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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179311
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】海苔生地液供給パイプ
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20221125BHJP
【FI】
A23L17/60 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008392
(22)【出願日】2022-01-24
(62)【分割の表示】P 2021085962の分割
【原出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社オーツボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠一郎
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LP19
4B019LT22
(57)【要約】
【課題】特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる海苔生地液供給パイプを提供する。
【解決手段】海苔生地液供給パイプとしての分流器4は、後端部が上方に屈曲し、かつ、前端部が下方に屈曲しており、後端部及び前端部以外の部分は真っ直ぐな中空管からなっている。分流器4は、その後端が分流タンク3の前方底部に連通されると共に、前端部が抄箱1の肩部から挿入され、供給口4aから抄箱1内に海苔生地液Lを供給することができる。分流器4は、その全体が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾した状態で設置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め細かくミンチされた生海苔と水との混合液である海苔生地液を貯留する貯留タンクに一端が連通されると共に、他端部が抄箱に挿入され、供給口から前記抄箱内に前記海苔生地液を供給する海苔生地液供給パイプであって、
少なくとも下流側部分が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾した状態で設置されることを特徴とする海苔生地液供給パイプ。
【請求項2】
全体が前記上流側から前記下流側に向かって緩やかに下傾した状態で設置される、請求項1に記載の海苔生地液供給パイプ。
【請求項3】
前記一端が前記貯留タンクの底部に連通されると共に、前記他端部が前記抄箱の肩部から挿入される、請求項1又は2に記載の海苔生地液供給パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用乾燥海苔を製造する際に、原料生地である細かくミンチされた生海苔と水との混合液である海苔生地液を抄箱内に供給する海苔生地液供給パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
食用に供される乾燥海苔は、予め細かくミンチされた生海苔と水との混合液である海苔生地液を抄箱内に連続的に供給し、スノコ状の海苔ミスによって矩形平板状に抄製した後、乾燥し、海苔ミスから剥離する工程を経て製品化されるのが一般的である(食用板海苔の製造)。
【0003】
ところで、海苔ミス上に流出する生海苔の重量が不安定であると、乾燥ムラが生じ、食用板海苔の品質を低下させてしまう虞がある。
これを解決するための技術としては、例えば、海苔ミス上の海苔生地液が流出する位置に流量センサを配置し、食用板海苔1枚ごとに要する海苔生地液の流出量を制御することが考えられる。
【0004】
しかし、食用板海苔の製造においては、海苔ミス上に均一に海苔生地液を流出して成形する必要があり、海苔ミス上の海苔生地液が流出する位置に流量センサを配置すると、この成形を壊してしまい、直接計量することが困難となる。そして、このため、食用板海苔1枚分に対する海苔生地液の単位分量を管理者が把握できず、食用板海苔の品質低下を招く一因となってしまう。
そこで、本出願人は、先に、海苔ミス上に流出する海苔生地液の流出量を管理者が把握することを可能にして、食用板海苔の品質向上を図ることができる海苔生地液の流出量出力システムを提案している(特許文献1を参照)。
【0005】
特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムは、図6に示す海苔抄装置M’及び流量計101と、通信端末(図示せず)と、から少なくとも構成されている。
図6に示すように、海苔抄装置M’は、抄箱102と、海苔生地液供給機構103と、を有している。海苔生地液供給機構103は、抄箱102の上方に設けられた海苔生地液L’を貯留する分流タンク104と、当該分流タンク104から抄箱102内に海苔生地液L’を供給する分流器105と、を備えている。そして、海苔抄装置M’は、抄箱102の下方に設けられた海苔ミス搬送機構(図示せず)によって水平方向に搬送される海苔ミス106を、下方に設けられた捨水台107及び保水袋108を有する保水機構109と、透明マス110と、で挟むように構成されている。
【0006】
海苔生地液供給機構103の分流器105は、その上端が分流タンク104の底部に連通されると共に、下端が漏斗状に先細りに形成された供給口105aを有する屈曲した中空管であり、抄箱102の肩部から挿入され、供給口105aから抄箱102内に海苔生地液L’を供給できるようにされている。また、抄箱102には、分流器105が挿入された肩部から下方に向かって延出して、当該抄箱102からオーバーフローした海苔生地液L’を排出する溢出口102aが形成されている。
【0007】
抄箱102には、その底板102bに複数の海苔生地液流出孔102cが形成されており、これらの海苔生地液流出孔102cは、抄弁102dに垂設された複数の抄バルブ(押し下げバルブ)102eによって開閉できるようにされている。抄バルブ102eの開閉動作は、抄バルブハンガープレート102fの昇降移動に追随して行われる。
【0008】
流量計101は、抄箱102に供給される海苔生地液L’の流出流量を測定するセンサであって、分流タンク104と分流器105との間である分流タンク104の底部に配置されている。
通信端末は、算出部と出力部を有している。算出部は、抄箱102に海苔生地液L’が流出されて、当該抄箱102からオーバーフローするまでの時間Tと、海苔生地液L’の流出流量Qと、から海苔生地液L’の流出量(Q×T)を算出する。出力部は、算出部が算出した流出量を出力する。
【0009】
以上の構成を備えた海苔生地液の流出量出力システムによれば、海苔ミス106上に流出する海苔生地液L’の流出量を管理者が把握することが可能となり、食用板海苔の品質向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特願2021-010553号明細書及び図面
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムは、上記のように、海苔ミス上に流出する海苔生地液の流出量を管理者が把握することを可能にして、食用板海苔の品質向上を図ることができるものであるが、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることが望まれていた。
そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究を重ね、海苔生地液が分流タンクから抄箱内に供給される際に乱流が発生して、抄箱内に供給される海苔生地液中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性があることを突き止め、海苔生地液供給機構の分流器の配設状態を工夫することにより、乱流の発生を抑制して、抄箱内に供給される海苔生地液中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を小さくできることを見出し、本発明をするに至った。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる海苔生地液供給パイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明に係る海苔生地液供給パイプの構成は、
(1)予め細かくミンチされた生海苔と水との混合液である海苔生地液を貯留する貯留タンクに一端が連通されると共に、他端部が抄箱に挿入され、供給口から前記抄箱内に前記海苔生地液を供給する海苔生地液供給パイプであって、
少なくとも下流側部分が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾した状態で設置されることを特徴とする。
【0014】
本発明の海苔生地液供給パイプの構成において、「上流側から下流側に向かって緩やかに下傾している」とは、例えば、「上流側から下流側に向かって約0°~約20°の角度で下傾している」ことを意味している。
【0015】
本発明の海苔生地液供給パイプの上記(1)の構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、上記(1)の構成によれば、貯留タンク内に貯留されている海苔生地液を抄箱内に供給する海苔生地液供給パイプの少なくとも下流側部分を、上流側から下流側に向けて緩やかに下傾させるようにしているため、海苔生地液が貯留タンクから抄箱内に供給される際の落差を小さくして、乱流の発生を抑制することができる。
したがって、上記(1)の構成によれば、抄箱内に供給される海苔生地液中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を小さくすることができる。その結果、特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに上記(1)の構成を取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる。
【0016】
本発明の海苔生地液供給パイプの上記(1)の構成においては、以下の(2),(3)のような構成にすることが好ましい。
【0017】
(2)上記(1)の構成において、全体が前記上流側から前記下流側に向かって緩やかに下傾した状態で設置される。
かかる構成は、貯留タンクの高さ位置を、抄箱の高さ位置に近づけることによって実現することができる。
上記(2)の好ましい構成によれば、海苔生地液供給パイプの全体を、上流側から下流側に向けて緩やかに下傾させるようにしているため、海苔生地液が貯留タンクから抄箱内に供給される際の落差を非常に小さくして、乱流の発生を確実に抑制することができる。
したがって、上記(2)の好ましい構成によれば、抄箱内に供給される海苔生地液中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を非常に小さくすることができる。その結果、特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに上記(2)の好ましい構成を取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を、より確実なものとすることができる。
【0018】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記一端が前記貯留タンクの底部に連通されると共に、前記他端部が前記抄箱の肩部から挿入される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、海苔生地液が抄箱内に供給される際の乱流の発生を抑制し、抄箱内に供給される海苔生地液中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を小さくすることができる。その結果、特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに本発明の構成を取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実態形態1における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成を示す背面図(海苔ミス、保水機構及び透明マスについては省略)である。
図2図2は、本発明の実態形態1における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成を示す一部破断側面図である。
図3図3は、本発明の実態形態1における海苔生地液供給機構の分流タンク周りの構成を示す一部破断拡大側面図である。
図4図4は、本発明の実態形態2における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成を示す一部破断側面図である。
図5図5は、本発明の実態形態3における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成を示す一部破断側面図である。
図6図6は、従来技術における海苔抄装置の構成を示す一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
[実施形態1]
(海苔抄装置の構成)
まず、本発明の実施形態1における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成について、図1図3を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実態形態1における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成を示す背面図(海苔ミス、保水機構及び透明マスについては省略)、図2は、当該海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成を示す一部破断側面図、図3は、当該海苔生地液供給機構の分流タンク周りの構成を示す一部破断拡大側面図である。
【0024】
図1図2に示すように、海苔抄装置Mは、抄箱1と、海苔生地液供給機構2と、を有している。海苔生地液供給機構2は、抄箱1の後方(背面側)に設けられた海苔生地液Lを貯留する、貯留タンクとしての分流タンク3と、当該分流タンク3から抄箱1内に海苔生地液Lを供給する、供給パイプとしての分流器4と、を備えている。そして、海苔抄装置Mは、抄箱1の下方に設けられた海苔ミス搬送機構(図示せず)によって水平方向に搬送される海苔ミス5を、下方に設けられた捨水台6及び保水袋7を有する保水機構8と、透明マス9と、で挟み込むように構成されている。
【0025】
海苔生地液供給機構2の分流器4は、後端部が上方に屈曲し、かつ、前端部が下方に屈曲しており、後端部及び前端部以外の部分は真っ直ぐな中空管からなっている。そして、分流器4は、その後端が分流タンク3の前方底部に連通されると共に、前端部が抄箱1の肩部から挿入され、供給口4aから抄箱1内に海苔生地液Lを供給できるようにされている。また、抄箱1には、分流器4が挿入された肩部から下方に向かって延出して、当該抄箱1からオーバーフローした海苔生地液Lを排出する溢出口1aが形成されている。
より具体的には、分流器4は、その全体が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾した状態となっている。傾斜角度は、例えば、約0°~約20°である。図2では、分流器4が若干前方に下傾した状態で略水平に維持されている場合が例示されている。かかる構成は、分流タンク3の高さ位置を、抄箱1の高さ位置に近づけることによって実現することができる。
【0026】
本実施形態の海苔生地液供給機構2のかかる構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、分流タンク3内に貯留されている海苔生地液Lを抄箱1内に供給する分流器4の全体が、上流側から下流側に向かって緩やかに下傾しているため、海苔生地液Lが分流タンク3から抄箱1内に供給される際の落差を小さくして、乱流の発生を抑制することができる。
したがって、かかる構成によれば、抄箱1内に供給される海苔生地液L中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を小さくすることができる。その結果、特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに、かかる構成を取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる。
【0027】
抄箱1は、中空筐体状に形成され、その内部には、上端部に設けられた抄バルブハンガープレート1bから垂下される複数の弁棒1cによって支承された抄弁1dが設けられると共に、抄箱1の肩部から挿入された分流器4の供給口4aが抄弁1dに臨んだ状態で配置されている。
【0028】
抄箱1には、その底板1eに複数の海苔生地液流出孔1fが形成されており、これらの海苔生地液流出孔1fは、抄弁1dに垂設された複数の抄バルブ(押し下げバルブ)1gによって開閉できるようにされている。抄バルブ1gの開閉動作は、抄バルブハンガープレート1bの昇降移動に追随して行われる。
【0029】
抄バルブハンガープレート1bは、抄箱1の上方に配設された抄アーム10を上下駆動させることにより、抄箱1頂部の弁枠1hとの間にスプリング11を介して当該抄バルブハンガープレート1bに連結保持された主弁棒12が押圧されることで、弾発的に昇降移動するようにされている。
【0030】
すなわち、抄アーム10の上下駆動によって抄弁1dを昇降させることで、海苔生地液流出孔1fを開閉できるようにされている。さらに、抄箱1の下部には、上下が開放されると共に上端周縁に鍔部9aが形成された筒状の透明マス9が配置されている。この透明マス9は、上下に昇降動作して海苔ミス5に対して接離できるようにされている。
【0031】
保水機構8は、矩形板状でスノコ状に形成された下マス7aの下部に、可撓性を有する保水袋7を圧縮及び膨張可能に取り付けると共に、その下方に昇降動作する捨水台6を配置することにより、構成されている。そして、下マス7aには、上下に貫通する複数の通水孔(図示せず)が穿設されており、保水袋7は、捨水台6を昇降させることで圧縮又は膨張され、その内部に保水された水の水面位置を上下に変動できるようにされている。
【0032】
図1図3に示すように、分流タンク3の内部の背面側には、当該分流タンク3内に海苔生地液Lを圧送するための圧送パイプ13が配置されている。ここで、圧送パイプ13の先端部分は、分流タンク3の底部近傍に位置している。
図2図3に示すように、分流タンク3の内部には、分流器4との連通部分の手前に位置して、海苔生地液Lの流量を調整する調整関14が設けられている。
【0033】
本実施形態の海苔生地液供給機構2のかかる構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、分流タンク3の内部の、分流器4との連通部分の手前に位置して、海苔生地液Lの流量を調整する調整関14が設けられているため、分流タンク3内に貯留されている海苔生地液Lを一定スピードで一定量ずつ分流器4に排出して、海苔生地液Lが抄箱1内に供給される際の乱流の発生を抑制することができる。
したがって、かかる構成によれば、抄箱1内に供給される海苔生地液L中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を小さくすることができる。その結果、特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに、かかる構成を取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる。
【0034】
以下、さらに詳細に説明する。
調整関14は、下端を分流タンク3の底部から浮かせた状態で当該分流タンク3の左右方向に延びる第1調整関構成部材15と、第1調整関構成部材15の前方に位置して設けられ、下端を分流タンク3の底部に着けかつ第1調整関構成部材15の下端部と前後方向に重なり合った状態で当該分流タンク3の左右方向に延びる第2調整関構成部材16と、を備えている。ここで、第1調整関構成部材15は、上下端が90°前方に折れ曲がった板材からなり、全体が若干後方に傾いている。また、第2調整関構成部材16も、全体が若干後方に傾いている。さらに、第1及び第2調整関構成部材15,16は、それぞれ、その左右端部が分流タンク3の左右内壁面に固着されている。
かかる構成によれば、分流タンク3内に圧送された海苔生地液Lを、分流タンク3の底部と第1調整関構成部材15の下端との間を通過させ、かつ、第2調整関構成部16を乗り越えさせることにより、海苔生地液Lを一定スピードで一定量ずつ分流器4に排出させることが可能となる。その結果、海苔生地液Lが抄箱1内に供給される際の乱流の発生を抑制することができる。
【0035】
また、調整関14は、第1調整関構成部材15の後方に位置して設けられ、下端を分流タンク3の底部に着けた状態で当該分流タンク3の左右方向に延びる第3調整関構成部材17と、第3調整関構成部材17の上端から離間した状態で分流タンク3の左右方向に延び、かつ、上下移動可能なバー18と、をさらに備えている。ここで、第3調整関構成部材17は、前方に凸の角ばった弓なりに折れ曲がった板材からなり、全体が若干後方に傾いている。また、第3調整関構成部材17は、その左右端部が分流タンク3の左右内壁面に固着されている。
かかる構成によれば、第3調整関構成部材17の上端とバー18との間隙を、当該バー18を上下移動させることによって適切に調整することにより、分流タンク3内に圧送された海苔生地液Lを、一定量ずつ第1調整関構成部材15の方に流すことができる。その結果、海苔生地液Lを確実に一定量ずつ分流器4に排出させることが可能となるため、海苔生地液Lが抄箱1内に供給される際の乱流の発生を確実に抑制することができる。
【0036】
(海苔抄装置の動作)
次に、本発明の実施形態1における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の動作について、同じく図1図3を参照しながら説明する。
【0037】
概略として、分流タンク3に貯留されていた海苔生地液Lが分流器4の供給口4aから抄箱1内に供給される。
図1図2に示すように、まず、海苔抄装置Mが始動すると、海苔生地液供給機構2の分流タンク3に、常時、圧送パイプ13を通して圧送して貯留されている海苔生地液Lが抄箱1内に分流器4によって所定の流量が分流して供給される。抄箱1内に供給された海苔生地液Lは、抄箱1内を満たし、充満した場合は、オーバーフローして溢出口1aから溢出される。
【0038】
図3に示すように、分流タンク3の内部では、まず、圧送パイプ13の先端から圧送された海苔生地液Lが、第3調整関構成部材17の背面側を回り込んで、当該第3調整関構成部材17の上端とバー18との間隙を通過する(図3の矢印イ,ロを参照)。ここで、第3調整関構成部材17の上端とバー18との間隙は、バー18を上下移動させることによって適切に調整されており、分流タンク3内に圧送された海苔生地液Lを、一定量ずつ第1調整関構成部材15の方に流すことができる。第3調整関構成部材17の上端とバー18との間隙を通過した海苔生地液Lは、分流タンク3の底部と第1調整関構成部材15の下端との間を通過し、かつ、第2調整関構成部16を乗り越えた後(図3の矢印ハを参照)、一定スピードで一定量ずつ分流器4に排出され(図3の矢印二を参照)、これにより、海苔生地液Lが抄箱1内に供給される際の乱流の発生が抑制される。その結果、抄箱1内に供給される海苔生地液L中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を小さくして、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる。
【0039】
分流器4に排出された海苔生地液Lは、分流器4の供給口4aから抄箱1内に供給される。そして、抄箱1内に充満した海苔生地液Lが、一回の動作で海苔ミス5上に流出する海苔生地液量となる。ここで、分流器4は、その全体が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾しており、これによっても、海苔生地液Lが分流タンク3から抄箱1内に供給される際の落差を小さくして、乱流の発生を抑制することができる。
【0040】
海苔ミス5は、所定のサイクルで搬送経路に沿って間欠的に所定距離ごと移動搬送される。その後、海苔抄装置Mは、透明マス9を降下させ、その下端開口面を、海苔ミス5を介して下マス7aの上面に当接させる。これにより、透明マス9と下マス7aとで海苔ミス5を挟持した状態となる。
【0041】
次いで、海苔抄装置Mは、捨水台6を上昇させて、保水袋7の下部中央を上方に押し上げることで、保水袋7を圧縮させる。これにより、保水袋7の内部に貯留されていた水が下マス7aの通水孔から海苔ミス5を透過して透明マス9の内部に流出され、海苔ミス5の上面が水で満たされた状態となる。
【0042】
次いで、海苔抄装置Mは、抄アーム10によって主弁棒12を押下することで抄弁1dを押圧し、抄バルブ1gを降下させて抄箱1の底板1eの海苔生地液流出孔1fを開放状態にする。これにより、海苔ミス5上に海苔生地液Lを流下させて抄製する。
【0043】
抄製後、海苔抄装置Mは、抄弁1dを上昇させることにより、抄バルブ1gを上昇させて海苔生地液流出孔1fを閉塞状態にする。そして、海苔生地液Lが抄箱1内に分流して供給される工程に戻って、上述した動作が反復継続される。
【0044】
なお、本実施形態においては、分流タンク3の内部の、分流器4との連通部分の手前に位置して、海苔生地液Lの流量を調整する調整関14が設けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。分流器4の全体が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾していれば、分流タンク3の内部に調整関14を設けるか否かは任意である。
【0045】
また、本実施形態においては、分流器4の全体が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾している場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。分流タンク3の内部の、分流器4との連通部分の手前に、海苔生地液Lの流量を調整する調整関14が設けられていれば、分流器4をどのような状態で配設するかは任意である。
【0046】
また、本実施形態においては、調整関14が、第1調整関構成部材15の後方に位置して設けられ、下端を分流タンク3の底部に着けた状態で当該分流タンク3の左右方向に延びる第3調整関構成部材17と、第3調整関構成部材17の上端から離間した状態で分流タンク3の左右方向に延び、かつ、上下移動可能なバー18と、をさらに備えている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。調整関14は、下端を分流タンク3の底部から浮かせた状態で当該分流タンク3の左右方向に延びる第1調整関構成部材15と、第1調整関構成部材15の前方に位置して設けられ、下端を分流タンク3の底部に着けかつ第1調整関構成部材15の下端部と前後方向に重なり合った状態で当該分流タンク3の左右方向に延びる第2調整関構成部材16と、を備えていれば、第3調整関構成部材17及びバー18備えることは任意である。
【0047】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成について、図4を参照しながら説明する。
【0048】
図4は、本発明の実態形態2における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成を示す一部破断側面図である。
【0049】
本実施形態の海苔抄装置M2は、上記実施形態1の海苔抄装置Mと比べて、海苔生地液供給機構の構成、特に、分流器(供給パイプ)の構成だけが異なり、その他の構成は上記実施形態1と同じである。このため、その他の構成については、同じ参照符号を付してそれらの詳細な説明は省略し、図1図3及び上記実施形態1の説明を援用する。
【0050】
図4に示すように、海苔抄装置M2は、抄箱1と、海苔生地液供給機構19と、を有している。海苔生地液供給機構19は、抄箱1の後方(背面側)に設けられた海苔生地液Lを貯留する、貯留タンクとしての分流タンク3と、当該分流タンク3から抄箱1内に海苔生地液Lを供給する、供給パイプとしての分流器20と、を備えている。
【0051】
海苔生地液供給機構19の分流器20は、その上端が分流タンク3の前方底部に連通された状態で下方に延び、角度135°で2回折り曲げられた後、下流側部分が、上流側から下流側に向かって緩やかに下傾した状態となっている。そして、分流器20前端部(下流側部分)は、抄箱1の肩部から挿入され、供給口20aから抄箱1内に海苔生地液Lを供給できるようにされている。
分流器20の下流側部分の傾斜角度は、例えば、約0°~約20°である。図4では、分流器20の下流側部分が若干前方に下傾した状態で略水平に維持されている場合が例示されている。
【0052】
本実施形態の海苔生地液供給機構19のかかる構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、分流タンク3内に貯留されている海苔生地液Lを抄箱1内に供給する分流器20の下流側部分が、上流側から下流側に向かって緩やかに下傾しているため、海苔生地液Lが分流タンク3から抄箱1内に供給される際の落差を小さくして、乱流の発生を抑制することができる。
したがって、かかる構成によれば、抄箱1内に供給される海苔生地液L中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を小さくすることができる。その結果、特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに、かかる構成を取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる。
但し、上記実施形態1のように、分流器4の全体を、上流側から下流側に向かって緩やかに下傾した状態にした方が、海苔生地液Lが貯留タンク3から抄箱1内に供給される際の落差を非常に小さくして、乱流の発生を確実に抑制することができ、したがって、抄箱1内に供給される海苔生地液L中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を非常に小さくすることができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、分流タンク3の内部の、分流器4との連通部分の手前に位置して、海苔生地液Lの流量を調整する調整関14が設けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。分流器20の下流側部分が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾していれば、分流タンク3の内部に調整関14を設けるか否かは任意である。
【0054】
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成について、図5を参照しながら説明する。
【0055】
図5は、本発明の実態形態3における海苔生地液供給機構を含む海苔抄装置の構成を示す一部破断側面図である。
【0056】
本実施形態の海苔抄装置M3は、上記実施形態1の海苔抄装置Mと比べて、海苔生地液供給機構の構成、特に、分流タンク(貯留タンク)の構成だけが異なり、その他の構成は上記実施形態1と同じである。このため、その他の構成については、同じ参照符号を付してそれらの詳細な説明は省略し、図1図3及び上記実施形態1の説明を援用する。
【0057】
図5に示すように、海苔抄装置M3は、抄箱1と、海苔生地液供給機構21と、を有している。海苔生地液供給機構21は、抄箱1の後方(背面側)に設けられた海苔生地液Lを貯留する、貯留タンクとしての分流タンク22と、当該分流タンク22から抄箱1内に海苔生地液Lを供給する、供給パイプとしての分流器4と、を備えている。
【0058】
海苔生地液供給機構21の分流タンク22は、特許文献1(従来技術)のものと同じである(図6を参照)。また、海苔生地液供給機構21の分流器4は、上記実施形態1のものと同様、後端部が上方に屈曲し、かつ、前端部が下方に屈曲しており、後端部及び前端部以外の部分は真っ直ぐな中空管からなっている。そして、分流器4は、その後端が分流タンク22の底部に連通されると共に、前端部が抄箱1の肩部から挿入され、供給口4aから抄箱1内に海苔生地液Lを供給できるようにされている。
より具体的には、分流器4は、その全体が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾した状態となっている。傾斜角度は、例えば、約0°~約20°である。図5では、分流器4が若干前方に下傾した状態で略水平に維持されている場合が例示されている。
【0059】
本実施形態の海苔生地液供給機構21のかかる構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、分流タンク22内に貯留されている海苔生地液Lを抄箱1内に供給する分流器4の全体が、上流側から下流側に向かって緩やかに下傾しているため、海苔生地液Lが分流タンク22から抄箱1内に供給される際の落差を小さくして、乱流の発生を抑制することができる。
したがって、かかる構成によれば、抄箱1内に供給される海苔生地液L中の生海苔の濃度にムラが発生する可能性を小さくすることができる。その結果、特許文献1で提案されている海苔生地液の流出量出力システムに、かかる構成を取り入れることにより、食用板海苔の品質向上を確実なものとすることができる。
【0060】
本実施形態の海苔生地液供給機構21の分流タンク(貯留タンク)22は、特許文献1(従来技術)のものと同じであるが、分流器(供給パイプ)4の全体が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾した状態となっていれば、上記のような所期の効果が得られる。
【0061】
なお、本実施形態においては、分流器の全体が上流側から下流側に向かって緩やかに下傾している場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。分流器は、少なくとも下流側部分が、上流側から下流側に向かって緩やかに下傾していれば十分である。
【符号の説明】
【0062】
1 抄箱
1a 溢出口
1b 抄バルブハンガープレート
1c 弁棒
1d 抄弁
1e 底板
1f 海苔生地液流出孔
1g 抄バルブ(押し下げバルブ)
2,19,21 海苔生地液供給機構
3,22 分流タンク(貯留タンク)
4,20 分流器(供給パイプ)
4a 供給口
5 海苔ミス
6 捨水台
7 保水袋
7a 下マス
8 保水機構
9 透明マス
9a 鍔部
10 抄アーム
11 スプリング
12 主弁棒
13 圧送パイプ
14 調整関
15 第1調整関構成部材
16 第2調整関構成部材
17 第3調整関構成部材
18 バー
L 海苔生地液
M,M2,M3 海苔抄装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6