(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179315
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】シートヒータおよびシート空調装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20221125BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011074
(22)【出願日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2021084798
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 広宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 周治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直人
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA02
3B084JA05
3B084JF01
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】シートヒータの通気抵抗を低減するとともに、発熱線の配策自由度を高める。
【解決手段】シートヒータ5は、送風機によって生成された風が流れる複数の通風孔22が着座者側の面である表面17に形成されたシートパッド15と、シートパッドの表面を覆うとともに通気性を有する表皮との間に設置される。シートヒータ5は、空気が通過可能な空隙を有する薄板状の基材51と、基材51に固定される発熱線52と、を備える。基材51には、空隙とは別の複数のスリット53が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座する着座者からの荷重を支える部材であって、送風機によって生成された風が流れる複数の通風孔(22)が前記着座者側の面である表面(17)に形成されたシートパッド(15)と、前記シートパッドの前記表面を覆うとともに通気性を有する表皮(16)との間に設置されるシートヒータであって、
空気が通過可能な空隙を有する薄板状の基材(51)と、
前記基材に固定される発熱線(52)と、を備え、
前記基材に、前記空隙とは別の複数のスリット(53)が形成されている、シートヒータ。
【請求項2】
前記複数のスリットは、前記基材のうち前記基材の厚さ方向で前記発熱線の一部と対向する位置に配置されたスリット(53a)を含む、請求項1に記載のシートヒータ。
【請求項3】
前記複数のスリットは、前記基材のうち前記基材の厚さ方向で前記発熱線と対向しない位置に配置されたスリット(53b)を含む、請求項1または2に記載のシートヒータ。
【請求項4】
前記複数のスリットは、前記基材のうち前記基材の厚さ方向で前記複数の通風孔のいずれか1つの通風孔と対向する位置に配置されたスリット(53c)を含む、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のシートヒータ。
【請求項5】
前記シートパッドの前記表面に、前記複数の通風孔のうち2つ以上の通風孔同士を繋ぐ1つ以上の表溝(23)が線状に配置されており、
前記複数のスリットは、前記基材のうち前記基材の厚さ方向で前記1つ以上の表溝のいずれか1つの表溝と対向する位置に配置されたスリット(53d)を含む、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のシートヒータ。
【請求項6】
前記複数のスリットは、前記基材のうち前記基材の厚さ方向で前記複数の通風孔のいずれか1つの通風孔と対向する領域内で交差する2つのスリット(53f、53g)を含む、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のシートヒータ。
【請求項7】
前記複数のスリットの少なくとも1つは、S字の曲線状に延びている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のシートヒータ。
【請求項8】
シート空調装置であって、
風を生成する送風機(4)と、
シート(3)を構成し、前記シートに着座する着座者からの荷重を支える部材であって、送風機によって生成された風が流れる複数の通風孔(22)が前記着座者側の面である表面(17)に形成されたシートパッド(15)と、
前記シートを構成し、前記シートパッドの前記表面を覆うとともに通気性を有する表皮(16)と、
前記シートパッドと前記表皮との間に設置された薄板状のシートヒータ(5)と、備え、
前記シートヒータは、空気が通過可能な空隙を有する薄板状の基材(51)と、
前記基材に固定された発熱線(52)と、を有し、
前記基材に、前記空隙とは別の複数のスリット(53)が形成されている、シート空調装置。
【請求項9】
前記複数のスリットは、前記基材のうち前記基材の厚さ方向で前記複数の通風孔のいずれか1つの通風孔と対向する位置に配置されたスリット(53c)を含む、請求項8に記載のシート空調装置。
【請求項10】
前記シートパッドの前記表面に、前記複数の通風孔のうち2つ以上の通風孔同士を繋ぐ1つ以上の表溝(23)が線状に配置されており、
前記複数のスリットは、前記基材のうち前記基材の厚さ方向で前記1つ以上の表溝のいずれか1つの表溝と対向する位置に配置されたスリット(53d)を含む、請求項8または9に記載のシート空調装置。
【請求項11】
前記複数のスリットは、前記基材のうち前記基材の厚さ方向で前記複数の通風孔のいずれか1つの通風孔と対向する領域内で交差する2つのスリット(53f、53g)を含む、請求項8ないし10のいずれか1つに記載のシート空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートヒータおよびシート空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート空調装置に用いられるシートヒータとして、特許文献1に開示されたものがある。シート空調装置は、シートパッドおよび表皮を有するシートと、送風機とを備える。シートパッドには、送風機の作動によって生成された風を流すための複数の通風孔が形成されている。表皮は、通気性を有する。シート空調装置は、送風機の作動によって、複数の通風孔から空気を吸い込み、または、吹き出すことで、そのシートに着座する乗員の快適性を向上させる。
【0003】
シートヒータは、不織布等の空気の通過が可能な空隙を有するシート状の基材と、基材に固定された発熱線とを備える。シートヒータは、シートパッドと表皮との間に配置される。シートヒータの通気抵抗が大きいと、シートパッドの複数の通風孔の風流れが阻害される。そこで、特許文献1のシートヒータでは、シートヒータの通気抵抗の低減のために、基材が有する空隙とは別に、複数の通気孔が基材に形成されている。複数の通気孔は、プレス加工で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術のシートヒータでは、複数の通気孔が形成された基材に対して発熱線が固定される。シートヒータの通気抵抗の低減のためには、通気孔の直径を10mm以上の大きさにする必要がある。この場合、複数の通気孔の位置では発熱線を固定することができない。このため、複数の通気孔を避けて発熱線を配置しなければならず、発熱線の配策自由度が低い。複数の通気孔を避けて発熱線が配置されているため、着座者の温めたい部位を温められないという問題が生じている。
【0006】
また、一般的なシートヒータの製造方法は、ロール状に巻き取られた基材を裁断機によりシートヒータの外形に裁断加工する裁断工程を含む。このため、上記した従来技術のシートヒータの製造方法では、基材の裁断工程とは別に、基材に複数の通気孔をプレス加工で形成するプレス工程が必要となる。製造コストの削減のために、工程数は少ない方が望ましい。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、シートヒータの通気抵抗を低減することと、発熱線の配策自由度を高めることと、シートヒータの製造において、基材に複数の通気孔を設けるプレス加工を不要とし、シートヒータの製造工程を簡略化することとを実現できる、シートヒータおよびシート空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、
シートに着座する着座者からの荷重を支える部材であって、送風機によって生成された風が流れる複数の通風孔(22)が着座者側の面である表面(17)に形成されたシートパッド(15)と、シートパッドの表面を覆うとともに通気性を有する表皮(16)との間に設置されるシートヒータは、
空気が通過可能な空隙を有する薄板状の基材(51)と、
基材に固定される発熱線(52)と、を備え、
基材に、空隙とは別の複数のスリット(53)が形成されている。
【0009】
また、請求項8に記載の発明によれば、
シート空調装置は、
風を生成する送風機(4)と、
シート(3)を構成し、シートに着座する着座者からの荷重を支える部材であって、送風機によって生成された風が流れる複数の通風孔(22)が着座者側の面である表面(17)に形成されたシートパッド(15)と、
シートを構成し、シートパッドの表面を覆うとともに通気性を有する表皮(16)と、
シートパッドと表皮との間に設置された薄板状のシートヒータ(5)と、備え、
シートヒータは、空気が通過可能な空隙を有する薄板状の基材(51)と、
基材に固定された発熱線(52)と、を有し、
基材に、空隙とは別の複数のスリット(53)が形成されている。
【0010】
これらによれば、シートヒータの基材に、複数のスリットが形成されている。このため、シートに着座者が着座したり、着座者の着座姿勢が変わったりすることで、基材の一部に着座圧がかかり、基材が広がるように変形する。これにより、複数のスリットのうち少なくとも1つのスリットが開く。この結果、シートヒータの通気抵抗が低減される。
【0011】
また、これらによれば、基材を広げる力が基材にかかっていない状態では、複数のスリットは閉じている。このため、シートヒータの製造の際に、複数のスリットの上を通って発熱線を配置しても、発熱線を基材に固定することができる。1つのスリットの上を通って発熱線が配置されて、1つのスリットが複数のスリットに分かれても、それらのスリットは開くことができる。このため、複数のスリットを避けて、発熱線を基材に配置しなくてもよい。よって、このシートヒータによれば、発熱線の配策自由度が高く、着座者の温めたい部位を温められるように、発熱線を配置することができる。
【0012】
また、これらによれば、複数のスリットの形成は、基材に切れ目を入れることで可能である。このため、ロール状に巻き取られた基材をシートヒータの外形に裁断加工する裁断工程において、複数のスリットを形成することができる。よって、上記した従来のシートヒータの製造の際に必要であったプレス工程を不要にすることができる。従来のシートヒータの製造方法と比較して、シートヒータの製造工程を簡略化することができる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の車両用シート空調装置の斜視図である。
【
図3】第1実施形態のシートヒータおよびシートパッドの一部の正面図である。
【
図4】第1実施形態のシートヒータのうち
図2のIV部を乗員側からみた図であって、開いた状態のスリットおよびその周辺部の斜視図である。
【
図5】第2実施形態のシートヒータの一部およびシートパッドの一部を示す図である。
【
図6】第3実施形態のシートヒータの一部およびシートパッドの一部を示す図である。
【
図7】第3実施形態のシートヒータにおいて、開いた状態のスリットおよびその周辺部の拡大図である。
【
図8】第4実施形態の車両用シート空調装置の断面図であって、
図2に対応する図である。
【
図9】第4実施形態のシートヒータおよびシートパッドの一部の正面図である。
【
図10】吸込風速の測定試験に用いた車両用シート空調装置のシートパッドの平面図である。
【
図11】吸込風速の測定試験に用いた車両用シート空調装置の断面図であって、
図10のXI-XI線断面に相当する図である。
【
図12】実施例1、比較例1-3のそれぞれの吸込風速の測定結果を示すグラフである。
【
図13】第5実施形態のシートヒータおよびシートパッドの正面図である。
【
図14】第6実施形態のシートヒータの一部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
本発明のシートヒータが用いられた車両用シート空調装置について説明する。
図1、2に示すように、車両用シート空調装置1は、乗員2が着座するシート3と、風流れを形成する送風機4と、シートヒータ5と、を備える。
図1、2に示す上下方向D1、左右方向(すなわち、横方向)D2、前後方向D3のそれぞれは、シート3が車室内に設置された状態でのシート3の各方向を示す。シート3の上下方向D1は、車両の上下方向と一致する。シート3の横方向D2は、車両の左右方向と一致する。シート3の前後方向D3は、車両の前後方向と一致する。
【0017】
シート3は、車両用シート空調装置1に適用され、乗員2が着座する車両用シートである。本実施形態では、乗員2がシート3に着座する着座者である。シート3は、車室内に設置される。シート3は、シートバック10と、シートクッション11とを備える。シートバック10は、シート3に着座する乗員2の背部を支える。シートバック10を上下方向D1に平行にした状態でのシートバック10の上下方向D1が、シートバック10の縦方向である。シートクッション11は、シート3に着座する乗員2の臀部を支える。
【0018】
シートバック10とシートクッション11とのそれぞれにシートヒータ5が設置される。シートバック10とシートクッション11とは、互いに外形が異なるが、基本的な構成は同じである。同様に、シートバック10に設置されるシートヒータ5と、シートクッション11に設置されるシートヒータ5とは、互いに外形が異なるが、基本的な構成は同じである。そのため、以下では、シートバック10の構成およびシートバック10に設置されるシートヒータ5の構成について説明する。
【0019】
シートバック10は、中央部12と、一対のサイドサポート13、14とを有する。中央部12は、シートバック10のうちシートバック10の横方向D2の中央側に位置する部分である。中央部12は、シートバック10の厚さ方向で、シート3に着座した乗員2の背部に対向し、乗員2の背部を後方から支持する。中央部12は、背もたれ面、座面とも呼ばれる。サイドサポート13、14は、シートバック10のうち中央部12に対してシートバック10の横方向D2の両側に位置する部分である。サイドサポート13、14は、シート3に着座した乗員2の背部を側方から支持する。
【0020】
シートバック10は、シートパッド15と、表皮16とを有する。シートパッド15は、着座する乗員2の荷重を支持する部材、すなわち、クッション材である。シートパッド15は、柔軟性のある発泡ポリウレタン樹脂の成形体で構成される。シートパッド15には、乗員2の姿勢保持、体圧の分散、振動の抑制などの役割がある。なお、本実施形態では、シートパッド15は、1種類の発泡ポリウレタン樹脂で構成されるが、柔らかさが異なる2種以上の発泡ポリウレタン樹脂で構成されてもよい。また、シートパッド15は、発泡ポリウレタン樹脂以外の発泡樹脂成形体で構成されてもよい。
【0021】
図2に示すように、シートパッド15は、シートパッド15の乗員側の面である表面17と、シートパッド15の乗員側とは反対側の面である裏面18と、シートパッドの側方の面である側面19とを有する。表皮16は、シートパッド15の表面17および側面19を覆う。表皮16は、ファブリックまたは皮などにより構成される。表皮16は、パーフォレーションと呼ばれる図示しない複数の細かい孔を有し、通気性を有する。1つの孔の直径は例えば1mm程度である。
【0022】
シートパッド15は、中央パッド部151と、一対のサイドパッド部152、153とを有する。中央パッド部151は、シートバック10の中央部12を構成する。中央パッド部151は、シートパッド15のうちシートバック10の横方向D2の中央側に位置する部分である。サイドパッド部152、153は、シートバック10のサイドサポート13、14を構成する。サイドパッド部152、153は、シートパッド15のうち中央パッド部151に対してシートバック10の横方向D2の両側に位置する部分である。
【0023】
シートパッド15の表面17には、複数の吊り溝20が形成されている。複数の吊り溝20は、表皮16を吊り込み支持するための溝である。表皮16に形成された複数の吊り込み部が、各吊り溝20に挿入されて固定される。
【0024】
シートパッド15の中央パッド部151の表面17には、複数の通風孔22が形成されている。複数の通風孔22は、シートパッド15の表面17から裏面18までシートパッド15を貫通している。複数の通風孔22には、送風機4の作動によって生成された風が流れる。シートパッド15の表面17において、各通風孔22は略円形状である。各通風孔22の直径は、例えば、20~30mmである。
【0025】
シートヒータ5は、発熱することで、シート3に着座する着座者を暖める。シートヒータ5は、シートパッド15と表皮16との間に設置される。シートヒータ5は、シートヒータ5の厚さ方向で中央パッド部151に対向して配置されている。換言すると、シートヒータ5は、中央パッド部151の表面17を覆っており、複数の通風孔22を覆っている。
【0026】
図3に示すように、シートヒータ5は、基材51と、発熱線52とを備える。基材51は、シート状(すなわち、薄板状)であり、空気が通過可能な空隙を有する。基材51としては、不織布、軟質発泡ポリウレタン樹脂等が用いられる。基材51として不織布が用いられる場合、繊維と繊維との間に空隙が存在する。発熱線52は、通電によって発熱する線状の発熱体である。発熱線52としては、銅合金等が用いられる。発熱線52の配線仕様により、均一な温度分布も温度差を設けることが可能である。発熱線52は、熱溶着によって、基材51に固定されている。なお、発熱線52は、接着剤を用いた接着によって、基材51に固定されてもよい。また、発熱線52は、縫製によって、基材51に固定されてもよい。
【0027】
シートヒータ5は、両面テープを用いた接着によって、シートパッド15に対して固定される。または、シートヒータ5は、タグピンによって、表皮16に対して固定される。なお、表皮16の裏側にスラブと呼ばれる板状のクッション材が固定されている場合、シートヒータ5は、タグピンによって、スラブに固定される。このように、シートヒータ5は、スラブを介して、表皮16に対して固定されてもよい。
【0028】
図3に示すように、基材51に、シートヒータ5の通気抵抗の低減のために、基材51が有する空隙とは別の複数のスリット53が形成されている。各スリット53は、切れ込みである。換言すると、各スリット53は、線状に配置された隙間である。各スリット53は、基材51に引張り応力がかかっていない状態のときに、目視で確認されない大きさの隙間である。複数のスリット53のそれぞれは、縦方向に直線状に延びている。
【0029】
複数のスリット53は、基材51のうち基材51の厚さ方向で発熱線52の一部と対向する位置に配置されたスリット53aを含む。このスリット53aは、基材51に対して基材51の厚さ方向で投影した発熱線52と交わるように、線状に延びて配置されている。複数のスリット53は、基材51のうち基材51の厚さ方向で発熱線52と対向しない位置に配置されたスリット53bを含む。このスリット53bは、基材51のうち発熱線52が配置されていない位置に、配置されている。
【0030】
複数のスリット53は、基材51のうち基材51の厚さ方向で複数の通風孔22のいずれか1つの通風孔22と対向する位置に配置されたスリット53cを含む。スリット53cは、基材51に対して通風孔22を基材51の厚さ方向で投影したときに、基材51のうち通風孔22が投影された位置に配置されている。通風孔22と対向する位置に配置されたスリット53cは、通風孔22を跨ぐように配置されている。
【0031】
シートヒータ5の製造方法は、基材を形成する工程を含む。この工程では、基材が不織布である場合、例えば、ニードルパンチ法によって、不織布が形成される。形成された不織布は、ロール状に巻き取られる。
【0032】
シートヒータ5の製造方法は、ロール状に巻き取られた基材51をNC裁断機によりシートヒータ5の外形に裁断加工する裁断工程を含む。この裁断工程において、基材51にNC裁断機により切れ目を入れることで、複数のスリット53が形成される。このように、複数のスリット53の形成は、打ち抜き加工で行われないため、打ち抜きくずが出ない。このことから、本実施形態のシートヒータ5の製造方法は、環境にやさしい製造方法である。このとき、基材51のうちシートパッド15の複数の通風孔22のそれぞれに対向する位置に、複数のスリット53のそれぞれが位置するように、複数のスリット53が形成される。
【0033】
さらに、シートヒータ5の製造方法は、シートヒータ5の外形に裁断され、複数のスリット53が形成された基材51に対して、発熱線52を溶着によって固定する固定工程を含む。これにより、シートヒータ5が製造される。
【0034】
図2に示すように、シートパッド15の裏面18には、裏溝25が形成されている。裏溝25は、複数の通風孔22と送風機4との間の通風路を形成する。シートパッド15の裏面18側には、裏溝25に対応する部位に裏蓋26が設けられている。裏蓋26は、例えば、硬質フェルトやポリプロピレン、POM等の樹脂などで構成されている。裏蓋26は、裏溝25の開放面を塞ぐようにシートパッド15の裏面18に貼り付けられている。裏蓋26の後方に、送風機4が設けられている。図示しないが、裏蓋26には、送風機4の空気吸込口に対応する位置に開口穴が設けられている。送風機4の後方には、バックフレーム28が設けられている。バックフレーム28の外縁は、シートパッド15に接続されている。裏蓋26とバックフレーム28との間にシートバック空間29が形成されている。
【0035】
送風機4は、そのシートバック空間29に配置されている。送風機4は、図示しない電気モータの駆動により羽根車を回転させることで気流を発生させるファンである。羽根車として、遠心ファンが用いられる。なお、羽根車として、軸流ファンまたは斜流ファンまたはターボファンを用いてもよい。送風機4は、表皮16の有するパーフォレーションから複数の通風孔22および裏溝25を経由して吸い込んだ空気を、シートバック空間29に吹き出すように構成されている。
【0036】
以上のように構成された本実施形態の車両用シート空調装置1では、乗員を冷却するための冷却運転時に、シートヒータ5の通電が停止された状態で、送風機4が作動する。
【0037】
乗員2の着座姿勢が、乗員2が前を向いて乗員2の背部の大部分がシートバック10に接触する通常姿勢のとき、背部によって中央パッド部151の複数の通風孔22が塞がれる。このため、乗員2の背部とシートバック10との間に風が流れない。または、乗員2の背部とシートバック10との間を流れる風が少ない。
【0038】
図2中の矢印A1は、乗員2の体が向いている方向を示している。
図2に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から、乗員2が斜め前を向いた斜め姿勢に変わる。斜め姿勢では、乗員2の背部のうち左右方向の一端側がシートバック10に接触し、乗員2の背部のうち左右方向の他端側がシートバック10から離れる。これにより、車室内の空気が、表皮16およびシートヒータ5を通過して、乗員2の背部によって塞がれていない通風孔22から吸込まれることで、乗員2の背部とシートバック10との間に風が流れる。このとき、乗員2の背部とシートバック10との間を流れる風は、通常姿勢時よりも多い。
【0039】
次に、本実施形態のシートヒータ5の効果について説明する。シートヒータ5の基材51に、複数のスリット53が形成されている。このため、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わることで、基材51の一部に着座圧がかかり、基材51が広がるように変形する。これにより、
図4に示すように、複数のスリット53のうち少なくとも1つのスリット53が開く。少なくとも1つのスリット53が開くことによって、基材51に少なくとも1つの開口空間が形成される。この結果、シートヒータ5の通気抵抗が低減される。
【0040】
特に、本実施形態では、
図3に示すように、複数のスリット53は、シートパッド15の1つの通風孔22と対向する位置に配置されたスリット53cを含む。このため、通風孔22に吸い込まれる風流れが生じやすい。このように、シートパッド15のうち風が流れる通路に対向する位置に、スリット53が配置されることで、シートヒータ5の通気抵抗を低減することができる。
【0041】
なお、複数のスリット53が開くのは、着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わるときに限られない。乗員2の着座時に、基材51の少なくとも一部に着座圧がかかり、基材51が広がるように変形するときに、複数のスリット53が開く。
【0042】
ところで、上記の通り、従来技術のシートヒータでは、複数の通気孔が形成された基材に対して発熱線が固定される。シートヒータの通気抵抗の低減のためには、通気孔の直径を10mm以上の大きさにする必要がある。この場合、複数の通気孔の位置では発熱線を固定することができない。このため、複数の通気孔を避けて発熱線を配置しなければならず、発熱線の配策自由度が低い。複数の通気孔を避けて発熱線が配置されているため、着座者の温めたい部位を温められないという問題が生じている。
【0043】
また、上記した従来技術のシートヒータの製造方法は、基材を形成する工程と、基材に複数の通気孔を形成する工程と、基材を裁断加工する裁断工程とを含む。基材を形成する工程では、例えば、基材としての不織布がニードルパンチ法等によって形成される。複数の通気孔を形成する工程では、プレス加工機を用いて、不織布に対してプレス加工することによって複数の通気孔が形成される。その後、不織布がロール状に巻き取られる。裁断工程では、ロール状に巻き取られた不織布がNC裁断加工機によってシートヒータの外形に裁断加工される。このように、従来技術のシートヒータの製造方法では、基材の裁断工程とは別に、基材に複数の通気孔をプレス加工で形成するプレス工程が必要となる。製造コストの削減のために、工程数は少ない方が望ましい。
【0044】
これに対して、本実施形態のシートヒータ5によれば、基材51を広げる力が基材51にかかっていない状態では、複数のスリット53は閉じている。このため、シートヒータ5の製造の際に、複数のスリット53の上を通って発熱線52を配置しても、発熱線52を基材51に固定することができる。1つのスリット53の上を通って発熱線52が配置されて、1つのスリット53が複数のスリット53に分かれても、それらのスリット53は開くことができる。このため、複数のスリット53を避けて、発熱線52を基材51に配置しなくてもよい。よって、本実施形態のシートヒータによれば、発熱線52の配策自由度が高く、着座者の温めたい部位を温められるように、発熱線52を配置することができる。
【0045】
このように、本実施形態のシートヒータ5は、発熱線52の配策自由度が高い。この結果、本実施形態のシートヒータ5によれば、発熱線52は、複数のスリット53を避けて配置された部分と、複数のスリット53の上を通って配置された部分とを含む。換言すると、複数のスリット53は、基材51のうち発熱線52の一部と対向する位置に配置されたスリット53aと、基材51のうち発熱線52と対向しない位置に配置されたスリット53bとを含む。
【0046】
また、本実施形態のシートヒータ5によれば、複数のスリット53の形成は、基材51に切れ目を入れることで可能である。このため、ロール状に巻き取られた基材をシートヒータ5の外形に裁断加工する裁断工程において、複数のスリット53を形成することができる。すなわち、同じ裁断加工機を用いて、ロール状に巻き取られた基材をシートヒータ5の外形に裁断加工することと、複数のスリット53を形成することとを行うことができる。よって、上記した従来のシートヒータの製造の際に必要であったプレス工程を不要にすることができる。従来のシートヒータの製造方法と比較して、シートヒータ5の製造工程を簡略化することができる。
【0047】
以上の説明の通り、本実施形態のシートヒータ5によれば、シートヒータ5の通気抵抗を低減することと、発熱線52の配策自由度を高めることと、シートヒータ5の製造において、基材51に複数の通気孔を設けるプレス加工を不要とし、シートヒータ5の製造工程を簡略化することとを実現することができる。
【0048】
(第2実施形態)
本実施形態では、シートヒータ5に形成された複数のスリット53の向きが、第1実施形態と異なる。車両用シート空調装置1の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0049】
第1実施形態では、複数のスリット53は、シートバック10の縦方向(すなわち、図の上下方向)に直線状に延びている。このため、各スリット53に対して交差する方向に、基材51が引っ張られたときに各スリット53が開く。しかしながら、基材51が縦方向に引っ張られたときは、各スリット53が開かない。
【0050】
これに対して、
図5に示すように、本実施形態では、複数のスリット53のそれぞれは、縦方向と横方向とのそれぞれに対して斜めの方向に直線状に延びている。このため、基材51が縦方向と横方向のどちらの方向に引っ張られても、各スリット53が開くことができる。
【0051】
(第3実施形態)
本実施形態では、シートヒータ5に形成された複数のスリット53の形状が、第1実施形態と異なる。車両用シート空調装置1の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0052】
図6に示すように、本実施形態では、複数のスリット53のそれぞれは、S字の曲線状に延びている。ここで、本実施形態と異なり、各スリット53が直線状に延びている場合、各スリット53に平行な方向に基材51が引っ張られたとき、各スリット53が開かない。これに対して、本実施形態によれば、基材51がどの方向に引っ張られても、
図7に示すように、各スリット53が開くことができる。
【0053】
さらに、各スリット53が直線状に延びている場合と比較して、本実施形態の各スリット53は開きやすい。このため、基材51にかかる引張応力が小さくても、各スリット53が開くことで、シートヒータ5の通気抵抗を低減することができる。
【0054】
(第4実施形態)
図8、9に示すように、本実施形態の車両用シート空調装置1では、シートパッド15の中央パッド部151の表面17に、複数の通風孔22のうち2つ以上の通風孔22同士を繋ぐ複数の表溝23が線状に配置されている。表溝23の深さは、中央パッド部151の厚さよりも小さく、例えば、5~10mm程度である。
【0055】
例えば、複数の表溝23は、2つの通風孔22を繋ぐように直線状に延びる第1直線部23aと、他の1つの通風孔22から直線状に延びる第2直線部23bと、第1直線部23aおよび第2直線部23bの両方に交わって直線状に延びる第3直線部23cとを含む。なお、表溝23は、1つのみであってもよい。
【0056】
シートヒータ5の複数のスリット53は、基材51のうち基材51の厚さ方向で表溝23と対向する位置に配置されたスリット53dを含む。スリット53dは、基材51に対して基材51の厚さ方向で投影した表溝23と交わるように、線状に延びて配置されている。本実施形態の車両用シート空調装置1の他の構成は、第1実施形態の車両用シート空調装置1と同じである。
【0057】
図8に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わると、第1実施形態での説明の通り、乗員2の背部とシートバック10との間に風が流れる。このとき、本実施形態では、通風孔22に向かう風が表溝23を流れる。このため、中央パッド部151の表面17に表溝23が形成されていない場合と比較して、乗員2の背部とシートバック10との間に、風が多く流れる。
【0058】
そして、本実施形態のシートヒータ5によれば、複数のスリット53は、シートパッド15の表溝23と対向する位置に配置されたスリット53dを含む。このため、基材51の少なくとも一部に着座圧がかかり、スリット53dが開くことで、表溝23を通って通風孔22に吸い込まれる風流れが生じやすい。このように、シートパッド15のうち風が流れる通路に対向する位置に、スリット53が配置されることで、シートヒータ5の通風抵抗を小さくすることができる。
【0059】
さらに、本実施形態のシートヒータ5によれば、乗員2がシート3に着座したときに、シートパッド15の表面17に表溝23が形成されていない場合と比較して、スリット53dは開きやすい。このことは、本発明者が試験を行って確認されている。シートパッド15の表面17に表溝23が形成されていると、乗員2からの着座圧を受けたときに、シートパッド15の表面17が広がりやすい。シートパッド15の表面17が広がることに伴って、シートヒータ5の基材51も広がる。このため、スリット53dが開きやすいと考えられる。
【0060】
なお、複数のスリット53は、基材51のうち表溝23と対向する位置に配置されたスリット53dに加えて、第1実施形態と同様に、基材51のうち通風孔22と対向する位置に配置されたスリット53cを含んでもよい。
【0061】
ここで、本発明者が行った試験結果について説明する。本発明者は、
図10、11に示す車両用シート空調装置において、実施例1のシートヒータ5を用いたときの吸込風速を測定した。吸込風速は、表皮16に吸い込まれる風の速度である。
【0062】
図10、11に示す車両用シート空調装置は、第2実施形態の車両用シート空調装置1に対応する。シートパッド15と、表皮16との間に、シートヒータ5が設置される。シートパッド15には、複数の通風孔22と複数の表溝23とが形成されている。複数の表溝23は、横方向に並ぶ表溝同士を繋ぐように横方向に直線状に延びる表溝と、縦方向に並ぶ表溝同士を繋ぐように縦方向に直線状に延びる表溝とを含む。さらに、複数の表溝23は、表溝同士を繋ぐように直線状に延びる表溝に対して交わるように直線状に延びる表溝を含む。表溝の深さは5mmである。送風機4の作動によって、風が、表皮16、シートヒータ5の順に通過して、複数の表溝23および複数の通風孔22を流れる。
【0063】
実施例1のシートヒータ5は、第1、第2実施形態のシートヒータ5と同様に、基材51と、発熱線52とを備える。基材51は不織布で構成される。基材51には複数のスリット53が形成されている。第1実施形態のシートヒータ5と同様に、複数のスリット53は、基材51のうち発熱線52の一部と対向する位置に配置されたスリット53aと、基材51のうち発熱線52と対向しない位置に配置されたスリット53bとを含む。また、複数のスリット53は、基材51のうち1つの通風孔22と対向する位置に配置されたスリット53cを含む。また、第2実施形態のシートヒータ5と同様に、複数のスリット53は、1つの表溝23と対向する位置に配置されたスリット53dを含む。
【0064】
吸込風速の測定では、本発明者は、風速測定器を用いて、表皮16の表面上の5か所の風速を測定し、測定した風速値の平均値を算出した。シート3の表面上に乗員2等が存在する状態では、吸込風速の測定ができない。このため、シート3の表面上に乗員等が存在しない状態で、吸込風速の測定を行った。また、乗員2の着座によって、または、着座姿勢の変更によって、基材51の少なくとも一部に着座圧がかかり、複数のスリット53が開くことを想定して、各スリット53が開いた状態に維持して、吸込風速の測定を行った。実際に乗員2がシート3に着座したときの各スリット53の開口幅は2~3mmであった。そこで、本発明者は、各スリット53の最大開口幅が2~3mmとなるように、基材51が引っ張られた状態で、吸込風速の測定を行った。
【0065】
実施例1のシートヒータ5を用いたときの吸込風速の測定結果を
図12に示す。なお、
図12には、
図10、11に示す車両用シート空調装置において、比較例1、2のシートヒータを用いた場合の吸込風速の測定結果と、比較例3として、シートヒータを用いない場合の吸込風速の測定結果を示す。
【0066】
比較例1のシートヒータ5では、実施例1のシートヒータ5と同様に、基材51が不織布で構成される。実施例1のシートヒータ5と異なり、基材51には、不織布が有する空隙とは別に、パンチ加工で複数の通気孔が形成されている。各通気孔は、直径が3.5mmの円形である。
【0067】
比較例2のシートヒータ5では、実施例1のシートヒータ5と同様に、基材51が不織布で構成される。実施例1、比較例1のシートヒータ5と異なり、基材51には、スリットおよび通気孔が形成されていない。
【0068】
図12に示すように、シートヒータを用いた場合である実施例1、比較例1、2の吸込風速は、シートヒータを用いていない場合である比較例3の吸込風速よりも小さい。実施例1、比較例1のシートヒータを用いた場合の吸込風速は、比較例2のシートヒータを用いた場合の吸込風速よりも大きい。実施例1の吸込風速は、比較例1の吸込風速とほぼ同じであった。なお、図示しないが、本発明者が表皮16に吸い込まれる風の風量である吸込風量を測定した結果、実施例1の吸込風量も、比較例1の吸込風量とほぼ同じであった。これらのことから、基材51に複数のスリット53が形成されたシートヒータ5によれば、基材に複数の通気孔が形成された従来のシートヒータとほぼ同じ通気抵抗低減の効果が得られることが確認された。
【0069】
(第5実施形態)
図13に示すように、第4実施形態と同様に、シートパッド15の中央パッド部151の表面17に、複数の表溝23が線状に配置されている。本実施形態では、複数の表溝23は、複数の通風孔22と複数の吊り溝20とを繋ぐように延びている。このため、送風機4の作動によって、着座する乗員2側の車室内の空気が複数の通風孔22に吸い込まれるとき、吊り溝20から表溝23を通って通風孔22に向かう風流れが形成される。
【0070】
シートヒータ5は、シートパッド15のうち中央パッド部151および複数の吊り溝20を覆うように配置される。シートヒータ5の複数のスリット53は、基材51のうち表溝23と対向する位置に配置されたスリット53dと、基材51のうち基材51の厚さ方向で複数の吊り溝20のいずれか1つの吊り溝20と対向する位置に配置されたスリット53eとを含む。スリット53eは、吊り溝20と交差するように線状に延びている。本実施形態の車両用シート空調装置1の他の構成は、第1実施形態の車両用シート空調装置1と同じである。
【0071】
これによれば、吊り溝20に対向するスリット53eが開くことで、吊り溝20および表溝23を通って通風孔22に吸い込まれる風流れが生じやすい。このように、シートパッド15のうち風が流れる通路に対向する位置に、スリット53が配置されることで、シートヒータ5の通風抵抗を小さくすることができる。
【0072】
(第6実施形態)
図14に示すように、本実施形態では、複数のスリット53は、基材51のうち基材51の厚さ方向で複数の通風孔22のいずれか1つの通風孔22と対向する領域内で、直交する直線状の2つのスリット53f、53gを含む。2つのスリット53f、53gは、基材51に対して1つの通風孔22を基材51の厚さ方向で投影したときに、基材51のうち通風孔22が投影された位置に配置されている。2つのスリット53f、53gは、通風孔22を跨ぐように配置されている。
【0073】
本実施形態の車両用シート空調装置1の他の構成は、第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同じ効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、2つのスリット53f、53gが1つの通風孔22と対向する領域内で直交している。このため、1つの通風孔22と対向する領域に、1つのスリット53のみが配置されている場合や交差していない2つのスリット53が配置されている場合と比較して、拘束力が小さくなり、2つのスリット53f、53gは開き易くなっている。これにより、乗員2の着座時に基材51に着座圧がかかる場合だけでなく、着座圧がかからない場合も、通風孔22の通風によって、2つのスリット53f、53gが開くことできる。よって、着座圧がかからない場合も、シートヒータ5の通気抵抗を低減することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、2つのスリット53f、53gの交点は、1つの通風孔22と対向する領域の中心に位置する。しかしながら、2つのスリット53f、53gの交点は、中心から離れていてもよい。また、本実施形態では、2つのスリット53f、53gが交差する角度は、90度である。しかしながら、2つのスリット53f、53gが交差する角度は、90度以外の角度でもよい。また、本実施形態では、2つのスリット53f、53gは、直線状に延びている。しかしなら、2つのスリット53f、53gは、直線状に延びていなくてもよく、曲線状に延びていてもよい。また、本実施形態では、1つの通風孔22と対向する領域内で交差するスリット53は、2つであるが、3つ以上であってもよい。これらの場合においても、本実施形態と同じ効果が得られる。
【0075】
(他の実施形態)
(1)第3実施形態では、複数のスリット53の全部がS字の曲線状に延びているが、複数のスリット53の一部のみがS字の曲線状に延びていてもよい。要するに、複数のスリット53の少なくとも1つがS字の曲線状に延びていればよい。この場合に、第3実施形態と同じ効果が得られる。
【0076】
(2)上記した各実施形態では、複数の通風孔22は、送風機4の作動によって、乗員側の空間から空気を吸い込む。しかしながら、複数の通風孔22は、送風機4の作動によって、乗員側の空間へ空気を吹き出してもよい。
【0077】
(3)上記各実施形態では、シートヒータ5は、車両用シート空調装置1に適用される。しかしながら、シートヒータ5は、車両用以外のシート空調装置に適用されてもよい。
【0078】
(4)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。例えば、第3実施形態を、第1、第4~第6実施形態に組み合わせることが可能である。第1、第4~第6実施形態に記載のスリット53a~53gの少なくとも1つが、S字の曲線状に延びていてもよい。
【0079】
(5)上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0080】
1 車両用シート空調装置
5 シートヒータ
15 シートパッド
16 表皮
51 基材
52 発熱線
53 スリット