】
以上のように構成された水噴射式織機Lによれば、ロッキングシャフト14が中間支持部30によって支持される筬打ち装置10に対し潤滑剤回収機構40が設けられているため、中間支持部30(ハウジング部34)に対し新たな潤滑剤が供給されることに伴って排出される排出潤滑剤は、下方まで落ちることは無く、受け部42によって受けられることとなる。そして、その受け部42に受けられた排出潤滑剤は、受け部42における排出孔42aから導出管46の内部へ流れ落ち、その導出管46によって貯留部44内へ導かれる。それにより、排出潤滑剤は、貯留部44の内部に流れ込み、貯留部44内に溜られる(貯留される)こととなる。
【0038】
したがって、そのような潤滑剤回収機構40が筬打ち装置10に設けられた水噴射式織機Lでは、その潤滑剤回収機構40によって排出潤滑剤が水受けパンに落ちることが防止されるため、水噴射式織機Lにおいて排出される水に多くの油分(潤滑剤)が含んだ状態となることを可及的に防止することができる。
【0039】
しかも、潤滑剤回収機構40は、受け部42で排出潤滑剤を受けるように構成され、中間支持部30(ハウジング部34)毎に1本の導出管46で排出潤滑剤を貯留部44に導けるようになっており、全体として構成がより単純化されたものとなっている。したがって、潤滑剤回収機構40がそのように構成された水噴射式織機Lは、その製造コストが抑えられたものとなっている。
【0040】
なお、貯留部44に溜った排出潤滑剤は、前述のように貯留部44がフレーム1(フロントボトムステー3b)に対し着脱可能に取り付けられているため、ある程度の排出潤滑剤が貯留部44に溜った時点で(例えば、機替え等の時点で)、貯留部44をフレーム1から取り外して回収される。
【0041】
なお、本発明については、以上で説明した実施例(前記実施例)に限定されるものではなく、以下のような変形した実施形態でも実施が可能である。
【0042】
(1)受け部について、前記実施例では、支持プレート4に形成された凹部を含む部分が受け部42として機能するものとした。しかし、本発明では、受け部は、排出潤滑剤を受けることができるものであれば、そのように構成されたものには限らない。例えば、ハウジング部から排出された排出潤滑剤が受けられる部分を中間支持部において一体的に(あるいは、中間支持部に対し取り付けるようなかたちで)設け、その部分が受け部として機能するようにしても良い。
【0043】
図4、5に示すのは、受け部として機能する部分が中間支持部において一体的に設けられた例である。より詳しくは、中間支持部50において、ロッキングシャフト14を回転可能に支持する軸受58が内装されるハウジング部52は、ロッキングシャフト14が挿通される貫通孔52aを有している。そして、その貫通孔52a内には、貫通孔52aの中心線の方向(=織幅方向)における両端側に、内径が拡大されるかたちに形成された大径部60が設けられている。なお、ハウジング部52は、概ね円筒形状を成すものであるが、その円周上の一部に、半径方向に膨出する膨出部52bを有するように形成されている(
図5)。
【0044】
そして、各大径部60には、その前記織幅方向における内側の端の位置に、ラバーリング54が嵌装されるかたちで設けられている。なお、そのラバーリング54は、弾性変形が可能な材料(合成ゴム等)で形成されており、その内径は、ロッキングシャフト14の外径よりも僅かに小さくなっている。したがって、各ラバーリング54は、ロッキングシャフト14が貫通孔52aに挿通された状態において、ロッキングシャフト14の外周面に対し全周に亘って接触した状態となっている。
【0045】
そして、貫通孔52a内には、その2つのラバーリング54、54で画定される両ラバーリング54、54間の空間(収容空間)62に軸受58が嵌装(収容)されている。すなわち、その収容空間62が、ハウジング部52における軸受58を収容する部分となっている。因みに、その軸受58は、円筒の内周面で回転軸を回転可能に支持する、所謂、滑り軸受である。また、ハウジング部52には、その外周面から収容空間62に連通するかたちで、その収容空間62内に潤滑剤を供給するための供給孔64が設けられている。そして、その供給孔64には、グリースニップル等(図示略)が取り付けられている。
【0046】
また、その貫通孔52a内における各大径部60には、その前記織幅方向における外側の端の位置に、弾性変形可能な材料(合成ゴム等)で形成されたオイルシール56が設けられている。そして、各オイルシール56は、ロッキングシャフト14が貫通孔52a内に挿通された状態において、ロッキングシャフト14の外周面に対し全周に亘って密着した状態となっている。それにより、貫通孔52aは、前記織幅方向における両端のオイルシール56が設けられた部分において、そのオイルシール56により閉塞された状態となっている。
【0047】
また、ハウジング部52は、前記した膨出部52bにおいて貫通孔52aの中心線の方向(=前記織幅方向)に貫通するように形成された排出流路68を有している(
図4)。なお、その排出流路68は、円周方向に沿うかたちで略扇形の断面形状を成すものとなっている(
図5)。そして、その排出流路68の両端は、止栓が嵌入されて閉塞されている。
【0048】
その上で、ハウジング部52には、その両側におけるラバーリング54とオイルシール56とで画定される空間(排出空間)57に開口すると共に、その排出空間57と排出流路68とを連通させるように穿設された連通孔66が形成されている。また、ハウジング部52には、膨出部52bの前記織幅方向における中央部に開口すると共に、ハウジング部52の半径方向に延びて排出流路68を外部と連通させるように穿設された排出孔72が形成されている。さらに、ハウジング部52には、一端において排出孔72に嵌挿されて前記半径方向に延びると共に他端において導出管46に連結される排出管74が取り付けられている。
【0049】
そして、中間支持部50において、ハウジング部52は、板状の基部70を介し、その膨出部52bにおいて(膨出部52bを下方へ向けるかたちで)支持プレート4に対し取り付けられている。なお、前記のようにハウジング部52には、前記半径方向に延びるかたちで排出管74が取り付けられており、また、その排出管74には、排出潤滑剤を貯留部へ導くための導出管46が連結される。そこで、その排出管74及び導出管46の配置を許容すべく、基部70には貫通孔70aが形成され、支持プレート4には貫通孔4aが形成されている。それにより、中間支持部50(ハウジング部52)が支持プレート4に取り付けられた状態において、排出管74を介して排出流路68に連通するように設けられた導出管46は、支持プレート4を通過し、下方の貯留部へ向かうかたちとなっている。
【0050】
以上のように構成された中間支持部50では、供給孔64を介して収容空間62内に潤滑剤が供給されると、収容空間62内の内圧が高まって、各ラバーリング54が前記織幅方向における外側へ押し出されるかたちで弾性変形し、古い潤滑剤(排出潤滑剤)がラバーリング54の外側(排出空間57)へ流れ出る。そして、その排出潤滑剤は、排出空間57に開口するように形成された各連通孔66、及びその両連通孔66、66に連なる排出流路68を通り、排出管74を介して導出管46に流れ込むことで、貯留部に排出されることとなる。
【0051】
なお、その構成においては、連通孔66を通って流れ落ちる排出潤滑剤は、排出流路68を形成する孔の底面において受けられる。したがって、その孔の底面が、受け部として機能していることとなる。そして、その底面を含む孔は排出流路68としてハウジング部52に穿設されているものであることから、この例では、受け部は、中間支持部50におけるハウジング部52と一体的に設けられているものとなっている。
【0052】
また、以上で説明した例では、前記のように中間支持部におけるハウジング部自体の一部が受け部となる例であるが、中間支持部(ハウジング部)に別部材を取り付け、その別部材の一部が受け部となるように構成することも可能である。例えば、ハウジング部を前記例のように膨出部が設けられたものとした上で、その膨出部に、外周面に開口すると共に両端が閉塞された溝を形成する。また、ハウジング部を、その溝と前記例で言う排出空間とを連通させる連通孔が形成されたものとする。その上で、前記溝の開口を閉塞する板材を、ハウジング部における膨出部の外周面に取り付ける。それにより、前記溝と前記板材とで形成された空間が、前記例で言う排出流路となる。そして、その構成の場合には、そのハウジング部に対し取り付けられる板材の前記溝側の面が受け部となる。
【0053】
また、以上で説明した例では、潤滑剤回収機構が、受け部を有するものとなっている。しかし、本発明における潤滑剤回収機構は、受け部を有するものに限られない。例えば、潤滑剤回収機構において、ハウジング部を、前記
図4、5の例のようにその両側に排出空間が形成されたものとした上で、その排出空間と外部とを連結させる連通孔が形成されたものとする。その上で、各連通孔に対し、グリースニップル等の継ぎ手を介し、導出管を連結する。そして、そのように構成された潤滑剤回収機構においては、排出空間から各連通孔に流れ落ちた排出潤滑剤が直接的に導出管に流れ込むこととなるため、その潤滑剤回収機構は、受け部が省略されたものとなる。
【0054】
(2)貯留部について、前記実施例では、貯留部44が、対応するハウジング部34(中間支持部50)の直下に位置するように設けられている。しかし、本発明では、貯留部は、そのような位置に設けられるものに限らず、例えば、ハウジング部の下方であって、且つ、サイドフレームの近傍に設けられていても良い。
【0055】
また、貯留部が設けられる位置は、前記のようなハウジング部の下方に限られない。例えば、
図4、5の例のようにハウジング部におけるロッキングシャフトが挿通される貫通孔の両側がオイルシールにより閉塞されると共に、軸受が収容される空間(潤滑剤が供給される空間)とそのオイルシールとの間の排出空間から排出潤滑剤が排出されるようにハウジング部が構成されている場合には、その排出空間、及び導出管の内部を含む排出潤滑剤の流路が全て排出潤滑剤で満たされている状態で潤滑剤を供給すると、排出潤滑剤が押し出されるかたちで貯留部に排出されることとなるため、貯留部が設けられる位置をハウジング部と同じ高さ位置や、ハウジング部の上方とすることも可能である。
【0056】
また、前記実施例では、貯留部44は、各ハウジング部34(中間支持部30)に対応するかたちで2つ設けられている。しかし、本発明では、貯留部は、そのようにハウジング部毎に設けられるものに限らず、全てのハウジング部で共通の(1つの)貯留部が設けられるものとしても良い。
【0057】
さらに、前記実施例では、貯留部44は、トレー形状の部材が用いられるものとしたが、本発明における貯留部は、そのようなものに限らず、例えば、蓋付きの箱状の容器であっても良い。なお、その場合には、その蓋の部分に貫通孔を形成し、その貫通孔に導出管を挿通させることで貯留部内に排出潤滑剤を導くことができる。
【0058】
なお、本発明は、以上で説明した例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 フレーム 2 サイドフレーム
3a 梁材(フロントトップステー) 3b 梁材(フロントボトムステー)
4 支持プレート 10 筬打ち装置
11 筬 14 ロッキングシャフト
30、50 中間支持部 32、70 基部
34、52 ハウジング部 34a、58 軸受
36 供給口部材
40 潤滑剤回収機構 42 受け部
42a 排出孔 44 貯留部
46 導出管
52a 貫通孔 52b 膨出部
54 ラバーリング 56 オイルシール
57 排出空間 64 供給孔
66 連通孔 68 排出流路
72 排出孔 74 排出管
L 水噴射式織機 NZ 緯入れノズル
Y 緯糸 T 経糸
W 織布 CF 織前