(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179287
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20221125BHJP
B25C 1/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167485
(22)【出願日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2021085133
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗木 駿
(72)【発明者】
【氏名】馬場 徳和
(72)【発明者】
【氏名】古澤 正規
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC07
3C068HH01
(57)【要約】
【課題】ガス圧でドライバを移動させて打ち込み具を打ち込み、リフト機構のホイールを係合させてドライバを下動端から上動端位置に戻す打ち込み工具において、釘詰まり等によりドライバに対するホイールの相対位置がずれる場合がある。この場合、リフト動作開始時にドライバの被係合部に対する干渉により一部の係合部を逃がす構成では耐久性が損なわれる。耐久性を確保しつつ、干渉を回避して正常な係合状態に復帰されるようにする。
【解決手段】ホイール22の回転軸21に対する径方向への変位を許容する変位許容機構27と、ホイール22の径方向への変位を規制する変位規制機構40を備える。リフト動作の初期段階であって、ホイール22の回転により第1係合部P1が被係合部Lに係合する段階で、変位規制機構によるホイール22の変位規制状態が解除されて、ホイール22の全体が径方向に変位可能な状態とされる。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具であって、
ガス圧によって打ち込み方向へ移動するピストンと、
前記ピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバと、
前記ドライバを反打ち込み方向に移動させるリフト機構と、を有し、
前記ドライバは、長手方向に沿って複数の被係合部を備え、
前記リフト機構は、
回転軸と、
前記回転軸を中心に前記回転軸とともに回転するホイールと、
前記ホイールの外周に沿って配置され、且つ前記ドライバの前記被係合部に係合する複数の係合部と、
前記ホイールの前記回転軸に対する径方向への変位を許容する変位許容機構と、
前記ホイールの前記径方向への変位を規制する変位規制機構と、を備え、
前記複数の係合部は、前記リフト機構が前記ドライバを反打ち込み方向へ移動させる時に最初に前記被係合部に係合する第1係合部を含み、
少なくとも前記第1係合部が前記被係合部に係合する段階では、前記変位規制機構による前記ホイールの変位規制状態が解除される打ち込み工具。
【請求項2】
請求項1記載の打ち込み工具であって、
前記複数の係合部は、2番目に前記被係合部に係合する第2係合部を含み、
少なくとも前記第2係合部が前記被係合部に係合する段階では、前記変位規制機構により前記ホイールの前記径方向への変位が規制される打ち込み工具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の打ち込み工具であって、
前記ホイールの前記回転軸に対する変位方向が、前記ドライバの移動方向に対して少なくとも平行になる段階では前記ホイールの前記径方向への変位が規制される打ち込み工具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記変位許容機構は、前記ホイールに形成された挿通孔を有し、前記挿通孔は、前記挿通孔に挿入された前記回転軸に対して前記ホイールの前記径方向への変位を許容するように前記径方向に長く形成された構成であり、
前記変位規制機構は、前記挿通孔に進入することで前記ホイールの前記径方向への変位を規制するロック部材を有する打ち込み工具。
【請求項5】
請求項4記載の打ち込み工具であって、
前記ロック部材が前記回転軸の軸線方向に変位して前記挿通孔に進退される打ち込み工具。
【請求項6】
請求項4又は5記載の打ち込み工具であって、
前記ロック部材が前記係合部よりも内周側に位置する打ち込み工具。
【請求項7】
請求項4~6の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記変位規制機構は、前記ホイールの回転に伴って前記ロック部材を前記挿通孔に対して進退させるカム機構を有する打ち込み工具。
【請求項8】
請求項4~7の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記挿通孔を構成する孔壁面は、相互に平行で前記径方向に延在する一対のスライド面を有し、
前記回転軸は、前記一対のスライド面のそれぞれに対面し前記径方向に延在する一対の支持平面を有する打ち込み工具。
【請求項9】
請求項4~8の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記挿通孔内に装着された付勢部材を有し、前記付勢部材は、前記ホイールの前記係合部が前記ドライバの前記被係合部に対して係合する方向に前記ホイールを付勢する打ち込み工具。
【請求項10】
請求項4~9の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記変位規制機構は、前記ロック部材を前記挿通孔内から退出させる方向に付勢する付勢部材を有する打ち込み工具。
【請求項11】
請求項7記載の打ち込み工具であって、
前記カム機構は、前記回転軸の軸線回りに不等分配置された複数のカム部を有して、前記複数のカム部の全てが前記回転軸の軸線回りの1箇所でカム受け側と噛み合うことで、前記ロック部材の前記挿通孔に対する進退動作が前記回転軸の軸線回りの1箇所に固定された打ち込み工具。
【請求項12】
請求項1~3の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記変位許容機構は、前記ホイールに形成された挿通孔を有し、前記挿通孔は、前記挿通孔に挿入された前記回転軸に対して前記ホイールの前記径方向への変位を許容するように前記径方向に長く形成された構成であり、
前記変位規制機構は、前記ホイールに設けた規制部材と、前記ホイールの周囲に沿って設けられて、前記規制部材の前記径方向への変位を規制する規制壁部と、前記規制壁部による規制状態を解除する規制解除部を有する打ち込み工具。
【請求項13】
請求項12に記載の打ち込み工具であって、
前記規制部材が前記ホイールの軸方向の両面に突出されている打ち込み工具。
【請求項14】
請求項13に記載の打ち込み工具であって、
前記係合部の両端部が前記ホイールの軸方向の両面に突出されており、前記係合部の前記突出部分を利用して前記規制部材が設けられた打ち込み工具。
【請求項15】
請求項14に記載の打ち込み工具であって、
前記規制部材が前記回転軸に対して前記第1係合部とは対向側に配置された打ち込み工具。
【請求項16】
請求項12~15の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記規制部材に、軸回りに回転自在なローラ体が設けられた打ち込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、釘やステープル等の打ち込み具を木材等に打ち込むための打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に、圧縮ガスの推力を打撃力として利用するガスバネ式の打ち込み工具が開示されている。ガスバネ式の打ち込み工具は、シリンダ内を上下動するピストンと、ピストンに結合されて一体で下動して打ち込み具を打撃するドライバを有する。ピストンとドライバは蓄圧室のガス圧で打ち込み方向に下動する。ピストンとドライバはリフト機構により反打ち込み方向に戻される。
【0003】
リフト機構は、ドライバに設けた被係合部に係合される複数の係合部を備えたホイールを有する。ホイールは電動モータにより回転する。打ち込み動作後にホイールが回転して係合部がドライバの被係合部に順次噛み合わされることでドライバが反打ち込み方向に上動される。ピストンが反打ち込み方向に上動されることで、蓄圧室のガス圧が高められる。上動端位置に上動されたドライバに対するリフト機構の係合状態が解除されることで、ドライバがガス圧により下動して打撃動作がなされる。
【0004】
特許文献1には、ドライバの被係合部若しくはリフト機構の係合部に対する負荷を抑制するための技術が開示されている。特許文献1の技術によれば、上動端位置でドライバの被係合部に係合されるリフト機構の係合部(最終ピン)を反係合方向に変位させることで負荷が抑制される。特許文献2には、例えば釘詰まりによりドライバの被係合部に対するリフト機構の係合部の相対位置がずれた場合に対処するための技術が開示されている。特許文献2の技術によれば、ドライバのリフト開始時に最初に係合される係合部(1番ピン)を反係合方向に変位させることで、ドライバの被係合部に対する係合部の干渉が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/059666号
【特許文献2】国際公開第2016/199670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2では、リフト機構の複数の係合部の一部(最終ピン、1番ピン)について常時変位可能とする構成が開示されている。係る構成によれば、リフト機構の細部の構成が複雑化して耐久性が損なわれるとともに、動作不良の原因になるおそれがある。本開示は、リフト機構の耐久性が損なわれることなく、良好な動作が確保されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面によれば、打ち込み工具は、例えばガス圧によって打ち込み方向へ移動するピストンと、ピストンと打ち込み方向に一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバとを有する。また、打ち込み工具は、例えばドライバを反打ち込み方向に移動させるリフト機構を有する。ドライバは、例えば長手方向に沿って複数の被係合部を備える。リフト機構は、例えば回転軸と、回転軸を中心に回転軸とともに回転するホイールを有する。リフト機構は、例えばホイールの外周に沿って配置され、且つドライバの被係合部に係合する複数の係合部を有する。リフト機構は、例えばホイールの回転軸に対する径方向への変位を許容する変位許容機構を有する。リフト機構は、例えばホイールの径方向への変位を規制する変位規制機構を備える。複数の係合部は、リフト機構がドライバを反打ち込み方向へ移動させる時に最初に被係合部に係合する第1係合部と、2番目に被係合部に係合する第2係合部を含む。第1係合部が被係合部に係合する段階で、変位規制機構によるホイールの変位規制状態が解除される。
【0008】
従って、ホイールが径方向に変位することでドライバの被係合部に対する第1係合部の干渉状態(被係合部の下面に係合されない状態)が回避される。これにより例えば釘詰まりによりドライバが打ち込み方向の下動端位置の手前で停止され、その結果ホイールの第1係合部が被係合部の下面に係合されず干渉状態となる場合であっても、ホイールが径方向に変位することで干渉状態が回避されて係合部が被係合部の下面に係合される。係合状態でホイールが回転することでドライバが上動される。
【0009】
ホイールの全体が径方向に変位されて、係合部が被係合部から離間される。これにより一部の係合部について変位させる構成に比して細部について構成の複雑化を回避できる。また、例えば上記の干渉状態により第1係合部がドライバの被係合部から所定以上の力で反係合方向に反力を受けた際に、変位許容機構によりホイールの径方向への変位が許容される。干渉による無理な反力をホイールが径方向に変位することで吸収して、被係合部に対する第1係合部の正常な係合状態が回復される。逆に変位規制機構によりホイールの径方向への変位が規制されることにより、各係合部の変位が常時許容される構成に比して動作不良をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】第1実施例に係るリフト機構と変位許容機構の斜視図である。
【
図4】第1実施例に係るリフト機構と変位許容機構の縦断面図である。本図は、係合部の径方向への変位が許容された変位許容状態を示している。
【
図5】第1実施例に係るリフト機構と変位許容機構の縦断面図である。本図は、係合部の径方向への変位が規制された変位規制状態を示している。
【
図6】
図4中VI-VI線断面矢視図であって、回転カムの平面図である。
【
図7】カム機構の展開図である。本図は、回転カムのカム頂部が固定カムのカム凹部に対して噛み合って回転カムが上昇した状態を示している。
【
図8】カム機構の展開図である。本図は、固定カムのカム凹部に対する噛み合いが外れて回転カムが下動した状態を示している。
【
図9】本体部の縦断面図である。本図は、待機状態を示している。
【
図10】本体部の縦断面図である。本図は、ドライバが上動端に位置する状態を示している。
【
図11】本体部の縦断面図である。本図は、ドライバが下動端に位置する状態を示している。
【
図12】本体部の縦断面図である。本図は、ドライバが下動端よりも手前のロック位置で停止されたロック状態を示している。
【
図13】
図12の一部拡大図である。本図は、ドライバのロック状態における係合部の被係合部に対する係合状態を示す。本図は、第3被係合部に対して第1係合部が干渉した状態を示している。
【
図14】ドライバのロック状態における係合部の被係合部に対する係合状態を示している。本図は、第1係合部に対して第3被係合部から所定以上の外力を受けることでホイールが径方向に変位した状態を示している。
【
図15】ドライバのロック状態における係合部の被係合部に対する係合状態を示している。本図は、第1係合部が第2被係合部に係合された状態を示している。
【
図16】本体部の縦断面図である。本図は、ロック部材が挿通孔に進入した変位規制状態を示している。
【
図17】第2実施例に係るリフト機構の斜視図である。
【
図18】第2実施例に係るリフト機構の分解斜視図である。
【
図19】第2実施例に係るリフト機構の横断面図である。本図は、ドライバが下動端よりも手前のロック位置で停止されたロック状態を示している。
【
図20】第2実施例に係るリフト機構の横断面図である。本図は、ホイールが径方向に変位した状態を示している。
【
図21】
図20中XXI-XXI断面矢視図であって、リフト機構の縦断面図である。
【
図22】
図21中XXII-XXII線断面矢視図であって、リフト機構の横断面図である。本図は、ホイールの径方向への変位が許容される状態を示している。
【
図23】
図21中XXIII-XXIII線断面矢視図であって、リフト機構の横断面図である。本図は、規制部材が規制壁部から外れて規制解除部に至った状態を示している。
【
図24】第2実施例に係るリフト機構の横断面図である。本図は、第1係合部が第2被係合部に係合された状態を示している。
【
図25】第2実施例に係るリフト機構の横断面図である。本図は、ホイールの径方向への変位が規制された状態を示している。
【
図26】第2実施例に係るリフト機構の横断面図である。本図は、規制部材が規制壁部に沿って移動する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば第2係合部が被係合部に係合する段階で変位規制機構によりホイールの径方向への変位が規制される。
【0012】
従って、第2係合部がドライバの被係合部に係合される時点では、変位規制機構によりホイールの径方向への変位が規制された状態とされる。このため、ホイールの径方向への変位は、第1係合部がドライバの被係合部に係合する際にのみ許容される。ドライバの被係合部に対する係合部の不正常な係合状態が想定される第1係合部についてのみホイールが径方向に変位して反係合方向への逃げが許容される。第1係合部以外の係合部が被係合部に係合される段階ではホイールの径方向への変位が規制されることで、動作不良が確実に回避される。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ホイールの回転軸に対する変位方向が、ドライバの移動方向に対して遅くとも平行になる段階ではホイールの径方向への変位が規制される構成とすることができる。
【0014】
従って、ドライバから受ける力の方向(ドライバ移動方向)がホイールの回転軸に対する変位方向に一致する段階では、係合部に対してドライバからホイール変位方向の大きな外力(ガス圧による推力)を受ける。遅くともこの段階では、ホイールの変位が変位規制機構により規制される。これによりドライバに対するリフト機構の係合状態が良好に保持されて動作不良が回避される。ホイールの変位方向がドライバの移動方向に対して傾斜している段階では、ドライバからホイールに対して付加されるホイール変位方向の外力はより小さくなる。ホイールの回転動作について遅くともホイール変位方向がドライバ移動方向に平行となる段階で、ホイールに径方向への変位が規制されることで大きな外力を受けつつ良好な係合状態が維持される。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば変位許容機構は、ホイールに形成された挿通孔を有する。挿通孔は、例えば挿通孔に挿入された回転軸に対してホイールの径方向への変位を許容するように径方向に長い形状とすることができる。変位規制機構は、例えば挿通孔に進入することでホイールの径方向への変位を規制するロック部材を有する。
【0016】
従って、ホイールの挿通孔とホイールを支持する回転軸との間にロック部材が進入されて、ホイールの回転軸に対する径方向の変位が規制される。ロック部材が挿通孔から退出されると、ホイールの回転軸に対する径方向の変位が許容される。ロック部材の挿通孔に対する進退により、ホイールの径方向への変位が許容される状態と規制される状態に切り替えられる。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ロック部材が例えば回転軸の軸線方向に変位して挿通孔に進退される。従って、簡易な構成により挿通孔に対するロック部材の進退動作がなされる。
【0018】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ロック部材が例えば係合部よりも内周側に位置する。従って、変位規制機構のコンパクト化が図られる。
【0019】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば、ホイールの回転に伴ってロック部材を挿通孔に対して進退させるカム機構を有する。従って、ホイールの回転動作に連動してロック部材が挿通孔に進入される。また、ホイールの回転動作に連動してロック部材が挿通孔から退出される。
【0020】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば挿通孔を構成する孔壁面は、相互に平行で径方向に延在する一対のスライド面を有する。回転軸は、一対のスライド面のそれぞれに対面し径方向に延在する一対の支持平面を有する。回転軸の支持面に挿通孔のスライド面が摺接されることで、回転軸の動力がホイールに伝達されて一体で回転されるとともに、ホイールが回転軸に対して径方向に変位可能に支持される。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば挿通孔内に装着された付勢部材を有する。付勢部材は、例えばホイールの係合部がドライバの被係合部に対して係合する方向にホイールを付勢する。従って、付勢部材により係合部と被係合部の係合状態が保持される。付勢部材が挿通孔内に装着されることで、変位許容機構のコンパクト化が図られる。
【0022】
1つ又はそれ以上の実施態様において、変位規制機構は、例えばロック部材を挿通孔内から退出させる方向に付勢する付勢部材を有する。従って、簡易な構成によりロック部材が確実に挿通孔内から退出される。
【0023】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばカム機構は、回転軸の軸線回りに不等分配置された複数のカム部を有する。複数のカム部の全てが回転軸の軸線回りの1箇所でカム受け側と噛み合う。これにより、ロック部材の挿通孔に対する進退動作が回転軸の軸線回りの1箇所に固定される。従って、ホイールの径方向への変位が許容される状態と規制される状態が回転軸の軸線回りの固定された1箇所で確実になされる。これによりドライバに対するリフト機構の良好な係合状態が維持される。
【0024】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば変位許容機構は、ホイールに形成された挿通孔を有する。挿通孔は、例えば挿通孔に挿入された回転軸に対してホイールの径方向への変位が許容されるように径方向に長い形状を有する。例えば変位規制機構は、ホイールに設けた規制部材と、ホイールの周囲に沿って設けられて、規制部材の径方向への変位を規制する規制壁部と、規制壁部による規制状態を解除する規制解除部を有する。
【0025】
従って、規制壁部により規制部材の径方向への変位が規制されることで、ホイールの回転軸に対する径方向の変位が規制される。規制部材が規制壁部から外れると、ホイールの回転軸に対する径方向への変位が許容される。規制部材の径方向への変位を規制する規制壁部の有無により、ホイールの径方向への変位が許容される状態と規制される状態に切り替えられる。
【0026】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば規制部材がホイールの軸方向の両面に突出されている。従って、ホイールの軸方向の両側において規制部材が規制壁部で案内さえる。これによりホイールの安定した回転動作が確保されるとともに、ホイールの径方向への変位が許容される状態と規制される状態の切り替えが明確になされる
【0027】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば係合部の両端部がホイールの軸方向の両面に突出されており、係合部の突出部分を利用して規制部材が設けられる。従って、係合部を利用して規制部材が設けられることで構成の簡略化が図られる。
【0028】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば規制部材が回転軸に対して第1係合部とは対向側に配置される。従って、ホイールの変位方向が第1係合部がドライバの被係合部から離間する方向に設定される。これにより、第1係合部が被係合部に係合される段階で、ホイールが径方向に変位可能な状態となることで被係合部に対する第1係合部の干渉が回避される。
【0029】
1つ又はそれ以上の実施態様において、規制部材に、軸回りに回転自在なローラ体が設けられる。従って、規制壁部に沿って規制部材が円滑に移動する状態が確保されることで、ホイールの円滑な回転動作が確保される。
【実施例0030】
図1は、打ち込み工具1の一例として、シリンダ上室のガス圧を打ち込み具Nを打ち込むための推力として利用するガスバネ式の打ち込み工具を示している。以下の説明では、各図に示したように打ち込み具Nの打ち込み方向を下側とし、反打ち込み方向を上側とする。以下説明するドライバ15が下動して打ち込み具Nが打ち込まれ、打ち込み後ドライバ15が上方へ戻される。打ち込み工具1の使用者は
図1において概ね打ち込み工具1の左側に位置する。使用者の手前側を後ろ側(使用者側)、前方を前側とする。また、左右方向については使用者を基準として用いる。
【0031】
図1,2,9に示すように打ち込み工具1は、本体部10を有する。本体部10は、概ね円筒形の本体ハウジング11にシリンダ12を内装した構成を有する。シリンダ12内にピストン13が上下に往復動可能に収容されている。シリンダ12の上部は、蓄圧室14に連通されている。蓄圧室14のガス圧がピストン13の上面に打撃のための推力として作用する。
【0032】
ピストン13の下面に1つの長いドライバ15が結合されている。ドライバ15は下方へ延在されている。ドライバ15の下部側は、本体部10の下面に設けた打ち込みノーズ部2の打ち込み通路2a内に進入している。ピストン13の上面に作用する蓄圧室14のガス圧により、ドライバ15が打ち込み通路2a内を下動することで1本の打ち込み具Nが打撃される。打撃された打ち込み具Nは、打ち込みノーズ部2の射出口2bから射出される。射出された打ち込み具Nは被打ち込み材Wに打ち込まれる。シリンダ12の下部には、ピストン13の下動端での衝撃を吸収するための下動端ダンパ16が配置されている。
【0033】
本体部10の側部に、使用者が把持するグリップ部3が設けられている。グリップ部3の前部側下面に、使用者が指先で引き操作するスイッチレバー3aが設けられている。グリップ部3の後部にバッテリ取り付け部4が設けられている。バッテリ取り付け部4にバッテリパック5が取り付けられる。後述する駆動部30は、バッテリパック5の電力を電源として動作する。
【0034】
打ち込みノーズ部2にマガジン6が結合されている。マガジン6内に装填された多数本の打ち込み具Nは1本ずつ打ち込み通路2a内に供給される。
【0035】
打ち込みノーズ部2の側部にリフト機構20が結合されている。リフト機構20は、打撃後にピストン13とドライバ15を一体で上方へ戻す機能を有する。リフト機構20によりピストン13が上方へ戻されることで、蓄圧室14のガス圧が高められる。
【0036】
リフト機構20には、駆動部30が並設されている。駆動部30によりリフト機構20が動作する。駆動部30は、リフト機構20とバッテリ取り付け部4の下部との間に概ねL字形に跨る駆動部ケース31に収容されている。駆動部ケース31は、本体ハウジング11に一体に設けられている。リフト機構20も駆動部ケース31で覆われている。
【0037】
駆動部30は駆動源として電動モータ32を有する。電動モータ32は、その出力軸32aの軸線(モータ軸線J)を打ち込み方向(
図2において紙面直交方向)に直交させた前後方向に沿わせた向きに収容されている。電動モータ32はバッテリパック5の電力を電源として起動する。前記したようにスイッチレバー3aの引き操作により電動モータ32が起動する。
【0038】
電動モータ32の出力軸32aは、モータハウジング32bに軸受32c,32dを介して回転可能に支持されている。出力軸32aは、減速ギヤ列33に接続されている。モータハウジング32bの前部に円筒形の機構ケース25が結合されている。減速ギヤ列33は、機構ケース25の内周側に支持されている。減速ギヤ列33には3列の遊星ギヤ列が用いられている。3列の遊星ギヤ列は相互に同軸でモータ軸線Jに同軸に配置されている。電動モータ32の回転出力は、3列の遊星ギヤ列を含む減速ギヤ列33で減速されてリフト機構20に出力される。
【0039】
リフト機構20は、減速ギヤ列33に連結された回転軸21と、回転軸21に支持されたホイール22を有する。回転軸21は、前後の軸受23,24を介して機構ケース25の内周側に回転可能に支持されている。回転軸21の回転軸線は、モータ軸線Jに一致している。リフト機構20の前側に変位規制機構40が連結されている。変位規制機構40の前方であって、機構ケース25の前部は蓋部25aで塞がれている。前側の軸受23は蓋部25aを介して機構ケース25に保持されている。後側の軸受24は機構ケース25の底部に保持されている。
【0040】
電動モータ32が起動するとリフト機構20のホイール22が一体で回転する。
図2,3,4,5に示すようにホイール22は、一定の間隔をおいて相互に平行な2つのフランジ部22aを有する。2つのフランジ部22aの周縁部間に跨って複数の係合部Pが両端支持状態で設けられている。本実施例では
図9に示すように例えば10個の係合部P(P1~P10)を有する。各係合部Pには、それぞれ円柱形の軸部材(ピン)が用いられている。
【0041】
複数の係合部Pは、ホイール22の周方向一定の範囲に設けられている。本実施例では、概ね3/4周の範囲に10個の係合部Pが相互に等間隔で配置されている。周方向の残余の範囲には係合部Pが配置されていない。以下、係合部Pが配置されていない周方向の範囲を逃がし部26と称する。ホイール22の左部が機構ケース25に設けた窓部25bを経て打ち込み通路2a内に進入している。打ち込み通路2a内においてホイール22の各係合部Pがドライバ15の被係合部Lに係合される。
【0042】
ドライバ15の右側部に、複数の被係合部Lが設けられている。本実施例では10個の被係合部Lがドライバ15の長手方向(上下方向)に一定の間隔をおいて配置されている。各被係合部Lは、ラック歯状をなし、それぞれ側方へ張り出す状態に設けられている。ホイール22の各係合部Pがドライバ15の被係合部Lに係合された状態で、ホイール22が回転することによりドライバ15とピストン13が上方へ戻される。ホイール22は電動モータ32の起動により
図9,10,11において矢印で示すように反時計回り方向に回転する。
【0043】
図9は、本体部10の待機状態を示している。待機状態では、ドライバ15とピストン13が上動端の若干下方に保持される。この待機状態では、逃がし部26の直前の係合部Pが、ドライバ15の最下端部の被係合部Lの下面に係合される。以下、逃がし部26の直前の係合部Pを特に最終係合部P10と称する。ドライバ15の最下端部の被係合部Lを特に最終被係合部L10と称する。
【0044】
待機状態で、スイッチレバー3aに引き操作により電動モータ32が起動する。電動モータ32の起動によりホイール22が反時計回り方向に回転すると、最終被係合部L10に対する最終係合部P10の係合状態によりピストン13とドライバ15とが待機位置からさらに一体で上動する。これにより、
図10に示すようにピストン13とドライバ15が上動端に至った打ち込み直前状態となる。
【0045】
打ち込み直前状態では、最終係合部P10が最終被係合部L10から離脱する直前の状態となる。引き続きホイール22が反時計回りに回転することで、最終係合部P10が最終被係合部L10から離脱する。これによりピストン13とドライバ15が蓄圧室14のガス圧により下動する。ドライバ15が打ち込み通路2a内を下動することで1本の打ち込み具Nが打撃される。ドライバ15が下動する段階では、ホイール22の係合部Pが全て打ち込み通路2a内から退出して機構ケース25内に位置する状態になる。これにより、打ち込み通路2a内に、ホイール22の逃がし部26が位置する状態となる。これにより、ドライバ15の被係合部Lに対する係合部Pの干渉が回避されて、スムーズな打ち込み動作がなされる。
【0046】
打ち込み具Nの打撃後、ドライバ15が下動端に至った状態においてホイール22が引き続き反時計回りに回転する。これにより、
図11に示すようにホイール22の回転方向について逃がし部26の直後の係合部Pが、ドライバ15の最上端の被係合部Lの下面に係合される。以下、逃がし部26の直後の係合部Pを特に第1係合部P1と称する。ドライバ15の最上端の被係合部Lを特に第1被係合部L1と称する。
【0047】
第1係合部P1が第1被係合部L1に係合された状態で引き続きホイール22が反時計回り方向に回転する。これにより、以下第2係合部P2が第2被係合部L2の下面に係合され、次に第3係合部P3が第3被係合部L3の下面に係合される。以下ホイール22の回転により、第4係合部P4、第5係合部P5、第6係合部P6、第7係合部P7、第8係合部P8、第9係合部P9、最終係合部P10が、順次第4被係合部L4、第5被係合部L5、第6被係合部L6、第7被係合部L7、第8被係合部L8、第9被係合部L9、最終被係合部L10の下面に係合されていくことで、ドライバ15とピストン13が上動される。最終係合部P10が最終被係合部L10の下面に係合されると、上記した待機位置に至る。例えば電動モータ32の起動からの時間が適切に制御されることで、ドライバ15とピストン13が待機位置に至った段階で電動モータ32が停止される。以上で一連の打ち込み動作が終了する。
【0048】
ドライバ15の下動により打撃される打ち込み具Nが被打ち込み材Wに正常に打ち込まれない場合には変形等した打ち込み具Nが打ち込み通路2a内に詰まる釘詰まりあるいは打ち込み不足の状態が発生する。この場合には、
図12に示すようにドライバ15が二点鎖線で示す下動端に至らずより上方の位置で停止される。ドライバ停止状態においてもホイール22の回転状態は継続される。このため、ドライバ15の被係合部Lに対する係合部Pの相対位置のずれが発生する。
【0049】
例えば
図12,13に示すように第1係合部P1が第1被係合部L1の下面に進入せず、第3被係合部L3に干渉する状態が発生する。本実施例のリフト機構20は、被係合部Lの下面に対する係合部Pの進入可能な位置からのずれを吸収するための変位許容機構27を備えている。変位許容機構27は、ホイール22に設けた挿通孔28を有する。挿通孔28の内壁面には、相互に平行で径方向に延在する一対のスライド面28aが設けられている。挿通孔28は、回転軸21に対してホイール22の径方向への変位を許容するように径方向に長い長孔形状に形成されている。挿通孔28には回転軸21が挿通されている。回転軸21には、スライド面28aに対面して径方向に延在する一対の支持平面21aが設けられている。
【0050】
回転軸21の支持平面21aに対してスライド面28aが摺接されることで、回転軸21に対してホイール22が一体で回転可能かつ径方向に一定の範囲で変位可能に支持されている。ホイール22が回転軸21に対して径方向に変位されることで、ドライバ15の被係合部Lに対する係合部Pの干渉状態が回避される。挿通孔28の内壁面と回転軸21との間に圧縮バネ29が介装されている。圧縮バネ29の付勢力により、ホイール22が係合部Pをドライバ15の被係合部Lに接近させる係合側に付勢されている。このためホイール22の径方向への変位であって反係合側への変位は、圧縮バネ29の付勢力に抗してなされる。
【0051】
図14に示すようにホイール22の回転により第1係合部P1がドライバ15の第3被係合部L3から受けるスライド方向成分の外力Fが圧縮バネ29の付勢力よりも大きくなると、ホイール22の全体が圧縮バネ29に抗して径方向に変位する。これにより、第3被係合部L3に対する第1係合部P1の干渉(噛み合いロック状態)が回避される。ドライバ15の被係合部Lに対するホイール22の係合部Pの干渉状態が回避されることで、ホイール22のスムーズな回転動作が継続される。
【0052】
ホイール22がドライバ15から離間する方向に変位しつつ回転することで、第1係合部P1が第3被係合部L3の側方を通過する。この段階で、第3被係合部L3から受けるスライド方向の外力Fが小さくなっていく。このため
図15に示すようにホイール22が圧縮バネ29の付勢力によってドライバ15に接近する方向に戻される。ホイール22が戻されつつ回転することで、第1係合部P1が第2被係合部L2の下面に当接される。後述するようにこの段階でロック部材41が挿通孔28に挿入されてホイール22の径方向への変位が規制された状態に切り替わる。
【0053】
ホイール22の径方向への変位が許容される状態から規制される状態へ復帰させるタイミングは、上記のようにドライバ15の被係合部Lに対して第1係合部P1が正常に係合された状態となった時点に設定する他、適宜変更することができる。例えば、第2係合部P2が被係合部Lに係合される段階で規制状態に切り替える構成としてもよい。
【0054】
第1係合部P1が被係合部Lに正常に係合された状態で引き続きホイール22が回転することで、ドライバ15が停止位置から上方へ変位される。ホイール22の回転によりドライバ15が待機位置まで上動された時点で電動モータ32が停止される。これにより、ドライバ15の下動が阻止された状態で、詰まった打ち込み具Nを打ち込み通路2aから除去する作業を楽に行うことができる。
【0055】
本実施例では、ホイール22の変位許容機構27による径方向への変位動作は、第1係合部P1が被係合部Lに係合される前後一定の範囲で許容される。第2~最終係合部(P2~P10)がドライバ15の被係合部Lに係合される段階では、ホイール22の径方向への変位は、変位規制機構40により規制される。変位規制機構40の詳細が
図3~
図8に示されている。
【0056】
変位規制機構40は1つのロック部材41を有する。ロック部材41には円柱体形の軸部材が用いられている。
図5,8,16に示すようにロック部材41が挿通孔28の内壁面と回転軸21との間の隙間に挿入されることで、ホイール22の回転軸21に対する径方向への変位が規制される。
図4,7に示すようにロック部材41が挿通孔28から退出されることで、ホイール22の回転軸21に対する径方向への変位が許容される。
【0057】
ロック部材41は回転軸21の軸線方向(モータ軸線J方向)に沿って移動することで、挿通孔28に対して進退される。ロック部材41の挿通孔28に対する進退動作はカム機構42によりなされる。カム機構42は、円板形の回転カム43と、円板形の固定カム44を有する。回転カム43と固定カム44は、回転軸21に同軸に支持されている。
【0058】
図6に示すように回転カム43の支持孔43aに回転軸21が挿通されている。支持孔43aの内壁面に2つの平坦な受け面43bが相互に平行に設けられている。回転軸21には2つの受け面43bに対向する2つの平坦な支持面21bが設けられている。2つの受け面43bがそれぞれ支持面21bに摺接された状態で回転カム43が回転軸21に支持されている。これにより、回転カム43は、モータ軸線J回りに回転軸21と一体回転可能であるとともに、回転軸21に対してモータ軸線J方向に変位可能に支持されている。
図6中矢印Rで示すように回転カム43は反時計回り方向に回転する。図では、回転軸21、ホイール22及び回転カム43の回転方向が矢印Rで示されている。
【0059】
図4,5,6に示すように回転カム43に1つのロック部材41が一体に設けられている。ロック部材41は、回転カム43の下面から下方へ突き出す状態に設けられている。ロック部材41は、モータ軸線Jに平行に突き出している。ロック部材41は、ホイール22の係合部Pよりも内周側に配置されている。ロック部材41はモータ軸線J回りに回転カム43と一体で公転し、モータ軸線J方向に回転カム43と一体で移動する。
【0060】
回転カム43の下面とホイール22の上面との間に例えば3つの圧縮バネ45が周方向に等分配置されている。圧縮バネ45は
図2,4において示されている。圧縮バネ45の付勢力により、回転カム43は固定カム44に接近する方向(上方)に付勢されている。これにより、ロック部材41は挿通孔28から退出する方向に付勢されている。
【0061】
図6に示すように回転カム43の上面には、3つのカム部C1,C2,C3が周縁に沿って設けられている。3つのカム部C1,C2,C3は、それぞれ1つの平坦なカム頂部と、1つの平坦なカム谷部と、カム頂部とカム谷部との間を案内するリフト部を有する。3つのカム頂部43c,43d,43eは、モータ軸線J回りに例えば110°、120°、130°の間隔をおいて不等分配置されている。3つのカム頂部43c,43d,43eは、相互に回転方向の領域(周方向領域)の長さが異なっている。第1カム頂部43cと第2カム頂部43dの周方向領域は、第3カム頂部43eよりも短くなっている。第3カム頂部43eの周方向領域が最も長くなっている。第1カム頂部43cと第2カム頂部43dの周方向領域は概ね同等程度の長さに設定されている。
【0062】
第1~第3カム頂部43c,43d,43eの回転方向前側には、固定カム44を各カム頂部43c,43d,43eに案内するためのリフト部43f,43g,43hが設けられている。3つのリフト部43f,43g,43hの周方向領域は同じ長さに設定されている。これにより、3つのリフト部43f,43g,43hの傾斜角度が均一になっている。且つ3つのリフト部43f,43g,43hは周方向に不等分に配置されている。これにより回転カム43がモータ軸線J方向の特にロック側(後方)に平行に変位される。
【0063】
固定カム44は、回転カム43の第1~第3カム頂部43c,43d,43eが噛み合わされるカム受け側として機能するもので、機構ケース25の蓋部25aに固定されている。このため、固定カム44は、モータ軸線J回りに回転不能に固定され、且つモータ軸線J方向に移動不能に固定されている。固定カム44は、周方向に3箇所のカム谷部44a,44b,44cと3箇所のカム頂部44d,44e,44fを有している。3箇所のカム谷部44a,44b,44cはモータ軸線J回りに不等分配置され、且つ周方向領域の長さは相互に異なっている。第1カム谷部44aと第2カム谷部44bの周方向領域は、第3カム谷部44cよりも短くなっている。第3カム谷部44cの周方向領域が最も長くなっている。第3カム谷部44cの周方向領域は、回転カム43の第3カム頂部43eを収容可能な長さに設定されている。第1カム谷部44aと第2カム谷部44bの周方向領域は概ね同等程度の長さに設定されている。
【0064】
第1カム谷部44aと第2カム谷部44bの周方向領域の長さは回転カム43の第3カム頂部43eの周方向領域の長さより短い。このため、第1カム谷部44aと第2カム谷部44bに第3カム頂部43eは進入できない。
【0065】
固定カム44に対して回転カム43が矢印R方向に回転して、回転カム43の周方向の領域が最も長い第3カム頂部43eが、固定カム44の周方向の領域が最も長い第3カム谷部44cの下方に至ると、回転カム43が圧縮バネ45の付勢力により固定カム44に接近する側(上方)に変位する。これにより、ロック部材41がホイール22の挿通孔28から上方へ退出されて、ホイール22が回転軸21に対して径方向に変位可能な状態となる。
【0066】
図7は、カム機構42の噛み合い状態を示している。この噛み合い状態では、回転カム43の第3カム頂部43eが固定カム44の第3カム谷部44cの下方に至って回転カム43が圧縮バネ45の付勢力により上動した状態となる。このため、カム機構42が噛み合うと、ロック部材41が挿通孔28から退出されてホイール22が径方向へ変位可能な状態(変位規制状態の解除)となる。この噛み合い状態は、回転方向の1箇所の領域でのみ実現される。このため、ロック部材41の挿通孔28からの退出動作は、ホイール22の回転動作について下記に示す一定の角度範囲についてのみなされる。
【0067】
ホイール22と一体で回転する回転カム43の固定カム44に対する回転方向の相対位置は、第1係合部P1がドライバ15の被係合部Lに係合される段階で第3カム頂部43eが第3カム谷部44cの下方に位置するように設定されている。これにより、遅くとも第1係合部P1が被係合部Lに干渉する前のタイミングでロック部材41が挿通孔28から退出して、ホイール22の径方向への変位が許容される状態となる。ホイール22の径方向への変位が許容されることで、ドライバ15の被係合部Lに対するホイール22の係合部Pの干渉が回避される。
【0068】
第1係合部P1が被係合部Lに干渉する前のタイミングは、ドライバ15の被係合部Lに対するホイール22の第1係合部P1の係合初期段階であって、ドライバ15の上動開始の初期段階に相当する。本実施例では、例えば第1係合部P1が機構ケース25の窓部25bを経て打ち込み通路2a内に進入した段階(第3被係合部L3に係合される直前)で、ホイール22の径方向への変位が許容される状態となるように回転カム43と固定カム44のモータ軸線J回りの相対位置が設定されている。
【0069】
図8はカム機構42の非噛み合い状態を示している。
図8に示すように回転カム43の第3カム頂部43eが固定カム44の第3カム谷部44cの下方から回転方向にずれた状態若しくは位置しない状態では、第1、第2カム頂部43c,43dが第2、第3カム谷部44b,44cの下方に至った状態であっても、第3カム頂部43eの一部が固定カム44の第3カム頂部44dに当接した状態となる。このため、回転カム43の上方への変位が規制された非噛み合い状態となる。この非噛み合い状態では、回転カム43が圧縮バネ45に抗して下方(
図8中矢印D方向)へ変位された状態に維持される。このため、挿通孔28にロック部材41が進入した状態に維持されて、ホイール22の回転軸21に対する径方向への変位規制状態に維持される。
【0070】
このようにホイール22の矢印R方向への回転により回転カム43の第3カム頂部43eが固定カム44の第3カム谷部44cの下方に位置する領域で、回転カム43と固定カム44が噛み合う。これにより回転カム43が上方へ変位することで挿通孔28からロック部材41が退出されて、ホイール22が径方向に変位可能となる。前記したようにロック部材41が挿通孔28から退出される領域は、ホイール22の一部の回転領域に設定されている。本実施例では、第1係合部P1がドライバ15の被係合部Lに係合される前後一定の領域に設定されている。
【0071】
本実施例では、例えば第1係合部P1が被係合部Lに係合された時点、若しくは第2係合部P2がドライバ15の被係合部Lに係合される直前の段階で、ロック部材41が挿通孔28に進入してホイール22の径方向への変位が規制された状態となる。第2係合部P2が被係合部Lに係合される段階では、既に第1係合部P1が被係合部Lに係合されている。これにより、ドライバ15がわずかに上動されることで、被係合部Lに対する第2係合部P2の相対位置がスムーズに係合される状態に修正されている。このため、第2係合部P2が被係合部Lに係合される段階では、ホイール22が径方向へ変位可能であるよりも、径方向への変位が規制されて確実な係合状態が実現されることが望ましい。
【0072】
ホイール22が径方向への変位が規制された状態で回転継続することで、第3係合部P3、第4係合部P4…の順に被係合部Lに係合されていくことで、ドライバ15が上動される。上記したように、第1係合部P1が被係合部Lに係合されるドライバ15の上動初期段階を除いて、ホイール22の径方向への変位が変位規制機構40で規制される。このため、第2係合部P2、第3係合部P3、…最終係合部P10が被係合部Lに対して順次確実に係合される。これにより、ドライバ15を経て付加される蓄圧室14のガス圧を受けつつ、ドライバ15に対して上動させるための動力がホイール22からドライバ15に確実に伝達される。
【0073】
例えば、
図16に示すようにホイール22の変位方向(支持平面21aとスライド面28aの摺接面方向)がドライバ15の移動方向(上下方向)に平行若しくは概ね平行となる段階では、蓄圧室14のガス圧による推力のほぼ全てがホイール22に対して変位させる方向の外力として作用する。しかしながら、この段階では、挿通孔28にロック部材41が挿入されてホイール22の径方向への変位動作が規制された状態となっている。このため、最終被係合部L10に対する第4係合部P4の係合状態を経て蓄圧室14の推力を受けつつホイール22により駆動部30の動力がドライバ15に確実に伝達される。これにより、ドライバ15が確実に上動される。
【0074】
ホイール22の回転により順次なされる被係合部Lに対する係合部Pの係合によりドライバ15が待機位置まで戻される。この段階で電動モータ32が停止してドライバ15が待機位置に保持される。これにより前記したように作業者は打ち込み通路2a内で詰まった打ち込み具Nの除去作業を行うことができる。その後、スイッチレバー3aの引き操作により駆動部30を再起動することでドライバ15が上動端まで移動される。ドライバ15が上動端に至った段階で、ホイール22が空転することで、ドライバ15の被係合部Lに対する係合部Pの位置ずれが修正される。最終被係合部L10に対する最終係合部P10の係合状態まで修正された後、ホイール22がさらに回転して両者の係合状態が外れることでドライバ15が下動して打ち込み動作がなされる。
【0075】
以上説明した打ち込み工具1によれば、リフト機構20のホイール22が変位許容機構27により回転軸21に対して径方向に変位可能となっている。これにより、ドライバ15の被係合部Lに対する第1係合部P1の干渉状態(正常でない係合状態)が回避されて、第1係合部P1が被係合部Lの下面に係合される。これにより例えば釘詰まりが発生した場合でもドライバ15の待機位置への戻し動作が迅速且つスムーズになされる。
【0076】
例示した実施例では、ホイール22の全体が回転軸21に対して径方向に変位されることで第1係合部P1の干渉が回避される。これによりホイールの一部について変位させる構成に比して構成の簡略化が図られる。
【0077】
ホイール22の径方向への変位は、ドライバ15の上動動作の初期段階(第1係合部P1が被係合部Lに係合若しくは干渉される段階)でのみなされる。第2~最終係合部(P2~P10)が被係合部Lに係合される段階では、変位規制機構40によりホイール22の径方向への変位が規制される。これにより、蓄圧室14のガス圧を受けつつ、リフト機構20によりドライバ15の上動動作が確実になされる。
【0078】
例示した実施例では、ホイール22の変位方向(スライド面28aの面方向)が、ドライバ15の移動方向に対して平行になる段階では、既にホイール22の径方向への変位が変位規制機構40により規制された状態となる。ドライバ15から受ける力の方向(ドライバ15の移動方向)がホイール22の変位方向に一致する段階では、係合部Pに対してドライバ15からホイール変位方向の大きな外力(ガス圧の推力)を受ける。このため遅くともこの段階で、ホイールの径方向への変位が変位規制機構により規制されることで、ドライバ15に対するリフト機構20の係合状態が良好に保持されて動作不良が回避される。
【0079】
例示した実施例では、ホイール22の挿通孔28とホイール22を支持する回転軸21との間にロック部材41が進入されて、ホイール22の回転軸21に対する径方向の変位が規制される。ロック部材41が挿通孔28から退出されると、ホイール22の回転軸21に対する径方向の変位が許容される。ロック部材41を挿通孔28に対して進退させる簡易な構成により、ホイール22の径方向への変位が許容される状態と規制される状態に切り替えられる。
【0080】
例示した実施例では、ロック部材41が回転軸21の軸線方向(モータ軸線J方向)に変位して挿通孔28に進退される。簡易且つコンパクトな構成により挿通孔28に対するロック部材41の進退動作がなされる。
【0081】
例示した実施例では、ロック部材41が係合部Pよりも内周側に位置することで、変位規制機構40のコンパクト化が図られている。
【0082】
例示した実施例では、カム機構42により、ホイール22の回転動作に連動してロック部材41が挿通孔28に対して進入され、逆に退出される。カム機構42によりロック部材41の精確且つ確実な動作が実現される。
【0083】
例示した実施例では、挿通孔28の一対のスライド面28aと回転軸21の一対の支持平面21aが摺接されることで、ホイール22が回転について回転軸21に一体化され、且つホイール22が回転軸21に対して径方向に変位可能に支持される。
【0084】
例示した実施例では、挿通孔28内に装着された圧縮バネ29により、ホイール22がドライバ15に接近する方向に付勢されている。これにより、ホイール22が回転軸21に対して同軸となる位置(ドライバ15に対する正常な係合位置)に復帰される。圧縮バネ29が挿通孔28内に装着されることで、変位許容機構27のコンパクト化が図られる。
【0085】
例示した実施例では、変位規制機構40は、ロック部材41を挿通孔28内から退出させる方向に付勢する圧縮バネ45を有する。これにより、簡易な構成でロック部材41が確実に挿通孔28内から退出される。
【0086】
例示した実施例では、カム機構42は、回転軸21の軸線回り(モータ軸線J回り)に不等分配置された複数のカム部C1,C2,C3を有する。これにより、回転軸21の軸線回りの1箇所のみで回転カム43と固定カム44とが噛み合う。これにより、ロック部材41の挿通孔28に対する進退動作がそれぞれ回転軸21の軸線回りの1箇所に固定される。このため、ホイール22の径方向への変位が許容される状態と規制される状態が回転軸21の軸線回りの固定された1箇所で確実になされる。これによりドライバ15に対するリフト機構20の良好な係合状態が維持される。
【0087】
以上説明した実施例には種々変更を加えることができる。例えば、リフト機構20において、10個の係合部Pを有するホイール22と10個の被係合部Lを有するドライバ15を例示したが、係合部Pと被係合部Lの個数は10個に限定されない。係合部Pと被係合部Lの個数はドライバのストローク若しくは本体部10のサイズ等の要因により適切に設定される。
【0088】
ホイール22をドライバ15側へ付勢する付勢部材として圧縮バネ29を例示したが、リーフスプリングやウレタンゴム等その他の付勢部材に変更してもよい。ホイール22をドライバ15側へ付勢する付勢部材は、挿通孔28の外部に配置する構成としてもよい。
【0089】
回転カム43の3か所のカム頂部43c,43d,43eについては、周方向領域の長さを相違させること、且つ起点が周方向に異なる間隔で配置されることで周方向に不等分配置する構成を例示したが、起点が同じ間隔で周方向領域の長さを相違させることで不等分配置する構成、あるいは同じ周方向領域の長さで起点が異なる間隔で配置されることで不等分配置する構成としてもよい。何れの場合にも、回転カムと固定カムを回転方向の1箇所の領域でのみ噛み合わせる構成とすることができる。また、3つのリフト部43f,43g,43hについては、周方向領域が同じ長さ(傾斜角度が同じであることで均一なリフトが可能)で、周方向に不等分に配置した構成を例示したが、カム頂部の起点が同じ間隔で周方向の長さが異なる場合には、周方向領域が同じ長さで周方向に等分配置する構成としてもよい。
【0090】
カム機構の複数のカム部は、例示した軸線回りの3箇所に限らず、2箇所であってもよいし、4箇所以上であってもよい。
【0091】
上記例示したように、第1係合部P1がドライバ15の被係合部Lから受ける外力Fの方向に概ね平行となるようにホイール22の変位方向を設定することが望ましい。これにより、第1係合部P1が被係合部Lに干渉した際にホイール22が被係合部Lから離間する方向へよりスムーズに変位される。但し、外力Fの方向に対してホイール22の変位方向をモータ軸線J回りに適宜ずらすことは許容される。
【0092】
図17~26に第2実施例に係るリフト機構50が例示されている。第2実施例に係るリフト機構50は、第1実施例と同じ変位許容機構60と第1実施例とは異なる変位規制機構70を備える。第1実施例と同様で足り、第2実施例において変更を要しない部材及び構成については同位の符合を用いてその説明を省略する。
【0093】
第2実施例に係るリフト機構50は、電動モータ32により回転する回転軸51と、回転軸51に支持されたホイール52を有する。電動モータ32が起動するとリフト機構50のホイール52が一体で回転する。ホイール52は、一定の間隔をおいて相互に平行な2つのフランジ部52aを有する。2つのフランジ部52aの周縁部間に跨って複数の係合部Pが両端支持状態で相互に平行に設けられている。第2実施例でも、10個の係合部P(P1~P10)が例示されている。各係合部Pには、それぞれ円柱形の軸部材(ピン)が用いられている。
【0094】
第1実施例と同じく、ドライバ15の右側部に、10個の被係合部L(L1~L10)が長手方向(上下方向)に一定の間隔をおいて配置されている。ホイール52の各係合部Pがドライバ15の被係合部Lに係合された状態で、ホイール52が回転することによりドライバ15とピストン13が上方へ戻される。ホイール52は電動モータ32の起動により図中矢印Rで示すように反時計回り方向に回転する。
【0095】
第2実施例に係るリフト機構50は、ホイール52の径方向への変位を許容するための変位許容機構60を有する。変位許容機構60は、ホイール52に設けた挿通孔61を有する。挿通孔61の内壁面には、相互に平行で径方向に延在する一対のスライド面61aが設けられている。挿通孔61は、回転軸51に対してホイール52の径方向への変位を許容するように径方向に長い長孔形状に形成されている。
【0096】
挿通孔61に回転軸51が挿通されている。回転軸51の支持平面51aに、挿通孔61のスライド面61aが摺接されている。これにより、回転軸51に対してホイール52が一体で回転可能かつ径方向に一定の範囲で変位可能に支持されている。ホイール52が回転軸51に対して径方向に変位されることで、ドライバ15の被係合部Lに対する係合部Pの干渉状態が回避される。挿通孔61の内壁面と回転軸51との間に圧縮バネ62が介装されている。圧縮バネ62の付勢力により、ホイール52が係合部Pをドライバ15の被係合部Lに接近させる係合側に付勢されている。このためホイール52の径方向への変位であって反係合側への変位は、圧縮バネ62の付勢力に抗してなされる。
図20~22に示すようにホイール52が圧縮バネ62に抗して反係合側へ変位すると、回転軸51の圧縮バネ62とは反対側の外周面と挿通孔61の内周面との間に、変位距離に相当する隙間61bが発生する。
【0097】
第2実施例のリフト機構50は、ホイール52の径方向への変位を規制する変位規制機構70を有する。変位規制機構70は、規制円板71,72と規制部材73,74を有する。
図17,18に示すようにホイール52の上方と下方に規制円板71,72が配置されている。2つの規制円板71,72は、概ね同径の円板形を有して、相互に同軸且つ平行に配置されている。2つの規制円板71,72は、機構ケース25側に固定されている。従って、2つの規制円板71、72は、電動モータ32の起動によっても回転しない。2つの規制円板71,72の中心に挿通孔71a,72aが設けられている。2つの挿通孔71a,72aに回転軸51が相対回転自在に挿通されている。下側の規制円板72の外周の一定範囲には、円弧形の欠落部72dが設けられている。この欠落部72dにより、打ち込みノーズ部2に対してマガジン6を組み付ける作業の便宜が図られる。
【0098】
上側の規制円板71の下面と下側の規制円板72の上面にそれぞれ規制壁部71b,72bが設けられている。規制壁部71b,72bは、上下に対称に設けられている。第2実施例では、規制円板71,72に設けた溝部の外周側の壁面が規制壁部71b,72bとされている。規制壁部71b,72bには、それぞれ周方向の1個所に規制解除部71c,72cが設けられている。第2実施例では、外周側に凹む凹部が規制解除部71c,72cとされている。
【0099】
上側の規制解除部71cと下側の規制解除部72cは、モータ軸線J回りの同じ位置において上下に対向して配置されている。2つの規制解除部71c,72cは、回転軸51に対してドライバ15とは反対側に配置されている。2つの規制解除部71c,72cは、モータ軸線J回りの一定の角度範囲(例えば40°程度)に設けられている。第2実施例では、隣接する2本の係合部P(
図19,20では第6、第7係合部P6,P7)間の間隔に相当する角度範囲に設けられている。規制解除部71c,72cの角度範囲は60°程度に拡大してもよい。
【0100】
図21に示すように上下の規制部材73,74は、ホイール52の係合部Pを利用して設けられている。第2実施例では、10本の係合部Pのうち第7係合部P7を利用して規制部材73,74が設けられている。第7係合部P7の上下両端部は、それぞれフランジ部52aから上下に突き出されている。第7係合部P7の突き出し部分にローラ体が軸回りに回転自在に支持されている。上下のローラ体がそれぞれ規制部材73,74とされている。
【0101】
ホイール52の回転動作に伴って上下の規制部材73,74が規制壁部71b,72bに沿って移動する。規制部材73,74が規制壁部71b,72bに沿って移動する状態では、回転軸51に対するホイール52の径方向への変位が規制された状態となる。従って、ホイール52がモータ軸線Jを中心に矢印R方向に回転する。
【0102】
図19,20に示すようにホイール52の矢印R方向の回転により、第1係合部P1が打ち込み通路2a内に進入して、ドライバ15の被係合部Lに係合される。
図22,23に示すようにこの段階で、第1係合部P1の反対側の第7係合部P7に支持した規制部材73,74がそれぞれ規制壁部71b,72bを外れて規制解除部71c,72cに進入する。規制部材73,74が規制解除部71c,72cに至ると外方へ変位可能(規制解除部71c,72c内に進入可能)となる。これによりホイール52が圧縮バネ62に抗してドライバ15から離間する方向へ変位可能な規制解除状態となる。
【0103】
このため第1実施例と同じく、釘詰まり等により噛み合いがずれたことにより第1係合部P1を経てホイール52に大きな外力Fが付加されると、
図20~22に示すようにホイール52の全体が圧縮バネ62に抗して径方向に変位する。従って回転軸51と挿通孔61との間に隙間61bが発生する。これにより、第3被係合部L3に対する第1係合部P1の干渉(噛み合いロック状態)が回避される。
【0104】
ホイール52がドライバ15から離間する方向に変位しつつ矢印R方向に回転することで、第1係合部P1が第3被係合部L3の側方を通過する。この段階で、第3被係合部L3から受けるスライド方向の外力Fが小さくなっていく。このため
図24に示すようにホイール52が圧縮バネ62の付勢力によってドライバ15に接近する方向に戻される。ホイール52が戻されつつ回転することで、第1係合部P1が第2被係合部L2の下面に当接される。この段階で規制部材73,74が規制解除部71c,72cから外れて、再び規制壁部71b,72bに沿って移動する状態となる。従って、ホイール52の径方向への変位が規制された状態に切り替わる。
【0105】
第1係合部P1が被係合部Lの下面側に正常に係合された状態で引き続きホイール52が回転することで、ドライバ15が停止位置から上方へ変位される。
図25,26に示すようにこの段階では、上下の規制部材73,74が規制壁部71b,72bに沿って移動する状態が継続されることで、回転軸51に対するホイール52の径方向への変位が規制された状態に維持される。これによりドライバ15が上方の待機位置に戻される。
【0106】
以上例示した第2実施例によっても、ホイール52の変位許容機構60による径方向への変位動作は、第1係合部P1が被係合部Lに係合される前後一定の範囲で許容される。第2~最終係合部(P2~P10)がドライバ15の被係合部Lに係合される段階では、ホイール52の径方向への変位は、変位規制機構70により規制される。
【0107】
変位許容機構60によりホイール52が径方向へ変位可能となるタイミングは適宜変更可能である。従って、規制部材73,74の位置は、例示した第7係合部P7から回転方向前側若しくは後側に変位した位置に変更可能である。また、規制解除部71c,72cのモータ軸線J回りの位置についても回転方向前側若しくは後側に変位した位置に変更可能である。さらに、前記したように規制解除部71c,72cの角度範囲は、例示した40°程度の範囲から拡大し、若しくは縮小してもよい。
【0108】
第1実施例と同様、ホイール52の径方向への変位が許容される状態から規制される状態へ復帰させるタイミングは、ドライバ15の被係合部Lに対して第1係合部P1が正常に係合された状態となった時点に設定する他、適宜変更することができる。例えば、第2係合部P2が被係合部Lに係合される段階で規制部材73,74が規制解除部71c,72cから離脱して規制状態に切り替わる構成としてもよい。
【0109】
第2実施例によれば、第1実施例のカム機構42を省略できることからリフト機構50のモータ軸線J方向のコンパクト化及び構成の簡略化が図られる。
【0110】
第2実施形態にはさらに変更を加えることができる。例えば、2つの規制部材73,74がホイール52の上下両側に有する構成を例示したが、一方を省略してもよい。
【0111】
規制部材73,74が1つの係合部P(第7係合部P7)を利用して配置される構成を例示したが、係合部Pとは別に規制部材を配置する構成としてもよい。
【0112】
第2実施例では溝部の外周側の壁面を規制壁部71b,72bとする構成を例示したが、上下の規制円板71,72の相互の対向面に、円環形に突き出す突条の壁部を上下対称に設けて規制壁部としてもよい。
【0113】
第1、第2実施例の打ち込み工具1が本開示の1つの局面における打ち込み工具の一例である。第1、第2実施例のピストン13が本開示の1つの局面におけるピストンの一例である。第1、第2実施例のドライバ15が本開示の1つの局面におけるドライバの一例である。第1、第2実施例の被係合部L(L1~L10)が本開示の1つの局面における複数の被係合部の一例である。
【0114】
第1実施例のリフト機構20、第2実施例のリフト機構50が本開示の1つの局面におけるリフト機構の一例である。第1実施例の回転軸21、第2実施例の回転軸51が本開示の1つの局面における回転軸の一例である。第1実施例のホイール22、第2実施例のホイール52が本開示の1つの局面におけるホイールの一例である。第1、第2実施例の係合部P(P1~P10)が本開示の1つの局面における係合部の一例である。
【0115】
第1実施例の変位許容機構27、第2実施例の変位許容機構60が本開示の1つの局面における変位許容機構の一例である。第1実施例の変位規制機構40、第2実施例の変位規制機構70が本開示の1つの局面における変位規制機構の一例である。第1、第2実施例の第1係合部P1が本開示の1つの局面における第1係合部の一例である。第1、第2実施例の第2係合部P2が本開示の1つの局面における第2係合部の一例である。